説明

整形外科用インプラントの抗微生物ヒアルロン酸被覆物

本発明は、ヒアルロン酸またはその誘導体で表面が覆われたインプラントに関する。このコーティング・インプラントは耐微生物増殖性を持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2003年9月30日に出願された米国特許仮出願第60/506,760号の優先権を主張するもので、本明細書ではその開示内容全体を援用する。
(技術分野)
本発明は、ヒアルロン酸またはその誘導体で表面が覆われたインプラントに関する。このコーティング・インプラントは耐微生物増殖性を持つ。
【背景技術】
【0002】
ひとたび生体適合材料製インプラントをからだの中に移植すると、その後に該インプラントが宿主血漿成分(フィブリン等の細胞外マトリックス(ECM)タンパク質成分を含む)によって覆われ、最終的に宿主の細胞に覆われることで、柔らかくて固い組織が形成される(例えば、バイヤー(Baier)他、ジャーナル・オブ・バイオメディカル・マテリアルズ・リサーチ(J. Biomed. Mater. Res.) 18:337−355 (1984))。生体適合材料に沈着した細胞外マトリックスおよび血漿タンパク質に付着するスタヒロコッカス・アウレウス(S. aureus)およびスタヒロコッカス・エピデルミィス(S.eperdermis)の能力は、病原または整形外科装置関連感染での有意要因であり、結果として生ずる細菌によって生物膜が形成されることが報告されている(ホイール(Hoyle)他、プログレス・イン・ドラッグ・リサーチ(Prog. Drug Res.)、37: 91−105 (1001)を参照せよ)。
【0003】
生物膜形成は、表面に対する細菌の付着とそれに続く細胞間の付着とを必要とする2段階プロセスであり、細菌多層膜を形成する(例えば、クレムトン(Cramton)他、感染と免疫(Infect. Immun.)、67:5427−5433(1999)を参照せよ)。ひとたび生物膜が形成されると、この生物膜の内側にいる細菌はファゴサイトーシスおよび抗生物質から保護されていることから、臨床的に処置することが困難である(ホイール(Hoyle)を参照せよ)。この10年間にわたって、抗生物質の全身投与は、インプラントに関連する感染に対する有効な処置を提供するものではなかった(例えば、ペティ(Petty)他、骨関節外科雑誌(J. Bon. Joint Surg.)、67:1236−1244)、バース(Barth)他、バイオマテリアル(Biomat.)、10:325−328(1989)、ワッサイル(Wassail)他、ジャーナル・オブ・バイオメディカル・マテリアルズ・リサーチ(J. Biomed. Mater. Res.)、36(3):325−330(1997)、およびローウィ(Lowy)、ニューイングランド・ ジャーナル・オブ・メディシン(N. Engl. J. Med.)、339(8):520−32(1988)を参照せよ)。
【0004】
ハラブ(Hallab)他、組織工学(Tissue Eng.)、7(1):55−71(2001)およびランジェ(Lange)他、生体分子工学(Biomol. Eng.)、19:255−61(2002)は、医療用インプラントの表面特性(トポロジーおよび化学的性質を含む)が細胞および細菌の付着を促進もしくは阻害する上で重要であると報告している。したがって、感染を減少させることを目的として、インプラントの表面を修飾することが種々の研究でなされたことが報告されている(例えば、コエルナー(Koerner)他、バイオマテリアルズ(Biomaterials)、23(14):2835−40(2002)、パーク(Park)他、バイオマテリアルズ(Biomaterials)、19:851−9(1998)、およびローウィ(Lowy)、ニューイングランド・ ジャーナル・オブ・メディシン(N. Engl. J. Med.)、339(8):520−32(1988)を参照せよ)。
【0005】
細菌付着よりも、修飾表面に対する真核細胞およびECMタンパク質の付着が、よりいっそう注目された(例えば、アンセルム(anselme)他、ジャーナル・オブ・バイオメディカル・マテリアルズ・リサーチ(J. Biomed. Mater. Res.)、49(2):155−66(2002)、およびローウィ(Lowy)、ニューイングランド・ ジャーナル・オブ・メディシン(N. Engl. J. Med.)、339(8):520−32(1988)、さらにハラブ(Hallab)他、組織工学(Tissue Eng.)、7(1):55−71(2001)を参照せよ。チタニウム等の材料のトポグラフィおよび表面化学的性質を修飾するために、異なる表面処理が用いられてきた(例えば、プレオ(Puleo)他、バイオマテリアルズ(Biomaterials)、20:2311−21(1999)、ローウィ(Lowy)、およびハラブ(Hallab)を参照せよ)。ローウィ(Lowy)の論文は、上記表面を研磨する一つの方法を記述している。別の方法はその表面を抗菌または抗タンパク質被膜で被覆することである(例えば、コエルナー(Koerner)、ナガオカ(Nagaoka)他、アメリカ人工臓器学会誌(ASAIO J.)、141(3):M365−8(1995)、およびシヤオのチタニウム・イン・メジシン(Titanium in Medicine)417−449(シュプリンガー出版、ハイデルベルグおよびベルリン、2001)を参照せよ。
【0006】
親水性被膜(例えば、ヒアルロナン)が耐付着性を持つことが報告されている。例えば、パベシオ(Pavesio)他、メディカル・デバイス・テクノロジー(Med. Device Technol.)、8(7):20−1および24−7 (1997)、ならびにカシネリ(Cassinelli)他、ジャーナル・オブ・バイオマテリアル・サイエンス・エディッション(J. Biomater. Sci. Polym. Ed.)、11(9):961−77(2000)は、線維芽細胞およびスタヒロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)の付着が減少した被覆高分子医療装置(例えば、眼内レンズ、ステント、およびカテーテル)を記述している。
バラツ(Balazs)他の米国特許第4,500,676号は、高分子材料およびそれから作られた製品を記述しており、この製品はその高分子材料とともにヒアルロン酸またはその塩を含むことで生体適合性となっている。
ホエーリグ(Wahlig)他の米国特許第4,853,225号は、生理的に許容される賦形剤とギラーゼ阻害剤型の化学療法薬である少なくとも1種類の遅延放出活性化合物とを含む埋め込み型のデポー製剤を記述している。
【0007】
デラ・バレ(della Valle)他の米国特許第5,166,331号、デラ・バレ(della Valle)他の米国特許第5,442,053号、およびデラ・バレ(della Valle)他の米国特許第5,631,241号はすべて、種々の用途に対して医薬的に有用なヒアルロン酸部分、すなわち創傷治癒に有用である50,000ないし100,000ダルトンならびに眼内および関節内注射に有用である500,000ないし730,000ダルトンを記述している。これらの引用文献にあるヒアルロン酸は、遊離の酸として、アルカリもしくはアルカリ土類金属塩として、または1つ以上の薬理学的活性物質を持つ塩として、存在すると思われる。
【0008】
グリスチナ(Gristina)他の米国特許第5,505,945号、グリスチナ(Gristina)他の米国特許第5,530,102号、グリスチナ(Gristina)他の米国特許第5,530,102号、グリスチナ(Gristina)他の米国特許第5,707,627号、およびグリスチナ(Gristina)他の米国特許第5,718,899号、さらに国際公開番号WO94/15640はすべて、微生物およびウイルスの感染と戦う高濃度の免疫グロブリンIgA、IgG、およびIgMを含む組成物を記述している。これらの引用文献の免疫グロブリンを、多様な生体適合性材料、例えばコラーゲン、フィブリン、ヒアルロン酸、生物分解可能な重合体、およびそれらの断片上に、固定化することができる。
【0009】
フォーク(Falk)等の米国特許第5,929,048号およびフォーク(Falk)等の米国特許第6,069,135号はすべて、ヒアルロン酸および/あるいはその塩および/またはその相同体、類似体、誘導体、複合体、エステル類、断片、およびそれらのサブユニットを治療量含む、組成物、製剤、ならびに潅流の悪い組織および病理学的組織を処置するための方法を記述している。
バレンタイン(Valentaine)の米国特許第6,428,579号は、生理活性分子が金−スルヒドリル結合を介して付着した金層を表面に有する被覆埋め込み型の装置を記述している。
ハリッシュ(Harish)等の米国特許第6,503,556号は、埋め込み型装置または腔内人工器官にコーティングを形成する方法を記述している。この引用文献のコーティングもまた、活性成分、放射線不透過性エレメント、または放射性同位元素の送達に用いることができる。
ケオフ(Keogh)他の米国特許第6,617,142号は、医療装置の表面に固定化生体分子のコーティングを設けて組織液および体液との接触のための生体適合性を改善する方法を記述している。
米国特許公開番号2003/0091609A1および国際公開番号WO02/058752はどちらも、医療装置、さらにはそれを製造して使用する方法を記述しており、この医療装置は、担体(すなわち、重合体)と、ポリヌクレオチド、もしくは抗菌ポリヌクレオチドを発現する細胞とを含む。
しかし、微生物の増殖を阻害する改善されたインプラントが求められている。
【特許文献1】米国特許第5,166,331号
【特許文献2】米国特許第5,442,053号
【特許文献3】米国特許第5,631,241号
【特許文献4】米国特許第5,505,945号
【特許文献5】米国特許第5,530,102号
【特許文献6】米国特許第5,530,102号
【特許文献7】米国特許第5,707,627号
【特許文献8】米国特許第5,718,899号
【特許文献9】国際公開番号WO94/15640
【特許文献10】米国特許第5,929,048号
【特許文献11】国際公開番号WO02/058752
【特許文献12】米国特許第6,069,135号
【特許文献13】米国特許第6,428,579号
【特許文献14】米国特許第6,503,556号
【特許文献15】米国特許第6,617,142号
【特許文献16】米国特許公開番号2003/0091609A1
【発明の開示】
【0010】
本発明は、ヒアルロン酸またはその誘導体で覆われたインプラントに関連する。このコーティング・インプラントは耐微生物増殖性を持つ。
一実施形態では、本発明はヒアルロン酸またはその誘導体で覆われたインプラントに関し、このインプラントは金属、合金、セラミック、またはそれらの組み合わせである。
別の実施形態では、本発明はヒアルロン酸またはその誘導体で覆われたインプラントに関し、このインプラントはプラスチックまたは重合体を実質的に含まない。
別の実施形態では、本発明はヒアルロン酸またはその誘導体で覆われた整形外科用のインプラントに関する。
別の実施形態では、本発明は(a)ヒアルロン酸またはその誘導体と(b)抗菌剤とを含むコーティングによって覆われたインプラントに関する。
別の実施形態では、本発明は(a)インプラントの表面に存在する第1の層と(b)第1の層に存在するヒアルロン酸またはその誘導体を含む第2の層とを有するマルチコーティング・インプラントに関する。
本発明の非限定的実施形態を例示することを意図した以下の図面、詳細な説明、および実施例を参照することで、本発明をより完全に理解することができる。
【0011】
(図面の簡単な説明)
図1Aないし図1Fは、標準のチタニウム表面、1時間培養後のコーティング表面(TS、TSS、THY、TIG、TLF、TAST)に付着したスタヒロコッカス・アウレウス(S. aureus)の電界放射型走査電子顕微鏡(FESEM)像を示し、他の表面に比べてかなり少ない細菌がTHY面に見られることを示す。
図2Aおよび図2Bは、異なる表面に付着したスタヒロコッカス・アウレウス(S. aureus) の数密度を示す。(a)標準チタニウム(TSおよびTSS)および標準チタニウム・コーティング、(b)標準チタニウム(TS)および研磨面。
図3Aおよび図3Bは、標準チタニウム(TS)面および化学的に研磨したチタニウム(TC)に付着したスタヒロコッカス・アウレウス(S. aureus) の傾向顕微鏡像を示す。白い点は生菌を表しており、元の像では赤色に見えた。
図4は、48時間培養のCA、CAC、CP、およびCPCの表面上のスタヒロコッカス・エピデルミディス(S.epidermidis)のSEM像を示す。
図5は、CAおよびCPの表面上での48時間培養後(左側像)および96時間培養後(右側像)のhTERT線維芽細胞のSEM像を示す。
図6は、CACおよびCPCの表面上での48時間培養後(左側像)および96時間培養後(右側像)のhTERT線維芽細胞のSEM像を示す。
図7は、CC、CH、CHP、およびCHRの表面上での48時間培養後(左側像)および96時間培養後(右側像)のhTERT線維芽細胞のSEM像を示す。
図8は、CHCの表面上での48時間培養後(左側像)および96時間培養後(右側像)のhTERT線維芽細胞のSEM像を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
上記したように、本発明はヒアルロン酸またはその誘導体(抗菌コーティング(Antimicrobial Coating))でコーティングされたインプラントに関する。このコーティング・インプラントは、微生物増殖を阻害する。阻害され得る微生物増殖の例として、限定されるものではないけれども、スタヒロコッカス・アウレウス(Staphiococcus aureus) およびスタヒロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)が挙げられる。
【0013】
本発明のコーティング・インプラントを、生体吸収可能、再吸収可能、あるいは半永久的なものとすることができる。本発明のインプラントを、骨統合、骨接合、整形外科、および歯科での用途で使用することができる。典型的なインプラントとして、限定されるものではないけれども、空隙充填材(例えば、骨空隙充填材)、骨折安定化補助材、髄内固定装置、関節増強/代替装置、骨固定板(例えば、頭蓋顔面用、上顎骨顔面用、整形外科用、および骨格用)、ネジ、タック、クリップ、ステープル、釘、ピン、ロッド、アンカー(例えば、縫合用および骨用)、スカフォード、ステム、メッシュ(例えば、硬質性、膨張性、編組み状(woven)、ニット状(knitted)、および織編状(weaved))、スポンジ、細胞封入もしくは組織工学用インプラント、薬物送達装置(例えば、抗ウイルス薬、抗生物質、および担体、骨成長誘導触媒(骨形成タンパク質、成長因子、ペプチド、およびその他)、モノフィラメントもしくはマルチフィラメント構造、シート、コーティング、膜(例えば、多孔性、微孔性、および再吸収性の膜)、気泡材(例えば、連続気泡材および独立気泡材)、ネジ増強装置、頭蓋再建装置、心臓弁、およびぺーサー・リード(pacer lead)が挙げられる。
【0014】
一実施形態では、上記インプラントが整形外科用のインプラントである。別の実施形態では、上記インプラントが整形外科用のインプラントであって、このインプラントが整形外科用骨空隙充填材、骨折安定化補助材、髄内固定装置、関節増強/代替装置、骨固定板、ネジ、タック、クリップ、ステープル、釘、ピン、ロッド、アンカー、ネジ増強装置、または頭蓋再建装置である。
「ヒアルロン酸」という用語は、本明細書で用いられるように、交互に繰り返す単位として生ずるグルクロン酸(C10)とアセチルグルコサミン(C15NO)との(共)重合体を含む。
「ヒアルロン酸誘導体」という用語は、本明細書で用いられるように、ヒアルロン酸塩(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、および一価の遷移金属、もしくはそれらの組み合わせ)、ヒアルロン酸エステル(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、および第2ブチル、もしくはそれらの組み合わせ)、あるいはそれらの組み合わせを含む。
【0015】
インプラント用の典型的な材料として、限定されるものではないけれども、金属および合金(例えば、チタニウム、チタニウム合金、ニッケル・チタニウム合金、タンタル、プラチナ・イリジウム合金、金、マグネシウム、ステンレス鋼、およびクロモ・コバルト合金)、セラミック、ならびに生体適合性プラスチックまたは重合体(例えば、ポリウレタンおよび/またはポリ(α−ヒドロキシエステル)、例えばポリ乳酸、ポリグリコリド、およびポリカプロラクトン、およびそれらの組み合わせ)が挙げられる。インプラントの他の非限定的な例として、米国特許第4,503,157号、第4,880,610号、第5,047,031号、第5,053,212号、第5,129,905号、第5,164,187号、第5,178,845号、第5,279,831号、第5,336,264号、第5,496,399号、第5,569,442号、第5,571,493号、第5,580,623号、第5,683,496号、第5,683,667号、第5,697,981号、第5,709,742号、第5,782,971号、第5,820,632号、第5,846,312号、第5,885,540号、第5,900,254号、第5,952,010号、第5,962,028号、第5,964,932号、第5,968,253号、第6,002,065号、第6,005,162号、第6,053,970号、および第6,334,891号、またはそれらの組み合わせのいずれかに開示された材料が挙げられる。なお、これらの米国特許の内容全体を本明細書に援用する。
【0016】
一実施形態では、本発明はヒアルロン酸またはその誘導体によって覆われたインプラントに関するもので、このインプラントは金属、合金、セラミック、またはそれらの組み合わせを含む。
別の実施形態では、本発明はヒアルロン酸またはその誘導体によって覆われたインプラントに関するもので、このインプラントは金属、合金、セラミック、またはそれらの組み合わせである。
別の実施形態では、本発明はヒアルロン酸またはその誘導体によって覆われたインプラントに関するもので、このインプラントは本質的に金属、合金、セラミック、またはそれらの組み合わせからなる。
上記インプラントがセラミックである場合、このセラミックは好ましくはリン酸カルシウム・セラミック、例えばリン酸カルシウム、好ましくはヒドロキシアパタイトもしくはその代わりとしてリン酸三カルシウムである。さらに、インプラントの本体が、少なくとも部分的に硫酸カルシウム、脱ミネラル骨、自己骨、もしくはコラリン物質であってよい。ヒドロキシアパタイトおよびリン酸三カルシウムは、それらが完全に骨に溶け込みはじめるか、あるいは新たな天然の骨組織によっても置換されるという利点を有する。
【0017】
別の実施形態では、本発明はヒアルロン酸またはその誘導体によって覆われたインプラントに関し、このインプラントは実質的に重合体成分(すなわち、プラスチックもしくは重合体)を含まない。別の実施形態では、インプラントに含まれる重合体成分の量は、インプラントの全重量を基準にして重合体およびプラスチックの約25重量%以下である。別の実施形態では、インプラントに含まれる重合体成分の量は、インプラントの全重量を基準にして重合体およびプラスチックの約10重量%以下である。別の実施形態では、インプラントに含まれる重合体成分の量は、インプラントの全重量を基準にして重合体およびプラスチックの約5重量%以下である。
【0018】
プラスチックまたは重合体を実質的に含まない有用なインプラントの非限定的例として、骨空隙充填材、骨折安定化補助材、髄内固定装置、関節増強/代替装置、骨固定板、ネジ、タック、クリップ、ステープル、釘、ピン、ロッド、アンカー、スカフォード、ステント、メッシュ、スポンジ、細胞封入用インプラント、組織工学用インプラント、薬物送達装置、骨成長誘導触媒、モノフィラメント、マルチフィラメント構造、シート、コーティング、膜、気泡材、ネジ増強装置、頭蓋再建装置、心臓弁、およびぺーサー・リードが挙げられる。
ヒアルロン酸またはその誘導体を、任意の適当な供給源から得ることができる。この供給源として、限定されるものではないが、細菌発酵、抽出、および/または動物体液(例えば、関節液)、組織、骨、またはその他からの単離が挙げられる。あるいは、ヒアルロン酸またはその誘導体を生体外(ex vivo)で完全または部分的に化学合成することができる。異なる供給源から得たヒアルロン酸またはその誘導体の特性(例えば、分子量)が異なることもある。ヒアルロン酸またはその誘導体を得るための方法は、例えば米国特許第5,166,331号に記載されており、その開示全体を本明細書で明確に援用する。
【0019】
一実施形態では、ヒアルロン酸の数平均分子量(ヒアルロン酸のポリエチレン・オキシド標準等の適当な標準に対してGPCまたはSECによって測定されたとおり)は、少なくとも約1,000グラム/モルである。別の実施形態では、ヒアルロン酸またはその誘導体の数平均分子量は、少なくとも約5,000g/molである。別の実施形態では、ヒアルロン酸またはその誘導体の数平均分子量は、約10,000グラム/モルないし約5,000,000グラム/モル、例えば約50,000グラム/モルないし約3,000,000グラム/モル、約10,000グラム/モルないし約1,000,000グラム/モル、あるいは約150,000グラム/モルないし約2,000,000グラム/モルである。
別の実施形態では、ヒアルロン酸またはその誘導体の重量平均分子量(例えば、ポリエチレン・オキシド標準等の適当な標準に対してGPCまたはSECによって測定されたとおり)は、少なくとも約1,500グラム/モルである。別の実施形態では、ヒアルロン酸またはその誘導体の重量平均分子量は、少なくとも約8,000グラム/モルである。別の実施形態では、ヒアルロン酸またはその誘導体の重量平均分子量は、少なくとも約15,000グラム/モルないし約25,000,000グラム/モル、例えば約75,000グラム/モルないし約10,000,000グラム/モル、約15,000グラム/モルないし約5,000,000グラム/モル、あるいは約250,000グラム/モルないし約4,000,000グラム/モルである。
【0020】
別の実施形態では、ヒアルロン酸またはその誘導体は、多分散性(すなわち、数平均分子量に対する重量平均分子量の比率)が約1.3ないし約10である。別の実施形態では、ヒアルロン酸またはその誘導体の多分散性は、約1.6ないし約8である。別の実施形態では、ヒアルロン酸またはその誘導体の多分散性は、約1.5ないし約4である。別の実施形態では、ヒアルロン酸またはその誘導体の多分散性は、約2ないし約7である。別の実施形態では、ヒアルロン酸またはその誘導体の多分散性は、約4ないし約9である。別の実施形態では、ヒアルロン酸またはその誘導体の多分散性は、約1.8ないし約2.5である。
別の実施形態では、抗菌コーティングは、細菌、例えばスタヒロコッカス・アウレウス(StaphlococcuS. aureus)またはスタヒロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)の吸着、付着、および/または増殖に対する生体内(in vivo)耐性が、抗菌コーティングが施されていないインプラントによって示されるものよりも、少なくとも5倍良好である。別の実施形態では、上記したような生体内(in vivo)耐性が少なくとも約10倍良好である。別の実施形態では、上記したような生体内(in vivo)耐性が少なくとも約100倍良好である。
【0021】
ヒアルロン酸またはその誘導体のコーティングを形成することが可能な任意の方法を、本発明のコーティング・インプラントの製造に用いることができる。この方法として、限定されるものではないけれども、ディップ・コーティング、ブラシによる塗布、スプレー・コーティング、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。コーティング方法の例は、米国特許第4,500,676号、第6,187,369号、および第6,106,889号、ならびに米国公開特許出願第2002/0068093号および第2003/0096131号に見いだされ、これらに開示されたもの全体を本明細書で援用する。概して、ヒアルロン酸またはその誘導体および有機溶媒を含む組成物をインプラントに塗布し、得られたコーティング・インプラントを乾燥または硬化させる。この抗菌コーティングは、好ましくはインプラントの表面の大部分(すなわち、50%を上回る)、より好ましくはインプラントの表面の実質的に全て、最も好ましくはインプラントの表面の本質的に全てを覆う。
【0022】
いくつかの実施形態では、コーティングを施す前に、化学的および/または物理的処理によってインプラント材料の表面を修飾することができる。例えば、インプラントの表面を研磨してその表面の粗さを少なくすることで、インプラント表面の物理的改質がおこなえ、あるいは研削することで表面粗さを増加させること(例えば、付着を改善すること)ができる。同様に、インプラントの表面を、例えば強酸もしくは強塩基処理、実施例1の記載どおりの電解研磨処理、実施例1の記載どおりの金属による陽極酸化処理、あるいはそれらの組み合わせによる処理によって、その表面を化学的に改質することができる。
抗菌コーティングの厚さは、約1ミクロンないし約500ミクロンである。別の実施形態では、抗菌コーティングの厚さは、約3ミクロンないし約250ミクロンである。抗菌コーティングの厚さは、約5ミクロンないし最大で約100ミクロンである。
【0023】
別の実施形態では、インプラントは、さらに、このインプラントの表面に少なくとも第1のコーティングが設けられている。したがって、一実施形態では、本発明は、(a)インプラントの表面に存在する第1のコーティングと、(b)上記第1のコーティング上に存在し、ヒアルロン酸またはその誘導体を含む第2のコーティングとを有するマルチコーティング・インプラントに関する。有用な第1のコーティングの非限定的例として、金属(例えば、チタニウム、金、もしくはプラチナ)、セラミック材料(例えば、ヒドロキシアパタイトもしくはリン酸三カルシウム)、または重合体(例えば、アクリル重合体系コーティング)、あるいはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0024】
第1のコーティングを、インプラント材料と同一または異なるものとすることができる。一実施形態では、第1のコーティングの組成はインプラントと同一である。別の実施形態では、第1のコーティングの組成は、インプラントの組成と異なる。
インプラントが第1のコーティングによって被覆される場合、インプラントの組成を変えることができる。有用なインプラント材料の非限定的例として、上記したように金属、合金、もしくはセラミック、および/またはプラスチックもしくは重合体(例えば、ポリウレタンおよび/またはポリ(α−ヒドロキシエステル)(例として、ポリラクチド、ポリグリコリド、およびポリカプロラクトン)、あるいはそれらの組み合わせが挙げられる。
セラミックもしくは重合体によってインプラントを被覆する方法として、ヒアルロン酸またはその誘導体でインプラントを被覆するための上記したものが挙げられる。第1のコーティングは、セラミックまたは重合体を含み、その厚さは約1ミクロンから約500ミクロン、別の実施形態では約3ミクロンから約250ミクロン、さらに別の実施形態では約5ミクロンから最大で約100ミクロンまでの範囲に及ぶ。
【0025】
一実施形態では、上記第1のコーティングはアクリル重合体を含む。
別の実施形態では、上記第1のコーティングは本質的にアクリル重合体からなる。
別の実施形態では、上記第1のコーティングはアクリル重合体からなる。
インプラント材料を金属または合金で被覆する方法は、米国特許第6,428,579号に開示されており、その開示内容の全体を本明細書に援用する。金属コーティングの非限定的例として、チタン、金、銀、およびプラチナが挙げられる。使用した場合、金属製の第1のコーティングは、好ましくは金である。
この金属コーティングの厚さは、使用した場合、一般に約10オングストロームないし約5,000オングストロームである。別の実施形態では、金属コーティングの厚さは、使用した場合、約10オングストロームないし約1,000オングストロームである。別の実施形態では、上記金属コーティングの厚さは、使用した場合、約10オングストロームないし約250オングストロームである。
使用の際に、インプラントの表面上の異なる点で第1のコーティングの厚さが変動し得ることがわかるだろう。好ましくは、上記第1のコーティングの厚さは、インプラントの表面全体にわたって実質的に均一である。
【0026】
第1のコーティングは、使用の際に、好ましくは上記インプラント表面の少なくとも大部分(すなわち、50%を超える)、より好ましくは上記インプラント表面のほぼ全て、最も好ましくは上記インプラント表面の基本的に全てを被覆する。
第1のコーティングを使用する場合、抗菌コーティングの厚さは上記した通りであり、この第1のコーティングを上記した方法によって塗布することができる。
第1のコーティングを使用する場合、以下に説明するように、抗菌コーティングは治療剤をさらに含むことができる。
【0027】
任意に、一種類以上の治療剤を抗菌コーティングに含有することができる。上記治療剤として、限定されるものではないけれども、抗生物質、化学療法剤、骨形成タンパク質等の骨成長因子(特に骨成長誘導因子)、内皮成長因子、インシュリン成長因子、またはその他、あるいはそれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、治療剤が抗菌組成物と複合体を形成する。別の実施形態では、上記治療剤を抗菌コーティングの表面に付着させることができる。別の実施形態では、上記治療剤を徐放性製剤として抗菌コーティング組成物に含有する。典型的な治療剤として、限定されるものでないけれども、限定されるものではないけれども、防腐剤(例えば、国際特許出願番号WO02/082907に列挙された防腐剤)、広域性殺生物剤、グラム陽性抗菌剤、グアニジウム合成物、ビグアナイド、ビピリジン、フェノキシド防腐剤、アルキル酸化物、アリール酸化物、チオール、ハロゲン化物、脂肪族アミン、芳香族アミン、第四級アンモニウム化合物(例えば、ペンシルバニアのLLC、バイオセイフ(BIOSAFE)から市販されている四級アンモニウム殺生物剤)、化学療法剤、ならびに成長因子(例えば、骨成長誘導因子、形態形成タンパク質、内皮成長因子、およびインシュリン成長因子)が挙げられる。
【0028】
有用な抗菌剤の非限定例として、抗アメーバ剤、例えばアルスチノール、ビアラミコール、カルバルソン、セファエリン、クロルベタミド、クロロキン、クロルフェノキサミド、クロルテトラサイクリン、デヒドロエメチン、ジブロモ・プロパミジン、ジロキサニド、ジフェタルゾン、エメチン、フマギリン、グラウカルビン、グリコビアルゾール、8−ヒドロキシ−7−ヨード−5−キノリンスルホン酸、ヨードクロルヒドロキシキン、ヨードキノール、パロモマイシン、ファンクオン、ポリベンズアルゾール、プロパミジン、キンファミド、セニダゾール、スルファルシド、テクロザン、テトラサイクリン、チオカルバミジン、チオカルバルゾン、チニダゾール;抗生物質、例えばアミノグリコシド(例えば、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、バンベルマイシン、ブチロシン、ジベカシン、ジヒドロストレプトマイシン、ホルチミシン、ゲンタマイシン、イセパマイシン、カニアマイシン、ミクロノマイシン、ネオマイシン、ネオマイシン・ウンデシレン酸塩、ネチルマイシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、トロスペクトマイシン)、アンフェニコール(アジダムフェニコール、クロラムフェニコール、フロルフェニコール、チアフェニコール)、アンサマイシン(リファミド、リファムピン、リファミシン、リファペンチン、リファキシミン)、β−ラクタム(カルバセフェム、ロラカルベフ、カルバフェネム(ビオペネム、イミペネム、メロペネム、パニペネム)、セファロスポリン(セファクロール、セファドロキシル、セファマンドール、セファトリジン、セファゼドン、セファゾリン、セフカペンポボキシル、セフクリジン、セフジニル、セフジトレン、セフェピン、セフェタメト、セフィキシム、セフィンノキン、セフォジジム、セフォニシド、セフォペラゾン、セフォラニド、セフォタキム、セフォチアム、セフォゾプラン、セフピミゾール、セフピラミド、セフピローム、セフポドキムプロキセチル、セフプロジル、セフロキサジン、セフスロジン、セフタジジム、セフテラム、セフテゾール、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアクソン、セフロキム、セフゾナム、セファセトリル・ナトリウム、セファレキシン、セファログリシン、セファロリジン、セファロスポリン、セファロチン、セファピリン・ナトリウム、セフラジン、ピブセファレキシン)、セファミシン(セフブペラゾン、セフメタゾール、セフミノクス、セフォテタン、セフォキシチン)、モノバクタム(アズトレオナム、カルモナム、チゲモナム)、オキサセフェン(フロモクセフ、モクサラクタム)、ペニシリン(アムジノシリン、アムジノシリンピボキシル、アモキシリン、アンピシリン、アパルシリン、アスポキシリン、アジドシリン、アズロシリン、バカンピシリン、ベンジルペニシリン酸、ベンジルペニシリン・ナトリウム、カルベニシリン、カリンダシリン、クロメトシリン、クロキサシリン、シクラシリン、ジクロキサシリン、エピシリン、フェンベニシリン、フロキサシリン、ヘタシリン、レナンピシリン、メタピシリン、メチシリン・ナトリウム、メズロシリン、ナフシリン・ナトリウム、オキサシリン、ペナメシリン、ペネタメート・ヨウ化水素、ペニシリンG−ベネタミン、ペニシリン−Gベンザチン、ペニシリンG−ベンズヒドリルアミン、ペニシリンG−カルシウム、ペニシリンG−ヒドラバミン、ペニシリンG−カリウム、ペニシリンG−プロカイン、ペニシリンN、ペニシリンO、ペニシリンV、ペニシリンV−ベンザチン、ペニシリンV−ヒドラバミン、ペニメピシリン、フェネチシリン・カリウム、ピペラシリン、ピバンピシリン、プロピシリン、キナシリン、スルベニシリン、サルタミシリン、ファランピシリン、テモシリン、チカルシリン)、リチペネム)、リンコサミド(クリンダマイシン、リンコマイシン)、マクロライド(アジスロマイシン、カルボマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、エリスロマイシンアシストレート、エリスロマイシンエストレート、エリスロマイシン・グルコヘプトン酸、ラクトビオン酸エリスロマイシン、プロピオン酸エリスロマイシン、ステアリン酸エリスロマイシン、ジョサマイシン、ロイコマイシン、ミデカマイシン、ミオカマイシン、オレアンドマイシン、プリマイシン、ロキタマイシン、ロサラマイシン、ロキシスロマイシン、スピラマイシン、トロレアンドマイシン)、ポリペプチド(アンホマイシン、バシトラシン、カプレオマイシン、コリスチン、エンデュラシジン、エンビオマイシン、フサファンジン、グラミシジン、グラミシジン、ミカマイシン、ポリミキシン、プリスチナマイシン、リストセチン、テイコプラニン、ポリミキシン、チオストレプトン、ツベラクチノマイシン、チロシジン、タイロスライシン、バンコマイシン、バイオマイシン、バージニアマイシン、バシトラシン亜鉛)、テトラサイクリン(アピシリン、クロルテトラサイクリン、クロモサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、グアメサイクリン、リメサイクリン、メクロサイクロン、メタサイクリン(ミノサイクリン)、オキシテトラサイクリン(ペニメピシリン)、ピパシリン、ロリテトラサイクリン、サンシクリン、テトラシクリン)、シクロセリン、ムピロシン、ツベリン;合成抗菌剤、例えば2,4−ジアミノピリミジン(ブロジモプリン、テクストロクソプリム、トリメトプリム)、ニトロフラン(フラルタドン、フラゾリウム・クロリド、ニフラデン、ニフラテル、ニフルホリン、ニフルピリノール、ニフルプラジン、ニフルトイノル、ニトロフィラントイン)、キノロンおよび類似体(シノキサシン、シプロフロキサシン、クリナフロキサシン、ジフロキサシン、エノキサシン、フレロキサシン、フルメキン、グレパフロキサシン、ロメフロキサシン、ミロキサシン、ナジフロキサシン、ナジリキシン酸、ノルフラキサシン、オフロキサシン、オキソリン酸、パズフロキサシン、ペフロキサシン、ピペミド酸、ピロミド酸、ロソキサシン、ルフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロキサシン、トスフロキサシン、トロバフロキサシン)、スルホンアミド(アセチルスルファメトキシピリダジン 、ベンジル・スルファミド、クロラミン−B、クロラミン−T、ジクロラミンT、N−ホルミルスルフィソミジン、N−β−D−グルコシルスルファニルアミド、マフェニド、4’−(メチルスルファモイル)スルファニルアニリド、ノピリルスルファミド、フタリルスルファセタミド、フタリルスルファチアゾール、サラゾスルファジミジン、スクシニルスルファチアゾール、スルファベンザミド、スルファセタミド、スルファクロルピリダジン、スルファクリソイジン、スルファシチン、スルファジアジン、スルファジクラミド、スルファジメトキシン、スルファドキシン、スルファエチドール、スルファグアニジン、スルファグアノール、スルファレン、スルファロキシン、スルファメラジン、スルファメーター、スルファメタジン、スルファメチゾール、スルファメトミジン、スルファメトキサゾール、スルファメトキシピリダジン、スルファメトロール、スルファミドクリソイジン、スルファモキソール、スルファニルアミド、4−スルファニルアミドサルチル酸、N−スルファニリルスルファニルアミド、スルファニリル尿素、N−スルファニリル−3,4−キシルアミド、スルファニトラン、スルファペリン、スルファフェナゾール、スルファプロキシリン、スルファピラジン、スルファピリジン、スルファソミゾール、スルファシマジン、スルファチアゾール、スルファチオ尿素、スルファトールアミド、スルフィソミジン、スルフィソクサゾール)、スルホン(アセダプソン、アセジアスルホン、アセトスルホン・ナトリウム、ダプソン、ジアチモスルホン、グルコスルホンナトリウム、ソラスルホン、サクシスルホン、スルファニル酸、p−スルファニルベンジルアミン、スルホキソン・ナトリウム、チアゾールスルホン)、クロホクトール、ヘキセジン、メセナミン、メセナミン・アンヒドロメチレンシトレート、馬尿酸メテナミン、マンデル酸メテナミン、メセナミンスルホサリチル酸塩、ニトロキソリン、タウロリジン、キシボモール;抗らい菌剤、例えばアセダプソン、アセトスルホン・名とアリウム、クロファジミン、ダプソン、ジアチルモスルホン、グルコスルホン・ナトリウム、ヒドノカルピン酸、ソラスルホン、スクシスルホン・名とアリウム、抗真菌剤、例えばアリルアミン・ブテナフィン、ナフチフィン、テルビナフィン、イミダゾール(例えば、ビホナゾール、ブトコナゾール、クロロダントイン、クロルミダゾール、クロコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、エニルコナゾール、フェンチコナゾール、フルトリマゾール、イソコナゾール、ケトコナゾール、ラノコナゾール、ミコナゾール、オモコナゾール、硝酸オキシコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、チオコナゾール)、チオカルバメート(トルシレート、トリンデート、トルナフテート)、トリアゾール(フルオナゾール、イトラコナゾール、サペルコナゾール、テルコナゾール)、アクリゾルシン、アモロルフィン、ビフェナミン、ボロモサリシルクロラニリド、ブクロサミド、プロピオン酸カルシウム、クロルフェネシン、シクロピロックス、クロキシキン、コパラフィネート、ジアムタゾールジヒドロクロライド、エキサラミド、フルシトシン、ハレタゾール、ヘキセチジン、ロフルカルバン、ニフラテル、ヨウ化カリウム、プロピオン酸、ピリチオン、サリチルアニリド、プロピオン酸ナトリウム、スルベンチン、テノニトロゾール、トリアセチン、ウジョチオン、ウンデシレン酸、プロピオン酸亜鉛; ならびにその他が挙げられる。
【0029】
本発明で有用な他の抗菌剤として、β−ラクタマーゼ阻害剤(例えば、クラブラン酸、スルバクタム、タゾバクタム)、クロラムフェニコール(例えば、アジダムフェニコール、クロラムフェニコール、チアフェニコール);フシジン酸;合成剤、例えばトリメトプリム、必要に応じてスルホンアミドとの組み合わせ)、およびニトロイミダゾール(例えば、メトロニダゾール、チニダゾール、ニモラゾール);抗ミコバクテリア剤(例えば、カプレオマイシン、クロファジミン、ダプソン、エタンブトール、イソニアジド、ピラチナミド、リファブチン、リファンピシン、ストレプトマイシン、チオアミド); 抗ウイルス剤(例えば、アクリロビル、アマンタジン、アジドチミジン、ガンシクロビル、イドクスウリジン、トリバビリン、トリフリジン、ビダラビン);インターフェロン(例えば、インターフェロンα、インターフェロンβ)防腐剤(例えば、クロルヘキシジン、ゲンチアナ紫、オクテニジン、ポビドンヨード、第四級アンモニウム化合物、スルファジアジン銀、トリクロサン)が挙げられる。
【0030】
一実施形態では、上記抗菌剤は抗生物質、好ましくはゲンタマイシンである。
別の実施形態では、上記抗菌剤は防腐剤、好ましくはクロルヘキシジンである。
一実施形態では、本発明は、(a)ヒアルロン酸またはその誘導体と(b)抗菌剤とを含むコーティングによって被覆されたインプラントに関する。
一実施形態では、本発明は、(a)ヒアルロン酸またはその誘導体と(b)防腐剤とを含むコーティングによって被覆されたインプラントに関する。
【0031】
いくつかの実施形態では、抗菌コーティングは一種類以上の重合体添加物を含むことができる。理論によって限定されることなく、出願人は重合体(例えば、弾性膜形成重合体)の付加によって抗菌コーティングの構造的特性を改善し得ると考える(例えば、改善された可撓性、付着、および/または亀裂抵抗性)。重合体が生体適合性を有し、ヒアルロン酸成分の所望の特性に対して有意に干渉しない限り、いかなる重合体も使用することができる。典型的には、上記重合体は、使用した場合、生体吸着性または浸食性である。より好ましくは、上記重合体は、使用した場合、生体吸着性である。有用な重合体の非限定的例として、ポリウレタン(米国特許第4,500,676号を参照。この特許の開示内容全体を本明細書に援用する)、ポリラクチド;ポリグリコリド;L−ラクチド;L−乳酸、D−ラクチド、D−乳酸、D,L−ラクチドからなる群から選択される単量体のホモ重合体または共重合体;グリコリド;α−ヒドロキシ酪酸;α−ヒドロキシ吉草酸;α−ヒドロキシ酢酸;α−ヒドロキシカプロン酸;α−ヒドロキシヘプタン酸;α−ヒドロキシデカン酸;α−ヒドロキシミリスチン酸;α−ヒドロキシオクタン酸;α−ヒドロキシステアリン酸;ヒドロキシ酪酸塩;ヒドロキシ吉草酸塩;β−プロピオラクチド;β−プロピオ酪酸;γ−カプロラクトン;β−カプロラクトン;γ−ブチロラクトン;ピバロカクトン;テトラメチルグリコリド;テトラメチルグリコール酸;ジメチルグリコール酸;トリメチレンカーボネート;ジオキサノン;液晶(共)重合体を形成するそれらの単量体;セルロースを形成するそれらの単量体;酢酸セルロースを形成するそれらの単量体;カルボキシメチルセルロースを形成する単量体;ヒドロキシプロピルメチル・セルロースを形成するそれらの単量体;ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンアジパート)、ポリ(ブチレンオキシド)、およびそれらの混合物からなる群から選択されるマクロジオールを含むポリウレタン前駆体、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、水素化メチレンジフェニレンジイソシアネート、およびそれらの混合物からなる群から選択されるイソシアネート官能基含有化合物、ならびにエチレンジアミン、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−アミノ−1−ブタノール、チオジエチレンジオール、2−メルカプトエチルエーテル、3−ヘキシン−2,5−ジオール、クエン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される増量剤;コラーゲン、アルギン酸塩(例えば、アルギン酸ナトリウムまたはカルシウム)、キチンおよびキトサン等のポリサッカリド、ポリ(プロピレンフマレート);ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0032】
一実施形態では、抗菌性コーティングは少なくとも1種類以上の弾性膜形成重合体添加物をさらに含む。
別の実施形態では、抗菌性コーティングはヒアルロン酸を含む。
別の実施形態では、抗菌性コーティングはヒアルロン酸ナトリウムを含む。
別の実施形態では、抗菌性コーティングは本質的にヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、またはそれらの混合物からなる。
別の実施形態では、抗菌コーティングは本質的にヒアルロン酸またはその誘導体からなる。
以下の例は、本発明の理解を助けるために記述されるものであって、もちろん本明細書で記述および主張される本発明を具体的に限定するものとして解釈されるべきではない。当業者の範囲内にある今や知られた均等物または後で開発される均等物の置換を含む本発明のそのような変形例あるいは実験的設計の軽微な変更は、本明細書で具体化されている本発明の範囲内であると考えられる。
【0033】
(実施例)
チタニウム基材の調製: 直径12.7mm×厚さ1.0mmの非合金チタニウム円板を電気化学的に陽極化し、アクリルポリマー・ベースコーティング(およびヒアルロン酸トップコーティングでディップ・コーティングした。ヒアルロン酸を含有する試料のすべてをエチレンオキシドで滅菌した。
コーティングがクロルヘキシジンを含む場合、1.5%クロルヘキシジンジアセタート防腐剤の水溶液にヒアルロン酸含有基材をディップ・コーティングした。
【実施例1】
【0034】
実施例1は、ヒアルロン酸で被覆してある種々のチタニウム表面(基材)の微生物試験結果を説明する。
検討に用いた基材: 本検討に用いた種々の基材を表1に列挙する。
【0035】
【表1】

【0036】
TSS試料(シンセス(Synthes)(米国))を米国材料試験協会(ASTM)F67インプラント材料規格に合致する4等級のインプラント品質チタニウムから作った。すなわち、棒状のものを切断し、バリ取り、セラミックスによるタンブリング、クリーニング、および金陽極化をおこなった(インジュリー(Injury)26(S1)21−27(1995)の記載を参照)。つぎに、上記試料を上記したように、被覆しなかった試料TSSを除いて、種々の表面処理で被覆した。
TS試料(シンセス(Synthes)(米国))もまた、米国材料試験協会(ASTM)F67インプラント材料規格に合致する4等級のインプラント品質チタニウムから作った。すなわち、シート状のものをパンチングまたは棒状のものを切断し、バリ取り、セラミックスによるタンブリング、さらにクリーニングをおこなった。TS試料を金陽極化(酸化)することで、酸化チタニウムからなる表層を設けた。金陽極化に先立って、以下の方法の1つを用いてTC、TE、およびTM面を研磨した。試料を液体(電解液)に浸して電流を印加することで、電解研磨面を作った。電流を印加することなく液状化学品に試料を浸すことによって、化学研磨を実施した。最後に、試料表面にダイアモンド・ペーストを用いることで、機械的研磨面を作った。
TIG面に関しては、窒素インプランテーションを一面のみに適用することで、陽極化膜の光学特性を変化させた。
TLF面の金陽極化をおこなわなかった。
【0037】
各試料の表面性状を、レーザー・プロファイロメトリ(UBMメステクニック社(Messtechnik GmbH)、ドイツ)によって定量測定した。また、加速電圧約4kVおよび放出電流約40μAで二次電子(SE)検出モードを用いた日立S−4700走査電子顕微鏡(SEM)によって、上記表面の撮像をおこなった。各表面のRおよびRrms粗さパラメーター(シッティング(Sitting)他、材料科学ジャーナル:医療用材料(J.Mater.Sci.Mater.Med.)10:35−36(1999)を測定して以下の表2に示す。粗さの違いを試料間で観察したところ、TS、THY、TIG、TLF、およびTASTで比較可能な粗さが示され、TSSおよびTCがより滑らかであり、さらにTEおよびTMが最も滑らかであった。表面粗さの検討結果を表2に示す。
【0038】
【表2】

は相加平均を示し、Rrmsは自乗平均を示す。
【0039】
スタヒロコッカス・アウレウス(S. aureus)8325−4を、振とう浴中、約37°で、脳心臓浸出物ブロス(BHI)で増殖させてD600の値を約1にし、表1に記載した試験表面の1つを含む4穴プレートに、あらかじめ温めたBHIを1mlイノキュレートし、OD600の初期値を約0.05にした。各試験試料を、振とうせずに37℃で1時間インキュベートした。TS、TSS、THY、TIG、TLF、およびTAST面に付着したスタヒロコッカス・アウレウス(S. aureus)をSEMで視覚化するために、付着した菌をグルタルアルデヒドで固定し、約1%OsOによる後染色、臨界点乾燥、およびAu/Pdによる被覆をおこない、さらに加速電圧を約5kVとし、また放出電流を約40μAとして後方散乱電子(BSE)検出器を用いたSEMによって視覚化した(リチャーズ(Richards)他、顕微鏡検査ジャーナル(J.Microsc.)177:43−52(1995)を参照)。付着しているスタヒロコッカス・アウレウス(S. aureus) の密度を定量するために、細菌を、蛍光酸化還元色素である5−シアノ、2−ジトリルテトラゾリウムクロリド(CTC)(アン(An)他、微生物学方法ジャーナル(J.Microbiol.Methods)24:29(1995))で約1時間にわたり染色し、アキシオカム(Axiocam)カメラを装着したツアイス(Zeiss)のアキシオプラン(Axioplan)2落射蛍光顕微鏡で視覚化した。各像における表面に付着した生菌の密度を、KS400ソフトウエアを用いて計数し、ターキー検定による一方向ANOVAを用いて統計学的に分析した。
【0040】
コーティング表面のSEM像は、THY面(図1)(すなわち、ヒアルロン酸ナトリウム含有面)を除いて、調製した表面の全てにスタヒロコッカス・アウレウス(S. aureus)が付着したことを示した(図1)。(表面性状のSEM像もまた、粗さパラメーターの結果を追認した(細菌の後ろに表面が見られる図1を参照せよ))。蛍光顕微鏡は、SEMによる撮像を追認にした。蛍光顕微鏡像(図3)を用いて測定したように、TC表面に付着したスタヒロコッカス・アウレウス(S. aureus)は、TS(対照)または他の研磨チタニウム表面(TEおよびTM)よりも有意に多かった。THY面でスタヒロコッカス・アウレウス(S. aureus)を計数したところ、他のコーティング表面に比べて有意に少なかった(図2a)。付着量は、TSSおよびTAST表面で最も多かった。TC表面に付着したスタヒロコッカス・アウレウス(S. aureus)は、蛍光顕微鏡像を用いて測定されるように、TS(対照)または他の研磨チタニウム表面(TEおよびTM)よりも有意に多かった(図3)。表面粗さが異なるにもかかわらず(表2)、TS、TE、およびTM上の細菌の密度は、類似している(図2b)。THYを除いて、異なるコーティング試料に対して付着したスタヒロコッカス・アウレウス(S. aureus)で有意な違いは観察されなかった。この検討(図1)で用いたTHY面上で、対照面であるTSおよびTSS(図1)と比較してスタヒロコッカス・アウレウス(S. aureus)の密度が最小であったことから、金属および重合体インプラントに対する細菌の付着を阻害する上で、THY被覆が有用であることが示唆される。
【0041】
この生体外(in vitro)での検討の結果は、単独で表面を研磨または被覆することが、該表面に対するスタヒロコッカス・アウレウス(S. aureus)の付着を最小化することに、有意な効果を示さなかったことを示している。この検討によって、促進するように設計された細菌の付着と同様に、TAST表面が細菌の付着を促進し得ることが確証された。その一方、ヒアルロン酸ナトリウムによってチタニウム(TSS)を被覆することで、その表面に付着しているスタヒロコッカス・アウレウス(S. aureus)の密度が有意に減少した。
【実施例2】
【0042】
実施例2は、重合体、ヒアルロン酸、および抗菌剤(例えば、クロルヘキシジン)を含有するコーティングが金陽極化チタニウム基材での微生物増殖を抑制するのに有用であることを示す。
ヒアルロン酸、クロロヘキシジン、および/または重合体の種々の組み合わせによって上記のように、金陽極化チタニウム(シンセス(Synthes)(米国))をディップ・コーティングした。種々の被覆を表3に示す。
【0043】
【表3】

【0044】
金属基材の表面特性
実施例1に記載されているようにして、コーティング基材に対して表面粗さの測定を実施した。その結果を表4に示す。
【0045】
【表4】

超純チタニウム
**Raは測定プロファイルの全ての点の絶対値の相加平均(シッティング(Sitting)他、材料科学ジャーナル:医療用材料(J.Mater.Sci.Mater.Med.)10:35−36(1999)を参照せよ)。
【0046】
SEMのための固定。特に明記しない限り、全ての化学品をフルカ・ケミー(Fluka Chemie AG)(スイス、ブクス)から購入した。全ての手順を22〜25℃で実施し、ピペラジン−N’N’−ビス−2−エタンスルホン酸(PIPES)緩衝液を、特に明記しない限り、濃度0.1モルおよびpH7.4で使用した。最初に細胞または細菌を、2.5%グルタルアルデヒド含有PIPESで5分間の固定をおこなう前に、PIPES緩衝液で2分間濯いだ。細菌/細胞に対して、PIPES緩衝液中での2分間の濯ぎを3回おこない、1%四酸化オスミウム(シメック・トレード(Simec Trade AG)、スイス、ツォフィンゲン)含有PIPES緩衝液(pH6.8)で60分間の後固定した。つぎに、一連のエタノール(50%、70%、96%、および100%)に通しての脱水処理(各洗浄を5分間)先立って、細菌/細胞を2倍希釈水で3回濯いだ(各洗浄を2分間)。つぎに、エタノールを、1:3、1:1、および3:1の1,2−トリクロロフルオロエタン:エタノールを用いて置き換え、続いて100%(v/v)1,2−トリクロロトリフルオロエタンで置き換えた。この後に、試料をポラロン(POLARON)3000臨界点乾燥機(アガー・サイエンティフィック(Agar Scientific)、英国、スタンステッド)内で臨界点乾燥し、バルテック・メド(Baltec Med)020ユニット(バルテック(Baltec)、リヒテンシュタイン、ブクス)を用いて10nmの金/パラジウム(80/20)で被覆した。HC−BSE検出モードで作動させた日立S−4700FESEMを用いて、試料の検査をおこなった。表面上のランダムに選択した座標から、10個の像を取った。
【0047】
線維芽細胞培養。インフィニティ(商標)テロメラーゼ不死化ヒト初代線維芽細胞(hTERT−BJ1)保存培養を液体窒素から回収し、10%胎仔牛血清(FCS)、メジウム199、200mMのL−グルタミン、および100mMのピルビン酸ナトリウム(抗生物質無し)とともにダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM)中、25cm2プラスチック・フラスコ1本あたり300,000細胞で播種した。2〜3日後、0.25%トリプシンおよび0.02%エチレンジアミン・テトラ酢酸(EDTA)、ジナトリウム塩(カルシウムおよびマグネシウムを含まない)を含むタイロード緩衝塩溶液(TBSS)で、hTERT細胞を剥離させた。回収された細胞を濯ぎ、SEM観察のための固定に先立って、24時間毎に培地を変えながら、48時間および96時間にわたって異なる表面上で、10%FCS(上記の通り)を含むDNEM中、1つのウエルあたり10,000細胞を播種して培養した。
上記した検討の結果を以下で論ずる。
【0048】
スタヒロコッカス・エピデルミディス(S. epidermidis)付着/増殖: スタヒロコッカス・エピデルミディス(S. epidermidis)と接触した基材のSEM分析は、クロルヘキシジンなしに表面全体にわたって細菌を示したが、クロルヘキシジンを有する表面ではわずかしか見られなかった(図4)。泡様の構造がCACに見られた。プレート計数によって、クロルヘキシジン無しの表面から回収されたスタヒロコッカス・エピデルミディス(S. epidermidis)は生存可能であったが、クロルヘキシジンのある表面から回収されたものは初期の時点で生存不可能であった。しかし、96時間で生存可能性が高まった。このような結果は、スタヒロコッカス・エピデルミディス(S. epidermidis)がクロルヘキシジンに対する耐性を与えること、あるいはクロルヘキシジン濃度が96時間でかなり減少したことから培地および表面に存在するいっさいの細菌が増殖することが可能であることを示唆している。
【0049】
hTERT線維芽細胞付着
hTERT線維芽細胞付着の検討を群1および群2の表面(表2参照)に対しておこなった。培養48時間および96時間後、十分に広がった細胞を、クロルヘキシジンを含まない群1上で観察した(図5)。一方、クロルヘキシジンを含む表面上では無傷の細胞は観察されなかった(図6)。群2の表面に対して、わずかに広がった細胞がCHPおよびCHR表面で観察された(図7)。付着細胞は、CH表面(ヒアルロン酸)(図7)またはクロルヘキシジンを含む表面(図7)で観察されなかった。
hTERT線維芽細胞付着の検討で調べた単一細胞のいくつかを撮像し、画像分析を用いて広がりの量を分析した。CHCに関する結果(図8)は、96時間後にその表面上に広がった細胞をほとんど示さなかった。
【0050】
別の実験を実施して、hTERT細胞の生存性/付着性に対する異なる濃度のクロルヘキシジンの細胞毒性を測定した。hTERT細胞を、上記したように、4穴プレート中でサーマノクス(Thermanox)円板上で培養した。10%FCSを含むDMEMに0.1%、1%、または10%のクロルヘキシジンをイノキュレートした。また、2枚の円板が10%FCSを含むDMEMだけを含有し、一方の円板をクロルヘキシジンと同一のプレートに入れ、他方を別の4穴プレートに入れた。培地を除去する前に、プレートを37℃で24時間インキュベートし、さらに1μl/mlカルセインAM(生細胞と反応)および1μl/mlエチジウム・ホモ二量体(死細胞と反応)を含む1mlDMEM(FCS無し)を添加した。プレートを暗所中、さらに37℃で30分間インキュベートし、続いてツアイス(Zeiss)落射蛍光顕微鏡で視覚化した。十分に広がった生細胞をクロルヘキシジンにさらされていない試料と同一の試料で観察し、一方死細胞をクロルヘキシジンにさらされた試料と同一のプレートで培養した表面上で観察した。0.1%または1%のクロロヘキサジンにさらされた試料で観察されなかった。上記結果は、低濃度のクロロヘキシジンもまた線維芽細胞の致死に用いることができる。
【0051】
本発明は、本発明のいくつかの態様の例証として意図された実施例に開示された特定の実施形態によって範囲が限定されることはなく、また機能的均等物である任意の実施形態がこの発明の範囲内である。実際、本明細書に示し、かつ記載されたものに加えて種々の変更は、当業者に公知であり、添付された請求の範囲の範囲内に落ちることを目的としている。
多数の参考文献が引用され、それらの参考文献の開示内容全体が本明細書中に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1Aないし図1Fは、標準のチタニウム表面、1時間培養後のコーティング表面(TS、TSS、THY、TIG、TLF、TAST)に付着したスタヒロコッカス・アウレウス(S. aureus)の電界放射型走査電子顕微鏡(FESEM)像を示し、他の表面に比べてかなり少ない細菌がTHY面に見られることを示す。
【図2】図2Aおよび図2Bは、異なる表面に付着したスタヒロコッカス・アウレウス(S. aureus) の数密度を示す。(a)標準チタニウム(TSおよびTSS)および標準チタニウム・コーティング、(b)標準チタニウム(TS)および研磨面。
【図3】図3Aおよび図3Bは、標準チタニウム(TS)面および化学的に研磨したチタニウム(TC)に付着したスタヒロコッカス・アウレウス(S. aureus) の傾向顕微鏡像を示す。白い点は生菌を表しており、元の像では赤色に見えた。
【図4】図4は、48時間培養のCA、CAC、CP、およびCPCの表面上のスタヒロコッカス・エピデルミディス(S.epidermidis)のSEM像を示す。
【図5】図5は、CAおよびCPの表面上での48時間培養後(左側像)および96時間培養後(右側像)のhTERT線維芽細胞のSEM像を示す。
【図6】図6は、CACおよびCPCの表面上での48時間培養後(左側像)および96時間培養後(右側像)のhTERT線維芽細胞のSEM像を示す。
【図7】図7は、CC、CH、CHP、およびCHRの表面上での48時間培養後(左側像)および96時間培養後(右側像)のhTERT線維芽細胞のSEM像を示す。
【図8】図8は、CHCの表面上での48時間培養後(左側像)および96時間培養後(右側像)のhTERT線維芽細胞のSEM像を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングされたインプラントであって、金属、合金、またはセラミックを前記インプラントが含み、また前記コーティングが含む、コーティング・インプラント。
【請求項2】
前記コーティングが無いインプラントと比較して、少なくとも約5倍良好に、細菌の吸着、付着、または増殖の少なくとも1つを減少させる、請求項1に記載のコーティング・インプラント。
【請求項3】
前記細菌が、スタヒロコッカス・アウレウス、スタヒロコッカス・エピデルミディス、またはそれらの混合物である、請求項2に記載のコーティング・インプラント。
【請求項4】
前記細菌がスタヒロコッカス・アウレウスである、請求項3に記載のコーティング・インプラント。
【請求項5】
空隙充填材、骨折安定化補助材、髄内固定装置、関節増強/代替装置、骨固定板、ネジ、タック、クリップ、ステープル、釘、ピン、ロッド、アンカー、スカフォード、ステム、メッシュ、スポンジ、組織工学用インプラント、薬物送達装置、骨成長誘導触媒、モノフィラメント、マルチフィラメント構造、シート、コーティング、膜、気泡材、ネジ増強装置、頭蓋再建装置、心臓弁、およびぺーサー・リードの形状である、請求項1に記載のコーティング・インプラント。
【請求項6】
前記コーティングの厚さが約1ミクロンないし約500ミクロンである、請求項1に記載のコーティング・インプラント。
【請求項7】
前記コーティングの厚さが約3ミクロンないし約250ミクロンである、請求項6に記載のコーティング・インプラント。
【請求項8】
前記コーティングが、スタヒロコッカス・アウレウスの吸着、付着、または増殖の少なくとも1つを、少なくとも約10倍減少させる、請求項2に記載のコーティング・インプラント。
【請求項9】
前記コーティングが、スタヒロコッカス・アウレウスの吸着、付着、または増殖の少なくとも1つを、少なくとも約100倍減少させる、請求項2に記載のコーティング・インプラント。
【請求項10】
前記抗菌コーティングがヒアルロン酸を含む、請求項1に記載のコーティング・インプラント。
【請求項11】
前記抗菌コーティングがヒアルロン酸ナトリウムを含む、請求項1に記載のコーティング・インプラント。
【請求項12】
前記抗菌コーティングが、本質的にヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせからなる、請求項1に記載のコーティング・インプラント。
【請求項13】
前記抗菌コーティングが治療剤をさらに含む、請求項1のコーティング・インプラント。
【請求項14】
前記治療剤が抗生物質を含む、請求項13のコーティング・インプラント。
【請求項15】
前記インプラントが重合体成分を実質的に含まない、請求項11に記載のコーティング・インプラント。
【請求項16】
コーティングされた整形外科用インプラントであって、
前記コーティングがヒアルロン酸またはその誘導体を含む、整形外科用コーティング・インプラント。
【請求項17】
前記整形外科用インプラントが、整形外科用の整形外科用の 骨空隙充填材、骨折安定化補助材、髄内固定装置、関節増強/代替装置、骨固定板、ネジ、タック、クリップ、ステープル、釘、ピン、ロッド、アンカー、ネジ増強装置、または頭蓋再建装置である、請求項16に記載の整形外科用コーティング・インプラント。
【請求項18】
前記コーティングの厚さが約1ミクロンないし約500ミクロンである、請求項16に記載の整形外科用コーティング・インプラント。
【請求項19】
前記コーティングの厚さが約3ミクロンないし約250ミクロンである、請求項16に記載の整形外科用コーティング・インプラント。
【請求項20】
前記抗菌コーティングがヒアルロン酸を含む、請求項16に記載の整形外科用コーティング・インプラント。
【請求項21】
前記抗菌コーティングがヒアルロン酸ナトリウムを含む、請求項16に記載の整形外科用コーティング・インプラント。
【請求項22】
前記抗菌コーティングが、本質的にヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせからなる、請求項16に記載の整形外科用コーティング・インプラント。
【請求項23】
前記抗菌コーティングが治療剤をさらに含む、請求項16に記載の整形外科用コーティング・インプラント。
【請求項24】
前記治療剤が抗生物質を含む、請求項23に記載の整形外科用コーティング・インプラント。
【請求項25】
マルチコーティングされたインプラントであって、
(a)前記インプラントの表面に存在する第1のコーティングを有する第1の層と、(b)前記第1の層の上に存在するヒアルロン酸またはその誘導体を含む第2の層と、
を含むマルチコーティング・インプラント。
【請求項26】
前記第1の層が金属、合金、セラミック、または重合体を含む、請求項25に記載のマルチコーティング・インプラント。
【請求項27】
前記第1の層の厚さが約10オングストロームないし約5000オングストロームである、請求項26に記載のマルチコーティング・インプラント。
【請求項28】
前記第1の層の厚さが約10オングストロームないし約1,000オングストロームである、請求項27に記載のマルチコーティング・インプラント。
【請求項29】
前記第2のコーティングがヒアルロン酸を含む、請求項25に記載のマルチコーティング・インプラント。
【請求項30】
前記第2のコーティングがヒアルロン酸ナトリウムを含む、請求項25に記載のマルチコーティング・インプラント。
【請求項31】
前記第2のコーティングが本質的にヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせからなる、請求項25に記載のマルチコーティング・インプラント。
【請求項32】
前記第2のコーティングが治療剤をさらに含む、請求項25に記載のマルチコーティング・インプラント。
【請求項33】
前記治療剤が抗生物質または防腐剤を含む、請求項32に記載のマルチコーティング・インプラント。
【請求項34】
前記コーティングが本質的にヒアルロン酸またはその誘導体からなり、前記インプラントが空隙充填材、骨折安定化補助材、髄内固定装置、関節増強/代替装置、骨固定板、ネジ、タック、クリップ、ステープル、釘、ピン、ロッド、アンカー, スカフォード、ステム、メッシュ、スポンジ、細胞封入用インプラント、組織工学用インプラント、薬物送達装置、骨成長誘導触媒、モノフィラメント、マルチフィラメント構造、シート、コーティング、膜、気泡材、ネジ増強装置、頭蓋再建装置、心臓弁、またはぺーサー・リードからなる、コーティング・インプラント。
【請求項35】
コーティング・インプラントを製造する方法であって、
(a)金属、合金、またはセラミックを含むインプラントを設けること、ならびに、
(b)ヒアルロン酸またはその誘導体を含む第2のコーティングで前記インプラントを被覆すること、
を含むコーティング・インプラントの製造方法。
【請求項36】
前記インプラントが第1のコーティングをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記第1のコーティングが金属、合金、セラミック、または重合体を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記第1のコーティングがアクリル重合体である、請求項37に記載の方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−507306(P2007−507306A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534112(P2006−534112)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/032239
【国際公開番号】WO2005/032417
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(591073555)ジンテーズ アクチエンゲゼルシャフト クール (36)
【氏名又は名称原語表記】SYNTHES AKTIENGESELLSCHAFT
【出願人】(306047675)
【出願人】(306047686)
【出願人】(306047697)シンセス(ユーエスエー) (1)
【Fターム(参考)】