説明

放射線画像変換パネル、その製造方法及び製造装置

【課題】鮮鋭性の向上した放射線画像変換パネル、その製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】輝尽性蛍光体または輝尽性蛍光体原料を含む蒸発源3を蒸着装置1内で加熱して発生する物質を支持体11上に蒸着させることにより輝尽性蛍光体層を形成する放射線画像変換パネルの製造方法において、蒸発源ボート容積に対する蒸発源の充填率が40〜100%であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像変換パネル、その製造方法及び製造装置に関し、詳しくは鮮鋭性の向上した放射線画像変換パネル、その製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、X線等の放射線が照射されると、放射線エネルギーの一部を吸収蓄積し、その後可視光線や赤外線等の電磁波(励起光)の照射を受けると、蓄積した放射線エネルギーに応じて発光を示す性質を有する輝尽性蛍光体(蓄積性蛍光体)を利用した放射線画像記録再生方法が広く実用に供されている。
【0003】
具体的には、輝尽性蛍光体を含有するシート状の放射線画像変換パネルに、被検体を透過したあるいは被検体から発せられた放射線を照射して、被検体の放射線画像情報を一旦蓄積記録した後、パネルにレーザ光等の励起光を走査して順次発光光として放出させ、この発光光を光電的に読み取って画像信号を得ることにより最終画像を形成する。読み取りを終えたパネルは、次の撮影のために備えて残存する放射線エネルギーの消去が行われ、繰り返し使用される。
【0004】
放射線画像記録再生方法に用いられる放射線画像変換パネルは、基本構造として、支持体(基体)とその上に設けられた蛍光体層とからなるものである(蛍光体層が自己支持性である場合には支持体を必要としない)。また、蛍光体層の上面(支持体に面していない側の面)には通常、保護層が設けられていて、蛍光体層を化学的な変質あるいは物理的な衝撃から保護している。
【0005】
蛍光体層としては、輝尽性蛍光体とこれを分散状態で含有支持する結合剤とからなるもの、蒸着法や焼結法によって形成される結合剤を含まないで輝尽性蛍光体の凝集体のみから構成されるもの、及び輝尽性蛍光体の凝集体の間隙に高分子物質が含浸されているもの等が知られている。
【0006】
また、上記放射線画像記録再生方法の中には、放射線吸収機能とエネルギー蓄積機能とを分離して、放射線を吸収して紫外ないし可視領域に発光を示す蛍光体(放射線吸収用蛍光体)を含有する蛍光スクリーンと輝尽性蛍光体(エネルギー蓄積用蛍光体)を含有する放射線画像変換パネルとの組合せを用いる放射線画像形成方法がある。この方法は、被検体を透過した放射線をまず、スクリーンまたはパネルの放射線吸収用蛍光体により紫外ないし可視領域の光に変換した後、その光をエネルギー蓄積用蛍光体にて放射線画像情報として蓄積記録する。次いで、このパネルに励起光を走査して発光光を放出させ、この発光光を光電的に読み取って画像信号を得るものである。
【0007】
放射線画像記録再生方法(及び放射線画像形成方法)は、確かに数々の優れた利点を有する方法であるが、この方法において要となる放射線画像変換パネルは、できる限り高感度であって、かつ画質(鮮鋭度、粒状性等)の良好な画像を与えるものである必要がある。
【0008】
感度及び画質を高める目的のため、例えば特公平6−77079号公報に記載されているように、蛍光体層を気相堆積法により形成する放射線画像変換パネルの製造方法が提案されている。気相堆積法には蒸着法やスパッタ法等があり、例えば蒸着法は、蛍光体またはその原料からなる蒸発源を抵抗加熱器や電子線の照射により加熱して蒸発源を蒸発、飛散させ、金属シート等の基板表面にその蒸発物を堆積させることにより、蛍光体の柱状結晶からなる蛍光体層を形成するものである。
【0009】
気相堆積法により形成された蛍光体層は、結合剤を含有せず、蛍光体のみからなり、蛍光体の柱状結晶と柱状結晶の間には空隙(クラック)が存在する。このため、励起光の進入効率や発光光の取出し効率を上げることができるので高感度であり、また励起光の平面方向への散乱を防ぐことができるので高鮮鋭度の画像を与えることができる。
【0010】
特許文献1には、ユーロピウム賦活ハロゲン化セシウム(CsX:Eu)輝尽性蛍光体を基板上に蒸着(一元蒸着)させることからなる放射線画像変換パネルの製造方法が開示されている。しかしながら、得られた蒸着膜中に賦活剤Euの濃度分布が生じることについても、さらにはEu濃度分布を解消するための手段についても、全く記載されていない。また、特許文献2には、成膜材料をルツボに供給する材料供給手段については記載されているものの、EuとCsが別々の2源蒸着であり、材料の充填量についても記載されていない。
【特許文献1】国際公開第01/03156号パンフレット
【特許文献2】特開2003−183815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、鮮鋭性の向上した放射線画像変換パネル、その製造方法及び製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0013】
(請求項1)
輝尽性蛍光体または輝尽性蛍光体原料を含む蒸発源を蒸着装置内で加熱して発生する物質を支持体上に蒸着させることにより輝尽性蛍光体層を形成する放射線画像変換パネルの製造方法において、蒸発源ボート容積に対する蒸発源の充填率が40〜100%であることを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。
【0014】
(請求項2)
前記充填率が50〜90%であることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【0015】
(請求項3)
前記輝尽性蛍光体または輝尽性蛍光体原料が下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【0016】
一般式(1)
1X・aM2X′2・bM3X″3:eA
(式中、M1はLi、Na、K、Rb及びCsからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属であり、M2はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Cu及びNiの各原子から選ばれる少なくとも1種の2価金属であり、M3はY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInの各原子から選ばれる少なくとも1種の3価金属であり、X、X′及びX″はF、Cl、Br及びIの各原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲンであり、AはEu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgの各原子から選ばれる少なくとも1種の金属であり、また、a、b、eはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<e<1.0の範囲の数値を表す。)
(請求項4)
請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法に用いられることを特徴とする放射線画像変換パネルの製造装置。
【0017】
(請求項5)
請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法で得られることを特徴とする放射線画像変換パネル。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、鮮鋭性の向上した放射線画像変換パネル、その製造方法及び製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明者は鋭意研究の結果、輝尽性蛍光体または輝尽性蛍光体原料を含む蒸発源を蒸着装置内で加熱して発生する物質を支持体上に蒸着させることにより輝尽性蛍光体層を形成する放射線画像変換パネルの製造方法において、蒸発源ボート容積に対する蒸発源の充填率を40〜100%とすることにより、鮮鋭性の向上した放射線画像変換パネルの製造方法が得られることを見出した。
【0020】
放射線画像変換パネルの製造方法の詳細については後述するが、融点の異なる2成分、例えばCsBrとEuを蒸発源として同時に蒸着する時に、蒸発源ボート容積に対する蒸発源(輝尽性蛍光体原料)の充填率が低いと、加熱溶融時に蒸発源ボート内の温度が不均一になりやすく、蒸着膜中の賦活剤、この場合Euの濃度が不均一になり、鮮鋭性が低下するものと推定される。本発明では充填率を高めることによりボート内の温度の不均一が解消され、蒸着膜中の賦活剤濃度が均一になり、鮮鋭性が向上するものと推定している。
【0021】
なお、蒸着の進行に伴い蒸発源は消費され当初の充填率から低下するが、蒸着開始前の充填率が40〜100%、好ましくは50〜100%であれば鮮鋭性の向上した放射線画像変換パネルが得られることを本発明者は確認している。
【0022】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0023】
本発明の放射線画像変換パネルは、支持体と、該支持体上に気相堆積法により輝尽性蛍光体の柱状結晶により形成された輝尽性蛍光体層を備え、必要に応じて該輝尽性蛍光体層を保護する保護層が設けられている。
【0024】
〔支持体〕
本発明に係る支持体は従来の放射線画像変換パネルの支持体として公知の材料から任意に選ぶことができるが、気相堆積法により蛍光体層を形成する際の支持体となる場合には、石英ガラスシート、アルミニウム、鉄、スズ、クロム等からなる金属シート及び炭素繊維強化樹脂シートが好ましい。
【0025】
支持体には、その表面を平滑な面とするために樹脂層を有してもよい。樹脂層は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、パラフィン、グラファイト等の化合物を含有することが好ましく、その膜厚は5〜50μmであることが好ましい。この樹脂層は、支持体の表面に設けても裏面に設けても両面に設けてもよい。
【0026】
また、支持体上に樹脂層を設ける手段としては、貼合法、塗設法等の手段が挙げられる。貼合法は加熱、加圧ローラを用いて行い、加熱条件としては80〜150℃が好ましく、加圧条件としては4.90×10〜2.94×102N/cm、搬送速度は0.1〜2.0m/秒が好ましい。
【0027】
〔輝尽性蛍光体〕
本発明に係る輝尽性蛍光体は、気相堆積法により形成される柱状結晶であれば特に制限はないが、本発明では前記一般式(1)で表される輝尽性蛍光体が好ましい。
【0028】
前記一般式(1)において、M1は、Na、K、Rb及びCsからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属を表し、中でもRb及びCsが好ましく、さらに好ましくはCs原子である。
【0029】
2は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Cu及びNiの各原子から選ばれる少なくとも1種の2価の金属原子を表し、中でも好ましく用いられるのは、Be、Mg、Ca、Sr及びBaである。
【0030】
3は、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInの各原子から選ばれる少なくとも1種の3価金属を表し、中でも好ましく用いられるのはY、Ce、Sm、Eu、Al、La、Gd、Lu、Ga及びInである。
【0031】
輝尽性蛍光体の輝尽発光輝度向上の観点から、X、X′及びX″はF、Cl、Br及びIの各原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲンを表すが、F、Cl及びBrが好ましく、Brがさらに好ましい。
【0032】
Aは、Eu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgの各原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子を表し、中でも好ましく用いられるのはEuである。
【0033】
また、b値は0≦b<0.5であるが、好ましくは0≦b<10-2である。
【0034】
〔輝尽性蛍光体の製造方法、製造装置〕
一般式(1)で表される輝尽性蛍光体は、例えば以下に述べる方法、製造装置により製造される。
【0035】
蛍光体原料としては、
(a)NaF、NaCl、NaBr、NaI、KF、KCl、KBr、KI、RbF、RbCl、RbBr、RbI、CsF、CsCl、CsBr及びCsIから選ばれる少なくとも1種または2種以上の化合物が用いられる。
【0036】
(b)MgF2、MgCl2、MgBr2、MgI2、CaF2、CaCl2、CaBr2、CaI2、SrF2、SrCl2、SrBr2、SrI2、BaF2、BaCl2、BaBr2、BaBr2・2H2O、BaI2、ZnF2、ZnCl2、ZnBr2、ZnI2、CdF2、CdCl2、CdBr2、CdI2、CuF2、CuCl2、CuBr2、CuI、NiF2、NiCl2、NiBr2及びNiI2の化合物から選ばれる少なくとも1種または2種以上の化合物が用いられる。
【0037】
(c)Eu、Tb、In、Cs、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgの各原子から選ばれる金属原子を有する化合物が用いられる。
【0038】
上記の数値範囲の混合組成になるように前記(a)〜(c)の蛍光体原料を秤量し、純水にて溶解する。
【0039】
この際、乳鉢、ボールミル、ミキサーミル等を用いて充分に混合してもよい。
【0040】
次に、得られた水溶液のpH値Cを0<C<7になるように酸を加えた後、水分を蒸発気化させる。
【0041】
次に、得られた原料混合物を石英ルツボまたはアルミナルツボ等の耐熱性容器に充填して電気炉中で焼成を行う。焼成温度は500〜1000℃が好ましい。焼成時間は原料混合物の充填量、焼成温度等によって異なるが、0.5〜6時間が好ましい。
【0042】
焼成雰囲気としては少量の水素ガスを含む窒素ガス雰囲気、少量の一酸化炭素を含む炭酸ガス雰囲気等の弱還元性雰囲気、窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気等の中性雰囲気あるいは少量の酸素ガスを含む弱酸化性雰囲気が好ましい。
【0043】
なお、前記の焼成条件で一度焼成した後、焼成物を電気炉から取り出して粉砕し、しかる後、焼成物粉末を再び耐熱性容器に充填して電気炉に入れ、前記と同じ焼成条件で再焼成を行えば輝尽性蛍光体の発光輝度をさらに高めることができ、また、焼成物を焼成温度より室温に冷却する際、焼成物を電気炉から取り出して空気中で放冷することによっても所望の輝尽性蛍光体を得ることができるが、焼成時と同じ、弱還元性雰囲気または中性雰囲気のままで冷却してもよい。
【0044】
また、焼成物を電気炉内で加熱部より冷却部へ移動させて、弱還元性雰囲気、中性雰囲気または弱酸化性雰囲気で急冷することにより、得られた輝尽性蛍光体の輝尽による発光輝度をより一層高めることができ好ましい。
【0045】
また、本発明の輝尽性蛍光体層は気相堆積法によって形成される。
【0046】
輝尽性蛍光体の気相堆積法としては、蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、その他を用いることができるが、本発明では特に蒸着法が好ましい。
【0047】
以下、本発明に好適な蒸着法について説明する。なお、ここでは図1に示す蒸着装置を使用して支持体に輝尽性蛍光体を蒸着するので、蒸着装置とともに説明する。
【0048】
図1に示すように、蒸着装置1は、真空容器2と、真空容器2内に設けられて支持体11に蒸気を蒸着させる蒸発源3と、支持体11を保持する支持体ホルダ4と、該支持体ホルダ4を蒸発源3に対して回転させることによって蒸発源3からの蒸気を蒸着させる支持体回転機構5と、真空容器2内の排気及び大気の導入を行う真空ポンプ6等を備えている。
【0049】
蒸発源3は、輝尽性蛍光体を収容して抵抗加熱法で加熱するため、ヒータを巻いたアルミナ製のルツボから構成してもよいし、ボートや高融点金属からなるヒータから構成してもよい。また、輝尽性蛍光体を加熱する方法は、抵抗加熱法以外に電子ビームによる加熱や、高周波誘導による加熱等の方法でもよいが、本発明では、比較的簡単な構成で取り扱いが容易、安価、かつ、非常に多くの物質に適用可能である点から抵抗加熱法が好ましい。また、蒸発源3は分子源エピタキシャル法による分子線源でもよい。
【0050】
支持体回転機構5は、例えば、支持体ホルダを支持するとともに支持体ホルダ4を回転させる回転軸5aと、真空容器2外に配置されて回転軸5aの駆動源となるモータ(図示しない)等から構成されている。
【0051】
また、支持体ホルダ4には、支持体11を加熱する加熱ヒータ(図示しない)を備えることが好ましい。支持体11を加熱することによって、支持体11表面の吸着物を離脱・除去し、支持体11表面と輝尽性蛍光体との間に不純物層の発生を防いだり、密着性の強化や輝尽性蛍光体層の膜質調整を行うことができる。さらに、支持体11と蒸発源3との間に、蒸発源3から支持体11に至る空間を遮断するシャッタ7を備えている。シャッタによって輝尽性蛍光体の表面に付着した目的物以外の物質が蒸着の初期段階で蒸発し、支持体に付着するのを防ぐことができる。
【0052】
このように構成された蒸着装置1を使用して、支持体11に輝尽性蛍光体層を形成するには、まず、支持体ホルダ4に支持体11を取り付ける。
【0053】
次いで、真空容器2内を真空排気する。その後、支持体回転機構5により支持体ホルダ4を蒸発源3に対して回転させ、蒸着可能な真空度に真空容器2が達したら、加熱された蒸発源3から輝尽性蛍光体を蒸発させて、支持体11表面に輝尽性蛍光体を所望の厚さに成長させる。この場合に、支持体11と蒸発源3との間隔は100〜1500mmに設置するのが好ましい。
【0054】
また、前記蒸着工程では複数回に分けて輝尽性蛍光体層を形成することも可能である。さらに、前記蒸着工程では複数の抵抗加熱器あるいはエレクトロンビームを用いて共蒸着し、支持体上で目的とする輝尽性蛍光体を合成すると同時に輝尽性蛍光体層を形成することも可能である。
【0055】
また、蒸着法においては、蒸着時、必要に応じて被蒸着体(支持体、保護層または中間層)を冷却あるいは加熱してもよい。
【0056】
さらに、蒸着終了後、輝尽性蛍光体層を加熱処理してもよい。また、蒸着法においては必要に応じてO2、H2等のガスを導入して蒸着する反応性蒸着を行ってもよい。
【0057】
形成する輝尽性蛍光体層の膜厚は、放射線画像変換パネルの使用目的によって、また輝尽性蛍光体の種類により異なるが、本発明の効果を得る観点から50〜2000μmであり、好ましくは50〜1000μmであり、さらに好ましくは100〜800μmである。
【0058】
上記の気相堆積法による輝尽性蛍光体層の形成にあたり、輝尽性蛍光体層が形成される支持体の温度は、室温〜300℃に設定することが好ましく、さらに好ましくは50〜200℃である。
【0059】
〔保護層〕
以上のようにして輝尽性蛍光体層を形成した後、必要に応じて輝尽性蛍光体層の支持体とは反対の側に保護層を設けることにより放射線画像変換パネルが得られる。保護層は、保護層用塗布液を輝尽性蛍光体層の表面に直接塗布して形成もよいし、また、予め別途形成した保護層を輝尽性蛍光体層に接着してもよい。
【0060】
保護層の材料としては、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、ポリ四フッ化エチレン、ポリ三フッ化−塩化エチレン、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体等の通常の保護層用材料が用いられる。他に透明なガラス基板を保護層として用いることもできる。
【0061】
また、この保護層は蒸着法、スパッタリング法等により、SiC、SiO2、SiN、Al23等の無機物質を積層して形成してもよい。これらの保護層の層厚は0.1〜2000μmが好ましい。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、特に断りない限り、実施例中の「%」は「質量%」を表す。
【0063】
実施例
〔放射線画像変換パネルの作製〕
アルミニウムからなる支持体の片面に輝尽性蛍光体(CsBr:0.0005Eu)を、図1に示す蒸着装置1を使用し、下記のようにして蒸着させ輝尽性蛍光体層を形成した。
【0064】
まず、上記蛍光体原料を蒸着材料として、表1に記載のように、ボート容量の異なる抵抗加熱ボート(ルツボ)に、蒸着材料の充填率を変えて充填し、回転する支持体ホルダ4に支持体11を取り付け、支持体11と蒸発源3との間隔を800mmに調節した。続いて蒸着装置1内を一旦排気し、Arガスを導入して0.1Paに真空度を調整した後、10rpmの速度で支持体11を回転しながら支持体11の温度を100℃に保持した。次いで、抵抗加熱ルツボを加熱して所定時間が経過したところでシャッターを開けて輝尽性蛍光体を蒸着し、輝尽性蛍光体層の膜厚が500μmとなったところでシャッターを閉じて蒸着を終了させた。
【0065】
次いで、乾燥空気内で輝尽性蛍光体層を保護層袋に入れ、輝尽性蛍光体層が密封された構造の放射線画像変換パネルを得た。
【0066】
〔放射線画像変換パネルの評価〕
得られた放射線画像変換パネルについて下記のような評価を行った。
【0067】
(鮮鋭性)
放射線画像変換パネルにCTFチャートを貼付けた後、管電圧80kVP−PのX線を10mR(管球からパネルまでの距離:1.5m)照射した後、半導体レーザ光(発振波長:780nm、ビーム径:100μm)で走査して輝尽励起し、CTFチャート像を輝尽性蛍光体層から放射される輝尽発光として読取り、光検出器(光電子増倍管)で光電変換して画像信号を得た。この信号値により、画像の変調伝達関数(MTF)を調べ、放射線画像変換パネル1の値を100として相対値で示した。なお、MTFは、空間周波数が1サイクル/mmの時の値である。
【0068】
【表1】

【0069】
表より、本発明の放射線画像変換パネルは比較例に比べ鮮鋭性が優れていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】蒸着装置の概略構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0071】
1 蒸着装置
2 真空容器
3 蒸発源
5 支持体回転機構
7 シャッター
11 支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輝尽性蛍光体または輝尽性蛍光体原料を含む蒸発源を蒸着装置内で加熱して発生する物質を支持体上に蒸着させることにより輝尽性蛍光体層を形成する放射線画像変換パネルの製造方法において、蒸発源ボート容積に対する蒸発源の充填率が40〜100%であることを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。
【請求項2】
前記充填率が50〜90%であることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【請求項3】
前記輝尽性蛍光体または輝尽性蛍光体原料が下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
一般式(1)
1X・aM2X′2・bM3X″3:eA
(式中、M1はLi、Na、K、Rb及びCsからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属であり、M2はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Cu及びNiの各原子から選ばれる少なくとも1種の2価金属であり、M3はY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInの各原子から選ばれる少なくとも1種の3価金属であり、X、X′及びX″はF、Cl、Br及びIの各原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲンであり、AはEu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgの各原子から選ばれる少なくとも1種の金属であり、また、a、b、eはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<e<1.0の範囲の数値を表す。)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法に用いられることを特徴とする放射線画像変換パネルの製造装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法で得られることを特徴とする放射線画像変換パネル。

【図1】
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【公開番号】特開2006−152199(P2006−152199A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−348299(P2004−348299)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】