説明

文字入力装置、文字入力方法、及びプログラム

【課題】 車両を運転中のドライバが安全に文字入力を行える装置を提供する。
【解決手段】 文字入力装置は、ステアリングの左右の把持部分にそれぞれ設けられた文字入力デバイス20および制御指示デバイス22と、文字入力デバイス20から入力されるストロークのデータを記憶するストローク記憶部38と、各文字に関連付けて、当該文字を構成するストロークのデータを記憶した文字認識用データベース42と、ストローク記憶部38に記憶されたストロークのデータと一致するストロークのデータを文字認識用データベース42から検索して文字を認識する文字認識部40と、制御指示デバイス22から文字認識の指示が入力されたときに、ストローク記憶部に記憶されたストロークのデータの文字認識を文字認識部40に対して指示すると共にストローク記憶部38に記憶されたストロークのデータをクリアする管理部44とを備えた構成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を運転するドライバが文字を入力する文字入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、文字の手書き入力に関する様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1は、手書き文字入力において、文字認識処理の開始と文字の確定までの時間をユーザ毎に調節し、各ユーザに適応した高速な手書き文字認識を実現した装置を開示している。特許文献2は、部首部分が入力されたときに、対応する入力候補漢字を一覧表示することにより、簡単な操作で手書き入力できる手書き入力装置を開示している。非特許文献1は、文字を複数のストロークの集まりとして捉えることにより、少数の文字の学習で辞書登録されている全字種の認識が可能な文字認識方式を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−202959号公報
【特許文献2】特開平11−250046号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】嵯峨野茂樹、中井満、下平博「ストロークHMMに基づくオンライン手書き文字認識方式」社団法人 電子情報通信学会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両を運転しながら、ナビゲーション装置等の車載情報機器を操作したいという要求が存在する。例えば、ナビゲーション装置を操作するためには、住所入力や検索ワードの入力を行うために文字入力操作が必要となる。
【0006】
上記したように、従来から様々な文字認識装置および方法が提案されているが、入力装置を注視することなく安全に文字入力と文字認識の制御を行うための装置は知られていなかった。運転中の文字入力を実現するためには、安全性確保の観点に十分配慮する必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記背景に鑑み、車両を運転中のドライバが安全に文字入力を行える装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の文字入力装置は、ステアリングの左右の把持部分にそれぞれ設けられた文字入力デバイスおよび制御指示デバイスと、前記文字入力デバイスから入力されるストロークのデータを記憶するストローク記憶部と、各文字に関連付けて、当該文字を構成するストロークのデータを記憶した文字認識用データベースと、前記ストローク記憶部に記憶されたストロークのデータと一致するストロークのデータを前記文字認識用データベースから検索し、検索されたストロークのデータに関連付けられた文字を読み出す文字認識部と、前記制御指示デバイスから文字認識の指示が入力されたときに、前記ストローク記憶部に記憶されたストロークのデータの文字認識を前記文字認識部に対して指示すると共に前記ストローク記憶部に記憶されたストロークのデータをクリアする管理部とを備えた構成を有する。
【0009】
このようにステアリングの左右の把持部分に、文字入力デバイスおよび制御指示デバイスをそれぞれ設けた構成により、ドライバは、ステアリングから手を離すことなく文字入力を行える。また、文字入力デバイスから入力されたストロークにより文字を認識するので、ドライバは文字入力デバイスを見ないで文字を入力することができ、安全性を確保した文字入力を実現できる。
【0010】
本発明の文字入力装置は、ドライバが手で操作する車載機器と接続されており、前記車載機器からの操作情報を受信する操作情報受信部を備え、前記管理部は、前記操作情報受信部にて受信した操作情報に基づいて、操作がなされた時刻前後の所定の時間内に前記文字入力デバイスから入力されたストロークのデータを、前記ストローク記憶部から削除してもよい。
【0011】
例えば、ウィンカー、ヘッドライト、ワイパー、シフトレバー、エアコン、カーオーディオ等のように手で操作を行う車載機器を操作する際には、ステアリングから手が離れるので、ドライバ自身が気づかないうちに文字入力デバイスや制御指示デバイスに触れてしまう可能性がある。本発明の構成によれば、操作前後の所定の時間内に入力されたストロークをキャンセルできるので、車載機器の操作に起因する誤入力を防止できる。
【0012】
本発明の文字入力装置は、ドライバが手で操作する車載機器と接続されており、前記車載機器からの操作情報を受信する操作情報受信部を備え、前記管理部は、前記操作情報受信部にて操作情報を受信したときに、前記ストローク記憶部に記憶されたストロークのデータをクリアしてもよい。
【0013】
このように車載機器の操作があった場合には、ストローク記憶部に記憶されたデータをクリアすることにより、車載機器の操作に起因する誤入力を防止できる。
【0014】
本発明の文字入力装置は、ドライバが手で操作する車載機器と接続されており、前記車載機器からの操作情報を受信する操作情報受信部と、前記車載機器が操作されたときに、当該操作前に入力されたストロークのデータを削除するか残すかを設定する設定部とを備え、前記管理部は、データを削除する設定の場合には、前記操作情報受信部にて操作情報を受信したときに、前記ストローク記憶部に記憶されたストロークの全データをクリアし、データを残す設定の場合には、前記操作情報受信部にて受信した操作情報に基づいて、操作がなされた時刻前後の所定の時間内に前記文字入力デバイスから入力されたストロークのデータのみを前記ストローク記憶部から削除する構成としてもよい。
【0015】
この構成により、車載機器の操作があった場合に、ストローク記憶部に記憶された全データをクリアするか、操作前後の所定の時間内に入力されたストロークをキャンセルするかを選択することができる。
【0016】
本発明の文字入力装置において、前記文字認識用データベースは、文字のパーツに関連付けて、当該パーツを構成するストロークのデータを記憶しており、前記管理部は、前記制御指示デバイスからパーツ認識の指示が入力されたときに、前記ストローク記憶部に記憶されたストロークのデータのパーツ認識を前記文字認識部に対して指示し、前記文字認識部は、前記ストローク記憶部に記憶されたストロークのデータと一致するストロークのデータを前記文字認識用データベースから検索し、検索されたストロークのデータに関連付けられたパーツを読み出してもよい。
【0017】
この構成により、パーツ単位で文字認識を行えるので、例えば、複雑な文字を入力する際に発生しがちなやり直しの回数を減らし、効率的に文字認識を行うことが可能である。
【0018】
本発明の文字入力装置は、あらかじめ所定の文字列を記憶した文字列データベースと、前記文字認識部にて認識された文字を記憶する文字記憶部と、前記文字記憶部に記憶された文字または文字列を含む文字列を前記文字列データベースから検索する候補文字列検索部と、前記候補文字列検索部にて検索された文字列をドライバに提示する提示部とを備えてもよい。また、文字列データベースに代えて、過去に入力された文字列を記憶した入力履歴データベースを備え、候補文字列を検索してもよい。
【0019】
この構成により、文字列を構成する一部の文字または文字列を入力することにより、容易に文字列全体を入力することができる。
【0020】
本発明の文字入力装置は、前記文字入力デバイスまたは前記制御指示デバイスとして機能する前記ステアリングの左右に設けられたタッチパッドと、左右いずれのタッチパッドを前記文字入力デバイスとして用いるかを設定する設定部とを備えてもよい。
【0021】
この構成により、ドライバの利き手に合わせて、左右いずれかのタッチパッドを文字入力デバイスとして用いることができる。従って、入力デバイス自体の位置を変更するというハードウェアの変更を行う必要がなく、利便性が高い。
【0022】
本発明の文字入力装置は、音声を出力する音声出力部を備え、前記管理部は、前記文字認識部にて認識した文字の読みを前記音声出力部より出力してもよい。また、本発明の文字入力装置は、前記ステアリングを振動させる振動発生部を備え、前記管理部は、前記文字認識部にて文字を認識したときに前記振動発生部にて前記ステアリングを振動させてもよい。
【0023】
この構成により、入力したストロークが適切に文字認識されたか否かを、車両前方から目を離さずに知ることができる。
【0024】
本発明の文字入力方法は、ステアリングの左右の把持部分にそれぞれ設けられた文字入力デバイスおよび制御指示デバイスを有する文字入力装置によって文字を入力する方法であって、前記文字入力デバイスからストロークが入力されたときに、入力されたストロークのデータをストローク記憶部に記憶するステップと、前記制御指示デバイスから文字認識の指示が入力されたときに、前記ストローク記憶部に記憶されたストロークと一致するストロークを、各文字に関連付けて、当該文字を構成するストロークを記憶した文字認識用データベースから検索し、検索されたストロークに関連付けられた文字を読み出すステップと、前記文字の読み出しの後に、前記ストローク記憶部に記憶されたデータをクリアするステップとを備えた構成を有する。
【0025】
本発明のプログラムは、ステアリングの左右の把持部分にそれぞれ設けられた文字入力デバイスおよび制御指示デバイスを有する文字入力装置によって文字を入力するためのプログラムであって、前記文字入力装置に、前記文字入力デバイスからストロークが入力されたときに、入力されたストロークのデータをストローク記憶部に記憶するステップと、前記制御指示デバイスから文字認識の指示が入力されたときに、前記ストローク記憶部に記憶されたストロークと一致するストロークを、各文字に関連付けて、当該文字を構成するストロークを記憶した文字認識用データベースから検索し、検索されたストロークに関連付けられた文字を読み出すステップと、前記文字の読み出しの後に、前記ストローク記憶部に記憶されたデータをクリアするステップとを実行させる。
【0026】
この構成により、本発明の文字入力装置と同様に、ドライバは、ステアリングから手を離すことなく、かつ、文字入力デバイスを見ることなく、文字入力を行える。なお、本発明の文字入力装置の各種の構成を本発明の文字入力方法及びプログラムに適用することが可能である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ドライバは、安全に文字を入力することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1の実施の形態の文字入力装置の構成を示す図である。
【図2】文字入力デバイスと制御指示デバイスの取り付け位置を示す図である。
【図3】文字認識用DBに記憶されたデータの例を示す図である。
【図4】ストロークの種類について説明する図である。
【図5】ジェスチャDBに記憶されたデータの例を示す図である。
【図6】文字入力モードへの遷移の動作を示す図である。
【図7】文字入力モードにおいて制御指示が入力されたときの動作を示す図である。
【図8】文字認識の動作を示す図である。
【図9】第2の実施の形態の文字入力装置の構成を示す図である。
【図10】第2の実施の形態の文字入力装置における文字入力動作を示す図である。
【図11】第3の実施の形態の文字入力装置の構成を示す図である。
【図12】文字列候補を探索して提示する動作を示す図である。
【図13】文字認識用DBに記憶されたデータの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態の文字入力装置について図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の文字入力装置11の構成を示す図である。文字入力装置11は、入出力用のデバイスとして、文字入力デバイス20と、制御指示デバイス22と、音声出力装置24と、画像出力装置26とを有している。また、文字入力装置11は、文字入力デバイス20を制御するための文字入力デバイス制御部28と、制御指示デバイス22を制御するための制御指示デバイス制御部30と、音声出力装置24を制御するための音声出力装置制御部32と、画像出力装置26を制御するための画像出力装置制御部34とを有している。文字入力装置11は、これらの入出力用デバイスを制御して、文字入力の受付けと入力された文字の出力を行う。文字入力装置11は、上記した入出力デバイスの他は、CPU、RAM、ROM等を備えたコンピュータ(ECU)によって構成される。コンピュータは、ROMに記憶されたプログラムを読み出すことによって、図1に示す各機能ブロックの機能を実現する。
【0030】
図2は、文字入力デバイス20と制御指示デバイス22のステアリング36への取り付け位置を示す図である。文字入力デバイス20はステアリング36の右手の把持位置付近に取り付けられ、右手をステアリング36から離さずに操作を行うことができる。制御指示デバイス22はステアリング36の左手の把持位置付近に取り付けられ、左手をステアリング36から離さずに操作を行うことができる。また、文字入力デバイス20と制御指示デバイス22は共に、タッチパッドにより構成されている。なお、文字入力デバイス20と制御指示デバイス22の位置関係は反対であってもよい。
【0031】
また、図示しない設定部により、右側のタッチパッドを文字入力デバイス20とするか、左側のタッチパッドを文字入力デバイス20とするかを設定可能な構成とすることが好ましい。これにより、右利きのドライバは、右側のタッチパッドを文字入力デバイス20とし、左利きのドライバは、左側のタッチパッドを文字入力デバイス20とする設定をソフト的に行うことができる。
【0032】
文字入力装置11は、文字入力デバイス20から入力されたストロークのデータを一時的に記憶するストローク記憶部38と、ストローク記憶部38に記憶されたストロークのデータを読み出し、読み出したストロークの組み合わせによって構成される文字を認識する文字認識部40とを有している。文字認識部40には、文字認識用データベース(以下、「文字認識用DB」という)42が接続されている。
【0033】
図3は、文字認識用DB42に記憶されたストロークデータの例を示す図、図4は、ストロークの種類について説明する図である。まず、図4を用いてストロークの種類について説明する。文字認識用DB42に記憶されるストロークには、長い線分で構成される長ストローク、短い線分で構成される短ストローク、微小線分で構成される微小ストロークと、時計回り及び左回りの弧で構成される弧ストロークがある。長ストローク、短ストローク、微小ストロークのそれぞれには、8方向のストロークがある。なお、微小ストロークは、空中での指先の移動を表すストロークである。弧ストロークには、時計回りと反時計回りのそれぞれについて4つずつのストロークがある。
【0034】
図3に示すように、文字認識用DB42には、ストロークの組み合わせと当該組み合わせに対応する文字のデータが記憶されている。例えば、片仮名の「ア」であれば、識別子G、d、2、E、Oのストロークの組み合わせであることが記憶されている。なお、図3に示す例では、文字に含まれるパーツとしては「NULL」の値が記憶されている。
【0035】
文字認識部40は、管理部44からの指示に従って文字認識を開始する。文字認識部40は、ストローク記憶部38に記憶された複数のストロークのデータを読み出し、読み出したストロークのデータの組み合わせに合致する文字を文字認識用DB42から検索する。文字認識部40は、検索された文字データ(すなわち認識した文字データ)を入力文字記憶部46に記憶する。文字列識別部48は、入力文字記憶部46に記憶された文字列を認識する機能を有している。
【0036】
文字入力装置11は、制御指示デバイス22から入力された制御指示を認識するジェスチャ認識部50を有している。ジェスチャ認識部50には、ジェスチャデータベース(以下、「ジェスチャDB」という)52が接続されている。
【0037】
図5は、ジェスチャDB52に記憶されたデータの例を示す図である。ジェスチャDB52には、コマンドの種類に関連付けて制御指示デバイス22から入力されるジェスチャのテンプレートが記憶されている。「制御指示デバイス」の欄に記載されているのは制御指示デバイス22から入力されたジェスチャのテンプレート、「文字入力デバイス」の欄に記載されているのは文字入力デバイス20から入力されたジェスチャのテンプレートである。なお、文字入力開始コマンドは、制御指示デバイス22と同時に文字入力デバイス20からの入力があった場合に、初めて認識される。このように構成することにより、文字入力開始の誤判定を起こし難くしている。
【0038】
ジェスチャ認識部50は、制御指示デバイス22に入力されたジェスチャに合致するジェスチャをジェスチャDB52から検索し、検索されたジェスチャに対応するコマンドを読み出し、読み出したコマンドを管理部44に送信する。入力されたジェスチャに対応するコマンドが存在しない場合には、管理部44およびエラー処理部54に対して、ジェスチャの認識エラーを送信する。エラー処理部54は、音声出力装置制御部32および音声出力装置制御部34に対して、ジェスチャの認識エラーが発生したことを通知し、音声出力装置24および画像出力装置26から認識エラーを出力する。
【0039】
なお、ジェスチャ認識部50は、文字入力デバイス制御部28にも接続されている。文字入力モードでないときには、ジェスチャ認識部50は、文字入力デバイス20に入力されたジェスチャを認識する。
【0040】
管理部44は、文字認識部40及びジェスチャ認識部50の動作を管理し、文字入力の受付け及び文字認識の制御を行う機能を有する。管理部44は、ジェスチャ認識部50から「文字入力開始」コマンドが入力されたことの通知を受けた場合には、文字認識部40に対して文字認識モードを開始するように指示する。また、管理部44は、ジェスチャ認識部50から「文字認識」コマンドが入力されたことの通知を受けた場合には、ストローク記憶部38に記憶されたストロークデータの文字認識を行うように指示する。また、管理部44は、ジェスチャ認識部50から「取消」コマンドが入力されたことの通知を受けた場合には、ストローク記憶部38に記憶されたデータをクリアする。
【0041】
図6〜図8は、文字入力装置11の動作を示す図である。図6は、文字入力モードへの遷移の動作を示し、図7は、文字入力モードにおいて制御指示のコマンドが入力されたときの動作を示し、図8は、文字認識の動作を示す図である。以下、文字入力装置11の動作について説明する。
【0042】
図6に示すように、制御指示デバイス22と文字入力デバイス20に対して同時にジェスチャが入力されると(S10)、ジェスチャ認識部50は、入力されたジェスチャが文字入力の開始コマンドか否かを判定する(S12)。具体的には、図5に示すように、制御指示デバイス22を右から左へなぞる動き、文字入力デバイス20を左から右へなぞる動きを同時に行った場合に、ジェスチャ認識部50は、文字入力開始コマンドであると判定する。ジェスチャ認識部50は、文字入力開始コマンドであると判定すると(S12でYES)、当該判定結果を管理部44に通知する。管理部44は、この通知を受けて文字入力モードに遷移する(S14)。文字入力デバイス20は、文字入力モードに遷移するまでは入力されたストロークを制御指示コマンドのジェスチャとして処理し、文字入力モードに遷移した後は、文字の構成要素として処理する。
【0043】
次に、文字入力モードにおいて制御指示デバイス22からジェスチャが入力されたときの動作について図7を参照しながら説明する。なお、図7に示す動作と並行して、文字入力デバイス20からは文字のストロークデータが入力されている。
【0044】
図7に示すように、制御指示デバイス22は、ジェスチャの入力を受け付け(S20)、定期的にジェスチャが入力されたか否かを判定する(S22)。ジェスチャが入力されていない場合には(S22でNO)、再びジェスチャの入力を受け付ける処理に戻る(S20)。ジェスチャが入力されると(S22でYES)、ジェスチャ認識部50は、入力されたジェスチャが何のコマンドに対応するかを認識する(S24)。ジェスチャ認識部50は、入力されたコマンドが文字認識コマンドか否かを判定する(S26)。入力されたコマンドが文字認識コマンドの場合(S26でYES)、文字認識部40にて入力された文字の認識処理を実行し(S28)、再び、ジェスチャの入力を受け付ける処理に戻る(S20)。文字の認識処理については、図8を参照して後述する。
【0045】
入力されたコマンドが文字認識コマンドではない場合には(S26でNO)、ジェスチャ認識部50は、入力されたコマンドが取消コマンドであるか否かを判定する(S30)。入力されたコマンドが取消コマンドの場合(S30でYES)、ストローク記憶部38に記憶されている入力中の文字データを削除し(S32)、ジェスチャの入力を受け付ける処理に戻る(S20)。入力されたコマンドが取消コマンドでない場合には(S30でNO)、ジェスチャ認識部50は、ジェスチャの認識エラーを発生し(S34)、音声出力装置24および画像出力装置26から認識エラーを出力する。
【0046】
次に、図8を参照して、文字認識処理について説明する。文字認識部40は、ストローク記憶部38に記憶されたストロークデータに合致するストロークデータを有する文字を文字認識用DB42から検索し、文字認識を行う(S40)。この結果、正常に文字を認識できた場合(S42でYES)、認識した文字が複数であるか否かを判定する(S44)。認識した文字が複数ではない場合には(S44でNO)、認識された文字を入力文字記憶部46に記憶する。すなわち、入力されたストロークデータに合致する文字が1つ見つかった場合には、認識された文字を入力文字記憶部46に記憶すると共に、認識された文字を音声出力装置24または画像出力装置26から出力する(S54)。続いて、文字認識部40は、ストローク記憶部38に記憶されたストロークデータをクリアし(S56)、次の文字入力に備える。
【0047】
認識した文字が複数あった場合には(S44でYES)、認識した文字を画像出力装置26に表示する(S46)。ドライバが認識候補の中から所望の文字を選択し(S48)、入力した文字が特定される。なお、文字の選択は、制御指示デバイス22から所定のジェスチャ(不図示)を入力することにより行うことができる。特定された文字を入力文字記憶部46に記憶すると共に(S52)、認識された文字を音声出力装置24または画像出力装置26から出力し(S54)、ストローク記憶部38に記憶されたストロークデータをクリアして(S56)、次の文字入力に備えることは上記と同じである。合致する文字が見つからなかった場合には、音声出力装置24または画像出力装置26からエラーを出力し(S50)、ドライバに再入力を促す。
【0048】
以上、第1の実施の形態の文字入力装置11の構成および動作について説明した。第1の実施の形態の文字入力装置11は、ステアリング36の把持部分付近に文字入力デバイス20と制御指示デバイス22を設けた構成により、ステアリング36から手を離すことなく文字を入力することが可能である。また、文字入力デバイス20から文字を構成するストロークを入力し、制御指示デバイス22で文字認識のトリガを与えるので、ドライバは、文字入力デバイス20および制御指示デバイス22の方を見ないで、文字の入力を行える。
【0049】
また、本実施の形態の文字入力装置11は、音声出力装置24および画像出力装置26を備え、文字が正しく認識された場合には、認識された文字を読み上げる、あるいは表示する構成により、ドライバは、入力した文字が正しく認識されたか否かを知ることができる。
【0050】
(第2の実施の形態)
図9は、本発明の第2の実施の形態の文字入力装置12の構成を示す図である。第2の実施の形態の文字入力装置12の基本的な構成は、第1の実施の形態と同じであるが、第2の実施の形態の文字入力装置12は、操作情報受信部56を備え、車載機器の操作情報に基づいて文字認識部40を制御する点が異なる。以下、第1の実施の形態と相違する構成について説明する。
【0051】
操作情報受信部56は、ウィンカー58、ワイパー60、カーステレオ62といったドライバが手で操作を行う車載機器から、操作情報を受信する機能を有する。なお、ここで列挙した車載機器は一例に過ぎず、本発明の操作情報受信部が操作情報を受信する車載機器がこれらに限定されるものではない。操作情報には、操作を行った時刻の情報が含まれる。操作情報受信部56は、車載機器から操作情報を受信すると、受信した操作情報を管理部44に渡す。
【0052】
図10は、第2の実施の形態の文字入力装置12における文字入力動作を示す図である。文字入力装置12は、文字入力デバイス20からストロークデータが入力されると(S60)、入力されたストロークデータをストローク記憶部38に記憶する(S62)。次に、管理部44は、操作情報受信部56が車載機器から操作情報を受信したか否かを判定する(S64)。操作情報を受信している場合には(S64でYES)、操作時刻を中心とする所定時間内(例えば、操作前1秒間、操作後1秒間の2秒間)に入力されたストロークデータをストローク記憶部38から削除する(S66)。操作情報を受信していない場合には(S64でNO)、何もしないで次のストロークデータの入力を待つ。
【0053】
以上、第2の実施の形態の文字入力装置12について説明した。第2の実施の形態の文字入力装置12は、車載機器の操作情報が入力された場合には、操作時刻前後に入力されたストロークデータを削除するので、車載機器を操作する際に、ドライバが意図せずに文字入力デバイス20に触れてしまって入力されたストロークデータを削除し、自動的にキャンセルすることができる。これにより、運転中という状況下であっても、誤りの少ない文字認識を行うことが可能となる。
【0054】
なお、本実施の形態では、操作情報が入力された場合には、その前後に入力されたストロークデータだけを削除する例について説明したが、ストローク記憶部38に記憶された全データをクリアして、文字の入力を再スタートすることとしてもよい。また、ドライバの設定により、本実施の形態のように車載機器の操作前後のストロークデータのみを削除するか、全データをクリアするかを設定できるようにしてもよい。
【0055】
(第3の実施の形態)
図11は、第3の実施の形態の文字入力装置13の構成を示す図である。第3の実施の形態の文字入力装置13の基本的な構成は、第1の実施の形態と同じであるが、第3の実施の形態では、文字列認識部48は、入力された文字に続く文字を予測する機能を有している。以下、第1の実施の形態と相違する構成について説明する。
【0056】
文字列認識部48は、入力された文字から候補となる文字列を検索する候補文字列検索部64を有している。候補文字列認識部48は、ドライバが過去に入力した文字列を記憶した入力履歴データベース(以下、「入力履歴DB」という)66に接続されている。
【0057】
図12は、文字列候補を探索して提示する動作を示す図である。候補文字列検索部64は、入力文字記憶部46に記憶されている文字を読み出し(S70)、これまでに入力された文字又は文字列(以下、「入力文字列」という)を特定する。次に、候補文字列検索部64は、入力文字列を含む文字列を入力履歴DB66から読み出す(S72)。例えば、入力文字列が「レ」であった場合、「レストラン」「レンタカー」等、過去にドライバにより入力された文字列を読み出す。
【0058】
入力履歴DB66を検索した結果、過去に入力された文字列が見つかった場合には(S74でYES)、文字列認識部48は、候補文字列を画像出力装置26から提示する(S76)。これにより、ドライバは、文字列をすべて入力しなくても、容易に所望の文字列を入力することができる。なお、過去に入力した文字列が複数見つかった場合には、見つかった文字列を提示して、ドライバに選択させることとしてもよい。
【0059】
本実施の形態では、入力履歴DB66に記憶された文字列から候補となる文字列を検索することとしたが、目的地の設定や車載機器の操作等によく用いられる文字列をデータベースに記憶しておき、当該データベースの中から候補文字列を検索してもよい。
【0060】
(第4の実施の形態)
次に、第4の実施の形態について説明する。第4の実施の形態の文字入力装置は、文字の単位で認識することに加え、文字を構成するパーツ単位で文字認識を行うことができる装置である。第4の実施の形態の文字入力装置の基本的な構成は、第1の実施の形態と同じであるが、第4の実施の形態の文字入力装置は、文字認識用DB42に文字のパーツデータが含まれている点が異なる。
【0061】
図13は、文字認識用DB42に記憶されたデータの例を示す図である。文字認識用DB42には、第1の実施の形態で説明したデータに加え、図13に示すデータが記憶されている。文字認識用DB42には、例えば、ID「304」「307」等に見られるように、パーツに対応するストロークデータが記憶されている。管理部44は、制御指示デバイス22からパーツの認識の指示を通知された場合には、文字認識部40に対して、入力ストロークに対応するパーツを認識するように指示する。
【0062】
また、本実施の形態では、例えば、ID「301」〜「303」,「305」「306」等に見られるように、当該パーツを用いた文字が記憶されている。これにより、文字認識部40は、パーツが特定された場合には、そのパーツを含む文字を入力候補として抽出することができる。文字に含まれる複数のパーツが特定されれば、それらの構成要素を含む文字の数は限られてくるので、候補となる文字を表示してドライバに選択させることによって、文字入力を簡単に行える。
【0063】
以上、本発明の文字列入力装置について、図面を参照して詳細に説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではない。
【0064】
上記した実施の形態では、認識した文字を音声や画像で出力する例について説明したが、文字を認識したことをドライバに通知する手段は、音声に限らず、例えば、ステアリング36の振動を用いてもよい。ステアリング36に振動発生装置を設け、文字認識部40にて文字を認識できたときには、ステアリング36を振動させてもよい。
【0065】
上記した実施の形態では、制御指示デバイス22としてタッチパッドを用い、制御指示としてジェスチャを用いることとしたが、制御指示デバイス22はステアリングスイッチであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上説明したとおり、本発明は、ドライバが安全に文字を入力することができるという効果を有し、車両で用いられる文字入力装置等として有用である。
【符号の説明】
【0067】
11〜13 文字入力装置
20 文字入力デバイス
22 制御指示デバイス
24 音声出力装置
26 画像出力装置
28 文字入力デバイス制御部
30 制御指示デバイス制御部
32 音声出力装置制御部
34 画像出力装置制御部
36 ステアリング
38 ストローク記憶部
40 文字認識部
42 文字認識用DB
44 管理部
46 入力文字記憶部
48 文字列認識部
50 ジェスチャ認識部
52 ジェスチャDB
54 エラー処理部
56 操作情報受信部
58 ウィンカー
60 ワイパー
62 カーステレオ
64 候補文字列検索部
66 入力履歴DB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングの左右の把持部分にそれぞれ設けられた文字入力デバイスおよび制御指示デバイスと、
前記文字入力デバイスから入力されるストロークのデータを記憶するストローク記憶部と、
各文字に関連付けて、当該文字を構成するストロークのデータを記憶した文字認識用データベースと、
前記ストローク記憶部に記憶されたストロークのデータと一致するストロークのデータを前記文字認識用データベースから検索し、検索されたストロークのデータに関連付けられた文字を読み出す文字認識部と、
前記制御指示デバイスから文字認識の指示が入力されたときに、前記ストローク記憶部に記憶されたストロークのデータの文字認識を前記文字認識部に対して指示すると共に前記ストローク記憶部に記憶されたストロークのデータをクリアする管理部と、
を備えた文字入力装置。
【請求項2】
ドライバが手で操作する車載機器と接続されており、
前記車載機器からの操作情報を受信する操作情報受信部を備え、
前記管理部は、前記操作情報受信部にて受信した操作情報に基づいて、操作がなされた時刻前後の所定の時間内に前記文字入力デバイスから入力されたストロークのデータを、前記ストローク記憶部から削除する請求項1に記載の文字入力装置。
【請求項3】
ドライバが手で操作する車載機器と接続されており、
前記車載機器からの操作情報を受信する操作情報受信部を備え、
前記管理部は、前記操作情報受信部にて操作情報を受信したときに、前記ストローク記憶部に記憶されたストロークのデータをクリアする請求項1に記載の文字入力装置。
【請求項4】
ドライバが手で操作する車載機器と接続されており、
前記車載機器からの操作情報を受信する操作情報受信部と、
前記車載機器が操作されたときに、当該操作前に入力されたストロークのデータを削除するか残すかを設定する設定部と、を備え、
前記管理部は、データを削除する設定の場合には、前記操作情報受信部にて操作情報を受信したときに、前記ストローク記憶部に記憶されたストロークの全データをクリアし、データを残す設定の場合には、前記操作情報受信部にて受信した操作情報に基づいて、操作がなされた時刻前後の所定の時間内に前記文字入力デバイスから入力されたストロークのデータのみを前記ストローク記憶部から削除する請求項1に記載の文字入力装置。
【請求項5】
前記文字認識用データベースは、文字のパーツに関連付けて、当該パーツを構成するストロークのデータを記憶しており、
前記管理部は、前記制御指示デバイスからパーツ認識の指示が入力されたときに、前記ストローク記憶部に記憶されたストロークのデータのパーツ認識を前記文字認識部に対して指示し、
前記文字認識部は、前記ストローク記憶部に記憶されたストロークのデータと一致するストロークのデータを前記文字認識用データベースから検索し、検索されたストロークのデータに関連付けられたパーツを読み出す請求項1に記載の文字入力装置。
【請求項6】
あらかじめ所定の文字列を記憶した文字列データベースと、
前記文字認識部にて認識された文字を記憶する文字記憶部と、
前記文字記憶部に記憶された文字または文字列を含む文字列を前記文字列データベースから検索する候補文字列検索部と、
前記候補文字列検索部にて検索された文字列をドライバに提示する提示部と、
を備える請求項1に記載の文字入力装置。
【請求項7】
過去に入力された文字列を記憶した入力履歴データベースと、
前記文字認識部にて認識された文字を記憶する文字記憶部と、
前記文字記憶部に記憶された文字または文字列を含む文字列を前記入力履歴データベースから検索する候補文字列検索部と、
前記候補文字列検索部にて検索された文字列をドライバに提示する提示部と、
を備える請求項1に記載の文字入力装置。
【請求項8】
前記文字入力デバイスまたは前記制御指示デバイスとして機能する前記ステアリングの左右に設けられたタッチパッドと、
左右いずれのタッチパッドを前記文字入力デバイスとして用いるかを設定する設定部と、
を備える請求項1に記載の文字入力装置。
【請求項9】
音声を出力する音声出力部を備え、
前記管理部は、前記文字認識部にて認識した文字の読みを前記音声出力部より出力する請求項1に記載の文字入力装置。
【請求項10】
前記ステアリングを振動させる振動発生部を備え、
前記管理部は、前記文字認識部にて文字を認識したときに前記振動発生部にて前記ステアリングを振動させる請求項1に記載の文字入力装置。
【請求項11】
ステアリングの左右の把持部分にそれぞれ設けられた文字入力デバイスおよび制御指示デバイスを有する文字入力装置によって文字を入力する方法であって、
前記文字入力デバイスからストロークが入力されたときに、入力されたストロークのデータをストローク記憶部に記憶するステップと、
前記制御指示デバイスから文字認識の指示が入力されたときに、前記ストローク記憶部に記憶されたストロークと一致するストロークを、各文字に関連付けて、当該文字を構成するストロークを記憶した文字認識用データベースから検索し、検索されたストロークに関連付けられた文字を読み出すステップと、
前記文字の読み出しの後に、前記ストローク記憶部に記憶されたデータをクリアするステップと、
を備えた文字入力方法。
【請求項12】
ステアリングの左右の把持部分にそれぞれ設けられた文字入力デバイスおよび制御指示デバイスを有する文字入力装置によって文字を入力するためのプログラムであって、前記文字入力装置に、
前記文字入力デバイスからストロークが入力されたときに、入力されたストロークのデータをストローク記憶部に記憶するステップと、
前記制御指示デバイスから文字認識の指示が入力されたときに、前記ストローク記憶部に記憶されたストロークと一致するストロークを、各文字に関連付けて、当該文字を構成するストロークを記憶した文字認識用データベースから検索し、検索されたストロークに関連付けられた文字を読み出すステップと、
前記文字の読み出しの後に、前記ストローク記憶部に記憶されたデータをクリアするステップと、
を実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−173965(P2012−173965A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34929(P2011−34929)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(502324066)株式会社デンソーアイティーラボラトリ (332)
【Fターム(参考)】