説明

断熱内装材の製造方法

【課題】内挿された断熱基材の形状に起因して、断熱基材を包囲するシート材にシワが生じることを抑制した断熱内装材の製造方法を提供する
【解決手段】非通気性の第1シート材11及び非通気性の第2シート材12によって包囲された密閉空間14内に断熱基材13が配されてなる断熱内装材1の製造方法であって、断熱基材13を成形する工程PR1と、第1シート材11を断熱基材13の一面13aの形状に沿った部位を備えた形状に成形する工程PR2と、第2シート材12を断熱基材13の前記一面と反対側の他面13bの形状に沿った部位を備えた形状に成形する工程PR3と、断熱基材13を第1シート材11及び第2シート材12で挟みこんで、各シート材に挟まれてなる空間内を減圧する工程PR4と、各シート材の端縁部を溶着する工程PR5と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱内装材の製造方法に関する。更に詳しくは、第1シート材及び第2シート材によって包囲された密閉空間内に断熱基材が配されてなる断熱内装材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車内温度管理等の目的で、自動車等の内装材の一種として断熱材が用いられている。この断熱材としては、下記特許文献1に開示された天井内装材が知られている(特許文献1の図3〜図8等参照)。この特許文献1の天井内装材は、意匠面側から、保形性を有する発泡シート材、開繊された繊維の集合体、フィルム材を、型上に順次積層した後、真空引きして成形される。そして、この天井内装材では、発泡シート材が、天井内装材全体の保形性を担保しつつ、天井内装材に内包される繊維の凹凸形状が発泡シート材側の意匠面に現れることを防止するという、2つの機能を併せて有することで優れた機能を発揮している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−143274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この天井内装材のなかで発泡シート材は、重量及び厚み等の観点において大きな割合を占める。そこで、本発明者らは、この発泡シート材を廃しつつ、発泡シート材が担っている機能を他部材へ転科した断熱内装材を検討し、昨今のより一層の軽量化及び薄厚化の要求に対応することを試みた。
そして、上記天井内装材のなかでも、開繊された繊維の集合体に換えて、保形性を有する未成形基材(一般的な内装基材)を利用することで、上記発泡シート材を用いなくとも、天井内装材と同様に優れた性能を有する断熱内装材が得られることが分かった。即ち、保形性を有する未成形基材を、フィルムなどの保形性を有しない非通気性のシート材で挟んだ後、真空引きしてなる積層体を、更に成形してなる断熱内装材である。しかし、この方法で得られた断熱内装材では、真空引きして得られた積層体を成形する際に、内包された基材の変形に対して、その表面を構成する非通気性のシート材が十分に追従されず、非通気性のシート材にシワを生じ、更には、シワに起因したピンホールの発生により、断熱内装材の内部気密を維持することが困難になるという問題もあることが分かった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、第1シート材及び第2シート材によって包囲された密閉空間内に断熱基材が配されてなる断熱内装材において、内挿された断熱基材の形状に起因して、断熱基材を包囲するシート材にシワが生じることを抑制した断熱内装材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の断熱内装材の製造方法は、非通気性の第1シート材及び非通気性の第2シート材によって包囲された密閉空間内に断熱基材が配されてなる断熱内装材の製造方法であって、
前記断熱基材を所定形状に成形する断熱基材成形工程と、
前記第1シート材を、前記所定形状に成形された前記断熱基材の一面の形状に沿った部位を備えた形状に成形する第1シート材成形工程と、
前記第2シート材を、前記所定形状に成形された前記断熱基材の前記一面と反対側の他面の形状に沿った部位を備えた形状に成形する第2シート材成形工程と、
成形された前記断熱基材を、成形された前記第1シート材及び成形された前記第2シート材により挟みこみ、前記第1シート材及び前記第2シート材によって挟まれてなる空間内を減圧する減圧工程と、
前記第1シート材及び前記第2シート材の端縁部を溶着する端縁部溶着工程と、を備えることを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の断熱内装材の製造方法は、請求項1において、前記第1シート材成形工程が、前記所定形状に成形された前記断熱基材の一面の形状に沿った部位を備えた型に、前記第1シート材を吸着させることによって、前記第1シート材を成形する工程であることを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の断熱内装材の製造方法は、請求項1又は2において、前記第2シート材成形工程が、前記所定形状に成形された前記断熱基材の他面の形状に沿った部位を備えた型に、前記第2シート材を吸着させることによって、前記第2シート材を成形する工程であることを要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の断熱内装材の製造方法は、請求項2において、前記第1シート材成形工程に用いられる前記型は、前記端縁部を溶着するための加熱ヒータを有することを要旨とする。
【0010】
請求項5に記載の断熱内装材の製造方法は、請求項3において、前記第2シート材成形工程に用いられる前記型は、前記端縁部を溶着するための加熱ヒータを有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の断熱内装材の製造方法によれば、各シート材の成形工程(第1シート材成形工程及び第2シート材成形工程)を備えることにより、シート材を予め断熱基材の各面に対応した形状に成形でき、減圧工程において、断熱基材の各面に対して各シート材を十分に追従させることができる。その結果、各シート材にシワを生じることを抑制できる。
【0012】
第1シート材成形工程が、所定形状に成形された断熱基材の一面の形状に沿った部位を備えた型に、第1シート材を吸着させることによって、第1シート材を成形する工程である場合には、第1シート材を、断熱基材の一面の形状に沿った部位を備えた形状に容易に成形することができる。
第2シート材成形工程が、所定形状に成形された断熱基材の他面の形状に沿った部位を備えた型に、第2シート材を吸着させることによって、第2シート材を成形する工程である場合には、第2シート材を、断熱基材の他面の形状に沿った部位を備えた形状に容易に成形することができる。
【0013】
第1シート材成形工程に用いられる型に、端縁部を溶着するための加熱ヒータを有する場合には、端縁部を溶着するための専用型を用いることなく、第1シート材成形工程に用いられる型より、端縁部の溶着を行うことができる。
第2シート材成形工程に用いられる型に、端縁部を溶着するための加熱ヒータを有する場合には、端縁部を溶着するための専用型を用いることなく、第2シート材成形工程に用いられる型より、端縁部の溶着を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】本発明に係る断熱内装材の概略を示す断面図である。
【図2】本方法における断熱基材成形工程を説明する説明図である。
【図3】本方法における第1シート材成形工程を説明する説明図である。
【図4】本方法における第2シート材成形工程を説明する説明図である。
【図5】本方法における減圧工程を説明する説明図である。
【図6】本方法における端縁部溶着工程を説明する説明図である。
【図7】本方法における減圧工程に係る吸引口を説明する説明図である。
【図8】断熱内装材の一例の配設例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0016】
本発明の断熱内装材の製造方法は、非通気性の第1シート材11及び非通気性の第2シート材12によって包囲された密閉空間14内に断熱基材13が配されてなる断熱内装材1の製造方法であって、
前記断熱基材13を所定形状に成形する断熱基材成形工程PR1と、
前記第1シート材11を、前記所定形状に成形された前記断熱基材13の一面13aの形状に沿った部位を備えた形状に成形する第1シート材成形工程PR2と、
前記第2シート材12を、前記所定形状に成形された前記断熱基材13の前記一面と反対側の他面13bの形状に沿った部位を備えた形状に成形する第2シート材成形工程PR3と、
成形された前記断熱基材13を、成形された前記第1シート材11及び成形された前記第2シート材12により挟みこみ、前記第1シート材11及び前記第2シート材12によって挟まれてなる空間内を減圧する減圧工程PR4と、
前記第1シート材11及び前記第2シート材12の端縁部18(118,128)を溶着する端縁部溶着工程PR5と、を備えることを特徴とする。
【0017】
[1]断熱内装材
以下、まず本方法により製造される断熱内装材について説明する(図1参照)。
「断熱内装材(1)」は、第1シート材11、第2シート材12及び断熱基材13を備える。また、この断熱内装材1は、第1シート材11及び第2シート材12によって包囲された密閉空間14を備えており、いわゆる真空断熱構造を有する真空断熱内装材である。
この断熱内装材1は、例えば、第1シート材11、断熱基材13、第2シート材12及び表皮層15(断熱内装材において意匠面を構成する表面層)を備えて、自動車のルーフパネル3(金属パネル)の車内側に配設される、断熱性を有するルーフトリム(車内の乗員側に配置された意匠面を備える内装材)として利用できる(図8参照)。更に、同様な構成を備えて、断熱性を有する自動車の、ドアトリム、ピラーガーニッシュ、デッキボード、パッケージトレイなどとして利用できる。
【0018】
上記「第1シート材(11)」は、非通気性のシート材であり、第2シート材12と共に、密閉空間14の気密を保持する部材である。この第1シート11は、非通気性、即ち、ガスバリア性を有すればよく、その他の特性及び構成については特に限定されない。この第1シート材11は、1層のみからなってもよく2層以上から構成されてもよい。1層のみからなる場合には、例えば、下記ガスバリア層のみからなる第1シート材11が挙げられるが、この第1シート材11は、2層以上から構成されることが好ましい。2層以上から構成される場合、各層としては、ガスバリア層、赤外線反射層、制振層(吸音層)、防護層、及び溶着層等を備えることができる。通常、これらの層のうち、ガスバリア層を備え、その他、ガスバリア層以外の層を1層又は2層以上備えることができる。
尚、上記ガスバリア層、赤外線反射層、制振層(吸音層)、防護層、溶着層等は、これらの2層以上の機能を1層のみにより備えてもよい。即ち、例えば、ガスバリア能及び赤外線反射能を併せ有するガスバリア層、赤外線反射能及びガスバリア能を併せ有する赤外線反射層等も含まれる。
【0019】
上記ガスバリア層は、非通気性(即ち、ガスバリア性)を確保するための層である。このガスバリア層は1層のみを備えてもよく、2層以上のガスバリア層を備えてもよい。2層以上のガスバリア層を備える場合には、隣接層として配置されてもよく、他層を介して配置されてもよい。
また、ガスバリア層の構成は特に限定されないが、例えば、ガスバリア特性を有する樹脂からなる樹脂ガスバリア層や、金属層とこれを支持する支持層とを備えた複合ガスバリア層等を用いることができる。樹脂ガスバリア層を構成する樹脂としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のガスバリア特性を有する樹脂が挙げられる。これらの樹脂は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
尚、上記エチレン−ビニルアルコール共重合体のエチレン含有量、ケン化度及び重合度は特に限定されないが、通常、エチレン含有量は60モル%以下(更には25〜55モル%)、ケン化度は90モル%以上(更には99〜100モル%)である。また、以下で言及するエチレン−ビニルアルコール共重合体についても同様である。
【0020】
更に、複合ガスバリア層のうち、金属層としては、蒸着金属又は金属箔等を用いることができる。金属層を構成する金属としては、アルミ、銅、鉄、ステンレス、ニッケル、金、銀及びこれらのうちのうちの2種以上を含む合金等が挙げられる。また、複合ガスバリア層のうち、支持層としては、各種樹脂からなる層を用いることができる。支持層を構成する樹脂としては、ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)などの樹脂が挙げられる。これらの樹脂は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。この複合ガスバリア層は、ガスバリア性に加えて、後述する赤外線反射能をも発揮できる。
ガスバリア層の厚さは、特に限定されないが、例えば、1〜50μmとすることができ、5〜40μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。
【0021】
上記赤外線反射層は、一面側から他面側へ赤外線が透過することを抑制するとともに、一面側又は他面側に照射された赤外線を反射する能力を有する層である。この赤外線反射層を備える場合には、これを備えない場合に比べて、本断熱内装材の断熱作用を更に向上させることができる。この赤外線反射層は1層のみを備えてもよく、2層以上の赤外線反射層を備えてもよい。2層以上の赤外線反射層を備える場合には、隣接層として配置されてもよく、他層を介して配置されてもよい。
赤外線反射層としては、上述のように、複合ガスバリア層と同様の構成のものを用いることができる。即ち、金属層とこれを支持する支持層とを備えた複合赤外線反射層を用いることができる。複合赤外線反射層のうち、金属層としては、蒸着金属又は金属箔等を用いることができる。金属層を構成する金属としては、アルミ、銅、鉄、ステンレス、ニッケル、金、銀及びこれらのうちのうちの2種以上を含む合金等が挙げられる。また、複合赤外線反射層のうち、支持層としては、各種樹脂からなる層を用いることができる。支持層を構成する樹脂としては、ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)などの樹脂が挙げられる。これらの樹脂は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
赤外線反射層の厚さは、特に限定されないが、例えば、1〜50μmとすることができ、5〜40μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。
【0022】
制振層は、振動を吸収したり、減衰したりする作用を有する層である。制振層を備えることにより、より高い遮音性を得ることができる。制振層としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ABS樹脂、エラストマー、ゴム等を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。制振層の厚さは、特に限定されないが、例えば、10〜1000μmとすることができ、100〜1000μmが好ましく、200〜1000μmがより好ましい。
【0023】
上記防護層は、例えば、ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート(PC)などの高強度樹脂から形成された層である。防護層を備える場合には、外部からの傷付き等から断熱内装材を防護する機能が発揮されて、密閉空間14の密閉をより効果的に長期間にわたって維持することができる。防護層の厚さは特に限定されないが、例えば、10〜50μmとすることができ、15〜40μmが好ましく、15〜30μmがより好ましい。
【0024】
溶着層は、加熱により溶融されて溶着層同士で溶着できる層である。この層は、通常、熱可塑性樹脂からなる。このような熱可塑性樹脂の種類は特に限定されないが、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、熱可塑性エラストマーなどを用いることができる。これらの樹脂は、1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。熱溶着層の厚さは特に限定されないが、例えば、10〜100μmとすることができ、30〜100μmが好ましく、30〜50μmがより好ましい。
【0025】
ガスバリア層、赤外線反射層、制振層、防護層及び溶着層等の各種機能層は、どのような順で備えられてもよいが、これらのなかでは、通常、ガスバリア層及び赤外線反射層は、第1シート材11内において、より外側に配置されることが好ましく、特に第1シート材11の表面を構成することが好ましい。一方、溶着層は、通常、最も内側(第2シート材12に近い側)の層として備えられることが好ましい。
また、第1シート材11の全体厚さは、特に限定されないが、例えば、30〜2000μmとすることができ、30〜1000μmが好ましく、50〜500μmがより好ましく、50〜100μmが更に好ましい。
【0026】
上記「第2シート材(12)」は、非通気性のシート材であり、第1シート材11と共に、密閉空間14の気密を保持する部材である。この第2シート12は、非通気性、即ち、ガスバリア性を有すればよく、その他の特性及び構成については特に限定されない。この第2シート材12は、1層のみからなってもよく2層以上から構成されてもよい。1層のみからなる場合には、例えば、上記ガスバリア層のみからなる第2シート材12が挙げられるが、この第2シート材12は、2層以上から構成されることが好ましい。2層以上から構成される場合、各層としては、ガスバリア層、赤外線反射層、制振層(吸音層)、防護層、及び溶着層等を備えることができる。通常、これらの層のうち、ガスバリア層を備え、その他、ガスバリア層以外の層を1層又は2層以上備えることができる。これらの第2シート材12を構成できる各層については、上記第1シート材11における各層についての各々の説明が適用される。
【0027】
尚、上記ガスバリア層、赤外線反射層、制振層(吸音層)、防護層、溶着層等は、第1シート材11におけると同様に、第2シート材12においても、これらの2層以上の機能を1層のみにより備えてもよい。即ち、例えば、ガスバリア能及び赤外線反射能を併せ有するガスバリア層、赤外線反射能及びガスバリア能を併せ有する赤外線反射層等も含まれる。
更に、第1シート材11と第2シート材12とは異なる部材であってもよく、また、連続した一枚のシート材であってもよい。
【0028】
上記「断熱基材(13)」は、第1シート材11及び第2シート材12によって包囲された密閉空間14内に配された基材である。この断熱基材13の特性は特に限定されないが、通常、通気性を有するものである。通気性を有することによって、減圧工程PR4において減圧を行う際に、スムーズに気体を吸引除去できるとともに、減圧工程PR4において密閉空間14内をより低い圧力状態にし易い。更に、通常、保形性を有するものである。断熱基材13が保形性を有することにより、減圧工程PR4において、断熱基材13が変形することなく、各シート材を良好に追従させることができる。
【0029】
通気性を有する断熱基材13としては、樹脂バインダにより繊維を集積した繊維集積物を圧縮した繊維圧縮物を用いることができる。この繊維圧縮物に用いる繊維は、有機繊維であってもよく、無機繊維であってもよく、更には、これらの併用物であってもよい。有機繊維としては、各種樹脂から紡糸により得られる合成繊維、植物及び動物等から得られる天然繊維が挙げられ、これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。また、無機繊維としては、ガラス繊維、アルミナ繊維、及びシリカ繊維などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0030】
上記の各種繊維のうち、合成繊維としては、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等を用いて紡糸された繊維が挙げられ、なかでも、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂から紡糸された繊維が好ましい。このうち、ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。また、ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これら合成繊維は、樹脂バインダとして機能させることもできる。
また、上記植物から得られる繊維(植物性繊維)としては、木材等を解繊して得た繊維、ケナフ等の植物の靭皮から採取した繊維などが挙げられる。
更に、上記樹脂バインダとしては、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等を用いることができる。なかでも、ポリオレフィン樹脂が好ましい。
【0031】
上記「密閉空間(14)」は、第1シート材11及び第2シート材12によって包囲されて気密に保たれた空間である。また、この密閉空間14は、気密に保たれるとともに、通常、減圧状態に維持されている。この密閉空間14内の圧力状態は特に限定されないが、例えば、10〜200Pa、とすることができ、10〜50Paが好ましく、10〜20Paがより好ましい。尚、この密閉空間14は、実質的に、断熱基材13等の内挿物によって充足されていてもよい。
【0032】
断熱内装材1は、第1シート材11、第2シート材12及び断熱基材13以外に、他の構成を備えることができる。他の構成としては、表皮層(意匠層)、吸音フェルト層、及び赤外線吸収層等が挙げられる。これらの他の構成は、1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
このうち、表皮層(意匠層)は、断熱内装材1の意匠層を構成する。即ち、内装材として配設された場所において、視認される表面をなす層である。このような表皮層は、第1シート材11側に積層されてもよく、第2シート材12側に積層されてもよい。
また、吸音フェルトは、吸音材として、例えば、断熱内装材1の第1シート材11側に、更に積層してもよく、断熱内装材1の第2シート材12側に、更に積層してもよい。また、第1シート材11側が車室内側(意匠面側)、且つ、第2シート材12側が車室外側(裏面側)に配設されるとともに、第1シート材11の車室内側に表皮層が積層された断熱内装材1である場合、吸音フェルトは、表皮層と第1シート材11との間、第2シート材12の車室外側、などに積層できる。
更に、赤外線吸収層としては、上記各シート材を構成する赤外線吸収層をそのまま利用することができる。
【0033】
[2]断熱内装材の製造方法
「断熱基材成形工程(PR1)」(図2参照)は、断熱基材13を所定形状に成形する工程である。本方法では、この断熱基材13が、断熱基材成形工程PR1において、予め成形される。これにより、断熱基材13となる成形前の基材(以下、単に「前駆体」ともいう、但し、煩雑なため断熱基材と同じ符号13を用いる)が、第1シート材11及び第2シート材12に挟まれた後に成形される場合に比べて、各シート材にシワを生じることが効果的に抑制される。
【0034】
この断熱基材13の成形方法は特に限定されず、どのように成形してもよい。即ち、例えば、前駆体(例えば、繊維圧縮物)を加熱成形して賦形することができる。即ち、例えば、断熱基材成形用型(61及び62)外で前駆体を予熱した後に、プレス機(断熱基材成形用上型61及び断熱基材成形用下型62を備える)にセットして加圧して成形することができる。また、加熱を行うことができるプレス機に、前駆体をセットして加圧及び加熱を行って成形することができる。更には、加熱時には乾燥状態で加熱をしてもよいが、蒸気をあてる等の加湿を行うこともできる。
【0035】
「第1シート材成形工程(PR2)」(図3参照)は、第1シート材11を、所定形状に成形された断熱基材13の一面13aの形状に沿った部位を備えた形状に成形する工程である。断熱基材成形工程PR1を備えることに加えて、更に、第1シート材成形工程PR2を備えることで、予め、第1シート材11の形状を断熱基材の一面13aの形状に沿うように成形できる。これにより、減圧工程PR4において、第1シート材11が断熱基材13の一面に対して追従する距離が減り、無理なく第1シート材11を断熱基材13の一面13aの形状に追従させることができ、第1シート材11におけるシワの発生を効果的に抑制できる。
【0036】
尚、一面13aの形状に沿った部位を備えた形状とは、第1シート材11が、断熱基材13の一面13aに沿った部分を少なくとも一部有すればよいことを意味する。換言すれば、第1シート材11は、成形後に、断熱基材13の一面13aに沿っていない部分を有してもよい。断熱基材13の一面13aに沿っていない部分としては、例えば、第1シート材11が第2シート材12と溶着される際に必要とする端縁部118が挙げられる。この端縁部118は、断熱基材13を覆って、断熱基材13の端縁部よりも、外側に配置されるため、端縁部118においては、第1シート材11は、断熱基材13の一面13aの形状には沿わない形状となる。
【0037】
また、第1シート材成形工程PR2は、所定形状に成形された断熱基材13の一面13aの形状に沿った部位を備えた型21に、第1シート材11を吸着させることによって、第1シート材11を成形する工程であることが好ましい。即ち、上記成形は、断熱基材13の一面13aの形状に沿った部位を備えた型21を用いて行うことが好ましく、更に、型21は吸引により第1シート材11を吸着できる型(以下、単に「吸着型」ともいう)であることが好ましい。従って、型21は、図3に例示されるように吸引孔212を備えることができる。
第1シート材成形工程PR2は、第1シート材11のみを成形するための専用型を用いることもできるが、型21が吸着型であるとともに、一面13aの形状に沿った部位を備えることにより、吸着型の表面に第1シート材11を吸着させることで、第1シート材11の成形を迅速且つ簡便に行うことができる。このため、工程数少なく且つ簡単な設備で第1シート材11の成形を行うことができる。
【0038】
尚、第1シート材成形工程PR2において、吸着型を用いる場合には、第1シート材11を吸着型へ吸着させる前に、第1シート材11を加熱し、第1シート材11の可とう性を向上させておくことができる。即ち、第1シート材成形工程PR2前に、第1シート材11を予備加熱する第1シート材予備加熱工程を備えることができる。
【0039】
更に、第1シート材11の端縁部118と、第2シート材12の端縁部128と、の両端縁部18を溶着する工程である後述する端縁部溶着工程PR5において、このうちの少なくとも第1シート材11の端縁部118を溶着可能に加熱するための加熱ヒータ211を型21に備えることができる。
型21が加熱ヒータ211を備えることにより、第1シート材成形工程PR2から、端縁部溶着工程PR5までの工程を、型21を用いて一貫して行うことができる。従って、各工程に特化した個別の型を用いる必要がなく、第1シート材11を型間で移動させる必要がなく、少ない工程数で、より簡便な設備で断熱内装材1の製造を行うことができる。
【0040】
また、この第1シート材成形工程PR2は、断熱基材成形工程PR1の後に行ってもよく、断熱基材成形工程PR1の前に行ってもよい。更に、この第1シート材成形工程PR2は、第2シート材成形工程PR3の前に行ってもよく、第2シート材成形工程PR3と同時に行ってもよく、第2シート材成形工程PR3の後に行ってもよい。これは、結果的に、第1シート材11、第2シート材12及び断熱基材13が全て成形された状態で、減圧工程PR4が行われれば、シート材にシワを生じることを抑制するという目的を達することができるからである。
尚、第1シート材成形工程PR2を、断熱基材成形工程PR1の前に行う場合とは、予め成形される形状が分かっている断熱基材13の一面13aの形状に沿った部位を備えるように第1シート材11を成形することである。
【0041】
「第2シート材成形工程(PR3)」(図4参照)は、第2シート材12を、所定形状に成形された断熱基材13の他面13bの形状に沿った部位を備えた形状に成形する工程である。断熱基材成形工程PR1を備えることに加えて、更に、第2シート材成形工程PR3を備えることで、予め、第2シート材12の形状を断熱基材の他面13bの形状に沿うように成形できる。これにより、減圧工程PR4において、第2シート材12が断熱基材13の他面に対して追従する距離が減り、無理なく第2シート材12を断熱基材13の他面13bの形状に追従させることができ、第2シート材12におけるシワの発生を効果的に抑制できる。
【0042】
尚、他面13bの形状に沿った部位を備えた形状とは、第2シート材12が、断熱基材13の他面13bに沿った部分を少なくとも一部有すればよいことを意味する。換言すれば、第2シート材12は、成形後に、断熱基材13の他面13bに沿っていない部分を有してもよい。断熱基材13の他面13bに沿っていない部分としては、例えば、第2シート材12が第1シート材11と溶着される際に必要とする端縁部128が挙げられる。この端縁部128は、断熱基材13を覆って、断熱基材13の端縁部よりも、外側に配置されるため、端縁部128においては、第2シート材12は、断熱基材13の他面13bの形状には沿わない形状となる。
【0043】
また、第2シート材成形工程PR3は、所定形状に成形された断熱基材13の他面13bの形状に沿った部位を備えた型22に、第2シート材12を吸着させることによって、第2シート材12を成形する工程であることが好ましい。即ち、上記成形は、断熱基材13の他面13bの形状に沿った部位を備えた型22を用いて行うことが好ましく、更に、型22は吸着により第2シート材12を吸着できる吸着型であることが好ましい。更に、型22は吸引により第2シート材12を吸着できる吸着型であることが好ましい。従って、型22は、図4に例示されるように吸引孔222を備えることができる。
第2シート材成形工程PR3は、第2シート材12のみを成形するための専用型を用いることもできるが、型22が吸着型であるとともに、他面13bの形状に沿った部位を備えることにより、第2シート材12を吸着型の表面に、第2シート材12を吸着させることで、第2シート材12の成形を迅速且つ簡便に行うことができる。このため、工程数少なく且つ簡便な設備で第2シート材12の成形を行うことができる。
【0044】
尚、第2シート材成形工程PR3において、吸着型を用いる場合には、第2シート材12を吸着型へ吸着させる前に、第2シート材12を加熱し、第2シート材12の可とう性を向上させておくことができる。即ち、第2シート材成形工程PR3前に、第2シート材12を予備加熱する第2シート材予備加熱工程を備えることができる。
【0045】
更に、端縁部溶着工程PR5において、このうちの少なくとも第2シート材12の端縁部128を溶着可能に加熱するための加熱ヒータ221を型22に備えることができる。
型22が加熱ヒータ221を備えることにより、第2シート材成形工程PR3から、端縁部溶着工程PR5までの工程を、型22を用いて一貫して行うことができる。従って、各工程に特化した個別の型を用いる必要がなく、第2シート材12を型間で移動させる必要がなく、少ない工程数で、より簡便な設備で断熱内装材1の製造を行うことができる。
更に、第1シート材11の成形を行う型21が加熱ヒータ211を備えるとともに、第2シート材12の成形を行う型22が加熱ヒータ221を備える場合には、第1シート材成形工程PR2から、端縁部溶着工程PR5までの工程を、これらの型21及び型22を用いて一貫して行うことができ、とりわけ、効率よく断熱内装材1の製造を行うことができる。
【0046】
また、この第2シート材成形工程PR3は、断熱基材成形工程PR1の後に行ってもよく、断熱基材成形工程PR1の前に行ってもよい。更に、この第2シート材成形工程PR3は、第1シート材成形工程PR2の前に行ってもよく、第1シート材成形工程PR2と同時に行ってもよく、第1シート材成形工程PR2の後に行ってもよい。これは、結果的に、第1シート材11、第2シート材12及び断熱基材13が全て成形された状態で、減圧工程PR4が行われれば、シート材にシワを生じることを抑制するという目的を達することができるからである。
尚、第2シート材成形工程PR3を、断熱基材成形工程PR1の前に行う場合とは、予め成形される形状が分かっている断熱基材13の他面13bの形状に沿った部位を備えるように第2シート材12を成形することである。
【0047】
「減圧工程(PR4)」(図5参照)は、成形された断熱基材13を、成形された第1シート材11及び成形された第2シート材12により挟みこみ、第1シート材11及び第2シート材12によって挟まれてなる空間内を減圧する工程である。この工程において減圧は、第1シート材11及び第2シート材12によって挟まれてなる空間内が結果的に減圧されればよく、その減圧方法は特に限定されない。
即ち、例えば、(1)減圧に必要な吸引口181を残してシート材の端縁部118を溶着して(以下、単に「予備溶着工程」ともいう、図7参照)、シート材によって包囲された空間を形成した後に、吸引口181からシート材によって包囲された空間のみを吸引減圧した後、後述する溶着工程PR5によって、吸引口181を溶着して密閉空間14を形成する方法が挙げられる。また、(2)第1シート材11、第2シート材12、断熱基材13、型21及び型22を含む全体を減圧できる環境下におき、型21及び型22を型締めして両シート材によって包囲された空間を形成した後に、上記環境全体を減圧するとともに、減圧環境を維持したまま溶着工程PR5を行って、シート材の端縁部118の全周を溶着して密閉空間14を形成する方法が挙げられる。
また、この減圧工程PR4では、上記(1)及び(2)のいずれの方法を用いるかに係わらず、密閉空間14内の減圧程度は特に限定されず、密閉空間14は、例えば、10〜200Pa、とすることができ、10〜50Paが好ましく、10〜20Paがより好ましい。
【0048】
「端縁部溶着工程(PR5)」(図7参照)は、第1シート材11の端縁部118と、第2シート材12の端縁部128と、を端縁部18として溶着して、密閉空間14を完成させる工程である。この溶着に際しては、第1シート材11の端縁部118と、第2シート材12の端縁部128と、を直接接して両者を溶着してもよく、また、例えば、第1シート材11の端縁部118と、第2シート材12の端縁部128と、の間に溶着部材等を介在させて溶着してもよい。溶着部材としては、第1シート材11及び第2シート材12における溶着層を構成できる材料を同様に用いることができる。即ち、溶着溶部材は、加熱により溶融されて第1シート材11と第2シート材12とを溶着できる層である。この溶着部材は、通常、熱可塑性樹脂からなる。このような熱可塑性樹脂の種類は特に限定されないが、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、及び熱可塑性エラストマーなどを用いることができる。これらの樹脂は、1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0049】
また、端縁部様着工程PR5における溶着条件等は特に限定されないが、通常、加熱及び加圧を行う。溶着する際の加熱温度(溶着する端縁部18における温度)は特に限定されないが、通常、150〜180℃である。この範囲の温度では、上記溶着層及び上記溶着部材等のみを溶融させつつ、第1シート11及び第2シート12等を構成する他層や、断熱基材13等をなす材質に影響を及ぼすことなく、溶着を行うことができる。更に、溶着する際の加圧圧力(溶着する端縁部18における圧力)は特に限定されないが、通常、50〜300kPaであり、100〜300kPaが好ましく、200〜300kPaがより好ましい。
【実施例】
【0050】
以下、図面を用いて、実施例により本発明を更に具体的に説明する。尚、本実施例では、本発明に係る断熱内装材として、図1及び図8に示すように、第1シート材11、断熱基材13、第2シート材12及び表皮層15(断熱内装材において意匠面を構成する表面層)を備えて、自動車のルーフパネル3(金属パネル)の車内側に配設される、断熱性を有するルーフトリム(車内の乗員側に配置された意匠面を備える内装材)を用いて例示する
【0051】
〈1〉第1シート材11、第2シート材12及び断熱基材13
実施例の断熱内装材の製造方法を行うにあたって、以下の材料を用いた。即ち、
(1)第1シート材11及び第2シート材12
一面側(断熱内装材の外表面側)から他面側(密閉空間14側)に向かって、(1a)15μm厚のナイロンシート、(1b)アルミニウムが蒸着された12μm厚のポリエチレンテレフタレートシート、(1c)アルミニウムが蒸着された12μm厚のエチレン−ビルニアルコール共重合体層(ガスバリア層として機能、商品名「エバール」、株式会社クラレ製)、(1d)50μm厚のポリエチレン樹脂層(溶着層として機能)、を備える複層構造の第1シート材11及び第2シート材12。
(2)断熱基材13
ポリプロピレン繊維とガラス繊維とを含む繊維圧縮物からなる3〜5mm厚の板材。
【0052】
〈2〉断熱基材成形工程PR1
上記〈1〉で用意した断熱基材13を、温度200℃に予熱した後、冷間プレス型を用いて、ルーフトリムとなるドーム状に成形した。その後、不要部を切り取りって除去した。得られた断熱基材13は、第1シート11の端縁部118及び第2シート12の端縁部128の溶着を行うことができるように、これらのシート材よりも小さく形成されている。
【0053】
〈3〉第1シート材成形工程PR2
冷間プレス型の上型21であって、吸引孔212を有して、吸引吸着できる内部表面を有するともに、この内部表面が上記〈2〉で成形された断熱基材13の一面13aの形状に沿った部位を備えた型の上記内部表面に、上記〈1〉で用意した第1シート材11を、温度150℃に予熱したうえで、吸着させて成形を行った。
【0054】
〈4〉第2シート材成形工程PR3
冷間プレス型の下型22であって、吸引孔212を有して、吸引吸着できる内部表面を有するともに、この内部表面が上記〈2〉で成形された断熱基材13の他面13bの形状に沿った部位を備えた型の上記内部表面に、上記〈1〉で用意した第2シート材12を、温度150℃に予熱したうえで、吸着させて成形を行った。
【0055】
〈5〉減圧工程PR4
この減圧工程PR4では、まず、上記〈4〉で成形された状態にある第2シート材12のうえに、第2シート材12の端縁部128が露出されるように、上記〈2〉で成形された断熱基材13を載置した。
その後、予備溶着工程を行った。予備溶着工程では、減圧に必要な吸引口181を残して第1シート材11の端縁部118と、第2シート材12の端縁部128と、を溶着してシート材によって包囲された空間(密閉空間ではない)を形成した。この溶着に際しては、幅5mmの端縁部の溶着を行わず、吸引口181を残して溶着を行った。更に、この溶着は、上記上型21の端縁部に装着された加熱ヒータ211及び上記下型22の端縁部に装着された加熱ヒータ221を用いて行い、各端縁部118及び128を、温度170℃に加熱した状態で上下型21と22とを型締めして行った。
次いで、予備溶着工程で残存させた吸引口181から、第1シート材11及び第2シート材12によって包囲された空間から吸引を行い、第1シート材11及び第2シート材12によって包囲された空間の圧力を20Paまで減圧した。
【0056】
〈6〉端縁部溶着工程PR5
上記〈5〉で、第1シート材11及び第2シート材12によって包囲された空間が減圧された状態において、上記吸引口181を、上記上型21の端縁部に装着された加熱ヒータ211及び上記下型22の端縁部に装着された加熱ヒータ221を用いて溶着し、第1シート材11の端縁部118及び第2シート材12の端縁部128の全周を溶着して、端縁部18を形成することにより、密閉空間14を形成して断熱内装材1を得た。尚、この溶着においても、各端縁部118及び128を、温度170℃に加熱した状態で上下型21と22とを型締めして行った。
【0057】
〈7〉実施例の効果
以上より、本実施例の断熱内装材の製造方法では、第1シート材成形工程PR2及び第2シート材成形工程PR3を備えることにより、シート材11及び12を、予め断熱基材13の各面13a及び13bに対応した形状に成形できる。そして、予め断熱基材13の各面13a及び13bに対応した形状に成形されたシート材11及び12により、断熱基材13を挟み込むために、減圧工程PR4において、断熱基材13が有する、例えば、湾曲部、凹部及び凸部等の各部及びその周辺において、各シート材11及び12が要する追従量が減り、断熱基材13の各面13a及び13bに対して各シート材11及び12を十分に追従させることができる。その結果、シート材11及び12にシワを生じることを抑制できる。
【0058】
また、第1シート材成形工程PR2が、所定形状に成形された断熱基材13の一面13aの形状に沿った部位を備えた型21に、第1シート材11を吸着させることによって、第1シート材11を成形する工程である場合には、第1シート材11を型21に吸着させるだけで、簡便に成形を行うことができる。更に、図3、図5及び図6に例示するように、減圧工程PR4において、断熱基材13を挟み込む際に用いる型21と同じ型を用いて成形できる。このため、第1シート材11を成形する専用型と、断熱基材13を各シート材11及び12で挟み込むための専用型と、を別々に用いる必要なく、1つの型で複数の工程をこなすことができ、工程数を減じるとともに、より効率よく断熱内装材1を製造できる。
【0059】
更に、第2シート材成形工程PR3が、所定形状に成形された断熱基材13の他面13bの形状に沿った部位を備えた型22に、第2シート材12を吸着させることによって、第2シート材12を成形する工程である場合には、第2シート材12を型22に吸着させるだけで、簡便に成形を行うことができる。更に、図4、図5及び図6に例示するように、減圧工程PR4において、断熱基材13を挟み込む際に用いる型22と同じ型を用いて成形できる。このため、第2シート材12を成形する専用型と、断熱基材13を各シート材11及び12で挟み込むための専用型と、を別々に用いる必要なく、1つの型で複数の工程をこなすことができ、工程数を減じるとともに、より効率よく断熱内装材1を製造できる。
【0060】
また、第1シート材成形工程PR2及び第2シート材成形工程PR3の両方が、所定形状に成形された断熱基材13の各面13a及び13bの形状に沿った部位を備えた型21及び22に、各シート材11及び12を吸着させることによって、各シート材11及び12を成形する工程である場合には、図5及び図6に例示されるように、各シート材11及び12を、1つのプレス機の上型と下型とに分けて吸着させて成形することができる。これにより、1つのプレス機を用いて、第1シート材成形工程PR2及び第2シート材成形工程PR3を一括して行うことができ、効率よく断熱内装材1を製造できる。
【0061】
第1シート材成形工程PR2に用いられる型21に、端縁部18を溶着するための加熱ヒータ211を有する場合には、第1シート材成形工程PR2、減圧工程PR4及び端縁部溶着工程PR5の各工程を同じ型21を用いて行うことができ、効率よく断熱内装材を製造できる。
更に、第2シート材成形工程PR3に用いられる型22に、端縁部18を溶着するための加熱ヒータ221を有する場合には、第2シート材成形工程PR3、減圧工程PR4及び端縁部溶着工程PR5の各工程を同じ型22を用いて行うことができ、効率よく断熱内装材を製造できる。
従って、図5及び図6に例示されるように、型21を上型として、型22を下型として、1つのプレス機の上下型として用いることで、特に効率よく断熱内装材を製造できる。
【0062】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0063】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1;断熱内装材、
11;第1シート材、118;端縁部、
12;第2シート材、128;端縁部、
13;断熱基材、13a;断熱基材の一面、13b;断熱基材の他面、
14;密閉空間、
15;表皮層、
18;端縁部、181;吸引口、
21;第1シート材成形型、211;加熱ヒータ、212;吸引孔、
22;第2シート材成形型、221;加熱ヒータ、222;吸引孔、
3;ルーフパネル、
4;内装材、
61;断熱基材成形用上型、62;断熱基材成形用下型。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非通気性の第1シート材及び非通気性の第2シート材によって包囲された密閉空間内に断熱基材が配されてなる断熱内装材の製造方法であって、
前記断熱基材を所定形状に成形する断熱基材成形工程と、
前記第1シート材を、前記所定形状に成形された前記断熱基材の一面の形状に沿った部位を備えた形状に成形する第1シート材成形工程と、
前記第2シート材を、前記所定形状に成形された前記断熱基材の前記一面と反対側の他面の形状に沿った部位を備えた形状に成形する第2シート材成形工程と、
成形された前記断熱基材を、成形された前記第1シート材及び成形された前記第2シート材により挟みこみ、前記第1シート材及び前記第2シート材によって挟まれてなる空間内を減圧する減圧工程と、
前記第1シート材及び前記第2シート材の端縁部を溶着する端縁部溶着工程と、
を備えることを特徴とする断熱内装材の製造方法。
【請求項2】
前記第1シート材成形工程は、前記所定形状に成形された前記断熱基材の一面の形状に沿った部位を備えた型に、前記第1シート材を吸着させることによって、前記第1シート材を成形する工程である請求項1に記載の断熱内装材の製造方法。
【請求項3】
前記第2シート材成形工程は、前記所定形状に成形された前記断熱基材の他面の形状に沿った部位を備えた型に、前記第2シート材を吸着させることによって、前記第2シート材を成形する工程である請求項1又は2に記載の断熱内装材の製造方法。
【請求項4】
前記第1シート材成形工程に用いられる型には、前記端縁部を溶着するための加熱ヒータを有する請求項2に記載の断熱内装材の製造方法。
【請求項5】
前記第2シート材成形工程に用いられる型には、前記端縁部を溶着するための加熱ヒータを有する請求項3に記載の断熱内装材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−255518(P2011−255518A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129356(P2010−129356)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】