説明

教示装置

【課題】部品と治具間の取付け上の互いの寸法公差が厳密に規定されていても目視で教示作業を行うために生じる教示位置の公差外れや部品や治具の破損を防止すると共に、部品を所定の力で押し付けながら組立作業を行う場合の力パラメータを数値で手入力する必要がない教示装置を提供する。
【解決手段】回転体の回転量を被操作対象の移動量とする操作部と、回転体の回転量及び回転方向を検出するセンサ120と、センサの検出値に基づいた被操作対象の移動量を指示する操作量指示部151と、被操作対象の特定方向の移動を規定する移動軸を選択する操作軸選択スイッチ140と、当該被操作対象が移動した位置を保存することを指示する教示ボタン130と、被操作対象が受ける反力を操作者に力覚提示するためのアクチュエータ110とを備えた教示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばロボット等の教示の際に好適に使用可能な教示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生産現場において、溶接や塗装、組み立てなどの作業を行なうロボットは、一般に位置制御装置と教示装置を備え、この教示装置を用いて作業対象の位置や順番などを予め教示した後にこの教示内容に従って所望の作業を行なうようになっている。このような教示装置は、ロボットの動作機能が割り当てられた複数の押しボタンを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
係る特許文献1に開示されたようなロボットを教示する装置の場合、移動方向の動作を指示するボタン、指示した位置をメモリにストレージするボタン、その他、移動速度を変更するボタンや位置を直接数値入力できる数値ボタンなど様々なボタンを備えている。更に、位置の情報や複数の教示位置情報を表示させる機能を有している。
【特許文献1】特許第2584247号(2頁、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば作業対象となる部品をロボットハンドで把持しながら、又は部品吸着用のノズルで保持しながらその部品を治具に取付ける作業を行う場合、規定された部品と治具間の取付け上の寸法公差を満たす位置に教示する必要がある。
【0005】
しかしながら、従来の教示装置を用いた場合、ハンドやノズルの部品と治具を単に目視しながら教示作業を行なうようになっているため、部品と治具との間の距離を正確に把握することができない。そのため、教示作業において部品と治具との間に規定された寸法公差を超える距離があるか、又は接触して部品と治具との間に過大な力が生じた状態で教示してしまうおそれがある。接触して過大な力が生じた場合、部品や治具を破損してしまうおそれがある。
【0006】
従って、このような部品と治具の取付け上の互いの寸法公差が厳密に規定されているような場合、部品を治具上の正確な位置に取付ける作業を操作者が目で確認しながら教示することは困難である。
【0007】
また、例えば、部品をロボットハンドによって所定の力で押し付けながら組立作業を行なう場合、従来は教示装置に力パラメータを数値で手入力していたが、教示後ロボットで実際に作業を行わせた時に力の過不足によって作業が失敗することがある。成功するまで数値入力と実作業を繰り返すことになるため、教示作業を厳密に行なうにはそれなりに余計な手間と時間を要する。
【0008】
本発明は、部品と治具間の取付け上の互いの寸法公差が厳密に規定されていても目視で教示作業を行うために生じる教示位置の公差外れや部品や治具の破損を防止する教示装置を提供することにある。また、部品を所定の力で押し付けながら組立作業を行う場合の力パラメータを数値で手入力する必要がない教示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の教示装置は、
被操作対象を特定方向の操作量だけ操作し所望する位置に移動した後にその位置を被操作対象を制御する装置のメモリに記憶させる教示装置であって、
回転体からなり、当該回転体の回転量を被操作対象の移動量とする操作部と、
前記回転体の回転量及び回転方向を検出するセンサと、
前記被操作対象の特定方向の移動を規定する移動軸を選択する操作軸選択スイッチと、
前記回転体の操作量を前記センサで検出することで得られた前記被操作対象の移動量に基づき、前記操作軸選択スイッチによって選択された特定方向の移動を規定する移動軸に沿って移動した位置を、当該被操作対象を制御する装置のメモリに記憶することを指示する教示ボタンと、
前記操作量の指示に基づいて前記被操作対象が特定方向の移動軸に沿って所定の移動量だけ操作された際に当該被操作対象が受ける反力を前記操作者に力覚提示するために前記回転体に能動的に又は受動的にトルクとして伝達するアクチュエータと、
前記センサの検出値に基づいた前記被操作対象の移動量を指示する操作量指示部と前記被操作対象が受ける反力を指示されてそれをアクチュエータに発生させる駆動回路を有する制御回路と、
を備えたことを特徴としている。
【0010】
請求項1に記載の教示装置がこのような構成を有することで、教示中に被操作対象の反力を操作者が触覚的に認識することができるため、ハンドやノズルの部品と治具間に生じる接触力を確認しながら被操作対象の移動量の指示を行なうことが可能となる。その結果、部品と治具が接触する位置を操作者が知ることでその位置を教示させることができるため、規定された部品と治具間の取付け上の互いの寸法公差範囲内で教示することができる。また、接触力の大きさを知ることができて部品と治具との間に過大な力が生じないように被操作対象を操作することができるため、部品や治具の破損等を防ぐことが可能となる。また、部品に生じる力を操作者が知ることができるため力を数値で手入力することなく押し付けながら組立作業を行う位置を教示することができる。
【0011】
また、本発明の請求項2に記載の教示装置は、請求項1に記載の教示装置において、
教示に際して被操作対象が受ける反力、被操作対象の位置情報、複数の教示位置を表示する表示部と、
前記被操作対象の移動を操作者が強制的に停止する移動停止手段と、
前記回転体の操作以外で移動量指示を行なう移動指示設定手段と、を更に備えたことを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の教示装置がこのような構成を有することで、教示時における反力、被操作対象の位置、複数の教示位置を操作者が知ることが可能となる。
【0013】
また、回転体の操作以外で移動量指示を行う移動指示設定手段を備えることで、被操作対象の移動量を数値で指示することが可能となる。
【0014】
また、移動停止手段を備えることで、操作者の意思で被操作対象の移動を停止することができるため、例えばハンドやノズルの部品が他の物体に接触しそうになった時に移動停止手段を作動させると、被操作対象やこれがハンドリングする部品を保護することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る教示装置によれば、部品と治具間の取付け上の互いの寸法公差が厳密に規定されていても目視で教示作業を行うために生じる教示位置の公差外れや部品や治具の破損を防止する教示装置を提供できる。また、部品を所定の力で押し付けながら組立作業を行う場合の力パラメータを数値で手入力する必要がない教示装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る教示装置を図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る教示装置100のブロック構成図をこの教示装置100を備えるロボット200のブロック構成図と共に示す図である。
【0017】
図1から明らかなように、教示装置100には、内部に教示用モータ110と、教示用回転位置センサ120と、教示ボタン130と、操作軸選択スイッチ140が備わると共に、これらを制御する制御回路150が備わっている。制御回路150には、位置ボタン/スイッチ/送信部(操作量指示部)151と、これに電気的に並列的に接続された位置変換部152及び入力部153が備わると共に、ロボット側からの信号を受信する受信部154と、力−トルク変換部155と、トルク−電流変換部156と、モータドライブ回路157が電気的に直列に配置されている。
【0018】
一方、ロボット200には、駆動用モータ210と、駆動用回転位置センサ220が備わると共に、駆動用回転位置センサ220をフィードバックして駆動用モータ210を位置制御する位置制御部240が備わっている。そして、駆動用回転位置センサ220にはその出力値を記憶するメモリとしての位置記憶部250がつながっている。また、位置制御部240には教示装置側からの信号を受信する受信部260が接続されると共に、駆動用モータ210の電流を検出して力の値へ変換する電流−力変換部270を介して教示装置側にデータを送信する力送信部280が備わっている。この力送信部280は力センサ230を並列に接続することができ、力センサ230が備わっている時は力センサ230の出力値が力送信部280から送信され、備わっていない時は電流−力変換部270の出力値が力送信部280から送信される。なお、この切り替えは後述する切替部281によって行なうようになっている。そして、教示装置100とロボット200とはケーブル190によって例えばRS−232C等の通信規格を介して接続されている。
【0019】
図2は、図1に示した教示装置100の斜視図であり、図3は、図2に示した教示装置100の筐体101を部分的に除いて教示装置内部を示した斜視図である。
【0020】
本実施形態に係る教示装置100は、図2に示すように操作者が片手で持つことができる程度のハンディタイプの教示装置であり、その外側の筐体101は、例えば軽量且つ強度上優れた樹脂材でできている。筐体101の上側の一部には、凹み部102が形成され、その凹み部内に筐体101の長手方向を軸線として時計回り又は反時計回りに回転自在な操作部103が備わっている。操作部103には、操作者が操作し易いようにその周囲に亘ってすべり止め用の僅かな深さのスリット103aが所定間隔隔てて形成されている。
【0021】
操作部103には図3に示すようにその下方に教示用モータ110が直結されている。また、操作部103又は教示用モータ110の適所には、ここでは図示しない回転位置センサ120(図1参照)が備わっている。
【0022】
そして、教示装置100は、教示時に操作部103を操作して操作部103の回転量及び回転方向を回転位置センサ120で検出すると共に、ロボット200のハンドやノズル(図示せず)がハンドリングする部品や装置(図示せず)から反力を受けた時にその反力を教示用モータ110のトルクに換算して操作者に力覚提示するようになっている。即ち、反力の大きさを教示用モータ110のトルクの大小に換算させて操作者が反力の大小を指から受ける抵抗力として直接感じることができるようになっている。
【0023】
また、操作部103の近傍には、教示ボタン130が備わり、例えば操作者が親指と人指し指で操作部103を適当な回転量だけ回転した直後に、教示ボタン130をその指で瞬時に押せるようになっている。
【0024】
また、ケース上面であって、操作部103の上側近傍には、押しボタンスイッチからなる操作軸選択スイッチ140が備わっている。この操作軸選択スイッチ140は、操作部103を回転させる際にロボット100の移動方向中、どの移動方向を選択指示するかのスイッチである。
【0025】
操作軸選択スイッチ140が押しボタンスイッチからなることで、例えばX,Y,Z,U軸からなる操作軸を選択する操作軸選択スイッチ自体の大きさを小さくでき、ひいては教示装置自体の小型化を図るようになっている。また、操作軸選択スイッチが押しボタンスイッチからなることで、操作軸選択スイッチを指で操作しながら瞬時に回転体の操作も行なうことができるので、操作性に優れた教示装置とするようになっている。
【0026】
なお、操作軸選択スイッチ140はロータリ式のスイッチ又はクリック付きロータリエンコーダを使用してもよい。決められた位置へ操作軸選択スイッチ140を回転することで、例えばロボット100のハンドやノズルをX軸方向、Y軸方向、Z軸方向又はハンドやノズルの回転軸線回りのU軸方向の何れかの移動方向を選択して特定する。
【0027】
また、図3の筐体内部には制御回路150(図3では制御回路自体を詳細には図示せず)を実装したプリント基板が収容されている。制御回路150は、操作時に教示用回転位置センサ120操作量と操作軸選択スイッチ140の位置からロボット100の特定方向の移動量として位置変換部152及び位置ボタン/スイッチ/送信部151を介してロボット200の受信部260に送るようになっている。また、教示時にロボット200の力センサ230が検出した反力又は電流−力変換部270で駆動用モータ210の電流から変換された力に応じて送られるロボット200の力送信部280からの信号を教示装置100の受信部154で受け取るようになっている。受信部154で受信した力は、力−トルク変換部155やトルク−電流変換部156を介してモータドライブ回路157へ電流指令として送られる。モータドライブ回路157は、教示用モータ110へ指令された電流になる用駆動することで教示用モータ110にトルクを発生させる。
【0028】
また、教示装置100の下端からはロボット200に接続されるケーブル190が導出している。
【0029】
続いて、ここでは図1のブロック図においてのみ図示するロボット側の構成について説明する。
【0030】
ロボット200の駆動用モータ210は、教示内容に従ってその後の実際の作業においてハンドやノズルの備わったアームを適所に移動させるようになっている。
【0031】
また、駆動用回転位置センサ220は、教示時におけるロボットのハンドやノズルの実際の位置を検出し、位置制御部240を介して駆動用モータ210を駆動すると共に、位置記憶部250にこの位置情報を入力するようになっている。
【0032】
力センサ230は、教示時にロボットアーム先端に備わったハンドやノズルの部品から受ける反力を測定して力送信部280を介して教示装置側にフィードバックするようになっている。なお、力センサ230が備わっていない場合は、駆動用モータ210の電流を力へ変換する電流−力変換部270によって力を力送信部280を介して教示装置側にフィードバックするようになっている。この際、切替部281をロボット側に予め備えておくことで、このような場合に対応できる。即ち、力センサ230が備わっている場合は、切替部281を介して力センサ230からの出力を力送信部280に伝達するようにし、力センサ230が備わっていない場合は、反力に応じた駆動用モータ210の電流の変化量を力へ変換する電流−力変換部270によって力に変換し、切替部281を介して力送信部280に伝達するようになっている。
【0033】
位置記憶部250は、教示ボタン130を押したことを示す情報を入力部153及び位置ボタン/スイッチ/送信部151を介してロボット200の受信部260に送りロボット200の駆動用回転位置センサ220で測定された位置を位置記憶部250に記憶するようになっている。
【0034】
続いて、上述した教示装置100を用いた実際の教示方法の一例について説明する。この教示方法を説明するにあたって、前提条件として以下の点を説明する。
【0035】
動作位置を教示するための教示装置を用いてロボットを目標位置に決める教示作業を行うと、ロボット動作プログラムのパラメータとして位置データが制御装置に記憶される。教示は実際にロボットを動かしながら行うオンライン教示と設計データを基にした数値を使用するオフライン教示がある。そして、実際には設計上のロボットの位置データと実際のロボットの動作位置は誤差があるためオフライン教示の後にオンライン教示を行う必要がある。本実施形態に係る教示装置100はオンライン教示に用いる教示装置である。
【0036】
本実施形態に係る教示装置100を用いた教示を行うに先立って、上述したように設計図面を利用したオフライン教示によりロボット200の設計上の動作位置をそれぞれ座標データとして規定し、これをロボット内の位置記憶部250に入力しておく。そして、教示装置100を作業現場に設置されたロボット200の近くに持って行き実際の教示作業を行う。この教示作業を説明するにあたって、例えばトレーに載置したICチップを力センサ230が備わったロボット200のハンドの先端についた部品吸着用のノズルでピッキングしてこれを別の場所に配置された回路基板の所定の位置に位置決めする作業を教示する場合について説明する。
【0037】
この教示に当たって、オフラインによって予め概略的に決められた位置までロボット200のノズルを動かし、ICチップの吸着に適した上面中央部近傍にノズルを位置させる。そして、教示装置100の操作軸選択スイッチ140で軸選択してICチップ上面の中央位置をノズルで吸着できるようにX,Y軸方向のノズル位置を微調整する。次いで、操作軸選択スイッチ140で軸選択によりZ軸を選び、操作部103を回転させることで、この回転量に応じてノズルをZ軸方向に下降させていく。
【0038】
そして、ノズルがICチップ上面に押し当てられることで力センサ230が受ける反力に対応した駆動力を教示装置100の教示用モータ110に生じさせて操作者にこの反力を力覚提示する。
【0039】
即ち、この反力をその大きさも含めて教示用モータ110が生じるトルクを介して操作者が操作部103から指から受ける抵抗力として感じながら、適当な反力を受けるようになった時に、これが最適なZ軸方向のノズルの下降位置であると判断して、教示ボタン130を押す。
【0040】
これによって、オフライン教示で位置記憶部250に仮入力されていたノズルの下降位置をZ軸方向の最適な下降位置に書き換える。このような教示作業によって、教示後の教示内容に沿ったロボット200の実際の作業中に、ノズルがICチップの上面に最適な位置に密着してICチップをトレーから確実に取り出すことができる。
【0041】
即ち、従来のように目視によるノズルのICチップへのピッキング作業を教示する場合に比べて、教示後のこの教示内容に従ったロボットの実際の作業中、トレーに載ったICチップをノズルがピッキングする際に、ノズルがICチップを押し付け過ぎてICチップを破損したり、ノズルのICチップへの密着具合が不十分でICチップを吸着し損ねたりするような不具合を防止できる。
【0042】
続いて、ICチップをノズルで吸引した状態でオフライン教示で設定した動作に従ってロボット200のノズルを回路基板のICチップが実装される付近まで搬送する。
【0043】
そして、教示装置100の操作軸選択スイッチ140で軸選択してICチップのXY軸方向の位置がこれに実装されるプリント基板の所望位置に一致するように微調整する。次いで、操作軸選択スイッチ140で軸選択によりZ軸を選び、操作部103を回転させながらZ軸方向にノズルを下降させていく。そして、ICチップがプリント基板の上面に最適な当たり具合で当接することにより力センサ230が受ける反力に対応した駆動力を教示装置100の教示用モータ110に生じさせて、操作者にこの反力を力覚提示する。
【0044】
即ち、この反力をその大きさも含めて教示用モータ110が生じるトルクを介して操作者が操作部103から指が受ける抵抗力として感じながら、適当な反力を受けるようになった時に、これが最適なZ軸方向のノズルの下降位置であると判断して、この時点でのノズルの吸着解除を教示すると共に、教示ボタン130を押すことで、Z軸方向の下降量を教示する。
【0045】
これによって、オフライン教示で位置記憶部250に仮入力されていたノズルの下降位置をZ軸方向の最適な下降位置として書き換える。このような教示作業によって、教示後の教示内容に沿ったロボット200の実際の作業中に、ICチップを回路基板上の最適な位置に配置することができる。
【0046】
即ち、従来のように目視によるノズルの吸着を利用したICチップの回路基板への配置作業を教示する場合に比べて、教示後のこの教示内容に従ったロボットの実際の作業においてICチップを回路基板に配置する際に、ICチップを回路基板に押し付け過ぎてICチップや回路基板を破損したり、ICチップと回路基板との間に隙間がある状態でノズルの吸着を解除してしまいICチップが回路基板にその隙間分だけ落下して回路基板上の正確な位置にICチップが配置されないというような不具合を防止できる。
【0047】
続いて、上述した実施形態の変形例について説明する。図4は、図2に示した教示装置100の変形例を示す斜視図であり、図5は、図4に示した教示装置300をその筐体の一部を除いて内部構成と共に示す斜視図である。
【0048】
本変形例に係る教示装置は、上述の実施形態にかかる教示装置200に、表示部311、設定ボタン312、非常停止ボタン313を追加したものである。なお、本変形例に係る構成に関して、上述した実施形態と同等の構成については対応する符号を付して詳細な説明を省略する。また、本変形例の基本的な機能については、上述した実施形態に係る教示装置100と同等であるので、その説明を省略する。
【0049】
本実施形態に係る教示装置300の表示部311は、力/位置/複数の教示位置などの教示に必要な情報を表示し、操作部303をどの程度操作すれば良いか等のガイダンスを行なうようになっている。また、非常停止ボタン313は、何らかの誤動作などが発生した場合に即座に操作を停止させるためのボタンであり、この非常停止ボタン313を押すと教示中に操作部303からの操作量に関する位置送信を停止し、かつ非常停止ボタンが押されたことを送信しロボットを緊急停止するようになっている。
【0050】
また、設定ボタン312は、上述の教示装置100のように教示中に操作部103を回転させてロボットを移動させるだけでなく、数値入力等によっても教示中にロボット200を操作可能とするためのボタンであり、この設定ボタン312を備えることで、きめ細かい教示を行なうことが可能となる。
【0051】
なお、上述した実施形態及びその変形例に係る教示装置は、モータを備えてこのモータのトルクを教示中にロボットのハンドやノズルが受ける反力の大小に対応させていたが、このようなモータを利用する代わりにブレーキやクラッチを教示装置に備えて、教示時にハンドやノズルが反力を受けない状態では操作部が無抵抗で自在に回転するようにし、ハンドやノズルが反力を受けた時にこの反力の大きさに応じた制動力をブレーキやクラッチで生じさせても良い。
【0052】
また、上述した変形例において反力に対応して発生するモータのトルクの大きさは%や記号、アイコンなどを利用して拡大や縮小ができるようパラメータで設定するようにしても良い。これにより、例えば微小な反力が発生した場合でも操作者はその力を容易に認識することが可能となり、教示時のロボットの動作の微調整が可能となる。
【0053】
以上説明したように、本発明に係る教示装置が上述した構成を有することで、教示中に被操作対象の反力がその大きさを含めて操作者にフィードバックされるため、ハンドやノズルの部品に対する接触力を確認しながら移動量の指示を行なうことが可能となる。その結果、教示後のロボットの教示内容に沿った実際の作業を行う際に部品と治具間に隙間があることで取付け位置が規定された寸法公差範囲を超えたり、無理な力がハンドやノズルから部品や装置にかかることがなくなり、部品や装置の破損等を防ぐことができるようになる。
【0054】
また、本発明に係る教示装置が教示に際して被操作対象が受ける反力や位置、複数の教示位置を表示する表示部を更に備えることで、教示時における部品への接触力や被操作対象の位置、教示した位置を知ることができる。
【0055】
また、本発明に係る教示装置が回転以外の移動量指示を行う移動指示設定手段を更に備えることで、被操作対象の移動量を数値で教示することが可能となる。
【0056】
また、本発明に係る教示装置が移動指示停止手段を更に備えることで、所定の範囲を超えた移動量が指示されても被操作対象やこれがハンドリングする部品を保護できるようになる。
【0057】
なお、上述した実施形態及びその変形例においては、ハンドリング対象となる部品をICチップとして紹介したが、必ずしもこれに限定されず、シリコンを素材としたMEMS部品のような脆性材料を含む部品をハンドリングする際にも本発明は適している。
【0058】
具体的には、上述したICチップ等の部品をピッキングする場合と同様で教示作業において数百mN以下といった微小な接触力が許容範囲とするが、本発明を適用することでこのような脆性部品に破損が生じるような力を加えることなく教示作業を行うことができる。
【0059】
なお、上述の実施形態において、教示装置の回転体の形状は円柱状としたが、この代わりに球状であっても良い。
【0060】
また、教示装置の回転体の素材は樹脂であっても金属であっても良く、その他の材質であっても良い。
【0061】
また、教示装置の回転体の回転量及び回転方向を検出するセンサには、光学式/磁気式ロータリエンコーダ、磁気式ロータリエンコーダ、レゾルバ等様々なセンサが適用可能である。
【0062】
また、教示装置の操作軸選択スイッチには押しボタンスイッチを用いたが、この代わりに上述したロータリスイッチや、光学式/磁気式/摺動式ロータリエンコーダを用いても良い。
【0063】
また、教示装置のアクチュエータとしてのモータには、DCモータ、DCブラシレスモータ、ACサーボモータ等様々なモータが使用可能である。また、このアクチュエータとしてモータの代わりに上述したように励磁コイルへの通電有無で作動する電磁ブレーキ、電磁クラッチを使用することもできる。
【0064】
また、教示装置の変形例に係る表示部は液晶ディスプレイとすることが視認し易く好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0065】
また、教示装置の変形例に係る移動停止手段は、入力部が押しボタンでその状態を被操作対象を制御する装置へ送信するようになっているのが操作上好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0066】
同様に、教示装置の変形例に係る移動量指示を行う移動指示設定手段は入力部が複数の押しボタンで構成されているのが操作上好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施形態に係る教示装置のブロック構成図をロボットのブロック構成図と共に示す図である。
【図2】図1に示した教示装置の斜視図である。
【図3】図2に示した教示装置の筐体の一部を除いて内部構成と共に示す斜視図である。
【図4】図2に示した教示装置の変形例を示す斜視図である。
【図5】図4に示した教示装置をその筐体の一部を除いて内部構成と共に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
100 教示装置
101 筐体
102 凹み部
103 操作部
103a スリット
110 教示用モータ
120 教示用回転位置センサ
130 教示ボタン
140 操作軸選択スイッチ
150 制御回路
151 位置ボタン/スイッチ/送信部
152 位置変換部
153 入力部
154 受信部
155 力−トルク変換部
156 トルク−電流変換部
157 モータドライブ回路
190 ケーブル
200 ロボット
210 駆動用モータ
220 駆動用回転位置センサ
230 力センサ
240 位置制御部
250 位置記憶部
260 受信部
270 電流−力変換部
280 力送信部
281 切替部
300 教示装置
311 表示部
312 設定ボタン
313 非常停止ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被操作対象を特定方向の操作量だけ操作し所望する位置に移動した後にその位置を被操作対象を制御する装置のメモリに記憶させる教示装置であって、
回転体からなり、当該回転体の回転量を被操作対象の移動量とする操作部と、
前記回転体の回転量及び回転方向を検出するセンサと、
前記被操作対象の特定方向の移動を規定する移動軸を選択する操作軸選択スイッチと、
前記回転体の操作量を前記センサで検出することで得られた前記被操作対象の移動量に基づき、前記操作軸選択スイッチによって選択された特定方向の移動を規定する移動軸に沿って移動した位置を、当該被操作対象を制御する装置のメモリに記憶することを指示する教示ボタンと、
前記操作量の指示に基づいて前記被操作対象が特定方向の移動軸に沿って所定の移動量だけ操作された際に当該被操作対象が受ける反力を前記操作者に力覚提示するために前記回転体に能動的に又は受動的にトルクとして伝達するアクチュエータと、
前記センサの検出値に基づいた前記被操作対象の移動量を指示する操作量指示部と前記被操作対象が受ける反力を指示されてそれをアクチュエータに発生させる駆動回路を有する制御回路と、
を備えたことを特徴とする教示装置。
【請求項2】
教示に際して被操作対象が受ける反力、被操作対象の位置情報、複数の教示位置を表示する表示部と、
前記被操作対象の移動を操作者が強制的に停止する移動停止手段と、
前記回転体の操作以外で移動量指示を行なう移動指示設定手段と、を更に備えたことを特徴とする、請求項1に記載の教示装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−142905(P2009−142905A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−319684(P2007−319684)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】