説明

文字情報認識方法及び文字情報認識装置

【課題】識別の対象となる物品の素材特性や外部環境に影響を受けることなく、高い信頼性で当該物品の識別を行う。
【解決手段】 板状部材Qに形成された立体文字Cの凹凸を3次元計測し、3次元計測により得られた立体文字Cの凹凸データから立体文字Cの高さ又は深さ方向の情報を抽出し、立体文字Cの高さ又は深さ方向の情報と立体文字Cが表す事項とが予め対応付けられた文字コードと、凹凸データから抽出された立体文字Cの高さ又は深さ方向の情報とを比較し、文字コードから、凹凸データから抽出された高さ又は深さ方向の情報に対応する数字を選択し、選択された数字を板状部材Qに形成された立体文字Cが表す数字として認識する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の外表面に記された文字情報の認識方法及び認識装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、物品の自動識別を行うにあたっては、例えばバーコードやQRコードに代表されるような符号化された情報を印刷などにより2次元的に物品に付し、当該物品に付与された符号情報を光学的に読み取ることで当該符号化された情報が表す事項を特定し、特定された情報に基づいて物品の識別を行うといった方法が用いられている。
【0003】
しかしながら、自動識別の対象としての物品が、例えば金属の板などであった場合、当該金属板に印刷した符号情報が、外部環境の影響により金属板に生じた錆びなどによって劣化したり、素材の持つ色合いや表面性状の影響を受けて符号情報を光学的に読み取ることが困難であったりといったことが要因で、自動識別率が極端に低下するという問題を抱えていた。
【0004】
この問題に対応するために、特許文献1には、金属板などに用いても自動識別率が低下しない符号情報の認識方法として、文字や数字をドットにより符号化し、当該符号化されたドットを凹凸状のエンボス又はデボスとして金属板の表面に付す方法が提案されている。そして、特許文献1によれば、金属板の表面に付された凹凸形状が符号認識装置により3次元計測され、3次元計測により読み取った符号情報に基づいて物品の自動識別が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−44620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、引用文献1に開示される方法において金属板の表面に付されている識別記号は、QRコードと同様の符号化されたドット情報であるため、例えば作業員が金属板表面のドットを目視により確認しても、当該符号化されたドット情報から元の文字情報を復元することができるわけではない。したがって、物品の識別においては符号認識装置による識別の結果と作業員との目視によるダブルチェックを行うことができない。そのため、例えば凹凸形状のドットに変形等が生じ符号認識装置による識別結果が本来あるべき内容と誤ったものとなった場合は、その誤った識別結果に基づいて、当該物品が誤出荷されるといった事態が起こりうる。
【0007】
また、例えば凹凸のドットの変形等により符号認識装置により自動識別を行うことができなくなった場合、ドットの変形状態を作業員が目視により確認することで本来あるべきドットの形状を作業員が認識できたとしても、上述のように符号化された情報からでは最終的に必要とされる文字や数字といった情報を直接得ることはできない。そのため、情報の復元という観点においても信頼性が十分であるとはいえない。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、識別の対象となる物品の素材特性や外部環境などに影響を受けることなく、高い信頼性で当該物品の識別を行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するための本発明は、物品の外表面に立体的に形成された立体文字を認識する方法であって、前記立体文字の凹凸を3次元計測し、前記3次元計測により得られた前記立体文字の凹凸データから、前記物品の外表面からの当該立体文字の高さ又は深さ方向の情報を抽出し、前記立体文字の高さ又は深さ方向の情報と前記立体文字が表す事項とが予め対応付けられた文字コードと、前記凹凸データから抽出された前記立体文字の高さ又は深さ方向の情報とを比較し、
前記文字コードから、前記凹凸データから抽出された高さ又は深さ方向の情報に対応する事項を選択し、当該選択された事項を前記物品に形成された立体文字が表す事項として認識することを特徴としている。
【0010】
本発明によれば、識別の対象である物品の外表面に立体的に形成された立体文字を3次元計測し、3次元計測により得られた立体文字の高さ方向の情報に基づき文字コードから立体文字の表す事項を選択するので、例えば物品が金属などの場合に、表面に発生した錆びなどにより立体文字の視認性が劣化した場合であっても、立体文字の表す事項を正確に文字として認識することができる。そして、立体文字は、当該立体文字の表す事項が、例えば作業員の目視によっても認識可能であるため、例えば文字情報認識装置において認識不良となった場合であっても、作業員が立体文字の目視確認を行うことで、直ちに物品の識別が可能となる。
したがって、本発明の文字情報認識装置は、物品の素材特性や外部環境に影響を受けることなく、高い信頼性で物品の自動識別を行うことができ、且つ例えばQRコードやドットなどの符号化された情報を用いた場合に付随する、作業員により符号化情報の復元を行うことの困難性といった問題点についても解消することができる。
【0011】
なお、前記3次元計測により得られた前記立体文字の凹凸データをグレースケール化処理により2次元画像化し、当該2次元画像に基づいて前記立体文字の表す事項を認識し、当該認識された事項と、前記文字コードから選択された事項とを比較して正誤判定を行ってもよい。
【0012】
また、前記立体文字が表す事項は、数字であってもよい。
【0013】
前記物品の外表面には所定の数字と対応付けられた高さ又は深さで立体的に形成されたチェックディジットが設けられ、前記チェックディジットの凹凸を3次元計測して当該チェックディジットに対応する数字を取得し、前記2次元画像に基づいて判別された数字と、前記文字コードに基づき割り当てられた数字とが異なる場合は、前記チェックディジットから取得された数字を用いて、いずれの数字が正しいかを判定してもよい。
【0014】
前記物品は板状の部材であり、前記立体文字は、前記板状の部材の側端面に形成されていてもよい。
【0015】
別な観点による本発明は、物品の外表面に立体的に形成された立体文字を自動認識する文字情報認識装置であって、前記立体文字の凹凸を3次元計測する3次元計測部と、前記3次元計測により得られた前記立体文字の凹凸データから高さ又は深さ方向の情報を抽出する3次元情報抽出部と、前記立体文字との高さ又は深さ方向の情報と前記立体文字が表す文字とが予め対応付けられた文字コードを格納する、文字コード格納部と、前記文字コード記憶部に格納された文字コードと、前記3次元情報抽出部で抽出された高さ又は深さ方向の情報とを比較し、前記文字コードの文字から、3次元情報抽出部で抽出された高さ又は深さ方向の情報に対応する文字を選択し、選択された文字を、前記物品に形成された立体文字が表す文字として認識する文字選択部と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、識別の対象となる物品の素材特性や外部環境に影響を受けることなく、高い信頼性で当該物品の識別を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施の形態にかかる文字情報認識装置の構成の概略を示す説明図である。
【図2】ローラ及び板状部材を正面からみた様子を示す説明図である。
【図3】本実施の形態にかかる文字情報認識装置の構成の概略を示す平面図である。
【図4】本実施の形態にかかる印字装置の構成の概略を示す説明図である。
【図5】本実施の形態にかかる文字コードである。
【図6】本実施の形態にかかる文字認識のフロー図である。
【図7】本実施の形態にかかるチェックディジットのコード表である。
【図8】チェックディジットが付された板状部材を示す説明図である。
【図9】他の実施の形態に係る文字コードである。
【図10】他の実施の形態にかかる板状部材の平面図である。
【図11】他の実施の形態にかかる板状部材を正面からみた様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態にかかる文字情報認識装置1は、図1に示すように、識別対象となる物品としての板状部材Qを搬送方向A(図1のX方向正方向側)に沿って搬送する搬送機構10と、板状部材Qの外表面の所定の領域に立体的に形成された識別用の情報としての立体文字Cの凹凸を3次元的に計測する3次元計測部11と、3次元計測部11により計測されたデータを収集する計測データ収集部12と、計測データ収集部12と通信ケーブルにより接続され、計測データ収集部12で収集されたデータの処理及び搬送機構10の制御を行う計算機13とを有している。本実施の形態における板状部材Qとしては、例えば金属板などである。なお、ここでいう立体文字Cとは、板状部材Qの外表面に、例えばインクジェット方式により所定の厚みの塗料で印字された文字や、レーザ刻印により板状部材Qの表面から所定の深さで刻印された文字をいう。また、文字としては、立体文字Cにより表示されている事項の意味が、例えば作業者による目視により解読可能なものであればよく、ひらがなやアルファベットのほかに数字といったものが含まれる。
【0019】
本実施の形態で用いられる板状部材Qに形成された立体文字Cは、本実施の形態においては、例えばインクジェット方式により印字された数字である。そして、当該立体文字Cは、例えば図2及び図3に示すように、搬送方向Aに沿って板状部材Qの端面Qaから所定の距離Hだけ離れた文字領域M内に、搬送方向Aに直行する方向に沿って印字されている。なお、図3においては、4桁の数字を印字した状態を描図しているが、桁数は本実施の形態に限定されるものではなく任意に設定が可能である。
【0020】
ここで、文字情報認識装置1の説明に先立ち、立体文字Cを形成する方法について説明する。立体文字Cは、例えば図4に示すような、印字装置20を用いて形成される。印字装置20は、インクの滴下を行うノズル21と、板状部材Qに印字する文字である数字を入力する文字入力部22と、文字入力部22により入力された数字と、当該数字を印字する際の塗料の厚みとを対応付けた文字コードが格納される文字コード格納部23と、ノズル21の動作を制御するノズル制御部24を有している。
【0021】
文字コード格納部23に格納される文字コードは、図5に示すように、例えば立体文字Cの表す事項が数字の「0」の場合は100μm、数字の「1」の場合は150μmといったように、0〜9の数字と各数字を印字する際の塗料の厚みとが、100μm〜550μmの範囲において50μm単位で予め対応付けられたコード表である。そして、例えば文字入力部22により立体文字Cとして印字する文字列が「9184」と入力された場合、ノズル制御部24により入力された数字と文字コードとの比較が行われ、「9」の部分は550μm、「1」の部分は150μmと、各数字に対応する印字の厚みが選択される。そして、ノズル制御部24は、文字コードから選択された厚みで各数字の印字が行われるようにノズル21の制御を行い、板状部材Qの文字領域Mに、立体文字Cの表す事項である数字に対応した塗料の厚みで印字が行われ立体文字Cが形成される。ノズル21による印字の厚みの制御としては、例えばノズル21からの塗料の吐出量を変化させたり、ノズル21の走査速度を変化させたりといった方法で行われる。なお、ここで印字の際の単位を50μm刻みとしたのは、発明者らが実験により検証した結果、50μm以下とした場合は3次元計測部11の分解能との関係で、誤認識が増えるとの知見を得たためである。
【0022】
次に、本実施の形態に係る文字情報認識装置1の各部の構成について詳述する。搬送装置10は、例えば水平方向に連続して配置された複数のローラ30を有しており、駆動機構(図示せず)によりローラ30を回転させることにより、図1に示すように搬送方向Aに沿って板状部材Qを所定の速度で水平搬送することができる。ローラ30の上方には位置検出センサ31が設けられ、ローラ30により搬送される板状部材Qが、位置検出センサ31の直下に存在するか否かの検出が行われる。位置検出センサ31は、計測データ収集部12と電気的に接続され、位置検出センサ31による検出結果は計測データ収集部12を介して計算機13に入力される。なお、位置検出センサ31としては、ローラ30上を搬送される板状部材Qを検出できるものであればどのような形式のものを用いてもよく、例えば超音波センサ等の非接触式のものを用いてもよいし、リミットスイッチ等の接触式のものを用いてもよい。
【0023】
位置検出センサ31よりも搬送方向Aの上流側に位置するローラ30には、ローラ30による板状部材Qの搬送速度を検出する速度検出センサ32が設けられている。速度検出センサ32は、部材検出センサと同様に計測データ収集部12と電気的に接続されており、速度検出センサ32で取得されたデータは計測データ収集部12を介して計算機13に入力される。なお、速度検出センサ32としては、例えばロータリーエンコーダ等の電磁式センサを用いることができる。
【0024】
3次元計測部11は、例えば光切断法により物品の3次元形状を計測する計測部であり、物品に対してレーザ光Lを照射するレーザ光源40と、物品に照射されたレーザ光を撮像する撮像カメラ41とを有している。レーザ光源40は、例えばローラ30の上方であって、図3に示すように平面視において検出センサ31に対して搬送方向Aの下流側に、水平方向に対して所定の角度下向きに傾いた状態で配置されている。そしてレーザ光源40により、ローラ30により搬送される板状部材Qに対して斜め上方向から、板状部材Qの文字領域Mよりも幅広のレーザ光Lの照射が行われる。なお、レーザ光源40の配置は、位置検出センサ31により板状部材Qが検出されたときに、レーザ光Lの照射位置が文字領域Mの端部Ma近傍となるように調整されている。撮像カメラ41は、図3に示すように平面視においてレーザ光源40に対して搬送方向Aの上流側に配置され、レーザ光源40と同様に所定の角度下向きに傾いた状態で、板状部材Qに照射されたレーザ光Lの反射光の撮像を行う。撮像カメラ41としては、例えばCCDカメラなどを用いることができる。撮像カメラ41で撮像された画像データは、当該撮像カメラ41と通信ケーブルにより接続された計測データ収集部12を介して計算機13に入力される。
【0025】
計算機13は、図1に示すように計測データ入力部50、搬送制御部51、データ蓄積部52、画像加工部53、3次元情報抽出部54、文字コード格納部55、文字選択部56、文字認識部57、正誤判定部58及び表示部59を有しており、例えばパーソナルコンピュータなどを用いて構成することができる。
【0026】
計測データ入力部50は、例えばネットワークボードで構成され、通信ケーブルを介して計測データ収集部12で収集されたデータの計算機13への取り込みを行う機能を有している。
【0027】
搬送制御部51、画像加工部53、3次元情報抽出部54、文字選択部56、文字認識部57及び正誤判定部58は、例えばコンピュータプログラムからなるプログラムなどにより構成されている。
【0028】
搬送制御部51は、計測データ入力部50から入力される位置検出センサ31と速度検出センサ32の検出結果に基づいて搬送機構10の搬送速度等の制御を行う機能を有している。画像加工部53は、データ蓄積部52に蓄積された撮像カメラ41による画像データから、光切断法により立体文字Cの凹凸形状を表す3次元画像の生成を行う機能を有し、3次元情報抽出部54は、画像加工部53により生成された立体文字Cの凹凸データから、当該立体文字Cの高さ方向(図1のZ方向)の情報の抽出を行う機能を有している。文字選択部56は、3次元情報抽出部54により抽出された高さ情報に基づいて、文字コード格納部55に格納された文字コードから当該深さに対応する数字の選択を行う機能を有している。
【0029】
また、文字認識部57は、画像加工部53により生成された立体文字C立体文字Cの3次元画像をグレースケール化処理して2次元画像に変換し、2次元画像に変換された立体文字Cが表す事項をOCR(Optical Character Recognition)により文字として認識する機能を有している。正誤判定部58は、文字認識部57においてOCRにより認識された文字と、文字選択部56により選択された文字とを比較する機能を有している。そして、両者が一致する場合、文字認識の結果が良好と判断し、表示部59に認識された文字の表示を行う。不一致となった場合は、例えば文字選択部56と文字認識部57で認識された文字のうち、予め正誤判定部58で優先選択の設定がされているほうの文字が自動認識された文字として表示部59に表示される。その際、比較の結果が不一致であったことも併せて表示される。
【0030】
データ蓄積部52及び文字コード格納部55は、例えばハードディスクなどにより構成され、データ蓄積部52は、計測データ入力部50から入力されたデータの蓄積を行う機能を有している。文字コード格納部55は、印字装置20の文字コード格納部23に格納されるものと同一の文字コードを格納している。
【0031】
本実施の形態にかかる文字情報認識装置1は以上のように構成されており、次にこの文字情報認識装置1による、板状部材Qの立体文字Cの自動認識について説明する。
【0032】
自動認識の実施に先立ち、印字装置20により立体文字Cが印字された板状部材Qが搬送機構10のローラ30上に載置される。次いで、ローラ30上に載置された板状部材Qが搬送方向Aに沿って所定の速度で搬送され、3次元計測部11に接近してゆく(図6のステップS1)。
【0033】
板状部材Qが搬送方向Aに沿って搬送されると、板状部材Qが位置検出センサ31の下方を横切る際に、当該位置検出センサ31によりローラ30上の板状部材Qの端面Qaが検出される(図6のステップS2)。位置検出センサ31により板状部材Qの端面Qaが検出されると、搬送制御部51は、板状部材Q上に照射されるレーザ光Lの位置が文字領域Mの端部Ma近傍に到達したものとの認識し、予め搬送制御部51に設定された速度及びピッチでローラ30を動作させ、板状部材Qの搬送を1ピッチ単位で行う。その際、1ピッチ移動させる毎に撮像カメラ41により立体文字Cに照射されたレーザ光Lを撮像するように3次元計測部11とローラ30との同期制御を行う(図6のステップS3)。撮像カメラ41により1ピッチ毎に撮像された画像データは、逐次計測データ入力部50を介して計測データ蓄積部52に蓄積される(図6のステップS4)。
【0034】
そして、速度検出センサ32で検出される搬送速度のデータに基づき、搬送制御部51が、レーザ光Lの照射位置が文字領域Mから外れたと認識した時点で、ローラ30と3次元計測部11との同期制御が解除され(図6のステップS5)、再びローラ30は所定の搬送速度で板状部材Qの搬送が続けられる。
【0035】
上述の同期制御が解除されると、計測データ蓄積部42に蓄積された画像データは、画像加工部53により3次元画像化され、立体文字Cに表示された事項、即ち印字された数字が3次元画像として求められる(図6のステップS6)。次いで、3次元画像化されたデータのうち、立体文字Cの高さ方向(図1のZ方向正方向側)の全てのピーク値が、3次元情報抽出部54により抽出される(図6のステップS7)。この際、ピーク値のうち、上位下位の予め設定された個数の値はノイズ成分とみなして除去される。そして、ノイズ成分を除去した残りのピーク値の平均値が当該立体文字Cの印字の厚み、即ち立体文字Cの高さ方向の情報として求められる(図6のステップS8)。これにより、立体文字Cの印字が破損した箇所や汚れなどにより印字の厚みが文字コードに設定された値と一致しなくなった箇所をノイズとして除去することができる。なお、本実施の形態においては、立体文字Cによる文字列は「9184」と記されているため、それぞれ、550μm、150μm、550μm及び300μmとして高さ方向の情報が求まる。
【0036】
そして、3次元情報抽出部54により求められた立体文字Cの高さ方向の情報に基づき、文字選択部56が当該高さ方向の情報に対応する数字を文字コード格納部55の文字コードから選択し、立体文字Cが表す事項として認識する(図6のステップS9)。それと共に、文字認識部57により画像加工部53で生成された3次元画像がグレースケール化処理され、OCRにより別途文字認識が行われる(図6のステップS10)。
【0037】
その後、正誤判定部58により文字認識部57においてOCRにより認識された文字と、文字選択部56により選択した文字との一致が判定され(図6のステップS11)、判定結果が表示部59に表示される(図6のステップS12)。
【0038】
そして、作業員が表示部59に表示された判定結果を確認し、両者一致との判定結果であれば次の板状部材Sの識別作業に進み、両者が不一致との判定結果であれば、板状部材Qの立体文字Cが表す数字と表示部59に表示された数字とを相互確認し、最終的な判断を行うといった対応を行う。
【0039】
そして、最終的に作業員により確認が行われた板状部材Qが順次後工程に搬送され、この作業が繰り返し行われる。なお、正誤判定部58により両者が一致するとの判定がなされた場合は、作業員が確認を行うことなく、自動的に板状部材Qの搬送を行うようにしてもよい。
【0040】
以上の実施の形態によれば、識別対象物品である板状部材Qに立体的に形成された立体文字Cを3次元計測し、3次元計測により得られた立体文字Cの高さ方向の情報に基づき文字コードから立体文字Cの表す事項を選択するので、例えば板状部材Qの表面に発生した錆びなどにより立体文字Cの視認性が劣化した場合であっても、立体文字Cの表す事項を正確に文字として認識することができる。したがって、本発明の文字情報認識装置1は、板状部材Qの素材特性や外部環境に影響を受けることなく、高い信頼性で板状部材Qの自動識別を行うことができる。
【0041】
そして、立体文字Cは、当該立体文字Cの表す事項が、例えば作業員の目視によっても認識可能であるため、例えば立体文字Cが文字情報認識装置1において認識不良となった場合であっても、作業員が立体文字Cの目視確認を行うことで、直ちに物品の識別が可能となる。従って、例えばQRコードやドットなどの符号化された情報を用いた場合に付随する、作業員により符号化情報の復元を行うことの困難性といった問題点についても解消することができる。
【0042】
また、例えば特許文献1で提案されている、凹凸状のエンボスやデボスも符号化されたドット情報であるため、物品の汚れや破損によりドットの誤認識が発生する可能性が大きく、その場合ノイズ除去も困難であるが、本実施の形態で用いる立体文字Cは、連続した線からなる符号であるため、汚れや破損などによって文字の一部が欠損しても文字そのものが有する情報が全て失われるわけではない。したがって、欠損した部位をノイズとして除去しても、残りの情報から容易に本来の情報の復元を行うことができる。また、立体文字Cを用いる場合、例えば印字の線幅を太くすることにより、印字の部分に対するノイズの比率を相対的に小さくすることができる。従って、例えばエンボスやデボスを用いた際に起こるであろう、ビットの欠落や汚れなどによる誤認識を大幅に抑制することができる。
【0043】
さらに、以上の実施の形態においては、立体文字Cの高さ情報による文字認識に加えて、文字認識部57により、立体文字Cの3次元画像からOCRにより文字認識を行うので、文字選択部56と文字認識部57により、それぞれが異なる情報に基づいて文字認識を行うことができる。従って、立体文字Cの形状そのものが持つ情報と、立体文字Cの高さ方向の情報とにより情報の二重化が可能となり、自動認識における信頼性を更に向上させることができる。また、立体文字Cの識別用の記号としての信頼性も向上する。
【0044】
なお、以上の実施の形態では、正誤判定部58により文字選択部56と文字認識部57とによる文字の認識結果について正誤の判定を行っていたが、この正誤判定は必ずしも行う必要はない。また、例えば、図6におけるステップS9とステップS10に係る処理を行う順序も任意に設定が可能である。具体的には、例えば通常時は文字選択部56で選択された文字を表示部59に表示し、文字選択部56での認識が不良となった場合に文字認識部57での認識結果を表示部59に表示したり、或いは、通常時は文字認識部57で選択された文字を表示部59に表示し、文字認識部57での認識が不良となった場合に文字選択部56での認識結果を表示したりと、板状部材Qの材質や外部環境などを考慮して、正誤判定の方法や文字認識に用いる常用の優先順位付けを任意に行ってもよい。
【0045】
また、以上の実施の形態においては、例えば3次元計測部11により立体文字Cの認識を行っていたが、例えば図1に破線で示すように、3次元計測部11に加えて、他のCCDカメラ70と照明71をローラ20の上方に配置し、CCDカメラ70による撮像データをグレースケール化処理しOCRにより立体文字Cの文字認識をさらに行ってもよい。かかる場合、更に情報の多重化を行うことができ、物品識別の信頼性を更に向上させることができる。また、通常時は、3次元計測部11に比べ撮像に要する時間が短時間ですむCCDカメラ70による文字認識を優先的に行い、文字選択部56及び文字認識部57をCCDカメラ70による文字認識が不良となった際のバックアップとして用いることで、高い信頼性を維持しつつ、自動認識に要する時間を短縮することが可能である。
【0046】
以上の実施の形態においては、立体文字Cは立体的に印字された文字であったが、既述のとおりレーザ刻印などにより刻印された、深さ方向の情報を文字であってもよい。かかる場合も、レーザ刻印による刻印深さと刻印される文字とが対応付けられた文字コードに基づき刻印作業が行われ、文字コード格納部55にもレーザ刻印に用いられたものと同じ文字コードが格納される。なお、立体文字Cをレーザ刻印により形成した場合、例えば工場内での保管や搬送の際に板状部材Qが重ねられても、塗料のように剥がれたりすることがないので、そのような状況下で用いる場合は、印字により形成された立体文字Cよるものよりも高い信頼性を得ることができる。また、立体文字Cの形成される部位も、板状部材Qの上面に限らず、例えば板状部材の側端面Qbに形成されていてもよい。かかる場合、保管や搬送の際に板状部材Qが重ねて配置されても、立体文字Cは外部に露出した状態となるので、重ねて配置された状態でも、3次元計測部11の配置を適宜調整することで、立体文字Cの認識が可能となる。また、作業員が目視により確認することも当然可能である。
【0047】
なお、以上の実施の形態においては、識別の対象となる板状部材Qとして金属板を用いた場合について説明を行ったが、対象となる物品は金属板に限られるものではなく、例えばプラスチック板などであってもよい。また、物品の形状も板状に限られるものではなく、立体文字Cの形成された文字領域Mが例えば平坦状になっており、3次元計測部11により立体文字Cの凹凸形状が計測できる、即ち立体文字Cの高さ方向又は深さ方向の情報を取得できるものであれば、物品そのものが例えば球形等であっても文字情報認識装置1により物品の自動識別を行うことが可能である。
【0048】
また、以上の実施の形態においては立体文字Cのみを板状部材Qに形成していたが、立体文字Cの先頭の位置に、例えば上述の文字コードと同様に、図形と数字及び印字の高さ(或いは刻印の深さ)とが対応付けられた図7に示すようなコード表に基づいたチェックディジットが付されていてもよい。図8に示すように、板状部材Qに更にチェックディジットを用いることで、例えば文字認識が不良となった場合や、文字認識部56の選択した文字と文字認識部57が認識した文字とが一致しない場合などに、チェックディジットに対応する数字をコード表から取得し、当該取得された数字を用いて、いずれの数字が正しいかを判定することができるので、作業員の目視に頼ることなく認識された文字の補正を行うことが可能となる。なお、チェックディジットを図形としたのは、作業員が目視を行う際に、数字と混同しないためである。かかる場合、文字認識の過程で人が介在しないことによりヒューマンエラーによる誤認識を防止することができる。
【0049】
以上の実施の形態では、立体文字Cとして数字を印字した場合を参照して説明したが、既述のとおり立体文字Cとして表示される事項はアルファベットなどでもよい。なお、例えばアルファベットを用いた場合、印字の単位を数字の場合と同様に50μm単位で行い、「A」を100μmで表すとすると、例えば「Z」を表す際には印字のための塗料の厚みが1400μm必要となり、印字に時間を要してしまうことが考えられる。したがって、この場合は、例えば図9に示すように、アルファベットの「A」に対応する数字を「01」、「B」に対応する数字を「02」にといったように、アルファベットのA〜Zを一旦二桁の数字に対応付け、対応付けた数字を一桁目と二桁目とに分割し、分割された数字の夫々に印字の厚みをさらに対応させるようにした文字コードを、図5の文字コードに代えて文字コード格納部55に格納して使用することが好ましい。具体的には、図9に示す文字コードを用いる場合、例えば図10及び図11に示すように、立体文字Cそのものを上下又は左右の領域Ca、Cbに2分割し、図9に示す文字コードのアルファベットの一桁目に対応する数字により領域Caの部分の印字の厚みを決定し、二桁目の数字により領域Cbの部分の印字の厚みを決定する。なお、図10及び図11は、板状部材Qに印字する立体文字Cの文字列を「AKSX」とし、立体文字Cを夫々左右に分割して領域Ca、Cbとした場合を示しており、図10の例えば立体文字Cとして「A」と記載している部位においては、図11に示すように、領域Caの部分を数字の「0」に対応する厚みの100μmで、領域Cbの部分を数字の「1」に対応する厚みの150μmで印字が行われている。
【0050】
図9に示す文字コードを用いた場合においても、立体文字Cの自動認識の方法は図5に示す文字コードを用いた場合と同様であり、3次元計測部11及び計算機13により立体文字Cの自動認識が行われる。そして、アルファベットの「A」の部分の厚みが領域Caにおいて100μm、領域Cbにおいて150μmと立体文字Cの高さ方向の情報が求められると、文字選択部56が図9に示す文字コードを格納した文字コード格納部55から100μmと150μmに対応する数字「01」を選択し、さらに「01」に対応する「A」を立体文字Cが表す事項として認識する。こうすることで、立体文字Cとして数字を印字した場合と同様に、100μm〜550μmの範囲の塗料の厚みで、即ち印字の際の塗料厚みの増加を抑えつつ、アルファベットなどの文字を表すことができる。なお、立体文字Cを刻印により形成する場合も、当然ながら、印字の場合と同様に図9の文字コードを用いることができる。また、チェックディジットとして、例えばバーコードで用いられるモジュラス16やモジュラス43のように、二桁の数字を一つのキャラクタにより表示するものを用いる場合にも、チェックディジットを領域Ca及び領域Cbに分割して表すことで、塗料の厚みを及び刻印の深さを増加させることなく表示することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、物品の自動識別を行う際に有用である。
【符号の説明】
【0052】
1 文字情報認識装置
10 搬送機構
11 3次元計測部11
12 計測データ収集部
13 計算機
20 印字装置
21 ノズル
22 文字入力部
23 文字コード格納部
30 ローラ
31 位置検出センサ
32 速度検出センサ
40 レーザ光源
41 撮像カメラ
50 計測データ入力部
51 搬送制御部
52 データ蓄積部
53 画像加工部
54 3次元情報抽出部
55 文字コード格納部
56 文字選択部
57 文字認識部
58 正誤判定部
59 表示部
70 CCDカメラ
71 照明
Q 板状部材
Qa 板状部材の端面
Qb 板状部材の側端面
H 距離
L レーザ光
C 立体文字
M 文字領域
Ma 文字領域の端部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の外表面に立体的に形成された立体文字を認識する方法であって、
前記立体文字の凹凸を3次元計測し、
前記3次元計測により得られた前記立体文字の凹凸データから、前記物品の外表面からの当該立体文字の高さ又は深さ方向の情報を抽出し、
前記立体文字の高さ又は深さ方向の情報と前記立体文字が表す事項とが予め対応付けられた文字コードと、前記凹凸データから抽出された前記立体文字の高さ又は深さ方向の情報とを比較し、
前記文字コードから、前記凹凸データから抽出された高さ又は深さ方向の情報に対応する事項を選択し、
当該選択された事項を前記物品に形成された立体文字が表す事項として認識することを特徴とする、文字情報認識方法。
【請求項2】
前記3次元計測により得られた前記立体文字の凹凸データをグレースケール化処理により2次元画像化し、
当該2次元画像に基づいて前記立体文字の表す事項を認識し、
当該認識された事項と、前記文字コードから選択された事項とを比較して正誤判定を行うことを特徴とする、請求項1に記載の文字情報認識方法。
【請求項3】
前記立体文字が表す事項は、数字であることを特徴とする、請求項2に記載の文字情報認識方法。
【請求項4】
前記物品の外表面には所定の数字と対応付けられた高さ又は深さで立体的に形成されたチェックディジットが設けられ、
前記チェックディジットの凹凸を3次元計測して当該チェックディジットに対応する数字を取得し、
前記2次元画像に基づいて判別された数字と、前記文字コードに基づき割り当てられた数字とが異なる場合は、前記チェックディジットから取得された数字を用いて、いずれの数字が正しいかを判定することを特徴とする、請求項3に記載の文字情報認識方法。
【請求項5】
前記物品は板状の部材であり、
前記立体文字は、前記板状の部材の側端面に形成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の文字情報認識方法。
【請求項6】
物品の外表面に立体的に形成された立体文字を自動認識する文字情報認識装置であって、
前記立体文字の凹凸を3次元計測する3次元計測部と、
前記3次元計測により得られた前記立体文字の凹凸データから高さ又は深さ方向の情報を抽出する3次元情報抽出部と、
前記立体文字との高さ又は深さ方向の情報と前記立体文字が表す文字とが予め対応付けられた文字コードを格納する、文字コード格納部と、
前記文字コード記憶部に格納された文字コードと、前記3次元情報抽出部で抽出された高さ又は深さ方向の情報とを比較し、前記文字コードの文字から、3次元情報抽出部で抽出された高さ又は深さ方向の情報に対応する文字を選択し、選択された文字を、前記物品に形成された立体文字が表す文字として認識する文字選択部と、を有することを特徴とする、文字情報認識装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−123707(P2011−123707A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281310(P2009−281310)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】