説明

放射線画像撮影装置、放射線画像撮影システム、放射線画像撮影装置の制御プログラム、及び放射線画像撮影装置の制御方法

【課題】外乱要因等に起因してノイズが発生した場合でも、精度よく放射線の照射開始を検知することができる、放射線画像撮影装置、放射線画像撮影システム、放射線画像撮影装置の制御プログラム、及び放射線画像撮影装置の制御方法を提供する。
【解決手段】放射線が照射されると、当該放射線に応じて発生した電荷の電荷蓄積期間に放射線検知用の画素20Bから出力された電気信号(電荷情報)を所定の検知期間の間、信号検出回路105で検出し、制御部106が電気信号(電荷情報)の時間変化が、ノイズとして予め定められた特徴を有しているか否かを判断する。有していないと判断した場合は、放射線の照射開始が適切に検知されたため、そのまま電荷蓄積期間を継続し、放射線画像の撮影を行う。一方、有している、すなわち、ノイズであると判断した場合は、放射線の照射開始の誤検知であると判断し、電荷蓄積期間を中断(退避)し、放射線検知期間に遷移する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影装置、放射線画像撮影システム、放射線画像撮影装置の制御プログラム、及び放射線画像撮影装置の制御方法に係り、特に医療用の放射線画像を撮影する放射線画像撮影装置、放射線画像撮影システム、放射線画像撮影装置の制御プログラム、及び放射線画像撮影装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療診断を目的とした放射線撮影を行う放射線画像撮影装置が知られている。当該放射線画像撮影装置は、放射線照射装置から照射され、被検体を透過した放射線を検出して放射線画像を撮影する。当該放射線画像撮影装置は、照射された放射線に応じて発生した電荷を収集して読み出すことにより放射線画像の撮影を行う。
【0003】
このような放射線画像撮影装置として、放射線または、放射線が変換された光が照射されることにより電荷を発生する光電変換素子等によるセンサ部と、センサ部で発生した電荷を読み出すスイッチング素子と、を備えると共に、前記スイッチング素子から読み出された電荷に基づいて、放射線の照射が開始(放射線画像の撮影が開始)されたことを検知する検知部を備えたものが知られている。
【0004】
このような放射線画像の撮影開始を検知する検知部を備えた放射線画像撮影装置では、例えば、衝撃や電磁波等の外乱に起因したノイズによりセンサ部で発生した電荷により、放射線の照射が開始されたと検知部が誤検知してしまう場合がある。
【0005】
そのため、このような誤検知を防止する技術がある。例えば、特許文献1には、バイアス線を流れる電流に値に基づいて放射線の照射開始を検知する放射線画像撮影装置において、バイアス線を流れる電流に対して重畳されるスイッチング素子に印加するオン電圧やオフ電圧を切り替える際のノイズによる電圧値の立ち上がりを放射線の照射開始として誤検知されてしまうことを防止する技術が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、X線撮像装置において、ノイズによる誤動作を防止しつつ、X線照射が、AC電源電圧の半波整流波形に応じた周期的なものであっても高周波インバータ方式で得られる完全直流電圧の電圧波形に応じた定常的なものであっても、撮像開始タイミングが適正に検知できるようにする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−268171号公報
【特許文献2】特開2006−246961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した技術では、放射線の照射が開始されたと検知部が誤検知したと判断するまでに時間を要する場合があり、この間に、放射線画像の撮影のために放射線が照射されても検知できない場合がある。そのため、外乱要因等に起因してノイズが発生した場合でも、時間を要さずに、より精度よく、放射線の照射開始を検知することが望まれている。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するために成されたものであり、外乱要因等に起因してノイズが発生した場合でも、精度よく放射線の照射開始を検知することができる、放射線画像撮影装置、放射線画像撮影システム、放射線画像撮影装置の制御プログラム、及び放射線画像撮影装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の放射線画像撮影装置は、照射された放射線に応じた電荷を発生するセンサ部、及び制御信号に基づいて前記センサ部から前記電荷を読み出して前記電荷に応じた電気信号を信号線に出力するスイッチング素子を各々備えた複数の画素と、前記複数の画素のうちの前記スイッチング素子が短絡した画素であり、照射された放射線により発生した電荷に応じた電気信号を出力する放射線検知素子と、検知期間中に前記放射線検知素子から出力される電気信号に基づいて、放射線の照射開始を検知する検知手段と、出力された電荷情報の取り出しを制御する前記制御信号を出力する制御信号出力手段と、前記検知手段が放射線の照射開始を検知した後の放射線画像の撮影期間に、前記放射線検知素子から出力された電気信号を検出し、検出した電気信号の時間変化に基づいて、前記検知手段が放射線の照射開始を誤検知したか否かを判断する判断手段と、を備える。
【0011】
検知手段が、検知期間中に前記放射線検知素子から出力される電気信号に基づいて、放射線の照射開始を検知するが、外乱要因等に起因してノイズ(電気信号)が発生した場合、放射線の照射開始を誤検知する場合がある。
【0012】
本発明によれば、検知手段が放射線の照射開始を検知した後の放射線画像の撮影期間に、放射線検知素子から出力された電気信号を検出し、検出した電気信号の時間変化に基づいて、検知手段が放射線の照射開始を誤検知したか否かを判断する判断手段を備える。
【0013】
外乱に起因するノイズである電気信号は、時間変化が通常の放射線画像の撮影の際の電気信号と異なる特徴を有している。判断手段が上述のように検出した電気信号の時間変化に基づいて、放射線の照射開始を誤検知したか否かを判断するため、外乱要因等に起因してノイズが発生した場合でも、精度よく放射線の照射開始を検知することができる。
【0014】
また、本発明の放射線画像撮影装置の前記判断手段は、検出した前記電気信号に応じた電荷の極性及び電荷量の時間変化を表す波形の振幅の少なくとも一方の時間変化に基づいて、誤検知したかを判断することができる。
【0015】
また、本発明の放射線画像撮影装置の前記判断手段は、所定の前記信号線毎に予め定められた基準により、誤検知であるか否かを判断することができる。
【0016】
また、本発明の放射線画像撮影装置の前記撮影期間は、前記画素からの電荷の取り出しを禁止する制御信号を出力し、前記撮影期間終了後に、電荷の取り出しを行う前記制御信号を出力するように前記制御信号出力手段を制御する制御手段と、前記検知手段により放射線の照射開始が検知された場合、前記検知期間から前記撮影期間に遷移し、かつ遷移後に前記判断手段が誤検知と判断した場合は、前記撮影期間から前記検知期間に遷移する遷移手段と、を備えることができる。
【0017】
また、本発明の放射線画像撮影装置の前記制御手段は、前記判断手段が誤検知と判断した場合に前記遷移手段により前記撮影期間から前記検知期間に遷移された場合は、電荷の取り出しを行う前記制御信号を出力して、前記複数の画素から電荷を取り出すリセット動作を行うように前記制御信号出力手段を制御する。
【0018】
また、本発明の放射線画像撮影装置は、前記撮影期間に前記複数の画素から読み出された前記電気信号を出力し、かつ前記判断手段が誤検知と判断した場合は、前記複数の画素から取り出された前記電気信号を出力せずに読み捨てる出力手段を備えた。
【0019】
本発明の放射線画像撮影システムは、放射線を照射する照射装置と、前記照射装置から照射された放射線に応じた放射線画像を撮影する、前記請求項1から前記請求項7のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置と、を備える。
【0020】
本発明の放射線画像撮影装置は、放射線を照射する照射装置と、前記照射装置から照射された放射線に応じた放射線画像を撮影する、前記請求項4に記載の放射線画像撮影装置と、前記放射線画像撮影装置の前記リセット動作中は、前記照射装置による放射線の照射を禁止するよう制御する制御装置と、を備える。
【0021】
本発明の放射線画像撮影装置の制御プログラムは、照射された放射線に応じた電荷を発生するセンサ部、及び制御信号に基づいて前記センサ部から前記電荷を読み出して前記電荷に応じた電気信号を信号線に出力するスイッチング素子を各々備えた複数の画素と、前記複数の画素のうちの前記スイッチング素子が短絡した画素であり、照射された放射線により発生した電荷に応じた電気信号を出力する放射線検知素子と、検知期間中に前記放射線検知素子から出力される電気信号に基づいて、放射線の照射開始を検知する検知手段と、出力された電荷情報の取り出しを制御する前記制御信号を出力する制御信号出力手段と、前記検知手段が放射線の照射開始を検知した後の放射線画像の撮影期間に、前記放射線検知素子から出力された電気信号を検出し、検出した電気信号の時間変化に基づいて、前記検知手段が放射線の照射開始を誤検知したか否かを判断する判断手段と、を備えた放射線画像撮影装置の制御処理をコンピュータに実行させるための放射線画像撮影装置の制御プログラムであって、前記検知手段が放射線の照射開始を検知した後の放射線画像の撮影期間に、前記放射線検知素子から出力された電気信号を検出するステップと、検出した電気信号の時間変化に基づいて、前記検知手段が放射線の照射開始を誤検知したか否かを判断するステップと、を備えた処理をコンピュータに実行させるためのものである。
【0022】
本発明の放射線画像撮影装置の制御方法は、照射された放射線に応じた電荷を発生するセンサ部、及び制御信号に基づいて前記センサ部から前記電荷を読み出して前記電荷に応じた電気信号を信号線に出力するスイッチング素子を各々備えた複数の画素と、前記複数の画素のうちの前記スイッチング素子が短絡した画素であり、照射された放射線により発生した電荷に応じた電気信号を出力する放射線検知素子と、検知期間中に前記放射線検知素子から出力される電気信号に基づいて、放射線の照射開始を検知する検知手段と、出力された電荷情報の取り出しを制御する前記制御信号を出力する制御信号出力手段と、前記検知手段が放射線の照射開始を検知した後の放射線画像の撮影期間に、前記放射線検知素子から出力された電気信号を検出し、検出した電気信号の時間変化に基づいて、前記検知手段が放射線の照射開始を誤検知したか否かを判断する判断手段と、を備えた放射線画像撮影装置の制御方法であって、前記検知手段が放射線の照射開始を検知した後の放射線画像の撮影期間に、前記放射線検知素子から出力された電気信号を検出する工程と、検出した電気信号の時間変化に基づいて、前記検知手段が放射線の照射開始を誤検知したか否かを判断する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0023】
上記特許文献1に記載の従来の技術が対象としているノイズは、一括リセットに基づいて、バイアス線を流れる電流に対して重畳されるスイッチング素子に印加するオン電圧やオフ電圧を切り替える際のノイズである。当該ノイズは、予想できる特定の周期を持っている。そのため、当該ノイズを除去するには、バンドパスフィルタ(BPF)やローパスフィルタ(LPF)を設け、バイアス線を流れる電流をBPFやLPFを介して出力するように構成すれば十分である。しかしながら、振動等、の外乱要因等に起因するノイズは、突発的、かつ、ノイズの現れ方が不定であるため、特許文献1に記載の技術のように、BPFやLPFでは、十分に除去することができない懸念がある。そこで本発明は、このような外乱要因等に起因するノイズに着目した。
【0024】
以上説明したように、外乱要因等に起因してノイズが発生した場合でも、精度よく放射線の照射開始を検知することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施の形態に係る放射線画像撮影システムの一例の概略構成を示す概略構成図である。
【図2】本実施の形態に係る放射線画像撮影装置の全体構成の一例を示す構成図である。
【図3】本実施の形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す平面図である。
【図4】本実施の形態に係る放射線検出器の一例の線断面図である。
【図5】本実施の形態に係る放射線検出器の一例の線断面図である。
【図6】本実施の形態に係る放射線画像撮影装置の信号検出回路の概略構成の一例を示す概略構成図である。
【図7】本実施の形態に係る放射線画像撮影装置における放射線が照射された(放射線画像の撮影)の動作の流れの一例を示したタイムチャートである。
【図8】本実施の形態に係る放射線画像撮影装置における外乱に起因したノイズにより電荷が発生した場合の動作の流れの一例を示したタイムチャートである。
【図9】本実施の形態に係る放射線画像を撮影する際の動作の流れの一例を示したフローチャートである。
【図10】本実施の形態に係る放射線検出器に放射線が照射された場合の電気信号の時間変化を示すグラフであり、(A)は、電圧信号Diの時間変化を示し、(B)は、一階微分値Di1の時間変化を示し、及び(C)は、二階微分値Di2の時間変化を示している。
【図11】本実施の形態に係る放射線検出器にノイズが発生した場合の電気信号の時間変化を示すグラフであり、(A)は、電圧信号Diの時間変化を示し、(B)は、一階微分値Di1の時間変化を示し、及び(C)は、二階微分値Di2の時間変化を示している。
【図12】その他の形態に係る放射線検知素子の構成の一例を示す平面図である。
【図13】その他の形態に係る放射線検知素子の構成の一例を示す平面図である。
【図14】その他の形態に係る放射線検知素子の構成の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、各図面を参照して本実施の形態の一例について説明する。
【0027】
まず、本実施の形態の放射線画像撮影装置を用いた放射線画像撮影システムの概略構成について説明する。図1は、本実施の形態の放射線画像撮影システムの一例の概略構成図である。
【0028】
放射線画像撮影システム200は、放射線(例えばエックス線(X線)等)を被検体206に照射する放射線照射装置204と、放射線照射装置204から照射され、被検体206を透過した放射線を検出する放射線検出器10を備えた放射線画像撮影装置100と、放射線画像の撮影を指示すると共に、放射線画像撮影装置100から放射画像を取得する制御装置202と、を備えて構成されている。制御装置202の制御に基づいたタイミングで、放射線照射装置204から照射され撮影位置に位置している被検体206を透過することで画像情報を担持した放射線は放射線画像撮影装置100に照射される。
【0029】
次に、本実施の形態の放射線画像撮影装置100の概略構成について説明する。本実施の形態では、X線等の放射線を一旦光に変換し、変換した光を電荷に変換する間接変換方式の放射線検出器10に本発明を適用した場合について説明する。本実施の形態では、放射線画像撮影装置100は、間接変換方式の放射線検出器10を備えて構成されている。なお、図2では、放射線を光に変換するシンチレータは省略している。
【0030】
放射線検出器10には、光を受けて電荷を発生し、発生した電荷を蓄積するセンサ部103と、センサ部103に蓄積された電荷を読み出すためのスイッチング素子であるTFTスイッチ4と、を含んで構成される画素20が複数、マトリックス状に配置されている。本実施の形態では、シンチレータによって変換された光が照射されることにより、センサ部103が、電荷が発生する。
【0031】
画素20は、一方向(図2の走査配線方向)及び当該走査配線方向に対する交差方向(図2の信号配線方向)にマトリクス状に複数配置されている。図2では、画素20の配列を簡略化して示しているが、例えば、画素20は走査配線方向及び信号配線方向に1024個×1024個配置されている。
【0032】
本実施の形態では、複数の画素20のうち、放射線画像撮影用の画素20Aと放射線検知用の画素20Bが予め定められている。図1では、放射線検知用の画素20Bを破線で囲んでいる。放射線画像撮影用の画素20Aは、放射線を検出して放射線が示す画像を生成するために用いられ、放射線検知用の画素20Bは、放射線を検知するために用いられる画素であり、電荷の蓄積期間であっても、電荷を出力する画素である(詳細後述)。
【0033】
また、放射線検出器10には、基板1(図3参照)上に、TFTスイッチ4をON/OFFするための複数の走査配線101と、上記センサ部103に蓄積された電荷を読み出すための複数の信号配線3と、が互いに交差して設けられている。本実施の形態では、一方向の各画素列に信号配線3が1本ずつ設けられ、交差方向の各画素列に走査配線101が1本ずつ設けられており、例えば、画素20が走査配線方向及び信号配線方向に1024個×1024個配置されている場合、信号配線3及び走査配線101は1024本ずつ設けられている。
【0034】
さらに、放射線検出器10には、各信号配線3と並列に共通電極配線25が設けられている。共通電極配線25は、一端及び他端が並列に接続されており、一端が所定のバイアス電圧を供給する電源110に接続されている。センサ部103は共通電極配線25に接続されており、共通電極配線25を介してバイアス電圧が印加されている。
【0035】
走査配線101には、各TFTスイッチ4をスイッチングするための制御信号が流れる。このように制御信号が各走査配線101に流れることによって、各TFTスイッチ4がスイッチングされる。
【0036】
信号配線3には、各画素20のTFTスイッチ4のスイッチング状態に応じて、各画素20に蓄積された電荷に応じた電気信号が流れる。より具体的には、各信号配線3には、当該信号配線3に接続された画素20の何れかのTFTスイッチ4がONされることにより蓄積された電荷量に応じた電気信号が流れる。
【0037】
各信号配線3には、各信号配線3に流れ出した電気信号を検出する信号検出回路105が接続されている。また、各走査配線101には、各走査配線101にTFTスイッチ4をON/OFFするための制御信号を出力するスキャン信号制御回路104が接続されている。図2では、信号検出回路105及びスキャン信号制御回路104を1つに簡略化して示しているが、例えば、信号検出回路105及びスキャン信号制御回路104を複数設けて所定本(例えば、256本)毎に信号配線3又は走査配線101を接続する。例えば、信号配線3及び走査配線101が1024本ずつ設けられている場合、スキャン信号制御回路104を4個設けて256本ずつ走査配線101を接続し、信号検出回路105も4個設けて256本ずつ信号配線3を接続する。
【0038】
信号検出回路105は、各信号配線3毎に、入力される電気信号を増幅する増幅回路(図6参照)を内蔵している。信号検出回路105では、各信号配線3より入力される電気信号を増幅回路により増幅し、ADC(アナログ・デジタル変換器)によりデジタル信号へ変換する(詳細後述)。
【0039】
この信号検出回路105及びスキャン信号制御回路104には、信号検出回路105において変換されたデジタル信号に対してノイズ除去などの所定の処理を施すとともに、信号検出回路105に対して信号検出のタイミングを示す制御信号を出力し、スキャン信号制御回路104に対してスキャン信号の出力のタイミングを示す制御信号を出力する制御部106が接続されている。
【0040】
本実施の形態の制御部106は、マイクロコンピュータによって構成されており、CPU(中央処理装置)、ROMおよびRAM、フラッシュメモリ等からなる不揮発性の記憶部を備えている。制御部106は、ROMに記憶されたプログラムをCPUで実行することにより、放射線画像の撮影のための制御を行う。また、制御部106は、上記所定の処理が施された画像データに対して、各放射線検知用の画素20Bの画像データを補間する処理(補間処理)を行って、照射された放射線が示す画像を生成する。すなわち、制御部106は、各放射線検知用の画素20Bの画像データを、上記所定の処理が施された画像データに基づいて補間することで、照射された放射線が示す画像を生成する。
【0041】
図3には、本実施形態に係る間接変換方式の放射線検出器10の構造を示す平面図が示されており、図4には、図3の放射線画像撮影用の画素20AのA−A線断面図が示されており、図5には、図3の放射線検知用の画素20BのB−B線断面図が示されている。
【0042】
図4に示すように、放射線検出器10の画素20Aは、無アルカリガラス等からなる絶縁性の基板1上に、走査配線101(図3参照)、ゲート電極2が形成されており、走査配線101とゲート電極2は接続されている(図3参照)。この走査配線101、ゲート電極2が形成された配線層(以下、この配線層を「第1信号配線層」ともいう)は、Al若しくはCu、又はAl若しくはCuを主体とした積層膜を用いて形成されているが、これらに限定されるものではない。
【0043】
この第1信号配線層上には、一面に絶縁膜15が形成されており、ゲート電極2上に位置する部位がTFTスイッチ4におけるゲート絶縁膜として作用する。この絶縁膜15は、例えば、SiNX 等からなっており、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)成膜により形成される。
【0044】
絶縁膜15上のゲート電極2上には、半導体活性層8が島状に形成されている。この半導体活性層8は、TFTスイッチ4のチャネル部であり、例えば、アモルファスシリコン膜からなる。
【0045】
これらの上層には、ソース電極9、及びドレイン電極13が形成されている。このソース電極9及びドレイン電極13が形成された配線層には、ソース電極9、ドレイン電極13とともに、信号配線3が形成されている。ソース電極9は信号配線3に接続されている(図3参照。)。ソース電極9、ドレイン電極13、及び信号配線3が形成された配線層(以下、この配線層を「第2信号配線層」ともいう)は、Al若しくはCu、又はAl若しくはCuを主体とした積層膜が用いて形成されるが、これらに限定されるものではない。当該ソース電極9及びドレイン電極13と半導体活性層8との間には不純物添加アモルファスシリコン等による不純物添加半導体層(図示省略)が形成されている。これらによりスイッチング用のTFTスイッチ4が構成される。なお、TFTスイッチ4は後述する下部電極11により収集、蓄積される電荷の極性によってソース電極9とドレイン電極13が逆となる。
【0046】
これら第2信号配線層を覆い、基板1上の画素20が設けられた領域のほぼ全面(ほぼ全領域)には、TFTスイッチ4や信号配線3を保護するために、TFT保護膜層30が形成されている。このTFT保護膜層30は、例えば、SiNX 等からなっており、例えば、CVD成膜により形成される。
【0047】
このTFT保護膜層30上には、塗布型の層間絶縁膜12が形成されている。この層間絶縁膜12は、低誘電率(比誘電率εr=2〜4)の感光性の有機材料(例えば、ポジ型感光性アクリル系樹脂:メタクリル酸とグリシジルメタクリレートとの共重合体からなるベースポリマーに、ナフトキノンジアジド系ポジ型感光剤を混合した材料など)により1〜4μmの膜厚で形成されている。
【0048】
本実施の形態に係る放射線検出器10では、この層間絶縁膜12によって層間絶縁膜12上層と下層に配置される金属間の容量を低く抑えている。また、一般的にこのような材料は平坦化膜としての機能も有しており、下層の段差が平坦化される効果も有する。本実施の形態に係る放射線検出器10では、この層間絶縁膜12及びTFT保護膜層30のドレイン電極13と対向する位置にコンタクトホール17が形成されている。
【0049】
層間絶縁膜12上には、コンタクトホール17を埋めつつ、画素領域を覆うようにセンサ部103の下部電極11が形成されており、この下部電極11は、TFTスイッチ4のドレイン電極13と接続されている。この下部電極11は、後述する半導体層21が1μm前後と厚い場合には導電性があれば材料に制限がほとんどない。このため、Al系材料、ITOなど導電性の金属を用いて形成すれば問題ない。
【0050】
一方、半導体層21の膜厚が薄い場合(0.2〜0.5μm前後)、半導体層21で光が吸収が十分でないため、TFTスイッチ4への光照射によるリーク電流の増加を防ぐため、遮光性メタルを主体とする合金、若しくは積層膜とすることが好ましい。
【0051】
下部電極11上には、フォトダイオードとして機能する半導体層21が形成されている。本実施の形態では、半導体層21として、n+層、i層、p+層(n+アモルファスシリコン、アモルファスシリコン、p+アモルファスシリコン)を積層したPIN構造のフォトダイオードを採用しており、下層からn+層21A、i層21B、p+層21Cを順に積層して形成する。i層21Bは、光が照射されることにより電荷(一対の自由電子と自由正孔)が発生する。n+層21A及びp+層21Cは、コンタクト層として機能し、下部電極11及び後述する上部電極22とi層21Bをと電気的に接続する。
【0052】
各半導体層21上には、それぞれ個別に上部電極22が形成されている。この上部電極22には、例えば、ITOやIZO(酸化亜鉛インジウム)などの光透過性の高い材料を用いている。本実施の形態に係る放射線検出器10では、上部電極22や半導体層21、下部電極11を含んでセンサ部103が構成されている。
【0053】
層間絶縁膜12、半導体層21及び上部電極22上には、上部電極22に対応する一部で開口27Aを持ち、各半導体層21を覆うように、塗布型の層間絶縁膜23が形成されている。
【0054】
この層間絶縁膜23上には、共通電極配線25がAl若しくはCu、又はAl若しくはCuを主体とした合金あるいは積層膜で形成されている。共通電極配線25は、開口27A付近にコンタクトパッド27が形成され、層間絶縁膜23の開口27Aを介して上部電極22と電気的に接続される。
【0055】
一方、図5に示すように、放射線検出器10の放射線検知用の画素20Bでは、ソース電極9とドレイン電極13とが接触するようにTFTスイッチ4が形成されている。すなわち、画素20Bでは、TFTスイッチ4のソースとドレインが短絡している。これにより、画素20Bでは、下部電極11に収集された電荷がTFTスイッチ4のスイッチング状態にかかわらず信号配線3に流れ出す。
【0056】
このように形成された放射線検出器10には、必要に応じてさらに光吸収性の低い絶縁性の材料により保護膜が形成されて、その表面に光吸収性の低い接着樹脂を用いてGOS等からなるシンチレータが貼り付けられる。
【0057】
次に、本実施の形態の信号検出回路105の概略構成について説明する。図6は、本実施の形態の信号検出回路105の一例の概略構成図である。本実施の形態の信号検出回路105は、増幅回路50、及びADC(アナログ・デジタル変換器)54を備えて構成されている。なお、図6では、図示を省略したが増幅回路50は、信号配線3毎に設けられている。すなわち、信号検出回路105は、放射線検出器10の信号配線3の数と同じ数の、複数の増幅回路50を備えて構成されている。
【0058】
増幅回路50は、チャージアンプ回路で構成されており、オペアンプ等のアンプ52と、アンプ52に並列に接続されたコンデンサCと、アンプ52に並列に接続された電荷リセット用のスイッチSW1と、を備えて構成されている。
【0059】
増幅回路50では、電荷リセット用のスイッチSW1がオフの状態で画素20のTFTスイッチ4により電荷(電気信号)が読み出され、コンデンサCにTFTスイッチ4により読み出された電荷が蓄積され、蓄積される電荷量に応じてアンプ52から出力される電圧値が増加するようになっている。
【0060】
また、制御部106は、電荷リセット用スイッチSW1に電荷リセット信号を印加して電荷リセット用のスイッチSW1のオン/オフを制御するようになっている。なお、電荷リセット用のスイッチSW1がオン状態とされると、アンプ52の入力側と出力側とが短絡され、コンデンサCの電荷が放電される。
【0061】
ADC54は、S/H(サンプルホールド)スイッチSWがオン状態において、増幅回路50から入力されたアナログ信号である電気信号をデジタル信号に変換する機能を有するものである。ADC54は、デジタル信号に変換した電気信号を制御部106に順次出力する。
【0062】
なお、本実施の形態のADC54には、信号検出回路105に備えられた全ての増幅回路50から出力された電気信号が入力される。すなわち、本実施の形態の信号検出回路105は、増幅回路50(信号配線3)の数にかかわらず、1つのADC54を備えている。
【0063】
本実施の形態では、放射線検知用の画素20Bが接続された信号配線3(図2の場合、D2、D3の少なくとも一方、例えば、D2)の電気信号(電荷情報)を信号検出回路105の増幅回路50で検出し、制御部106が、信号検出回路105により変換されたデジタル信号の値を予め定めた放射線検知用の閾値と比較し、閾値以上となった否かにより放射線が照射されたか否かの検知を行うようにしており、制御装置202から制御信号を必要としない、いわゆる同期フリーとして構成している。なお、制御部106による放射線が照射されたか否かの検知は、放射線検知用の閾値と比較することに限らず、例えば、検知回数等、予め設定した条件に基づいて検知するようにしてもよい。
【0064】
なお、本実施の形態で電気信号の「検出」とは、電気信号をサンプリングすることを示している。
【0065】
次に、図7〜図11を参照して、上記構成の放射線画像撮影装置100による放射線画像を撮影する際の動作の流れについて、放射線の照射開始の検知動作を中心に、説明する。図7は、放射線が照射された(放射線画像の撮影)場合の動作の流れの一例を示したタイムチャートである。図8は、外乱に起因したノイズにより電荷が発生した場合の動作の流れの一例を示したタイムチャートである。また、図9は、放射線画像を撮影する際の動作の流れの一例を示したフローチャートである。
【0066】
放射線画像撮影装置100は、放射線の照射開始を検知して放射線検出器10の各画素20で電荷を蓄積し、蓄積した電荷に応じた画像データに基づいた放射線画像を出力することにより放射線画像を撮影する。
【0067】
本実施の形態では、放射線画像の撮影を行う際、放射線画像撮影装置100には、撮影モードへの移行が制御装置202から通知される(図9、ステップS100)。放射線画像撮影装置100は、撮影モードへの移行が通知されると、放射線の検知を行う放射線検知待ち状態に移行(図9、ステップS102)する。放射線を検知すると(図9、ステップS104でY)放射線検出器10で電荷を蓄積する電荷蓄積状態に移行(図9、ステップS106)する。放射線を検知してから所定時間後(図9、ステップS118でY)に、蓄積された電荷の読み出す電荷読出状態に移行(図9、ステップS120)する。電荷の読み出し終了後、続けて放射線画像の撮影を行う場合は、再び待機状態に移行(図9、ステップS122でN)し、行わない場合は本処理を終了する(図9、ステップS122でY)。
【0068】
放射線照射装置204から放射線が照射されると、照射された放射線は、シンチレータに吸収され、可視光に変換される。なお、放射線は、放射線検出器10の表側、裏側の何れから照射されてもかまわない。シンチレータで可視光に変換された光は、各画素20のセンサ部103に照射される。
【0069】
センサ部103では、光が照射されると内部に電荷が発生する。この発生した電荷は下部電極11により収集される。
【0070】
放射線画像撮影用の画素20Aでは、ドレイン電極13とソース電極9が短絡していないため、下部電極11に収集された電荷が蓄積されるが、画素20Bでは、ドレイン電極13とソース電極9が短絡しているため、下部電極11に収集された電荷が信号配線3に流れ出す。
【0071】
本実施の形態の放射線画像撮影装置100では、上述のように、信号検出回路105の増幅回路50で放射線検知用の画素20Bから出力された電気信号(電荷情報)を検出し、制御部106が検出された電気信号(電荷情報)を予め定めた放射線検知用の閾値と比較し、閾値以上となった否かにより放射線の照射開始を検知する(図9、ステップS104)。図7、図8、及び図9に示すように、放射線の照射開始を検知する(図9、ステップS104でY)と、センサ部103が発生した電荷を蓄積する蓄積期間に遷移する(図7及び図8のGk+2、図9、ステップS106参照)。なお、本実施の形態では、当該蓄積期間を、放射線画像撮影用の電荷を蓄積する期間であるため「撮影期間」とも称する。
【0072】
なお、本実施の形態の放射線画像撮影装置100では、センサ部103でリーク電流が発生するため、放射線検知期間では、図7及び図8に示すように走査配線101に順次オン信号を出力し、TFTスイッチ4のゲート電極2に走査配線101を介して順次オン信号を印加して一定期間毎にセンサ部103から電荷を外部に出力させることにより、センサ部103に蓄積された電荷をリセットするリセット動作を行っている。
【0073】
放射線の照射開始を検知して蓄積期間に遷移すると、制御部106は、放射線検出器10に電荷の蓄積を指示する(図9、ステップS108)。放射線検出器10の放射線画像撮影用の画素20Aでは、TFTスイッチ4がオフ状態のままであるため、電荷が蓄積された状態になる。一方、放射線検知用の画素20Bは、TFTスイッチ4が短絡しているため、電荷蓄積期間(TFTスイッチ4がオフ状態)であっても、電荷を信号検出回路105に出力する。電荷蓄積期間及び読出期間に係わらず所定のタイミングでS/HスイッチSW5がオン/オフされる(図7及び図8のCAのサンプリング参照)ため、放射線検知用の画素20Bから出力された電荷の情報は信号検出回路105の増幅回路50及びADC54を介して電気信号(電荷情報)として制御部106に入力される。
【0074】
放射線が照射された(放射線画像の撮影)場合、放射線照射開始を検知してから所定時間経過したことを図示を省略したタイマーに基づいて判断(図9、ステップS118)し、所定時間が経過していない場合(図9、ステップS118でN)は、電荷の蓄積を継続(図9、ステップS120)し、所定時間経過した場合(図9、ステップS118でY)は、蓄積期間を終了して、各画素20Aから蓄積された電荷を読み出す読み出し期間に遷移する(図9、ステップS120)。読み出し期間では、具体的には、TFTスイッチ4のゲート電極2に走査配線101を介して順次オン信号を印加することにより、画素20AのTFTスイッチ4が順次オンされ、各画素20Aに蓄積された電荷量に応じた電気信号を信号配線3に出力させることにより電荷を読み出す。
【0075】
一方、ノイズにより放射線照射開始を誤検知した場合について説明する。衝撃や電磁波等の外乱に起因してセンサ部103で発生したノイズ(電荷)によって、閾値以上の電荷が発生する場合がある(図8のGk+2参照)。外乱に起因して発生したノイズ(電荷)に応じた電気信号(電荷情報)は、通常の放射線画像の撮影の際に放射線が照射されたことにより発生する電荷に応じた電気信号(電荷情報)と異なる特徴を有しており、特に時間変化が異なっている。例えば、図7及び図8を比較するとわかるように、ノイズである場合電荷が逆に流れることにより、電気信号の極性が通常と逆になる場合がある。また、ノイズである場合、図8に示すように、電気信号(電荷情報)の時間変化を表す波形が振幅を有している。
【0076】
放射線検出器10における放射線の照射による電気信号と、ノイズによる電気信号との相違についてさらに詳しく説明する。図10に、本実施の形態に係る放射線検出器10に放射線が照射された場合の電気信号の時間変化のグラフを示す。図10(A)は、電気信号Di、図10(B)は、電気信号Diの一階微分値Di1、及び図10(C)は、電気信号Diの二階微分値Di2の時間変化をそれぞれ示している。また、図11に、本実施の形態に係る放射線検出器10にノイズが発生した場合の電気信号の時間変化のグラフを示す。図11(A)は、電気信号Di、図10(B)は、電気信号Diの一階微分値Di1、及び図10(C)は、電気信号Diの二階微分値Di2の時間変化をそれぞれ示している。
【0077】
図10(A)に示すように、放射線が照射されると電気信号Diは、増加し、時間と共に変化するため、時間tの関数f(t)として表せる。本実施の形態の放射線検出器10では、電気信号Diが、放射線検知用の閾値を超えたか否かにより、放射線の照射開始を検知する。図11(A)において、ノイズにより発生した電気信号Diは、放射線が照射された場合の電気信号Diと同様に時間とともに変化するため、時間tの関数g(t)として表せる。ただし、この場合は周期が一定で振幅が徐々に減少する正弦波、すなわち減衰振動の波形となる。これを一階微分すると、図11(B)に示したように、位相が90°異なる波形g1(t)が得られる。
【0078】
図10(B)に示すように、放射線が照射された場合の関数f(t)の一階微分f1(t)は、放射線の照射により急激に立ち上がり、すぐに一定となる。これに対して、図11(B)のノイズによる波形の関数g(t)の一階微分g1(t)は、位相がずれるのみで、減衰信号の波形は変わらない。真に放射線が照射された場合は、一階微分f1(t)は、極性が常に正極性を示すが、ノイズによる場合は、一階微分g1(t)は、極性が反転し、正極性と負極性を入ったり来たりする振幅を有している。
【0079】
また、図10(C)に示すように、放射線が照射された場合の関数f(t)の二階微分f2(t)は、いわゆるガウス関数のような振る舞いをずる。これに対して、図11(C)のノイズによる波形の関数g(t)の二階微分g2(t)は、一階微分の場合と同様に位相がずれるのみで、減衰信号の波形は変わらない。このように、二階微分の場合も、一階微分と同様に、真に放射線が照射された場合は、二階微分f2(t)は、極性が常に正極性を示すが、ノイズによる場合は、二階微分g2(t)は、極性が反転し、負極性を示し、正極性と負極性を入ったり来たりする振幅を有している。
【0080】
なお、図10及び図11を比較するとわかるように、真に放射線が照射された場合の一階微分f1(t)は、ノイズの場合の一階微分g1(t)に比べて小さい。同様に、真に放射線が照射された場合の二階微分f2(t)は、ノイズの場合の二階微分g2(t)に比べて小さい。そのため、一階微分f1(t)と一階微分g1(t)とを識別するための誤検知判断用閾値(th1、th2)を予め定めておき、電気信号の時間変化が当該誤検知判断用閾値を超えた場合は、誤検知(ノイズ)であると判断するようにしてもよい。また同様に、二階微分f2(t)と二階微分g2(t)とを識別するための誤検知判断用閾値(th3、th4)を予め定めておき、電気信号の時間変化が当該誤検知判断用閾値を超えた場合は、誤検知(ノイズ)であると判断するようにしてもよい。
【0081】
本実施の形態では、蓄積期間に遷移後も、放射線検知用の画素20Bから出力される電気信号(電荷情報)の検出を継続し、所定の検出期間内における電気信号(電荷情報)の時間変化が上述したような、ノイズの特徴を有しているか否かにより、照射線の照射開始を誤検知したか否かを制御部106が判断する(図9、ステップS110)。具体的には上述したように、検出期間内に電気信号の極性が通常と逆になったか否かにより判断することや、検出期間内に出力された電気信号(電荷情報)を微分(例えば、一階微分や二階微分)して、傾きがほぼ一定か徐々に大きくなるとみなせる場合は、適正な放射線の照射開始の検知と判断し、傾きが減少するか否かにより判断することや、誤検知判断用閾値を用いて判断することが挙げられる。なお、より検知精度を高めるためには、複数種類の判断を組み合わせて行うことが好ましい。
【0082】
なお、電気信号を検出する所定の検出期間は、撮影条件や放射線画像撮影装置100により異なるため、予め実験等により、例えば、撮影期間(蓄積期間)に対して何%とするか等を得ておくとよい。
【0083】
また、強い衝撃を外乱として受けた場合、特定の信号配線3に電荷が生じる等、信号配線3により、生じるノイズが異なることがある。このような場合、各信号配線3に生じるノイズを実験等により予め得ておき、各信号配線3に応じて、判断基準を異ならせる。例えば、上述した誤検知判断用閾値(th1〜th4)を、各信号配線3に応じて予め定めておく。なお、この場合、例えば、信号配線3の配置に応じて、放射線検出器10の端部を含む端部領域、及び中央を含む中央領域等のように、複数の信号配線3を含む領域にわけて、各領域毎に判断基準を異ならせるようにしてもよい。このように信号配線3に応じて判断基準を異ならせる場合は、信号配線3毎、または上述した領域毎に、誤検知か否か判断する。誤検知であるとする判断結果が1つ以上、または所定数以上の場合は、誤検知であると決定して、蓄積期間を退避するようにするとよい。
【0084】
本実施の形態の放射線画像撮影装置100では、誤検知であると判断した場合(図9、ステップS110でY)は、図8に示すように、蓄積期間を退避して、電荷情報の蓄積を中止(図9、ステップS112)して、放射線検知期間に遷移する。
【0085】
なお、図8に示した場合では、蓄積期間の終了後すぐに放射線検知期間に遷移しているが、蓄積期間中に蓄積された電荷による放射線照射開始検知の判断ミスをなくすため、放射線検知期間に遷移する前に、上述のリセット動作を行わせて電気信号(電荷情報)を読み捨てる(図9、ステップS114)ようにするとよい。この際、リセット動作を行っている期間は、放射線の不感期間(非検知期間)となってしまうため、当該期間を短縮するために、複数の走査配線101のリセット動作を同時に行うようにすることが好ましい。
【0086】
また、前記リセット動作中は、制御装置202が、放射線照射装置204に放射線の照射を禁止するよう制御するようにしてもよい。
【0087】
以上、説明したように、本実施の形態の放射線画像撮影装置100では、放射線が照射されると、当該放射線に応じて発生した電荷の電荷蓄積期間に放射線検知用の画素20Bから出力された電気信号(電荷情報)を所定の検出期間の間、信号検出回路105で検出し、制御部106が電気信号(電荷情報)の時間変化が、ノイズとして予め定められた特徴を有しているか否かを判断する。有していないと判断した場合は、放射線の照射開始が適切に検知されたため、そのまま電荷蓄積期間を継続し、放射線画像の撮影を行う。一方、有している、すなわち、ノイズであると判断した場合は、放射線の照射開始の誤検知であると判断し、電荷蓄積期間を中断(退避)し、放射線検知期間に遷移する。
【0088】
このように、本実施の形態では、電荷蓄積期間中に放射線検知用の画素20Bから出力された電気信号(電荷情報)に基づいて、放射線の照射開始の検知が外乱等に起因するノイズによる誤検知であるか否かを判断することができるため、外乱要因等に起因してノイズが発生した場合でも、精度よく放射線の照射開始を検知することができる。
【0089】
また、本実施の形態では、誤検知と判断した場合は、電荷蓄積期間を中断(退避)して放射線検知期間に遷移するため、誤検知と判断するまでの時間を短縮することができる。誤検知と判断するまでに時間を要すると、誤検知と判断するまでに放射線が照射されて放射線画像の撮影が行われても、当該放射線を適切に検知できず、放射線画像を出力されないことになり、被検体206に不要な被曝をさせる恐れがあるが、これを防止することができる。
【0090】
また、一般に、放射線の照射開始を検知した後、当該検知が誤検知であるか否かを判断し、誤検知ではないと判断してから蓄積期間に遷移することが考えられる。この場合、放射線の照射開始を検知してから、誤検知ではないとの判断が確定するまでの期間、被検体206がうけた被曝は放射線画像の生成には寄与しない、無効な被曝になってしまう。これに対して、本実施の形態では、上述したように、放射線の照射開始を検知した後、まず、蓄積期間に入ってから、誤検知であるか否かを判断し、誤検知である場合は、即座に、電荷蓄積期間を中断して放射線検知期間に遷移する。これにより、本実施の形態では、誤検知であるか否かの判断が確定してから蓄積期間に遷移する場合に比べて、リアルタイム性による無効被曝削減と、放射線の照射開始の高精度検知との両立を図ることができる。
【0091】
また、ノイズに基づく画像を放射線画像として出力してしまった場合、誤診を招いたり、サービスコールを増加させたりする等のリスクが生じることがあるが、本実施の形態では、ノイズに基づく画像を出力することがないため、このようなリスクを防止することができる。
【0092】
なお、上記各実施の形態では、電荷蓄積期間中に制御部106が画像データを取得するための画素20として、ソースとドレインが短絡されたTFTスイッチ4を備えた放射線検知用の画素20Bを用いる場合について説明したが、電荷蓄積期間中に画像データを取得するための画素20はこれに限らない。例えば、図12に示すように、ドレイン電極13の途中から接続配線82を形成して信号配線3と接続するようにしてもよい。この場合も、TFTスイッチ4のソースとドレインは実質的に短絡していることとなる。上記実施の形態や図12に示すように、TFTスイッチ4のソースとドレインを短絡させる場合、図13に示すようにゲート電極2を走査配線101から離して形成するようにしてもよい。
【0093】
また、例えば、図14に示すように、放射線検知用の画素20Bでは、接続配線82を形成して接続配線82及びコンタクトホール17を介して、センサ部103と信号配線3とを接続し、ドレイン電極13とコンタクトホール17の間を電気的に切断してもよい。
【0094】
また、上記各実施の形態では、放射線検知用の画素20BとしてTFTスイッチ4が短絡された画素を用いる場合について説明したが、TFTスイッチ4が短絡していない画素を放射線検知用の画素20Bとして用いてもよい。この場合、画素20BのTFTスイッチ4の制御は、画素20AのTFTスイッチ4の制御とは独立して制御される。また、この場合の画素20Bは、放射線検出器10の所定の画素20を用いてもよいし、放射線検出器10内の画素20とは異なる画素を設けてもよい。
【0095】
また、本実施の形態の放射線画像撮影装置100の放射線検出器10(図2参照)では、放射線検知用の画素20Bが一部の信号配線3に接続されているがこれに限らず、全ての信号配線3に接続される位置に放射線検知用の画素20Bを設けるようにしてもよく、放射線検知用の画素20Bが設けられている位置は特に限定されない。
【0096】
また、本実施の形態では、変換した光を電荷に変換する間接変換方式の放射線検出器10に本発明を適用した場合について説明したが、これに限定されない。例えば、放射線を吸収して電荷に変換する光電変換層としてアモルファスセレン等の放射線を直接電荷に変換する材料を使用した直接変換方式の放射線検出器に本発明を適用してもよい。
【0097】
その他、本実施の形態で説明した放射線画像撮影装置100、放射線検出器10等の構成、動作等は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることは言うまでもない。
【0098】
また、本実施の形態では、本発明の放射線は、特に限定されるものではなく、X線やγ線等を適用することができる。
【符号の説明】
【0099】
3 信号配線
4 TFTスイッチ
10 放射線検出器
20 画素、20A 放射線画像撮影用の画素、20B 放射線検知用の画素
50 増幅回路
52 アンプ
100 放射線画像撮影装置
103 センサ部
105 信号検出回路
106 制御部
200 放射線画像撮影システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射された放射線に応じた電荷を発生するセンサ部、及び制御信号に基づいて前記センサ部から前記電荷を読み出して前記電荷に応じた電気信号を信号線に出力するスイッチング素子を各々備えた複数の画素と、
前記複数の画素のうちの前記スイッチング素子が短絡した画素であり、照射された放射線により発生した電荷に応じた電気信号を出力する放射線検知素子と、
検知期間中に前記放射線検知素子から出力される電気信号に基づいて、放射線の照射開始を検知する検知手段と、
出力された電荷情報の取り出しを制御する前記制御信号を出力する制御信号出力手段と、
前記検知手段が放射線の照射開始を検知した後の放射線画像の撮影期間に、前記放射線検知素子から出力された電気信号を検出し、検出した電気信号の時間変化に基づいて、前記検知手段が放射線の照射開始を誤検知したか否かを判断する判断手段と、
を備えた放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記判断手段は、検出した前記電気信号に応じた電荷の極性及び電荷量の時間変化を表す波形の振幅の少なくとも一方の時間変化に基づいて、誤検知したかを判断する、請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記判断手段は、所定の前記信号線毎に予め定められた基準により、誤検知であるか否かを判断する、請求項1または請求項2に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記撮影期間は、前記画素からの電荷の取り出しを禁止する制御信号を出力し、前記撮影期間終了後に、電荷の取り出しを行う前記制御信号を出力するように前記制御信号出力手段を制御する制御手段と、
前記検知手段により放射線の照射開始が検知された場合、前記検知期間から前記撮影期間に遷移し、かつ遷移後に前記判断手段が誤検知と判断した場合は、前記撮影期間から前記検知期間に遷移する遷移手段と、
を備えた、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記判断手段が誤検知と判断した場合に前記遷移手段により前記撮影期間から前記検知期間に遷移された場合は、電荷の取り出しを行う前記制御信号を出力して、前記複数の画素から電荷を取り出すリセット動作を行うように前記制御信号出力手段を制御する、請求項4に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記撮影期間に前記複数の画素から読み出された前記電気信号を出力し、かつ前記判断手段が誤検知と判断した場合は、前記複数の画素から取り出された前記電気信号を出力せずに読み捨てる出力手段を備えた、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項7】
放射線を照射する照射装置と、
前記照射装置から照射された放射線に応じた放射線画像を撮影する、前記請求項1から前記請求項6のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置と、
を備えた放射線画像撮影システム。
【請求項8】
放射線を照射する照射装置と、
前記照射装置から照射された放射線に応じた放射線画像を撮影する、前記請求項5に記載の放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置の前記リセット動作中は、前記照射装置による放射線の照射を禁止するよう制御する制御装置と、
を備えた放射線画像撮影システム。
【請求項9】
照射された放射線に応じた電荷を発生するセンサ部、及び制御信号に基づいて前記センサ部から前記電荷を読み出して前記電荷に応じた電気信号を信号線に出力するスイッチング素子を各々備えた複数の画素と、前記複数の画素のうちの前記スイッチング素子が短絡した画素であり、照射された放射線により発生した電荷に応じた電気信号を出力する放射線検知素子と、検知期間中に前記放射線検知素子から出力される電気信号に基づいて、放射線の照射開始を検知する検知手段と、出力された電荷情報の取り出しを制御する前記制御信号を出力する制御信号出力手段と、前記検知手段が放射線の照射開始を検知した後の放射線画像の撮影期間に、前記放射線検知素子から出力された電気信号を検出し、検出した電気信号の時間変化に基づいて、前記検知手段が放射線の照射開始を誤検知したか否かを判断する判断手段と、を備えた放射線画像撮影装置の制御処理をコンピュータに実行させるための放射線画像撮影装置の制御プログラムであって、
前記検知手段が放射線の照射開始を検知した後の放射線画像の撮影期間に、前記放射線検知素子から出力された電気信号を検出するステップと、
検出した電気信号の時間変化に基づいて、前記検知手段が放射線の照射開始を誤検知したか否かを判断するステップと、
を備えた処理をコンピュータに実行させるための放射線画像撮影装置の制御プログラム。
【請求項10】
照射された放射線に応じた電荷を発生するセンサ部、及び制御信号に基づいて前記センサ部から前記電荷を読み出して前記電荷に応じた電気信号を信号線に出力するスイッチング素子を各々備えた複数の画素と、前記複数の画素に含まれる画素のうちの前記スイッチング素子が短絡した画素であり、照射された放射線により発生した電荷に応じた電気信号を出力する放射線検知素子と、検知期間中に前記放射線検知素子から出力される電気信号に基づいて、放射線の照射開始を検知する検知手段と、出力された電荷情報の取り出しを制御する前記制御信号を出力する制御信号出力手段と、前記検知手段が放射線の照射開始を検知した後の放射線画像の撮影期間に、前記放射線検知素子から出力された電気信号を検出し、検出した電気信号の時間変化に基づいて、前記検知手段が放射線の照射開始を誤検知したか否かを判断する判断手段と、を備えた放射線画像撮影装置の制御方法であって、
前記検知手段が放射線の照射開始を検知した後の放射線画像の撮影期間に、前記放射線検知素子から出力された電気信号を検出する工程と、
検出した電気信号の時間変化に基づいて、前記検知手段が放射線の照射開始を誤検知したか否かを判断する工程と、
を備えた放射線画像撮影装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−250023(P2012−250023A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−95084(P2012−95084)
【出願日】平成24年4月18日(2012.4.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】