説明

新規な4−ベンジリデン−ピペリジン誘導体

本発明は、NMDA、特にNR2Bサブユニット含有受容体アンタゴニスト、および鎮痛薬として有用な、式(I):


の新規な4−ベンジリデン−ピペリジン誘導体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インビボプロファイルを改善するNR2B選択的NMDA受容体アンタゴニストである新規な4−ベンジリデン−ピペリジン誘導体、またはその製造のための中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
N−メチル−D−アスパルテート(NMDA)受容体は、中枢神経系中で広範に発現するリガンド開口型カチオン−チャンネルである。NMDA受容体は、神経細胞の発生上および形成上の変化に関与する。それらの天然リガンドであるグルタミン酸によるNMDA受容体の過剰活性化は、細胞のカルシウム過負荷を生じ得る。これは、細胞機能を改変する細胞内事象のカスケードを引き起こし、最終的には神経細胞の死滅を生じ得る。該NMDA受容体のアンタゴニストは、なんらかの理由でのグルタミン酸の過剰な放出またはNMDA受容体の過剰活性化を伴う多くの疾患を処置するのに使用することができる[Curr Opin Investig Drugs. 2003, 4: 826-32]。
【0003】
該NMDA受容体は、4個のNR2サブユニット(NR2A−D)の1つ以上と合わせて少なくとも1つのNR1サブユニットから構築されるヘテロマーの集合体である。CNS中の空間分布および様々なNR2サブユニットから構築されるNMDA受容体の薬理学的な感受性の両方は異なる。これらのうち特に関心あることは、その制限された分布(脊髄の前脳および膠様質中の最大密度)によるNR2Bサブユニットである[Neuropharmacology, 38, 611-623 (1999)]。このサブタイプに対して選択的である化合物を入手することができ、そしてこのものは、脳卒中[Stroke, 28, 2244-2251 (1997)]、外傷性脳障害[Brain Res., 792, 291-298 (1998)]、パーキンソン病[Exp. Neurol., 163, 239-243 (2000)]、神経障害性および炎症性の疼痛[Neuropharmacology, 38, 611-623 (1999)]の動物モデルにおいて有効であると証明されている。
【0004】
その上、NMDA受容体のNR2Bサブタイプ選択的アンタゴニストは、NMDA受容体の非選択的アンタゴニストを超える治療学的な利点を供し得る。チャンネルブロッカータイプの非選択的NMDAアンタゴニストであるフェンシクリジンおよびケタミンは、ヒトにおける精神異常発現性効果、幻覚、神経不安、緊張病、および健忘症を誘発する。これらの重大な有害作用は、潜在的な薬物療法としてのそれらの臨床的な使用を妨げる。このクラスに属する化合物は、動物における行動異常症を生じ、例えば、運動活性を刺激し、健忘症を誘発し、そして運動協調性を損なう。動物におけるこれらの効果の激しさは、臨床的な副作用の強度についての予言であると考えられる。NR2Bサブタイプ選択的アンタゴニストは、これらの副作用のほとんどがないと期待される。動物の行動学上の研究において、いくつかのNR2B選択的化合物[J. Pharmacol. Exp. Ther., 302 (2002) 940-948中のRo 63-1908、およびBehav. Pharmacol., 14 (2003) 477-487中のRo 25-6981]は歩行運動活性を増大すると報告されており、一方で、それらの効果はCP-101,606(別のNR2B選択アンタゴニスト)およびRo 256981(他の群)については全く観察されていない[Neuropharmacology, 38, 611-623 (1999)]。56mg/kgまでの皮下および100mg/kgまでの腹腔内のCP-101,606の歩行運動刺激効果の欠如は、他者によって確立されている[Soc. Neurosc. Abstr. 21, 439.9. 1995]。従って、本発明者の最善の知識によれば、CP-101,606は、歩行運動刺激効果を欠如すると一貫して報告されている唯一のNR2B選択的アンタゴニストである。CP-101,606は経口効力が乏しいと考えられており、そして公開されている情報によれば、ヒトにおける静脈内投与経路によってのみ研究されており、更に、そのものは多形CYP2D6媒介性代謝を有する[Drug Metabolism and Disposition 31: 76-87]という理由で、副作用の低い傾向(高い治療係数)、良好な経口上の効力(バイオアベイラビリティ)、および治療目的(特に、経口処置の場合)に対する良好な発展性(developability)を有する新規なNR2Bアンタゴニストに対する大きな要求が存在する。
【0005】
本発明の化合物の飽和アナログは、NR2Bサブタイプ選択的アンタゴニストとして、特許番号WO 2003010159中に記載されている。しかしながら、式(I)の4−ベンジリデン−ピペリジン誘導体の他の近似する構造アナログは、該文献において知られていない。
【発明の開示】
【0006】
(発明の概要)
本発明の式(I)の新規な4−ベンジリデン−ピペリジン誘導体はNR2Bサブユニット含有受容体に対する機能上活性なNMDAアンタゴニストである、ことを見出した。本発明者は、ベンジリデン−ピペリジンが、それらの飽和ベンジル−ピペリジンアナログのインビボ鎮痛性力価と同様の該力価を有することをも見出した。驚くべきことに、後者の分子はそれらの最大有効鎮痛性用量でまたはそれをわずかに超える用量で、歩行運動刺激を生じるが、本発明の化合物は、鎮痛性用量の40〜60倍まで、歩行運動刺激性効果がなかった。この特徴は、より低い治療係数を有するNR2B選択的NMDAアンタゴニストを超える治療学的な利点を供し得る。
【0007】
(詳細な記載)
従って、本発明は第1に、式(I):
【化1】

[式中、
XおよびYは独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、場合により1個以上のハロゲン原子によって置換されたC〜Cアルキルアミノ、場合により1個以上のハロゲン原子によって置換されたアリールアミノ、場合により1個以上のハロゲン原子によって置換されたアラルキルアミノ、場合により1個以上のハロゲン原子によって置換されたC〜Cアルキルスルホンアミド、場合により1個以上のハロゲン原子によって置換されたC〜Cアルカノイルアミド、アリールスルホンアミド、C〜Cアルキルスルホニルオキシ、カルボキシル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C〜Cアルキル−SO−NH−CH−、NH−(CH)1〜4−SO−NH−、NH−(CH)1〜4−(CO)−NH−、スルファモイル[NH−SO]、ホルミル[−CHO]、アミノ−メチル[−CH−NH]、ヒドロキシメチル、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシメチル、ハロゲンメチル、テトラゾリル基、または場合によりアミノ基によって置換されたC〜Cアルコキシ、C〜Cアルコキシカルボニル、C〜Cアルカノイルオキシ、フェニルもしくはC〜Cアルコキシ基であるか;あるいは、
ある場合には、1個以上の同一もしくは異なる別のヘテロ原子、および−CH=基、および/または−CH−基と一緒になって近接するX基およびY基は、場合により置換された4〜7員の単素環もしくはヘテロ環(モルホリン、ピロール、ピロリジン、オキソ−もしくはチオキソ−ピロリジン、ピラゾール、ピラゾリジン、イミダゾール、イミダゾリジン、オキソ−もしくはチオキソ−イミダゾールもしくはイミダゾリジン、1,4−オキサジン、オキサゾール、オキサゾリジン、オキソ−もしくはチオキソ−オキサゾリジン、オキソ−もしくはチオキソ−チアゾリジン、または3−オキソ−1,4−オキサジン環が好ましい)を形成し得て;
Zは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ、アミノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ基である]
で示される新規な4−ベンジリデン−ピペリジン誘導体、並びにその光学的鏡像異性体、ラセミ体、および塩に関する。
【0008】
その上、本発明の目的は、有効成分として、式(I)の新規な4−ベンジリデン−ピペリジン誘導体、またはその光学的鏡像異性体、ラセミ体、もしくは塩を含有する医薬組成物である。
【0009】
本発明の更なる目的は、式(I)の新規な4−ベンジリデン−ピペリジン誘導体の製造方法、およびこれらの化合物を含有する医薬品の製薬、並びに、これらの化合物を用いる処置方法(これは、処置する哺乳動物(ヒトを含む)に、本発明の式(I)の新規なベンジリデンピペリジン誘導体の有効量をそのまままたは医薬品として投与することを意味する)である。
【0010】
本発明によれば、式(I)のカルボン酸アミド化合物は、以下の製造方法によって製造することができる。
【0011】
式(I)(式中、X、YおよびZは式(I)について定義する通りである)の化合物の製造において、
式(II):
【化2】

(式中、Zは式(I)について示すのと同じ意味を有する)
の第2級アミンを、塩基の存在下、適当な溶媒中のエチルオキサリルクロリドと反応させ、
得られた式(III):
【化3】

(式中、Zは式(I)について示すのと同じ意味を有する)
のエステル化合物を水酸化アルカリを用いてけん化し、そして、
得られた式(IV):
【化4】

(式中、Zの意味は式(I)について上記する通りである)
のオキサミド酸またはその反応性誘導体を、式(V):
【化5】

(式中、XおよびYの意味は式(I)について上記する通りである)
のアニリンと反応させ、
次いで、その結果得られた式(I)(式中、X、YおよびZの意味は式(I)について定義する通りである)の4−ベンジリデン−ピペリジン誘導体を、公知の方法によって、新規な置換基を導入するか、および/または存在する置換基を修飾しもしくは除去するか、および/または塩を形成するか、および/または塩から式(I)の化合物を遊離させるか、および/または光学的に活性な酸若しくは塩基を用いて得られたラセミ体を分離するか、によって、式(I)の別の化合物に変換する。
【0012】
式(II)のカルボン酸および式(V)のアニリンとの反応、すなわち、アミド結合形成反応は、式(II)のカルボン酸由来の活性誘導体を製造することによって実施することが好ましく、そしてこれは、好ましくは塩基の存在下で、式(V)のアニリンと反応させる。
【0013】
カルボン酸の活性誘導体への変換は、溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、クロロ化炭化水素、または炭化水素)中でのアミド結合形成の間、インシチュで実施する。該活性誘導体は、酸クロリド(例えば、カルボン酸および塩化チオニルから製造する)、混合酸無水物(例えば、塩基(例えば、トリエチルアミン)の存在下、カルボン酸およびクロロギ酸イソブチルから製造する)、活性エステル(塩基(例えば、トリエチルアミン)の存在下、カルボン酸、ヒドロキシベンゾトリアゾール、およびジシクロヘキシル−カルボジイミドまたはO−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)から製造する)であり得る。該活性誘導体は、室温から0℃の間で製造する。必要な反応時間は、6〜20時間である。該反応混合物を、吸収剤としてキセルゲル(Kieselgel)60(メルク社製)および適当な溶出液を用いるカラムクロマトグラフィーによって精製する。該適当な画分を濃縮して、純粋な生成物を得る。該生成物の質および量は、HPLC−MS法によって測定する。
【0014】
式(V)のアニリンは、商業的に入手可能であるかあるいは異なる公知の方法によって製造することができる。いくつかの商業的に入手不可能な式(V)のアニリンおよび式((IV)のカルボン酸の製造を、実施例中に記載する。
【0015】
上述の通り、本発明の式(I)の新規な4−ベンジリデン−ピペリジン誘導体は、NMDA受容体の非常に有効で且つ選択的なアンタゴニストであり、そしてその上、該化合物のほとんどはNMDA受容体のNR2Bサブタイプの選択的アンタゴニストである。該化合物のNR2B選択的NMDAアンタゴニスト力価の確認のために、本発明者は、NR2Bサブユニット含有NMDA受容体を優位に発現する培養皮質神経細胞を使用した。それらの選択性を証明するために、NR1/NR2Aサブユニットの組み合わせをトランスフェクトしたHEK−293細胞を使用した。インビボ鎮痛性力価および強力なNR2B選択的アンタゴニストの副作用傾向を測定するために、本発明者は、マウスホルマリン試験および歩行運動活性試験をそれぞれ使用した。
【0016】
(実験プロトコール)
組み換えNMDA受容体の発現
該化合物のNR2B選択性を証明するため、すなわちNR2A含有NMDA受容体についてのそれらの効果を研究するために、本発明者は、NR1/NR2Aのサブユニット組成物を用いて、組み換えNMDA受容体を安定に発現するセルラインについて、最も強力なものを調べた。誘導性哺乳類発現ベクター中にサブクローニングするヒトNR1およびNR2AサブユニットのcDNAを、カチオン性脂質媒介性の形質移入法を用いて、NMDAがないHEK293細胞中に導入した[Biotechniques, 22, 982-987. (1997); Neurochemistry International, 43, 19-29. (2003)]。ネオマイシンおよびハイグロマイシンに対する耐性を使用して、両方のベクターを有するクローンについてスクリーニングし、そしてモノクローナルセルラインをNMDA曝露に対して最大応答を生じるクローンから確立した。化合物を、蛍光カルシウム測定における、NMDA誘起性の細胞質ゾルカルシウムの増大についてのそれらの阻害作用を試験した。誘発剤の添加後に、研究を48〜72時間行なった。ケタミン(500μM)もまた、細胞毒性を防止するために、該誘発の間に存在させた。
【0017】
ラット皮質細胞培養におけるプレートリーダー蛍光光度計を用いる細胞内カルシウム濃度の測定による、インビボでのNMDAアンタゴニスト力価の評価
細胞内カルシウム測定を、17日齢チャールズリバーラット胎仔由来の初代新皮質細胞培養物について行なった(詳しくは、新皮質細胞培養物の調製(the preparation of neocortical cell culture)、Johnson, M.I.;Bunge, R. P. (1992): 末梢および中枢の神経細胞、およびグリアの初代細胞培養物(Primary cell cultures of peripheral and central neurons and glia.)、In: Protocols for Neural Cell Culture, eds: Fedoroff, S.; Richardson A., The Humana Press Inc., 51-75を参照)。単離後に、該細胞を標準的な96ウェルマイクロプレート上にプレートし、そして該培養物を、カルシウム測定まで、95%空気−5%COの雰囲気下、37℃で保った。
【0018】
該培養物を、インビトロで3〜7日後に、細胞内カルシウム測定のために使用した。このインビトロ齢(age)での細胞は、NR2B含有NMDA受容体を優位に発現すると考えられる[Mol. Pharmacol. 45, 846-853. (1994)]。該測定の前に、該細胞を蛍光Ca2+−感受性色素、フルオ−4/AM(2μM)と一緒にロードした。ロードを停止するために、細胞を、測定に使用する溶液(140mM NaCl、5mM KCl、2mM CaCl、5mM HEPES、5mM HEPES−Na、20mM グルコース、10μM グリシン、pH=7.4)を用いて2回洗浄した。洗浄後に、該被験化合物を上記の溶液中の該細胞(90μL/ウェル)に加えた。細胞内カルシウム測定は、プレートリーダー蛍光計を用いて実施した:フルオ−4−蛍光など、細胞内カルシウム濃度の増大は、40μM NMDAの使用によって誘発した。該被験化合物の阻害性力価は、異なる濃度の該化合物の存在下でのカルシウム増大の低下を測定することによって評価した。
【0019】
用量応答曲線およびIC50値は、少なくとも3回の独立した実験由来のデータを用いて算出した。1濃度点での化合物の阻害性力価は、NMDA応答の阻害パーセントとして表した。S字型の濃度−阻害曲線をデータにフィットさせ、そしてIC50値を、該化合物によって生じる最大阻害の半分を与える濃度として決定した。
【0020】
表1に、この試験において測定される本発明の最も有効な化合物のNR2Bアンタゴニスト力価を例示する。いくつかの公知の選択的NR2Bアンタゴニスト基準化合物および非選択的NMDA受容体アンタゴニストMK−801についての結果を、表2に示す。
【表1】

【表2】

【0021】
基準化合物は以下の通りである:
CI-1041:6-{2-[4-(4-フルオロ-ベンジル)-ピペリジン-1-イル]-エタンスルフィニル}-3H-ベンゾオキサゾール-2-オン;
Co 101244:1-[2-(4-ヒドロキシフェノキシ)エチル]-4-ヒドロキシ-4-(4-メチルベンジル)ピペリジン;
EMD 95885:6-[3-(4-フルオロベンジル)ピペリジン-1-イル]プロピオニル]-2,3-ジヒドロ-ベンゾオキサゾール-2-オン;
CP-101,606:(1S,2S)-1-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(4-ヒドロキシ-4-フェニルピペリジン-1-イル)-1-プロパノール;
Ro 256981:R-(R*,S*)-1-(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチル-3-[4-(フェニルメチル)ピペリジン-1-イル]-1-プロパノール;
イフェンプロジル:エリスロ-2-(4-ベンジルピペリジノ)-1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-プロパノール;
MK-801:(+)-5-メチル-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン-5,10-イミン。
【0022】
インビボ効力の測定のためのマウスホルマリン試験
ラットまたはマウスの後肢中への希釈ホルマリンの注射は、該損傷した肢を舐める/噛むによって費やされる時間として測定される、二相性の疼痛関連行動を誘起することが知られる。該第二相は一般的に、ホルマリン注射後の15〜60分の時間間隔で検出される(ピーク活性は約30分時である)、疼痛関連事象として定義される。NMDA受容体は、ホルマリン注射に対する応答の第二相に関与し、そしてこの行動上の応答はNMDA受容体の遮断に対して感受性であることが知られる[Dickenson, A.およびBesson J.-M. (編): 第1章, 頁6-7: 鎮痛の動物モデル(Animal models of Analgesia);および8章, 頁180-183: 中枢過敏性の機構(Mechanism of Central Hypersensitivity): 興奮性アミノ酸機構およびそれらのコントロール(Excitatory Amino Acid Mechanisms and Their Control)-疼痛の薬理学(In Pharmacology of Pain.) Springer-Verlag (Berlin) 1997]。従って、本発明者は、ホルマリン試験の第二相を使用して、インビボでの化合物の有効性を確認した。応答の該二相の阻害は、化学的誘発性の持続性疼痛に対する鎮痛性効果を示すと考えられる[Hunker, S.らによる: マウスにおけるホルマリン試験、弱鎮痛薬を評価するための有用な技術(Formalin Test in Mice, a Useful Technique for Evaluating Mild Analgesics), Journal of Neuroscience Methods, 14 (1985) 69-76]。
【0023】
雄性NMRIマウス(20〜25g)を使用した。該実験前には、いずれの固形食物をも約16時間取り下げるが、しかし、該動物は20%グルコース溶液を自由に摂取させた。該動物を、ガラスシリンダー(直径15cm)中で1時間の順化時間を許容し、次いで、観察を容易にするために鏡を背後に置いた同一のシリンダーに移動させた。該被験物質を5%トゥイーン−80(体重kg当たり10mL)中に懸濁し、そしてホルマリン注射(0.9%生理食塩水中の1%ホルマリン(20μL)を、右後肢の背側の表面中に皮下注射した)の15分前に、胃管栄養法によって経口投与した。ホルマリン注射後の該注射した肢の舐めるおよび噛むによって費やされた時間は、20〜25分と測定された。ED50値の測定のために、該被験物質の多様な投与(少なくとも5回)を5マウスの群に与え、そして該結果を、同日に観察されるビヒクルコントロール群と対比して、舐めることによって費やされる時間の阻害%として表した。ED50値(すなわち、50%阻害を与える用量)を、ボルツマンS字型曲線フィッティングによって算出した。
【0024】
マウスにおける自発的な歩行運動活性の測定
体重20〜22gの雄性NMRIマウスを、実験に使用した。自発性の歩行運動活性を、4個のチャンネル活性モニターで測定した。該装置は、アクリル製ゲージ(43cm×43cm×32cm)からなり、2×16対のフォトセルを該ゲージの全ての底面の軸(bottom axis)に沿って備えた。フォトセル(16対)の別アレイを、高さが10cmで該ゲージの2個の向かい側の側面に沿って置き、立ち上がり応答を検出した。
【0025】
実験群は、10動物から構成した。被験化合物またはビヒクル(トゥイーン−80)の経口投与の30分後に、該動物を4個のゲージの1つに1時間、個別に置いた。水平方向および垂直方向の運動は、15分間隔で1時間、ビーム妨害の数として測定した。
【0026】
各群の水平方向の活性データの平均値±SEを算出し、次いでコントロール(ビヒクル処置)群と比べた変化パーセントを測定した。その効果がビーム妨害の50%増大を超えるときに、化合物は歩行運動刺激を生じたとみなした。結果として、刺激性作用がない(LMAなし)と定義される用量は、50%以下の増大を生じた。
【0027】
表3は、鎮痛試験および歩行運動活性試験における、本発明の選択した化合物(上の表)およびそれらに近似するベンジル−ピペリジンアナログ(下の表)について得られた結果を示す[A=2-(4-ベンジル-ピペリジン-1-イル)-2-オキソ-N-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-ベンゾオキサゾール-6-イル)-アセトアミド、およびB=2-[4-(4-メチル-ベンジル)-ピペリジン-1-イル]-2-オキソ-N-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-イル)-アセトアミド]。従って、対1−Aおよび対24−Bは、単結合の代わりに二重結合の存在のみが異なる。
【表3】

【0028】
非選択的NMDA受容体アンタゴニストであるMK−801、および選択的NR2BアンタゴニストであるCI−1041(Soc Neurosci Abst 2000, 26 (Part 2): Abst 527.4.)、CP−101,606およびRo-256981についての鎮痛および運動活性のデータを、表4に示す。
【表4】

【0029】
NMDA受容体の非選択的アンタゴニスト、MK−801は、薬理学的に活性な用量範囲で歩行運動活性を増大することを見出すことができる。このLMA刺激効果は、有害な副作用である。特許出願WO 2003010159号中に記載されている、基準分子CI−1041またはベンジル−ピペリジン化合物などの特定の選択的NR2Bアンタゴニスト化合物[A = 2-(4-ベンジル-ピペリジン-1-イル)-2-オキソ-N-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-ベンゾオキサゾール-6-イル)-アセトアミド、およびB = 2-[4-[4-メチル-ベンジル)-ピペリジン-1-イル]-2-オキソ-N-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-イル)-アセトアミド]はまた、鎮痛を生じる用量と歩行運動活性を刺激する用量の間にほとんど差違を示さない。驚くべきことに、後者の分子のベンジリデン−ピペリジン変異体、すなわち、本発明の化合物は、非常に高用量まで機能亢進を生じない(表3)。高いインビボ力価レンジを有する被験ベンジルピペリジンのTIは1〜8にまで及ぶ一方で、それらのベンジリデンピペリジン対応物のTIは、46〜64またはそれ以上の間でかなり高いレンジ内にある。この著しく異なるプロファイルは、外見的に小さな構造上の修飾の後には予期しなかった。
【0030】
大きなTIを有するNR2Bアンタゴニストは、NR2Bアンタゴニストを用いて処置し得る疾患の薬物療法について特に有利であり得る。ベンジリデンピペリジンのうち、持続性疼痛モデルにおいての高い効力および高い治療係数を有する化合物が存在する。本発明の化合物は、上記の特許された化合物よりも、可能な治療学的な用途に関するずっとより有利なプロファイルを有する。
【0031】
NR2B部位で作用するNMDAアンタゴニストを用いて有利に処置することができる疾患(Loftisによる[Pharmacology & Therapeutics, 97, 55-85 (2003)]による最近の総説)としては、総合失調症、パーキンソン病、ハンチントン病、低酸素症および虚血によって誘起される興奮毒性、発作性疾患、薬物乱用、および疼痛(特に、いずれかの原因の神経障害性の炎症性の内臓疼痛)を含む[Eur. J. Pharmacol., 429, 71-78(2001)]。
【0032】
非選択的NMDAアンタゴニストと比較したそれらの副作用の傾向の低下に起因して、NR2B選択的アンタゴニストは、NMDAアンタゴニストが有効であり得る疾患(例えば、筋萎縮性側索硬化症)[Neurol. Res., 21, 309-12 (1999)]、例えばアルコール、オピオイドもしくはコカインの禁断症状[Drug and Alcohol Depend., 59, 1-15 (2000)]、筋肉攣縮[Neurosci. Lett., 73, 143-148 (1987)]、様々な原因の痴呆[Expert Opin. Investig. Drugs, 9, 1397-406 (2000)]、不安症、うつ病、偏頭痛、低血糖症、網膜の変性疾患(例えば、CMV網膜炎)、緑内障、喘息、耳鳴り、聴覚損失[Drug News Perspect 11, 523-569 (1998)、および国際特許出願WO 00/00197]における有効性を有し得る。
【0033】
従って、本発明の化合物の有効量は、脳または脊髄の外傷性傷害、疼痛のオピオイド処置に対する耐性および/または依存、例えばアルコール、オピオイドもしくはコカインの禁断症状、虚血性CNS障害、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病などの慢性神経変性障害、例えば神経障害性疼痛などの疼痛および慢性疼痛状態、の処置のために有利に使用し得る。
【0034】
本発明の化合物、並びにその医薬的に許容し得る塩は、そのまままたは医薬組成物の形態で適当に使用することができる。これらの組成物(薬物)は、固体、液体または半液体の形態であり得て、そして実際に通常使用される医薬的なアジュバントおよび補助物質(例えば、担体、賦形剤、希釈剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、pH−および浸透圧−調整剤、香味剤、芳香剤、並びに製剤化−促進または製剤化−付与添加物)を加えることができる。
【0035】
該治療効果を発揮するのに必要な投与量は広範囲な限度内で変えることができ、そして、これは、該疾患の重篤度、処置する患者の症状および体重、並びに有効成分に対する患者の感受性、投与経路、および1日の処置の回数に応じて、各症例における個々の要件に適合するであろう。使用する該有効成分の実際の用量は、処置される患者を知っている熟練した担当の医師によって安全に決定することができる。
【0036】
本発明に記載する有効成分を含有する医薬組成物は通常、1投与単位中に有効成分(0.01〜100mg)を含む。当然に、ある組成物中の活性成分の量が上で定義する上限または下限を超えることはあり得る。
【0037】
該医薬組成物の固体形態は、例えば錠剤、糖剤、カプセル剤、丸剤、または注射剤の調製に有用な凍結乾燥粉末状アンプルであり得る。液体組成物は、注射用組成物および注入用組成物、液剤、封入液剤、または滴剤である。半液体組成物は、軟膏、バルサム、クリーム剤、振とう混合物、および坐剤であり得る。
【0038】
単純な投与のために、医薬組成物が投与されるべき有効成分の量を含有する投与量単位を含むとき、1回もしくは複数回、またはその半分、3分の1、4分の1の部が適当である。このような投与量単位は、例えば錠剤であり、このものは、有効成分の必要量を正確に投与するために、錠剤の二分割または四分割を促進する溝を有するように粉末化することができる。
【0039】
錠剤は、胃を通過した後に有効成分の内容物の放出を確実とするために、酸可溶性層でコーティングすることができる。該錠剤は、腸溶コーティングである。同様な効果はまた、有効成分をカプセル封入することによっても達成し得る。
【0040】
経口投与のための医薬組成物は、例えば賦形剤として乳糖またはデンプン、結合剤又は造粒剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルピロリジンもしくはデンプンのりを含み得る。馬鈴薯でんぷんまたは微結晶性セルロースを崩壊剤として加えるが、しかし、ウルトラアミノペクチンまたはホルムアルデヒドカゼインをも使用し得る。タルカム、コロイド状ケイ酸、ステアリン、ステアリン酸カルシウムまたはマグネシウムを、抗接着剤および滑沢剤として使用し得る。
【0041】
錠剤は、例えば湿式造粒、続く圧縮によって製造することができる。該混合した有効成分および賦形剤、並びにある場合には崩壊剤の一部を、適当な装置中で結合剤の水性、アルコール性、またはアルコール性水溶液と一緒にに造粒し、次いで該顆粒物を乾燥する。他の崩壊剤、滑沢剤および抗接着剤を該乾燥顆粒物に加え、そして該混合物を圧縮して錠剤とする。ある場合には、該錠剤は投与を容易にするために、二分割の溝を有するように製造する。
【0042】
該錠剤は、有効成分および適当な助剤の混合物から直接圧縮打錠によって製造することができる。ある場合に、錠剤は、薬務において通常使用される添加物(例えば、安定化剤、香味剤、着色剤(例えば、糖類、セルロース誘導体(メチル−またはエチル−セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど)、ポリビニルピロリドン、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、食品用着色料、食品用嬌味剤(food laces)、芳香剤、酸化鉄系顔料など)を用いることによってコーティングし得る。カプセル剤の場合には、有効成分および助剤の混合物をカプセルに充填する。
【0043】
液体経口組成物(例えば、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤)は、水、グリコール、油、アルコール、着色剤、および香味剤を用いて製造することができる。
【0044】
直腸投与の場合には、該組成物は坐剤または浣腸剤に製剤化する。坐剤は、有効成分の他に、担体、いわゆるエイデップス・プロ・サポジトリー(adeps pro suppository)を含み得る。担体は、植物油(例えば、水素添加植物油、C12〜C18脂肪酸のトリグリセリド)であり得る(商品名:ウイテップゾール(Witepsol)の担体が好ましい)。該有効成分を、融解したエイデップス・プロ・サポジトリーと一緒に均一に混合し、そして該坐剤を成型する。
【0045】
非経口投与の場合には、該組成物は注射液剤として製剤化する。該注射液剤を製造する場合には、該有効成分を、蒸留水/または異なる有機溶媒(例えば、グリコールエーテル)中に、ある場合には可溶化剤(例えば、ポリオキシエチレンソルビタン−モノラウレート、−モノオレエート、または−モノステアレート(ツウィーン20、ツウィーン60、ツウィーン80))の存在下で、溶解する。該注射溶液はまた、異なる助剤(例えば、保存剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸)、並びにpH調節剤および緩衝化剤、およびある場合には局所麻酔剤(例えば、リドカイン))をも含み得る。本発明の有効成分を含有する注射溶液は、そのものをアンプル中に充填する前にろ過し、そして充填後に滅菌する。
【0046】
有効成分が吸湿性である場合には、そのものを凍結乾燥によって安定化し得る。
【0047】
(キャラクタリゼーションの方法)
本発明の化合物は、HP 1100バイナリー勾配クロマトグラフィーシステム(マイクロプレートサンプラー(Agilent, Waldbronn)を有し、ケムステーション(ChemStation)ソフトウェアによって制御する)を用いる、マス選択検出器(LC/MS)と連結した高速液体クロマトグラフィーによって確認した。HPダイオードアレイ検出器を用いて、225nmおよび240nmでのUVスペクトルを得た。全ての実験は、エレクトロスプレーイオン化源を備えたHP MSD(Agilent, Waldbronn)のシングル四重極型分光計を用いて行なって、該構造を測定した。
【0048】
該合成物をDMSO(Aldrich社製、独国)(1mL)中に溶解した。各溶液(100μL)をDMSOを用いて、1000μLの容量にまで希釈した。分析用クロマトグラフィー実験は、ディスカバリーRP C−16アミドのカラム(5cm×4.6mm×5μm)(Supelco社製(ベレフォンテ(Bellefonte)、ペンシルベニア州(Pennsylvania))、定性(qualification)の場合に流速は1mL/分とする)を用いて行なった。該得られた化合物は、それらのk’値(純度、容量因子)によって特徴付けた。k’因子は、以下の式:
【数1】

(ここで、k’=容量因子、t=保持時間、t=溶出保持時間)
によって評価する。
【0049】
A溶出液は0.1%水を含有するトリフルオロ酢酸(TFA)(シグマ社製、独国)とし、B溶出液は0.1%TFAおよび5%A溶出液を含有する95%アセトニトリル(メルク社製、独国)とした。100%A溶出液で開始し、5分間の時間をかけて100%B溶出液にまでの工程とする、勾配溶出を使用した。
【実施例】
【0050】
以下の実施例は、如何なる様式でも限定することを意図することなく、本発明を例示する。
【0051】
(実施例1)
2−(4−ベンジリデン−ピペリジン−1−イル)−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド
1a)1−ベンジル−4−ベンジリデン−ピペリジン
アルゴン下、ジメチルホルムアミド(1350mL)中のN−ベンジル−4−ピペリドン(アルドリッチ社製)(133.2g、704mmol)およびベンジル−ホスホン酸ジエチルエステル(アルドリッチ社製)(161g、705mmol)の撹拌溶液に、水素化ナトリウム(40.5g、60%、37.5mmol)を0℃で加える。該反応混合物を20℃で2時間撹拌し、エタノール(100mL)を滴下し、水(1500mL)中にそそぎ、そしてジエチルエーテルを用いて抽出した。該有機相を硫酸ナトリウムを用いて乾燥し、そして濃縮した。該粗生成物を次の工程に使用する。融点:油状物。
【0052】
1b)4−ベンジリデン−ピペリジン塩酸
ジクロロエタン(2L)中の上記の得られた粗1−ベンジル−4−ベンジリデン−ピペリジン(〜704mmol)の撹拌溶液に、クロロギ酸1−クロロエチル(80mL、741mmol)を0℃で滴下する。該反応混合物を0℃で1時間撹拌し、1時間還流し、次いで濃縮し、そして該残渣をメタノール(1L)中に溶解し、1時間還流する。該反応混合物を濃縮し、そして該残渣をアセトンを用いて結晶化して、標題化合物(103.25g、70.1%)を得た。Mp:186℃(アセトン)。
【0053】
1c)(4−ベンジリデン−ピペリジン−1−イル)−オキソ−酢酸エチルエステル
クロロホルム(1L)中の4−ベンジリデン−ピペリジン塩酸(103.25g、0.492mol)およびトリエチルアミン(144.55mL、1.039mol)の撹拌溶液に、エチルオキサリルクロリド(55.75mL、0.499mol)を10℃以下で滴下し、そして該反応混合物を室温で1時間撹拌する。次いで、水(200mL)および8%炭酸水素ナトリウム(200mL)の溶液を該混合物に加え、該有機相を分離し、硫酸ナトリウムを用いて乾燥し、そして濃縮する。該粗生成物を次の工程に使用する。Mp:油状物。
【0054】
1d)(4−ベンジリデン−ピペリジン−1−イル)−オキソ−酢酸
エタノール(200mL)中の上で得られた粗(4−ベンジリデン−ピペリジン−1−イル)−オキソ−酢酸エチルエステル(〜0.492mol)の撹拌溶液に、水(300mL)およびエタノール(500mL)中の水酸化ナトリウム(27.6g、0.69mol)の溶液を加える。該反応混合物を室温で1時間撹拌し、次いで冷却し、そして塩酸を用いて酸性とする。該沈降した固体を集め、水洗して標題化合物(107.32g、88.9%)を得る。Mp:125℃(エタノール−水)。
【0055】
1e)2−(4−ベンジリデン−ピペリジン−1−イル)−2−オキソ−N−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イル)−アセトアミド
(4−ベンジリデン−ピペリジン−1−イル)−オキソ−酢酸(49mg、0.2mmol)、トリエチルアミン(33μL、0.24mmol)、6−アミノ−3H−ベンゾオキサゾール−2−オン[J. Chem. Soc., 321. (1938)](30mg、0.2mmol)、HBTU[O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(Advanced Chem. Tech.)](79.6mg、0.21mmol)、およびジメチルホルムアミド(1mL)の混合物を、室温で24時間撹拌する。該反応混合物を、カラムクロマトグラフィー(吸収剤としてキセルゲル60(メルク社製)、および溶出液としてトルエン:メタノール=4:1を使用する)によって精製する。該生成物の質および量は、上記のHPLC−MS方法によって測定する。k’=9.66。
【0056】
上記の方法を用いて、本発明者は、以下の式(I):
【化6】

の化合物を製造した。
【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【0057】
(実施例2)
(医薬組成物の製造)
a)錠剤:
式(I)の有効成分の0.01〜50%、乳糖の15〜50%、馬鈴薯でんぷんの15〜50%、ポリビニルピロリドンの5〜15%、タルクの1〜5%、ステアリン酸マグネシウムの0.01〜3%、コロイド状二酸化ケイ素の1〜3%、およびウルトラアミロペクチンの2〜7%を混合し、次いで、湿式造粒により造粒し、錠剤に圧縮打錠する。
【0058】
b)糖剤(dragee)、糖衣錠:
上記の方法によって製造された錠剤を腸−または胃溶解フィルムまたは糖およびタルクからなる層でコーティングすることができる。糖剤は、蜜蝋またはカルヌバワックスの混合物で磨く。
【0059】
c)カプセル:
式(I)の有効成分の0.01〜50%、ラウリル硫酸ナトリウムの1〜5%、でんぷんの15〜50%、乳糖の15〜50%、コロイド状二酸化ケイ素の1〜3%、およびステアリン酸マグネシウムの0.01〜3%を十分に混合し、該混合物をふるいにかけ、硬ゼラチンカプセルに充填する。
【0060】
d)懸濁剤:
成分:式(I)の有効成分の0.01〜15%、水酸化ナトリウムの0.1〜2%、クエン酸の0.1〜3%、ニパジン(nipagin)(4−ヒドロキシ安息香酸メチルナトリウム)の0.05〜0.2%、ニパゾール(nipasol)の0.005〜0.02%、カルボポール(ポリアクリル酸)0.01〜0.5%、96%エタノールの0.1〜5%、香味剤の0.1〜1%、ソルビトール(70%水性溶液)の20〜70%、および蒸留水の30〜50%。
【0061】
蒸留水(20mL)中のニパジンおよびクエン酸の溶液に、カルボポールを激しく撹拌しながら少しずつ分けて添加し、溶液を10〜12時間放置する。次いで、蒸留水(1mL)中の水酸化ナトリウム、ソルビトールの水溶液、および最後にエタノール性ラズベリー香味剤を、撹拌しながら添加する。この担体に、有効成分を少しずつ分けて添加し、投げ込み(immersing)ホモジナイザーで懸濁する。最後に、該懸濁液を所望の最終容量にまで蒸留水で満たし、そして該懸濁シロップをコロイドミル装置に通過させる。
【0062】
e)坐剤:
各坐剤につき、式(I)の有効成分の0.01〜15%、および乳糖の1〜20%を十分に混合し、次いで、アデップス・プロ・サポジトリー(例えば、ウイテップゾール(Witepsol)4)の50〜95%を融解し、35℃に冷却し、そして有効成分および乳糖の混合物をその中でホモジナイザーを用いて混合する。得られた混合物を冷却した型で成型する。
【0063】
f)凍結乾燥粉末アンプル組成物:
マンニトールまたは乳糖の5%溶液を注射用の再蒸留水で調製し、この溶液を充填して滅菌溶液とする。式Iの有効成分の0.01〜5%溶液もまた注射用の再蒸留水で調製し、この溶液を充填して滅菌溶液とする。これらの2つの溶液を無菌条件下で混合し、1mLずつアンプル中に充填し、該アンプルの内容物を凍結乾燥し、そしてアンプルを窒素下で封する。投与前に、該アンプルの内容物を滅菌水または0.9%(生理学的な)滅菌食塩水溶液中に溶解する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
XおよびYは独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、場合により1個以上のハロゲン原子によって置換されたC〜Cアルキルアミノ、場合により1個以上のハロゲン原子によって置換されたアリールアミノ、場合により1個以上のハロゲン原子によって置換されたアラルキルアミノ、場合により1個以上のハロゲン原子によって置換されたC〜Cアルキルスルホンアミド、場合により1個以上のハロゲン原子によって置換されたC〜Cアルカノイルアミド、アリールスルホンアミド、C〜Cアルキルスルホニルオキシ、カルボキシル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C〜Cアルキル−SO−NH−CH−、NH−(CH)1〜4−SO−NH−、NH−(CH)1〜4−(CO)−NH−、スルファモイル[NH−SO]、ホルミル[−CHO]、アミノ−メチル[−CH−NH]、ヒドロキシメチル、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシメチル、ハロゲンメチル、テトラゾリル基、または場合によりアミノ基によって置換されたC〜Cアルコキシ、C〜Cアルコキシカルボニル、C〜Cアルカノイルオキシ、フェニルもしくはC〜Cアルコキシ基であるか;あるいは、
ある場合には、1個以上の同一もしくは異なる別のヘテロ原子、および−CH=基、および/または−CH−基と一緒になって近接するX基およびY基は、場合により置換された4〜7員の単素環もしくはヘテロ環(モルホリン、ピロール、ピロリジン、オキソ−もしくはチオキソ−ピロリジン、ピラゾール、ピラゾリジン、イミダゾール、イミダゾリジン、オキソ−もしくはチオキソ−イミダゾールもしくはイミダゾリジン、1,4−オキサジン、オキサゾール、オキサゾリジン、オキソ−もしくはチオキソ−オキサゾリジン、オキソ−もしくはチオキソ−チアゾリジン、または3−オキソ−1,4−オキサジン環が好ましい)を形成し得て;
Zは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ、アミノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ基である]
で示される新規な4−ベンジリデン−ピペリジン誘導体、並びにその光学的鏡像異性体、ラセミ体、および塩。
【請求項2】
2-(4-ベンジリデン-ピペリジン-1-イル)-2-オキソ-N-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-ベンゾオキサゾール-6-イル)-アセトアミド、
2-(4-ベンジリデン-ピペリジン-1-イル)-2-オキソ-N-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-ベンゾチアゾール-6-イル)-アセトアミド、
2-[4-(4-クロロ-ベンジリデン)-ピペリジン-1-イル]-2-オキソ-N-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-ベンゾオキサゾール-6-イル)-アセトアミド、
2-[4-(4-クロロ-ベンジリデン)-ピペリジン-1-イル]-2-オキソ-N-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-ベンゾイミダゾール-5-イル)-アセトアミド、
2-[4-(4-クロロ-ベンジリデン)-ピペリジン-1-イル]-2-オキソ-N-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-ベンゾチアゾール-6-イル)-アセトアミド、
2-[4-(4-メチル-ベンジリデン)-ピペリジン-1-イル]-2-オキソ-N-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-ベンゾイミダゾール-5-イル)-アセトアミド、
2-[4-(4-メチル-ベンジリデン)-ピペリジン-1-イル]-2-オキソ-N-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-ベンゾチアゾール-6-イル)-アセトアミド、
2-[4-(4-メトキシ-ベンジリデン)-ピペリジン-1-イル]-2-オキソ-N-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-ベンゾイミダゾール-5-イル)-アセトアミド、
2-[4-(4-メトキシ-ベンジリデン)-ピペリジン-1-イル]-2-オキソ-N-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-ベンゾチアゾール-6-イル)-アセトアミド、
N-(4-メタンスルホニルアミノ-フェニル)-2-[4-(4-メトキシ-ベンジリデン)-ピペリジン-1-イル]-2-オキソ-アセトアミド、
2-[4-(4-フルオロ-ベンジリデン)-ピペリジン-1-イル]-2-オキソ-N-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-ベンゾオキサゾール-6-イル)-アセトアミド、
からなる群から選ばれる請求項1の範囲内に属する4−ベンジリデン−ピペリジン誘導体の化合物、並びにその光学的鏡像異性体、ラセミ体、およびその塩。
【請求項3】
有効成分としての式(I)(式中、X、YおよびZの意味は請求項1に示す通りである)で示される4−ベンジリデン−ピペリジン誘導体またはその塩の有効量、および実際に通常使用される補助物質(例えば、担体、賦形剤、希釈剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、pH−および浸透圧−調整剤、香味剤、芳香剤、並びに製剤化−促進または製剤化−付与添加物)を含有する、医薬組成物。
【請求項4】
式(I)(式中、X、YおよびZの意味は請求項1に示す通りである)で示される4−ベンジリデン−ピペリジン誘導体の製造方法であって、ここで、
式(II):
【化2】

(式中、Zは式(I)について示すのと同じ意味を有する)
の第2級アミンを、塩基の存在下、適当な溶媒中のエチルオキサリルクロリドと反応させ、
得られた式(III):
【化3】

(式中、Zは式(I)について示すのと同じ意味を有する)
のエステル化合物を水酸化アルカリを用いてけん化し、そして、
得られた式(IV):
【化4】

(式中、Zの意味は式(I)について上記する通りである)
のオキサミド酸またはその反応性誘導体を、式(V):
【化5】

(式中、XおよびYの意味は式(I)について上記する通りである)
のアニリンとジクロロメタン中で反応させ、
次いで、場合によりその結果得られた式(I)(式中、X、YおよびZの意味は請求項1に示す通りである)の4−ベンジリデン−ピペリジン誘導体を、公知の方法によって、新規な置換基を導入するか、および/または存在する置換基を修飾しもしくは除去するか、および/または塩を形成するか、および/または塩から式(I)の化合物を遊離させるかによって、式(I)の別の化合物に変換することを特徴とする、該製造方法。
【請求項5】
式(IV)(式中、Zの意味は請求項1に示す通りである)のカルボン酸の活性誘導体を、式(V)(式中、XおよびYの意味は請求項1に示す通りである)のアニリンと、塩基の存在下で反応させることを特徴とする、請求項4記載の製法方法。
【請求項6】
式(IV)(式中、Zの意味は請求項1に示す通りである)のカルボン酸を、式(V)(式中、XおよびYの意味は請求項1に示す通りである)のアニリンと、ジメチルホルムアミド中、トリエチルアミンおよびO−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)の存在下で反応させることを特徴とする、請求項4記載の製造方法。
【請求項7】
NR2B選択的NMDA受容体アンタゴニスト効果を有する医薬組成物の製造方法であって、有効成分としての式(I)(式中、X、YおよびZの意味は請求項1に示す通りである)の4−ベンジリデン−ピペリジン誘導体、またはその光学的鏡像異性体、ラセミ体もしくは医薬的に許容し得る塩を、実際に通常使用する補助物質(例えば、担体、賦形剤、希釈剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、pH−および浸透圧−調整剤、香味剤、芳香剤、並びに製剤化−促進または製剤化−付与添加物)と混合することを特徴とする、該製造方法。
【請求項8】
哺乳動物(ヒトを含む)の下記:脳または脊髄の外傷性傷害、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)関連神経性傷害、筋萎縮性側索硬化症、疼痛のオピオイド処置に対する耐性および/または依存、例えばアルコール、オピオイドもしくはコカインの禁断症状、虚血性CNS障害、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病などの慢性神経変性障害、例えば神経因性疼痛、癌関連疼痛などの疼痛および慢性疼痛状態、癲癇、不安症、うつ病、片頭痛、精神病、筋肉攣縮、様々な原因の痴呆、低血糖症、網膜の変性疾患、緑内障、喘息、耳鳴り、アミノグリコシド抗生物質誘発性聴覚損失、の疾患の処置および症状の軽減の方法であって、式(I)(式中、X、YおよびZの意味は請求項1に示す通りである)で示される4−ベンジリデン−ピペリジン誘導体、またはそれらの光学的鏡像異性体、ラセミ体もしくは医薬的に許容し得る塩の有効な量をそのままで、または担体、充填物質および医薬品に通常使用されるその他と組み合わせて、処置する哺乳動物に投与することを特徴とする、該方法。
【請求項9】
哺乳動物(ヒトを含む)の下記:脳または脊髄の外傷性傷害、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)関連神経性傷害、筋萎縮性側索硬化症、疼痛のオピオイド処置に対する耐性および/または依存、例えばアルコール、オピオイドもしくはコカインの禁断症状、虚血性CNS障害、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病などの慢性神経変性障害、例えば神経因性疼痛、癌関連疼痛などの疼痛および慢性疼痛状態、癲癇、不安症、うつ病、片頭痛、精神病、筋肉攣縮、様々な原因の痴呆、低血糖症、網膜の変性疾患、緑内障、喘息、耳鳴り、アミノグリコシド抗生物質誘発性聴覚損失、の疾患の処置および症状の軽減のための医薬品の製造における、式(I)(式中、X、YおよびZの意味は請求項1に示す通りである)で示される4−ベンジリデン−ピペリジン誘導体、またはそれらの光学的鏡像異性体、ラセミ体もしくは医薬的に許容し得る塩の使用。

【公表番号】特表2008−508247(P2008−508247A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523160(P2007−523160)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【国際出願番号】PCT/HU2005/000077
【国際公開番号】WO2006/010964
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(596035695)
【Fターム(参考)】