説明

放熱膜を用いた熱放射加熱調理器

【課題】 電磁誘導部や発熱体を用いて、焼く、炙るという調理を実現する炙り焼き調理プレートを提供する。
【解決手段】 電磁誘導発熱プレート20は電磁誘導部10より発せられる高周波電磁波を受けて誘導される渦電流により発熱する。放熱膜30は電磁誘導発熱プレート20の上面に塗布され、電磁誘導発熱プレート20の熱エネルギーを遠赤外線に変換して放射し、食材200の炙り焼き調理を行う。放熱膜は、アルコキシド化合物からなるバインダーと、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、マグネシア(MgO2)、三酸化クロム(Cr2O3)の少なくとも一つを含む顔料と、溶媒からなる塗料を塗布して形成した膜とすることができる。バインダーとしては、例えば、テトラアルコキシシランに対してトリアルコキシシランを、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシランが4対6から3対7の割合で配合したものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源の熱エネルギーを遠赤外線に変換して放射し、食材の炙り焼き調理を行う熱放射加熱調理器に関する。熱源は限定されず、電熱ヒーター、電磁誘導(IH)、ガスコンロなど安定した発熱が可能な発熱源であれば良い。
【背景技術】
【0002】
従来から、渦巻き状のコイル装置からの磁力線により、鍋に渦電流を生じさせて発熱させる誘導加熱調理器として、電磁誘導加熱調理器などがある。図14は、従来の電磁誘導加熱調理器と被加熱調理具の構成を示す図である。図14に示すように電磁誘導加熱調理器は上面にガラスセラミックなどよりなる耐熱平板71を配置し、その下部に加熱コイル72を有し、前記耐熱平板71上に載置された被加熱調理具である鍋体73を電磁誘導加熱する構成となっている。ここで前記鍋体73はアルミなどの非磁性金属製としたとき、これ自体は電磁誘導加熱されないので、鍋体73の裏面に鉄系の金属層74を溶射加工などにより一体に形成するのが一般的であった。図14中の75は温度センサー(図示せず)を内蔵した感熱筒であり、鍋体73裏面に圧接されている。76は上ボディ、77は下ボディを示している。
【0003】
電磁誘導加熱により直接鉄鍋73を加熱する方法は、従来のガス調理器やシーズヒータやパネルヒーターなどの電熱ヒーター調理器に比べて利点が多いと言われている。
【0004】
第1には、鉄鍋以外に、火や発熱体の存在がなく安全性が高い点が挙げられる。電磁誘導加熱では直接鉄鍋が発熱するために火や発熱体の存在がない。一方、ガス調理器では火を扱わざるを得ず、引火の危険性などがある。ヒーター調理器では熱く熱せられた発熱体があり、やけどなどの危険性がある。
【0005】
第2には、熱効率の良さと温度調整が容易である点が挙げられる。電磁誘導加熱では直接鉄鍋が発熱するためにエネルギーロスが少ない。一方、ヒーター調理器ではヒーター自身の発熱ロス、ガス調理器では五徳などの金属構造物等を加熱する必要があるエネルギーロスが生じる。
従来の電磁誘導加熱調理器は、上記のように多くの利点のもと、鍋やフライパンなど調理器具の加熱により行える調理には広く適用できるものである。
【0006】
【特許文献1】特開平05−343171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の電磁誘導加熱調理器は、上記のように利点も多いが、調理方法が限られている点が問題であった。従来の電磁誘導加熱調理器は、フライパンで焼く、鍋で煮る・炊く、てんぷら油で揚げるという調理がメインである。
フライパン調理によれば、高温で短時間に食品の表面に焦げ目を付けることができ、一旦焦げ目が付いたら素早く温度を下げ、後はじっくり中まで加熱すると言う加熱調理も可能である。鍋ではだし汁や水分とともに煮る・炊くという調理が容易に行うことができる。
【0008】
しかし、その一方で、炙り焼きという調理ができなかった。例えば、焼肉、焼き魚、うなぎの蒲焼などは、直火または遠赤外線で炙って焦げ目をつけるという調理が必要であるが、従来の電磁誘導加熱調理器では鉄製の調理器を熱して当該熱で食材を加熱することのみであり、直火または遠赤外線で炙るという調理はできなかった。そのため、従来の電磁誘導加熱調理器では、オーブン付き電子レンジなどの調理器具を併設して擬似的に炙るという調理法を提供していた。
【0009】
本来、食材の「炙り焼き」は、炭火などの熱源の上方に置いた金網に食材を載せて炙り焼く方法、または、食材を鉄串などに刺して熱源の上にかざして炙り焼く方法などであり、平面状の鉄板などに載せ置いて焼く方法は「鉄板焼き」であり、鍋底で焼くのは「鍋焼き」である。つまり、食材支持体が金網であり、熱源の上方にかざした形でなければ「炙り焼き」はできない。従来の電磁誘導加熱調理器では渦電流による発熱が必須であるため、鍋など一定の厚さと抵抗を有する金属板の上で直接調理せざるを得ず、「鉄板焼き」や「鍋焼き」はできても「炙り焼き」はできないものであった。
【0010】
上記問題点に鑑み、本発明は、焼く、炙るという調理を実現する放熱膜を用いた熱放射加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の第1の放熱膜を用いた熱放射加熱調理器は、
電磁誘導部と、
電磁誘導部より発せられる高周波電磁波を受けて誘導される渦電流により熱を発する電磁誘導発熱プレートと、
前記電磁誘導発熱プレートの表面に塗布された、高い熱伝導性と高い放熱性とを兼ね備えた性質を持つ放熱膜であって、前記電磁誘導発熱プレートが発した熱を吸収して遠赤外線に変換して放射する放熱膜とを備え、
前記放熱膜が放射した遠赤外線により食材の炙り焼き調理を行うものである。
上記構成により、従来の電磁誘導加熱調理器具では行うことができなかった、焼く、炙るという調理を火を使わずに電磁誘導を熱源とする熱放射を用いて実現することができる。
【0012】
なお、上記の第1の放熱膜を用いた熱放射加熱調理器の構成において、前記電磁誘導発熱プレートの周縁から立ち上がた周回状の側壁を設け、前記側壁の内周壁面に前記放熱膜を塗布し、前記放熱膜により周囲からも遠赤外線を放射するものが好ましい。
上記構成により、食材を周囲からも炙り焼き調理を行うことができる。
【0013】
また、上記の第1の放熱膜を用いた熱放射加熱調理器の構成において、前記電磁誘導発熱プレート表面側に対向するように設けられた熱反射プレートであって、前記熱反射プレートの反射面において前記放熱膜を備え、前記電磁誘導発熱プレートの放熱膜から到達する遠赤外線を受けて遠赤外線を再放射するものが好ましい。
上記構成により、食材を上下左右あらゆる方向から炙り焼き調理を行うことができ、従来技術ならば、ガスオーブンでしか調理できなかった焼き魚、焼き豚、うなぎの蒲焼など両面をこんがり炙り焼く必要がある食材の両面炙り焼き調理を火を使わずに電磁誘導を熱源とする熱放射のみを用いて実現することができる。
【0014】
次に、上記目的を達成するため、本発明の第2の放熱膜を用いた熱放射加熱調理器は、
熱を発する発熱体と、
前記発熱体が発した熱を裏面から吸収して表面に伝導する熱伝導プレートと、
前記熱伝導プレートの表面に塗布された、高い熱伝導性と高い放熱性とを兼ね備えた性質を持つ放熱膜であって、前記熱伝導プレートが発した熱を吸収して遠赤外線に変換して放射する放熱膜とを備え、
前記放熱膜が放射した遠赤外線により食材の炙り焼き調理を行うものである。
上記構成により、従来の鉄板などの熱伝導プレートを用いた調理器具では行うことができなかった、焼く、炙るという調理を発熱体を熱源とする熱放射を用いて実現することができる。
【0015】
なお、上記第2の放熱膜を用いた熱放射加熱調理器の構成において、前記熱伝導プレートの裏面にも前記放熱膜を形成し、裏面側に形成されている前記放熱膜により前記発熱体が発した熱を吸収して前記熱伝導プレートに伝導するものであることが好ましい。
上記構成により、発熱体の熱を効率よく吸収し、効率よく熱伝導プレートに熱を伝導し、表面の放熱膜から食材に向けて遠赤外線を放射することができる。
【0016】
なお、上記の第2の放熱膜を用いた熱放射加熱調理器の構成において、前記熱伝導プレートの周縁から立ち上がた周回状の側壁を設け、前記側壁の内周壁面に前記放熱膜を塗布し、前記放熱膜により周囲からも遠赤外線を放射するものが好ましい。
上記構成により、食材を周囲からも炙り焼き調理を行うことができる。
【0017】
また、上記の第2の放熱膜を用いた熱放射加熱調理器の構成において、前記熱伝導プレート表面側に対向するように設けられた熱反射プレートであって、前記熱反射プレートの反射面において前記放熱膜を備え、前記熱伝導プレートの放熱膜から到達する遠赤外線を受けて遠赤外線を再放射するものが好ましい。
上記構成により、食材を上下左右あらゆる方向から炙り焼き調理を行うことができ、従来技術ならば、ガスオーブンでしか調理できなかった焼き魚、焼き豚、うなぎの蒲焼など両面をこんがり炙り焼く必要がある食材の両面炙り焼き調理を火を使わずに発熱体を熱源とする熱放射を用いて実現することができる。
【0018】
ここで、前記放熱膜は、アルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応により生成されるバインダーと、遠赤外線放射性物質の顔料と、溶媒を備えた塗料を塗布・乾燥することにより形成された塗布膜であって、前記アルコキシド化合物の加水分解後、シラノール脱水縮合の進展により形成されるSi−Oネットワークおよび残存するシラノール基により構成される被膜により前記熱伝導性と前記放熱性とを発揮せしめたものであることが好ましい。
【0019】
また、電子回路を構成する良導体素材パターンは例えば銅ペーストやアルミニウムペーストなど電気を通しやすく印刷に適した金属ペーストなどで製作することができる。
上記構成により、放熱膜自体にはSi−Oネットワークが全体を全通しているのでSi−Oネットワークを伝わることにより熱が効率よく運搬され、高い熱放射率が得られる。さらに、無機鉱物である無機顔料が含まれて固化されているので熱放射率が落ちることはない。
【0020】
なお、放熱膜の成分は以下のものとすることができる。
まず、放熱膜におけるアルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応により生成されるバインダーの第1の構成として、テトラアルコキシシランに対してトリアルコキシシランを、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシランが5対5から0対10の割合で配合することにより、前記アルコキシド化合物の加水分解後のシラノール脱水縮合により生じる塗料中に存在するSi−Oネットワーク素材の形成進行の制御とシラノール基の残存量の制御を行ったものが好ましい。
【0021】
次に、放熱膜におけるアルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応により生成されるバインダーの第2の構成として、テトラアルコキシシランに対してトリアルコキシシランとジアルコキシシランを、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシラン:ジアルコキシシランが4.5対4.5対1から7.2対1.8対1の割合で配合し、前記アルコキシド化合物の加水分解後のシラノール脱水縮合により生じる塗料中に存在するSi−Oネットワーク素材の形成進行の制御とシラノール基の残存量の制御を行ったものが好ましい。
【0022】
上記の熱放射加熱調理器を形成する放熱膜用塗料において、塗料中に存在する強靭なSi−Oネットワーク素材の形成とシラノール基の残存量を制御することができ、熱放射加熱調理器に対して放熱性、耐熱性、基材への強い付着性、靭性を同時に与えることができる。また、Si−Oネットワーク素材をある程度まで形成しておくことにより膜が形成される過程における収縮率が小さくなり残留応力が小さくなり基材への付着力が向上する。
【0023】
次に、前記放熱膜を形成する塗料における顔料の第1の構成として、シリカ(SiO2)、マグネシア(MgO2)、コージライトとシリカ(SiO2)、コージライトとアルミナ(Al2O3)、コージライトとシリカ(SiO2)およびアルミナ(Al2O3)の化合物のいずれかを含むものとすることが好ましい。
【0024】
また、前記放熱膜を形成する塗料における顔料の第2の構成として、前記第1の顔料に加え、酸化鉄(FeO、Fe2O3、Fe3O4)、二酸化マンガン(MnO2)、酸化コバルト(CoO)、三酸化コバルト(Co2O3)、酸化銅(I)(Cu2O)、酸化銅(II)(CuO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)またはそれらの化合物のいずれかを含むものとすることが好ましい。
上記放熱膜用塗料により、これら顔料により遠赤外線放射波長領域において高温領域から低温領域まで効率良い変換を得ることができる。
【0025】
次に、前記放熱膜を形成する塗料における溶媒は、沸点が常温より高い温度のアルコール類であり、前記放熱膜形成の際に前記溶媒を揮発させることによりポーラス構造を形成せしめるものとすることが好ましい。
【0026】
上記のように膜中にポーラス構造を作り込むことにより膜全体としてさらに優れた靭性を得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の第1の放熱膜を用いた熱放射加熱調理器によれば、従来の電磁誘導加熱調理器具では行うことができなかった、焼く、炙るという調理を火を使わずに電磁誘導を熱源とする熱放射を用いて実現することができる。
また、本発明の第2の放熱膜を用いた熱放射加熱調理器によれば、従来技術ならば、ガスオーブンでしか調理できなかった焼き魚、焼き豚、うなぎの蒲焼など両面をこんがり炙り焼く必要がある食材の両面炙り焼き調理をガス火を使わずに発熱体を熱源とする熱放射を用いて実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照しつつ、本発明の熱放射加熱調理器の実施例を説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施例に示した具体的な用途、形状、個数などには限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0029】
実施例1にかかる本発明の第1の放熱膜を用いた熱放射加熱調理器の例を示す。
ここでは、一例として、加熱対象の液体として、焼肉用の肉を挙げて説明する。
【0030】
図1は本発明の第1の熱放射加熱調理器100の構成を模式的に示した断面図である。
第1の熱放射加熱調理器100は、電磁誘導部10、電磁誘導発熱プレート20、放熱膜30、側壁40、食材支持体50を備えた構成となっている。
図2は、本発明の第1の熱放射加熱調理器100の遠赤外線発生原理を分かりやすく示した図となっている。
【0031】
電磁誘導部10は高周波電磁波を発するものである。いわゆるIH調理器具の原理を備えたものである。上面は例えばセラミックやガラスなどのトッププレートとなっている。
【0032】
電磁誘導発熱プレート20は、電磁誘導部10の上に載せ置いて使用する。電磁誘導部10より発せられる高周波電磁波を受けて誘導される渦電流により熱を発する。いわゆる電磁誘導加熱調理器に適応する金属板、つまり、鉄板やステンレス板などで良い。他の金属であっても電磁誘導加熱に適した金属板であれば適応できることは言うまでもない。ただし銅やアルミニウムなど抵抗値が小さいものであれば渦電流による発熱量が小さくなってしまうので適さないとされている。
【0033】
放熱膜30は、電磁誘導発熱プレート20の上面に塗布され、電磁誘導発熱プレート20が発した熱エネルギーを受けて遠赤外線に変換して放射するものである。アルコキシド化合物を十分に脱水縮合を行うことにより、膨大なSi−Oのネットワークを持ち、また、一定サイズの顔料を所定割合で配合することで十分な膜厚が確保される。こうして、例えば1,000℃で焼成しても十分なフレキシビリティーを持ち、かつ、硬度の高い堅牢な膜を得ることが出来る。
放熱膜30の形成方法については詳しく後述する。
【0034】
側壁40は、電磁誘導発熱プレート20の周縁から立ち上がた周回状の側壁である。側壁も食材に熱を伝導しやすいように熱伝導体の金属製とすることができる。
【0035】
食材支持体50は放熱膜30の上方において食材を支えるものである。この例では焼肉などで用いられている金網となっている。食材支持体50の上に模式的に食材200が載せ置かれている。この例では焼肉用の肉となっている。
【0036】
熱放射加熱調理器全体としては底面が電磁誘導発熱プレート20で周回状の側面が側壁40となったいわゆるサラダボール状の形状のものの上面に金網などの食材支持体が載せ置かれたものとなっている。
【0037】
なお、図示していないが、食材支持体50を金網とする場合、放熱膜30の上面に、食材を焼くことにより出る油や調理滓から放熱膜30を保護する保護層を設ける構造も可能である。放熱膜30が劣化しないように配慮することは好ましいところ、食材支持体50が金網であれば、食材200を調理するためににじみ出る油や調理滓などが下に滴り落ち、そのままでは直接放熱膜30に触れてしまう。そこで、放熱膜30の上面に保護層を設ける構造とするのである。
【0038】
このように、熱放射加熱調理器100は、電磁誘導部10を用いて食材200の炙り焼き調理を行うものとなっている。
【0039】
図3は電磁誘導発熱プレート20とその表面に塗布された放熱膜30の形状の一例を示した図である。
図3(a)の例では単なる円盤となっている。表面に放熱膜30が塗布形成されている。
図3(b)の例では同心円状に広がった円盤となっている。同心円を形成する線は平板状になっている。図3(a)の円盤を金型で打ち抜いて同心円状に成型すれば良い。
なお、これらの例では裏面には放熱膜30が形成されていない。裏面にも放熱膜30が塗布形成された構成例は後述する実施例で示す。
【0040】
ここで、熱放射加熱調理器100の放熱膜30に求められる重要な特徴をまとめておく。
第1の特徴は、熱放射率、つまり、熱源から得られる熱エネルギーの遠赤外線への変換効率が高いことである。
熱放射加熱調理器100において、放熱膜30が高効率で電磁誘導発熱プレート20の熱エネルギーを遠赤外線に変換するものである方が有利である。
電磁誘導発熱プレート20において電磁誘導により渦電流を発生すると抵抗があるために発熱するが、放熱膜30はその熱エネルギーを熱伝導により受け取り遠赤外線として再放射するが、その変換効率が低いと炙り焼きするための遠赤外線が少ないこととなり、調理性能が低いこととなってしまう。そこで本発明では放射膜30が熱エネルギー・遠赤外線の高い変換効率を持つことが重要である。
【0041】
第2の特徴は、薄い膜厚でも強い付着性能を持つことである。膜厚が厚いとコスト高を招くので薄膜である方が有利である一方、薄くても脆く剥がれ易いものであれば遠赤外線を放射する面積が減るので性能劣化を招いてしまうからである。例えば、膜厚が10μから200μの被膜であることが好ましく、基板などに塗布された膜の付着強度は碁盤目テストで100/100であることが好ましい。
【0042】
第3の特徴は、耐熱性が大きいことである。炙り焼き調理を実現するためには1000℃以上の高温にも耐える必要がある。セラミック系の塗料であれば500℃以上になればクラックが入ったり表面が割れたりするおそれがある。ホーローでは融解するおそれもある。これらでは炙り焼き調理用途には適さない。そこで放熱膜30においても耐熱性が大きいことが重要である。
【0043】
第4の特徴は、ある程度の靭性を持つことである。本発明のように塗料膜である放熱膜30から遠赤外線を放射するものであれば、電磁誘導発熱プレート20自体は熱を発するものであり薄いもので良い。熱膨張や冷却収縮を繰り返すこととなりその表面にたわみや歪みが一時的に生じる可能性もある。脆いものであればクラックが入ったり表面に割れ目が割れたりするおそれがある。そこである程度の靭性が必要となる。
【0044】
上記の放熱膜30の塗料組成には、上記第1から第4の特徴を実現するために組成に工夫がなされている。上記第1の特徴である遠赤外線への変換効率は顔料組成の工夫によりもたらされる。上記第2の特徴である付着性はバインダー組成の工夫によりもたらされる。上記第3の特徴である耐熱性はバインダー組成の工夫によりもたらされる。上記第4の特徴である靭性はバインダー組成の工夫によりもたらされる。
【0045】
まずバインダーの組成の工夫から説明する。
本発明の熱放射加熱調理器に用いる放熱膜を形成するための塗料のバインダーはアルコキシド化合物からなるバインダーとなっている。
放熱膜形成用塗料を塗布して放熱膜を形成する過程で、バインダーのアルコキシド化合物の脱水縮合により生じるSi−Oネットワークの形成進行を制御しつつ残存するSi−OH基の量を制御し、金属プレートなどへの付着力の大きさを制御し、塗布される基材への強固な付着性、耐熱性、耐磨耗性を実現せしめるものである。
【0046】
第1の放熱膜用塗料のバインダー組成は、アルコキシド化合物からなるバインダーとして、テトラアルコキシシランとトリアルコキシシランを所定割合で混合したものとなっている。
その混合割合は、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシランが5対5から0対10の割合が好ましい。
第2の放熱膜用塗料のバインダー組成は、アルコキシド化合物からなるバインダーとして、テトラアルコキシシランとトリアルコキシシランとジアルコキシシランを所定割合で混合したものとなっている。
その混合割合は、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシラン:ジアルコキシシランが4.5対4.5対1から7.2対1.8対1の割合が好ましい。
【0047】
Si−OH官能基を4つ備えたテトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。
Si−OH官能基を3つ備えたトリアルコキシシランとしては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリエチルプロポキシシランなどが挙げられる。
【0048】
Si−OH官能基を2つ備えたジアルコキシシランとしては、ジチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0049】
アルコキシド化合物としてこれらを組み合わせて用いる。組み合わせで好ましいのはジメチルメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン及びテトラメトキシシランの組合せ、またはジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン及びテトラエトキシシランの組合せである。
【0050】
本発明では、アルコキシド化合物の加水分解後の脱水縮合により生じる塗料中に存在するSi−Oネットワーク素材の形成進行の制御とシラノール基の残存量の制御を行い、放熱膜30の熱伝導性と放熱性を確保する。
これらアルコキシド化合物の配合を工夫することにより第2の特徴である付着性、第3の特徴である耐熱性、第4の特徴である靭性を制御する。
【0051】
Si−Oネットワーク素材の形成進行の制御とシラノール基の残存量の制御の原理は以下の通りである。
アルコキシド化合物同士は加水分解によりシラノール基(Si−OH官能基)が生成され、Si−OH官能基の脱水縮合によりSi−Oネットワークの形成が進行してゆく。Si−OH官能基を4つ持つテトラアルコキシシランはSi−OH官能基を多く持つので、脱水縮合を促進させればSi−Oネットワークの形成進行が速く、早期にゲル化する。テトラアルコキシシランのみでバインダーを形成するとほぼ完全にSi−OH官能基が消費され、Si−Oネットワークが形成される。Si−OH官能基を3つ持つトリアルコキシシランもSi−OH官能基を持つので、脱水縮合を促進させればSi−Oネットワークの形成が進行し、ゲル化する。トリアルコキシシランのみでバインダーを形成すると粒子間のSi−OH官能基の存在が均等になるので、ほぼ完全にSi−OH官能基が消費された状態でSi−Oネットワークが形成される。
【0052】
Si−OH官能基を2つ持つジアルコキシシランもSi−OH官能基を持つので、脱水縮合を促進させればSi−Oネットワークの形成が進行し、ゲル化する。ジアルコキシシランのみでバインダーを形成すると同様にほぼ完全にSi−OH官能基が消費された状態でSi−Oネットワークの形成が形成される。しかし、ジアルコキシシランはSi−OH官能基が2つしかなく、脱水縮合によって直鎖状にSi−Oネットワークが形成されてしまい、堅牢性が小さくなる。
【0053】
本発明では、Si−Oネットワークによる堅牢な膜形成を目指すだけではなく、Si−Oネットワークの形成を進行させつつもSi−OH官能基をすべては消費させずに残存させるように制御する。残存したSi−OH官能基により金属プレートなどの基材のOH基との間の結合エネルギーにより基材と強力な付着力をもたらす。
つまり、Si−OH官能基を2つ持つアルコキシド化合物、Si−OH官能基を3つ持つアルコキシド化合物、Si−OH官能基を4つ持つアルコキシド化合物を、所定割合で混ぜ合わせると、アルコキシド分子間でSi−OH官能基の数に不均衡があるため、反応する相手となるSi−OH官能基がなく、いわば浮いてしまうSi−OH官能基が多数出てくるので脱水縮合が一気には進まなくなる。
【0054】
ただし、長期間放置していると、浮いているSi−OH同士の脱水縮合反応が進んでくるので残存するSi−OH官能基の量は漸減して行くが、上記のように2官能のアルコキシド化合物、3官能のアルコキシド化合物、4官能のアルコキシド化合物の割合を調整すれば、当初、脱水縮合は早期に進むもののSi−OH官能基の数が不均衡状態に陥ってからは脱水縮合に急速にブレーキがかかることとなる。
【0055】
後述するように、良好な熱伝導性、放熱性、絶縁性、付着性を備えた膜が形成される配合について実験を重ねて2官能のアルコキシド化合物、3官能のアルコキシド化合物、4官能のアルコキシド化合物の配合割合を見出した。
【0056】
以上の成分に調整した放熱膜用の塗料を用いて形成した、放熱膜30について、実際に塗料を形成し、種々の性能実験を行った。
まず、放熱膜30について、付着性試験を行い、放熱膜30が安定して基板上に付着している条件について実験し、次に、熱伝導性試験、放熱性試験を行い、放熱膜30が良好な熱伝導性、放熱性を備えていることを検証する。
【0057】
[付着性実験]
付着性実験に用いた放熱膜用塗料のバインダー組成
実験に用いた放熱膜用塗料のバインダー組成は、4官能基を備えたテトラアルコキシシランとしてモメンティブマテリアル社製のテトラメトキシシランを用いた。また、3官能基を備えたバインダーのトリアルコキシシランとしてモメンティブマテリアル社製のトリメチルメトキシシランを用いた。また、2官能基を備えたジメトキシシランとしてモメンティブマテリアル社製のジメチルメトキシシランを用いた。テトラメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルメトキシシランの配合を変えてそれぞれ製作した。
【0058】
加水分解に用いた水の量は、アルコキシド化合物1モルに対して水0.8〜1.4モルとした。水が0.8モル以下ではSi−OH基の発生が十分でなく膜の硬度が上がらず、1.4モル以上ではSi−OH基が多くなり、シラノールの分子結合が大きくなり、ゲル化が進展し、クラックが生じやすくなるからである。触媒としての酸の量は有機酸、無機酸何れの場合も、加水分解を起こすのに十分な量を用いた。
【0059】
サンプルのそれぞれに含まれるジメチルメトキシシラン(2官能)、トリメチルメトキシシラン(3官能)、テトラメトキシシラン(4官能)の配合を[表1]に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
−放熱膜を形成する基材
アルミブラスト処理を行ったアルミプレートと、ステンレスブラスト処理を行ったステンレスプレートを用いた。
−付着性実験の手法
付着性実験は、JIS−K5600−5−6の手法により碁盤目テストを行った。実験は3回行った。アルミブラスト処理を行ったアルミプレートに対する付着実験結果を[表2]に示す。
【0062】
【表2】

【0063】
注1:その他のアルコキシドとしてエトキシ基、フェニル基もあるが、エトキシ基はメトキシ基と反応スピードの違いなので省略し、フェニルは硬度が劣るので省略し、メチル基のみでテストを実施した。
注2:反応はアルコキシド1モルに対して水2.5〜4.5モル、望ましくは3.3モル、酸の量を十分入れ、顔料比率70%とし、膜厚を25μ±3μにして実施。
注3:分散溶媒はエタノール、イソプロピルアルコールを配合した物を使用した。
注4:分散は0.7mmのガラスビーズを使用した。分散後粒度はD50で0.35ミクロン。
注5:焼成条件は180℃で20分。基板はアルコール脱脂のみのアルミ板を使用した。試験片は7.5mmw×15.0mml×1.0mmtを各3枚。(評価は全数クリアー)
注6:塗布方法はスプレーコート。
注7:膜厚は15μ〜20μ、測定方法はマイクロメーター。
【0064】
上記付着性実験から、テトラアルコキシシランとトリアルコキシシランを混合したバインダーである配合1から配合3の実験結果より、混合割合は配合1から配合2の混合割合が良いことが実証できた。つまり、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシランが5対5から0対10の割合が好ましい。
【0065】
また、上記付着性実験から、テトラアルコキシシランとトリアルコキシシランとジアルコキシシランを混合したバインダーである配合4から配合9の実験結果より、混合割合は配合4から配合5の混合割合が良いことが実証できた。つまり配合6のように3官能基の割合が減ると付着性が劣り、また、配合7から配合9のように2官能基の割合が増えても付着性が劣る。つまり、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシラン:ジアルコキシシランが4.5対4.5対1から7.2対1.8対1の割合が好ましい。
【0066】
以上、本発明の絶縁放熱塗料のバインダーの組成を上記の割合となるように工夫すれば、放熱膜20の付着性が大きくなるように、Si−Oネットワークと残存するSi−OH基の量を制御できる。
【0067】
[熱伝導試験]
放熱膜20において、高い熱伝導率が得られていることを確認した。
−熱伝導試験に用いた放熱膜のバインダー組成
放熱膜のバインダー組成は、付着性実験に用いたバインダー組成と同じものとした。
【0068】
−放熱膜20を形成する基板
アルミブラスト処理を行ったアルミプレート(150mm×75mm×1.0mm)を用いた。
【0069】
−熱伝導性試験の手法
アルミプレートの半分に放熱膜20を形成し、残り半分は放熱膜20は形成せずアルミプレートが剥き出しのままとする。アルミプレートの裏面から加熱し、アルミプレートの表面の温度分布を測定した。
【0070】
本発明の熱放射加熱調理器に用いる放熱膜では、Si−Oネットワークが膜全体を全通しているので熱伝導率が高く、ポーラス構造にかかわらずコージライト、アルミナ、シリカ、ジルコニアという無機鉱物である無機顔料が含まれて固化されているので熱伝導率が高い。実際に放熱膜20の試料片を用いて熱伝導率を計測したところ、2W/mK以上の熱伝導率が得られていた。
【0071】
[熱放射性試験]
次に、放熱膜としての機能、つまり、発熱体から受けた熱エネルギーの遠赤外線エネルギーへの変換効率について検証する。本発明の熱放射加熱調理器に用いる放熱膜用塗料において、含有されている顔料は形成した膜において遠赤外線放射機能を与えるものである。それゆえに顔料の配合が重要である。
高い熱放射率を実現するためには、熱線波長領域の全範囲にわたって、放射率が100%に近く、さらに放射輝度が当該温度における黒体輻射に近い放射スペクトルを持つこと必要がある。
【0072】
第1の顔料として、シリカ(SiO2)、マグネシア(MgO2)、コージライトとシリカ(SiO2)、コージライトとアルミナ(Al2O3)、コージライトとシリカ(SiO2)およびアルミナ(Al2O3)の化合物のいずれかを含むものとする。これらは、熱拡散性が高く放熱性を有する上、熱膨張率が5×10−6〜10.5×10−6であり、比較的大きいので、顔料として含有させてシート状に成形しても、膜も金属の挙動と同様な挙動をする。それゆえ、膜中に引っ張り応力が発生せず、高温域でも安定した放熱性が得られる。しかも、絶縁性も得られる。なお、カーボンを一定量以上入れることにより容易に導電性が得られる。特に450℃までの大気中、または高温真空炉、或いは不活性ガス等の雰囲気炉中で従来不可能とされていたカーボンの面状発熱体が使用可能となる。
【0073】
上記の第1の顔料に対して、以下の第2の顔料を加える工夫も好ましい。第2の顔料は、酸化鉄(FeO、Fe2O3、Fe3O4)、二酸化マンガン(MnO2)、酸化コバルト(CoO)、三酸化コバルト(Co2O3)、酸化銅(I)(Cu2O)、酸化銅(II)(CuO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)またはそれらの化合物のいずれかを含むものである。
【0074】
なお、顔料の粒度は、膜の平滑性や綴密性、強度を考慮して、顔料の粒度は溶媒分散後で平均粒度で0.5μ以下が望ましい。
【0075】
アルコキシドと顔料の割合は、15〜45体積%が妥当である。15%以下では膜の靭性が低下し堅牢さが失われる。45%を超えると、脱水縮合による乾燥収縮量が多く、高温下でクラックが発生しやすく、所望の放熱性が得がたい。
【0076】
膜の厚みは、基材や発熱体と膜が強固に付着し、且つ、両者の熱膨張差が非常に近い場合でも、膜が厚くなりすぎると、クラックが発生する。それは、Si−OHが脱水縮合するときに起こる収縮現象が原因である。膜厚は、バインダーの含有量にもよるが、30μ以下が望ましい。特にアルコキシド化合物の脱水縮合物の全固形物(即ちSi−OHから生じるSiO2と混合したときの無機顔料成分の合計)にしめる割合が45体積%の場合、800℃でクラックの発生を防ぐ為には10μ前後が好ましい。膜厚が30μを超えると、膜が脆くなり、長時間の使用に耐えられなくなる。そのため、アルコキシド化合物の脱水縮合物の割合は30体積%以下が望ましい。
【0077】
サンプルとして顔料を[表3]のように配合した放熱膜試料2を作製し、遠赤外線放射実験を行った。
焼成条件は180℃で20分間焼き付けた。
膜厚はマイクロメーターの測定により20μ〜26μのものが焼成できた。
測定は遠赤外線応用研究会によった。
測定温度は60℃とした。
測定機種はJIR−E500を用いた。
測定条件は、分解能16cm−1、積算回数200回
検知器はMCTである。
【0078】
【表3】

【0079】
本発明の第1の顔料である、シリカ(SiO2)、マグネシア(MgO2)、、アルミナ(Al2O3)、マグネシア(MgO2)のうち、放熱膜試料2ではシリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、マグネシア(MgO2)とした。酸化チタンは着色顔料として配合し、塗料全体の色を白色に着色した。バインダーは3官能基を備えたトリメチルメトキシシランと4官能基を備えたテトラメトキシシランを配合した。
【0080】
上記構成の組成を持つ放熱膜試料2を用いて放射率と放射輝度測定を行った。
図2は放熱膜試料2の放射率である。
図3は放熱膜試料2の放射輝度スペクトルである。
放射輝度は、540.06kcal/m2・hrであった。
図3に見るように、低温の波長領域から高温の波長領域まで良好な放射輝度スペクトルが得られており、放熱性は、4μ〜24μの波長域での放射率は85%以上の放射率を有することが分かった。高い遠赤外線変換効率が得られていることが実証できた。
【0081】
[耐熱性試験]
放熱膜試料2を800℃に熱し、水で急冷却するという処理を繰り返して、クラックが入るか否かを試験した。
加熱はバーナーで800℃まで加熱した。冷却は冷水にて急速に冷却した。この加熱・冷却を5回繰り返した。
結果を[表4]に示す。
【0082】
【表4】

【0083】
[表面硬度試験]
本発明の熱放射加熱調理器に用いる放熱膜の耐摩耗性を調べるために放熱膜試料2を用いて表面硬度テストも行った。
硬度テストの方法は、JIS−K−5−4に準じた。
実験にはアルミプレートに焼成したものを用いた。
表面硬度テストの結果を[表5]に示す。
【0084】
【表5】

【0085】
なお、上記において、アルコキシド化合物と顔料の割合は、15〜45体積%が妥当であると指摘したが、実験にて実証した。バインダーであるアルコキシド化合物は放熱膜用塗料2と同様、トリメチルメトキシシランとテトラメトキシシランの混合とし、顔料の体積%を変えたサンプルを製作し、表面硬度テストを行うことにより妥当な割合を検証した。
【0086】
【表6】

【0087】
注1:アルコキシド化合物は代表例としてトリメチルメトキシシラン66.7重量%、テトラメトキシシラン33.5重量%、ジメチルメトキシシラン4,8重量%でテスト。
注2:各反応条件、分散条件、縮合脱水条件、膜厚、基材は前記テストに準じる。
注3:使用顔料は平均1次粒子径0.15μのアルミナ(Al2O3)、平均1次粒子径0.5μのカオリン、10〜20nのシリカ(SiO2)をそれぞれ30体積%、65体積%、5体積%配合したものを使用した。
注4:分散溶媒はエタノール、イソプロピルアルコールを配合した物を使用した。
注5:分散は0.7ミリ径のガラスビーズを用いたビーズミルで1時間実施した。その時の平均粒皮は0.35μであった。
注6:○は硬度7H以上、曲げ20R可、碁盤目テスト問題なし、△は硬度7Hまで、碁盤目テスト間題なし、Xは、膜が脆くクラック発生。
以上、アルコキシド化合物と顔料の割合は15〜45体積%が妥当であると実証できた。
【0088】
[耐腐食性試験]
本発明の熱放射加熱調理器に用いる放熱膜膜の耐腐食性も調べるために放熱膜試料2を用いて塩水噴霧試験と水浸試験も行った。
塩水噴霧試験の方法は、JIS−K5600−7−1に準じた。
測定はステンレスプレートのものを用いた。
塩水噴霧の放置時間は500時間とした。
塩水噴霧試験の結果を[表7]に示す。
【0089】
【表7】

【0090】
水浸試験の方法は、JIS−K5600−6−2に準じた。
測定はアルミプレートのものを用いた。
水浸の放置時間は500時間とした。
水浸試験の結果を[表8]に示す。
【0091】
【表8】

【0092】
以上、塩水噴霧試験と水浸試験の結果から、本発明の熱放射加熱調理器に用いる放熱膜の耐腐食性が大きいことが実証できた。
【0093】
次に、第4の特徴である靭性は、本発明の熱放射加熱調理器に用いる放熱膜が持つポーラス構造により得られる。本発明の熱放射加熱調理器に用いる放熱膜はその形成過程において、電磁誘導発熱プレート20塗布後に焼き付けをすることにより脱水縮合を促がすが、この際に溶媒も揮発し、溶媒が揮発した後に微細な気孔が残留するためポーラス構造となり膜自体に靭性が付与される。
【0094】
なお、顔料の配合もクラック防止に有効である。シート形状の基材や発熱体と、そこに付着した膜との間に大きな熱膨張差があると、膜にクラックが生じやすい。所定の熱膨張率を有する顔料を入れることにより、ある程度、熱膨張率の差があっても、それによって生じる膜のクラックを高温域においても防ぐことが出来る。
【0095】
[膜の厚み]
基材や発熱体と膜が強固に付着し、且つ、両者の熱膨張差が非常に近い場合でも、膜が厚くなりすぎると、クラックが発生する。それは、Si−OHが脱水縮合するときに起こる収縮現象が原因である。
【0096】
放熱膜の膜厚は、バインダーの含有量にもよるが、200μ以下が望ましい。特にアルコキシド化合物の脱水縮合物の全固形物(即ちSi−OHから生じるSiO2と混合したときの無機顔料成分の合計)にしめる割合が45体積%の場合、800℃でクラックの発生を防ぐ為には10μ前後が好ましい。膜厚が30μを超えると、膜が脆くなり、粉落ちして、長時間の使用に耐えられなくなる。そのため、アルコキシド化合物の脱水縮合物の割合は30体積%以下が望ましい。
高温下(とくに500℃以上)での250V以上での加圧時の絶縁抵抗を確保するためには50μ以上の膜厚が好ましい。
放熱性としては、4μ〜24μの波長域での放射率は85%以上の放射率を有する。
【0097】
以上、本発明の熱放射加熱調理器に用いる放熱膜は、バインダーの付着力が大きく、顔料も遠赤外線放射効率が高く、表面硬度が大きく、耐腐食性、耐熱性に優れたものである。
【0098】
以上、本発明の第1の放熱膜を用いた熱放射加熱調理器によれば、通常の熱放射加熱調理器の上に載せ置くのみで、高い熱交換率を実現しつつ炙り焼き調理を行うことができる。
【実施例2】
【0099】
実施例2にかかる本発明の第2の放熱膜を用いた熱放射加熱調理器の例を示す。
ここでも、一例として、加熱対象の液体として、焼肉用の肉を挙げて説明する。
【0100】
図6は本発明の第2の熱放射加熱調理器100aの構成を模式的に示した断面図である。
第2の熱放射加熱調理器100aは、発熱体11、熱伝導プレート21、放熱膜30、側壁40、食材支持体50を備えた構成となっている。
図7は、本発明の第2の熱放射加熱調理器100aの遠赤外線発生原理を分かりやすく示した図となっている。
【0101】
発熱体11は、熱を発する物体であり、例えば、電熱線やニクロム線などの発熱体が挙げられる。
熱伝導プレート21は、発熱体11が発した熱を裏面から吸収して表面に伝導するプレートであり、鉄やステンレスなどの素材でできている。
【0102】
放熱膜30は実施例1で説明したものと同様で良く、本実施例2では熱伝導プレート21の表面に塗布されている。放熱膜用の塗料は、アルコキシド化合物からなるバインダーと、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、マグネシア(MgO2)、三酸化クロム(Cr2O3)の少なくとも一つの単体またはそれらの化合物を含む顔料と、溶媒からなる塗料である。
【0103】
バインダーの組成は実施例1と同様で良く、ここでの説明は省略する。
【0104】
側壁40は、熱伝導プレート21の周縁から立ち上がた周回状の側壁である。側壁40も食材に熱を伝導しやすいように熱伝導体の金属製とすることができる。
食材支持体50は放熱膜30の上方において食材を支えるものである。この例では焼肉などで用いられている金網となっている。食材支持体50の上に模式的に食材200が載せ置かれている。
【0105】
熱放射加熱調理器全体としては底面が熱伝導プレート21で周回状の側面が側壁40となったいわゆるサラダボール状の形状のものの上面に金網などの食材支持体50が載せ置かれたものとなっている。
本実施例2の構成では、発熱体11が発熱した熱は熱伝導プレート21により伝導されて放熱膜30に伝えられる。放熱膜30は実施例1に示したように高い熱エネルギー遠赤外線変換効率を持ち、発熱体11の熱により大量の遠赤外線を放出することとなる。この遠赤外線により食材を炙り焼き調理する。
【0106】
以上、本実施例2の第2の放熱膜を用いた熱放射加熱調理器によれば、発熱体の熱を効率よく吸収し、効率よく熱伝導プレートに熱を伝導し、表面の放熱膜から食材に向けて遠赤外線を放射することができる。
【実施例3】
【0107】
実施例3にかかる熱放射加熱調理器の例を示す。
実施例3にかかる熱放射加熱調理器の例は、実施例2と同様の熱伝導プレート型の熱放射加熱調理器において、熱伝導プレートの表面のみならず裏面にも放熱膜を形成し、当該放熱膜を介して発熱体の熱を裏面側から吸熱して熱伝導プレート側に遠赤外線を放射してより一層、多くの熱を熱伝導プレートの表面側に設けられている放熱膜に熱を伝導するものである。
【0108】
図8は本発明の第3の熱放射加熱調理器100bの構成を模式的に示した断面図である。
実施例3にかかる熱放射加熱調理器100bは、発熱体11、熱伝導プレート21、表面側の放熱膜30、裏面側の放熱膜31、側壁40、食材支持体50を備えた構成となっている。
図9は、本発明の実施例3にかかる熱放射加熱調理器100bの遠赤外線発生原理を分かりやすく示した図となっている。
【0109】
発熱体11は、実施例2と同様、熱を発する物体であり、例えば、電熱線やニクロム線などの発熱体で良い。
熱伝導プレート21も、実施例2と同様、発熱体11が発した熱を裏面から吸収して表面に伝導するプレートであり、鉄やステンレスなどの素材でできている。
【0110】
放熱膜30および放熱膜31は、素材としては実施例1で説明したものと同様で良いが、本実施例3では熱伝導プレート21の裏面および表面の両面に塗布されている。
放熱膜用の塗料は、実施例1および実施例2で説明したように、アルコキシド化合物からなるバインダーと、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、マグネシア(MgO2)、三酸化クロム(Cr2O3)の少なくとも一つの単体またはそれらの化合物を含む顔料と、溶媒からなる塗料で良い。
【0111】
バインダーの組成は実施例1と同様で良く、ここでの説明は省略する。
側壁40および食材支持体50は実施例1または実施例2と同様で良い。
【0112】
本実施例3における遠赤外線放射の仕組みは以下のとおりである。
発熱体10が発熱して生じた熱は熱伝導プレート21の裏面に設けられた放熱膜31に到達する。放熱膜31は実施例1で説明したように熱エネルギーを受けて遠赤外線に変換して放射する性質を持つものであり、伝導された熱も効率的に吸収する性質を有している。実施例2の裏面に放熱膜が設けられていない構成に比べ、実施例3の裏面に放熱膜31が設けられている構成の方が、発熱体10が発熱した熱を効率的に吸収することができる。
【0113】
発熱体10からの熱を吸収した放熱膜31は当該熱を遠赤外線に変換して熱伝導プレート21側に放射する。つまり、実施例2の裏面に放熱膜が設けられていない構成に比べ、実施例3の裏面に放熱膜31が設けられている構成の方が効率的に熱伝導プレート21により多くの熱を伝導することができる。
【0114】
熱伝導プレート21に伝えられた熱が、熱伝導プレート21の表面に設けられた放熱膜30に伝導され、当該伝導熱が放熱膜30において遠赤外線に変換され、その表面からさらに食材支持プレート50に向けて遠赤外線が放射される仕組みは実施例1および実施例2に説明した仕組みと同様である。
【0115】
以上、実施例3にかかる熱放射加熱調理器によれば、実施例2と同様の熱伝導プレート型の熱放射加熱調理器において、熱伝導プレートの裏面に設けられた放熱膜を介して発熱体の熱を吸収して熱伝導プレート側に伝え、より一層多くの熱を熱伝導プレートの表面側に設けられている放熱膜に熱を伝導し、大量の遠赤外線を放射させることができる。
【実施例4】
【0116】
実施例4にかかる熱放射加熱調理器の例を示す。
実施例4にかかる熱放射加熱調理器の例は、実施例1の電磁誘導発熱プレート型の熱放射加熱調理器、実施例2または3の熱伝導プレート型の熱放射加熱調理器において、側壁40の内周壁面にも放熱膜を塗布・形成し、当該放熱膜により周囲からも遠赤外線を放射し、食材を周囲からも炙り焼き調理を行うことができるものである。
【0117】
図10は本発明の第4の熱放射加熱調理器100cの構成を模式的に示した断面図である。
図10に示した例は、実施例1にかかる電磁誘導発熱プレート型の熱放射加熱調理器をベースとしたものとなっている。電磁誘導部10、電磁誘導発熱プレート20、放熱膜30、側壁40、側壁の内周面側に設けられた放熱膜32、食材支持体50を備えた構成となっている。側壁の内周面側に設けられた放熱膜32以外の構成は実施例1で説明したものと同じであり詳しい説明は省略する。なお、側壁40は熱を伝導しやすい熱伝導体の金属製となっている。
【0118】
電磁誘導部10の電磁誘導により電磁誘導発熱プレート20に渦電流により発熱する仕組みは実施例1と同様である。
また、電磁誘導発熱プレート20の表面に形成されている放熱膜30が電磁誘導発熱プレート20により発生する熱を受けて遠赤外線に変換して放射する仕組みも実施例1で説明したものと同様である。
【0119】
本実施例4では、側壁40の内周面にも放熱膜32が形成されている。本実施例4の側壁40は熱伝導体の金属製となっている。
放熱膜30および放熱膜32の素材自体は実施例1で説明したものと同様で良い。バインダーの組成、顔料の配合などは実施例1と同様で良く、ここでの説明は省略する。顔料による熱エネルギーの遠赤外線への変換も実施例1と同様で良い。
【0120】
図11は、本発明の実施例4にかかる熱放射加熱調理器100cの遠赤外線発生原理を分かりやすく示した図となっている。
本実施例4における遠赤外線放射の仕組みは以下のとおりである。
【0121】
電磁誘導発熱プレート20が発熱して生じた熱は表面に設けられた放熱膜30に到達し、放熱膜30は実施例1で説明したように熱エネルギーを受けて遠赤外線に変換して放射する。側壁40は電磁誘導発熱プレート20により発生する熱を伝導して内周面側に設けられている放熱膜32にも伝える。側壁の内周面に設けられている放熱膜32は伝導される熱を受ければ効率よく遠赤外線に変換して内面に向けて放射する。
実施例1のように側壁40の内周面に放熱膜が設けられていない構成に比べ、実施例4のように側壁40の内周面に放熱膜32が設けられている構成の方がより一層多くの遠赤外線を熱放射加熱調理器の内側に放射することができる。
【0122】
以上、実施例4にかかる熱放射加熱調理器によれば、側壁40の内周面に設けられた放熱膜32を介して側壁40の熱を吸収して大量の遠赤外線を放射させることができ、食材を下方および周囲から炙ることができる。
【実施例5】
【0123】
実施例5にかかる熱放射加熱調理器の例を示す。
実施例5にかかる熱放射加熱調理器の例は、実施例1の電磁誘導発熱プレート型の熱放射加熱調理器、実施例2または3の熱伝導プレート型の熱放射加熱調理器において、側壁40の内周壁面、さらには上面に熱反射プレートを設け、熱反射プレートの反射面にも放熱膜を備え、下方、側面、上方の上下左右あらゆる方向から食材の炙り焼き調理を行うことができるものである。
【0124】
図12は本発明の第5の熱放射加熱調理器100dの構成を模式的に示した断面図である。
図12に示した例は、実施例1にかかる電磁誘導発熱プレート型の熱放射加熱調理器をベースとしたものとなっている。電磁誘導部10、電磁誘導発熱プレート20、放熱膜30、側壁40、食材支持体50、さらに熱反射プレート60を備えた構成となっている。側壁の内周面側には放熱膜32が設けられ、熱反射プレート60の下面(熱反射面側)の表面には放熱膜33が設けられている。側壁40の内周面側の放熱膜32、熱反射プレート60の下面(熱反射面側)の放熱膜33以外の構成は実施例1で説明したものと同じであり詳しい説明は省略する。この放熱膜32は、側壁40から伝導された熱をうけて遠赤外線を熱放射加熱調理器の内側に向けて放射するものであり、放熱膜33は、電磁誘導発熱プレート20の表面の放熱膜30が放射した遠赤外線を受けて加熱され、当該加熱エネルギーを遠赤外線エネルギーに再変換して遠赤外線を下方に向けて再放射するものである。
【0125】
なお、側壁40は熱を伝導しやすい熱伝導体の金属製となっており、熱反射プレートは例えば熱反射率が高い鏡面仕上げの金属製となっている。
実施例5にかかる熱放射加熱調理器100dは、食材200を上下左右あらゆる方向から炙り焼く調理を可能としたものである。
【0126】
図13は、本発明の実施例5にかかる熱放射加熱調理器100dの遠赤外線発生原理を分かりやすく示した図となっている。
【0127】
本実施例5における遠赤外線放射の仕組みは以下のとおりである。
電磁誘導発熱プレート20が発熱して生じた熱は表面に設けられた放熱膜30に到達し、放熱膜30は実施例1で説明したように熱エネルギーを受けて遠赤外線に変換して放射する。側壁40は電磁誘導発熱プレート20により発生する熱を伝導して内周面側に設けられている放熱膜32にも伝える。側壁の内周面に設けられている放熱膜32は伝導される熱を受ければ効率よく遠赤外線に変換して内面に向けて放射する。
【0128】
また、熱反射プレート60は食材支持体50の上方に位置し、熱反射面が下方に、つまり、食材に対向するようになっている。放熱膜30から放射された遠赤外線の一部は食材200及び食材支持体50を通過して熱反射プレート60およびその表面に設けられている放熱膜33に到達する。放熱膜33は、電磁誘導発熱プレート20の表面の放熱膜30が放射した遠赤外線を受けて加熱され、当該加熱エネルギーを遠赤外線エネルギーに再変換して遠赤外線を下方に向けて再放射する。
【0129】
実施例1のように熱反射プレート60およびその表面の放熱膜33が設けられていない構成に比べ、実施例5のように熱反射プレート60およびその表面の放熱膜33が設けられている構成の方がより一層多くの遠赤外線を食材に向けて放射することが可能となる。
【0130】
以上、実施例5にかかる熱放射加熱調理器によれば、放熱膜30、放熱膜32、放熱膜33により、下方、側面、上方の上下左右あらゆる方向から食材の炙り焼き調理を行うことができるものである。
【実施例6】
【0131】
実施例6は、熱伝導プレートと熱反射プレートを備えたガスコンロなどを用いた手持ち型の熱放射加熱調理器の実施例である。
【0132】
図14は本発明の第6の熱放射加熱調理器100eの構成を模式的に示した図である。
ちょうつがいで接合された上下二枚の金属プレートがあり、一方が実施例2で示した熱伝導プレート21に相当するものであり、他方が実施例5で示した熱反射プレート60に相当するものである。
【0133】
熱伝導プレート21の上面側に実施例1で示した放熱膜30が設けられており、熱反射プレート60の熱反射面側には放熱膜33が設けられている。
魚などの食材を上下二枚の熱伝導プレート21と熱反射プレート60で挟み込み、上下の放熱膜30と放熱膜33により両面をこんがりと炙り焼くことができるものとなっている。
【0134】
以上、本発明の好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明は、電磁誘導加熱調理器用、または発熱体を備えた調理プレートに広く適用することができる。
本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明の第1の熱放射加熱調理器100の構成を模式的に示した断面図
【図2】本発明の第1の熱放射加熱調理器100の遠赤外線発生原理を分かりやすく示した図
【図3】電磁誘導発熱プレート20とその表面に塗布された放熱膜30の形状の一例を示した図
【図4】放熱膜試料1の放射率を示す図
【図5】放熱膜試料1の放射輝度スペクトルを示す図
【図6】本発明の第2の熱放射加熱調理器100aの構成を模式的に示した断面図
【図7】本発明の第2の熱放射加熱調理器100aの遠赤外線発生原理を分かりやすく示した図
【図8】本発明の第3の熱放射加熱調理器100bの構成を模式的に示した断面図
【図9】本発明の実施例3にかかる熱放射加熱調理器100bの遠赤外線発生原理を分かりやすく示した図
【図10】本発明の第4の熱放射加熱調理器100cの構成を模式的に示した断面図
【図11】本発明の実施例4にかかる熱放射加熱調理器100cの遠赤外線発生原理を分かりやすく示した図
【図12】本発明の第5の熱放射加熱調理器100dの構成を模式的に示した断面図
【図13】本発明の実施例5にかかる熱放射加熱調理器100dの遠赤外線発生原理を分かりやすく示した図
【図14】本発明の第6の熱放射加熱調理器100eの構成を模式的に示した図
【図15】従来の電磁誘導加熱調理器と被加熱調理具の構成を示す図
【符号の説明】
【0136】
100,100a,100b,100c,100d,100e 熱放射加熱調理器
10 電磁誘導部
20 電磁誘導発熱プレート
30,31,32,33 放熱膜
40 側壁
50 食材支持体
60 熱反射プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁誘導部と、
電磁誘導部より発せられる高周波電磁波を受けて誘導される渦電流により熱を発する電磁誘導発熱プレートと、
前記電磁誘導発熱プレートの表面に塗布された、高い熱伝導性と高い放熱性とを兼ね備えた性質を持つ放熱膜であって、前記電磁誘導発熱プレートが発した熱を吸収して遠赤外線に変換して放射する放熱膜とを備え、
前記放熱膜が放射した遠赤外線により食材の炙り焼き調理を行う、放熱膜を用いた熱放射加熱調理器。
【請求項2】
前記電磁誘導発熱プレートの周縁から立ち上がた周回状の側壁を設け、前記側壁の内周壁面にも前記放熱膜を形成し、前記放熱膜により周囲からも遠赤外線を放射し、食材を周囲からも炙り焼き調理を行うことができる請求項1に記載の放熱膜を用いた熱放射加熱調理器。
【請求項3】
前記電磁誘導発熱プレート表面側に対向するように設けられた熱反射プレートであって、前記熱反射プレートの反射面において前記放熱膜を備え、前記電磁誘導発熱プレートの放熱膜から到達する遠赤外線を受けて遠赤外線を再放射し、食材を上下左右あらゆる方向から炙り焼き調理を行うことができる請求項1または2に記載の放熱膜を用いた熱放射加熱調理器。
【請求項4】
熱を発する発熱体と、
前記発熱体が発した熱を裏面から吸収して表面に伝導する熱伝導プレートと、
前記熱伝導プレートの表面に塗布された、高い熱伝導性と高い放熱性とを兼ね備えた性質を持つ放熱膜であって、前記熱伝導プレートが発した熱を吸収して遠赤外線に変換して放射する放熱膜とを備え、
前記放熱膜が放射した遠赤外線により食材の炙り焼き調理を行う、放熱膜を用いた熱放射加熱調理器。
【請求項5】
前記熱伝導プレートの裏面にも前記放熱膜を形成し、裏面側に形成されている前記放熱膜により前記発熱体が発した熱を吸収して前記熱伝導プレートに伝導する請求項4に記載の放熱膜を用いた熱放射加熱調理器。
【請求項6】
前記熱伝導プレートの周縁から立ち上がた周回状の側壁を設け、前記側壁の内周壁面に前記放熱膜を塗布し、前記放熱膜により周囲からも遠赤外線を放射し、食材を周囲からも炙り焼き調理を行うことができる請求項4または5に記載の放熱膜を用いた熱放射加熱調理器。
【請求項7】
前記熱伝導プレート表面側に対向するように設けられた熱反射プレートであって、前記熱反射プレートの反射面において前記放熱膜を備え、前記熱伝導プレートの放熱膜から到達する遠赤外線を受けて遠赤外線を再放射し、食材を上下左右あらゆる方向から炙り焼き調理を行うことができる請求項4から6のいずれか1項に記載の放熱膜を用いた熱放射加熱調理器。
【請求項8】
前記放熱膜が、アルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応により生成されるバインダーと、遠赤外線放射性物質の顔料と、溶媒を備えた塗料を塗布・乾燥することにより形成された塗布膜であって、前記アルコキシド化合物の加水分解後、シラノール脱水縮合の進展により形成されるSi−Oネットワークおよび残存するシラノール基により構成される被膜により前記熱伝導性と前記放熱性と前記絶縁性とを発揮せしめたものであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の放熱膜を用いた熱放射加熱調理器。
【請求項9】
前記放熱膜を形成する塗料における前記アルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応により生成されるバインダーとして、テトラアルコキシシランに対してトリアルコキシシランを、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシランが5対5から0対10の割合で配合することにより、前記アルコキシド化合物の加水分解後のシラノール脱水縮合により生じる塗料中に存在するSi−Oネットワーク素材の形成進行の制御とシラノール基の残存量の制御を行うことを特徴とする請求項8に記載の放熱膜を用いた熱放射加熱調理器。
【請求項10】
前記放熱膜を形成する塗料における前記アルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応により生成されるバインダーバインダーとして、テトラアルコキシシランに対してトリアルコキシシランとジアルコキシシランを、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシラン:ジアルコキシシランが4.5対4.5対1から7.2対1.8対1の割合で配合し、前記アルコキシド化合物の加水分解後のシラノール脱水縮合により生じる塗料中に存在するSi−Oネットワーク素材の形成進行の制御とシラノール基の残存量の制御を行うことを特徴とする請求項8に記載の放熱膜を用いた熱放射加熱調理器。
【請求項11】
前記放熱膜を形成する塗料における顔料が、シリカ(SiO2)、マグネシア(MgO2)、コージライトとシリカ(SiO2)、コージライトとアルミナ(Al2O3)、コージライトとシリカ(SiO2)およびアルミナ(Al2O3)の化合物のいずれかを含む第1の顔料を備えたものである請求項8から10のいずれか1項に記載の放熱膜を用いた熱放射加熱調理器。
【請求項12】
前記放熱膜を形成する塗料における前記顔料が、前記第1の顔料に加え、酸化鉄(FeO、Fe2O3、Fe3O4)、二酸化マンガン(MnO2)、酸化コバルト(CoO)、三酸化コバルト(Co2O3)、酸化銅(I)(Cu2O)、酸化銅(II)(CuO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)またはそれらの化合物のいずれかを含む第2の顔料を備えたものである請求項11に記載の放熱膜を用いた熱放射加熱調理器。
【請求項13】
前記放熱膜を形成する塗料における溶媒が、沸点が常温より高い温度のアルコール類であり、前記放熱膜において前記溶媒を揮発させることによりポーラス構造を形成せしめたことを特徴とする請求項8から12のいずれか1項に記載の放熱膜を用いた熱放射加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−70812(P2009−70812A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209404(P2008−209404)
【出願日】平成20年8月17日(2008.8.17)
【出願人】(507279277)
【Fターム(参考)】