説明

教育教材用ロボット

【課題】逐次制御から自動制御に切り替わる際のロボットの動作自由度を確保できる教育教材用ロボットを提供する。
【解決手段】本発明の教育教材用ロボットは、電気的な制御信号による逐次制御および実行オブジェクトであるプログラムによる自動制御の少なくとも一方に基づいて動作するロボットと、ロボットに制御信号を与える制御装置と、制御装置とロボットとを接続すると共に制御信号を電気的にやり取りする制御ケーブルと、を備え、制御装置は、逐次制御から自動制御に切り替える切り替え信号を、ロボットに出力可能であり、制御ケーブルは、切り替え信号に基づいて、ロボットに対する拘束力を弱める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、園児、小学生、中学生および高校生といった比較的低年齢の生徒等を対象とした教育教材に用いられるロボットであって、有線接続を介した逐次制御からプログラム動作による自動制御への段階的な知識を教授するのに好適に用いられる教育教材用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小学校、中学校および高校などにおいて、生徒に対する情報処理技術、制御処理技術、機械工学、電子工学などの実学的な要素を含んだ科目や指導要領が追加される状態にある。これは、数学、物理、英語といった一般の課目に加えて、科学技術立国を目指す我が国の教育の礎である生徒達に対して、科学技術等に興味を持たせると共に、科学技術を楽しく学んでもらおうという意図に基づくものである。
【0003】
このような授業カリキュラムや指導要領に基づいて、パーソナルコンピュータを操作する授業、ネットワークを用いた授業などが教育現場で組み込まれている。加えて、ロボットコンテストなどの興隆に合わせて、ロボットの製作を通じて、機械工学、電子工学、情報処理技術、通信技術などを生徒に学ばせるカリキュラムも徐々に導入されている。ロボットは、動力から動作を伝達する機械工学や制御工学の要素を含んだり、電源から電力を取り出す電子工学の要素を含んだり、プログラムによって動作させたりする情報処理技術の要素を含んだりしているので、生徒達に対して、様々な工学的要素を学ばせるのに適しているからである。
【0004】
例えば、先生が生徒に対して、所定の目的を達成するロボット(制御機構や動力機構などは、用意されたものを用いることもある)を製作させる。生徒は、ロボットを製作し、実際にロボットを動作させて製作したロボットの出来栄えを確認する。あるいは、生徒達は、色々な地区で開催されるロボットコンテストに出展し、製作したロボットの良さを他のロボットと競う。
【0005】
ロボットの製作は、上述のように、様々な工学的要素を生徒達に学ばせるのに適していると共に、これら要素に基づいて製作した結果物の出来栄えを、直接的に把握できるメリットがある。このメリットによって、生徒達は、楽しくかつ興味をもって授業に取り組むことが可能となる。
【0006】
以上のように、ロボットの製作は、小学校、中学校および高校などにおける教育カリキュラムにおいて重要な役割を果たしている。
【0007】
ところで、教育現場においては、生徒達が学ぶべき技術的要素や工学的要素は、生徒の一般科目のカリキュラムや指導要領などに従って段階的に学ばれることが好ましい。例えば、まずは手作業で工作を行った後で、CADなどを用いた工作を行うように段階を踏むことが求められる。
【0008】
ここで、ロボットは様々な技術的要素を含むが、その動作制御は、制御信号を逐次与えることによって制御する逐次制御(リモート操作)、予めプログラミングされたプログラムによって制御する自動制御と、を含む。
【0009】
逐次制御は、必要に応じて都度発行される制御信号に基づいているので、生徒達が機械動作の手順や仕組みを最初に学ぶのに適している。一方、プログラムによる自動制御は、予め全ての動作をプログラムに盛り込む必要があり、より高い視点での技術的見地を要求するので、逐次制御を学んだ後で学ぶことが適している。
【0010】
このため、教育現場においては、まず逐次制御を学び、次いで自動制御を学ぶことが求められる。
【0011】
加えて、制御信号を与える逐次制御では、制御装置から有線接続された信号線を介してロボットを制御する有線通信による逐次制御と、制御装置から無線信号を介してロボットを制御する無線通信による逐次制御と、がある。無線通信による逐次制御は、ノイズ、エラー処理といったより高度な技術的要素を理解する必要があり、これらは小中学校程度の数学の範疇を超えるため、教育現場でのカリキュラムとしては好ましくないこともある。
【0012】
加えて、無線通信を用いてロボットの動作を制御することを教育現場で行う場合には、狭い教室の中で多数の電波が飛び交うことになり、電波の混乱を防止するために、複数の周波数帯を用意する必要がある。しかし、電波法などの問題でこれは困難である。
【0013】
このため、教育現場においては、有線通信による逐次制御とプログラムによる自動制御とによるロボットの製作、動作などを、生徒達に学ばせることが必要になっている。このとき、有線通信による逐次制御のロボットとプログラムによる自動制御のロボットと、をそれぞれ別に製作することは、時間、予算といった問題で好ましくない。また、逐次制御と自動制御とを連関して学ばせることが好適でもある。
【0014】
以上の状況から、一つのロボットで、有線通信による逐次制御とプログラムによる自動制御とを同時に実現しつつ学べる教育教材用ロボットが求められていた。教育教材用ロボットではないが、有線通信とプログラム制御とによるロボットについていくつかの技術提案がなされている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0015】
このような中で、有線通信による逐次制御からプログラムによる自動制御に移行できると共に移行の前後におけるロボット動作への悪影響の無いロボットが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2010−23183号公報
【特許文献2】特開平5−42493公報
【特許文献3】特開平7−104852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
特許文献1は、工場のラインで運搬等に利用される自走式ロボットであって、ある第1領域から別の第2領域にロボットが移動する際に、ロボットと制御装置とを接続する有線コードが解除される機構を開示する。
【0018】
しかしながら、特許文献1のロボットは、第1領域から第2領域に移動する際に有線コードを解除する機構を開示するだけで、逐次制御から自動制御への切り替わりやこれにあわせた対応技術を開示していない。特許文献1に開示されるロボットは、工場のラインのような、領域の把握と領域に基づいた動作制御の切り替えが予め設定できる状況には適しているが、生徒達が製作する教育教材用ロボットにおいては適していない。また、特許文献1に開示されるロボットは、逐次制御による動作を開示しておらず、逐次制御や自動制御の切り替えや切り替え時に生じるロボットへの悪影響を解消できない問題を有している。
【0019】
このため特許文献1は、有線通信による逐次制御からプログラムによる自動制御への切り替え後に、ロボットの動作の自由度を確保するといった問題を解決できていない。有線コードが取り外された後は、既に命令として受けていた制御に基づく動作を行うだけだからである。
【0020】
特許文献2は、制御装置から操作盤を外した場合でも、ロボットの動作を継続できる技術を開示する。
【0021】
しかしながら、特許文献2に開示されるロボットは、有線通信による逐次制御からプログラムによる自動制御への切り替えや切り替えに伴う処理を開示していない。このため、特許文献2に開示されるロボットは、逐次制御から自動制御に切り替える制御を実現できない。
【0022】
特許文献3は、自走式ロボットの電源コードに関る張力を検出し、自走式ロボットに対する電源コードの影響を防止する技術を開示する。
【0023】
しかしながら、特許文献3に開示される自走式ロボットは、有線通信による逐次制御からプログラムによる自動制御への切り替えや切り替えに伴う処理を開示していない。このため、特許文献2に開示されるロボットは、逐次制御から自動制御に切り替える制御を実現できない。
【0024】
また、特許文献1〜3のいずれのロボットにおいても、有線通信による逐次制御およびプログラムによる自動制御の知識を学ばせる教育教材用ロボットおよびこれに必要な技術を開示していない。特に、逐次制御から自動制御に切り替わる際には、ロボットを拘束する制御ケーブルを処置しなければ、折角生徒達が作成したプログラムに基づくプログラミング動作が不十分となる問題もある。
【0025】
以上のように、従来技術のロボットは、(1)有線通信による逐次制御およびプログラムによる自動制御を同時に学ぶことのできる教育教材用としての技術を開示しない、(2)有線通信による逐次制御からプログラムによる自動制御に切り替わる際にロボット動作の自由度を確保できない、といった問題を有していた。これらの問題を残したままであると、生徒達の教育指導が不十分になる問題がある。
【0026】
本発明は、以上の課題に鑑み、教育教材用ロボットとして必要となる有線通信による逐次制御とプログラムによる自動制御との機構を含むと共に、逐次制御から自動制御に切り替わる際のロボットの動作自由度を確保できる教育教材用ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記課題を解決するために、本発明の教育教材用ロボットは、電気的な制御信号による逐次制御および実行オブジェクトであるプログラムによる自動制御の少なくとも一方に基づいて動作するロボットと、ロボットに制御信号を与える制御装置と、制御装置とロボットとを接続すると共に制御信号を電気的にやり取りする制御ケーブルと、を備え、制御装置は、逐次制御から自動制御に切り替える切り替え信号を、ロボットに出力可能であり、制御ケーブルは、切り替え信号に基づいて、ロボットに対する拘束力を弱める。
【発明の効果】
【0028】
本発明の教育教材用ロボットは、有線通信による逐次制御からプログラムによる自動制御に切り替わる際に、ロボットを拘束する有線通信用の制御ケーブルが取り外れる。この結果、プログラムによる自動制御に切り替わった後で、ロボットは、プログラムに従って自由に動作できる。
【0029】
教育教材用ロボットを製作・使用を通じて生徒は、有線通信による逐次制御でのロボットの制御(逐次制御に必要な電子工学、機械工学等の知識)を学びつつプログラムによるロボットの自動制御(自動制御に必要な情報処理技術)を学ぶことができる。
【0030】
また、生徒達は、逐次制御から自動制御への切り替わりの意味することを、製作・使用するロボットから把握することができる。加えて、プログラムによる自動動作時には、ロボットの動作の自由度が高まるので、プログラムの自由度も高まり、教育的効果も高まる。
【0031】
更には、有線通信による逐次制御というベーシックな制御機構と、この場合のデメリット(制御ケーブルによる動作の自由度が低いこと)をプログラムによる自動制御が解消できることを、生徒達は学ぶことができる。
【0032】
このように、生徒達が技術的進歩を段階的に感じることができることで、本発明の教育教材用ロボットは、教育現場における高い教育的価値を有する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態1における教育教材用ロボットの模式図である。
【図2】本発明の実施の形態1における制御ケーブルがロボットに対する拘束力を弱める状態を説明する模式図である。
【図3】本発明の実施の形態1における教育教材用ロボットの制御ケーブルが外れる状態を説明する模式図である。
【図4】本発明の実施の形態1における人間型ロボットの正面図である。
【図5】本発明の実施の形態1における制御ケーブルの取り外しを説明する模式図である。
【図6】本発明の実施の形態1における所定空間でのロボットの動作を示す説明図である。
【図7】本発明の実施の形態2における制御装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の第1の発明に係る教育教材用ロボットは、電気的な制御信号による逐次制御および実行オブジェクトであるプログラムによる自動制御の少なくとも一方に基づいて動作するロボットと、ロボットに制御信号を与える制御装置と、制御装置とロボットとを接続すると共に制御信号を電気的にやり取りする制御ケーブルと、を備え、制御装置は、逐次制御から自動制御に切り替える切り替え信号を、ロボットに出力可能であり、制御ケーブルは、切り替え信号に基づいて、ロボットに対する拘束力を弱める。
【0035】
この構成により、教育現場の児童や生徒は、逐次制御と自動制御との両方を学ぶことができる。加えて、逐次制御から自動制御に移行すると、ロボットに接続される制御ケーブルの拘束力が弱まるので、自動制御におけるロボットの動作自由度が高まる。
【0036】
本発明の第2の発明に係る教育教材用ロボットでは、第1の発明に加えて、制御ケーブルは、切り替え信号に基づいて、ロボットから外れる。
【0037】
この構成により、ロボットは、逐次制御から自動制御に移行した後で、制御ケーブルによる拘束を受けなくなり、高い自由度で動作できるようになる。このため、プログラム設計の自由度が高まり、教育現場でのプログラムの学習に良い影響をもたらす。
【0038】
本発明の第3の発明に係る教育教材用ロボットでは、第2の発明に加えて、制御ケーブルは、制御ケーブルとロボットとの接続部に設けられる電磁石の磁力によってロボットに接続され、電磁石の磁力の解除によってロボットから外れる。
【0039】
この構成により、制御ケーブルは簡単な構造と操作で、ロボットから外れる。特に、制御装置で電磁石に対して電流の付与を遮断するだけで、制御ケーブルが簡単に外れるので、切り替え信号の発生とあわせた処理が可能である。
【0040】
本発明の第4の発明に係る教育教材用ロボットでは、第3の発明に加えて、切り替え信号は、電磁石への電流を停止する。
【0041】
この構成により、切り替え信号の発生により、制御ケーブルは確実にロボットから外れる。
【0042】
本発明の第5の発明に係る教育教材用ロボットでは、第1から第4のいずれかの発明に加えて、切り替え信号は、逐次制御から自動制御へ変更する制御装置からの命令動作によって出力される。
【0043】
この構成により、使用者が逐次制御から自動制御に切り替えることの命令付与が、制御ケーブルの解除につながる切り替え信号をそのまま発生させる。
【0044】
本発明の第6の発明に係る教育教材用ロボットでは、第1から第5のいずれかの発明に加えて、制御ケーブルが外れることによって、ロボットは、広い動作空間において自動制御に基づく動作を行う。
【0045】
この構成により、ロボットは、高い自由度で動作できる。このため、製作者は、自身が製作したプログラムによる動作を把握できるので、教育的効果が高まる。
【0046】
本発明の第7の発明に係る教育教材用ロボットでは、第1から第6のいずれかの発明に加えて、制御装置は、制御ケーブルが外れた後で、プログラムの動作状態を表示する表示部を更に備える。
【0047】
この構成により、使用者は、プログラムに基づく自動制御となったロボットの動作状態の正しさを把握することができる。
【0048】
本発明の第8の発明に係る教育教材用ロボットでは、第1から第7のいずれかの発明に加えて、切り替え信号に基づいて制御ケーブルが外れない場合には、ロボットは、その動作を停止する。
【0049】
この構成により、制御ケーブルの拘束力が残る場合であっても、ロボットの故障等を未然に防止できる。
【0050】
本発明の第9の発明に係る教育教材用ロボットでは、第1から第8のいずれかの発明に加えて、逐次制御は、制御装置から出力される制御信号に基づいて、ロボットを逐次手順によって制御し、自動制御は、ロボットが備えるプログラムが含む動作命令手順に基づいて、ロボットを自動手順によって制御する。
【0051】
この構成により、教育現場における児童や生徒は、逐次制御と自動制御の両方を、ロボットの製作や制御を通じて学ぶことができる。
【0052】
本発明の第10の発明に係る教育教材用ロボットでは、第1から第9のいずれかの発明に加えて、制御装置は、ロボットが実行可能な動作種類に対応する制御信号を出力可能である。
【0053】
この構成により、制御装置を操作することで、ロボットの一つ一つの動作を逐次的に制御できる。この結果、教育現場における児童や生徒は、逐次制御を確実に理解できる。
【0054】
本発明の第11の発明に係る教育教材用ロボットでは、第1から第10のいずれかの発明に加えて、ロボットは、プログラムに基づく実行オブジェクトを記憶可能な記憶部を備え、ロボットは、記憶部に記憶される実行オブジェクトを読み出すことで、プログラムが含む動作命令順に基づいて動作する。
【0055】
この構成により、教育現場の児童や生徒は、ロボットやプログラムの製作や制御を通じて、自動制御を確実に理解できる。加えて、ロボットは、実行オブジェクトを実行して、プログラムに基づく動作を行える。
【0056】
本発明の第12の発明に係る教育教材用ロボットでは、第1から第11のいずれかの発明に加えて、ロボットは、切り替え信号が出力される前では、逐次制御に基づいて動作し、切り替え信号が出力された後では、自動制御に基づいて動作する。
【0057】
この構成により、切り替え信号によって、逐次制御から自動制御に移行する。
【0058】
(実施の形態1)
【0059】
実施の形態1について説明する。
【0060】
(全体概要)
まず、実施の形態1における教育教材用ロボットの全体概要について説明する。
【0061】
図1は、本発明の実施の形態1における教育教材用ロボットの模式図である。図1は、自動車型のロボットとこれと制御ケーブルで接続される制御装置とを合わせて示している。
【0062】
教育教材用ロボット1は、大きな要素として、ロボット2、制御装置3および制御ケーブル4を備える。
【0063】
ロボット2は、電気的な制御信号による逐次制御および実行オブジェクトであるプログラムによる自動制御の少なくとも一方に基づいて動作する。ロボット2は、人型ロボット、動物型ロボット、乗り物型ロボットなど、種々の形態を有していればよいが、図1においては、自動車型のロボット1が表されている。
【0064】
このため、ロボット2は、本体部21、車輪22を備えており、逐次制御もしくは自動制御によって車輪22の回転動作、方向変換動作を生じさせて制御に従った動作を行う。例えば、ロボット2に対して前進の制御命令が与えられると、車輪22が前進方向に回転する。
【0065】
ロボット2は、更に制御部23を備える。制御部23は、制御装置3より出力される制御信号およびロボット2内部に記憶されるプログラムの少なくとも一方に基づいて、本体部21、車輪22などの動作を制御する。すなわち、制御部23は、制御信号やプログラムからの命令を、具体的な機械動作や電気動作に変換して、本体部21の向きを変更させたり車輪22の回転を制御したりする。
【0066】
また、ロボット2は、制御ケーブル4が接続される接続部24を備える。この接続部24は、種々の接続手段によってロボット2と接続しており、接続手段の一例として、図1では、接続部24は、本体部21との接続を実現する接続手段として電磁石25を示している。電磁石25の磁力によって、制御ケーブル4は、ロボット2と接続される。
【0067】
制御ケーブル4の一方は、制御装置3に接続される。制御装置3は、制御ケーブルを介して、電気信号である制御信号をロボット2に出力する。
【0068】
制御装置3は、制御ダイヤル31や制御ボタン32を備え、使用者は、この制御ダイヤル31や制御ボタン32を操作することで、ロボット2に対して制御信号を出力する。制御信号は、制御ケーブル4を通じてロボット2に到達し、ロボット2においては、制御部23で制御信号が処理されてロボット2の動作を決定する。
【0069】
ここで、ロボット2は、制御装置3から制御ケーブル4を通じて付与される制御信号に基づいて動作する場合には、使用者による逐次的な制御装置3の操作に基づく逐次制御によって動作する。すなわち、制御装置3から使用者の操作によって逐次的に出力される制御信号に基づく制御を、逐次制御とする。
【0070】
一方、ロボット2は、内部に設けられる記憶部やメモリなどに記憶されている実行オブジェクトとなっているプログラムに基づいて動作することもできる。プログラムは、その処理手順に従って制御命令をロボット2に出力し、ロボット2を動作させる。このとき、使用者による操作の介在は不要であり、プログラムの処理手順に従って、ロボット2は、自動で動作させられる。このような予め記憶されたプログラムに基づく制御を、自動制御とする。
【0071】
このため、ロボット2は、制御装置3からの制御信号に基づく逐次制御でも、内蔵されたプログラムに基づく自動制御でも、いずれでも動作可能である。
【0072】
ここで、ロボット2は、教育教材用として用いられるので、逐次制御を行うに当たっては、教育的手順として有線接続された制御ケーブル4を通じて、制御装置3からロボット2に制御信号を送ることが行われる。教育現場においては、制御装置3の操作によって、具体的にどのような制御信号が出力されて、出力された制御信号によってロボット2がどのように動作するか、といったことを学ぶことが求められるからである。
【0073】
このため、逐次制御によってロボット2を動作させる際には、有線ケーブルである制御ケーブル4がロボット2に接続されていることが前提となる。無線通信による逐次制御の場合には、無線通信特有の別の問題(例えば、ノイズ対策、エラー対策、アンテナ技術)への対処を行う必要があり、これらは教育現場での教育カリキュラムとしては、要求度が高くなりすぎるからである。要求度が高くなりすぎると、教育教材用としてのロボットには不適となってしまう。このため、実施の形態1における教育教材用ロボットとしては、逐次制御は有線接続された制御ケーブル4によって実行されることが好ましい。有線通信であれば、上述のような無線通信特有の問題への対処が不要となり、教育現場における使用者(児童や生徒)は、これらの問題を考慮することなく、制御装置3の操作において(あるいは制御装置3の操作系統の設計において)ロボット2の逐次制御を学ぶことができる。
特に、無線通信に基づいてロボットを動作させることになると、教育現場においては、狭い教室の中で多数の電波が飛び交って、複数の電波が混乱する状態となる。これを防止するには、複数の周波数帯を用意する必要があるが、電波法などの点で困難である。あるいは、ロボットコンテストなどを行う際でも、体育館などの狭い空間において、多数の電波が飛び交う状態となるのでやはり困難が生じる。このような困難を理由として、教育現場においては、ロボットを無線通信によって逐次制御することが困難である。すなわち、上述の通り、逐次制御の場合には有線通信での制御が不可欠である。
【0074】
一方、使用者がロボット2をプログラムに基づく自動制御に切り替えて動作させたい状態になることがある。教育現場においては、電気信号である制御信号を逐次発生させて逐次制御する教育だけでなく、プログラム言語やプログラム作成ツールを用いてプログラムを作成し、作成されたプログラムによる制御を学ぶことも求められるからである。
【0075】
特に、プログラムの処理手順は、逐次制御での一つ一つの制御命令の組み合わせを含んでいる。このため、まずは制御装置3を操作して発生させる一つ一つの制御命令を学んだ後で、これら制御命令の組み合わせにより形成されるプログラムを学ぶことが、教育現場では好ましい。このため、逐次制御でのロボット2の制御を学んだ後で、プログラムによる自動制御でのロボット2の制御を学ぶことが、学校現場では好ましい。ロボット2は、この自動制御によっても動作できるので、使用者は、制御装置3の操作によって、ロボット2の動作を逐次制御から自動制御に切り替えることができる。
【0076】
制御装置3は、使用者が逐次制御から自動制御に切り替えることを欲する場合に、制御装置3は、切り替え信号を発生させる。この切り替え信号は、制御ケーブル4を通じてロボット2に出力される。ロボット2の制御部23は、この切り替え信号によって、ロボット2の動作を、逐次制御から自動制御に切り替える。具体的には、切り替え信号を受けて制御部23は、プログラムを起動させてプログラムの処理手順に従ってロボット2を制御するようになる・
【0077】
ここで、ロボット2を自動制御するプログラムは、ロボット2内部に記憶されていればよいので、制御ケーブル4がロボット2に接続されたままの状態であっても、ロボット2は、自動制御によって動作可能である。
【0078】
しかしながら、自動制御となった後では、ロボット2が制御ケーブル4によって束縛されていることは、動作における自由度の面から好ましくない。そこで、実施の形態1の教育教材用ロボット1は、切り替え信号に基づいて、制御ケーブル4は、ロボット2に対する拘束力を弱める。
【0079】
図2は、本発明の実施の形態1における制御ケーブルがロボットに対する拘束力を弱める状態を説明する模式図である。図2は、ロボット2に接続する制御ケーブル4が、切り替え信号を受けて、ロボット2に対する拘束力を弱める状態を示している。
【0080】
図2の左側における教育教材用ロボット1は、制御装置3から制御ケーブル4を介して出力される制御信号によって、ロボット2を逐次動作させる。ここで、制御装置3から切り替え信号が出力されることで、制御ケーブル4はロボット2に対する拘束力を弱める。図2の右側の教育教材用ロボット1は、制御ケーブル4がロボット2に対する拘束力を弱めている。
【0081】
拘束力を弱める手段の一例として、図2の右側に示すように、制御装置3から伸びる制御ケーブル4の長さが延長される。例えば、制御装置3は、制御ケーブル4を収納する収納機構を備えており、切り替え信号を受けて、この収納機構は、収納している制御ケーブル4を押し出して長くする。制御ケーブル4の長さが長くなることで、制御ケーブル4は、ロボット2に対する拘束力を弱めることができる。
【0082】
あるいは、図3に示されるように、制御ケーブル4は、切り替え信号に基づいてロボット2から外れてもよい(解除されてもよい)。ロボット2から制御ケーブル4が外れることで、ロボット2は、より自由に動作できるようになる。
【0083】
図3は、本発明の実施の形態1における教育教材用ロボットの制御ケーブルが外れる状態を説明する模式図である。図3は、ロボット2に接続する制御ケーブル4が、切り替え信号を受けて、ロボット2から外れる状態を示しており、図4の左側の状態から右側の状態へ変化する状況を示している。
【0084】
図3の左側は、制御ケーブル4が接続部24によってロボット2に接続され、制御装置3からの制御信号によってロボット2が逐次制御されている状態を示している。この状態では、制御ケーブル4は、ロボット2に接続されており、制御装置3からの制御信号は、制御ケーブル4を通じてロボット2に到達する。ロボット2は、この制御信号に基づいて動作する。
【0085】
ここで、制御装置3から切り替え信号が出力されると、接続部24がロボット2より切離されて、制御ケーブル4が外れる。図3の右側に示す状態である。制御ケーブル4は、接続部24によってロボット2に接続されているので、接続部24がロボット2から切離されることで、制御ケーブル4がロボット2から外れる。もちろん、接続部24はロボット2に接続したままで、接続部24から制御ケーブル4が外れる構成でも良い。
【0086】
制御ケーブル4が外れることで、ロボット2は制御ケーブル4による拘束を受けなくなり、ロボット2は自由に動作できるようになる。制御ケーブル4が外れた後では、ロボット2は、プログラムによる自動制御に基づいて動作する。例えば、制御部23がプログラムを読み出して、プログラムに含まれる動作命令手順に従って、ロボット2を動作させる。
【0087】
このように、制御ケーブル4がロボット2に対する拘束力を弱めたり制御ケーブル4がロボット2から外れたりすることで、ロボット2は、動作可能な動作空間において、プログラムによる自動制御によって、自由に動作を行うことができる。
【0088】
ロボット2の動作空間での自由度が高まることで、ロボット2は、プログラムに基づいて高い自由度で動作できる。これはすなわち、ロボット2を制御するプログラムの自由度を高めることにもつながり、プログラムを設計する際の制限が少なくなる。
【0089】
特に、教育教材用ロボット1は、教育現場での教育用として用いられる。児童や生徒は、ロボット2を動作させる逐次制御やプログラム設計を学ぶ。このプログラム設計を学ぶ際に、ロボット2の動作が制御ケーブル4によって制限されるのでは、プログラム設計での自由度が低くなる。ロボット2の性能や引き出したい動作種類といった制限によって、プログラムをレベルアップさせる学習は教育には適しているが、本来できるべき動作が物理的にできないということでの制限は、教育効果を著しく減じる。ロボット2が自動制御に切り替わる際に、制御ケーブル4によるロボット2の拘束が弱まって、ロボット2の動作自由度が高まることは、プログラム設計を学習することにとっても好適である。
【0090】
以上のように、教育教材用ロボット1は、制御装置3の操作による逐次制御およびプログラムによる自動制御を、教育現場で学習させるのに最適である。
【0091】
また、切り替え信号は、制御ケーブル4の拘束力を弱めたり制御ケーブル4を外したりするきっかけとなるが、そもそもは、ロボット2の制御方法を切り替える。すなわち、切り替え信号が出力される前では、ロボット2は、制御装置3から出力される制御信号に基づいた逐次制御によって制御され、切り替え信号が出力された後では、ロボット2は、プログラムによる自動制御によって制御される。もちろん、切り替え信号によって、逐次制御から自動制御に切り替わるまでの間では、所定の時間を要しても良いし、切り替えのための他の制御が含まれていても良い。
【0092】
次に、各部の詳細について説明する。
【0093】
(ロボット)
【0094】
ロボット2について説明する。
【0095】
ロボット2は、逐次制御もしくは自動制御によって動作する。ロボット2は、機械部品と電子部品とによって、動作する装置である。ロボット2は、逐次制御および自動制御の少なくとも一方で動作すればよいので、市販されるロボットやキット組み立てなどで簡単に組み立てられるロボットを用いればよい。もちろん、教育現場での教育の一環として、ロボット2も児童や生徒に組み立てられれば良い。
【0096】
ロボット2は、人間型ロボット、動物型ロボット、自動車型ロボット、飛行機方ロボットなど、種々の形態を含む。図1〜図3では、自動車型ロボットが示されているが、図4に示されるように、人間型ロボット28が用いられても良い。図4は、本発明の実施の形態1における人間型ロボットの正面図である。
【0097】
自動車型ロボットの場合には、ロボット2の動作のために車輪22が用いられているが、人間型ロボット28の場合には、四肢によって動作する。このため、人間型ロボット28は、より自由でかつコミカルな動作を行える。人間型ロボット28は、制御ケーブル4とこれを接続する接続部24を備えており、この制御ケーブル4によって逐次制御される。人間型ロボット28は、四肢を備えているので、四肢を動作させることのできる間接を備えている。
【0098】
ロボット2や人間型ロボット28は、内部に制御部23を備えている。
【0099】
この制御部23は、制御ケーブル4を通じて得られた制御信号を処理し、具体的な動作信号を発生させて、ロボット2の動作を制御する。また、ロボット2や人間型ロボット28は、内部に記憶部を備えており、この記憶部は実行オブジェクトとなったプログラムを記憶する。このため、制御部23は、記憶部からプログラムを読み出して、プログラムに含まれる動作命令手順に従って、ロボット2の動作を制御する。
【0100】
ここで、制御部23は、制御信号やプログラムの動作命令手順に基づいて、ロボット2の動作に必要となる要素を制御する。例えば、自動車型ロボットの場合には、車輪22や本体部21の方向などを制御する。制御部23が、車輪22の回転方向、回転数を制御することで、自動車型ロボットであるロボット2は、前進、直進、カーブ、後退、停止などを実行できる。これらの動作制御は、制御装置3からの制御信号もしくはプログラムからの動作命令手順に基づいている。
【0101】
あるいは、人間型ロボット28の場合には、制御部23は、四肢の間接の動作を制御する。伸長、折り曲げ、前進、後退などを制御することで、制御部23は、制御信号や動作命令手順に基づいて、人間型ロボット28を動作させることができる。
【0102】
ロボット2は、制御部23による制御に必要なその他の要素も有している。例えば、電源や表示装置などである。
以上のように、ロボット2は、逐次制御や自動制御によって動作を制御され、この制御に基づく動作に必要となる要素を備えている。なお、ロボット2は、無線通信による逐次制御によって動作可能であっても良い。
【0103】
(制御装置)
制御装置3は、制御ケーブル4を通じて、制御信号をロボット2に出力する。
【0104】
制御装置3は、いわゆるリモートコントロールが行われるロボットのコントローラーに対応するものであり、図1に示されるように、操作ダイヤル31や操作ボタン32を備えている。更には、タッチパネルや操作キーボードなどを備えており、使用者はこれらの操作デバイスを介して制御信号を発生させる。
【0105】
制御装置3は、使用者が操作するのに用いるデバイスであるので、使用者が持ちやすい形状を有していることが好ましい。特に、教育教材用ロボット1は、教育現場で用いられるので、制御装置3は、児童や生徒に用いられる。このため、制御装置3はその大きさが小さめであって、落としにくいように滑り止めや指の握り形状に合わせたフィット部材を備えていることも好適である。また、操作ダイヤル31や操作ボタン32は、児童や生徒が使用しやすいように、大きめであって見やすい形状を有していることが好ましい。
【0106】
また、制御装置3は、ロボット2の動作を制御するための逐次制御を学ぶのに用いられる。このため、操作ダイヤル31、操作ボタン32、タッチパネルなどは、ロボット2が実行可能な動作種類に対応する制御信号を把握しつつ出力できる構成を有していることが好ましい。例えば、ロボット2が自動車型ロボットである場合には、「前進」、「後退」、「停止」、「加速」、「減速」、「右旋回」、「左旋回」などのように、ロボット2が実行可能な動作種類が存在する。制御装置3は、これらの動作種類毎に操作ボタン32を有しており、操作ダイヤル31でその動作種類における度合いを制御できるような構成を有していることが好ましい。このような構成を有していることで、児童や生徒は、ロボット2に対して、複数の動作種類のそれぞれに対応する制御信号を発生させていることを、容易に把握できるからである。
【0107】
動作種類に対応する制御信号を発生させていることを容易に把握できることで、児童や生徒は、自らがロボット2を制御していることを確認しながら制御できる。このように、都度ごと確認しながら制御できることで、児童や生徒は、制御(逐次制御)を的確に学ぶことができる。
【0108】
また、制御装置3は、逐次制御から自動制御に切り替えるための切り替え信号を出力できる。
【0109】
例えば、制御装置3は、操作ボタン32の一部に「制御切り替え」などの命令ボタンを備えている。使用者は、この命令ボタンを実行することで、逐次制御から自動制御へ変更できる。すなわち、切り替え信号は、制御装置3からの命令によって発生し、制御ケーブル4を通じてロボット2に伝達される。
【0110】
もちろん、切り替え信号は、操作ボタン32ではなく、タッチパネルや操作ダイヤルなどによって発生されても良い。
【0111】
制御装置3は、操作ボタン32などで生成された制御信号を、電気信号としてロボット2に出力する。このとき、ロボット2へは、制御ケーブル4を通じて出力される。制御ケーブル4は、制御装置3とロボット2との間を有線接続で接続しているので、ノイズやエラーといった問題を余り考慮せずに、制御信号をロボット2に伝達できる。このため、制御装置3で自らの考えで発生させた制御信号(これは、ロボット2の動作種類に対応している)は、ノイズやエラーなどの要因によって、ロボット2に誤って伝達される可能性が低い。このため、ロボット2は、制御装置3で発生させた制御信号の通りに動作する。
【0112】
このように、自らが発生させた制御信号に従ってロボット2が動作することで、児童や生徒は、自らの逐次制御を確認できる。ロボット2が、制御信号に従った動作を行うからである。この点でも、制御信号が有線接続された制御ケーブル4によって伝達されることは、教育現場での教材としては適当である。
【0113】
(制御ケーブル)
次に、制御ケーブル4について説明する。図5は、本発明の実施の形態1における制御ケーブルの取り外しを説明する模式図である。
【0114】
制御ケーブル4は、制御装置3とロボット2とを有線接続する有線ケーブルであり、制御装置3からの制御信号をロボット2に伝達する。もちろん、必要に応じて、ロボット2からの種々の信号を制御装置3に伝達しても良い。
【0115】
制御ケーブル4は、例えば同軸ケーブル、光ファイバケーブル、電気コード、電気ラインなど、様々な素材を用いればよく、電気信号を伝達できればよい。
【0116】
制御ケーブル4は、制御装置3には半田付けやコネクタなどによって接続されており、ロボット2には接続部24を介して接続されている。このため、制御ケーブル4は、接続部24がロボット2から外れることで外れることができる。もちろん、接続部24がロボット2に残った状態で、制御ケーブル4だけが外れても良い。
【0117】
すなわち、切り替え信号を受けて、接続部24がロボット2の本体部21から外れるか、制御ケーブル4が接続部24から外れるかすれば、逐次制御から自動制御に移行する際に、制御ケーブル4によるロボット2の束縛が無くなる。
【0118】
ここで、一例として接続部24は、電磁石25を備えており、電磁石25の磁力によって接続部24はロボット2の本体部21に接続している。図5では、この電磁石25を備える接続部24が、ロボット2の本体部21に接続している状態が示されている。この電磁石25に電流が与えられることで電磁石25は、磁力を発生させて、この磁力によって接続部24は本体部21に接続する。
【0119】
制御ケーブル4は、ロボット2の動作を制御する制御信号を伝達する制御ライン41と電磁石25に電流を付与する電流ライン42とを備える。図5においては、制御ライン41と電流ライン42のそれぞれが別の有線ケーブルとして表されているが、一つの有線ケーブルでまとめられても良い。
【0120】
制御ライン41は、制御装置3からの制御信号をロボット2に伝達するが、電流ライン42は、電磁石25への電流の付与信号を伝達する。制御装置3は、スイッチ35を備えており、このスイッチ35は、ONとOFFとを切り替えることができる。このONとOFFとは、スイッチ35を操作することで切り替わる。
【0121】
例えば、スイッチ35がONの状態では、電流ライン42には電流が付与されており、この電流が電磁石25に伝達して電磁石25は磁力を発生させる。一方で、スイッチ35がOFFの状態では、電流ライン42には電流が付与されずに、電流が電磁石25に伝達しない。この結果、電磁石25は磁力を発生させない。電磁石25の磁力が消失することで、接続部24は、ロボット2の本体部21から外れる。この結果、制御ケーブル4がロボット2から外れて、ロボット2に対する拘束力を消失させる。
【0122】
なお、制御ライン41および電流ライン42のそれぞれが接続部24に接続されており、電磁石25の磁力が失われると、接続部24全体が外れる。この結果、制御ライン41および電流ライン42の全てがロボット2から外れる。
【0123】
スイッチ35は、逐次制御から自動制御に切り替える操作に用いられるので、電流ライン42に流れる電流を制御する以外に、制御ライン41を通じてロボット2に切り替え信号を出力する。この切り替え信号を受けて、ロボット2の制御部23は、逐次制御から自動制御に切り替える。すなわち、スイッチ35は、電流ライン42に合わせて制御ライン41にも信号を出力する。制御ライン41を伝達される信号は、切り替え信号としてロボット2に伝達され、電流ライン42には、電磁石25に付与される(付与されないことも含む)電流が伝達される。
【0124】
このように、接続部24が電磁石25を備えており、制御ケーブル4がこの電磁石25の磁力によってロボット2に接続されている場合には、電磁石25に対する電流の付与を制御するだけで、制御ケーブル4の接続と解除とを切り替えることができる。
【0125】
なお、電磁石25を用いた制御ケーブル4の切り替えは一例であり、制御装置3から出力される切り替え信号に基づいて、制御ケーブル4が外れる機構であればなんでもよい。
【0126】
(ロボット2の自由度確保)
【0127】
教育教材用ロボット1は、例えばロボットコンテストなどに出展され、所定の空間で動作することがある。ロボットコンテストでは、所定空間でロボットがその動作を披露したり、ロボット同士が何らかの競争を行ったりする。図6は、本発明の実施の形態1における所定空間でのロボットの動作を示す説明図である。
【0128】
所定空間50は、ロボット2がその動作を披露する空間であったり、ロボット同士が競技を行ったりする空間である。教育教材用ロボット1の特徴として、製作した教育教材用ロボット1の出来具合を披露する必要がある。
【0129】
製作者である児童や生徒は、ロボット2を所定空間50に設置し、当所は制御ケーブル4を接続した制御装置3から逐次制御によって動作させる。このように制御ケーブル4を介した逐次制御においては、所定空間50において、制御ケーブル4の束縛や拘束を受けながらも、ロボット2は、その動作を披露できる。制御装置3からの逐次制御を披露するので、ロボット2は、所定空間50の一部を活用して動作する。その後、製作者は、逐次制御から自動制御に切り替える命令を出力し、制御ケーブル4がロボット2から外れる。
【0130】
制御ケーブル4が外れた後では、ロボット4がプログラムに基づく自動制御によって動作を開始する。
【0131】
図6中の破線矢印Aは、ロボット2が自動制御によって動作する動線を示している。破線矢印Aに示されるとおり、所定空間50を十分に活用して、ロボット2は動作することができる。制御ケーブル4による束縛や拘束が減少しているので、ロボット2は、所定空間50を自由に動作できる。このように自由に動作できるようになることで、ロボット2は、所定空間50内で、種々の動作披露や競技を行うことができる。
【0132】
以上のように、実施の形態1における教育教材用ロボット1は、制御ケーブル4が接続されている状態から外れる状態に移行した後で、所定空間50を有効に活用して自由度の高い動作を示すことができる。結果として、逐次制御および自動制御の両方での製作結果を、製作者は披露できると共に、自動制御における制御ケーブル4による束縛等を排除できることで、自由度の高い動作を披露できる。このため、製作者である児童や生徒は、製作結果を十分に把握でき、教育的効果を感じ取ることができる。
【0133】
このように、実施の形態1における教育教材用ロボット1は、教育現場において、高い効果を発揮できる。このため、教育教材としてのロボットという新しいビジネスモデルに資するものである。特に、学校などの教育現場やその延長戦でのロボットコンテストなどで有線通信による逐次制御とこれに続く自動制御を同時に行うことは、新しい教育カリキュラムを生み出すことができる。このような意味でも実施の形態1における教育教材用ロボット1は、さまざまな広がりを見せる。
【0134】
(実施の形態2)
【0135】
次に、実施の形態2について説明する。
【0136】
実施の形態2では、制御装置やロボットの変形例について説明する。
【0137】
(制御装置の変形例)
図7は、本発明の実施の形態2における制御装置の模式図である。図7に示される制御装置3は、操作ボタン32に加えて、表示部37を備えている。表示部37は、制御装置3において制御する制御信号や制御状態を表示することに加えて、逐次制御から自動制御に移行した後で、プログラムの動作状態を表示する。
【0138】
逐次制御から自動制御に移行すると、制御ケーブル4が外れて、ロボット2はプログラムによる自動制御に基づいて自立して動作する。このため、使用者は、制御装置3を介した操作を行うことができなくなる。この場合に、ロボット2が、製作者が設計したプログラムに従って動作しているかを把握することは、使用者にとっては難しい。ロボット2の動作を見るだけでは分かりにくいからである。特に、教育教材用ロボット1は、教育現場での教育目的で用いられるので、製作者が製作したプログラムに従ってロボット2が動作しているかを、使用者が確かめることができることが望ましい。
【0139】
このため、表示部37がプログラムの動作状態を表示することは、製作したプログラムの内容を表示部37で見ることを提供できる。この結果、使用者は、手元に把持する制御装置3の表示部37で、プログラムの動作状態を見ながら、実際に動作するロボット2の動作を見ることができる。これら、表示部37の確認とロボット2の動作の確認とを合わせることで、使用者は製作したプログラムどおりにロボット2が動作していることを確認できる。
【0140】
例えば、表示部37は、プログラムの手順をそのまま表示したり、フローチャートなどに置き換えて、実行順序を表示したりして、ユーザーインターフェースの高い表示を行うことも好適である。
【0141】
ロボット2が製作したプログラムに従って動作していないと判断する場合には、ロボット2の製作に問題があったり、プログラムの製作に問題があったりすることを把握できるので、製作者である児童や生徒は自ら製作した教育教材用ロボット1を修正することになる。この結果、教育的目的がより確実に達成される。
【0142】
(緊急停止)
【0143】
ロボット2の動作を逐次制御から自動制御に切り替える際には、使用者は制御装置3から切り替え信号を出力する。この切り替え信号によって、実施の形態1で説明したように、例えば電磁石に対する電流が遮断されて、接続部から制御ケーブル4が外れる。制御ケーブル4が外れることで、ロボット2は、制御ケーブル4による拘束や束縛を受けることなく、動作できるようになる。
【0144】
しかし、電磁石の磁力が残ってしまったり、制御ケーブル4がロボットに引っかかったりして制御ケーブル4がロボット2の本体部21から外れないままになってしまうこともありうる。このように、制御ケーブル4が外れないような想定外の事態が生じてしまうと、ロボット2は、自動制御によって動作する際に倒れたりぶつかったりして、危険である。ロボット2が倒れたり壁にぶつかったりすると、故障してしまう可能性もある。
【0145】
このような場合には、ロボット2に含まれる制御部23は、切り替え信号の発生している状態と制御ケーブル4が外れていない状態との両方を検出し、ロボット2の動作を緊急停止させる。
【0146】
制御部23は、切り替え信号を受信するので、切り替え信号の発生を検出できる。加えて、制御ケーブル4がロボット2に接続している状態であると制御ケーブル4とロボット2との間に電気信号が流れるので、制御部23は、制御ケーブル4が接続している状態も検出できる。
【0147】
このように、制御部23は、切り替え信号が発生している状態と制御ケーブル4が外れていない状態との両方を検出できる。この両方の状態を検出できると、制御部23は、プログラムの起動を停止したり、ロボット2の動作信号を停止したりして、ロボット2の動作を緊急停止させる。ロボット2が緊急停止することで、ロボット2が制御ケーブル4の束縛を受けたまま動作して故障するなどの問題を未然に防止できる。
【0148】
もちろん、このような緊急停止は必要に応じて用いられるオプションであり、必須の構成要件ではない。
【0149】
このように、制御ケーブル4が外れない場合に備えて、ロボット2を停止させることで、ロボット2の故障などの問題を未然に防止でき、教育教材用として適切な使用が可能となる。
【0150】
(キットでの流通)
【0151】
実施の形態1、2で説明した教育教材用ロボット1は、教育現場で児童や生徒によって製作されることが多い。このため、最初から完成したロボット2や制御装置3が提供されるだけではなく、ロボット2や制御装置3を製作するのに必要な部材や要素が提供され、児童や生徒がこれらの部材や要素を組み立てて実際の教育教材用ロボット1として使用することも多い。
【0152】
このため、教育教材用ロボット1では、ロボット2(これを製作するのに必要な部材や要素の状態でもよい)、制御装置3(これを製作するのに必要な部材や要素の状態でも良い)、制御ケーブル4と、がキットの状態で製造、販売、流通されてもよい。このようなキットの状態で教育現場には提供され、児童や生徒は、これらのキットに含まれる部材を組み立てて教育教材用ロボット1を製作する。
【0153】
もちろん、プログラムの設計ツールや設計したプログラムを記憶させる記憶部、記憶部に記憶させるためのツールなども、製作補助具として提供されてもよい。児童や生徒は、これらの製作補助具も用いながら、ロボット2を組み立てたり、ロボット2の自動制御に必要となるプログラムを設計したりする。このように、完成品の状態ではなく、キットの状態によって提供されることにより、教育的目的がより高度に達成されることになる。
【0154】
このため、実施の形態1、2では、ロボット2や制御装置3について説明したが、教育教材用ロボット1は、これらの要素が完成した状態ではなく、未完成の状態で提供されて、児童や生徒によって完成の状態に移行されても良い。すなわち、本発明における、ロボット2、制御装置3、制御ケーブル4との要素は、完成品も未完成品も含む。
【0155】
以上、実施の形態1〜2で説明された教育教材用ロボットは、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0156】
1 教育教材用ロボット
2 ロボット
21 本体部
22 車輪
23 制御部
24 接続部
25 電磁石
3 制御装置
31 操作ダイヤル
32 操作ボタン
35 スイッチ
37 表示部
4 制御ケーブル
41 制御ライン
42 電流ライン
50 所定空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的な制御信号による逐次制御および実行オブジェクトであるプログラムによる自動制御の少なくとも一方に基づいて動作するロボットと、
前記ロボットに前記制御信号を与える制御装置と、
前記制御装置と前記ロボットとを接続すると共に前記制御信号を電気的にやり取りする制御ケーブルと、を備え、
前記制御装置は、前記逐次制御から前記自動制御に切り替える切り替え信号を、前記ロボットに出力可能であり、
前記制御ケーブルは、前記切り替え信号に基づいて、前記ロボットに対する拘束力を弱める教育教材用ロボット。
【請求項2】
前記制御ケーブルは、前記切り替え信号に基づいて、前記ロボットから外れる請求項1記載の教育教材用ロボット。
【請求項3】
前記制御ケーブルは、前記制御ケーブルと前記ロボットとの接続部に設けられる電磁石の磁力によって前記ロボットに接続され、前記電磁石の磁力の解除によって前記ロボットから外れる請求項2記載の教育教材用ロボット。
【請求項4】
前記切り替え信号は、前記電磁石への電流を停止する請求項3記載の教育教材用ロボット。
【請求項5】
前記切り替え信号は、前記逐次制御から前記自動制御へ変更する制御装置からの命令動作によって出力される、請求項1から4のいずれか記載の教育教材用ロボット。
【請求項6】
前記制御ケーブルが外れることによって、前記ロボットは、広い動作空間において前記自動制御に基づく動作を行う請求項1から5のいずれか記載の教育教材用ロボット。
【請求項7】
前記制御装置は、前記制御ケーブルが外れた後で、前記プログラムの動作状態を表示する表示部を更に備える請求項1から6のいずれか記載の教育教材用ロボット。
【請求項8】
前記切り替え信号に基づいて前記制御ケーブルが外れない場合には、前記ロボットは、その動作を停止する請求項1から7のいずれか記載の教育教材用ロボット。
【請求項9】
前記逐次制御は、前記制御装置から出力される制御信号に基づいて、前記ロボットを逐次手順によって制御し、前記自動制御は、前記ロボットが備えるプログラムが含む動作命令手順に基づいて、前記ロボットを自動手順によって制御する、請求項1から8のいずれか記載の教育教材用ロボット。
【請求項10】
前記制御装置は、前記ロボットが実行可能な動作種類に対応する制御信号を出力可能である、請求項1から9のいずれか記載の教育教材用ロボット。
【請求項11】
前記ロボットは、前記プログラムに基づく実行オブジェクトを記憶可能な記憶部を備え、前記ロボットは、前記記憶部に記憶される前記実行オブジェクトを読み出すことで、前記プログラムが含む動作命令順に基づいて動作する請求項1から10のいずれか記載の教育教材用ロボット。
【請求項12】
前記ロボットは、前記切り替え信号が出力される前では、前記逐次制御に基づいて動作し、前記切り替え信号が出力された後では、前記自動制御に基づいて動作する請求項1から11のいずれか記載の教育教材用ロボット。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか記載のロボットと、
請求項1から12のいずれか記載の制御装置と、
請求項1から12のいずれか記載の制御ケーブルと、を備える教育教材用ロボットのキット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−224732(P2011−224732A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97447(P2010−97447)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(504193929)国立大学法人福岡教育大学 (2)
【Fターム(参考)】