説明

新規なアリールC−キシロシド化合物、および化粧用途

本発明は、新規な式(I)の化合物(Xは-OH基または=O基であり、nは0〜5の間の整数であり、R’はHまたはC1〜C4アルキル基であり、n≧2のとき、2つの隣接する-OR’基は一緒になって、二価基-O-CH2-O-を形成でき、但し、X=OHのとき、化合物は前記OHを有する炭素のα位においてエチレン二重結合を含まない)に関する。本発明は、その塩、その光学異性体、それを含有する化粧品組成物および医薬組成物、ならびに皮膚の老化の徴候を予防し、化粧学的に処置するためのそれらの使用にも関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアリールC-キシロシド誘導体、それを含む組成物、特に化粧品組成物、および皮膚の老化に対抗するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
女性は、現在では男性も、可能な限り長い間若く見えることを望む傾向があり、その結果、特にしわおよび小じわに反映される皮膚の老化の徴候を緩和することを求めている。これに関して、メディアおよびファッション業界は、身体的な外観が精神および/または気力に影響を与えるのでなおさら若い皮膚の徴候である輝いた、しわのない皮膚を可能な限り保持することを意図した製品について報告している。
【0003】
今まで、しわおよび小じわは、皮膚に作用する活性剤を含有する化粧品を用いて、例えば、皮膚の細胞再生を改善することにより、または別法として、皮膚組織を構成する弾性線維の合成を促進するか、もしくはその分解を防止することにより、処置されていた。
【0004】
ヒトの皮膚は、2つの組織、すなわち、表面組織の表皮および深部組織の真皮からなることが知られている。
【0005】
正常なヒトの表皮は、3種類の細胞である、大部分を形成するケラチノサイト、メラノサイトおよびランゲルハンス細胞から主になる。これらの細胞型は各々、それ自体の機能により、皮膚が体内で果たす本質的な役割、特に「バリア機能」として知られる、外部攻撃(気候、紫外線、タバコなど)から体を保護する役割に寄与する。
【0006】
真皮は、表皮に堅牢な支持部を付与する。真皮は表皮の栄養供給成分でもある。真皮は、線維芽細胞、ならびにコラーゲン、エラスチンおよび基質として知られる物質から主になる細胞外マトリックスから主になる。これらの成分は、線維芽細胞により合成される。白血球、マスト細胞または組織マクロファージもそこで見出される。最後に、真皮には血管および神経線維が通っている。
【0007】
真皮の細胞外マトリックスは、いくつかの主なファミリーに属するタンパク質:コラーゲン、コラーゲン以外のマトリックス糖タンパク質(フィブロネクチン、ラミニン)、エラスチンおよびプロテオグリカンからなる。遊離形態(すなわち、タンパク質に結合していない)グリコサミノグリカンも、真皮の細胞外マトリックス中で見出される。
【0008】
特定の相互作用がこれらの様々な部類のタンパク質間に存在し、機能性組織を生み出すことは、現在十分に確立されている。
【0009】
細胞外空間(マイクロマトリックス)も表皮中に存在する。この空間は、細胞組織の再生および/または維持において非常に重要な機能的役割を果たす。
【0010】
プロテオグリカンは、グリコサミノグリカンとして知られる非常に多数の多糖側鎖が結合している、分岐の中央タンパク質幹またはタンパク質ネットワークからなる複雑な高分子である。
【0011】
本出願の残りの部分において、PGの略語は、プロテオグリカンを示すために使用され、GAGの略語は、グリコサミノグリカンを示すために使用される。
【0012】
GAGは、その高い保水力、その炭水化物性およびその複数の負電荷に由来する酸性により、酸性ムコ多糖類と長い間称されていた。
【0013】
したがって、GAGの極性により、GAGは、ある種の生物学的機能、例えば組織水和、カチオン結合またはイオン濾過の障壁の役割に潜在的に関与している。
【0014】
PGおよびGAGは、真皮および表皮中の様々な細胞である、線維芽細胞、ケラチノサイトおよびメラノサイトにより合成される。
【0015】
線維芽細胞は、主にコラーゲン、コラーゲン以外のマトリックス糖タンパク質(フィブロネクチン、ラミニン)、GAG、プロテオグリカンおよびエラスチンを合成する。ケラチノサイトは、主に硫酸化GAGおよびヒアルロン酸を合成するのに対し、メラノサイトは一見したところヒアルロン酸を生成しないようである。
【0016】
PGへの取り込みの際、GAGは、ヘキソサミン(グルコサミンまたはガラクトサミン)および別の単糖(グルクロン酸、イズロン酸またはガラクトース)を常に含有する基礎の二糖の繰り返しからなる直鎖の形態である。グルコサミンは、N-硫酸化されているか、またはN-アセチル化されている。他方で、ガラクトサミンは、常にN-アセチル化されている。さらに、ヘキソサミン、ウロン酸およびガラクトースにO-結合している硫酸基も存在し得る。
【0017】
GAGの強アニオン性は、ヘキスロン酸(グルクロン酸およびイズロン酸)中のカルボン酸基、ならびにO-結合およびN-結合硫酸基の存在により説明される。
【0018】
主なGAGはヒアルロン酸またはヒアルロナン(HA)、ヘパラン硫酸(HS)、ヘパリン(HP)、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸(CS)、コンドロイチン4-硫酸またはコンドロイチン硫酸A(CSA)、コンドロイチン6-硫酸またはコンドロイチン硫酸C(CSC)、デルマタン硫酸またはコンドロイチン硫酸B(CSB)、およびウロン酸の代わりにガラクトースが存在することにより他のグリコサミノグリカンとは異なるケラタン硫酸(KS)である。
【0019】
プロテオグリカン(PG)は、ポリペプチド鎖上のいくつかのGAG鎖を固着することにより形成される(担体タンパク質またはコアタンパク質と称される)。
【0020】
GAGは、遊離形態、すなわちマトリックスタンパク質に結合しない細胞外マトリックス中に存在することもでき、これは、特にヒアルロン酸の場合に当てはまる。
【0021】
PGが合成されるとき、GAGはこれらの固着構造により重合される。
【0022】
GAGの合成には、小胞体およびゴルジ体の膜で隣接する非常に特異的な酵素(トランスフェラーゼ、エピメラーゼ、スルホトランスフェラーゼ)の協調的および協働的作用が必要である。次いで、多数の生化学的反応(N-脱アセチル化、N-硫酸化およびO-硫酸化、エピマー化)により、鎖に沿って不均一に基礎単位の2種類の構成単糖が修飾される。1つのヘパラン硫酸鎖から他のヘパラン硫酸鎖まで、例えば、グルクロン酸/イズロン酸の比、O-硫酸化の性質、数および位置、ならびにN-硫酸/O-硫酸の比は変化し得、これにより多大な構造多様性が潜在的に与えられる。
【0023】
一般に、PGの生物学的役割は、受動的な機能の機械的支持(例えばセルグリシン)もしくは分子濾過のイオン障壁の役割(例えば、糸球体基底膜のパールカンおよびバーマカン(bamacan))から、細胞の接着、拡散、増殖および分化もしくは形態形成におけるより特異的な作用まで、またはPG-タンパク質相互作用の高度に特異的な作用、例えばβグリカン受容体機能またはデコリンとコラーゲンとの相互作用まで、非常に多様化されている。それらは、様々な増殖因子の制御放出においても基本的な役割を果たしている。
【0024】
真皮結合組織の役割の1つは、外部攻撃から体を保護すると同時に有益な界面を形成することである。
【0025】
このために、真皮は高い機械的強度を有する一方で、優れた柔軟性も維持している。
【0026】
その強度は、コラーゲン線維の密なネットワークによりもたらされるが、PGおよびヒアルロン酸は、線維の保湿性、分布および柔軟性をもたらすことにより、皮膚と、例えば皮革との間の違いを生み出している。
【0027】
PGは、真皮の乾燥重量の0.5%〜2%を構成し、コラーゲンは単独でその最大80%に相当する。
【0028】
ヒト皮膚におけるGAGおよびPGの濃度および分布は年齢によって変化する。
【0029】
ヒアルロン酸またはヒアルロナン(HA)は、真皮の主なGAGであり、後者が体のHAの半分を含有している。
【0030】
HAの合成は、特に、原形質膜の内面に近い線維芽細胞により行われる。これは連続的に行われる。この巨大な多糖(数百万ダルトン)は非常に高い固有粘度を有しており、超分子複合体を形成することにより結合組織の様々な成分の保湿性および構築を確保している。
【0031】
真皮において最初に単離されるデルマタン硫酸(DS)も皮膚に非常に豊富である。それは真皮GAGの40%〜50%を構成する。
【0032】
これらの特殊な細胞外マトリックスの発現に寄与する機構と並行して、連続的なリモデリングプロセスが存在し、その調節は、マトリックスのタンパク質成分の合成と分解との間のバランスに依存する。
【0033】
マトリックスプロテアーゼのいくつかのファミリーが、その活性化-不活性化に関与する因子と同様に現在説明されている。
【0034】
暦年老化および/または光老化の過程で、真皮および表皮は多数の変化および分解を経るが、それは年齢と共に、皮膚のたるみおよび柔軟性の喪失に反映される。
【0035】
分解される成分(特にコラーゲンおよびエラスチン)の中で、PGおよびGAGは悪影響も受ける。具体的には、老化の過程で、線維芽細胞およびケラチノサイトが産生するPGおよびGAGは次第に減少し、その合成が不完全になる。これにより、多数の崩壊が生じる。PGを形成するタンパク質骨格上のGAGの沈着が異常になり、この結果、水に対するこれらのPGの親和力が低下し、したがって組織の保湿性および張りが低下する。
【0036】
線維芽細胞およびケラチノサイトによるPGおよびGAGの正常な産生を回復することは、皮膚の保湿性の喪失を補うことに部分的に寄与する。
【0037】
したがって、これらのマトリックスの分解は、皮膚の乾燥および柔軟性の喪失という現象に寄与する。
【0038】
したがって、その作用が、皮膚のPGおよびGAGのレベルを維持し、したがってとりわけ皮膚の良好な保湿性および良好な柔軟性を維持することを意図する生成物を利用できる重要性が理解できる。
【0039】
線維芽細胞および/またはケラチノサイトによりグリコサミノグリカンの合成を促進するC-グリコシド化合物を使用することは、国際公開第02/051828号から知られている。
【0040】
皮膚を脱色する他のC-グリコシド化合物も国際公開第2006/128738号から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0041】
【特許文献1】国際公開第02/051828号
【特許文献2】国際公開第2006/128738号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0042】
出願人は、驚くべきことにかつ意外にも、他のアリールC-グリコシド誘導体が、コンドロイチン硫酸およびデルマタン硫酸などの硫酸化グリコサミノグリカンの合成を促進できることを発見した。
【0043】
それらの有効性は、既に公知のC-グリコシド化合物よりも高い。それらは、皮膚の表皮再生および張りを改善し、皮膚の老化の徴候に対してより効果的に対抗するのにより有効である。
【0044】
それらは、真皮-表皮接合部の構造、特に真皮と表皮との間の結合に対しても有益な効果を有する。
【0045】
したがって、これらの新規な化合物は、皮膚の老化を予防し、かつ/または化粧学的に処置すること、とりわけ、皮膚の老化の徴候、最も特にしわのある皮膚、その粘弾性もしくは生体力学的特性の有害な変化を示す皮膚、その組織の結合において有害な変化を示す皮膚、薄くなった皮膚および/またはその外観の有害な変化を示す皮膚に関連している皮膚の徴候を予防し、かつ/または特に局所的に処置することを意図する、化粧品組成物または医薬組成物、特に皮膚科用組成物において特に応用される。
【0046】
本発明による組成物は、より特に、皮膚の伸縮性、緊張性、張り、柔軟性、密度および/または弾力性を維持するか、かつ/または回復することを可能にできる。
【0047】
本明細書において、「皮膚の生体力学的特性」という表現は、皮膚の伸縮性、緊張性、張り、柔軟性および/または弾力性を意味することが意図される。
【0048】
本明細書において、「皮膚の老化の徴候」という表現は、時間生物学的および/または外因性、特に光誘発性またはホルモンのいずれかである老化による皮膚の外観の任意の変化を意味することが意図される。これらの徴候の中で、
-しわおよび/または小じわの出現に特に反映されるしわのある皮膚、
-しわの多い皮膚、たるんだ皮膚もしくはゆるんだ皮膚、または張りのない皮膚に特に反映される、その粘弾性もしくは生体力学的特性の有害な変化を示す皮膚、または弾力性および/もしくは伸縮性および/もしくは張りおよび/もしくは柔軟性および/もしくは緊張性の喪失を示す皮膚、
-その組織の結合の有害な変化を示す皮膚、
-薄くなった皮膚、
-粗さなどの皮膚のきめの有害な変化に特に反映される、その外観の有害な変化を示す皮膚
を特徴とすることができる。
【0049】
したがって、本発明の主題は、以下で定義されているように新規な式(I)のアミノC-グリコシド化合物である。
【0050】
本発明は、生理学的に許容される媒体において少なくとも1つのこのような化合物を含む化粧品組成物または医薬組成物にも関する。
【0051】
したがって、本発明による化合物は、以下の式(I)
【0052】
【化1】

【0053】
[式中、
Xは-OH基または=O基を示し、
nは0〜5の範囲の整数であり、
R’は、
水素原子、あるいは
直鎖のC1〜C4もしくは分岐のC3〜C4アルキル基、または不飽和のC3〜C4炭化水素系基を示し、
n≧2のとき、2つの隣接する-OR’基は一緒になって、二価基-O-CH2-O-を形成でき、
但し、X=OHのとき、化合物はこのOHを有する炭素のα位においてエチレン二重結合を含まない]
ならびにその塩およびその光学異性体に相当する。
【0054】
本発明との関連において、「アルキル」という用語は、飽和または不飽和の炭化水素系鎖を意味する。本発明の実施に適したアルキル基の中で、特にメチル基、エチル基、イソプロピル基、n-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基およびデシル基を挙げることができる。
【0055】
好ましくは、
Xは-OH基または=O基を示し、
nは0〜3の範囲の整数であり、
R’は、
水素原子、あるいは
直鎖のC1〜C4アルキル基、特にメチル基もしくはn-ブチル基、
または-CO-CH3基を示し、
n≧2のとき、2つの隣接する-OR’基が一緒になって、二価基-O-CH2-O-を形成できる。
【0056】
優先的には、
Xは-OH基または=O基を示し、
nは0〜3の範囲の整数であり、
R’は、
水素原子、または
メチル基を示す。
【0057】
特に、nおよびR’は、式(I°)の化合物の芳香族部分
【0058】
【化2】

【0059】
が、以下の構造式の1つ
【0060】
【化3】

【0061】
に相当し得るようなものであってよい。
【0062】
特に、(その塩またはその溶媒和物を含む)以下の式(I)の化合物を挙げることができる:
-1-(α,β)-D-キシロピラノシル-4-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)ブタン-2-オール(化合物1):
【0063】
【化4】

【0064】
-1-(α,β)-D-キシロピラノシル-4-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)ブタン-2-オン(化合物2):
【0065】
【化5】

【0066】
-1-(α,β)-D-キシロピラノシル-4-(4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オール(化合物3):
【0067】
【化6】

【0068】
-1-(α,β)-D-キシロピラノシル-4-フェニルブタン-2-オン(化合物4):
【0069】
【化7】

【0070】
-(3E)-1-(α,β)-D-キシロピラノシル-4-フェニルブタ-3-エン-2-オン(化合物5):
【0071】
【化8】

【0072】
-(3E)-1-(α,β)-D-キシロピラノシル-4-[4-ヒドロキシ-(3,5)-ジメトキシフェニル]ブタ-3-エン-2-オン(化合物6):
【0073】
【化9】

【0074】
-1-(α,β)-D-キシロピラノシル-4-[(3,4)-メチレンジオキシフェニル]ブタン-2-オール(化合物7):
【0075】
【化10】

【0076】
-1-(α,β)-D-キシロピラノシル-4-(2-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オール(化合物8):
【0077】
【化11】

【0078】
-1-(α,β)-D-キシロピラノシル-4-フェニルブタン-2-オール(化合物9):
【0079】
【化12】

【0080】
本発明に記載の化合物に許容される溶媒和物は、従来の溶媒和物、例えば溶媒の存在により前記化合物の調製の最終段階で形成されるものを含む。例証として、水または直鎖状もしくは分岐のアルコール、例えばエタノールもしくはイソプロパノールの存在による溶媒和物を挙げることができる。
【0081】
式(I)の化合物は、以下のスキームI
【0082】
【化13】

【0083】
に従って、C-β-D-キシロピラノシド-n-プロパン-2-オン(A)(国際公開第02/051828号の実施例1に記載の化合物)と、1〜2等量の式(III)のベンズアルデヒド(補助剤)(nおよびR’は、式(I)の化合物において上に記載した意味を有する)とを、特に周囲温度(25℃)にて、極性溶媒、例えば水、エタノール、イソプロパノールまたはメタノール中で、塩基(例えば、水酸化ナトリウムまたはナトリウムメトキシド)の存在下で、特に1〜20時間反応させることにより調製できる。
【0084】
次いで、得られたアルドール化生成物(B)を、接触水素化(例えば、Pd/C/H2)により公知の方式で部分的に還元し、化合物(C)を得ることができる。次いで、化合物(C)を、水素化物(例えば、ホウ化水素ナトリウム)を用いて、あるいは炭素担持パラジウムでの接触水素化により連続的に還元し、次いで圧力下で水素の存在下で水素化するステップにより、化合物(D)を得ることができる。化合物B、CおよびDは、上に記載の式(I)の構造に基づく化合物である。
【0085】
本発明は、生理学的に許容される媒体中に上に記載の式(I)の化合物を含む組成物にも関する。組成物は、特に化粧品組成物または皮膚科用組成物である。
【0086】
式(I)の化合物は、組成物の全重量に対して0.01重量%〜10重量%の間、好ましくは0.1重量%〜5重量%の間、特に0.5重量%〜3重量%の間であってよい量で化粧品組成物または医薬組成物中に存在できる。
【0087】
組成物は、化粧学的または薬学的、特に皮膚科学的に許容される媒体、すなわち、不快な臭気、色または外観を有さず、使用者にとって受け入れ難い何らかの刺痛、緊張または赤みを引き起こさない媒体であることが優先される生理学的に許容される媒体も含む。特に、組成物は、皮膚への局所適用に適している。
【0088】
「生理学的に許容される媒体」という用語は、体または顔の皮膚、唇、粘膜、睫毛、爪、頭皮および/または髪などのヒトのケラチン物質と相容性である媒体を意味すると理解される。
【0089】
本発明による組成物は、想定される適用分野において通常使用される化粧品補助剤のいずれかも含むことができる。
【0090】
水;有機溶媒、特にC1〜C6アルコールおよびC2〜C10カルボン酸エステル;炭化水素系油、シリコーン油、フルオロ油、ワックス、顔料、充填剤、染料、界面活性剤、乳化剤、化粧用または皮膚科用活性剤、紫外線遮断剤、フィルム形成ポリマー、親水性または親油性ゲル化剤、増粘剤、保存料、香料、殺菌剤、臭気吸収剤ならびに抗酸化剤を特に挙げることができる。
【0091】
これらの任意選択の補助剤は、組成物の全重量に対して0.001重量%〜80重量%、特に0.1重量%〜40重量%の比率で組成物中に存在できる。
【0092】
これらの補助剤を、その性質に応じて、組成物の脂肪相もしくは水層、または脂質小胞に導入してもよい。いずれにせよ、これらの補助剤およびその比率は、本発明による化合物の有利な特性が、想定される添加により損なわれないか、または実質的に損なわれないように当業者により選択されるであろう。
【0093】
本発明で使用できる油としては、鉱油(液体ワセリン)、植物由来の油(アボカド油、大豆油)、動物由来の油(ラノリン)、合成油(ペルヒドロスクアレン)、シリコーン油(シクロメチコーン)およびフルオロ油(ペルフルオロポリエーテル)を挙げることができる。脂肪アルコール(セチルアルコール)、脂肪酸およびワックス(カルナウバワックス、オゾケライト)も脂肪として使用できる。
【0094】
親水性ゲル化剤または増粘剤としては、カルボキシビニルポリマー(カルボマー)、アクリルコポリマー、例えばアクリレート/アルキルアクリレートコポリマー、ポリアクリルアミド、多糖、天然ガムおよび粘土を挙げることができる。親油性ゲル化剤または増粘剤としては、変性粘土、例えばベントン、脂肪酸の金属塩、および疎水性シリカを挙げることができる。
【0095】
活性剤としては、落屑剤;保湿剤;脱色剤または着色促進剤;抗グリケーション剤;NOシンターゼ阻害剤;真皮もしくは表皮の高分子の合成を刺激するか、かつ/またはその分解を防止する薬剤;線維芽細胞および/もしくはケラチノサイトの増殖を刺激するか、またはケラチノサイトの分化を刺激する薬剤;筋弛緩剤および/または皮膚弛緩剤(dermo-deconstracting agent);緊張化剤;抗汚染剤および/またはフリーラジカルスカベンジャー;微小循環に作用する薬剤;細胞のエネルギー代謝に作用する薬剤;ならびにそれらの混合物から選択される少なくとも1つの化合物を本発明により使用される組成物中に導入することが有利であろう。
【0096】
このような追加の化合物の例としては、レチノールおよびその誘導体、例えばレチニルパルミテート;アスコルビン酸およびその誘導体、例えばアスコルビルマグネシウムホスフェートおよびアスコルビルグルコシド;トコフェロールおよびその誘導体、例えばトコフェリルアセテート;ニコチン酸およびその前駆体、例えばニコチンアミド;ユビキノン;グルタチオンおよびその前駆体、例えばL-2-オキソチアゾリジン-4-カルボン酸;植物抽出物、特に植物タンパク質およびその加水分解物、ならびに植物ホルモン;海洋性抽出物、例えば藻類抽出物;細菌抽出物;サポゲニン、例えばジオスゲニンおよびそれを含有するワイルドヤム抽出物;セラミド;ヒドロキシ酸、例えばサルチル酸および5-n-オクタノイルサルチル酸;レスベラトロル;オリゴペプチドおよび疑似ジペプチド、ならびにそれらのアシル化誘導体;マンガン塩およびマグネシウム塩、特にグルコネート;ならびにそれらの混合物がある。
【0097】
上に記載したように、本発明による組成物は、有機化合物または無機化合物の形態でUVAおよび/またはUVBの範囲で活性である紫外線遮断剤または光保護剤も含有でき、光保護剤は、組成物を疎水性にするために場合により被覆される。
【0098】
有機光保護剤は、アントラニレート、特にメチルアントラニレート;ベンゾフェノン、特にベンゾフェノン-1、ベンゾフェノン-3、ベンゾフェノン-5、ベンゾフェノン-6、ベンゾフェノン-8、ベンゾフェノン-9、ベンゾフェノン-12、優先的にはベンゾフェノン-3(オキシベンゾン)またはベンゾフェノン-4(BASF製のUvinul MS40);ベンジリデンカンファー、特に3-ベンジリデンカンファー、ベンジリデンカンファースルホン酸、カンファーベンザルコニウムメトスルフェート、ポリアクリルアミドメチルベンジリデンカンファー、テレフタリリデンジカンファースルホン酸、優先的には4-メチルベンジリデンカンファー(Merck製のEusolex6300);ベンズイミダゾール、特にベンズイミダジレート(HaarmannおよびReimer製のNeo Heliopan AP)またはフェニルベンズイミダゾールスルホン酸(Merck製のEusolex 232);ベンゾトリアゾール、特にドロメトリゾールトリシロキサンまたはメチレン[ビス(ベンゾトリアゾリル)テトラメチルブチル]フェノール(Ciba製のTinosorb M);シンナメート、特にシノキセート、DEAメトキシシンナメート、ジイソプロピルメチルシンナメート、グリセリルエチルヘキサノエートジメトキシシンナメート、イソプロピルメトキシシンナメート、イソアミルシンナメート、優先的にはエトクリレン(BASF製のUvinul N35)、オクチルメトキシシンナメート(Hoffmann La Roche 製のParsol MCX)、またはオクトクリレン(BASF製のUvinul 539);ジベンゾイルメタン、特にブチルメトキシジベンゾイルメタン(Parsol 1789);イミダゾリン、特にエチルヘキシルジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリン;PABA、特にエチルジヒドロキシプロピルPABA、エチルヘキシルジメチルPABA、グリセリルPABA、PABA、PEG-25 PABA、優先的にはジエチルヘキシルブタミドトリアゾン(3V Sigma製のUvasorb HEB)、エチルヘキシルトリアゾン(BASF製のUvinul T150)またはエチルPABA(ベンゾカイン);サリチレート、特にジプロピレングリコールサリチレート、エチルヘキシルサリチレート、ホモサレートまたはTEAサリチレート;トリアジン、特にアニソトリアジン(Ciba製のTinosorb S);ドロメトリゾールトリシロキサンから特に選択できる。
【0099】
無機光保護剤は、アルミナおよび/またはステアリン酸で場合により被覆されている、好ましくはナノメートルサイズの酸化亜鉛および/または二酸化チタンから好ましくはなる。
【0100】
この組成物は、化粧品または医薬品の分野で通常使用されるガレヌス製剤の形態のいずれか、特に水性または水性-アルコール性の場合によりゲル化された溶液、場合により2相であるローションタイプの分散液、水相中の脂肪相(O/W)の分散により得られるエマルジョン、その逆のエマルジョン(W/O)もしくは三重エマルジョン(W/O/WまたはO/W/O)、イオン性および/もしくは非イオン性タイプの小胞分散液、または水性もしくは油性ゲルの形態であってよい。これらの組成物は、通常の方法により調製される。エマルジョン、特に水中油型エマルジョンの形態の組成物を、本発明に従って使用することが好ましい。
【0101】
組成物は、多少流動性であってよく、白色または着色クリーム、軟膏、乳液、ローション、セラム、ペースト、ゲルまたはフォームの外観を有することができる。組成物は、エアロゾルの形態で場合により適用できる。組成物はまた、固体形態、特にスティック形態であってよい。
【0102】
組成物がエマルジョンである場合、脂肪相の比率は、組成物の全重量に対して5重量%〜80重量%、好ましくは8重量%〜50重量%の範囲であってよい。乳化剤および共乳化剤は、組成物の全重量に対して0.3重量%〜30重量%、好ましくは0.5重量%〜20重量%の範囲の比率で存在できる。
【0103】
本発明による組成物は、スキンケア組成物、特に顔、手、足、主な解剖学上のひだまたは体用のクレンジング、保護、トリートメントまたはケア用のクリーム(例えば、デイクリーム、ナイトクリーム、メイクアップ除去クリーム、ファンデーションクリーム、日焼け止めクリーム);メイクアップ除去乳液、保護またはケア用のボディー用乳液、日焼け止め乳液;スキンケア用ローション、ゲルまたはフォーム、例えばクレンジングローションを構成できる。
【0104】
本発明による組成物は有利には、皮膚の老化の外見的徴候を化粧学的に処置するか、かつ/または対抗することを意図する老化防止用、特にケア用組成物である。組成物は、より特に成熟した皮膚のケア用組成物である。
【0105】
組成物はまた、メイクアップ組成物、特にファンデーションであってよい。
【0106】
本発明は、上に定義した化粧品組成物の皮膚への適用を含む、皮膚の化粧処置法にも関する。この方法は、特に顔、とりわけ額、首および/または手の皮膚、特に成熟した皮膚および/またはしわのある皮膚の処置において有利に応用される。
【0107】
本発明は、皮膚の老化の徴候、特に、しわのある皮膚、その粘弾性または生体力学的特性の有害な変化を示す皮膚、その組織の結合において有害な変化を示す皮膚、薄くなった皮膚およびその外観の有害な変化を示す皮膚から選択される皮膚の徴候を予防するか、かつ/または処置するための上に定義した化粧品組成物または上に記載した式(I)の化合物の非治療的化粧用途にも関する。
【0108】
本発明は、皮膚の張りを改善するため、および/または真皮-表皮接合部の構造を改善するため、および/または真皮と表皮との間の結合を強化するための上に定義した組成物または上に記載した式(I)の化合物の非治療的化粧用途にも関する。
【0109】
本発明を以下の非限定的実施例によりさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0110】
(実施例1:1-(α,β)-D-キシロピラノシル-4-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)ブタン-2-オンの合成)
(化合物2)
【0111】
【化14】

【0112】
無水メタノール50ml中のC-β-D-キシロピラノシド-n-プロパン-2-オン5g(1等量)を、メタノール(7.55ml、1.5等量)中の30%ナトリウムメトキシドと反応させ、次いで4-ベンジルオキシ-3-メトキシベンズアルデヒド6.69g(1.05等量)を加えた。
【0113】
反応媒体を周囲温度(25℃)で15時間撹拌し、次いでジクロロメタンで希釈した後、NH4Cl水溶液で洗浄した。次いで、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、次いで真空下で濃縮した。得られた薄茶色の油をシリカゲルで精製し、対応する中間体(B)(淡黄色の固体、収率30%)を得た。
【0114】
得られた反応中間体(B)(2g、1等量)を水/エタノールの混合物(5ml/50ml)に可溶化した。次いで、10%炭素担持パラジウム(400mg、0.78等量)を加え、同様にシクロヘキセン(10ml、20.5等量)を加えた。反応媒体を5時間還流させ、次いで放置して周囲温度まで冷却して、濾過し、真空下で濃縮した。このようにして、化合物2に対応する1.57g(1.57g、わずかに黄緑色の油)を得た。
【0115】
1H NMR、13C NMRおよび質量スペクトルは、予想生成物の構造に基づいている。
【0116】
(実施例2:1-(α,β)-D-キシロピラノシル-4-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)ブタン-2-オールの合成)
(化合物1)
【0117】
【化15】

【0118】
実施例1で得られた化合物2(1.57g、1等量)をエタノール(20ml)に可溶化し、次いで水素化ホウ素ナトリウム(0.182g、1等量)を少量加えた。媒体を周囲温度で12時間撹拌した。次いで、アセトンを加えて、過剰な水素化ホウ素ナトリウムを破壊し、次いで塩酸水溶液(1N)を加えて、pHを2に調整した。次いで、反応媒体を真空下で濃縮し、得られた生成物を水中に溶解させ、次いで酢酸エチルで2回洗浄した。次いで、水相をブタノールで抽出し、有機相を合わせ、真空下で濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルで精製し、純粋な化合物1に対応するわずかに黄色の油0.53g(収率34%)を得た。
【0119】
1H NMR、13C NMRおよび質量スペクトルは、予想生成物の構造に基づいている。
【0120】
(実施例3:(3E)-1-(α,β)-D-キシロピラノシル-4-フェニルブト-3-エン-2-オンの合成)
(化合物5)
【0121】
【化16】

【0122】
エタノール50ml中のC-β-D-キシノピラノシド-n-プロパン-2-オン2g(10.5mmol)をベンズアルデヒド1.2g(11.6mmol)と反応させて、次いでエタノール中の21%ナトリウムメトキシド溶液5.8ml(15.8mmol)を加えた。媒体を1時間撹拌し、次いで飽和塩化アンモニウム溶液を加えて反応を停止した。
【0123】
次いで、反応媒体を真空下で濃縮し、水中に溶解させた。水相をブタノールで抽出した。有機相を乾燥させて、真空下で濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルで精製し、白色の固体の形態で純粋な予想生成物700mg(収率25%)を得た。
【0124】
1H NMR、13C NMRおよび質量スペクトルは、予想生成物の構造に基づいている。
【0125】
(実施例4:1-(α,β)-D-キシロピラノシル-4-フェニルブタン-2-オンの合成)
(化合物4)
【0126】
【化17】

【0127】
磁気撹拌棒を備えた丸底フラスコ中で、実施例3の化合物5、12gを、メタノール70ml中に導入し、10mol%炭素担持パラジウム0.5gを加えた。反応混合物を撹拌し、水素圧(100000Pa、すなわち1bar)下に15時間置いた。次いで、不溶性物質をセライト層を通して濾過し、濾過液を真空下で蒸発させた。化合物4、12g(収率99%)をオフホワイトの固体生成物の形態で得た。
【0128】
(実施例5:(化合物4):1-(α,β)-D-キシロピラノシル-4-フェニルブタン-2-オールの合成)
(化合物9)
【0129】
【化18】

【0130】
磁気撹拌棒を備えた250mlの丸底フラスコ中で、実施例4の化合物4、12g(0.043mol)を窒素下でメタノール100ml中に導入した。次いで、-20℃で勢いよく撹拌しながら、水素化ホウ素ナトリウム1.954g(0.0514mol、1.2等量)を少量加えた。添加の最後で、撹拌を0℃にて10分間続行し、次いで混合物を、この温度で最大pH=4のHCl(3N)を用いて加水分解した。次いで、反応混合物を真空下で蒸発乾燥させた。得られた残渣をアセトンで希釈し、次いで濾過して、形成された塩を除去した。濾過液を蒸発させ、次いで真空下で乾燥させた。得られた粗生成物をシリカカラム上のフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:エーテル、次いでアセトン)で精製し、オフホワイトの結晶の形態の予想化合物9(収率72%)を回収した。
【0131】
(実施例6:1-(α,β)-D-キシロピラノシル-4-(2-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オールの合成)
(化合物8)
【0132】
【化19】

【0133】
a)次式の化合物Aの合成
【0134】
【化20】

【0135】
エタノール(4.5ml)+水(3.5ml)の混合物の溶液中のC-β-D-キシロピラノシド-n-プロパン-2-オン(1等量、4.00g)を、周囲温度にて水酸化ナトリウム水溶液(3.5等量、2.94g、水27ml中)で処理した。2時間撹拌した後、サリチルアルデヒド(1.2等量、2.7ml)を周囲温度で滴下した。20時間撹拌した後、pHを6に調整し、次いで反応混合物を濃縮した。反応粗生成物のTLC分析(Rf=0.38、CH2Cl2/MeOH:80/20)により、主として優勢な新しい生成物が形成されたことが判明した。
【0136】
シリカカラムクロマトグラフィー(固体析出、CH2Cl2/MeOH:80/20)によりこの残渣を精製することにより、オレンジ色の粉末の形態で予想化合物A(4.27g、収率=69%)を回収できる。
【0137】
b)次式の化合物Bの合成
【0138】
【化21】

【0139】
化合物A(1等量、4.2g)をメタノール(150ml)中に溶解させ、次いでNaBH4(2等量、1.1g)で処理し、周囲温度で少量ずつ加えて、発生する気泡を制限した。反応混合物を3時間撹拌した後、反応混合物のTLC分析により、出発生成物が完全に消失したことが判明した。過剰な還元剤を、飽和塩化アンモニウム水溶液(20ml)を加えることにより中和し、次いで反応混合物を濃縮した。反応粗生成物をシリカカラムクロマトグラフィー(Rf=0.45、CH2Cl2/MeOH:80/20)により精製し、化合物Bを得た。
【0140】
c)1-(α,β)-D-キシロピラノシル-4-(2-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オールの合成
化合物B(120mg)をエタノール10ml中に溶解させ、そこに水3滴を加え、次いで30℃にて10%Pd/C触媒を用いて水素化した。蒸発後、予想生成物がベージュ色の油の形態で得られる(60mg、収率=49%)。
【0141】
(実施例7)
線維芽細胞およびケラチノサイトの硫酸化グリコサミノグリカン合成に対するC-グリコシド誘導体の効果の研究
【0142】
該研究は、正常なヒト皮膚の線維芽細胞またはケラチノサイトの培養により新合成されたマトリックス中への放射性グルコサミンの取り込みを測定することにより行われる。放射性グルコサミンの取り込みにより、アセチル化形態のこのグルコサミンの取り込みを介したグリコサミノグリカンの特異的な新合成が示される。
【0143】
線維芽細胞の培養は、L-グルタミン(2mM)、ペニシリン(50IU/ml)および10%ウシ胎児血清(Gibco)の存在下で、従来の細胞培養法、すなわちGibco社により販売されているDMEM培地で行われる。
【0144】
ケラチノサイトの培養は、EGF(上皮増殖因子)(0.25ng/ml)、下垂体抽出物(25μg/ml)およびゲンタマイシン(25μg/ml)の存在下で、Gibco社により販売されているケラチノサイト-SFM培地で行われる。
【0145】
線維芽細胞およびケラチノサイトを96ウェルプレートで培養した。コンフルエンスになった時点で、培養培地を、試験化合物または参照化合物を含有するか、または含有しない(対照)適切な培養培地と交換し、次いで細胞を48時間インキュベートした。35S-硫酸塩放射性標識を加え(最終濃度40μCi)、細胞をさらに24時間インキュベートした。すべての条件を3回行った。
【0146】
細胞外マトリックスグリコサミノグリカンを、1容量のカオトロピック緩衝液(50mMトリス/HCl、4Mグアニジン、5mM EDTA、pH8.0)で抽出した。
【0147】
硫酸化GAGをイオン交換クロマトグラフィー、すなわち高緊縮条件下でのQ-セファロースビーズ上のアニオン性分子の吸収、0.2mM NaClを含有する6M尿素溶液でのわずかにアニオン性の分子および中程度にアニオン性の分子の脱離、次いで洗浄により精製した。
【0148】
支持体(主にGAG)上に残った高度にカチオン性の分子に取り込まれた放射活性を、液体シンチレーションにより測定した。
【0149】
結果は、式(I)の化合物で処理されなかった細胞からなる対照と比較して評価される。
【0150】
GAG合成を刺激することが知られている陽性対照(10ng/mlのTGFβ)を、陽性参照として線維芽細胞で行われる試験に導入する。
【0151】
GAG合成を刺激することが知られている陽性対照(1.4mMのCaCl2)を、陽性参照としてケラチノサイトで行われる試験に導入する。
【0152】
結果は、対照に対するグリコサミノグリカン合成における百分率変化として示される。
【0153】
試験化合物に対して3つの試験が行われた。
【0154】
試験化合物について得られた結果の比較は、スチューデント検定を用いて行った。
【0155】
平均(sem)の標準誤差を以下の関係に従って計算した:
sem=標準誤差/(n)1/2
nは、行われた試験の数である。
【0156】
結果を以下の表に示す。
【0157】
【表1】

【0158】
測定された値をカウント毎分(cpm)で示す:
n:行われた試験の数
p:信頼区間
sem:平均値の標準誤差。
【0159】
得られた結果は、実施例2の化合物(化合物1)が、硫酸化GAG合成を促進するのに非常に有効であることを顕著に示している。
【0160】
この活性により、皮膚の張りに対する生物活性をこの化合物に起因すると考え、したがって皮膚の老化の徴候を緩和することができる。
【0161】
別の実験計画において、実施例5の化合物(化合物9)および実施例6の化合物(化合物8)を評価した。
【0162】
【表2】

【0163】
得られた結果は、化合物1、8および91が、硫酸化GAG合成を促進するのに非常に有効であることを顕著に示している。
【0164】
この活性により、皮膚の張りに対する生物活性をこの化合物に起因すると考え、したがって皮膚の老化の徴候を緩和することができる。
【0165】
(実施例7)
以下のもの(重量%)を含む、水中油型エマルジョンタイプの顔用ケアクリームを調製する:
実施例2の化合物0.005%
ステアリン酸グリセリル2%
ポリソルベート60(ICI製のTween60)1%
ステアリン酸1.4%
トリエタノールアミン0.7%
カルボマー0.4%
シアバターの液体画分12%
ペルヒドロスクアレン12%
抗酸化剤qs
香料、保存料qs
水qs100%
【0166】
同様の組成物を、実施例1または3〜5の化合物を用いて調製する。
【0167】
顔に適用した組成物により、皮膚の張りを強化し、したがって皮膚の老化の徴候を緩和することができる。
【0168】
(実施例8)
以下のもの(重量%)を含む、皮膚用の老化防止用ゲルを調製する:
実施例2の化合物2%
ヒドロキシプロピルセルロース(Hercules製のKlucel H)1%
抗酸化剤qs
香料、保存料qs
イソプロパノール40%
水qs100%
【0169】
同様の組成物を、実施例1または3〜5の化合物を用いて調製する。
【0170】
顔に適用した組成物により、皮膚の張りを強化し、したがって皮膚の老化の徴候を緩和することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
【化1】

[式中、
Xは-OH基または=O基を示し、
nは0〜5の範囲の整数であり、
R’は、
水素原子、あるいは
直鎖のC1〜C4もしくは分岐のC3〜C4アルキル基、または不飽和のC3〜C4炭化水素系基を示し、
n≧2のとき、2つの隣接する-OR’基は一緒になって、二価基-O-CH2-O-を形成でき、
但し、X=OHのとき、前記化合物はこのOHを有する炭素のα位においてエチレン二重結合を含まない]
ならびにその塩およびその光学異性体。
【請求項2】
Xが-OH基または=O基を示し、
nが0〜3の範囲の整数であり、
R’が、
水素原子、あるいは
直鎖のC1〜C4アルキル基、特にメチル基もしくはn-ブチル基、または-CO-CH3基を示し、
n≧2のとき、2つの隣接する-OR’基が一緒になって、二価基-O-CH2-O-を形成できる、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Xが-OH基または=O基を示し、
nが0〜3の範囲の整数であり、
R’が、
水素原子、または
メチル基を示す、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
以下の化合物
-1-(α,β)-D-キシロピラノシル-4-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)ブタン-2-オール;
-1-(α,β)-D-キシロピラノシル-4-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)ブタン-2-オン;
-1-(α,β)-D-キシロピラノシル-4-(4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オール;
-1-(α,β)-D-キシロピラノシル-4-フェニルブタン-2-オン;
-(3E)-1-(α,β)-D-キシロピラノシル-4-フェニルブタ-3-エン-2-オン;
-(3E)-1-(α,β)-D-キシロピラノシル-4-[4-ヒドロキシ-(3,5)-ジメトキシフェニル]ブタ-3-エン-2-オン;
-1-(α,β)-D-キシロピラノシル-4-[(3,4)-メチレンジオキシフェニル]ブタン-2-オール;
-1-(α,β)-D-キシロピラノシル-4-(2-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オール;
-1-(α,β)-D-キシロピラノシル-4-フェニルブタン-2-オール;
およびその塩またはその溶媒和物から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
生理学的に許容される媒体において、請求項1から4のいずれか一項に記載の少なくとも1つの式(I)の化合物を含む、化粧品組成物または医薬組成物。
【請求項6】
前記式(I)の化合物が、組成物の全重量に対して0.01重量%〜10重量%の間、好ましくは0.1重量%〜5重量%の間、特に0.5重量%〜3重量%の間の量で、単独でまたは混合物として存在する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記生理学的に許容される媒体が、水;有機溶媒、特にC1〜C6アルコールおよびC2〜C10カルボン酸エステル;炭化水素系油、シリコーン油、フルオロ油、ワックス、顔料、充填剤、染料、界面活性剤、乳化剤、化粧用または皮膚科用活性剤、紫外線遮断剤、フィルム形成ポリマー、親水性または親油性ゲル化剤、増粘剤、保存料、香料、殺菌剤、臭気吸収剤ならびに抗酸化剤から選択される少なくとも1つの化粧用補助剤を含む、請求項5または6に記載の組成物。
【請求項8】
前記生理学的に許容される媒体が、落屑剤;保湿剤;脱色剤または着色促進剤;抗グリケーション剤;NOシンターゼ阻害剤;真皮もしくは表皮の高分子の合成を刺激するか、かつ/またはその分解を防止する薬剤;線維芽細胞および/もしくはケラチノサイトの増殖を刺激するか、またはケラチノサイトの分化を刺激する薬剤;筋弛緩剤および/または皮膚弛緩剤;緊張化剤;抗汚染剤および/またはフリーラジカルスカベンジャー;微小循環に作用する薬剤;細胞のエネルギー代謝に作用する薬剤;ならびにそれらの混合物から選択される少なくとも1つの化合物を含む、請求項5から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
皮膚の老化の外見的徴候に対抗することを意図する、老化防止、特にケア組成物の形態の、請求項6から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか一項に記載の化粧品組成物の皮膚への適用を含む、皮膚の非治療的化粧処置法。
【請求項11】
前記組成物が、成熟した皮膚および/またはしわのある皮膚に適用される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
皮膚の張りを改善するため、および/または真皮-表皮接合部の構造を改善するため、および/または真皮と表皮との間の結合を強化するための、請求項6から9のいずれか一項に記載の化粧品組成物、または請求項1から4のいずれか一項に記載の式(I)の化合物の非治療的使用。
【請求項13】
皮膚の老化の徴候、特に、しわのある皮膚、その粘弾性または生体力学的特性の有害な変化を示す皮膚、その組織の結合において有害な変化を示す皮膚、薄くなった皮膚およびその外観の有害な変化を示す皮膚から選択される皮膚の徴候を予防し、かつ/または処置するための、請求項6から9のいずれか一項に記載の化粧品組成物、または請求項1から4のいずれか一項に記載の式(I)の化合物の非治療的使用。

【公表番号】特表2012−511555(P2012−511555A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540179(P2011−540179)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【国際出願番号】PCT/FR2009/052499
【国際公開番号】WO2010/067036
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】