説明

新規な化合物

【課題】 新規化合物およびその製造方法、特に痴呆関連疾患、アルツハイマー病およびグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3関連症状の予防および/または治療に有効な活性化合物である。
【解決手段】 式(I)
【化1】


[式中、Y、P、R1、R2、R3、n、mは請求項1において定義される]の新規化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式Iの新規化合物の遊離塩基またはその塩、該化合物を含む医薬組成物、および治療における該化合物の使用に関する。本発明は更に、式Iの化合物の製造方法、およびその製造に使用される新規中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK3)は、2種の異性体(αおよびβ)から成るセリン/スレオニンプロテインキナーゼであり、該異性体は異なる遺伝子によりコードされているが、触媒ドメインにおいて高度に相同である。GSK3は中枢および末梢神経系において高度に発現される。GSK3は、タウ、β−カテニン、グリコーゲンシンターゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼおよび伸長開始因子2b(eIF2b)を含む幾つかの基質をリン酸化する。インシュリンおよび成長因子は、GSK3をセリン9残基上でリン酸化してこれを不活性化するプロテインキナーゼBを活性化する。
【0003】
アルツハイマー病(AD)痴呆、およびタウパシー(taupathie)
ADは、認知衰退、コリン作動性の機能障害およびニューロン死、神経原線維変化、およびアミロイド−βの沈着から成る老人斑により特徴付けられる。ADにおけるこれらの事象の順序は不明確であるが、関連があると考えられている。グリコーゲンシンターゼキナーゼ3β(GSK3β)またはタウ(τ)リン酸化キナーゼは、AD脳において高リン酸化される部位で、ニューロン中の微小管結合タンパク質τを選択的にリン酸化する。高リン酸化されたタンパク質τは微小管に対する親和性が低く、対になったらせん状フィラメントとして蓄積し、これはAD脳における神経原線維変化およびニューロピルスレッドを構成する主な要素である。このことは微小管の解重合を招き、これにより軸索の枯死および神経症性ジストロフィーが引き起こされる。神経原線維変化は、AD、筋萎縮性側索硬化症、Guamパーキンソン痴呆複合、大脳皮質基底核変性症、ボクサー痴呆および脳損傷、ダウン症候群、脳萎縮後パーキンソン症(postencephalatic parkinsonism)、進
行性核上麻痺、ニーマン−ピック病およびピック病のような疾患において一貫して見られる。1次海馬培養株にアミロイド−βを加えると、τの高リン酸化およびGSK3β活性の誘導による対になったらせん状フィラメント様状態が、続けて軸索輸送の阻害およびニューロン死が起こる(Imahori and Uchida., J. Biochem 121: 179−188, 1997)。GSK3βは、神経原線維変化を優先的にラベルし、AD脳の変化前(pre−tangle)のニューロンにおいて活性であることが示されている。また、GSK3タンパク質レベルは、AD患者の脳組織において50%増加している。更に、GSK3βは、解糖経路の主要な酵素であるピルビン酸デヒドロゲナーゼをリン酸化し、ピルベートのアセチル−Co−Aへの変換を抑制する(Hoshi ら、PNAS 93: 2719−2723, 1996)。アセチル−Co−Aは、認知機能に関する神経伝達物質であるアセチルコリンの合成に重要である。従ってGSK3βの阻害は、アルツハイマー病および他の上記関連疾患に関する進行および認知欠損に有益な効果を有し得る。
【0004】
慢性および急性の神経変性疾患
成長因子が関与するPI3K/Akt経路の活性化は、ニューロンの生存において主要な役割を果たすことが示されている。この経路の活性化によりGSK3βの阻害が起きる。最近の研究(Bhat ら、PNAS 97: 11074−11079(2000))により、GSK3β活性は、脳虚血または成長因子欠乏後のような神経変性の細胞モデルおよび動物モデルにおいて増加することが示されている。例えば、活性部位リン酸化は、一般に、慢性および急性の神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側策硬化症、ハンチントン病およびHIV痴呆、虚血性卒中および脳損傷において生じると考えられている細胞死のタイプであるアポトーシスを受けやすいニューロンにおいて増加した。リチウムは、アポトーシスの阻害において、細胞内および脳内で、GSK3βの阻害を引き起こす用量で、神経を保護した。従って、GSK3β阻害剤は、神経変性疾患の進行を減衰させるのに有用であり得る。
【0005】
双極性障害(BD)
双極性障害(BD)は、躁状態および鬱状態により特徴付けられる。リチウムは、その気分安定効果に基づいて、BDの治療に用いられてきた。リチウムの不利点は、狭い治療ウィンドウおよびリチウム中毒を引き起こし得る過剰摂取の危険性である。リチウムがGSK3を治療的濃度で阻害するという最近の発見が、この酵素が脳におけるリチウムの作用の主要な標的である可能性を提起している(Stambolic ら, Curr. Biol. 6: 1664−1668, 1996;Klein and Melton; PNAS 93: 8455−8459, 1996)。従って、GSK3βの阻害は、BDの処置において、および情動障害を有するAD患者において、治療的に関連があり得る。
【0006】
統合失調症
GSK3は、多様な細胞過程の、特に神経系の発達に際したシグナル変換カスケードに関与する。Kozlovskyら(Am J Psychiatry 2000 May; 157 (5): 831−3)は、統合失調症患者のGSK3βレベルが対照被験者に比べて41%低いことを見出した。この研究により、統合失調症は神経発達上の病理に関与し、異常なGSK3調節が統合失調症に影響を及ぼし得ることが示された。更に、β−カテニンレベルの減少が統合失調症を示す患者において報告されている(Cotterら, Neuroreport 9: 1379−1383 (1998))。
【0007】
糖尿病
インシュリンは、骨格筋においてグリコーゲンシンターゼの脱リン酸化、および従ってその活性化によりグリコーゲン合成を刺激する。静止状態下で、GSK3は脱リン酸化によりグリコーゲンシンターゼをリン酸化し、不活性化する。GSK3はまた、II型糖尿病患者の筋内で過剰発現される(Nikoulina ら, Diabetes 2000 Feb; 49 (2): 263−71)。GSK3の阻害は、グリコーゲンシンターゼの活性を増大させ、その結果、グルコースのグリコーゲンへの変換によってグルコースレベルが減少する。従ってGSK3阻害は、I型およびII型糖尿病並びに糖尿病性神経障害の処置において、治療的に関連があり得る。
【0008】
脱毛症
GSK3はβ−カテニンをリン酸化し、分解する。β−カテニンはケラトニン合成経路のエフェクターである。β−カテニンの安定化は、毛髪発達の増加を引き起こし得る。GSK3によりリン酸化される部位の変異により安定化したβ−カテニンを発現するマウスは、デノボ毛髪形態形成に類似する過程を経過する(Gat ら, Cell 1998 Nov 25; 95 (5): 605−14)。新規毛包形成脂腺および皮膚乳頭は、通常胚形成においてのみ確認される。従って、GSK3阻害は禿頭症の処置を提供し得る。
【0009】
経口避妊薬
Vijajaraghavanらは、不動性の精子に比べて、可動性の精子ではGSK3が高値であることを報告した(Biol Reprod 2000 Jun;62(6):1647-54)。免疫細胞化学により、GSK3が鞭毛および精子頭部の前方部分に存在することが明らかになった。これらのデータは、GSK3が精巣上体の運動性の開始および成熟精子機能調節の基礎をなす重要な要素であり得ることを示唆している。GSK3の阻害剤は、男性の避妊薬として有用であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、GSK3に対する選択的な阻害効果および良好な生物学的利用能を有する化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明は、式I:
【化1】

[式中、
Pが、C、N、OまたはSから独立して選ばれる原子を含有する5員または6員の、芳香族の、飽和の、または不飽和の環である場合、YはCHであり;
Pが、C、N、OまたはSから独立して選ばれる原子を含有する、5員の芳香族環または5員もしくは6員の飽和もしくは不飽和の環である場合、YはNであり;
【0012】
1は、水素であり;
2は、ヒドロキシ、ハロゲノ、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、シアノ、アミノ、ニトロ、C1-3アルキル、C1-3アルコキシ、C1-3アルカノイルオキシ、C2-4アルカノイル、C1-4アルカノイルアミノ、C1-4アルコキシカルボニル、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル、C1-4アルキルスルホニル、カルバモイル、N−C1-4アルキルカルバモイル、N,N−ジ(C1-4アルキル)カルバモイル、アミノスルホニル、N−C1-4アルキルアミノスルホニル、N,N−ジ(C1-4アルキル)アミノスルホニル、C1-4アルキルスルホニルアミノ、または基R41であり、
ここで、X1は直接結合、C2-4アルカノイル、CONR56、SO2NR78またはSO29(ここで、R5およびR7はそれぞれ独立して水素またはC1-2アルキルであり、R6、R8およびR9はそれぞれ独立してC1-4アルキルであり、ここでR4はR6、R8またはR9に結合している)であり;そして、
【0013】
4は、フェニル、または独立してO、SおよびNから選ばれる1個もしくは2個のヘテロ原子を有する5員もしくは6員の複素環式基であり、該複素環式基は飽和であっても不飽和であってもよく、そして、該フェニルまたは複素環式基は、ヒドロキシ、ハロゲノ、C1-3アルキル、C1-3アルコキシ、C1-3アルカノイルオキシ、トリフルオロメチル、シアノ、アミノ、ニトロおよびC1-4アルコキシカルボニルから独立して選ばれる1個または2個の置換基で置換されていてよく;
3は、ヒドロキシ、ハロゲノ、ニトロ、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、C1-3アルキル、シアノ、アミノまたはR102であり、
ここで、X2はO、CH2、S、SO、SO2、NR11CO、CONR12、SO2NR13、NR14SO2またはNR15(ここで、R11、R12、R13、R14およびR15はそれぞれ独立して、水素、C1-3アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキルである)であるか、またはX2は直接結合であり;そして、
【0014】
10は、次の基:
1)水素、または独立してヒドロキシ、フルオロおよびアミノから選ばれる1個またはそれ以上の基で置換されていてよいC1-5アルキル;
2)C1-5アルキルX3COR16(ここで、X3は、OまたはNR17(ここでR17は、水素、C1-3アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキルである)であり、R16は、C1-3アルキル、NR1819またはOR20(ここでR18、R19およびR20はそれぞれ独立して、水素、C1-3アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキルである)である);
3)C1-5アルキルX421(ここで、X4はO、S、SO、SO2、OCO、NR22CO、CONR23、SO2NR24、NR25SO2またはNR26(ここで、R22、R23、R24、R25およびR26はそれぞれ独立して、水素、C1-3アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキルである)であり、R21は水素、C1-3アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、または独立してO、SおよびNから選ばれる1個もしくは2個のヘテロ原子を有する5員もしくは6員の飽和複素環式基であり、該C1-3アルキル基は、オキソ、ヒドロキシ、ハロゲノおよびC1-4アルコキシから独立して選ばれる1個または2個の置換基で置換されていてよく、該複素環式基は、オキソ、ヒドロキシ、ハロゲノ、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキルおよびC1-4アルコキシから独立して選ばれる1個または2個の置換基で置換されていてよい);
【0015】
4)C1-5アルキルX51-5アルキルX627(ここで、X5およびX6は、それぞれ独立してO、S、SO、SO2、NR28CO、CONR29、SO2NR30、NR31SO2またはNR32(ここで、R28、R29、R30、R31およびR32はそれぞれ独立して水素、C1-3アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキルである)であり、R27は、水素またはC1-3アルキルである);
5)C1-5アルキルR33(ここで、R33は、独立してO、SおよびNから選ばれる1個ま
たは2個のヘテロ原子を有する5員または6員の飽和複素環式基であり、該複素環式基は、オキソ、ヒドロキシ、ハロゲノ、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキルおよびC1-4アルコキシから独立して選ばれる1個または2個の置換基で置換されていてよい);
6)C2-5アルケニルR33(ここで、R33は上記で定義されたとおりである);
7)C2-5アルキニルR33(ここで、R33は上記で定義されたとおりである);
8)R34(ここで、R34は、ピリドン基、フェニル基、または独立してO、NおよびSから選ばれる1〜3個のヘテロ原子を有する5員もしくは6員の芳香族複素環式基であり、該ピリドン、フェニルまたは複素環式基は、ヒドロキシ、ハロゲノ、アミノ、C1-4アル
キル、C1-4アルコキシ、C1-4ヒドロキシアルキル、C1-4アミノアルキル、C1-4アルキルアミノ、C1-4ヒドロキシアルコキシ、カルボキシ、シアノ、CONR3536およびNR37COR38(ここで、R35、R36、R37およびR38は、それぞれ独立して水素、C1-4アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキルである)から独立して選ばれる最大5個までの置換基を有し得る);
【0016】
9)C1-5アルキルR34(ここで、R34は上記で定義されたとおりである);
10)C2-5アルケニルR34(ここで、R34は上記で定義されたとおりである);
11)C2-5アルキニルR34(ここで、R34は上記で定義されたとおりである);
12)C1-5アルキルX734(ここで、X7はO、S、SO、SO2、NR39CO、CONR40、SO2NR41、NR42SO2またはNR43(ここで、R39、R40、R41、R42およびR43は、それぞれ独立して水素、C1-3アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキルである)であり、R34は上記で定義されたとおりである);
13)C2-5アルケニルX834(ここで、X8は、O、S、SO、SO2、NR44CO、CONR45、SO2NR46、NR47SO2またはNR48(ここで、R44、R45、R46、R47およびR48は、それぞれ独立して水素、C1-3アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキ
ルである)であり、R34は上記で定義されたとおりである);
14)C2-5アルキニルX934(ここで、X9は、O、S、SO、SO2、NR49CO、CONR50、SO2NR51、NR52SO2またはNR53(ここで、R49、R50、R51、R52およびR53は、それぞれ独立して水素、C1-3アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキルである)であり、R34は上記で定義されたとおりである);および、
【0017】
15)C1-3アルキルX101-3アルキルR34(ここで、X10は、O、S、SO、SO2、NR54CO、ONR55、SO2NR56、NR57SO2またはNR58(ここで、R54、R55、R56、R57およびR58は、それぞれ独立して水素、C1-3アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキルである)であり、R34は上記で定義されたとおりである);
16)R33(ここで、R33は上記で定義されたとおりである);および、
17)C1-3アルキルX101-3アルキルR33(ここで、X10およびR33上記で定義されたとおりである);
のうちの1つから選ばれ;
nは、0、1、2、3または4であり;
mは、0、1、2、3または4である]
の化合物の遊離塩基またはその塩を提供する。
【0018】
本発明の1つの態様は、R2が、C1-3アルキル、ハロゲノ、シアノ、ニトロ、カルバモイル、N−C1-4アルキルカルバモイル、アミノスルホニル、C1-4アルコキシカルボニルまたは基R41であり、
ここで、X1は、CONR56(ここでR5は水素またはC1-2アルキルであり、R6はC1-4アルキルであり、そしてここで、R4はR6に結合している)であり;そして、
nは、0、1または2である、
式Iの化合物に関する。
【0019】
本発明の別の態様は、式Iにおいて、R3がR102であり、
ここで、X2はOであり;そして、
10は次の基:
1)水素またはC1-5アルキル;
3)C1-5アルキルX421(ここで、X4はOまたはNR26(ここで、R21およびR26は、それぞれ独立して水素、C1-3アルキル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルである)である);
4)C1-5アルキルX51-5アルキルX627(ここで、X5およびX6はOであり、R27は水素またはC1-3アルキルである);
5)C1-5アルキルR33(ここで、R33は独立してO、SおよびNから選ばれる1個または2個のヘテロ原子を有する5員または6員の飽和複素環式基である);
9)C1-5アルキルR34(ここで、R34は、独立してO、NおよびSから選ばれる1〜3個のヘテロ原子を有する5員または6員の芳香族複素環式基であり、該複素環式基は、ハロゲノ、アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ヒドロキシアルキル、C1-4アミノアルキル、C1-4アルキルアミノ、C1-4ヒドロキシアルコキシ、カルボキシ、ヒドロキシ、シアノ、CONR3536およびNR37COR38(ここで、R35、R36、R37およびR38は、それぞれ独立して水素、C1-4アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキルである)から独立して選ばれる最大5個までの置換基を有し得る);
17)C1-3アルキルX101-3アルキルR33(ここで、X10はOであり、R33は独立してO、SおよびNから選ばれる1個または2個のヘテロ原子を有する5員または6員の飽和複素環式基である);
のうちの1つから選ばれ;
mは、0、1または2である;
式Iの化合物を提供する。
【0020】
本発明の更なる態様において、次の化合物:
3−[6−(2−メトキシエトキシ)イソキノリン−1−イル]−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−カルボニトリル、
3−{6−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]イソキノリン−1−イル}−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−カルボニトリル、
2−ヒドロキシ−3−チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−イル−1H−インドール−5−カルボン酸メチルエステル、および
2−ヒドロキシ−3−(5,6,7,8−テトラヒドロキナゾリン−4−イル)−1H−インドール−5−カルボン酸メチルエステル;
の遊離塩基またはその塩、並びに、
3−{6−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]イソキノリン−1−イル}−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−カルボニトリルトリフルオロアセテート;
を提供する。
【0021】
本発明を説明するために本明細書および特許請求の範囲において用いる様々な用語の定義を以下に挙げる。
【0022】
疑念を回避するために、本明細書において、基が「上記定義の」または「上記で定義された」によって修飾される場合、その基は、最初に記載された、および最も広義の定義、並びにその基の好ましい定義のうちのそれぞれ全てを包含することが理解されるであろう。
【0023】
疑念を回避するために、本明細書において、「C1-5」は1、2、3、4または5個の炭素原子を有する炭素基を意味することが理解されるであろう。
【0024】
本明細書において、特に記載しない限り、「アルキル」なる用語は直鎖状および分枝鎖状の両方のアルキル基を包含する。C1-5アルキルは、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、t−ペンチル、neo−ペンチルであり得る。
【0025】
本明細書で用いる「アルコキシ」なる用語は、特に記載しない限り、「アルキル」が上記で定義されたとおりであるような「アルキル」O基を包含する。C1-5アルコキシは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、i−ペンチルオキシ、t−ペンチルオキシ、neo−ペンチルオキシであり得る。
【0026】
本明細書で用いる「アルカノイル」なる用語は、特に記載しない限り、ホルミル基、および「アルキル」が上記で定義されたとおりであるようなアルキルC=O基を包含し、例えばC2アルカノイルはエタノイルであってCH3C=Oを指し、Clアルカノイルはホル
ミルであってCHOを指す。
【0027】
本明細書において、特に記載しない限り、「アルケニル」なる用語は直鎖状および分枝鎖状の両方のアルケニル基を包含するが、2−ブテニルのような単一のアルケニル基については、直鎖状のもののみに特定される。特に記載しない限り、有利には、「アルケニル」なる用語は2〜5個の炭素原子、好ましくは3〜4個の炭素原子を有する鎖を指す。
【0028】
本明細書において、特に記載しない限り、「アルキニル」なる用語は直鎖状および分枝鎖状の両方のアルキニル基を包含するが、2−ブチニルのような単一のアルキニル基については、直鎖状のもののみに特定される。特に記載しない限り、有利には、「アルキニル」なる用語は2〜5個の炭素原子、好ましくは3〜4個の炭素原子を有する鎖を指す。
【0029】
本明細書において、特に記載しない限り、「C、N、OまたはSから独立して選ばれる原子を含有する5員または6員の、芳香族の、飽和の、または不飽和の環」なる記載は、フリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、チアゾリル、チエニル、イミダゾリル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、モルホリニル、ピペラジニル、ピペリジル、ピペリドニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピロリジニル、ピロリニル、チオフェニル、テトラヒドロピラニル、チオモルホリニル、シクロヘキシルまたはシクロペンチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
本明細書において、特に記載しない限り、「C、N、OまたはSから独立して選ばれる原子を含有する、5員の芳香族環または5員もしくは6員の飽和もしくは不飽和の環」なる記載は、フリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、モルホリニル、ピペラジニル、ピペリジル、ピペリドニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピロリジニル、ピロリニル、ピロリル、チアゾリル、チオフェニル、テトラヒドロピラニルまたはチオモルホリニルであり得るが、これらに限定されない。
【0031】
本明細書において、特に記載しない限り、「O、SおよびNから独立して選ばれる1個または2個のヘテロ原子を有する5員または6員の複素環式基であり、該複素環式基は飽和していても、または不飽和であってもよい」なる記載は、ヘテロ芳香環および飽和している複素環式環の両方を包含する。このような複素環式基の例としては、フリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、チアゾリル、チエニル、イミダゾリル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、モルホリニル、ピペラジニル、ピペリジル、ピペリドニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピロリジニル、ピロリニル、テトラヒドロピラニルまたはチオモルホリニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
本明細書において、特に記載しない限り、「O、SおよびNから独立して選ばれる1個または2個のヘテロ原子を有する5員または6員の飽和複素環式基」なる記載は、イミダゾリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、ピペリジル、ピペリドニル、ピラゾリジニル、ピロリジニル、テトラヒドロピラニルまたはチオモルホリニルであり得るが、これらに限定されない。
【0033】
本明細書において、特に記載しない限り、「O、NおよびSから独立して選ばれる1〜3個のヘテロ原子を有する5員または6員の芳香族複素環式基」なる記載は、フリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、ピラジニル、トリアジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、チアゾリルまたはチエニルであり得るが、これらに限定されない。
【0034】
本明細書において、特に記載しない限り、「O、NおよびSから独立して選ばれる1〜3個のヘテロ原子を含む5員または6員の複素環式環」なる記載は、フリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、チアゾリルまたはチエニルであり得るが、これらに限定されない。
【0035】
本明細書において、特に記載しない限り、ハロゲノなる用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり得る。
【0036】
あらゆる疑念を回避するために、X2が例えば式NR11COの基である場合、これはキナゾリン環に結合している、R11基を有する窒素原子であって、カルボニル(CO)基はR10に結合しているが、これに対して、X2が例えば式CONR12の基である場合、これはキナゾリン環に結合しているカルボニル基であって、R12基を有する窒素原子はR10に結合していることが理解されよう。同様の決まりが、NR14SO2およびSO2NR13のような他の2原子X2結合基に当てはまる。X2がNR15である場合、これはキナゾリン環およびR10に結合している、R15基を有する窒素原子である。同様の決まりが他の基に当てはまる。更に、X2がNR15であって、R15がC1-3アルコキシC2-3アルキルである場合、これはX2の窒素原子に結合しているC2-3アルキル部分であって、同様の決まりが他の基に当てはまることが理解されよう。
【0037】
あらゆる疑念を回避するために、式Iの化合物において、R10が例えば式C1-5アルキルX101-5アルキルR34の基である場合、これはX10に結合している末端C1-5アルキル部分であり、同様にR10が例えば式C2-5アルケニルR34の基である場合、これはX2に結合しているC2-5アルケニル部分であり、同様の決まりが他の基に当てはまることが理解されよう。
【0038】
あらゆる疑念を回避するために、R34がC1-4アミノアルキル置換基を有する場合、これは、R34に結合しているC1-4アルキル部分であり、これに対して、R34がCl-4アルキルアミノ置換基を有する場合、これはR34に結合しているアミノ部分であり、同様の決まりが他の基に当てはまることが理解されよう。
【0039】
あらゆる疑念を回避するために、X1がC2-4アルカノイルである場合、これはヘテロ芳香族オキシインドール基に結合しているカルボニル部分であり、またこれはR4に結合しているアルキル部分であり、同様の決まりが他の基に当てはまる。
【0040】
本発明は、上記で定義した式Iの化合物の使用およびその塩に関する。医薬組成物に使用される塩は、製薬上許容し得る塩であるが、その他の塩も式Iの化合物の製造に有用であり得る。
【0041】
有機および無機の両方の酸が、非毒性の製薬上許容し得る本発明の化合物の酸付加塩の形成に用いることができる。更に、本発明の化合物の製薬上許容し得る適当な塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または有機塩基との塩である。
【0042】
いくつかの式Iの化合物は、キラル中心および/または幾何異性中心(E−およびZ−異性体)を有し得、そして本発明は、GSK3阻害活性を有するこのような全ての光学異性体、ジアステレオ異性体、および幾何異性体を包含することが理解されよう。
【0043】
本発明はまた、式Iの化合物のいかなるそして全ての互変異性形態に関することが理解されよう。
【0044】
製造方法
本発明はまた、式Iの化合物の製造方法に関する。以下のこのような方法の説明を通して、有機合成の当業者により容易に理解され得る方法で、様々な反応物および中間体に、必要に応じて適当な保護基が添加され、続けて除去されることが理解されよう。このような保護基を用いる慣用の手順、および適当な保護基の例は、例えば「Protective Groups in Organic Synthesis」 T. W. Greene, P. G. M. Wuts, Wiley-Interscience, New York, 1999に記載されている。
【0045】
中間体の製造方法
【化2】

【0046】
(i)式IIの化合物を、適当なアルキル化試薬、例えばR10−L1[式中、R10は上記で定義されたとおりであり、L1はハロゲノ、例えば臭素、塩素、またはアルカン−もしくはアレーンスルホニルオキシ基、例えばp−トルエンスルホニルオキシ基のような脱離基である]を用いてアルキル化して、式IIIの化合物を形成する反応は、N,N−ジメチルホルムアミド、塩化メチレンまたはアセトニトリルのような適当な溶剤中、炭酸カリウムまたはトリエチルアミンのような適当な塩基の存在下で行うことができ、この反応は+20℃〜+130℃の温度で起こる。
【0047】
【化3】

【0048】
(ii)式IIIの化合物を、マロン酸と反応させて式IVの化合物を形成する反応は、ピリジンまたはコリジンのような適当な溶剤中で、ピペリジンまたはモルホリンのような適当な塩基の存在下で行うことができ、この反応は+20℃〜+130℃の温度で起こり、続けて塩酸または硫酸のような適当な酸で処理する。
【0049】
【化4】

【0050】
(iii)式IVの化合物の式Vの化合物への環化は、
a)式IVの化合物中の酸官能基を、塩化チオニルまたは塩化オキサリルのような適当な塩素化試薬を用いて、相当する酸塩化物に変換し、続けてジオキサン、テトラヒドロフラン、水またはそれらの混合物のような適当な溶剤中で、適当なアジド、例えばアジ化ナトリウムで処理して、相当するアシルアジドを形成し、
続けて、
b)アシルアジド化合物を、ジフェニルエーテルのような溶剤中で、+150℃〜+260℃の反応温度で、式Vの化合物に環化することにより行われる。
【0051】
【化5】

【0052】
(iv)式Vの化合物の、式VIの化合物[式中、L2はハロゲノ、例えば塩素または臭素のような適当な脱離基である]への変換は、塩化メチレン、クロロホルム、トルエンのような適当な溶剤中で、塩化チオニル、塩化オキサリル、三塩化リンもしくは三臭化アルミニウムのような適当なハロゲン化試薬を用いて、または該ハロゲン化試薬をニートで用いて、行うことができる。
【0053】
最終生成物の製造方法
本発明の別の目的は、式VI[式中、L2は脱離基であり、P、Y、R3およびnは一般式Iにおいて定義したとおりである]の化合物を、式VII[式中、R1、R2およびmは一般式Iにおいて定義したとおりである]の化合物と反応させることによる、一般式Iの化合物およびその塩の製造方法である。
【0054】
【化6】

【0055】
該方法における反応は、適当な溶剤、エーテル、例えばテトラヒドロフランもしくは1,4−ジオキサン、トルエンのような芳香族炭化水素系溶剤、またはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジン−2−オンもしくはジメチル スルホキシドのような双極性非プロトン性溶剤中で行うことができ、該反応は、+10〜+150℃、好ましくは+20℃〜+90℃の温度で、都合よく達成される。該反応は、塩基の存在下で有利に達成される。このような塩基は、ピリジン、2,6−ルチジン、コリジン、4−ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、モルホリン、N−メチルモルホリンまたはジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、テトラメチルグアニジンのような有機アミン塩基、または炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムのようなアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩もしくは水酸化物の群から選択することができる。別法として、このような塩基は、水素化ナトリウムのようなアルカリ金属水素化物、またはナトリウムアミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウムアミドもしくはカリウムビス(トリメチルシリル)アミドのようなアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のアミドであってよい。
【0056】
酸性塩を得ることが望ましい場合は、慣用の手順を用いて遊離塩基を酸で処理してもよい。
【0057】
中間体
本発明は更に、新規中間体、および上記で定義した式Iの化合物の製造におけるこれらの中間体の使用に関する。
【0058】
本発明の1つの態様において、該中間体は式VI
【化7】

[式中、
2はハロゲノであり;
【0059】
10は、次の基:
1)水素、または独立してヒドロキシ、フルオロおよびアミノから選ばれる1個またはそれ以上の基で置換されていてよいC1-5アルキル;
2)C1-5アルキルX3COR16(ここで、X3は、OまたはNR17(ここでR17は、水素、C1-3アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキルである)であり、R16は、C1-3アルキル、NR1819またはOR20(ここでR18、R19およびR20はそれぞれ独立して、水素、C1-3アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキルである)である);
3)C1-5アルキルX421(ここで、X4はO、S、SO、SO2、OCO、NR22CO、CONR23、SO2NR24、NR25SO2またはNR26(ここで、R22、R23、R24、R25およびR26はそれぞれ独立して、水素、C1-3アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキルである)であり、R21は水素、C1-3アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、または独立してO、SおよびNから選ばれる1個もしくは2個のヘテロ原子を有する5員もしくは6員の飽和複素環式基であり、該C1-3アルキル基は、オキソ、ヒドロキシ、ハロゲノおよびC1-4アルコキシから独立して選ばれる1個または2個の置換基で置換されていてよく、該複素環式基は、オキソ、ヒドロキシ、ハロゲノ、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキルおよびC1-4アルコキシから独立して選ばれる1個または2個の置換基で置換されていてよい);
【0060】
4)C1-5アルキルX51-5アルキルX627(ここで、X5およびX6は、それぞれ独立してO、S、SO、SO2、NR28CO、CONR29、SO2NR30、NR31SO2またはNR32(ここで、R28、R29、R30、R31およびR32は、それぞれ独立して水素、C1-3アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキルである)であり、R27は、水素またはC1-3アルキルである);
5)C1-5アルキルR33(ここで、R33は、独立してO、SおよびNから選ばれる1個または2個のヘテロ原子を有する5員または6員の飽和複素環式基であり、該複素環式基は、オキソ、ヒドロキシ、ハロゲノ、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキルおよびC1-4アルコキシから独立して選ばれる1個または2個の置換基で置換されていてよい);
6)C2-5アルケニルR33(ここで、R33は上記で定義されたとおりである);
7)C2-5アルキニルR33(ここで、R33は上記で定義されたとおりである);
8)R34(ここで、R34は、ピリドン基、フェニル基、または独立してO、NおよびSから選ばれる1〜3個のヘテロ原子を有する5員もしくは6員の芳香族複素環式基であり、該ピリドン、フェニルまたは複素環式基は、ヒドロキシ、ハロゲノ、アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ヒドロキシアルキル、C1-4アミノアルキル、C1-4アルキルアミノ、C1-4ヒドロキシアルコキシ、カルボキシ、シアノ、CONR3536およびNR37COR38(ここで、R35、R36、R37およびR38は、それぞれ独立して水素、C1-4
アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキルである)から独立して選ばれる最大5個までの置換基を有し得る);
【0061】
9)C1-5アルキルR34(ここで、R34は上記で定義されたとおりである);
10)C2-5アルケニルR34(ここで、R34は上記で定義されたとおりである);
11)C2-5アルキニルR34(ここで、R34は上記で定義されたとおりである);
12)C1-5アルキルX734(ここで、X7はO、S、SO、SO2、NR39CO、CONR40、SO2NR41、NR42SO2またはNR43(ここで、R39、R40、R41、R42およびR43は、それぞれ独立して水素、C1-3アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキルで
ある)であり、R34は上記で定義されたとおりである);
13)C2-5アルケニルX834(ここで、X8は、O、S、SO、SO2、NR44CO、CONR45、SO2NR46、NR47SO2またはNR48(ここで、R44、R45、R46、R47およびR48は、それぞれ独立して水素、C1-3アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキルである)であり、R34は上記で定義されたとおりである);
【0062】
14)C2-5アルキニルX934(ここで、X9は、O、S、SO、SO2、NR49CO、CONR50、SO2NR51、NR52SO2またはNR53(ここで、R49、R50、R51、R52およびR53は、それぞれ独立して水素、C1-3アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキルである)であり、R34は上記で定義されたとおりである);および、
15)C1-3アルキルX101-3アルキルR34(ここで、X10は、O、S、SO、SO2、NR54CO、ONR55、SO2NR56、NR57SO2またはNR58(ここで、R54、R55、R56、R57およびR58は、それぞれ独立して水素、C1-3アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキルである)であり、R34は上記で定義されたとおりである);
16)R33(ここで、R33は上記で定義されたとおりである);および、
17)C1-3アルキルX101-3アルキルR33(ここで、X10およびR33上記で定義されたとおりである);
のうちの1つから選ばれる]
の化合物である。
【0063】
本発明の別の態様において、該中間体は式VI
【化8】

[式中、
2はハロゲノであり;
【0064】
10は次の基:
1)水素またはC1-5アルキル;
3)C1-5アルキルX421(ここで、X4はOまたはNR26(ここで、R21およびR26は、それぞれ独立して水素、C1-3アルキル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルである)である);
4)C1-5アルキルX51-5アルキルX627(ここで、X5およびX6はOであり、R27は水素またはC1-3アルキルである);
5)C1-5アルキルR33(ここで、R33はO、SおよびNから独立して選ばれる1個または2個のヘテロ原子を有する5員または6員の飽和複素環式基である);
9)C1-5アルキルR34(ここで、R34は、O、NおよびSから独立して選ばれる1〜3個のヘテロ原子を有する5員または6員の芳香族複素環式基であり、該複素環式基は、ハロゲノ、アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ヒドロキシアルキル、C1-4アミノアルキル、C1-4アルキルアミノ、C1-4ヒドロキシアルコキシ、カルボキシ、ヒドロキシ、シアノ、CONR3536およびNR37COR38(ここで、R35、R36、R37およびR38は、それぞれ独立して水素、C1-4アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキルである)から独立して選ばれる最大5個までの置換基を有し得る);
17)C1-3アルキルX101-3アルキルR33(ここで、X10はOであり、R33はO、SおよびNから独立して選ばれる1個または2個のヘテロ原子を有する5員または6員の飽和複素環式基である);
のうちの1つから選ばれる]
の化合物である。
【実施例】
【0065】
ここで、本発明を以下の非制限的な実施例において説明する。
【0066】
実施例1
6−(2−メトキシエトキシ)イソキノリン−1−オール
3−(2−メトキシエトキシ)ベンズアルデヒド(7.35g、40.6mmol)およびピリジン(65mL)に、マロン酸(8.5g、81.7mmol)およびピペリジン(4mL、40.6mmol)を加えた。得られた黄色溶液を窒素雰囲気下で80℃に加熱した。反応の進行に伴いガスが発生した。2.5時間後に反応を室温に冷まし、1晩撹拌を続けた。反応溶液を真空中で濃縮して、油状物質を得た。この油状物質を氷と共に撹拌し、塩酸(12M、13mL)をゆっくりと加えて磨砕した。得られた黄色沈殿を濾過し、塩酸水溶液(2M,3×20mL)で洗浄した。得られた淡黄色固体を真空中で乾燥して、8.7gを得た。この固体(8.7g、39.2mmol)を塩化チオニル(70mL)およびN,N−ジメチルホルムアミド(5mL)に溶解し、窒素雰囲気下で1晩還流した。16時間後に、反応溶液を室温に冷却し、真空中で濃縮した。残留物をジオキサン(15mL)中にとり、得られた溶液を、5℃で、ジオキサン/水(26mL、1:1)中のアジ化ナトリウム(7.6g、118mmol)の撹拌溶液に加えた。得られた懸濁液を3℃で50分間撹拌し、酢酸エチル(100mL)を加えた。層を分離して、水層を酢酸エチル(2×75mL)で抽出した。合わせた有機層を水(20mL)および塩水(30mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過した。ジフェニルエーテル(30mL)を加えて、酢酸エチルを真空中で除去した。ジフェニルエーテル中のアシルアジ化物溶液を、215℃で15分かけてジフェニルエーテル(70mL)に加えた。反応溶液を2.5時間還流し、次いで室温で1晩撹拌した。反応溶液にジエチルエーテル(100mL)を加え、形成された沈殿を濾過し、ジエチルエーテルで洗浄した。この沈殿をメタノール/ジクロロメタン中にとり、シリカゲル(30g)上に吸着させて、フラッシュクロマトグラフィー(勾配:ジクロロメタン:メタノール;98:2→95:5)により精製した。生成物を含む画分を合わせて、濃縮して、固体を得た。この固体をジエチルエーテルで磨砕して、濾過し、真空中で乾燥して、表題化合物3.15g(収率37%)を得た。MSm/z 200(M++1)。
【0067】
実施例2
1−クロロ−6−(2−メトキシエトキシ)イソキノリン
6−(2−メトキシエトキシ)イソキノリン−1−オール(3.15g、14.4mmol)に、窒素雰囲気下で三塩化リン(70mL)を加えた。混合物を還流で加熱し、ほぼ不透明な褐色溶液を得た。還流で2時間後に、溶液を残りが20mLになるまで真空中で濃縮して、氷水(100mL)上に注いだ。得られた混合物のpHを、固体炭酸カリウムを加えて6.5に調整し、ジクロロメタン(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層を水(50mL)および塩水(50mL)で洗浄し、真空中で濃縮した。得られた黄褐色固体をジクロロメタンにとり、シリカゲル上に吸着させて、フラッシュクロマトグラフィー(勾配:ヘキサン/酢酸エチル、60:40→40:60)により精製し、真空中で乾燥して、淡黄色固体として表題化合物2.73g(収率80%)を得た。MS(AP+)、238(100、M++1)、202(33)、179(33)。
【0068】
実施例3
3−[6−(2−メトキシエトキシ)イソキノリン−1−イル]−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−カルボニトリル
無水テトラヒドロフラン中の5−シアノオキシインドール(400mg、2.53mmol)の溶液に、窒素雰囲気下で、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(764mL、5.06mmol)を加えた。溶液を−71℃に冷却し、リチウムジイソプロピルアミド(3.87mL、5.06mmol、シクロヘキサン中1.5M)をゆっくりと加えて明黄色溶液を得た。テトラヒドロフラン(20mL)中の1−クロロ−6−(2−メトキシエトキシ)イソキノリン(661mg、2.78mmol)の溶液を加えて、反応溶液を−7.5℃で30分間、および室温で30分間撹拌した。次いで反応溶液を還流した。7.5時間後に、反応溶液を室温に冷却し、塩化アンモニウム水溶液を加えた。得られた橙色溶液を真空中で濃縮した。ジクロロメタンを加えて、形成された赤橙色を濾過した。層を分離し、水層をジクロロメタン(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層を水(50mL)および塩水(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過して濃縮した。得られた橙色固体を赤橙色沈殿と合わせ、メタノール/ジクロロメタンと混合した。沈殿をメタノールで洗浄した。母液をシリカゲル上に吸着させて、フラッシュクロマトグラフィー(勾配;ジクロロメタン/メタノール、99:1→97:3)により精製して、生成物30mgを得た。フラッシュクロマトグラフィー生成物を沈殿と合わせ、固体をジエチルエーテルで磨砕し、真空中で乾燥して、橙色固体として表題化合物463mg(収率51%)を得た:mp214−219℃。MS(AP+)m/z360(M++1)。
【0069】
実施例4
3−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]ベンズアルデヒド
N,N−ジメチルホルムアミド(100mL)中の3−ヒドロキシベンズアルデヒド(5.0g、41mmol)の溶液に、ブロモ−2−(2−メトキシエトキシ)エタン(6.0mL、45mmol)を加え、続けて固体炭酸カリウム(17g、122mmol)を加えた。得られたスラリーを窒素下で、57℃で19時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、濾過した。濾液ケークをメタノールで洗浄し、濾液を真空中で〜50mLに減らして、水(200mL)中に注いだ。溶液を塩酸(1M)でpH〜4に酸性化し、酢酸エチル(3×150mL)で抽出した。合わせた有機層を硫酸銅水溶液(75mL)、水(100mL)および塩水(100mL)で洗浄して、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過して、真空中で濃縮し、粘稠性油状物質を得た。この油状物質を真空中で乾燥して、黄褐色油状物質として表題化合物9.3g(収率99%)を得た。1HNMR (300 MHz, DMSO-d6,TFA-d) δ 9.98 (s, 1 H), 7.51 (m, 2 H), 7.44 (s, 1 H), 7.30 (m, 1 H), 4.18 (t J = 5 Hz, 2 H), 3.76 (t, J = 5 Hz, 2 H), 3.60 (t, J = 5 Hz, 2 H), 3.46 (t, J= 5 Hz, 2 H), 3.25 (s, 3 H)。
【0070】
実施例5
3−{3−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]フェニル}アクリル酸
ピリジン(70mL)中の3−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]ベンズアルデヒド(9.18g、40.9mmol)の溶液に、窒素下で、マロン酸(8.69g、81.9mmol)を、続けてピペリジン(4.13mL、40.9mmol)を加えた。反応溶液を85℃で3時間撹拌し、室温で1晩撹拌を続けた。反応溶液を濃縮して油状物質を得、高真空下で1晩放置して残留ピリジンを除去した。油状物質に氷(120g)を加え、激しく撹拌しながら濃塩酸(13mL)を加えた。混合物を塩化メチレン(3×65mL)で抽出して、合わせた有機層を水(60mL)および塩水(60mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過して、真空中で濃縮した。得られた油状物質を高真空中で乾燥して、表題化合物10.8g(収率99%)を得た。1HNMR (300MHz, DMSO-d6) δ 12.28 (br s,1 H), 7.56 (d, J= 16 Hz, 1 H), 7.28 (m, 3 H), 6.99 (dd, J = 8 Hz, J = 2 Hz, 1 H), 6.56 (d, J = 16 Hz,1 H), 4.14 (t, J = 5 Hz, 2 H), 3.75 (t, J = 5 Hz, 2 H), 3.60 (t, J = 5 Hz, 2 H), 3.36 (t, J=5 Hz, 2 H), 3.25 (s, 3 H)。
【0071】
実施例6
6−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]−2H−イソキノリン−1−オン
3−{3−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]フェニル}アクリル酸(10.7g、40.4mmol)に、塩化チオニル(60mL)およびN,N−ジメチルホルムアミド(5mL)を加え、反応溶液を窒素雰囲気下で15時間還流した。反応溶液を乾燥し、濃縮して、得られた油状物質を1,4−ジオキサン(25mL)にとり、0℃で、水/ジオキサン(28mL、1:1)中のアジ化ナトリウム(7.87g、121mmol)の溶液に15分かけて滴加した。懸濁液を0℃で30分間撹拌し、その後沈殿を濾過し、酢酸エチルで洗浄した。濾液を酢酸エチル(3×150mL)で抽出し、合わせた有機層を水(75mL)および塩水(75mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥して濾過した。アジドを含む溶液の体積を真空中で減らして、ジフェニルエーテル(20mL)を加え、残留している酢酸エチルを真空中で除去した。アジドのジフェニルエーテル溶液を、20分かけて熱ジフェニルエーテル(65mL、230℃)に滴加し、得られた溶液を2時間還流で加熱(〜260℃)し、次いで室温で1晩撹拌を続けた。ヘキサンを反応溶液に加え、生成物が黒色油状物質として析出した。油状物質をシリカゲルに吸着させて、フラッシュクロマトグラフィー(溶剤勾配:メタノール/塩化メチレン、2:98→4:96)により精製し、適当な画分を濃縮し、乾燥して、黄色固体として表題化合物3.4g(収率32%)を得た。MS(AP+)m/z 264(M++1)。
【0072】
実施例7
1−クロロ−6−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]イソキノリン
三塩化リン(60mL)および6−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]−2H−イソキノリン−1−オン(3.38g、14.3mmol)を、窒素雰囲気下で2時間、還流で撹拌した。反応溶液を室温に冷却し、真空中で残りが10mLになるまで濃縮した。得られた油状物質を氷水(80mL)上に注ぎ、1時間撹拌した。固体炭酸カリウムを添加して混合物を中性にして、塩化メチレン(3×80mL)で抽出した。合わせた有機層を、水(50mL)および塩水(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過して濃縮した。得られた油状物質をシリカゲル上に吸着させて、フラッシュクロマトグラフィー(勾配:ヘキサン/酢酸エチル、6:4→4:6)により精製した。適当な画分を集め、濃縮し、乾燥して、蝋状固体として表題化合物1.24g(収率30%)を得た。MS(AP+)m/z 282(M+1)。
【0073】
実施例8
3−{6−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]イソキノリン−1−イル}−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−カルボニトリルトリフルオロアセテート
テトラヒドロフラン(10mL)中の水素化ナトリウム(92mg、3.55mmol、95%粉末)の懸濁液を、カニューレを通して、テトラヒドロフラン/N−メチルピロリジノン(15mL、2:1)中の2−オキソ−5−インドリンカルボニトリル(292mg、1.85mmol)の溶液に、窒素雰囲気下でゆっくりと加えた。反応混合物を室温で25分間撹拌した。テトラヒドロフラン(10mL)中のクロロ−6−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]イソキノリン(400mg、1.42mmol)の溶液を加え、反応溶液を室温で1晩撹拌した。塩酸(1M)をゆっくりと加えて反応をクエンチし、真空中で濃縮してスラリーにした。スラリーをアセトニトリル(5mL)で希釈して、分取RP−HPLC(C18 2”カラム、勾配:アセトニトリル/水;20:80→0:100+0.1%TFA)により精製した。適当な画分を集めて凍結乾燥して、橙色のトリフルオロ酢酸塩として表題化合物193mg(収率27%)を得た。MS(AP+)m/z 404(M+1)。
【0074】
実施例9
2−ヒドロキシ−3−チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−イル−1H−インドール−5−カルボン酸メチルエステル
窒素雰囲気下の、N−メチルピロリジノン(1mL)中のナトリウムtert−ブトキシド(40.3mg、0.42mmol)およびメチル2−オキソ−5−インドリンカルボキシレート(17.6mg、0.092mmol)を室温で5分間撹拌した。N−メチルピロリジノン中の4−クロロチエノ[2,3−d]ピリミジン(0.1mL、0.84M、14.3mg、0.084mmolに相当)の溶液を加え、反応混合物を室温で1晩撹拌した。反応混合物を水(20mL)で希釈し、塩酸(1M)で酸性化して、酢酸エチル(2×15mL)で抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して濃縮した。粗生成物を塩化メチレンで磨砕して、青銅色固体として表題化合物10mg(収率36%)を得た。MS(AP−)m/z 324(M−1)。
【0075】
実施例10
2−ヒドロキシ−3−(5,6,7,8−テトラヒドロキナゾリン−4−イル)−1H−インドール−5−カルボン酸メチルエステル
ナトリウムtert−ブトキシド(48mg、0.5mmol)、メチル2−オキソ−5−インドリンカルボキシレート(21mg、0.11mmol)および4−クロロ−5,6,7,8−テトラヒドロキナゾリン溶液(0.1mL、N−メチルピロリジノン中1M、17mg、0.1mmolに相当;Budesinsky Z., Roubinek F. Collect. Czech. Chem. Commun., 1964,29,2341に記載される)を用いて、実施例9について記載した手順に従って、表題化合物を合成した。粗油状物質を、溶離剤として酢酸エチル、塩化メチレン、塩化メチレン/メタノール1:1、およびメタノール/アンモニア(2M、水溶液)を用いて、メタノールで予めリンスしてあるSCX−カラム上で精製した。生成物をジエチルエーテルで磨砕して、高真空中で乾燥し、固体として表題化合物7mg(収率22%)を得た。MS(AP+)m/z 324.1(M+1)。
【0076】
医薬組成物
本発明の1つの態様によれば、痴呆関連疾患、アルツハイマー病、およびグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3関連症状、および次に挙げる他の症状の治療および/または予防に使用するための、式Iの化合物の遊離塩基またはその塩を含む医薬組成物が提供される。
【0077】
本組成物は、経口投与に適当な形態、例えば錠剤、丸剤、シロップ剤、粉剤、顆粒剤もしくはカプセル剤、非経口注射(静脈内、皮下、筋内、血管内、もしくは注入を含む)に適当な形態、例えば無菌液剤、懸濁剤もしくは乳剤、局所投与に適当な形態、例えば軟膏剤、パッチ剤もしくはクリーム剤、または直腸投与に適当な形態、例えば坐剤であってよい。
【0078】
一般に、上記の組成物は、製薬上許容し得る担体または希釈剤を用いて慣用の方法で製造できる。
【0079】
ヒトを含む哺乳動物の治療における式Iの化合物の適当な日用量は、経口投与では約0.01〜250mg/kg体重であり、非経口投与では約0.001〜250mg/kg体重である。活性成分の典型的な日用量は広い範囲で変化し、関連する兆候、投与経路、患者の年齢、体重および性別のような様々な因子によって決まり、医師が決定することができる。
【0080】
医療用途
驚くべきことに、本発明において定義した化合物の遊離塩基またはその塩は、治療に有用であることが見出された。本発明の化合物は、グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3(GSK3)の阻害に非常に適している。従って、本発明の化合物はグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3活性に関連する症状の治療および/または予防に有用であると考えられ、即ち本化合物は、このような治療および/または予防が必要なヒトを含む哺乳動物において、GSK3の阻害効果を引き起こすために用いることができると考えられる。
【0081】
GSK3は、中枢および末梢神経系において、および他の組織において高度に発現される。従って、本発明の化合物は、中枢および末梢神経系におけるグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3関連症状の治療および/または予防に非常に適していると考えられる。特に、本発明の化合物は、痴呆関連疾患およびアルツハイマー病の治療および/または予防のための医薬の製造に適していると考えられる。
【0082】
痴呆関連疾患は、前頭頭頂性痴呆パーキンソン型、Guamパーキンソン痴呆複合、HIV痴呆、神経原線維変化病理関連疾患、痴呆前状態、血管性痴呆、レビー小体痴呆、前頭頭頂性痴呆およびボクサー痴呆から成る群より選ばれる。本発明の化合物はまた、筋萎縮性側索硬化症、大脳皮質基底核変性症、ダウン症候群、ハンチントン病、パーキンソン病、脳萎縮後パーキンソン症、進行性核上麻痺、ピック病、ニーマン−ピック病、卒中、脳損傷、および他の慢性神経変性疾患、双極性疾患、情動障害、うつ病、統合失調症、認知障害、脱毛症の治療および/または予防のための医薬の製造に、および避妊薬の製造に適していると考えられる。
【0083】
本発明の化合物は更に、軽度の認知機能障害、加齢関連記憶障害、加齢関連認知衰退、非痴呆性認知機能障害、軽度の認知衰退、軽度の神経性認知衰退、Late−Life健忘症、記憶障害および認知障害、並びに男性ホルモン性脱毛症の治療および/または予防のための医薬の製造に適していると考えられる。
【0084】
本発明はまた、グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3関連症状の治療および/または予防のための医薬の製造における、上記で定義した式Iの化合物の使用に関する。
【0085】
本明細書の文脈において、それに反する特定の指示がないならば、「治療」なる用語は「予防」も包含する。「治療的」および「治療的に」なる用語は適宜に解釈されるべきである。
【0086】
本発明はまた、痴呆関連疾患、アルツハイマー病およびグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3関連症状、並びに上記に挙げた他の症状の治療および/または予防が必要な、ヒトを含む哺乳動物に、治療有効量の上記で定義された式Iの化合物を投与することから成る、このような疾患を治療および/または予防する方法を提供する。
【0087】
非医薬用途
治療用医薬におけるそれらの用途に加えて、式Iの化合物の遊離塩基またはその塩は、新規治療剤を探索する一環として、ネコ、イヌ、ウサギ、サル、ラットおよびマウスのような実験動物における、GSK3に関連する活性の阻害効果を評価するための、インビトロおよびインビボ試験システムの開発および標準化における薬理学的ツールとしても有用である。
【0088】
薬理学
シンチレーション近接GSK3βアッセイにおける、ATP競合の測定
GSK3βシンチレーション近接アッセイ
競合実験を、底が透明なマイクロタイタープレート(Wallac、Finland)において、10種の異なる濃度の阻害剤を用いて2連で行った。ビオチン化ペプチド基質、Biotin−Ala−Ala−Glu−Glu−Leu−Asp−Ser−Arg−Ala−Gly−Ser(PO3H2)−Pro−Gln−Leu(AstraZeneca、Lund)を、1mU組替えヒトGSK3β(Dundee University、UK)、12mMモルホリンプロパンエタンスルホン酸(MOPS)、pH7.0、0.3mM EDTA、0.01% β−メルカプトエタノール、0.004% Brij35(天然界面活性剤)、0.5%グリセロール、および0.5μg BSAを含むアッセイバッファー 25μl中に最終濃度1μMで加えた。アッセイ容量 25μlで、0.04μCi[γ−33P]ATP(Amersham, UK)および非標識ATPを最終濃度1μMで添加して反応を開始した。20分間室温でインキュベーションした後に、5mM EDTA、50μM ATP、0.1%Triton X−100および0.25mgストレプトアビジン被覆シンチレーション近接アッセイ(SPA)ビーズ(Amersham, UK)を含む停止溶液25μlを添加して、各反応を終了した。6時間後に、液体シンチレーションカウンター(1450 MicroBeta Trilux, Wallac)において放射活性を測定した。阻害曲線を、GraphPad Prism, USAを用いて、非線形回帰により分析した。様々な化合物の阻害定数(Ki)の計算に用いるGSK3βについてのATPのKm値は、20μMであった。
【0089】
次の略語を用いた:
ATP アデノシントリホスファターゼ
BSA ウシ血清アルブミン
EDTA エチレンジアミンテトラ酢酸
GSK3 グリコーゲンシンターゼキナーゼ3
MOPS モルホリンプロパンスルホン酸
SPA シンチレーション近接アッセイ
【0090】
結果
本発明の化合物についての標準Ki値は、約0.001〜約10,000nMの範囲であった。その他のKi値は、約0.001〜約1000nMの範囲であった。更に他のKi値は、約0.001nM〜約300nMの範囲であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離塩基またはその塩である、式I
【化1】


の化合物。
式中、
Pが、C、N、OまたはSから独立して選ばれる原子を含有する5員または6員の、芳香族の、飽和の、または不飽和の環である場合、YはCHであり;
Pが、C、N、OまたはSから独立して選ばれる原子を含有する、5員の芳香族環または5員もしくは6員の飽和もしくは不飽和の環である場合、YはNであり;
1は、水素であり;
2は、ヒドロキシ、ハロゲノ、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、シアノ、アミノ、ニトロ、C1-3アルキル、C1-3アルコキシ、C1-3アルカノイルオキシ、C2-4アルカノイル、C1-4アルカノイルアミノ、C1-4アルコキシカルボニル、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル、C1-4アルキルスルホニル、カルバモイル、N−C1-4アルキルカルバモイル、N,N−ジ(C1-4アルキル)カルバモイル、アミノスルホニル、N−C1-4アルキルアミノスルホニル、N,N−ジ(C1-4アルキル)アミノスルホニル、C1-4アルキルスルホニルアミノ、または基R41であり、
ここで、X1は直接結合、C2-4アルカノイル、CONR56、SO2NR78またはSO29(ここで、R5およびR7はそれぞれ独立して水素またはC1-2アルキルであり、R6、R8およびR9はそれぞれ独立してC1-4アルキルであり、ここでR4はR6、R8またはR9に結合している)であり;そして、
4は、フェニル、または独立してO、SおよびNから選ばれる1個もしくは2個のヘテロ原子を有する5員もしくは6員の複素環式基であり、該複素環式基は飽和であっても不飽和であってもよく、また、該フェニルまたは複素環式基は、ヒドロキシ、ハロゲノ、C1-3アルキル、C1-3アルコキシ、C1-3アルカノイルオキシ、トリフルオロメチル、シアノ、アミノ、ニトロおよびC1-4アルコキシカルボニルから独立して選ばれる1個または2個の置換基で置換されていてよく;
3は、ヒドロキシ、ハロゲノ、ニトロ、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、C1-3アルキル、シアノ、アミノまたはR102であり、
ここで、X2はO、CH2、S、SO、SO2、NR11CO、CONR12、SO2NR13、NR14SO2またはNR15(ここで、R11、R12、R13、R14およびR15はそれぞれ独立して、水素、C1-3アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキルである)であるか、またはX2は直接結合であり;そして、
10は、次の基:
1)水素、または独立してヒドロキシ、フルオロおよびアミノから選ばれる1個またはそれ以上の基で置換されていてよいC1-5アルキル;
2)C1-5アルキルX3COR16(ここで、X3は、OまたはNR17(ここでR17は、水素
、C1-3アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキルである)であり、R16は、C1-3アルキル、NR1819またはOR20(ここでR18、R19およびR20はそれぞれ独立して、水素、C1-3アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキルである)である);
3)C1-5アルキルX421(ここで、X4はO、S、SO、SO2、OCO、NR22CO、CONR23、SO2NR24、NR25SO2またはNR26(ここで、R22、R23、R24、R25およびR26はそれぞれ独立して、水素、C1-3アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキルである)であり、R21は水素、C1-3アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、または独立してO、SおよびNから選ばれる1個もしくは2個のヘテロ原子を有する5員もしくは6員の飽和複素環式基であり、該C1-3アルキル基は、オキソ、ヒドロキシ、ハロゲノおよびC1-4アルコキシから独立して選ばれる1個または2個の置換基で置換されていてよく、該複素環式基は、オキソ、ヒドロキシ、ハロゲノ、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキルおよびC1-4アルコキシから独立して選ばれる1個または2個の置換基で置換されていてよい);
4)C1-5アルキルX51-5アルキルX627(ここで、X5およびX6は、それぞれ独立してO、S、SO、SO2、NR28CO、CONR29、SO2NR30、NR31SO2またはNR32(ここで、R28、R29、R30、R31およびR32はそれぞれ独立して水素、C1-3アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキルである)であり、R27は、水素またはC1-3アルキルである);
5)C1-5アルキルR33(ここで、R33は、独立してO、SおよびNから選ばれる1個または2個のヘテロ原子を有する5員または6員の飽和複素環式基であり、該複素環式基は、オキソ、ヒドロキシ、ハロゲノ、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキルおよびC1-4アルコキシから独立して選ばれる1個または2個の置換基で置換されていてよい);
6)C2-5アルケニルR33(ここで、R33は上記で定義されたとおりである);
7)C2-5アルキニルR33(ここで、R33は上記で定義されたとおりである);
8)R34(ここで、R34は、ピリドン基、フェニル基、または独立してO、NおよびSから選ばれる1〜3個のヘテロ原子を有する5員もしくは6員の芳香族複素環式基であり、該ピリドン、フェニルまたは複素環式基は、ヒドロキシ、ハロゲノ、アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ヒドロキシアルキル、C1-4アミノアルキル、C1-4アルキルアミノ、C1-4ヒドロキシアルコキシ、カルボキシ、シアノ、CONR3536およびNR37COR38(ここで、R35、R36、R37およびR38は、それぞれ独立して水素、C1-4アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキルである)から独立して選ばれる最大5個までの置換基を有し得る);
9)C1-5アルキルR34(ここで、R34は上記で定義されたとおりである);
10)C2-5アルケニルR34(ここで、R34は上記で定義されたとおりである);
11)C2-5アルキニルR34(ここで、R34は上記で定義されたとおりである);
12)C1-5アルキルX734(ここで、X7はO、S、SO、SO2、NR39CO、CONR40、SO2NR41、NR42SO2またはNR43(ここで、R39、R40、R41、R42およびR43は、それぞれ独立して水素、C1-3アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキルである)であり、R34は上記で定義されたとおりである);
13)C2-5アルケニルX834(ここで、X8は、O、S、SO、SO2、NR44CO、CONR45、SO2NR46、NR47SO2またはNR48(ここで、R44、R45、R46、R47およびR48は、それぞれ独立して水素、C1-3アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキルである)であり、R34は上記で定義されたとおりである);
14)C2-5アルキニルX934(ここで、X9は、O、S、SO、SO2、NR49CO、CONR50、SO2NR51、NR52SO2またはNR53(ここで、R49、R50、R51、R52およびR53は、それぞれ独立して水素、C1-3アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキルである)であり、R34は上記で定義されたとおりである);および、
15)C1-3アルキルX101-3アルキルR34(ここで、X10は、O、S、SO、SO2、NR54CO、ONR55、SO2NR56、NR57SO2またはNR58(ここで、R54、R55、R56、R57およびR58は、それぞれ独立して水素、C1-3アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキルである)であり、R34は上記で定義されたとおりである);
16)R33(ここで、R33は上記で定義されたとおりである);および、
17)C1-3アルキルX101-3アルキルR33(ここで、X10およびR33上記で定義されたとおりである);
のうちの1つから選ばれ;
nは、0、1、2、3または4であり;
mは、0、1、2、3または4である。
【請求項2】
式中、R2が、C1-3アルキル、ハロゲノ、シアノ、ニトロ、カルバモイル、N−C1-4アルキルカルバモイル、アミノスルホニル、C1-4アルコキシカルボニルまたは基R41であり、ここで、X1は、CONR56(ここでR5は水素またはC1-2アルキルであり、R6はC1-4アルキルであり、またR4はR6に結合している)であり、そして、nは、0、1または2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式中、R3がR102であり、
ここで、X2はOであり;そして、
10は次の基:
1)水素またはC1-5アルキル;
3)C1-5アルキルX421(ここで、X4はOまたはNR26(ここで、R21およびR26は、それぞれ独立して水素、C1-3アルキル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルである)である);
4)C1-5アルキルX51-5アルキルX627(ここで、X5およびX6はOであり、そしてR27は水素またはC1-3アルキルである);
5)C1-5アルキルR33(ここで、R33は独立してO、SおよびNから選ばれる1個または2個のヘテロ原子を有する5員または6員の飽和複素環式基である);
9)C1-5アルキルR34(ここで、R34は、独立してO、NおよびSから選ばれる1〜3個のヘテロ原子を有する5員または6員の芳香族複素環式基であり、該複素環式基は、ハロゲノ、アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ヒドロキシアルキル、C1-4アミノアルキル、C1-4アルキルアミノ、C1-4ヒドロキシアルコキシ、カルボキシ、ヒドロキシ、シアノ、CONR3536およびNR37COR38(ここで、R35、R36、R37およびR38は、それぞれ独立して水素、C1-4アルキルまたはC1-3アルコキシC2-3アルキルである)から独立して選ばれる最大5個までの置換基を有し得る);
17)C1-3アルキルX101-3アルキルR33(ここで、X10はOであり、R33は独立してO、SおよびNから選ばれる1個または2個のヘテロ原子を有する5員または6員の飽和複素環式基である);
のうちの1つから選ばれ;
mは、0、1または2である、
請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
遊離塩基またはその塩である、
2−ヒドロキシ−3−チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−イル−1H−インドール−5−カルボン酸メチルエステル、および
2−ヒドロキシ−3−(5,6,7,8−テトラヒドロキナゾリン−4−イル)−1H−インドール−5−カルボン酸メチルエステル、
である化合物。
【請求項5】
請求項1に記載の式Iの化合物の製造方法であって、
【化2】


適当な溶剤中で、+10〜+150℃の範囲の温度で、場合により塩基の存在下で、式VI[式中、L2は脱離基であり、P、Y、R3およびnは一般式Iにおいて定義したとおりである]の化合物を、式VII[式中、R1、R2およびmは一般式Iにおいて定義したとおりである]の化合物と反応させることから成る上記方法。

【公開番号】特開2009−280618(P2009−280618A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201189(P2009−201189)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【分割の表示】特願2003−554090(P2003−554090)の分割
【原出願日】平成14年12月18日(2002.12.18)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】