説明

放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システム

【課題】得られた画像データに基づいて濃淡のない放射線画像を生成することが可能な放射線画像撮影装置を提供する。
【解決手段】放射線画像撮影装置1の制御手段22は、放射線が照射されている間にデータ読み出し用の電圧が印加された走査線5以外の走査線5に接続されている放射線検出素子7については、当該放射線検出素子7から読み出された各データDのうち、放射線の照射が終了した後、最初に読み出されたデータDを選択し、放射線が照射されている間にデータ読み出し用の電圧が印加された走査線5に接続されている放射線検出素子7については、当該放射線検出素子7から読み出された各データDのうち、放射線が照射されている間に読み出されたデータDと、その次のフレームで読み出されたデータDとを選択して加算し、選択したデータDおよび選択して加算したデータDに基づいて放射線画像pを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システムに係り、特に放射線の照射中にも読み出し処理を行う放射線画像撮影装置およびそれを用いた放射線画像撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
照射されたX線等の放射線の線量に応じて検出素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる直接型の放射線画像撮影装置や、照射された放射線をシンチレータ等で可視光等の他の波長の電磁波に変換した後、変換され照射された電磁波のエネルギーに応じてフォトダイオード等の光電変換素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる間接型の放射線画像撮影装置が種々開発されている。なお、本発明では、直接型の放射線画像撮影装置における検出素子や、間接型の放射線画像撮影装置における光電変換素子を、あわせて放射線検出素子という。
【0003】
このタイプの放射線画像撮影装置はFPD(Flat Panel Detector)として知られており、従来は支持台(或いはブッキー装置)と一体的に形成されていたが(例えば特許文献1参照)、近年、放射線検出素子等をハウジングに収納した可搬型の放射線画像撮影装置が開発され、実用化されている(例えば特許文献2、3参照)。
【0004】
このような放射線画像撮影装置では、例えば後述する図3や図7に示すように、通常、放射線検出素子7が検出部P上に二次元状(マトリクス状)に配列され、各放射線検出素子7にそれぞれ薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor。以下、TFTという。)8で形成されたスイッチ手段が設けられている。そして、放射線画像撮影前、すなわち放射線画像撮影装置に放射線発生装置から放射線が照射される前に、TFT8のオン/オフを適宜制御しながら、各放射線検出素子7内に残存する余分な電荷を放出されるリセット処理が行われるように構成される場合が多い。
【0005】
そして、各放射線検出素子7のリセット処理が終了した後、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから各走査線6を介してTFT8にオフ電圧を印加して全TFT8をオフ状態とした状態で放射線発生装置から放射線画像撮影装置に放射線を照射すると、放射線の線量に応じた電荷が各放射線検出素子7内で発生して、各放射線検出素子7内に蓄積される。
【0006】
そして、放射線画像撮影後、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから信号読み出し用のオン電圧を印加する走査線5の各ラインL1〜Lxを順次切り替えながら、各放射線検出素子7から、その内部に蓄積された電荷を読み出して、読み出し回路17で電荷電圧変換する等して画像データとして読み出すように構成される場合が多い。
【0007】
しかし、このように構成する場合、放射線画像撮影装置と放射線発生装置との間のインターフェースを的確に構築し、放射線が照射される段階で放射線画像撮影装置側が各放射線検出素子7内に電荷を蓄積できる状態になっていることが必要となるが、装置間のインターフェースの構築は必ずしも容易ではない。そして、放射線画像撮影装置側が各放射線検出素子7のリセット処理を行っている最中に放射線が照射されてしまうと、放射線の照射により発生した電荷が各放射線検出素子7から流出してしまい、照射された放射線の電荷すなわち画像データへの変換効率が低下してしまう等の問題があった。
【0008】
そこで、近年、放射線画像撮影装置自体で放射線が照射されたことを検出する技術が種々開発されている。そして、それらの技術の一環として、例えば特許文献4や特許文献5に記載された技術を利用して、放射線画像撮影装置自体で放射線の照射を検出することが考えられている。
【0009】
特許文献4、5では、放射線画像撮影装置に対する放射線の照射が開始される以前から、例えば後述する図7等に示すように、走査駆動手段15のゲートドライバ15bからオン電圧を印加する走査線5の各ラインL1〜Lxを順次切り替えながら、放射線検出素子7からの画像データの読み出し処理を繰り返して行い、放射線が照射されている最中にも画像データの読み出し処理を続けて行う放射線画像撮影装置や画像データの読み出し方法が記載されている。
【0010】
そして、検出部P上に配列された全ての放射線検出素子7から各画像データを読み出す期間を1フレームとするとき、放射線の照射が開始されたフレームから放射線の照射が終了したフレームの次のフレームまでの各フレームごとに読み出された画像データを各放射線検出素子7ごとに加算して、各放射線検出素子7ごとの画像データを再構成する技術が開示されている。
【0011】
すなわち、図15に示すように、ゲートドライバ15bから、図中の一番上側の走査線5から順に各走査線5へのオン電圧の印加を開始し、以降、オン電圧を印加する走査線5を図中の下方向に順次切り替えて印加しながら行う各フレームごとの各放射線検出素子7からの画像データの読み出し処理において、例えば、図16に斜線を付して示す部分ΔTの走査線5にオン電圧が順次印加される間に放射線が照射されて照射が終了したとする。
【0012】
この場合、放射線が照射されたフレームである第1フレームで各放射線検出素子7から読み出された画像データでなく、その次の第2フレームで各放射線検出素子7から読み出された画像データを第1フレームの画像データに加算して、各放射線検出素子7ごとの画像データが再構築される。
【0013】
また、図17に示すように、放射線の照射がフレームを跨って行われる場合、放射線の照射が開始された第1フレームで各放射線検出素子7から読み出された画像データと、放射線の照射が終了した第2フレームで各放射線検出素子7から読み出された画像データと、さらにその次の第3フレームで各放射線検出素子7から読み出された画像データとが加算されて、各放射線検出素子7ごとの画像データが再構築される。
【0014】
なお、図16や図17は、斜線を付して示す部分ΔTにのみ放射線が照射されたことを表すものではなく、図15に示したように一番上側の走査線5から順にオン電圧を印加する走査線5を切り替えながら読み出し処理を行う際に、斜線を付して示す部分ΔTの走査線5にオン電圧が順次印加される間に放射線が照射されたことを表すものであり、放射線は、検出部Pの全域にわたって照射される。
【0015】
そして、放射線画像撮影装置に放射線が照射されている間に走査駆動手段15のゲートドライバ15bからオン電圧が印加される走査線5に接続されている各放射線検出素子7からは、それ以前にオン電圧が印加された走査線5に接続されている各放射線検出素子7から読み出されるデータよりも著しく大きな値の画像データが読み出される。これを利用して、各放射線検出素子7から読み出される電荷の値を監視することによって、放射線画像撮影装置に対して放射線が照射されたことを放射線画像撮影装置自体で検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平9−73144号公報
【特許文献2】特開2006−058124号公報
【特許文献3】特開平6−342099号公報
【特許文献4】特開平9−140691号公報
【特許文献5】特開平7−72252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、本発明者らの研究では、例えば、放射線画像撮影装置の検出部Pに、図16に示したようなタイミングで放射線が照射された場合、上記のように、第1フレームと第2フレームでそれぞれ読み出された各画像データを加算して各放射線検出素子7ごとの画像データを再構築すると、それらの再構築した画像データに基づいて生成された放射線画像に濃淡が現れる場合があることが分かった。
【0018】
すなわち、例えば、検出部Pの全域に同じ線量の放射線を一様に、かつ、図16に示したようなタイミングで照射した場合、第1フレームと第2フレームの各画像データを加算して再構築した画像データに基づいて生成された放射線画像pでは、図18に示すように、少なくとも放射線の照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5に対応する画像領域δT(すなわち図16の斜線部分ΔTに相当する画像領域)より上側の画像領域Aよりも、画像領域δTより下側の画像領域Bの方が画像データの値が若干大きくなる。
【0019】
これは、放射線画像撮影装置の検出部Pの全域に同じ線量の放射線を一様に照射した場合だけでなく、実際に被写体を介して放射線画像撮影装置に放射線を照射して放射線画像を行った場合でも、同様に生成された放射線画像に濃淡が現れる。そして、このように生成された放射線画像に濃淡が現れると、放射線画像が見づらいものになる。
【0020】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、放射線が照射されている最中にもデータの読み出し処理を続けて行う放射線画像撮影装置で得られた画像データに基づいて濃淡のない放射線画像を生成することが可能な放射線画像撮影装置およびそれを用いた放射線画像撮影システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記の問題を解決するために、本発明の放射線画像撮影装置は、
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子とを備える検出部と、
前記放射線検出素子からの読み出し処理の際に、データ読み出し用の電圧を印加する前記各走査線を順次切り替えながら印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、前記データ読み出し用の電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から読み出された前記電荷をデータに変換する読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
を備え、
前記検出部上の全ての前記放射線検出素子から前記データを読み出す期間を1フレームとするとき、前記放射線検出素子からの前記フレームごとの読み出し処理を繰り返し行い、少なくとも放射線が照射された時点で前記読み出し処理を行っている前記フレームを含む所定数のフレーム分の前記フレームごとの読み出し処理を行って、前記各フレームごとに前記各放射線検出素子ごとの前記データを取得し、
前記制御手段は、
放射線が照射されている間に前記データ読み出し用の電圧が印加された前記走査線以外の前記走査線に接続されている前記放射線検出素子については、当該放射線検出素子から読み出された前記各データのうち、放射線の照射が終了した後、最初に読み出された前記データを選択し、
放射線が照射されている間に前記データ読み出し用の電圧が印加された前記走査線に接続されている前記放射線検出素子については、当該放射線検出素子から読み出された前記各データのうち、放射線が照射されている間に読み出された前記データと、その次のフレームで読み出された前記データとを選択して加算し、
前記選択したデータおよび前記選択して加算したデータに基づいて放射線画像を生成することを特徴とする。
【0022】
また、本発明の放射線画像撮影装置システムは、
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子とを備える検出部と、
前記放射線検出素子からの読み出し処理の際に、データ読み出し用の電圧を印加する前記各走査線を順次切り替えながら印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、前記データ読み出し用の電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から読み出された前記電荷をデータに変換する読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置に前記データを送信する通信手段と、を備え、
前記検出部上の全ての前記放射線検出素子から前記データを読み出す期間を1フレームとするとき、前記放射線検出素子からの前記フレームごとの読み出し処理を繰り返し行い、少なくとも放射線が照射された時点で前記読み出し処理を行っている前記フレームを含む所定数のフレーム分の前記フレームごとの読み出し処理を行って、前記各フレームごとに前記各放射線検出素子ごとの前記データを取得する放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置から送信された前記各フレームごとの前記各放射線検出素子ごとの前記データに基づいて放射線画像を生成するコンソールと、
を備え、
前記コンソールは、
放射線が照射されている間に前記データ読み出し用の電圧が印加された前記走査線以外の前記走査線に接続されている前記放射線検出素子については、当該放射線検出素子から読み出された前記各データのうち、放射線の照射が終了した後、最初に読み出された前記データを選択し、
放射線が照射されている間に前記データ読み出し用の電圧が印加された前記走査線に接続されている前記放射線検出素子については、当該放射線検出素子から読み出された前記各データのうち、放射線が照射されている間に読み出された前記データと、その次のフレームで読み出された前記データとを選択して加算し、
前記選択したデータおよび前記選択して加算したデータに基づいて放射線画像を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明のような方式の放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システムによれば、放射線の照射により発生した電荷に起因する真の画像データを含むデータが読み出されたフレームの次のフレームでは、通常、いわゆる読み残しのデータが読み出されるが、放射線の照射により発生した電荷に起因する真の画像データを含むデータに、読み残しのデータを加算せずに排除するように構成した。
【0024】
そのため、読み残しのデータを加算したりしなかったりすることで現れる濃淡が放射線画像上に現れないようにすることが可能となり、濃淡のない放射線画像を生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】各実施形態に係る放射線画像撮影装置を示す斜視図である。
【図2】図1におけるX−X線に沿う断面図である。
【図3】放射線画像撮影装置の基板の構成を示す平面図である。
【図4】図3の基板上の小領域に形成された放射線検出素子とTFT等の構成を示す拡大図である。
【図5】図4におけるY−Y線に沿う断面図である。
【図6】COFやPCB基板等が取り付けられた基板を説明する側面図である。
【図7】放射線画像撮影装置の等価回路を表すブロック図である。
【図8】検出部を構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【図9】読み出し処理において各走査線に印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替えるタイミングを示すタイミングチャートである。
【図10】各放射線検出素子のリセット処理において各走査線に印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替えるタイミングを示すタイミングチャートである。
【図11】各放射線検出素子からのデータの読み出し処理の際に放射線が照射されるタイミングの例を示すタイミングチャートである。
【図12】各実施形態に係る放射線画像撮影システムの全体構成を示す図である。
【図13】(A)放射線画像の信号線の延在方向を表す図であり、(B)各画像領域にのデータD、画像領域A、Bのデータの差ΔD、および画像領域δTでの増加分δDを表すグラフである。
【図14】放射線画像の全画像領域で濃淡がなくなることを説明するグラフである。
【図15】各フレームごとの各放射線検出素子からの画像データの読み出し処理を説明する図である。
【図16】第1フレームの斜線部分の走査線にオン電圧が順次印加される間に放射線が照射されて照射が終了したことを表す図である。
【図17】第1フレームと第2フレームの斜線部分の走査線にオン電圧が順次印加される間に放射線が照射されて照射が終了したことを表す図である。
【図18】図16のように放射線が照射された場合に生成される放射線画像の各画像領域を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0027】
なお、以下では、放射線画像撮影装置が、シンチレータ等を備え、照射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置である場合について説明するが、本発明は、直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することが可能である。また、放射線画像撮影装置が可搬型である場合について説明するが、支持台等と一体的に形成された放射線画像撮影装置に対しても適用される。
【0028】
[第1の実施の形態]
[放射線画像撮影装置]
図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観斜視図であり、図2は、図1のX−X線に沿う断面図である。本実施形態に係る放射線画像撮影装置1は、図1や図2に示すように、筐体2内にシンチレータ3や基板4等が収納されて構成されている。
【0029】
筐体2は、少なくとも放射線入射面Rが放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されている。なお、図1や図2では、筐体2がフレーム板2Aとバック板2Bとで形成された、いわゆる弁当箱型である場合が示されているが、筐体2を一体的に角筒状に形成した、いわゆるモノコック型とすることも可能である。
【0030】
また、図1に示すように、筐体2の側面部分には、電源スイッチ36や、LED等で構成されたインジケータ37、図示しないバッテリ41(後述する図7参照)の交換等のために開閉可能とされた蓋部材38等が配置されている。また、本実施形態では、蓋部材38の側面部には、後述するデータD等を、後述するコンソール58(図12参照)等の外部装置との間で無線方式で送受信するための通信手段であるアンテナ装置39が埋め込まれている。
【0031】
なお、アンテナ装置39の設置位置は蓋部材38の側面部に限らず、放射線画像撮影装置1の任意の位置にアンテナ装置39を設置することが可能である。また、設置するアンテナ装置39は1個に限らず、複数設けることも可能である。さらに、データD等を外部装置との間で有線方式で送受信するように構成することも可能であり、その場合は、例えば、通信手段として、ケーブル等を差し込むなどして接続するための接続端子等が放射線画像撮影装置1の側面部等に設けられる。
【0032】
図2に示すように、筐体2の内部には、基板4の下方側に図示しない鉛の薄板等を介して基台31が配置され、基台31には、電子部品32等が配設されたPCB基板33や緩衝部材34等が取り付けられている。なお、本実施形態では、基板4やシンチレータ3の放射線入射面Rには、それらを保護するためのガラス基板35が配設されている。
【0033】
シンチレータ3は、基板4の後述する検出部Pに貼り合わされるようになっている。シンチレータ3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
【0034】
基板4は、本実施形態では、ガラス基板で構成されており、図3に示すように、基板4のシンチレータ3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。
【0035】
このように、走査線5と信号線6で区画された各小領域rに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7が設けられた領域r全体、すなわち図3に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされている。
【0036】
本実施形態では、放射線検出素子7としてフォトダイオードが用いられているが、この他にも例えばフォトトランジスタ等を用いることも可能である。各放射線検出素子7は、図3や図4の拡大図に示すように、スイッチ手段であるTFT8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
【0037】
そして、TFT8は、後述する走査駆動手段15により、接続された走査線5にオン電圧が印加され、ゲート電極8gにオン電圧が印加されるとオン状態となり、放射線検出素子7内に蓄積されている電荷を信号線6に放出させるようになっている。また、TFT8は、接続された走査線5にオフ電圧が印加され、ゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、電荷を放射線検出素子7内に保持して蓄積させるようになっている。
【0038】
ここで、本実施形態における放射線検出素子7やTFT8の構造について、図5に示す断面図を用いて簡単に説明する。図5は、図4におけるY−Y線に沿う断面図である。
【0039】
基板4の面4a上に、AlやCr等からなるTFT8のゲート電極8gが走査線5と一体的に積層されて形成されており、ゲート電極8g上および面4a上に積層された窒化シリコン(SiN)等からなるゲート絶縁層81上のゲート電極8gの上方部分に、水素化アモルファスシリコン(a−Si)等からなる半導体層82を介して、放射線検出素子7の第1電極74と接続されたソース電極8sと、信号線6と一体的に形成されるドレイン電極8dとが積層されて形成されている。
【0040】
ソース電極8sとドレイン電極8dとは、窒化シリコン(SiN)等からなる第1パッシベーション層83によって分割されており、さらに第1パッシベーション層83は両電極8s、8dを上側から被覆している。また、半導体層82とソース電極8sやドレイン電極8dとの間には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたオーミックコンタクト層84a、84bがそれぞれ積層されている。以上のようにしてTFT8が形成されている。
【0041】
また、放射線検出素子7の部分では、基板4の面4a上に前記ゲート絶縁層81と一体的に形成される絶縁層71の上にAlやCr等が積層されて補助電極72が形成されており、補助電極72上に前記第1パッシベーション層83と一体的に形成される絶縁層73を挟んでAlやCr、Mo等からなる第1電極74が積層されている。第1電極74は、第1パッシベーション層83に形成されたホールHを介してTFT8のソース電極8sに接続されている。
【0042】
第1電極74の上には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたn層75、水素化アモルファスシリコンで形成された変換層であるi層76、水素化アモルファスシリコンにIII族元素をドープしてp型に形成されたp層77が下方から順に積層されて形成されている。
【0043】
放射線画像撮影装置1の筐体2の放射線入射面Rから放射線が入射し、シンチレータ3で可視光等の電磁波に変換され、変換された電磁波が図中上方から照射されると、電磁波は放射線検出素子7のi層76に到達して、i層76内で電子正孔対が発生する。放射線検出素子7は、このようにして、シンチレータ3から照射された電磁波を電荷に変換するようになっている。
【0044】
また、p層77の上には、ITO等の透明電極とされた第2電極78が積層されて形成されており、照射された電磁波がi層76等に到達するように構成されている。本実施形態では、以上のようにして放射線検出素子7が形成されている。なお、p層77、i層76、n層75の積層の順番は上下逆であってもよい。また、本実施形態では、放射線検出素子7として、上記のようにp層77、i層76、n層75の順に積層されて形成されたいわゆるpin型の放射線検出素子を用いる場合が説明されているが、これに限定されない。
【0045】
放射線検出素子7の第2電極78の上面には、第2電極78を介して放射線検出素子7にバイアス電圧を印加するバイアス線9が接続されている。なお、放射線検出素子7の第2電極78やバイアス線9、TFT8側に延出された第1電極74、TFT8の第1パッシベーション層83等、すなわち放射線検出素子7とTFT8の上面部分は、その上方側から窒化シリコン(SiN)等からなる第2パッシベーション層79で被覆されている。
【0046】
図3や図4に示すように、本実施形態では、それぞれ列状に配置された複数の放射線検出素子7に1本のバイアス線9が接続されており、各バイアス線9はそれぞれ信号線6に平行に配設されている。また、各バイアス線9は、基板4の検出部Pの外側の位置で結線10に結束されている。
【0047】
本実施形態では、図3に示すように、各走査線5や各信号線6、バイアス線9の結線10は、それぞれ基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう)11に接続されている。各入出力端子11には、図6に示すように、後述する走査駆動手段15のゲートドライバ15bを構成するゲートIC12a等のチップがフィルム上に組み込まれたCOF(Chip On Film)12が異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)等の異方性導電性接着材料13を介して接続されている。
【0048】
また、COF12は、基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側で前述したPCB基板33に接続されるようになっている。このようにして、放射線画像撮影装置1の基板4部分が形成されている。なお、図6では、電子部品32等の図示が省略されている。
【0049】
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。図7は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図であり、図8は検出部Pを構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【0050】
前述したように、基板4の検出部Pの各放射線検出素子7は、その第2電極78にそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極78にそれぞれバイアス電圧を印加するようになっている。また、バイアス電源14は、後述する制御手段22に接続されており、制御手段22により、バイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧が制御されるようになっている。
【0051】
図7や図8に示すように、本実施形態では、放射線検出素子7のp層77側(図5参照)に第2電極78を介してバイアス線9が接続されていることからも分かるように、バイアス電源14からは、放射線検出素子7の第2電極78にバイアス線9を介してバイアス電圧として放射線検出素子7の第1電極74側にかかる電圧以下の電圧(すなわちいわゆる逆バイアス電圧)が印加されるようになっている。
【0052】
各放射線検出素子7の第1電極74はTFT8のソース電極8s(図7、図8中ではSと表記されている。)に接続されており、各TFT8のゲート電極8g(図7、図8中ではGと表記されている。)は、後述する走査駆動手段15のゲートドライバ15bから延びる走査線5の各ラインL1〜Lxにそれぞれ接続されている。また、各TFT8のドレイン電極8d(図7、図8中ではDと表記されている。)は各信号線6にそれぞれ接続されている。
【0053】
走査駆動手段15は、配線15cを介してゲートドライバ15bにオン電圧とオフ電圧を供給する電源回路15aと、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替えて各TFT8のオン状態とオフ状態とを切り替えるゲートドライバ15bとを備えている。
【0054】
そして、走査駆動手段15は、各放射線検出素子7からデータDを読み出す画像読み出し処理等の際に、後述する制御手段22からトリガ信号を受信すると、ゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧のオン電圧とオフ電圧との間での切り替えを開始させるようになっている。
【0055】
具体的には、本実施形態では、走査駆動手段15は、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理の際には、制御手段22からトリガ信号を受信すると、例えば図9に示すように、ゲートドライバ15bから印加する電圧をオン電圧(すなわちデータ読み出し用の電圧)とオフ電圧との間で切り替える走査線5のラインL1〜Lxを順次切り替える処理をフレームごとに繰り返し行い、各TFT8を介して走査線5の各ラインL1〜Lxに接続されている各放射線検出素子7からデータDをそれぞれ読み出させるようになっている。
【0056】
なお、以下では、図9に示すように、検出部P(図3や図7参照)上に二次元状に配列された1面分の全放射線検出素子7からデータDを読み出す期間を1フレームという。
【0057】
また、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理前や、次の放射線画像撮影を行うまでの間等に、各放射線検出素子7内に残存する電荷を放出させる各放射線検出素子7のリセット処理を行うように構成することも可能である。
【0058】
各放射線検出素子7のリセット処理を行う場合には、例えば、走査駆動手段15は、図10に示すように、ゲートドライバ15bから印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替える走査線5のラインL1〜Lxを順次切り替えさせて1面分のリセット処理Rmを行い、この1面分のリセット処理Rmを必要に応じて繰り返し行わせながら各放射線検出素子7のリセット処理を行うように構成される。
【0059】
図7や図8に示すように、各信号線6は、読み出しIC16内に形成された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。なお、本実施形態では、読み出しIC16に、1本の信号線6につき1個ずつ読み出し回路17が設けられている。
【0060】
読み出し回路17は、増幅回路18と相関二重サンプリング回路19等で構成されている。読み出しIC16内には、さらに、アナログマルチプレクサ21と、A/D変換器20とが設けられている。なお、図7や図8中では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。また、図8中では、アナログマルチプレクサ21は省略されている。
【0061】
本実施形態では、増幅回路18はチャージアンプ回路で構成されており、オペアンプ18aと、オペアンプ18aにそれぞれ並列にコンデンサ18bおよび電荷リセット用スイッチ18cが接続されて構成されている。また、増幅回路18には、増幅回路18に電力を供給するための電源供給部18dが接続されている。
【0062】
また、増幅回路18のオペアンプ18aの入力側の反転入力端子には信号線6が接続されており、増幅回路18の入力側の非反転入力端子には基準電位Vが印加されるようになっている。なお、基準電位Vは適宜の値に設定され、本実施形態では、例えば0[V]が印加されるようになっている。
【0063】
また、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cは、制御手段22に接続されており、制御手段22によりオン/オフが制御されるようになっている。各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理時に、電荷リセット用スイッチ18cがオフの状態で放射線検出素子7のTFT8がオン状態とされると、各放射線検出素子7内に蓄積されていた電荷が各放射線検出素子7からTFT8を介して信号線6に放出され、信号線6を介してコンデンサ18bに流入して蓄積される。そして、蓄積された電荷量に応じた電圧値がオペアンプ18aの出力側から出力されるようになっている。
【0064】
増幅回路18は、このようにして、各放射線検出素子7から出力された電荷量に応じて電圧値を出力して電荷電圧変換するようになっている。また、電荷リセット用スイッチ18cがオン状態とされると、増幅回路18の入力側と出力側とが短絡されてコンデンサ18bに蓄積された電荷が放電されて増幅回路18がリセットされるようになっている。なお、増幅回路18を、放射線検出素子7から出力された電荷に応じて電流を出力するように構成することも可能である。
【0065】
増幅回路18の出力側には、相関二重サンプリング回路(CDS)19が接続されている。相関二重サンプリング回路19は、本実施形態では、サンプルホールド機能を有しており、この相関二重サンプリング回路19におけるサンプルホールド機能は、制御手段22から送信されるパルス信号によりそのオン/オフが制御されるようになっている。
【0066】
そして、制御手段22は、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理においては、増幅回路18や相関二重サンプリング回路19を制御して、各放射線検出素子7から放出された電荷を増幅回路18で電荷電圧変換させ、電荷電圧変換された電圧値を相関二重サンプリング回路19でサンプリングさせてデータDとして下流側に出力させるようになっている。
【0067】
相関二重サンプリング回路19から出力された各放射線検出素子7のデータDは、アナログマルチプレクサ21(図7参照)に送信され、アナログマルチプレクサ21から順次A/D変換器20に送信される。そして、A/D変換器20で順次デジタル値のデータDに変換されて記憶手段40に出力されて順次保存されるようになっている。
【0068】
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピュータや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。そして、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の各部材の動作等を制御するようになっている。また、図7等に示すように、制御手段22には、DRAM(Dynamic RAM)等で構成される記憶手段40が接続されている。
【0069】
また、本実施形態では、制御手段22には、前述したアンテナ装置39が接続されており、さらに、検出部Pや走査駆動手段15、読み出し回路17、記憶手段40、バイアス電源14等の各部材に電力を供給するためのバッテリ41が接続されている。また、バッテリ41には、クレードル等の図示しない充電装置からバッテリ41に電力を供給してバッテリ41を充電する際の接続端子42が取り付けられている。
【0070】
前述したように、制御手段22は、バイアス電源14を制御してバイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧を設定したり、読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフを制御したり、相関二重サンプリング回路19にパルス信号を送信して、そのサンプルホールド機能のオン/オフを制御する等の各種の処理を実行するようになっている。
【0071】
次に、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理や、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始や終了の検出処理等について説明する。
【0072】
本実施形態では、制御手段22は、放射線画像撮影前に、放射線画像撮影装置1の電源スイッチ36(図1参照)が押下されたり、放射線画像撮影装置1が覚醒状態に遷移されたり、或いは、コンソール58から各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を開始する旨の信号等を受信すると、その時点で、走査駆動手段15に対して、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を開始させるためのトリガ信号を送信するようになっている。
【0073】
また、制御手段22は、読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフを制御したり、相関二重サンプリング回路19にパルス信号を送信して、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を行わせるようになっている。なお、本実施形態では、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理は、各放射線検出素子7から余分な電荷を放出させるリセット処理を兼ねているが、例えば各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を開始する前等に、各放射線検出素子7のリセット処理を別途行うように構成してもよいことは前述した通りである。
【0074】
本実施形態では、このように、放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射される以前から、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理が開始される。そのため、データDの読み出し処理が開始された直後の各フレームでは、放射線が照射されていない各放射線検出素子7内で発生した暗電荷がデータDとして読み出される。
【0075】
これらの暗電荷に相当するデータDは、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射後に読み出されるデータD、すなわち放射線の照射により放射線検出素子7内で発生した電荷に起因する真の画像データdと暗電荷に相当するデータとの和に等しいデータD(すなわちいわゆる画像データ)から減算処理されて真の画像データdを算出するためのオフセット補正値Oとして利用することができる。
【0076】
そのため、本実施形態では、制御手段22は、データDの読み出し処理が開始された直後の各フレームごとに各放射線検出素子7から読み出される各データDを、余分なデータDとして廃棄するのではなく、オフセット補正値Oとしてそれぞれフレームごとに記憶手段40に保存させるようになっている。
【0077】
しかし、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理が開始されて以降のフレームごとのオフセット補正値Oを全て保存する必要はない。また、記憶手段40の記憶容量等の制約もある。そのため、本実施形態では、記憶手段40にデータDを保存するフレーム数が予め設定されている。
【0078】
そして、制御手段22は、上記のように各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を繰り返して、予め設定されたフレーム数のフレーム分の各放射線検出素子7のデータD(この場合はオフセット補正値O)が記憶手段40に保存されると、それ以降の各フレームのデータDについては、最初にデータDを保存したフレームから順に、過去のフレームのデータD上に順次上書き保存していくようになっている。
【0079】
一方、制御手段22は、上記のようにして各放射線検出素子7からデータDを読み出して記憶手段40に保存させると同時に、読み出されたデータDの値に基づいて放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始や終了を検出するようになっている。
【0080】
図9に示したタイミングで、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を印加しながら各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を行っている際に、m回目のフレームにおいて、例えば図11に示すようなタイミングで放射線が照射されたものとする。
【0081】
なお、図11では、斜線を付した期間が、放射線が照射された期間を表す。また、図11に示した走査線5のラインLa〜Lbの各ラインが、例えば図16に示した斜線部分ΔTの走査線5、すなわち放射線が照射されている間にオン電圧が順次印加されていた走査線5の各ラインに相当する。
【0082】
図11に示したような場合、m回目のフレームでは、走査線5のラインL1〜La-1にそれぞれオン電圧が印加されて、走査線5の各ラインL1〜La-1にTFT8を介して接続されている各放射線検出素子7からそれぞれ読み出されたデータDは、放射線が照射される前に読み出された暗電荷に起因するデータである。
【0083】
そのため、これらのデータDは、下記表1に示すように、m−1回目のフレーム以前のフレームの場合(すなわちデータDがオフセット補正値Oの場合)と同様に、データD自体の値としては小さい値(下記表1では5)になる。なお、下記表1に記載された数値は、データDが0〜216−1(すなわち65535)の値をとり得るように構成した場合の数値である。また、下記表1に記載された数値は、その数値前後の値をとること表す数値であり、代表的な値を示したものである。
【0084】
【表1】

【0085】
一方、図11に示すように、m回目のフレームの走査線5のラインLaでは、放射線が照射され始めたため、走査線5のラインLaに接続されている各放射線検出素子7から、暗電荷に起因するデータとは明らかに異なる、より大きな値のデータD(上記表1では1000)が読み出される。
【0086】
そして、放射線が照射されている間にオン電圧が順次印加された走査線5の各ラインLa〜Lbでは、走査線5のラインLa〜Lbに接続されている各放射線検出素子7から読み出されるデータDが、放射線の照射開始からの経過時間に応じて次第に大きな値になる(上記表1では1000〜29000)。
【0087】
そこで、例えば、上記のようにして読み出し回路17で各放射線検出素子7から読み出された個々のデータDの値を制御手段22で監視して、読み出されたデータDが例えば予め設定された閾値を越えた時点で放射線の照射が開始されたと判断するように構成することが可能である。この場合、上記表1のような場合、閾値は例えば500に設定される。
【0088】
また、このように構成した場合、放射線が照射されていないにもかかわらず大きなデータDを出力する異常な放射線検出素子7があった場合や、データDに生じるゆらぎがたまたま大きな値になった場合に、誤って放射線の照射が開始されたと判断してしまう虞れがある。
【0089】
そのため、例えば、上記のようにして読み出し回路17で読み出された、走査線5のラインLnに接続されている各放射線検出素子7から読み出された各データDの積算値ΣD(n)を、走査線5の各ラインLnごとに算出し、走査線5の各ラインLnごとの各データDの積算値ΣD(n)が例えば予め設定された閾値を越えた時点で放射線の照射が開始されたと判断するように構成することが可能である。
【0090】
この場合、走査線5の1本のラインLnに接続されている放射線検出素子7の数が例えば1000個であったとすると、放射線が照射される前のm−1回目のフレームで、走査線5の当該ラインLnに接続されている各放射線検出素子7から読み出される各データDは、上記表1から5前後の値であるため、その場合の積算値ΣD(n)は5000前後の値になる。また、m回目のフレームでも、放射線の照射が開始される前の走査線5の各ラインL1〜La-1に接続されている各放射線検出素子7では各データDは5前後の値であり、走査線5の各ラインL1〜La-1ごとの各データの積算値ΣD(1)〜ΣD(a-1)はそれぞれ5000前後の値になる。
【0091】
それに対して、m回目のフレームで放射線の照射が開始された時点で読み出し処理が行われた走査線5の各ラインLaに接続されている各放射線検出素子7では、各データの値が1000前後の値に増加し、走査線5のラインLaの各データの積算値ΣD(a)は100万前後の値に急増する。
【0092】
そのため、この場合、閾値は5000より大きく100万以下の値、すなわち例えば10万に設定される。
【0093】
また、検出部P上に二次元状に配列された全ての放射線検出素子7から読み出されたデータDの合計値ΣD(m)を各フレームごとに算出し、各フレームごとの各データDの合計値ΣD(m)が例えば予め設定された閾値を越えた時点で放射線の照射が開始されたと判断するように構成することが可能である。
【0094】
この場合、検出部P上に配列された放射線検出素子7の数が例えば100万個であったとすると、放射線が照射される前のm−1回目のフレームで、各放射線検出素子7から読み出される各データDは上記表1から5前後の値であるため、その場合のフレームごとの合計値ΣD(m)は500万前後の値になる。そのため、この場合、閾値は例えば1000万に設定される。
【0095】
なお、上記の場合、積算値と合計値は積算(合計)する範囲が異なるものの、各データDの総和を意味し、同じ意味内容を有するものであるが、それらを区別するため、以下、積算値および合計値と言い分ける。
【0096】
そして、本実施形態では、制御手段22は、設定された判断処理において上記の各条件が満たされた場合、すなわち上記の各基準では、読み出された個々のデータDや、走査線5の各ラインLnごとの各データDの積算値ΣD(n)、或いは各フレームごとの各データDの合計値ΣD(m)が閾値を越えた場合に、放射線の照射が開始されたと判断するようになっている。
【0097】
従って、上記表1の例の場合、制御手段22は、m−1回目のフレームでは、いずれの判断処理の場合でも上記の条件が満たされないため、放射線の照射が開始されたとは判断しないが、m回目のフレームでは、いずれの判断処理の場合でも上記の条件が満たされるため、放射線の照射が開始されたと判断する。
【0098】
なお、上記の各判断処理における閾値を、上記のように予め設定しておくように構成してもよく、また、例えば、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理が開始された初期段階(すなわち放射線画像撮影装置1に放射線が照射されていないことが確実な時点)で、各放射線検出素子7からのデータD(この場合はオフセット補正値O)や各データDの積算値や合計値を取得し、或いは、数フレーム分の各データDや積算値、合計値を取得してそれらの各平均値を算出して、それらの値に所定値を加算して上乗せする等して、放射線画像撮影ごとに閾値を設定するように構成することも可能である。
【0099】
また、例えば、各放射線検出素子7から読み出されたデータDを記憶手段40に保存する際に、それらのデータDを図示しないヒストグラムに投票し、ヒストグラムの度数の分布に基づいて放射線画像撮影装置1に対して放射線の照射が開始されたか否かを判断するように構成することも可能である。
【0100】
すなわち、放射線の照射が開始される前のフレームでは、各放射線検出素子7からは暗電荷に起因する、値が小さいデータDが読み出されるため、ヒストグラム上で小さい値のデータDに対応する階級の度数が大きくなるが、放射線の照射が開始されたフレームでは、各放射線検出素子7からのデータDに放射線の照射により発生した電荷に起因するデータが加算されて比較的大きな値のデータDが読み出されるため、ヒストグラム上では大きな値のデータDに対応する階級の度数が増える。
【0101】
そこで、例えば、ヒストグラム上の大きなデータDに対応する範囲の階級の度数を監視し、その範囲の度数の合計値が閾値を越えた場合に、当該フレームから放射線の照射が開始されたと判断するように構成することも可能である。
【0102】
なお、この場合も、前述したように、放射線が照射されていないにもかかわらず大きなデータDを出力する異常な放射線検出素子7があったり、データDに生じるゆらぎがたまたま大きな値になる場合があるため、放射線の照射が開始される前のフレームでも、ヒストグラム上の大きなデータDに対応する上記範囲の階級の度数が0にならない場合がある。
【0103】
そのため、この場合も、上記の閾値として0でない値を予め設定しておくように構成してもよく、また、例えば、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理が開始された初期段階での1フレーム(或いは数フレーム)で各データDをヒストグラムに投票した場合に得られる上記範囲の階級の度数(或いは数フレーム分の度数の平均値)を算出し、その度数(或いは平均値)に所定の値を加算して上乗せした値を閾値として設定する等して、放射線画像撮影ごとに閾値を設定するように構成することも可能である。
【0104】
本実施形態では、制御手段22は、例えば図11に示したように、m回目のフレームで放射線の照射が開始されたと判断すると、CPUのメモリ等に当該フレームのフレーム番号mを記憶させるようになっている。
【0105】
また、本実施形態では、制御手段22は、同様にして、読み出された個々のデータDや、走査線5の各ラインLnごとの各データDの積算値ΣD(n)、或いは各フレームごとの各データDの合計値ΣD(m)に基づいて、放射線の照射が終了したと判断するようになっている。
【0106】
具体的には、制御手段22は、例えば上記の各判断処理と同様に、個々のデータDや積算値ΣD(n)、合計値ΣD(m)が、上記のように設定された閾値以下になった場合に、放射線の照射が終了したと判断する。
【0107】
その際、図11から分かるように、実際の放射線の照射はm回目のフレームで終了しているが、上記表1から分かるように、放射線の照射が終了した後にオン電圧が印加された走査線5のラインLb+1以降の各ラインLに接続されている各放射線検出素子7から読み出されたデータDは、30000前後の値が読み出されており、この段階では、制御手段22は、放射線の照射が終了したとは判断しない。
【0108】
そして、各放射線検出素子7から読み出された個々のデータDの値に基づいて判断するように構成されている場合には、上記表1から分かるように、m+1回目のフレームで走査線5のラインLb+1に接続されている各放射線検出素子7から読み出された個々のデータDが30前後の値になり閾値以下になるため、制御手段22は、この時点で放射線の照射が終了したと判断する。
【0109】
また、走査線5の各ラインLnごとの各データDの積算値ΣD(n)に基づいて判断するように構成されている場合には、上記表1から分かるように、m+1回目のフレームで走査線5のラインLb+1に接続されている各放射線検出素子7から読み出された個々のデータDが30前後の値になり、積算値ΣD(b)が30000前後の値になる。そのため、閾値以下の値になり、制御手段22は、この時点で放射線の照射が終了したと判断する。
【0110】
一方、各フレームごとの各データDの合計値ΣD(m)に基づいて判断するように構成されている場合には、上記表1から分かるように、m回目のフレームの合計値ΣD(m)もm+1回目のフレームの合計値ΣD(m+1)も、いずれも上記の閾値を越えるため、制御手段22は、m+1回目のフレームの読み出し処理が終了した時点では、放射線の照射が終了したとは判断しない。
【0111】
しかし、m+2回目の合計値ΣD(m+2)は閾値以下の値になる。そのため、制御手段22は、各フレームごとの各データDの合計値ΣD(m)に基づいて判断するように構成されている場合には、例えば、フレームごとの各データDの合計値ΣD(m)が閾値以下の値になったフレーム(上記の場合はm+2回目のフレーム)の1つの前のフレーム(すなわちm+1回目のフレーム)で放射線の照射が終了したと判断するように構成される。
【0112】
制御手段22は、以上のようにして放射線の照射が終了したと判断すると、そのフレーム、すなわち上記の例ではm+1回目のフレームのフレーム番号m+1をCPUのメモリ等に記憶させるようになっている。
【0113】
そして、本実施形態では、制御手段22は、m+2回目のフレーム、すなわち放射線の照射が開始されたと判断したフレームを含む3回分のフレームの読み出し処理を終了した時点で、走査駆動手段15に対してトリガ信号を送信して、ゲートドライバ15bからの走査線5の各ラインL1〜Lxへのオン電圧の印加を停止させて、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を終了させるようになっている。
【0114】
後述するように、走査線5の各ラインL1〜La-1に接続されている各放射線検出素子7において、放射線の照射により当該各放射線検出素子7内で発生した電荷に起因する真の画像データdは、上記表1や図11から分かるように、m+1回目のフレームで読み出されている。
【0115】
また、走査線5の各ラインLb+1〜Lxに接続されている各放射線検出素子7では、放射線の照射により当該各放射線検出素子7内で発生した電荷に起因する真の画像データdは、上記表1や図11から分かるように、m回目のフレームで読み出されている。
【0116】
さらに、走査線5の各ラインLa〜Lbに接続されている各放射線検出素子7において、放射線の照射により当該各放射線検出素子7内で発生した電荷に起因する真の画像データdは、上記表1や図11から分かるように、m回目のフレームとm+1回目のフレームとで分割されて読み出される。
【0117】
また、前述したように、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射開始前の例えばm−1回目のフレーム等で各放射線検出素子7から読み出されたデータDは、オフセット補正値Oとして利用することができる。
【0118】
そのため、本実施形態では、制御手段22は、上記のようにして、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を終了させると、後述する本実施形態におけるデータDの選択処理等をコンソール58で行う場合には、放射線の照射の開始を検出したm回目のフレームの1つ前のフレームであるm−1回目のフレームから、放射線の照射の終了を検出したm+1回目までの各フレームの各放射線検出素子7ごとの各データDを、通信手段であるアンテナ装置39(図1や図7等参照)を介してコンソール58に送信するようになっている。
【0119】
なお、m−1回目のフレームで読み出されたデータDを各放射線検出素子7ごとのオフセットデータOとする代わりに、例えば、放射線の照射が開始された時点で読み出し処理が行われていたm回目のフレームより前の数フレーム分の放射線検出素子ごとのデータDの平均値を算出する等して、その平均値等を放射線検出素子7ごとのオフセット補正値Oとするように構成することも可能である。
【0120】
そして、その場合は、この1フレーム分の各放射線検出素子7ごとのオフセット補正値Oの各データと、m回目およびm+1回目の各フレームの各放射線検出素子ごとの各データDが送信される。
【0121】
なお、本実施形態におけるデータDの選択処理や、真の画像データdの算出、放射線画像の生成処理等については、放射線画像撮影システム50の構成について説明した後で説明する。
【0122】
[放射線画像撮影システム]
図12は、本実施形態に係る放射線画像撮影システムの全体構成を示す図である。放射線画像撮影システム50は、図12に示すように、例えば、放射線を照射して図示しない患者の一部である被写体(患者の撮影対象部位)の撮影を行う撮影室R1と、放射線技師等の操作者が被写体に照射する放射線開始の制御等の種々の操作を行う前室R2、およびそれらの外部に配置される。
【0123】
撮影室R1には、前述した放射線画像撮影装置1を装填可能なブッキー装置51や、被写体に照射する放射線を発生させる図示しないX線管球を備える放射線源52やそれをコントロールする放射線発生装置55、放射線画像撮影装置1と放射線発生装置55やコンソール58とが無線通信する際にこれらの通信を中継する無線アンテナ53を備えた基地局54等が設けられている。
【0124】
なお、図12では、可搬型の放射線画像撮影装置1をブッキー装置51のカセッテ保持部51aに装填して用いる場合が示されているが、前述したように、放射線画像撮影装置1はブッキー装置51や支持台等と一体的に形成されたものであってもよい。また、前述したように、放射線画像撮影装置1と外部装置との通信をLANケーブル等のケーブルを介して行う場合には、図12に示したように、それらのケーブルを基地局54に接続するように構成し、ケーブルや基地局54を介して有線通信でデータ等の情報を送受信できるように構成することも可能である。
【0125】
また、基地局54は、放射線発生装置55やコンソール58と接続されており、基地局54には、放射線画像撮影装置1やコンソール58等の間で情報を送信する際のLAN通信用の信号等を、放射線発生装置55との間で情報を送信する際の信号に変換し、その逆の変換も行う図示しない変換器が内蔵されている。
【0126】
前室R2には、本実施形態では、放射線発生装置55の操作卓57が設けられており、操作卓57には、放射線技師等の操作者が操作して放射線発生装置55に対して放射線の照射開始等を指示するための曝射スイッチ56が設けられている。そして、放射線発生装置55は、放射線技師等の操作者により曝射スイッチ56が操作されて操作卓57から信号が送信されてくると、放射線源52を起動させたり、放射線源52から放射線を照射させるようになっている。
【0127】
放射線発生装置55は、このほか、指定されたブッキー装置51に装填された放射線画像撮影装置1に対して放射線を適切に照射できるように放射線源52を所定の位置に移動させたり、その放射方向を調整したり、放射線画像撮影装置1の所定の領域内に放射線が照射されるように図示しない絞りを調整したり、或いは、適切な線量の放射線が照射されるように放射線源52を調整する等の種々の制御を放射線源52に対して行うようになっている。なお、これらの処理を、放射線技師等の操作者が手動で行うように構成してもよい。
【0128】
また、放射線発生装置55は、放射線源52からの放射線の照射開始から所定の時間が経過した時点で、放射線源52のX線管球を停止させる等して、放射線源52からの放射線の照射を停止させるようになっている。
【0129】
放射線画像撮影装置1の構成等については前述した通りであるが、本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、上記のようにブッキー装置51に装填されて用いられる場合もあるが、ブッキー装置51には装填されず、いわば単独の状態で用いることもできるようになっている。
【0130】
すなわち、放射線画像撮影装置1を単独の状態で例えば撮影室R1内に設けられたベッドや図12に示すように臥位撮影用のブッキー装置51B等の上面側に配置してその放射線入射面R(図1参照)上に被写体である患者の手等を載置したり、或いは、例えばベッドの上に横臥した患者の腰や足等とベッドとの間に差し込んだりして用いることもできるようになっている。この場合、例えばポータブルの放射線源52B等から、被写体を介して放射線画像撮影装置1に放射線を照射して放射線画像撮影が行われる。
【0131】
一方、本実施形態では、コンピュータ等で構成されたコンソール58が、撮影室R1や前室R2の外側に設けられている。コンソール58には、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等を備えて構成される表示部58aが設けられている。また、コンソール58には、HDD(Hard Disk Drive)等で構成された記憶手段59が接続、或いは内蔵されている。
【0132】
なお、コンソール58を例えば前室R2等に設けるように構成することも可能である。また、コンソール58に、例えば、放射線画像撮影装置1の状態を覚醒(wake up)状態とスリープ(sleep)状態との間で遷移させる機能を持たせたり、或いは、放射線技師等の操作者が撮影室R1で行う放射線画像撮影の内容を表す撮影オーダ情報を作成したり選択したりすることを可能とする機能を持たせたりするように構成することも可能であり、適宜に構成される。
【0133】
[データDの選択等の処理について]
以下、上記のようにして得られた各データDに対する処理を行う放射線画像撮影装置1の制御手段22やコンソール58における、本実施形態に係るデータDの選択等の処理について説明する。また、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1や放射線画像撮影システム50の作用についてあわせて説明する。
【0134】
なお、以下では、m回目のフレームやm+1回目のフレームで読み出された各放射線検出素子7ごとのデータDをそれぞれD(m)、D(m+1)と表す。
【0135】
前述したように、従来の手法に従って、m回目のフレームで読み出された各データD(m)とm+1回目のフレームで読み出された各データD(m+1)(なお、ともにオフセット補正値Oが減算されているものとする。)を加算して、各放射線検出素子7ごとのデータDを再構築すると、再構築したデータに基づく放射線画像pでは、図18に示したように、少なくとも放射線の照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5に対応する画像領域δTより上側の画像領域Aよりも、画像領域δTより下側の画像領域Bの方がデータの値が若干大きくなり、放射線画像p上に濃淡が現れる場合がある。
【0136】
このように濃淡が現れる原因は、上記の表1に示された例では、以下のように考えられる。
【0137】
すなわち、図18の放射線画像pの画像領域Aに相当する各放射線検出素子7、すなわち、m回目のフレームで放射線の照射が開始される前にオン電圧が印加された走査線5のラインL1〜La-1に接続されている各放射線検出素子7では、m回目のフレームでは、暗電荷に起因するデータD(m)すなわち値が5前後のオフセット補正値Oと同等のデータD(m)が読み出され、m+1回目のフレームでは、放射線の照射により発生した電荷に起因する真の画像データdを含む30000前後の大きな値のデータD(m+1)が読み出される。
【0138】
それに対して、図18の放射線画像pの画像領域Bに相当する各放射線検出素子7、すなわち、m回目のフレームで放射線の照射が終了した後でオン電圧が印加された走査線5のラインLb+1〜Lxに接続されている各放射線検出素子7では、m回目のフレームでは、放射線の照射により発生した電荷に起因する真の画像データdを含む30000前後の大きな値のデータD(m)が読み出される。
【0139】
そして、m+1回目のフレームでは、m回目のフレームで各放射線検出素子7から読み出し切れなかった電荷に起因するいわゆる読み残しのデータと暗電荷に起因するオフセット補正値O相当のデータとの和として値が30前後のデータD(m+1)が読み出される。
【0140】
つまり、図18の放射線画像pの画像領域Bに相当する各放射線検出素子7から読み出されるデータD(すなわちD(m)+D(m+1))は、m回目のフレームで各放射線検出素子7から読み出し切れなかった電荷に起因する読み残しのデータに相当する25前後のデータ分だけ、図18の放射線画像pの画像領域Bに相当する各放射線検出素子7から読み出されるデータDよりも大きくなる。これが、放射線画像pにおける画像領域Aと画像領域Bとの濃淡となって視認されるのである。
【0141】
そこで、本実施形態では、最終的な放射線画像を生成するに際し、走査線5のラインL1〜La-1に接続されている各放射線検出素子7では、放射線の照射により発生した電荷に起因する真の画像データdが含まれているm+1回目のフレームで読み出されたデータD(m+1)を選択して用い、m回目のフレームで読み出されたデータD(m)は使わない。
【0142】
また、走査線5のラインLb+1〜Lxに接続されている各放射線検出素子7では、放射線の照射により発生した電荷に起因する真の画像データdを含まれているm回目のフレームで読み出されたデータD(m)を選択して用い、m+1回目のフレームで読み出されたデータD(m+1)は使わないように構成される。
【0143】
選択されて用いられるこれらのデータDは、結局、少なくとも走査線5のラインL1〜La-1、Lb+1〜Lxに接続されている各放射線検出素子7、すなわち放射線が照射されている間にオン電圧が印加された走査線5の各ラインLa〜Lb以外の走査線5に接続されている放射線検出素子では、各フレームで読み出されたデータD(m)、D(m+1)のうち、放射線の照射が終了した後、最初に読み出されたデータを選択することになる。
【0144】
そこで、本実施形態では、放射線画像撮影装置1の制御手段22やコンソール58は、放射線が照射されている間にオン電圧が印加された走査線5の各ラインLa〜Lb以外の走査線5の各ラインL1〜La-1、Lb+1〜Lxに接続されている放射線検出素子7については、各フレームで読み出されたデータD(m)、D(m+1)のうち、放射線の照射が終了した後、最初に読み出されたデータを選択するようになっている。
【0145】
選択される各データDは、結局、走査線5のラインL1〜La-1に接続されている各放射線検出素子7ではデータD(m+1)、走査線5のラインLb+1〜Lxに接続されている各放射線検出素子7ではデータD(m)ということになる。
【0146】
一方、放射線が照射されている間にオン電圧が印加された走査線5の各ラインLa〜Lbに接続されている放射線検出素子7については、図11や上記表1から分かるように、放射線の照射により発生した電荷に起因する真の画像データdは、m回目のフレームとm+1回目のフレームとで分割されて読み出されるため、真の画像データdの再構築には、データD(m)とデータD(m+1)との両方が必要になり、それらを加算することで真の画像データdを再構築することができる。
【0147】
そこで、本実施形態では、放射線画像撮影装置1の制御手段22やコンソール58は、放射線が照射されている間にオン電圧が印加された走査線5の各ラインLa〜Lbに接続されている放射線検出素子7については、各フレームで読み出されたデータDのうち、m回目のフレームで放射線が照射されている間に読み出されたデータD(m)と、その次のm+1回目のフレームで読み出されたデータD(m+1)とを選択し、加算して用いるようになっている。
【0148】
[真の画像データdの算出および放射線画像の生成処理について]
放射線画像撮影装置1の制御手段22やコンソール58は、続いて、上記のようにして選択したデータD(m)、D(m+1)と選択して加算したデータD(m)+D(m+1)とに基づいて、各放射線検出素子7ごとの真の画像データdを算出し、算出した真の画像データdに基づいて放射線画像pを生成するようになっている。
【0149】
具体的には、まず、データD(m+1)を選択した走査線5の各ラインL1〜La-1に接続されている放射線検出素子7については、データD(m+1)にオフセット補正値Oが重畳されているため、
=D(m+1)−O …(1)
を演算して、各放射線検出素子7ごとの真の画像データdを算出する。
【0150】
データD(m)を選択した走査線5の各ラインLb+1〜Lxに接続されている放射線検出素子7についても、同様に、
=D(m)−O …(2)
を演算して、各放射線検出素子7ごとの真の画像データdを算出する。
【0151】
また、データD(m)、D(m+1)を選択して加算した走査線5の各ラインLa〜Lbに接続されている放射線検出素子7については、データD(m)、D(m+1)にそれぞれオフセット補正値Oが重畳されているため、
=(D(m)−O)+(D(m+1)−O)
∴d=D(m)+D(m+1)−2O …(3)
を演算して、各放射線検出素子7ごとの真の画像データdを算出する。
【0152】
そして、放射線画像撮影装置1の制御手段22やコンソール58は、このようにして算出した各放射線検出素子7ごとの真の画像データdに対してゲイン補正や対数変換処理、正規化処理、階調処理等の各種処理を施して、最終的な画像データを算出し、それに基づいて最終的な放射線画像pを生成するようになっている。
【0153】
なお、ゲイン補正や対数変換処理等の画像処理の仕方は公知であり、説明を省略する。
【0154】
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1および放射線画像撮影システム50によれば、放射線が照射されている間にオン電圧が印加された走査線5以外の走査線5に接続されている放射線検出素子7については、放射線の照射が終了した後、最初に読み出されたデータD(m)またはデータD(m+1)のみを選択して、それ以外のデータは用いず、また、放射線が照射されている間にオン電圧が印加された走査線5に接続されている放射線検出素子7については、放射線が照射されている間に読み出されたデータD(m)とその次のフレームで読み出されたデータD(m+1)とを選択して加算したデータのみを用いて、放射線画像pを生成するように構成した。
【0155】
放射線の照射により発生した電荷に起因する真の画像データdを含むデータDが読み出されたフレームの次のフレームでは、通常、いわゆる読み残しのデータが読み出されるが、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1および放射線画像撮影システム50では、上記のように、放射線の照射により発生した電荷に起因する真の画像データdを含むデータDに、読み残しのデータを加算せずに排除するように構成したため、読み残しのデータを加算したりしなかったりすることで現れる濃淡が放射線画像p上に現れないようにすることが可能となり、濃淡のない放射線画像pを生成することが可能となる。
【0156】
[第2の実施の形態]
上記の第1の実施形態では、上記のように、放射線画像撮影装置1および放射線画像撮影システム50を、読み残しのデータを積極的に排除するように構成する場合について説明したが、放射線の照射により発生した電荷に起因する真の画像データdを含むデータDに、読み残しのデータを加算するように構成することも可能である。
【0157】
その際、上記のように、読み残しのデータを加算したり加算しなかったりすると、生成された放射線画像p上に濃淡が現れるため、第2の実施形態では、各放射線検出素子7から読み出された、放射線の照射により発生した電荷に起因する真の画像データdを含むデータDに、読み残しのデータを一律に加算するように構成される。
【0158】
具体的には、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、図11に示したように、放射線が照射された場合、m回目のフレームで放射線の照射が開始されたことを検出し、m+1回目のフレームで放射線の照射が終了したことを検出すると、その次のm+2回目のフレームまで各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を行って、読み出し処理を終了する。
【0159】
そして、データDの選択処理等をコンソール58で行う場合には、放射線の照射の開始を検出したm回目のフレームから、放射線の照射の終了を検出したm+1回目のフレームの次のm+2回目のフレームまでの各フレームの各放射線検出素子7ごとの各データD(m)〜D(m+2)とオフセット補正値Oとを、通信手段であるアンテナ装置39(図1や図7等参照)を介してコンソール58に送信する。
【0160】
そして、放射線画像撮影装置1の制御手段22やコンソール58は、データDの選択等の処理では、放射線が照射されている間にオン電圧が印加された走査線5の各ラインLa〜Lb以外の走査線5の各ラインL1〜La-1に接続されている放射線検出素子7については、上記のデータD(m+1)と、その次のm+2回目のフレームで読み出されたデータD(m+2)とを選択して加算する。
【0161】
また、放射線が照射されている間にオン電圧が印加された走査線5の各ラインLa〜Lb以外の走査線5の各ラインLb+1〜Lxに接続されている放射線検出素子7については、上記のデータD(m)と、その次のm+1回目のフレームで読み出されたデータD(m+1)とを選択して加算する。
【0162】
さらに、放射線が照射されている間にオン電圧が印加された走査線5の各ラインLa〜Lbに接続されている放射線検出素子7については、上記のデータD(m)、D(m+1)のほかに、さらにその次のm+2回目のフレームで読み出されたデータD(m+2)とを選択して加算する。
【0163】
放射線画像撮影装置1の制御手段22やコンソール58は、続いて、上記のようにして選択して加算したデータDに基づいて、各放射線検出素子7ごとの真の画像データdを算出し、算出した真の画像データdに基づいて放射線画像pを生成する。
【0164】
具体的には、まず、データD(m+1)、D(m+2)を選択して加算した走査線5の各ラインL1〜La-1に接続されている放射線検出素子7については、データD(m+1) 、D(m+2)にそれぞれオフセット補正値Oが重畳されているため、
=(D(m+1)−O)+(D(m+2)−O)
∴d=D(m+1)+D(m+2)−2O …(4)
を演算して、各放射線検出素子7ごとの真の画像データdを算出する。
【0165】
データD(m)、D(m+1)を選択して加算した走査線5の各ラインLb+1〜Lxに接続されている放射線検出素子7についても、同様に、
=(D(m)−O)+(D(m+1)−O)
∴d=D(m)+D(m+1)−2O …(5)
を演算して、各放射線検出素子7ごとの真の画像データdを算出する。
【0166】
また、データD(m)、D(m+1)、D(m+2)を選択して加算した走査線5の各ラインLa〜Lbに接続されている放射線検出素子7については、データD(m)〜D(m+2)にそれぞれオフセット補正値Oが重畳されているため、
=(D(m)−O)+(D(m+1)−O)+(D(m+2)−O)
∴d=D(m)+D(m+1) +D(m+2)−3O …(6)
を演算して、各放射線検出素子7ごとの真の画像データdを算出する。
【0167】
そして、放射線画像撮影装置1の制御手段22やコンソール58は、このようにして算出した各放射線検出素子7ごとの真の画像データdに対してゲイン補正や対数変換処理、正規化処理、階調処理等の各種処理を施して、最終的な画像データを算出し、それに基づいて最終的な放射線画像pを生成するようになっている。
【0168】
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1および放射線画像撮影システム50によれば、放射線が照射されている間にオン電圧が印加された走査線5以外の走査線5に接続されている放射線検出素子7については、放射線の照射が終了した後、最初に読み出されたデータD(m)またはデータD(m+1)と、その次のフレームで読み出されたデータD(m+1)またはデータD(m+2)とを選択して加算し、また、放射線が照射されている間にオン電圧が印加された走査線5に接続されている放射線検出素子7については、放射線が照射されている間に読み出されたデータD(m)と、その次のフレームおよび当該次のフレームの次のフレームで読み出された各データD(m+1)、D(m+2)とを選択して加算して、放射線画像pを生成するように構成した。
【0169】
そのため、第1の実施形態で選択されたり選択して加算されたりして算出された、放射線の照射により発生した電荷に起因する真の画像データdを含むデータDに、その次のフレームで読み出された読み残しのデータを一律に加算するように構成したため、第1の実施形態の場合と同様に、読み残しのデータを加算したりしなかったりすることで現れる濃淡が放射線画像p上に現れないようにすることが可能となり、濃淡のない放射線画像pを生成することが可能となる。
【0170】
なお、上記の第1の実施形態や第2の実施形態のように構成すると、上記のような有効な効果が発揮されるが、より実質的に有効な効果が、各フレームにおいて下記表2に示すようなデータDが読み出される場合に発揮される。
【0171】
【表2】

【0172】
表2と表1とを比較して分かるように、表2の場合では、放射線画像撮影装置1に照射された放射線の線量が表1の場合よりも強くなっている。このように、放射線画像撮影装置1に強い放射線が照射されると、表2に示したように、放射線の照射により発生した電荷に起因する真の画像データdを含むデータDが読み出された後のフレームで、比較的大きなデータDが読み出される場合がある。
【0173】
これらのデータDは、第1の実施形態や第2の実施形態で説明した読み残しのデータD、すなわち放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷のうちの前回のフレームまでで読み出し切れなかった電荷に起因するデータとして説明するには値が大き過ぎる値であり、いわゆるラグ(lag)によるデータが含まれていると考えられている。
【0174】
ラグは、フォトダイオード等の放射線検出素子7に強い放射線が照射された場合、そのi層76(図5参照)等で発生した電子や正孔の一部が、一種の準安定なエネルギーレベル(metastable state)に遷移して、放射線検出素子7内での移動性を失って放射線検出素子7から読み出され難くなった後、エネルギーレベルが低下した(すなわち失活した)ものが、後のフレームで読み出されるものである。
【0175】
しかし、準安定なエネルギーレベルに一旦遷移した電子や正孔は、容易に失活しないため、放射線検出素子7内に比較的長い期間残存する。そのため、強い放射線が照射されて大きなラグが発生すると、表2に示したように、放射線が照射されたフレーム以後の各フレームで、比較的大きな値のラグに起因するデータDが比較的長期間にわたって読み出され続ける状態になる。
【0176】
ところで、各フレームで得られたデータDが表1に示したようなデータDであった場合、前述したように、m回目とm+1回目の各フレームで読み出された各データD(m)、D(m+1)を各放射線検出素子7ごとに加算すると、上記のように、放射線画像p(図18参照)上の画像領域Aと画像領域Bとで濃淡が現れる。
【0177】
しかし、例えば、m回目〜m+2回目の3フレーム分の各データD(m)〜D(m+2)を各放射線検出素子7ごとに加算するように構成すると、少なくとも走査線5の各ラインL1〜La-1に接続されている放射線検出素子7と、走査線5の各ラインLb+1〜Lxに接続されている放射線検出素子7では、いずれの場合も加算値が30035になり、放射線画像pの画像領域A、Bに濃淡が現れなくなる。なお、上記の第1、第2の実施形態のように構成すれば、放射線画像pの画像領域A、Bに濃淡が現れなくなることは前述した通りである。
【0178】
一方、各フレームで表2に示したようなデータDが得られた場合に、上記と同様に、m回目〜m+2回目の3フレーム分の各データD(m)〜D(m+2)を各放射線検出素子7ごとに加算すると、走査線5の各ラインL1〜La-1に接続されている放射線検出素子7では加算値が60405であるのに対し、走査線5の各ラインLb+1〜Lxに接続されている放射線検出素子7では加算値が60700になるため、放射線画像pの画像領域A、Bに明らかに濃淡が現れる。
【0179】
また、各フレームで表2に示したようなデータDが得られた場合に、m回目とm+1回目の2フレーム分の各データD(m)、D(m+1)を各放射線検出素子7ごとに加算すると、走査線5の各ラインL1〜La-1に接続されている放射線検出素子7では加算値が60005であるのに対し、走査線5の各ラインLb+1〜Lxに接続されている放射線検出素子7では加算値が60400になるため、やはり放射線画像pの画像領域A、Bに明らかに濃淡が現れる。
【0180】
このように、特に、放射線画像撮影装置1に強い放射線が照射されて大きなラグが発生するような場合には、従来の2フレーム分或いは3フレーム分の各データDを単純に加算する方法は採用することができない。
【0181】
それに対し、上記の第1、第2の実施形態で説明した手法では、上記のように、放射線の照射により発生した電荷に起因する真の画像データdを含むデータDだけを用い、ラグに起因するデータDは用いず(第1の実施形態の場合)、或いは、放射線の照射により発生した電荷に起因する真の画像データdを含むデータDと、その直後のフレームで読み出されたラグに起因するデータDとを一律に加算して用いる(第2の実施形態の場合)。
【0182】
そのため、上記の第1、第2の実施形態に係る放射線画像撮影装置1や放射線画像撮影システム50によれば、比較的大きなラグが生じるような強い放射線が放射線画像撮影装置1に照射された場合であっても、放射線画像pの画像領域A、Bに濃淡が現れることが的確に防止され、濃淡がない放射線画像pを生成することが可能となるといった、より実質的に有効な効果が得られる。
【0183】
[第3の実施の形態]
上記の第1、第2の実施形態では、図18に示したような放射線画像pにおいて、放射線の照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5に対応する画像領域δTと、その上側の画像領域A、およびその下側の画像領域Bで濃淡が生じないようにするための処理について説明した。
【0184】
より具体的には、図18と同図の図13(A)に示す放射線画像pにおいて、例えば、信号線6の延在方向(図中では上下方向の矢印方向)に処理後の各放射線検出素子7のデータDを見た場合に、従来の方法では、図13(B)に示すように、放射線画像pの画像領域A、BにデータDの差ΔDが生じる。そして、上記の第1、第2の実施形態ではこのデータDの差ΔDをなくすための処理について説明した。
【0185】
一方、放射線の照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5の各ラインLa〜Lbに対応する画像領域δTについて見てみると、図13(B)に示すように、画像領域δTにおける処理後の各放射線検出素子7のデータDが、画像領域A、Bにおける処理後の各放射線検出素子7のデータDと有意に異なる値になる場合がある。
【0186】
本発明者らの研究では、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されると、本実施形態では、照射された放射線がシンチレータ3(図2等参照)で電磁波に変換されるが、この電磁波が各TFT8に照射されることにより、各TFT8内を電流が流れ易くなり、各TFT8で各放射線検出素子7内に蓄積されている電荷のリーク量が増加するためにこのような現象が生じると考えられている。なお、放射線の照射が終了すれば、リーク量は元に戻る。
【0187】
つまり、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されることにより、検出部P上の全てのTFT8でリーク量が増加するが、そのリークした電荷は、放射線が照射されている最中にデータDが読み出される走査線5の各ラインLa〜Lbに接続されている各放射線検出素子7の電荷に重畳されて読み出される。
【0188】
より具体的に言えば、図7に示したように、1本の信号線6には多数の放射線検出素子7がTFT8を介して接続されており、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されると、その1本の信号線6に接続されている全てのTFT8でリーク量が増加する。そして、その1本の信号線6に接続されている1個の放射線検出素子7から電荷が読み出されている際に、その信号線6に接続されている他の各放射線検出素子7からのリーク量が増加しているため、当該1個の放射線検出素子7から本来読み出されるべきデータDに、他の放射線検出素子7からリークした電荷に起因するデータが上乗せされて読み出される。
【0189】
そのため、走査線5の各ラインLa〜Lbに接続されている各放射線検出素子7から読み出されたデータDが、他の放射線検出素子7からTFT8を介してリークした電荷に相当する分だけ大きくなり、放射線画像pの走査線5の各ラインLa〜Lbに対応する画像領域δTにおける各データDが、画像領域A、Bにおける各データDよりも有意に大きな値になると考えられている。
【0190】
このような現象が生じることを防止するための1つの手法として、全てのTFT8に遮光材を設けて、シンチレータ3から照射された電磁波が各TFT8に到達しないように構成することが可能である。
【0191】
一方、上記のように、図13(B)に示す画像領域δTにおける各放射線検出素子7の各データDに重畳される増加分δDは、当該放射線検出素子7が接続されている1本の信号線6に接続されている全ての放射線検出素子7からリークして当該信号線6に流れ込む電荷に起因するデータDの増加分であるが、本発明者らの研究では、増加分δDは、当該信号線6に接続されている各放射線検出素子7内に蓄積されている各電荷の総和に比例するという知見が得られている。
【0192】
そして、各放射線検出素子7内に蓄積されている電荷は、画像領域A、Bの各放射線検出素子7すなわち走査線5の各ラインL1〜La-1、Lb+1〜Lxに接続されている各放射線検出素子7ではデータDとして読み出され、画像領域δTの部分の各放射線検出素子7すなわち走査線5の各ラインLa〜Lbに接続されている各放射線検出素子7では、読み出されたデータDから上記のリーク分が重畳された増加分δDを減算した差分D−δDに相当するものである。
【0193】
すなわち、画像領域A、Bの各放射線検出素子7すなわち走査線5の各ラインL1〜La-1、Lb+1〜Lxに接続されている各放射線検出素子7内に蓄積されている電荷は、それらの各放射線検出素子7から読み出されたデータDに比例し、画像領域δTの部分の各放射線検出素子7すなわち走査線5の各ラインLa〜Lbに接続されている各放射線検出素子7内に蓄積されている電荷は、それらの各放射線検出素子7から読み出されたデータDから増加分δDを減算した差分D−δDに比例する。
【0194】
そのため、図13(B)に示す画像領域δTにおける各放射線検出素子7の各データDに重畳される増加分δDは、走査線5の各ラインL1〜La-1、Lb+1〜Lxに接続されている各放射線検出素子7についての各データDと、走査線5の各ラインLa〜Lbに接続されている各放射線検出素子7についての各差分D−δDとの総和に比例する。
【0195】
ここで、画像領域δTにおける各データDに含まれるリークによる増加分δDの大きさが、データD自体の大きさに比べてごく小さいものであることを考慮すると、上記の差分D−δD≒Dと近似することができるため、増加分δDは、当該放射線検出素子7がTFT8を介して接続されている信号線6に接続されている全ての放射線検出素子7のデータDの総和に比例すると近似することが可能である。
【0196】
そして、上記の第1の実施形態で説明した手法や第2の実施形態で説明した手法で算出される各放射線検出素子7ごとのデータDを用いて、増加分δDを算出する対象の放射線検出素子7が接続されている信号線6に接続されている全ての放射線検出素子7のデータDの総和を算出し、それに予め実験的に求められた比例定数κを乗算して増加分δDを算出する。
【0197】
そして、算出した増加分δDを、当該放射線検出素子7のデータD(すなわち第1の実施形態の場合はD(m)+D(m+1)、第2の実施形態の場合はD(m)+D(m+1)+D(m+2))から減算して、当該放射線検出素子7の本来のデータDを算出する。
【0198】
放射線画像pの画像領域δTの全ての放射線検出素子7について上記の処理を行い、算出した本来のデータDから上記(3)式或いは(6)式に従ってオフセット補正値Oを減算処理して真の画像データdを算出する。
【0199】
このように構成することで、図14に示すように、上記の第1の実施形態や第2の実施形態の効果により、放射線画像pの画像領域A、BのデータDの差ΔD(図13(B)参照)がなくなるとともに、画像領域δTのデータDの画像領域A、BのデータDからの増加分δDもなくなる。そのため、放射線画像pの全域において濃淡が現れないようにすることが可能となり、濃淡のない放射線画像pを生成することが可能となる。
【0200】
なお、上記の各実施形態では、m回目のフレームで放射線の照射が開始されたことを検出した後、放射線の照射が終了したことを検出して、照射終了を検出したフレーム(すなわちm+1回目のフレーム)或いはその次のフレーム(すなわちm+2回目のフレーム)まで各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を行う場合について説明したが、例えば、放射線の照射が開始されたことを検出した後、放射線の照射が開始されたことを検出したフレームを含む何フレーム分の読み出し処理を行うかを予め決めておくように構成することも可能である。
【0201】
また、上記の各実施形態では、放射線が放射線画像撮影装置1に対して図16に示したように照射された場合について説明したが、図17に示したように照射された場合についても同様に処理が行われることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0202】
1 放射線画像撮影装置
5、L1〜Lx 走査線
6 信号線
7 放射線検出素子
8 TFT(スイッチ手段)
15 走査駆動手段
17 読み出し回路
22 制御手段
39 アンテナ装置(通信手段)
50 放射線画像撮影システム
58 コンソール
D データ
D(m)〜D(m+2) フレームごとのデータ
P 検出部
p 放射線画像
r 領域
δD データの増加分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子とを備える検出部と、
前記放射線検出素子からの読み出し処理の際に、データ読み出し用の電圧を印加する前記各走査線を順次切り替えながら印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、前記データ読み出し用の電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から読み出された前記電荷をデータに変換する読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
を備え、
前記検出部上の全ての前記放射線検出素子から前記データを読み出す期間を1フレームとするとき、前記放射線検出素子からの前記フレームごとの読み出し処理を繰り返し行い、少なくとも放射線が照射された時点で前記読み出し処理を行っている前記フレームを含む所定数のフレーム分の前記フレームごとの読み出し処理を行って、前記各フレームごとに前記各放射線検出素子ごとの前記データを取得し、
前記制御手段は、
放射線が照射されている間に前記データ読み出し用の電圧が印加された前記走査線以外の前記走査線に接続されている前記放射線検出素子については、当該放射線検出素子から読み出された前記各データのうち、放射線の照射が終了した後、最初に読み出された前記データを選択し、
放射線が照射されている間に前記データ読み出し用の電圧が印加された前記走査線に接続されている前記放射線検出素子については、当該放射線検出素子から読み出された前記各データのうち、放射線が照射されている間に読み出された前記データと、その次のフレームで読み出された前記データとを選択して加算し、
前記選択したデータおよび前記選択して加算したデータに基づいて放射線画像を生成することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
放射線が照射されている間に前記データ読み出し用の電圧が印加された前記走査線以外の前記走査線に接続されている前記放射線検出素子については、当該放射線検出素子から読み出された前記各データのうち、放射線の照射が終了した後、最初に読み出された前記データと、その次のフレームで読み出された前記データとを選択して加算し、
放射線が照射されている間に前記データ読み出し用の電圧が印加された前記走査線に接続されている前記放射線検出素子については、当該放射線検出素子から読み出された前記各データのうち、放射線が照射されている間に読み出された前記データと、その次のフレームおよび当該次のフレームの次のフレームで読み出された前記各データとを選択して加算し、
放射線が照射されている間に前記データ読み出し用の電圧が印加された前記走査線以外の前記走査線に接続されている前記放射線検出素子についての前記選択して加算したデータと、放射線が照射されている間に前記データ読み出し用の電圧が印加された前記走査線に接続されている前記放射線検出素子についての前記選択して加算したデータに基づいて放射線画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記制御手段は、放射線が照射されている間に前記データ読み出し用の電圧が印加された前記走査線に接続されている前記放射線検出素子については、前記選択して加算したデータから、放射線が照射された前記各スイッチ手段を介して前記各放射線検出素子からリークした電荷に起因する前記選択して加算したデータの増加分を算出し、前記選択して加算したデータから前記増加分を減算した値と、前記選択したデータとに基づいて放射線画像を生成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記各フレームごとに前記検出部上の全ての前記放射線検出素子から読み出された前記データの合計値に基づいて放射線の照射の開始および終了を検出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記各走査線に接続されている前記各放射線検出素子から読み出された前記データの積算値に基づいて放射線の照射の開始および終了を検出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子とを備える検出部と、
前記放射線検出素子からの読み出し処理の際に、データ読み出し用の電圧を印加する前記各走査線を順次切り替えながら印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、前記データ読み出し用の電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から読み出された前記電荷をデータに変換する読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置に前記データを送信する通信手段と、を備え、
前記検出部上の全ての前記放射線検出素子から前記データを読み出す期間を1フレームとするとき、前記放射線検出素子からの前記フレームごとの読み出し処理を繰り返し行い、少なくとも放射線が照射された時点で前記読み出し処理を行っている前記フレームを含む所定数のフレーム分の前記フレームごとの読み出し処理を行って、前記各フレームごとに前記各放射線検出素子ごとの前記データを取得する放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置から送信された前記各フレームごとの前記各放射線検出素子ごとの前記データに基づいて放射線画像を生成するコンソールと、
を備え、
前記コンソールは、
放射線が照射されている間に前記データ読み出し用の電圧が印加された前記走査線以外の前記走査線に接続されている前記放射線検出素子については、当該放射線検出素子から読み出された前記各データのうち、放射線の照射が終了した後、最初に読み出された前記データを選択し、
放射線が照射されている間に前記データ読み出し用の電圧が印加された前記走査線に接続されている前記放射線検出素子については、当該放射線検出素子から読み出された前記各データのうち、放射線が照射されている間に読み出された前記データと、その次のフレームで読み出された前記データとを選択して加算し、
前記選択したデータおよび前記選択して加算したデータに基づいて放射線画像を生成することを特徴とする放射線画像撮影システム。
【請求項7】
前記コンソールは、
放射線が照射されている間に前記データ読み出し用の電圧が印加された前記走査線以外の前記走査線に接続されている前記放射線検出素子については、当該放射線検出素子から読み出された前記各データのうち、放射線の照射が終了した後、最初に読み出された前記データと、その次のフレームで読み出された前記データとを選択して加算し、
放射線が照射されている間に前記データ読み出し用の電圧が印加された前記走査線に接続されている前記放射線検出素子については、当該放射線検出素子から読み出された前記各データのうち、放射線が照射されている間に読み出された前記データと、その次のフレームおよび当該次のフレームの次のフレームで読み出された前記各データとを選択して加算し、
放射線が照射されている間に前記データ読み出し用の電圧が印加された前記走査線以外の前記走査線に接続されている前記放射線検出素子についての前記選択して加算したデータと、放射線が照射されている間に前記データ読み出し用の電圧が印加された前記走査線に接続されている前記放射線検出素子についての前記選択して加算したデータに基づいて放射線画像を生成することを特徴とする請求項6に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項8】
前記コンソールは、放射線が照射されている間に前記データ読み出し用の電圧が印加された前記走査線に接続されている前記放射線検出素子については、前記選択して加算したデータから、放射線が照射された前記各スイッチ手段を介して前記各放射線検出素子からリークした電荷に起因する前記選択して加算したデータの増加分を算出し、前記選択して加算したデータから前記増加分を減算した値と、前記選択したデータとに基づいて放射線画像を生成することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の放射線画像撮影システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−185800(P2011−185800A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52482(P2010−52482)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】