説明

新規ステビオール配糖体

新たなステビア甘味料成分を提供する。新規ステビオール配糖体成分とそれらを含むステビア抽出物、結晶品の成分分析により、甘味料の品質管理を容易にすると共にRAを主成分とする甘味料の原料を特定でき、ステビア品種の産地表示の適切性や権利侵害の判断が容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ステビオール配糖体、レバウディオサイドAを多く含むステビア・レバウディアナ・ベルトニー品種に含まれる新規ステビオール配糖体とそれらを含む甘味料、食品、医薬品、医薬部外品、化粧品の製造、ステビア品種の確認、及び新規ステビオール配糖体分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステビアは南米パラグアイを原産地とする菊科多年生植物で、学名をステビア・レバウディアナ・ベルトニー(Stevia Rebaudiana Bertoni)という。ステビアは砂糖の300倍以上の甘味を持つ成分を含むので、この甘味成分を抽出して天然甘味料として用いる為に栽培されている。
ステビアの甘味成分としては、ステビオサイド(C386018)、レバウディオサイドA(C447023)、レバウディオサイドC、D、E、ズルコサイドA等が知られている。一般に栽培されているステビア品種では上記甘味成分の内ステビオサイド(以下、ST)が主成分で、ST100重量部に対してレバウディオサイドA(以下、RA)の含有量は40重量部程度、レバウディオサイドCの含量はそれよりやや少ないが、品種によってはレバウディオサイドCを主成分とするものなど様々である。
【0003】
STは砂糖の300倍の甘味度を有するので天然甘味料として食品工業界で広く用いられており、その甘味は比較的砂糖に似ているが、RAと比較すると苦み等の不快味が後味に残ることが知られている。これに対して、RAは良質の甘味質とSTに対して1.3倍〜1.5倍の甘味度を有するので、一般にはSTよりもRAの含有率の高いステビア甘味料が好ましいとされている。そこで、本発明者らは従来品種から交配選抜を繰り返して品種改良を行い、RAに対してSTを少量しか含有しないステビア品種を得、それら品種から甘味料を開発した(例えば後記特許出願1参照)。
しかしながら、渋み、辛み、まろやか味等の舌で知覚される味の中でもまろやか味は非常に微妙である。微妙なまろやか味はSTとRAの比率のみに依存するものではなく、ステビアに含まれる種々の甘味成分の化学構造にグルコースを付加するとまろやか味が改善されることから、ステビア甘味成分にグルコースを付加してまろやか味、コク味を改善する方法が開発されている(後記特許文献2および3)。
【0004】
従って、たとえ含有量は少なくてもステビアに含まれる未知成分を解析することは非常に重要なことであり、取り分けSTよりも多くのグルコースが付加した成分を把握し、それらに付加するグルコースを精査することは味質の管理上極めて重要である。
同時に原料である植物自身に含まれる甘味成分の種類により味質が左右されることから優れたステビア品種を開発してこれを利用するためには、含まれる甘味成分を細かく把握することが重要である。今後原料植物の改良はますます盛んとなるであろうが、開発された植物に含まれる甘味成分を丹念に特定することで品種改良結果を詳細に把握することが可能となる。
一方、新たに開発された植物品種については本発明者等が遺伝子を利用する品種確定方法(後記特許文献4および5)を開発しているが、これら原料植物から抽出加工された甘味料またはこれを利用した製品については原料植物を特定する手段がないのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−262822号公報
【特許文献2】特公昭57−18779号公報
【特許文献3】特開平9−107913号公報
【特許文献4】特開2003−009878号公報
【特許文献5】PCT国際公開WO06/093229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、ステビア甘味料はSTとRA、レバウディオサイドA、ズルコサイドA、ステビオールバイオサイドなどの5成分を分析して規格を定められてきたが、その他の未知成分に関しては何の知見も得られていなかった。また、甘味成分としては既知であっても分析方法が確定していないため、その存在を確認する方法がなかった。しかし最近では7成分のステビオール配糖体によるJECFA規格が設定されるなど、ステビアに含まれる甘味成分を確認し、未知成分を明らかにしてそれら成分による微妙な味の影響を知る重要性が認識されるようになった。
本発明の目的はステビア品種に含まれる微量の甘味成分の構造を決定し、ステビア甘味料への味覚の影響を確認することである。
また、さらにはステビア甘味料およびこれを利用した製品について、原料となったステビア植物体を特定する手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らはRAを主成分とするステビア品種に含まれる新規ステビオール配糖体を検索し、味質に微妙な影響を与え得る新規ステビオール配糖体10成分を見出した。さらには、それら成分が品種間で含有量に差があり、また特定の成分がRAを主成分とするステビア品種のみに存在する事実を見出してそれが当該植物由来甘味料のマーカーとして利用することが可能であることを確認し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0008】
本発明のステビオール配糖体はST、RAよりも多くのグルコースが付加した構造を有していて、これらを含むことによりコク味の優れたステビア甘味料が提供される。
また、本件発明によるステビオール配糖体Xを抽出物、結晶品で確認することにより用いた原料起源を推測できることから、最終製品を分析することで原料植物が特許等の権利に抵触するか否かの判断が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】RA−C抽出物のHPLC分析チャートを示す。
【図2】RA−A結晶のHPLC分析チャートを示す。
【図3】RA−B結晶のHPLC分析チャートを示す。
【図4】RA−C結晶のHPLC分析チャートを示す。
【図5】RA−A抽出物のHPLC分析チャートを示す。
【図6】RA−B抽出物のHPLC分析チャートを示す。
【図7】RA−C抽出物のHPLC分析チャートを示す。
【図8】ST抽出物のHPLC分析チャートを示す。
【図9】ST―ST結晶のHPLC分析チャートを示す。
【図10】ST−RA結晶のHPLC分析チャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で言うRA主成分とするステビア品種はSTよりRAが多く含まれる品種、並びに特許出願2001−200944号、特願2007−506004号などに記載された品種で、乾燥葉より得られる抽出物はSTの含量よりRAの含量が高く、レバウディオサイドD(R−D)、ステビオール配糖体III、V、VI、VII、Xが含まれ、ST、RAよりグルコースを多く付加した成分が含有されることによりコク味の優れた甘味料が得られる。更にそれらを再結晶すればST、ステビオール配糖体Xを極微量含む高純度のRA甘味料が効率よく得られる。
【0011】
本発明の第1の態様は、下式
【化1】

(式中、RおよびRは水素原子または下表

の糖鎖を表す。)
で示される新規なステビオール配糖体I〜Xである。
なお、式中の記号はそれぞれ以下の糖を表す。
glc:D−グルコピラノシル(D-glucopyranosyl)
rha:L−ラムノピラノシル(L-rhamnopyranosyl)
xyl: キシロピラノシル(xylopyranosyl)
また、Xはグルコース結合部位が未確定であることを示している。
【0012】
本発明の第2の態様は、レバウディオサイドAを主成分とする菊科植物ステビア・レバウディアナ・ベルトニーの植物体またはその乾燥葉を水、または含水溶媒で抽出して得られる、ステビオール配糖体X(レバウディオサイドO)を含む抽出物である。
【0013】
本発明の第3の態様は、上記態様の抽出物から再結晶等により、ステビオール配糖体X(レバウディオサイドO)を含む高純度レバウディオサイドAを得る方法である。
【0014】
本発明の第4の態様は、上記第2の態様の方法で得られた抽出物を食品に対して1%以下添加する食品の製造方法である。
【0015】
本発明の第5の態様は、上記第3の態様で得られた高純度レバウディオサイドAを食品に対して1%以下添加する食品の製造方法である。
【0016】
STを主成分とする原料品種から得られた抽出物にはステビオール配糖体Xが存在しないが、RAを主成分とする原料品種から得られた抽出物は配糖体Xが存在することからST、RAのいずれを主成分とする原料品種かの判定が可能となる。つまり、STを主成分とする品種から得られた抽出物よりSTを結晶化により除去しRAを主成分とする抽出物、またはそれらから再結晶により得られた高純度製品には配糖体Xが存在しないことから原料品種の確認が可能となる。本発明の第6の態様はステビオール配糖体Xによるステビア品種確認方法である。
【0017】
本発明の第7の態様は、高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLC)によるステビオール配糖体I〜Xの分析方法である。
【0018】
これら目的を達成するために本発明者らはRA主成分とする品種、並びに特願2001−200944号、特願2007−506004号などの品種に含まれる甘味成分を探索し、新規甘味成分を見出しその化学構造を決定した。さらにこれら成分が甘味料として有用であることを確認すると共に、それらの成分による品種確認方法、分析方法を完成させた。
【0019】
新規成分の確認は実施例1におけるRAを主成分とする品種(以下A品種)、特願2001−200944号(以下B品種)、特願2007−506004号(以下C品種)の乾燥葉から水、または含水有機溶媒にて抽出を行う。
次いで抽出液をそのまま濃縮するか、または必要に応じて陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、活性炭等でイオン性不純物を除去し、吸着樹脂に甘味成分を吸着させ親水性溶媒で溶離して,必要に応じて溶離液を再度陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、活性炭等で処理し、溶離液を濃縮、乾燥して得られた抽出物、またはその他脱色等の慣用精製手段を適宣施すことにより得られた抽出物でも確認ができる。
【0020】
後記実施例1(1)で得られたRA-C抽出物の新規ステビオール配糖体を実施例5に従って高速液体クロマトグラフィー質量分析装置にて分離、質量分析することにより、各配糖体の構造
【化2】

(式中、RおよびRはそれぞれ水素原子または前記の糖鎖を示す)
を決定した。
ステビオール配糖体I(ズルコサイドB)は図1の高速液体クロマトグラフィーのクロマトグラムの保持時間(以下R.T.)13分付近に確認される分子量788の構造を有する配糖体である。
ステビオール配糖体II(レバウディオサイドG)は図1の高速液体クロマトグラフィーのクロマトグラムのR.T.15分付近に確認される分子量804の構造を有する配糖体である。
ステビオール配糖体III(レバウディオサイドI)は図1の高速液体クロマトグラフィーのクロマトグラムのR.T.28分付近に確認される分子量1112の構造を有する配糖体である。
ステビオール配糖体IV(レバウディオサイドH)は図1の高速液体クロマトグラフィーのクロマトグラムのR.T.29分付近に確認される分子量1128の構造を有する配糖体である。
ステビオール配糖体V(レバウディオサイドL)は図1の高速液体クロマトグラフィーのクロマトグラムのR.T.34分付近に確認される分子量1112の構造を有する配糖体である。
ステビオール配糖体VI(レバウディオサイドK)は図1の高速液体クロマトグラフィーのクロマトグラムのR.T.34分付近に確認される分子量1112の構造を有する配糖体である。
ステビオール配糖体VII(レバウディオサイドJ)は図1の高速液体クロマトグラフィーのクロマトグラムのR.T.35分付近に確認される分子量1128の構造を有する配糖体である。
ステビオール配糖体VIII(レバウディオサイドM)は図1の高速液体クロマトグラフィーのクロマトグラムのR.T.35分付近にレバウディオサイドDと重複して確認される分子量1290の構造を有する配糖体である。
ステビオール配糖体IX(レバウディオサイドN)は図1の高速液体クロマトグラフィーのクロマトグラムのR.T.43分付近に確認される分子量1274の構造を有する配糖体である。
ステビオール配糖体X(レバウディオサイドO)は図1の高速液体クロマトグラフィーのクロマトグラムのR.T.51分付近に確認される分子量1436の構造を有する配糖体である。ただし、上記のR.T.はグラジエント溶出による分析の為に変動することは当業者が周知の通りである。
【0021】
上述の通り、最終製品におけるステビオール配糖体Xの存在の有無は原料品種の特定に重要な情報を提供することとなる。
同時にこれら新規ステビオール配糖体は高速液体クロマトグラフィーにより確認することができるので、甘味料として使用する場合にもそれら甘味成分の存在を把握することにより総合的な味質管理および/または品質管理が可能となる。
【0022】
得られた抽出物、及びその結晶はキャンデー、ゼリー、飲料、粉末飲料、インスタント麺、ジャム、冷菓、チューインガム、和菓子、健康食品、チョコレート、卓状甘味料、焼き菓子、珍味,水練り食品、乳酸飲料、乳酸菌飲料、コーヒー飲料、ココア飲料、茶飲料、リキュール、ワイン、シャーベット、シリアル食品、植物繊維含有食品、ソース、醤油、味噌、食酢,ドレッシング、マヨネーズ、ケチャップ、カレー、スープ、米菓、アラレ類、パン類、ビスケット、クラッカー、ホットケーキの素、果物缶詰、野菜缶詰、食肉製品、魚肉練り製品、塩性食品、漬物、複合調味料、嗜好性食品、化粧品などに甘味料として使用することが出来、カロリー低下、糖類削減、融点降下、甘味質改善、およびマスキング効果等が得られ、また他の天然、人工甘味料、希釈剤等をさらに添加することもできる。
【実施例】
【0023】
実施例1 RA抽出物の製造
(1)抽出
RAを主成分とするA品種、同B品種、同C品種から得られた乾燥葉各100gを20倍量の水で甘味が感じられなくなるまで数回抽出した。抽出液を吸着樹脂(ダイヤイオンHP−20)300ml充填したカラムに通して甘味成分を吸着させ、十分水洗後メタノール900mlで溶離した。イオン交換樹脂(ダイヤイオンWA-30)200mlを充填したカラムに当該溶離液を通し、通過液に活性炭10gを加え攪拌した。混合物を濾過し、濃縮、乾燥して淡黄白色のレバウディオサイドAを主成分とするRA-A抽出物13.0g(ST35.4%、RA41.7%、RC9.8%)、RA-B抽出物11.5g(ST19.5%、RA58.1%、RC8.8%)およびRA-C抽出物12g(ST5.4%、RA72.3%、RC8.1%)をそれぞれ得た。
(2)RA再結晶
上記のRA-B抽出物、RA-C抽出物5gを10倍量の90%メタノールに加熱溶解した後に、4℃に6日間冷却放置し、得られた結晶を分離し、冷メタノールで洗浄後、減圧乾燥し、白色のRA-B結晶3.9g(ST0.2%、RA95.0%、RC0.2%)およびRA-C結晶4.5g(ST0.2%、RA95.6%、RC0.1%)をそれぞれ得た。
【0024】
実施例2 ST抽出物の製造
比較のためにSTを主成分とする品種からも同様の処理をしてST抽出物11.3g(ST51.9%、RA23.7%、RC7.4%)を得た。
【0025】
実施例3 RA-A母液、ST母液
上記のRA-A抽出物およびST抽出物各10gを10倍量の90%メタノール水溶液に加熱溶解した後に、4℃に6日間冷却放置し、得られた結晶を分離し、冷98%メタノールで洗浄後、減圧乾燥し、ステビオサイドの白色結晶であるRA-ST結晶を2.1gおよびST−ST結晶3.8gをそれぞれ得た。RAを主成分とするRA-A母液8.8g(ST15.7%、RA43.8%、RC6.9%)およびST母液6.1g(ST20.0%、RA37.1%、RC11.2%)を濃縮、乾燥して、それぞれ淡黄色のRAを主成分とする母液粉末を得た。
【0026】
実施例4 RA−A結晶、ST−RA結晶
実施例3の母液粉末をそれぞれ10倍量の90%にメタノール水溶液に加熱溶解し、4℃に6日間冷却放置し、得られた結晶を分離し、冷98%メタノールで洗浄後、減圧乾燥し、白色のRA-A結晶2.2g(ST1.6%、RA90.4%、RC1.4%)およびST−RA結晶1.2g(ST1.6%、RA96.9%、RC1.4%)を得た。
【0027】
実施例5 ステビオール配糖体の構造決定
下記の通り高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、分析を行った。
各抽出物中のステビオール配糖体の分離は島津LC-10ADvp液体クロマトグラフを用い、カラムはTSKgel Amide-80(4.6 x 250 mm、東ソー)を用いて行った。溶媒は、アセトニトリルと水とを用い、60分でアセトニトリルと水の濃度が82:18から66:34になるようなグラジエント溶出を行った。流速は0.65ml/minで、カラム温度は40℃で、検出は210 nmの紫外線吸収スペクトルで行った。
分子量測定は、ウォーターズ Alliance HPLCシステム2695とウォーターズQuattro micro(トリプル四重極)エレクトロスプレーイオン化(ESI)-質量分析計を使用した。高速液体クロマトグラフィーは、カラムにTSKgel Amide-80(2.0 x 250 mm、東ソー)を用い、溶媒は、アセトニトリルと水とを用い、60分でアセトニトリルと水の濃度が82:18から66:34になるようなグラジエント溶出を行った。流速は0.2 ml/minで、カラム温度は40℃で行った。デゾルベーションガスには窒素ガスを、コリジョンガスにはアルゴンガスを用いた。キャピラリー電圧は、ステビオール配糖体の分析ではネガティブモードで 15.0 kVを用い、ABEE-オリゴ糖の分析ではポジティブモードで13.5 kVを用いた。コーン電圧およびMS/MS分析時のコリジョン電圧は、10〜80V の電圧を使用した。ソース温度は100℃、デゾルベーション温度は400℃、コーンガス流量は50 l/hr、デゾルベーションガス流量は900 l/hrで行った。
【0028】
図1〜10に各抽出物および結晶についてのHPLC分析結果を示す。
下記の表1〜表9はそれぞれ図2〜10に示したクロマトグラフィーの各ピークの分析結果を示す。
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
【表3】

【0031】
【表4】

【0032】
【表5】

【0033】
【表6】

【0034】
【表7】

【0035】
【表8】

【0036】
【表9】

【0037】
上記の各表中で用いた略号は次の通りである。
PKNO:ピーク番号
T:時間(分)
A:ピーク面積
H:ピーク高さ
CONC:濃度(%)
N:配糖体名
TOT:合計
Stev mono:ステビオールモノサイド
Stev bio:ステビオールビオサイド
Rebuso:ルブソサイド
Rebau:レバウディオサイド
Stev:ステビオサイド
Dulco:ズルコサイド
濃度は紫外線210nm吸収スペクトルのトータル面積から算出した濃度であり、含量を測定するには分子量補正をする必要がある。尚、クロマトグラム中のI〜Xは新規ステビオール配糖体I〜Xを示す。
【0038】
実施例6 味質の評価
各抽出物の0.05%水溶液および結晶体の0.03%水溶液をステビアの官能検査に周知した者10人で評価し、その評価結果の平均を下記の表10に示した。
評価は次の五段階で行った。
評価 5;大変良い、4:良い、3;普通、2;やや悪い、1;悪い
【表10】

新規ステビオール配糖体II〜X(レバウディオサイドG〜O)を含む3種のRA抽出物はまろやか味が3種のRA結晶より優れているが、RA結晶はまろやか味以外の評価は3種のRA抽出物より優れている。ST抽出物はまろやか味以外の評価はST−RA結晶より劣る。これらの結果から新規配糖体II〜Xはまろやか味に影響を与えることが分かる。
【0039】
実施例7 品種の確定
各抽出物または各結晶体をHPLCで分析すると、RAを主成分とする品種(以下、RA品種)から得られた抽出物にはSTを主成分とする品種(以下、ST品種)から得られた抽出物に比較してレバウディオサイドDが多く含有され、さらにステビオール配糖体X(レバウディオサイドO)が含まれている。そしてこのステビオール配糖体XはRA品種の抽出物から精製して得られるRA結晶体にも微量ながら含まれることが分かった。
一方、ST品種から得られた抽出物にはステビオール配糖体Xが含まれていない。当然ながら、ST品種から得られたST―RA結晶にもステビオール配糖体Xが含まれないことから、ステビオール配糖体Xの存在を確認すればRA品種から得られた抽出物若しくはそれから得られる結晶体であることを確定できる。
【0040】
実施例8 ステビオール配糖体の分析方法
上記実施例5に記載した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の測定条件から各ステビオール配糖体I〜Xを確認することができる。原則的にはHPLC分析チャートのリテンションタイム(以下R.T.)からステビオール配糖体の存在を確認することができるが、必要であればそれら成分を分取して分子量を測定することにより各ステビオール配糖体I〜Xを確認することができる。
【0041】
実施例9 テーブルシュガー
1)RA‐A結晶体1gおよび粉糖99gを混合してテーブルシュガーを調製した。
2)RA−B結晶体1gおよびエリスリトール 99gを混合してテーブルシュガーを調製した。
3)RA−C結晶体1gおよびブドウ糖果糖液糖99gを混合してテーブルシュガーを調製した。
【0042】
実施例10 飴
RA−C抽出物0.3g、パラチニット100gおよび適量の香料にて飴を調製した。
【0043】
実施例11 ミルクゼリー
砂糖15g、RA−B抽出物0.08g、牛乳250g、ゼラチン5gおよび適量のミルクフレーバーにてミルクゼリーを調製した。
【0044】
実施例12 スポーツ飲料
RA−B結晶体0.075%、乳酸カルシウム0.11%、クエン酸0.045%、クエン酸三ナトリウム0.03%、塩化マグネシウム0.015%、グルタミン酸0.0055%および水99.72%でスポーツ飲料を調製した。
【0045】
実施例13 炭酸飲料
RA−B結晶体0.012%、果糖8.4%、クエン酸0.6%、アルギニン0.12%、イノシトール0.1%、カフェイン0.0025%、パントテン酸カルシュウム0.0034%、ナイアシンアミド0.003%、ビタミンB6 0.002%,ビタミンB2 0.00009%、ビタミンB12 0.000002%、適量の香料および水で100%とし、炭酸ガスを注入して炭酸飲料を調製した。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明により提供される甘味料に含まれる新規ステビオール配糖体成分をHPLCにて測定することで、甘味料の製造において一定の甘味度、甘味質、まろやか味を有する甘味料その他食品を製造することができ、更に原料品種の推測が可能となって、ステビア品種に関する産地表示の適切性や権利侵害の判断が容易となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式
【化1】

(式中、RおよびRは水素原子または下表

の糖鎖を表す。)
で示されるステビオール配糖体I〜X。
【請求項2】
レバウディオサイドAを主成分とする菊科植物ステビア・レバウディアナ・ベルトニーの抽出物であって、ステビオール配糖体Xを含む抽出物。
【請求項3】
請求項2に記載の抽出物から高純度レバウディオサイドAを得る製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載の抽出物を1%以下添加することを特徴とする、食品の製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載の製造法により得られた高純度レバウディオサイドAを1%以下添加することを特徴とする、食品の製造方法。
【請求項6】
ステビオール配糖体Xによるステビア品種確認方法。
【請求項7】
ステビオール配糖体I〜Xの分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−504552(P2012−504552A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514909(P2011−514909)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【国際出願番号】PCT/JP2009/067585
【国際公開番号】WO2010/038911
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(390000697)守田化学工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】