説明

新規治療用および診断用生成物および方法

本発明はp11/5−HT受容体関連障害の診断、処置および開発のための薬物標的および手段としてのp11の使用に関する。本発明はさらにp11ノックアウト動物およびp11トランスジェニック動物、および新規精神治療薬の開発のためのモデルとしてのその使用、ならびにp11/5−HT受容体関連障害の診断、予防および処置の方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2006年6月13日出願の米国仮特許第60/813170号および2007年1月5日出願の第60/878730号の利益を主張し、その内容は出典明示により本明細書の一部とする。
【0002】
(技術分野)
本発明はp11と5−HT1Bおよび5−HT受容体との間の生物学的関連性を紹介し、これらの受容体が関連する疾患のための薬物標的およびp11/5−HT受容体関連障害を患う患者の同定のための診断手段としてのp11の使用を提供する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
現在利用可能な抗うつ剤および抗不安薬はノルエピネフリン、ドーパミンおよびとりわけセロトニン(5−ヒドロキシ−トリプタミンまたは5−HT)のようなモノアミン神経伝達物質の生合成、分解および作動経路を標的とする。1940年代後期に最初に発見されたセロトニンは気分、睡眠、食欲および性的行為を含む身体における多くの機能を調整するのに重大な役割を果たす。それは中枢神経系内で神経伝達物質として、およびまた末梢シグナルモジュレーターとしての双方で機能する。結果的にセロトニン利用性および活性における改変はうつ病、摂食障害(例えば過食症)、強迫性障害(OCD)、薬物依存、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、月経前症候群、不安障害、攻撃性、睡眠障害、性機能障害、胃腸障害(例えば過敏性腸症候群)、躁病、偏頭痛および双極性障害に関係している。従来の抗うつ剤は、典型的には(1)モノアミンオキシゲナーゼを阻止することによりセロトニンの分解を防御する;または(2)シナプス前ニューロンによるセロトニン再取り込みを阻止することによりセロトニンのニューロン輸送を増加させる;のいずれかによりシグナル伝達を調節する。しかしながら半世紀にわたるセロトニン経路の集中的な研究にもかかわらず、これらの経路の理解は不完全であり、そしてセロトニン経路機能障害に関する確立された生化学基盤の診断またはバイオマーカーはない。
【0004】
5−HT(セロトニン)受容体は異種性であり、そして種々の細胞の表面において見出される。5−HT1B受容体は14個のセロトニン受容体サブタイプのうちの一つであり、そして中枢神経系全体にわたって豊富に見出される。5−HT1B受容体の構造、分布および見かけの機能はげっ歯類およびヒトにおいて非常に類似する。この受容体は気分、認知、攻撃性、耽溺、睡眠および摂食を含む多様な生理学的機能および行動に関係している。5−HT1B受容体はセロトニンおよび非セロトニン含有ニューロンの双方において見出される。5−HT1B受容体は大部分がニューロンのシナプス前部分において見出され、ここでそれはニューロンによるセロトニン放出の調節に関与する終末自己受容体として機能する。セロトニンに結合することにより刺激される場合、それらはニューロンによるさらなるセロトニンの放出を阻止し;刺激されない場合、セロトニン放出は強化される。故にこれらの5−HT1B受容体の遮断はセロトニンレベルを増強する傾向がある。5−HT1B受容体がアセチルコリン、グルタミン酸、ドーパミン、ノルエピネフリンおよびガンマアミノ酪酸のようなその他の神経伝達物質、ならびにセロトニンの放出の制御に関与するヘテロ受容体であるといういくつかの証拠がある。シナプス後で見出される5−HT1B受容体もある。5−HT受容体は胃腸管系(ここでそれは胃腸管運動性に関与する)および中枢神経系において見出される。5−HT1Bは一般的にcAMPの低下に関連するが、5−HT受容体はcAMP活性上昇に関連する。脳における5−HT受容体は神経伝達物質(アセチルコリン、ドーパミン、セロトニンおよびGABA)放出を調整し、そしてシナプス伝達を強化する。それらはまた非アミロイド形成的可溶性アミロイド前駆体タンパク質(sAPPアルファ)の放出を促進することにより記憶強化において役割を果たし得る。アルツハイマー病はベータ−アミロイドプラーク形成の沈着により媒介されると広く考えられているので、5−HT受容体機能を強化し、それによりsAPPアルファの放出を強化することは、アルツハイマー病の処置または予防に対する可能性のある研究法に相当する。
【0005】
タンパク質p11はS100EFハンドタンパク質ファミリーのメンパーである。p11はまたアネキシンII軽鎖、リポコルチンII軽鎖、カルパクチンI軽鎖、42CまたはS−100関連タンパク質としても公知であり、そして本明細書ではこれらの用語を互換的に使用できる。R. Donato, Biochim. Biophys. Acta, 1450:191(1999)。それは種々の細胞内に別々に、またはヘテロ四量体として存在する。ヘテロ四量体はアネキシンIIまたはカルパクチンI重鎖としても公知のp36の2個のコピー、およびp11の2個のコピーからなる。細胞内ではヘテロ四量体は偽膜性細胞骨格における細胞膜の細胞質表面に局在し、そして複合体はエクソサイトーシス、エンドサイトーシスおよび細胞間接着のような膜トラフィッキング事象において役割を果たし得ることが示唆される。p11は腫瘍細胞浸潤、腫瘍成長および転移において役割を有すると主張されている。米国特許出願公開第2004/0142897(A1)。p11が5−HT受容体または精神障害に関与しているとは以前に報告されたことはない。
【発明の概要】
【0006】
(発明の要旨)
出願人は、本発明により、驚くべき事にp11タンパク質が5−HT1B受容体と特異的に相互作用し、そして多くの精神治療薬の中心的な標的である脳メッセンジャー化学セロトニンのシグナリングの調節を支援すると考えられることを発見した。Svenningsson et al., Science331:77−80(2006);Svenningsson et al., Current Opinion in Pharmacology 6:1−6(2006)(双方を出典明示により本明細書の一部とする)。p11は、5−HT1B受容体の、より機能的な場所であるニューロン細胞膜への補充において重大な役割を果たすと考えられる。出願人はさらにp11が5−HT受容体とも相互作用することを発見した。出願人は、欠陥のあるセロトニン受容体を伴うと考えられるうつ病、不安障害および類似の精神病の発達においてp11レベルが直接関与し得ることを示している。うつ病対象の脳におけるp11レベル(うつ病のヒトおよびマウスモデル)の、非うつ病対象のレベル(非うつ病のヒトおよび対照マウス)に対する比較により、非うつ病対象と比較して、うつ病対象ではp11のレベルが相当低いことが示される。さらにp11レベルは、三環系抗うつ剤、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)および電撃療法を含む種々の型の抗うつ剤で処置された対象においてより高い傾向がある。抗うつ剤で処置された動物においてp11は過剰発現される。例えば選択的セロトニン取り込み阻害剤、フルオキセチンを投与されたサルは末梢血単核細胞(PBMC)においてp11発現の顕著な(2倍を超える)増加を示すことが観察されており、そして類似の効果がフルオキセチンを投与されたマウスの脳において実証される。同様に、p11ノックアウト遺伝子を有する動物モデルは、ニューロン細胞膜で呈される5−HT1B受容体がより少なく、セロトニンシグナリングは低下しており、そしてうつ病様の表現型を呈する。興味深いことに、しばしばストレスに応答して放出されるグルココルチコイドホルモンの過剰レベルに応答してp11発現が低下し、それは出願人の研究を踏まえて、うつ病と高度なストレス源との間で観察された連関に関して可能な生化学的説明を提供する。出願人によるこれらの驚くべき発見に基づいてp11が、従来の5−HT1Bもしくは5−HT受容体に、またはセロトニン機能(またはその欠如)に関連した障害のための処置の開発のための適当な診断標的および薬物標的ならびにスクリーニング手段であることが示される。
【0007】
「p11/5−HT受容体関連障害」なる用語は本明細書にて使用される際にはp11タンパク質による5−HT受容体、例えば5−HT1Bまたは5−HT受容体の動員(または動員の欠如)により媒介される、関連する、引き起こされる、影響を受ける、引き金となる、またはそれを伴う任意の障害を含む。p11/5−HT受容体関連障害には、限定するものではないが精神障害(例えばうつ病、不安障害、攻撃性、躁病、双極性障害、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、薬物依存および強迫性障害、ならびにアルツハイマー病)、睡眠障害(例えば不眠症)、摂食障害(例えば過食症)、性機能障害および胃腸障害(例えば過敏性腸症候群);特にうつ病が含まれ得る。
【0008】
故に本発明はとりわけ:
1. p11/5−HT受容体関連障害を診断する方法;
2. p11/5−HT受容体関連障害の処置に有用な化合物を同定する方法;
3. p11を過剰または過少発現するトランスジェニック動物;および
4. p11/5−HT受容体関連障害を処置する方法;
を提供する。
【0009】
(発明の詳細な説明)
一つの実施態様では、本発明は;
(1)対象の生物学的試料、例えば血液または組織試料、例えば単球および/または白血球、例えば末梢血単核細胞(PBMC)中のp11タンパク質のレベルを検定すること;ならびに(2)該p11レベルを参照標準、例えば任意のp11/5−HT受容体関連障害を有していないかまたは有している疑いのない対照集団におけるp11レベルと比較することであって、ここで参照標準と比較して、対象におけるp11の異常レベルはp11/5−HT受容体関連障害の陽性診断を構成する;
を含む、対象においてp11/5−HT受容体関連障害を診断する方法に関する(方法1)。
【0010】
故に本発明は以下の方法1の実施態様を含む。
1.1. p11/5−HT受容体関連障害が異常に低いレベルのp11に関連する障害であり、ここで参照標準と比較して対象において低下したp11のレベルがかかる障害の陽性診断を構成する方法1の方法。
1.2. 障害が異常に低いレベルのp11に関連する障害であり、そしてうつ病、強迫性障害、薬物依存、摂食障害、注意欠陥障害および注意欠陥多動性障害からなる群から選択される方法1または1.1に記載の方法。
1.3. 障害が異常に低いレベルのp11に関連する障害であり、そしてうつ病である前記の方法のいずれかに記載の方法。
1.4. 該p11/5−HT受容体関連障害が異常に高いレベルのp11に関連する障害であり、ここで参照標準のレベルと比較して対象において上昇したp11のレベルがかかる障害の陽性診断を構成する方法1に記載の方法。
【0011】
1.5. 障害が異常に高いレベルのp11に関連する障害であり、そして躁病、双極性障害、不安障害、攻撃性、睡眠障害、性機能障害および胃腸障害からなる群から選択される方法1または1.4のいずれかに記載の方法。
1.6. 該p11のレベルが該対象からの末梢血単核細胞(PBMC)におけるp11タンパク質レベルを検定することにより決定される前記の方法のいずれかに記載の方法。
1.7. PBMCが単球、NK細胞およびCD−8+T細胞から選択される1.6に記載の方法。
1.8. 該p11のレベルが該対象からの生物学的試料中のp11 mRNAレベルを検定することにより決定される前記の方法のいずれかに記載の方法。
1.9. p11のレベルがp11に特異的なモノクローナル抗体を用いて決定される前記の方法のいずれかに記載の方法。
1.10. p11/5−HT受容体関連障害がp11/5−HT1B受容体関連障害である前記の方法のいずれかに記載の方法。
【0012】
1.11. p11/5−HT受容体関連障害がp11/5−HT受容体関連障害である前記の方法のいずれかに記載の方法。
1.12. 例えば前記の方法1−1.11のいずれかにしたがって、p11 mRNAに特異的なオリゴヌクレオチドプローブまたはp11に特異的なモノクローナル抗体、および使用のための説明書を含むp11レベルを測定するのに有用なキット。
1.13. 方法1−1.11のいずれかにおけるp11 mRNAに特異的なオリゴヌクレオチドプローブまたはp11に特異的なモノクローナル抗体の使用。
1.14. 請求項1−1.11のいずれかに記載の方法または1.12に記載のキットにおいて使用するための試薬の製造におけるp11 mRNAに特異的なオリゴヌクレオチドプローブまたはp11に特異的なモノクローナル抗体の使用。
【0013】
別の実施態様では、本発明は5−HT受容体に関連するp11発現またはp11活性を調節(上方または下方のいずれか)する候補モジュレーターの能力を検定することを含む、p11/5−HT受容体関連障害を処置するかまたは寛解させるのに有用なp11モジュレーターを同定するための方法に関する(方法2)。
【0014】
それ故に方法2は以下を含む:
2.1. 均等量のp11遺伝子生成物(例えばタンパク質またはmRNA)を含有する第1試料および第2試料、例えば細胞培養物または細胞もしくは組織試料を提供すること;第1試料を候補p11モジュレーターと接触させること;ならびに第1試料中のp11遺伝子生成物の量が変化しているかどうかを決定すること;の工程を含むp11/5−HT受容体関連障害を処置するかまたは寛解させるのに有用なp11モジュレーターを同定するための方法であって、ここで遺伝子生成物の量の増加は、候補モジュレーターが異常に低いレベルのp11に関連する障害を処置するかまたは寛解させるのに有用であり得ることを示し、一方量の低下は候補モジュレーターが異常に低いレベルのp11に関連する障害を処置するかまたは寛解させるのに有用であり得ることを示す。
【0015】
2.2. 細胞表面での均等数の5−HT1Bおよび/または5−HT受容体を含有する第1試料および第2試料を提供すること;第1試料を候補p11モジュレーターと接触させること;ならびに第1試料の細胞表面での5−HT1Bおよび/または5−HT受容体の数が第2試料と相対して変化しているかどうかを決定すること;の工程を含むp11/5−HT受容体関連障害を処置するかまたは寛解させるのに有用なp11モジュレーターを同定するための方法であって、ここで細胞表面での5−HT1Bおよび/または5−HT受容体の数の増加は、候補モジュレーターが異常に低いレベルのp11に関連する障害を処置するかまたは寛解させるのに有用であり得ることを示し、一方細胞表面での5−HT1Bおよび/または5−HT受容体の数の低下は候補モジュレーターが異常に低いレベルのp11に関連する障害を処置するかまたは寛解させるのに有用であり得ることを示す。
【0016】
2.3. 候補p11モジュレーターを、p11プロモーターに作動可能なように連結されたレポーター遺伝子を含む細胞と接触させること、およびp11発現の代理としてレポーター遺伝子発現を使用することを含む11モジュレーターを同定するための方法。
2.4. 候補モジュレーターが5−HT1Bおよび/または5−HT受容体に関連するp11発現を上方調節するか、またはp11活性を上昇させて、ニューロン細胞膜で5−HT1Bおよび/または5−HT受容体を補充する能力に関して検定することを含む、低レベルのp11に関連する障害を処置するかまたは寛解させるのに有用なp11モジュレーターを同定するための方法。
【0017】
2.5. 異常に低いレベルのp11に関連する障害がうつ病、強迫性障害、薬物依存、摂食障害、注意欠陥障害または注意欠陥多動性障害、およびアルツハイマー病から選択される方法2−2.4のいずれかに記載の方法。
2.6. 障害がうつ病である前記の方法2−2.5のいずれかに記載の方法。
2.7. p11のモジュレーターを陽性対照として使用する前記の方法2−2.6のいずれかに記載の方法。
2.8. p11のモジュレーターが三環系抗うつ剤、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、トリプタンおよびモノアミンオキシダーゼ阻害剤から選択される方法2.6に記載の方法。
【0018】
2.9. p11のモジュレーターがアミトリプチリン(商品名:Elavil)、デシプラミン(商品名:Norpramin)、イミプラミン(商品名:Tofranil)およびノルトリプチリン(商品名:Aventyl、Pamelor)から選択される三環系抗うつ剤である方法2.8に記載の方法。
2.10. p11のモジュレーターがイミプラミンである方法2.8に記載の方法。
2.11. p11のモジュレーターが例えばイソカルボキサジド(商品名:Marplan);フェネルジン(商品名:Nardil)およびトラニルシプロミン(商品名:Parnate)から選択されるモノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)である方法2.8に記載の方法。
2.12. MAOIがトラニルシプロミンである2.11に記載の方法。
2.13. p11のモジュレーターが例えばシタロプラム(商品名:Celexa);エスシタロプラム(商品名:Lexapro);フルオキセチン(商品名:Prozac);パロキセチン(商品名:Paxil、Pexeva);セルトラリン(商品名:Zoloft)から選択される選択的セロトニン再取り込み阻害剤である方法2.8に記載の方法。
【0019】
2.14. 候補モジュレーターがp11発現を下方調節するか、5−HT1Bおよび/または5−HT受容体に関連するp11活性を阻止もしくは低下させて、p11がニューロン細胞膜に5−HT1Bおよび/または5−HT受容体を補充する能力を低下させるかまたは阻止する能力に関して検定することを含む、高レベルのp11に関連する障害を処置するかまたは寛解させるのに有用なp11モジュレーターを同定するための方法。
2.15. 高レベルのp11に関連する障害には、限定するものではないが躁病、双極性障害、不安障害、攻撃性、睡眠障害、性機能障害および胃腸障害が含まれる2.14に記載の方法。
2.16. 該モジュレーターがp11に対するsiRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびモノクローナル抗体から選択される高レベルのp11に関連する障害を処置するかまたは寛解させるのに有用なp11モジュレーターを同定するための2.15に記載の方法。
【0020】
2.17. p11に対するsiRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびモノクローナル抗体から選択されるp11サプレッサー化合物を対照またはコンパレーターとして使用する方法2−2.16のいずれかに記載の方法。
2.18. 候補p11擬似物質が5−HT1Bおよび/または5−HT受容体に関連または相互作用してニューロン細胞膜に5−HT1Bおよび/または5−HT受容体を補充する能力に関して検定することを含む、異常に低いレベルのp11に関連する障害を処置するかまたは寛解させるのに有用なp11擬似物質を同定するための方法2−2.17のいずれかに記載の方法。
【0021】
2.19. 候補p11擬似物質がニューロン細胞膜に5−HT1Bおよび/または5−HT受容体を補充する能力に関して検定することを含むうつ病を処置するかまたは寛解させるのに有用なp11擬似物質を同定するための方法2.18に記載の方法。
2.20. p11/5−HT受容体関連障害がp11/5−HT1B受容体関連障害である前記の方法のいずれかに記載の方法。
2.21. p11/5−HT受容体関連障害がp11/5−HT受容体関連障害である前記の方法のいずれかに記載の方法。
2.22. p11プロモーターに作動可能なように連結されたレポーター遺伝子を含む細胞。
2.23. 方法2−2.21のいずれかに記載の方法における2.22に記載の細胞の使用。
【0022】
さらに別の実施態様では、本発明はp11を過剰または過少発現するヒト以外のトランスジェニック哺乳動物またはその子孫および新しい医薬品を発見するための方法におけるその使用を志向する(方法3)。故に本発明には以下が含まれる:
3.1. p11遺伝子に欠陥、変異または欠損を有するDNA配列を保有し、そしてそれ故にp11タンパク質を過少発現し、ならびに/またはニューロン細胞膜で保有する5−HT1Bおよび/もしくは5−HT受容体がより少なく、そしてそれ故に同一種の野生型のヒト以外の哺乳動物と比較してうつ病様の表現型を呈するヒト以外のp11ノックアウト哺乳動物。
3.2. ヒト以外の該哺乳動物がp11タンパク質を過剰発現し、ならびに/またはニューロン細胞膜で5−HT1Bおよび/もしくは5−HT受容体のレベル上昇を呈し、そしてそれ故に同一種の野生型のヒト以外の哺乳動物と比較して活動亢進の表現型を呈するヒト以外のp11トランスジェニック哺乳動物。
【0023】
3.3. マウスである3.1または3.2に記載のヒト以外の哺乳動物。
3.4. 調節プロモーター、例えばドキシサイクリン調節カルシウム/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼII(CamKII)プロモーターに作動可能なように連結されたp11をコードするコード化領域を含む導入遺伝子を有する3.2または3.3に記載のヒト以外の哺乳動物。
3.5. (1)新規精神治療薬を(a)3.1または3.3に記載のp11ノックアウト哺乳動物および(b)任意のp11/5−HT受容体関連障害を有していないかまたは有している疑いのない同一種の対照哺乳動物に投与すること;ならびに(2)該(a)ノックアウト哺乳動物および(b)対照哺乳動物の行動および/または5−HT1Bもしくは5−HT受容体のレベルを評価し、そして比較すること;を含むp11/5−HT受容体関連障害を研究するためか、またはp11/5−HT受容体関連障害を処置するかもしくは寛解させるのに有用な新規精神治療薬を開発するための方法。
【0024】
3.6. (a)p11ノックアウト哺乳動物および(b)うつ病を有していないかまたは有している疑いのない対照哺乳動物に抗うつ剤を投与すること;ならびに(2)該(a)ノックアウト哺乳動物および(b)対照哺乳動物の行動および/または5−HT1Bもしくは5−HT受容体レベルを評価し、そして比較すること;を含むうつ病を研究するための、例えば3.4に記載の方法。
3.7. (1)新規抗精神病薬を(a)p11を過剰発現するマウスおよび(b)任意のp11/5−HT受容体関連障害を有していないかまたは有している疑いのない対照マウスに投与すること;ならびに(2)該(a)トランスジェニックマウスおよび(b)対照マウスのp11のレベルを評価し、そして比較すること;を含む新規抗精神病薬を開発するのに有用なマウスモデル。
【0025】
3.8. (1)新規精神治療薬を(a)3.2または3.3に記載の哺乳動物および(b)任意のp11/5−HT受容体関連障害を有していないかまたは有している疑いのない同一種の対照哺乳動物に投与すること;ならびに(2)該(a)3.2または3.3に記載の哺乳動物および(b)対照哺乳動物のp11レベルを評価し、そして比較すること;を含むp11/5−HT受容体関連障害を研究するためか、またはp11/5−HT受容体関連障害を処置するかもしくは寛解させるのに有用な新規精神治療薬を開発するための方法。
3.9. (1)新規抗精神病薬を(a)例えば3.2に記載のp11を過剰発現するマウスおよび(b)任意のp11/5−HT受容体関連障害を有していないかまたは有している疑いのない対照マウスに投与すること;ならびに(2)該(a)トランスジェニックマウスおよび(b)対照マウスの行動および/またはp11もしくは5−HT受容体レベルを評価し、そして比較すること;を含む新規抗精神病薬を開発するのに有用なp11マウスモデル。
【0026】
3.10. 測定されるかまたは過剰もしくは過少発現される5−HT受容体が5−HT1B受容体である前記の方法またはモデルのいずれかに記載の方法またはモデル。
3.11. 測定されるかまたは過剰もしくは過少発現される5−HT受容体が5−HT受容体である前記の方法またはモデルのいずれかに記載の方法またはモデル。
【0027】
本発明はさらに治療上有効量のp11モジュレーターを投与することを含むp11/5−HT受容体関連障害を患う患者を処置するための方法に関する(方法4)。
4.1. 患者が最初に方法1−1.1のいずれかにしたがって同定される場合の方法4。
4.2. p11/5−HT受容体関連障害が例えばうつ病、強迫性障害、薬物依存、摂食障害、注意欠陥障害または注意欠陥多動性障害、およびアルツハイマー病から選択される、異常に低いレベルのp11に関連する障害である4または4.1に記載の方法。
4.3. 障害がうつ病である4.2に記載の方法。
【0028】
4.4. 方法3にしたがって、例えば実施態様3.1−3.11のいずれかを用いて同定されるp11モジュレーターを投与することを含む前記の方法4−4.3のいずれかに記載の方法。
4.5. p11のモジュレーターが三環系抗うつ剤、選択的セロトニン再取り込み阻害剤およびモノアミンオキシダーゼ阻害剤から選択される前記の方法のいずれかに記載の方法。
4.6. p11のモジュレーターがアミトリプチリン(商品名:Elavil)、デシプラミン(商品名:Norpramin)、イミプラミン(商品名:Tofranil)およびノルトリプチリン(商品名:Aventyl、Pamelor)から選択される三環系抗うつ剤である4.4に記載の方法。
4.7. p11のモジュレーターがイミプラミンである4.5に記載の方法。
【0029】
4.8. p11のモジュレーターがイソカルボキサジド(商品名:Marplan);フェネルジン(商品名:Nardil)およびトラニルシプロミン(商品名:Parnate)から選択されるモノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)である4.4に記載の方法。
4.9. MAOIがトラニルシプロミンである4.8に記載の方法。
4.10. p11のモジュレーターがシタロプラム(商品名:Celexa);エスシタロプラム(商品名:Lexapro);フルオキセチン(商品名:Prozac);パロキセチン(商品名:Paxil、Pexeva);セルトラリン(商品名:Zoloft)から選択される選択的セロトニン再取り込み阻害剤である方法4.4に記載の方法。
【0030】
4.11. p11/5−HT受容体関連障害を患う対象に有効量のp11モジュレーターまたは擬似物質を投与し、p11発現および/またはニューロン細胞膜で5−HT1Bもしくは5−HT受容体を調節(上方または下方)することを含む該対象を処置するかまたは寛解させる前記の方法4−4.10のいずれかに記載の方法。
4.12. 異常に低いレベルのp11に関連する障害を患う対象に有効量のp11モジュレーターまたは擬似物質を投与して、p11発現を上方調節するかまたはニューロン細胞膜に5−HT1Bもしくは5−HT受容体を補充することを含む該対象を処置するかまたは寛解させる4.11に記載の方法。
4.13. 障害がうつ病、強迫性障害、薬物依存、摂食障害、注意欠陥障害または注意欠陥多動性障害、およびアルツハイマー病から選択される4.12に記載の方法。
【0031】
4.14. p11/5−HT受容体関連障害がp11/5−HT1B受容体関連障害である前記の方法のいずれかに記載の方法。
4.15. p11/5−HT受容体関連障害がp11/5−HT受容体関連障害である前記の方法のいずれかに記載の方法。
4.16. 例えば方法4−4.15のいずれかにおける、p11/5−HT受容体媒介障害を処置するための医薬品の製造における、例えば本明細書に記載されるようなp11モジュレーターの使用。
4.17. 例えば方法4−4.15のいずれかにおいてp11/5−HT受容体媒介障害の処置に使用するためのp11モジュレーターを含む医薬組成物。
【0032】
別の実施態様では本発明は、p11を発現する核酸を投与すること、または該患者の脳においてp11の発現を誘起することを含み、ここで該核酸は該患者の脳においてp11を上方調節するか、またはp11発現を増加させる、p11/5−HT受容体関連障害を患う患者においてp11発現を強化するかまたはp11を上方調節する方法に関する(方法5)。p11をコードするかまたはその発現を誘起する核酸は好ましくはその核酸を含むベクターにより、または細胞により患者の脳に分配される。かかるベクターは適当な分配系のDNAまたはRNAの形態、例えばリポソームに封入されたDNA構築物、またはウイルスベクターの形態、例えば複製欠損アデノウイルスベクターもしくはアデノ随伴ウイルスベクターでよい。好ましい実施態様では、ベクターは導入遺伝子の感染細胞への組み込みよりもむしろ望ましい導入遺伝子の一過性の発現を提供するウイルスベクター、例えばアデノウイルス由来のベクターである。ベクターは例えばp11をコードするDNAの発現を制御して、標的細胞におけるp11の発現を可能にするプロモーター、例えば構成的プロモーター(例えばCMVプロモーターのような)、組織特異的プロモーター(例えばニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーターのような)または誘導プロモーター(例えばテトラサイクリンまたはドキシサイクリン誘導プロモーター)に作動可能なように連結されたp11をコードするDNAを含む。例えばウイルスベクターは組織特異的プロモーターの制御下でp11DNA構築物を含み、そして複製に必須の一つまたはそれより多い遺伝子(例えばE1および/またはE3遺伝子)の機能的コピーを欠如して、ヘルパー細胞系または複製に必須の一つまたは複数の遺伝子の生成物が供給されるその他の環境においてのみウイルスが複製できる、組換えにより修飾されたアデノウイルスでよい。ウイルスベクターはまた免疫原性を低減させ、および/またはベクターを望ましい細胞に標的化するための表面修飾を含むこともできる。CNSにおける遺伝子治療に適当なウイルスベクターは当分野において公知であり、例えばBenitez, et al., 「中枢神経系における標的化遺伝子治療」Current Gene Therapy 3:127−145(2003)(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されるような、例えばCNS細胞に標的化されたベクターおよび導入遺伝子の発現のための組織特異的または誘導プロモーターを利用するベクターを含む。非ウイルス性核酸分配系は、核酸が細胞膜を通って侵入するのを促すために薬剤に随伴されるかまたは複合化された核酸を含むことができる。かかる非ウイルスベクター複合体の実例には、DNAの濃縮を促すポリカチオン性薬剤を伴う処方および脂質基盤の分配系、例えばリポソーム基盤の分配系が挙げられる。別の実施態様では、p11を発現するかまたはその発現を誘起する該核酸は細胞、例えば患者の細胞により発現されるレベルよりも高いレベルでp11を発現する、患者の脳に移植されたニューロン幹細胞により分配される。細胞の供給源は患者またヒトドナーでよい。(i)p11構築物、(ii)p11発現を増強する、天然のp11配列の上流のプロモーター、または(iii)p11発現を増強するタンパク質をコードする構築物を用いて、p11発現に関して選択することにより、および/または形質転換、例えばエキソビボ形質転換することにより、移植された細胞におけるp11発現を達成できる。好ましくは、構築物が細胞のゲノム組み込まれるように、例えばレトロウイルスまたはレンチウイルスベクターを用いて細胞を安定して形質転換する。細胞が癌性になるか、またはウイルスが患者に感染するか、またはそれ以外に患者に害を及ぼす危険性がある場合、宿主細胞のガンシクロビルに対する感受性を高くして、細胞またはウイルスを容易に破壊できるように、細胞またはウイルスベクターはさらに「安全性遺伝子(safety gene)」、例えば単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(HSV−tk)を含むことができる。好ましい実施態様では、p11発現を増強する核酸(例えばp11を発現する構築物を含む細胞またはウイルスベクター)を、例えば海馬領域への脳内投与を介して標的細胞に導入する。核酸を単回用量または多回処置で投与することができる。
【0033】
それ故に、本発明はさらに以下のような方法を提供する:
5.1. 該方法がp11発現を増加させる方法5。
5.2. 核酸構築物が脳細胞においてp11を発現することができる方法5または5.1。
5.3. p11/5−HT受容体関連障害が、例えばうつ病、強迫性障害、薬物依存、摂食障害、注意欠陥障害または注意欠陥多動性障害、およびアルツハイマー病から選択される異常に低いレベルのp11に関連する障害である方法5、5.1−5.2。
5.4. p11/5−HT受容体関連障害が不安障害またはうつ病である方法5、5.1−5.2。
5.5. p11/5−HT受容体関連障害がうつ病である方法5、5.1−5.2。
【0034】
5.6. p11をコードする該核酸がp11をコードするDNAを含む複製欠損アデノウイルスベクターにより分配される方法5、5.1または5.5。
5.7. p11をコードするDNAが組織特異的プロモーター、例えばNSEプロモーターの制御下にある方法5.6。
5.8. p11をコードする該核酸がp11構築物で形質転換された幹細胞により分配される方法5、5.1または5.5。
5.9. p11の該核酸が脳内投与により導入される方法5、または5.1−5.8のいずれか。
5.10. p11の該核酸が海馬に導入される方法5、または5.1−5.8のいずれか。
【0035】
本明細書で使用される際には、および添付の請求の範囲では、単数表現「a」、「an」および「the」は、特記しない場合、複数の言及を含む。故に例えば「抗体」に対する言及は、一つまたはそれより多い抗体および当業者に公知のその均等物等に対する言及である。p11/5−HT1B受容体媒介障害の処置には複数のかかる障害の処置が含まれ得る。
本明細書では「p11」なる用語は、限定するものではないが、ヒトまたは任意のその他の種からの前記のいずれかのp11配列またはフラグメントを含有する部分形態、アイソフォーム、前駆体形態、全長ポリペプチド、融合タンパク質を含むp11ポリペプチドの任意のおよび全ての形態を指す。
【0036】
本明細書では「p11/5−HT受容体関連障害」なる語句は、p11タンパク質およびその5−HT受容体、特に5−HT1Bまたは5−HT受容体の動員により媒介される、関連する、引き起こされる、影響を受ける、引き金となる、またはそれを伴う任意の障害を指す。p11/5−HT受容体関連障害には、限定するものではないが精神障害(例えばうつ病、不安障害、攻撃性、躁病、双極性障害、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、アルツハイマー病、薬物依存および強迫性障害)、睡眠障害(例えば不眠症)、摂食障害(例えば過食症)、性機能障害および胃腸障害(例えば過敏性腸症候群)が含まれ得る。本明細書では「異常に低いレベルのp11に関連する障害」とはうつ病、強迫性障害、薬物依存、摂食障害、注意欠陥障害もしくは注意欠陥多動性障害、またはアルツハイマー病、特にうつ病のような障害を指す。同様に「異常に高いレベルのp11に関連する障害」とは、躁病、双極性障害、不安障害、攻撃性、睡眠障害、性機能障害および胃腸障害のような障害を指す。
【0037】
「p11モジュレーター」なる語句は、p11タンパク質をコードする遺伝子の発現、p11遺伝子もしくはcDNAのmRNAへの転写、p11 mRNAのタンパク質への翻訳、p11タンパク質の翻訳後修飾、p11タンパク質の細胞もしくは細胞外局在化、または類似の細胞におけるp11活性と相対して、細胞膜内もしくは膜上または細胞内に局在するp11の量を変化させる(増加させるかまたは減少させるかのいずれか)ことができる任意の物質または化合物(例えば本明細書に記載されるような小型分子またはポリペプチド)または処置の方法(例えば電撃療法)を指す。「p11モジュレーター」なる用語はまた、p11タンパク質が5−HT1B受容体をニューロン細胞膜に補充する能力に影響を及ぼす(正または負のいずれかに)ことができる任意の物質を指す。うつ病のような異常に低いレベルのp11に関連する障害を処置するのに有用なp11モジュレーターの実例には、三環系抗うつ剤(例えばイミプラミン(Tofranil(登録商標))、アミトリプチリン(ELAVIL(登録商標)、ENDEP(登録商標)、TRYPTANOL(登録商標))、クロミプラミン(ANAFRANIL(登録商標))、デシプラミン(NORPRAMIN(登録商標)、PERTOFRANE(登録商標))、ロフェプラミン(GAMANIL(登録商標)、LOMONT(登録商標))、ノルトリプチリン(PAMELOR(登録商標))、トリミプラミン(SURMONTIL(登録商標)))が挙げられる。低レベルのp11に関連する障害(例えばうつ病)を処置するかまたは寛解させるのに有用なその他のモジュレーターにはモノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)(例えばトラニルシプロミン(Parnate)、イソカルボキサジド(Marplan)、モクロベミド(Aurorix、Manerix、MOCLODURA(登録商標))またはフェネルジン(Nardil))および選択的セロトニン再取り込み阻害剤(例えばシタロプラム(商品名:Celexa);エスシタロプラム(商品名:Lexapro);フルオキセチン(商品名:Prozac);パロキセチン(商品名:Paxil、Pexeva);セルトラリン(商品名:Zoloft))が含まれる。
【0038】
従来のスクリーニングアッセイ(インビトロおよびインビボの双方)を使用してp11活性および/またはp11遺伝子発現を阻止または誘起するモジュレーターを同定することができる。一つのかかるアッセイは、p11結合部位の下流にマーカー遺伝子(例えばルシフェラーゼまたは緑色蛍光タンパク質(GFP))を含むレポーター構築物でトランスフェクトされた細胞を候補モジュレーター化合物と接触させ、そしてマーカータンパク質の発現における変化を測定し、そしていずれのモジュレーターとも接触していないトランスフェクトされた細胞試料と比較する遺伝子レポーターアッセイである。マーカータンパク質発現を阻止または誘起のいずれかを行う候補モジュレーターは、p11/5−HT受容体関連障害の処置に有用な薬物として同定される。マーカータンパク質発現を阻止する候補モジュレーターは、異常に高いレベルのp11に関連する障害の処置のための有用な薬物候補であり、一方マーカータンパク質発現を誘起する候補モジュレーターは異常に低いレベルのp11に関連する障害の処置のための有用な薬物候補であろう。
【0039】
p11モジュレーターには、例えば遊離の、もしくは薬学的に許容される塩形態の天然もしくは非天然化学化合物、センスもしくはアンチセンスp11オリゴヌクレオチド、p11に対する阻止抗体、p11受容体遮断ペプチド、p11アンタゴニスト、siRNA、三重らせんDNA、リボザイム、RNAアプタマーおよび/または二本鎖RNAが含まれ得る。本明細書で使用される際には「アンチセンス」なる用語は、特異的DNAまたはRNA配列に相補的であるヌクレオチド配列を指す。それ故に「p11アンチセンスポリヌクレオチド」とはp11 DNAまたはRNA配列に相補的である任意のヌクレオチド配列を指す。機能的には、p11アンチセンスポリヌクレオチドは細胞におけるp11タンパク質の発現を低下させることができる。「アンチセンス鎖」なる用語は「センス」鎖に相補的である核酸鎖に関連して用いられる。相補鎖の合成を許容するウイルスプロモーターに対して逆配向で目的の(複数の)遺伝子をライゲートすることによる合成を含む任意の方法によりアンチセンス分子を生成することができる。一度細胞に導入されると、この転写された鎖は細胞により生成された天然の配列と組み合わされて二重鎖を形成する。次いでこれらの二重鎖はさらなる転写または翻訳のいずれかを遮断する。「負」なる指定は時にアンチセンス鎖に関して用いられ、そして「正」は時にセンス鎖に関して用いられる。同様に、「センス」なる用語は本明細書で使用される際には、翻訳されて特異的ポリペプチドまたはそのフラグメントを生成することができるヌクレオチド配列を指す。それ故に「p11センスポリヌクレオチド」は翻訳されてp11ポリペプチドまたはそのフラグメントを生成することができる任意のヌクレオチド配列を指す。機能的には、p11センスポリヌクレオチドは細胞におけるp11タンパク質の発現を増加させることができる。
【0040】
具体的には、核酸レベルでp11の発現を阻止する物質には、p11核酸の適切なヌクレオチド配列を指向するリボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせんDNA、RNAアプタマーおよび/または二本鎖RNAが含まれ得る。当業者による従来の技術を用いて、過度な負担または実験を伴わずにこれらの阻止分子を創成することができる。例えば本明細書で論じたポリペプチドをコードする遺伝子の制御領域に対するアンチセンス分子、DNAまたはRNA、すなわちプロモーター、エンハンサーおよびイントロンを設計することにより、遺伝子発現の修飾(例えば阻止)を得ることができる。例えば転写開始部位から、例えば出発部位から−10位置と+10位置の間で誘導されるオリゴヌクレオチドを使用できる。それにもかかわらず、mRNAに強力にハイブリダイズするものを創成するために遺伝子の全領域を用いてアンチセンス分子を設計し、そして当業者によく知られた標準的なアッセイ手順によりかかる適当なアンチセンスオリゴヌクレオチドを生成し、そして同定することができる。
【0041】
同様に、遺伝子発現の発現阻止を「三重らせん」基盤の塩基対形成法を用いて達成することができる。Gee, J.E. et al.(1994)In:Huber, B.E. and B. I. Carr, Molecular and Immunologic Approaches, Futura Publishing Co., Mt. Kisco, N.Y.)。転写物のリボソームへの結合を防御することにより、mRNAの翻訳を阻止するようにこれらの分子を設計することもできる。リボザイム、酵素性RNA分子を使用してRNAの特異的切断を触媒することにより遺伝子発現を阻止することもできる。リボザイム作用のメカニズムはリボザイム分子の相補的標的RNAへの配列特異的ハイブリダイゼーション、続いてエンドヌクレアーゼ的切断を伴う。用いることができる実例には、遺伝子配列、例えばp11に関する遺伝子のエンドヌクレアーゼ的切断を特異的および有効に触媒するように設計することができる、操作された「ハンマーヘッド」または「ヘアピン」モチーフリボザイム分子が挙げられる。任意の潜在的RNA標的内の特異的リボザイム切断部位は最初に、以下の配列:GUA、GUUおよびGUCを含むリボザイム切断部位に関する標的分子を読み取ることにより同定される。一度同定されると、切断部位を含有する標的遺伝子の領域に相当する15個と20個の間のリボヌクレオチドの短いRNA配列を、オリゴヌクレオチドを作動不能にし得る二次構造的様相に関して評価することができる。Grassi and Marini, Annals of Medicine 28:499−510(1996);Gibson, Cancer and Metastasis Reviews 15:287−299(1996);Cotten et al., EMBO J. 8:3861−3866(1989)。RNA存在度または活性を修飾するためにRNAアプタマーを細胞に導入するかまたは発現させることもできる。RNAアプタマーは特異的にその翻訳を阻止できるTatおよびRev RNA(Good et al., Gene Therapy 4:45−54(1997))のようなタンパク質に特異的なRNAリガンドである。遺伝子発現の遺伝子特異的阻止を従来の二本鎖RNA技術を用いて達成することもできる。かかる技術の記載を第WO99/32619号(その全てを出典明示により本明細書の一部とする)に見出すことができる。
【0042】
核酸分子の合成に関する当分野において公知の任意の方法により、本発明のアンチセンス分子、三重らせんDNA、RNAアプタマーおよびリボザイムを調製することができる。これには固相ホスホラミダイト化学合成のようなオリゴヌクレオチドを化学的に合成するための技術が含まれる。これに代えて、本明細書で論じたポリペプチドの遺伝子をコードするDNA配列のインビトロおよびインビボ転写によりRNA分子を作成することができる。かかるDNA配列をT7またはSP6のような適当なRNAポリメラーゼプロモーターを用いて広範な種類のベクターに組み込むことができる。これに代えて、構成的または誘導的にアンチセンスRNAを合成するcDNA構築物を細胞系、細胞または組織に導入することができる。
【0043】
二つの相補的な一本鎖RNA分子を一緒にアニーリングすることにより(その一つは標的mRNAの一部と対合する)(Fire et al., 米国特許第6506559号)、または必要な二本鎖部分を生成するためにそれ自体に折り重ねられた単一のヘアピンRNA分子の使用により(Yu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:6047−52(2002))本発明のsiRNA分子を作成することができる。siRNA分子を化学的に合成するか(Elbashir et al., Nature 411:494−98(2001))または一本鎖DNA鋳型を使用してインビトロ転写により生成することができる(Yu et al., supra)。これに代えて、センスおよびアンチセンスsiRNA配列を含有する(複数の)発現ベクターを使用して、siRNA分子を一過性で(Yu et al., supra;Sui et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:5515−20(2002))、または安定して(Paddison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:1443−48(2002))生成することができる。最近では、効率的な、および配列特異的な様式でのヒト一次細胞における標的mRNAのレベルの低下が、ヘアピンRNA(これはさらにsiRNAにプロセシングされる)を発現するアデノウイルスベクターを使用して実証される(Arts et al., Genome Res. 13:2325−32(2003))。
【0044】
本明細書で使用される際には「p11活性」なる語句はp11の任意の直接的な生化学的活性または、p11の5−HT1B受容体との相互作用に(陽性にまたは陰性に)影響を及ぼすようにp11に関連する間接的な活性を指す。5−HT1B受容体とのp11活性を増加させるモジュレーターはp11タンパク質が5−HT1B受容体をニューロン細胞膜に補充する能力を増大させるようにp11の5−HT1B受容体への会合を増加させる任意の物質でよい。逆に5−HT1B受容体とのp11活性を阻止するかまたは低下させるモジュレーターは、p11タンパク質が5−HT1B受容体をニューロン細胞膜に補充する能力を低下させるようにp11と5−HT1B受容体との間の相互作用を遮断するかまたは低下させる任意の物質でよい。
【0045】
「p11擬似物質」なる用語は構造、機能、特性および/または活性においてp11タンパク質を擬似し、それによりニューロン細胞膜で5−HT1B受容体利用性を調整、調節または増大させる天然もしくは非天然物質またはポリペプチドまたはその任意のフラグメントを指す。p11擬似物質は全体的または部分的にp11を擬似し得る。
【0046】
「対象」なる用語は任意のヒトまたはヒト以外の生物を指す。
「対照対象」とはp11/5−HT受容体関連障害の障害、症候群、疾患、症状および/または病徴を有していない、および/または有している疑いのない任意のヒトまたはヒト以外の生物を指す。
「生物学的試料」なる用語には、例えばp11タンパク質、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、mRNAもしくはポリヌクレオチドまたは前記のいずれかの任意のフラグメントを含有する生物、体液、老廃物、細胞もしくはその細胞の一部、細胞系、生検、組織培養またはその他の供給源から得られる生物学的材料を含む任意の試料が含まれ得る。
【0047】
p11/5−HT受容体関連障害の「陽性診断」とはp11/5−HT受容体関連障害を有していない、および/または有している疑いのない対照対象と比較して、試験されている対象が異常なレベルのp11を呈する症状を指す。異常なレベルとは対照対象におけるレベルよりも高いまたは低いレベルを指す。例えばうつ病の陽性診断の対象は、うつ病および/またはその病徴を有していない、および/または有している疑いのない対照対象と比較して、低下したレベルのp11を呈する。一方不安障害状態の陽性診断の対象は、不安障害および/またはその病徴を有していない、および/または有している疑いのない対照対象と比較して、上昇したp11発現を呈する。
【0048】
p11を過剰発現する型の対象から得られた組織または細胞の試料中のp11タンパク質を検定することによりp11のレベルを決定することができる。例えば単球および/またはリンパ球を使用することができる。同様に試料中のp11 mRNAに関して検定することによりp11レベルを決定することもできる。例えば従来のノーザン分析または市販により入手可能であるマイクロアレイを含む当業者によく知られた方法を用いてp11遺伝子発現(例えばmRNAレベル)を決定することができる。加えて、被験化合物のp11阻止の効果および/または関連する調節タンパク質レベルをELISA抗体基盤アッセイまたは蛍光標識反応アッセイで検出することができる。参照、例えば対照対象または対照集団(または対照集団における事前の測定に基づいた参照標準)と比較して、対象における異常なレベルのp11タンパク質またはmRNAはp11/5−HT受容体関連障害の陽性診断を構成する。それ故に、参照と比較して対象において上昇したp11のレベルは高レベルのp11に関連する障害、例えば躁病、双極性障害、不安障害、攻撃性障害、睡眠障害、性機能障害および胃腸障害(例えばIBD)の陽性診断を構成する。一方、対照対象のレベルと比較して抑制されたまたは低下したp11のレベルは低レベルのp11に関連する障害、例えばうつ病、強迫性障害、薬物依存、摂食障害、注意欠陥障害または注意欠陥多動性障害の陽性診断を構成する。好ましい実施態様では、本発明はうつ病を患う対象におけるp11レベルを検定すること、およびかかるレベルを対照対象におけるp11レベルと比較することを含むうつ病を患う対象における診断方法を包含し、ここで対照対象のレベルと比較して、該対象において抑制されたp11のレベルはうつ病の陽性診断を構成する。
【0049】
本明細書で使用される際には、「抗体」なる用語は、エピトープ決定基に結合できるインタクトな分子およびFa、F(ab’)およびFvのようなそのフラグメントを指す。免疫抗原として目的の小型ペプチドを含有するインタクトなポリペプチドまたはフラグメントを用いてp11ポリペプチドに結合する抗体を調製することができる。動物を免疫するために用いられるポリペプチドまたはペプチドをRNAの翻訳から誘導するか、または化学的に合成することができ、そして所望によりキャリアタンパク質に抱合させることができる。ペプチドに化学的に結合させる一般的に使用されるキャリアには、ウシ血清アルブミンおよびサイログロブリンが含まれる。次いで結合したペプチドを用いて動物(例えばマウス、ラットまたはウサギ)を免役する。
【0050】
患者のための治療の最適化に関する検討材料のための因子には、処置されている特定の症状、処置されている特定の哺乳動物、個々の患者の臨床症状、活性化合物の分配の部位、活性化合物の特定の型、投与の方法、投与のスケジュール、および医師に公知のその他の因子が含まれる。投与される活性化合物の治療上有効量はかかる検討材料により支配され、そしてp11媒介障害、好ましくはうつ病の処置に必要な最低量である。
【0051】
p11に対する適当な抗体または関連する調節タンパク質を商業的供給源から入手できるか、または従来の方法にしたがって生成することができる。例えば一つまたはそれより多い差次的に発現される遺伝子エピトープを特異的に認識できる抗体の生成のための方法が本明細書にて記載される。かかる抗体には、限定するものではないがポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、ヒト化またはキメラ抗体、一本鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab')フラグメント、Fab発現ライブラリーにより生成されるフラグメント、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、および前記のいずれかのエピトープ結合フラグメントが含まれる。
【0052】
本明細書で論じたp11ポリペプチドに対する抗体の生成のために、そのポリペプチドまたはその一部を種々の宿主動物に注射することにより免役することができる。かかる宿主動物には、限定するものではないがウサギ、マウスおよびラットが含まれる。宿主種に依存して、限定するものではないが、フロイント(完全または不完全)、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル、リゾレシチンのような界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアミン、ペプチド、油性乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、ならびにBCG(カルメット・ゲラン桿菌)およびコリネバクテリウム・パルバムのような有用な可能性のあるヒトアジュバントを含む種々のアジュバントを用いて免疫学的応答を増大させることができる。
【0053】
ポリクローナル抗体は標的遺伝子生成物、またはその抗原性機能的誘導体のような抗原で免役された動物の血清から誘導された抗体分子の異種性集団である。ポリクローナル抗体の生成のために、前記されたもののような宿主動物を、これもまた前記されたようなアジュバントを追加されたポリペプチドまたはその一部での注射により免役することができる。
【0054】
特定の抗原に対する抗体の同種集団であるモノクローナル抗体を、培養中の連続細胞系による抗体分子の生成を提供する任意の技術により得ることができ、かかる技術は当分野において周知である。かかる抗体はIgG、IgM、IgE、IgA、IgDおよびその任意のサブクラスを含む任意の免役グロブリンクラス、好ましくはIgGでよい。本発明のmAbを生成するハイブリドーマまたは形質転換された細胞系をインビトロまたはインビボで培養することができる。これに代えて、一本鎖抗体の生成のための記載された技術を、差次的に発現される遺伝子一本鎖抗体を生成するために適合させることができる。アミノ酸架橋を介してFv領域の重および軽鎖フラグメントを連結し、一本鎖ポリペプチドを生じさせることより一本鎖抗体を形成することができる。
【0055】
標準的なELISA、FACS分析およびインビトロまたはインビボで用いられる標準的な撮像技術を用いて本明細書に記載される抗体の検出を達成することができる。抗体を検出可能な物質に結合(すなわち物理的連結)させることにより検出を促すことができる。検出可能な物質の実例には、種々の酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、および放射性材料が挙げられる。適当な酵素の実例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、3−ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ;適当な補欠分子族複合体の実例にはストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ;適当な蛍光材料にはウンベリフェロン、フルオレセイン、イソチオシアン酸フルオレセイン、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリスリンが挙げられ;発光材料の実例にはルミノールが挙げられ;生物発光材料の実例にはルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンが挙げられ、ならびに適当な放射性材料の実例には125I、131I、35SまたはHが挙げられる。
【0056】
例えば典型的な前進アッセイ(forward assay)では、未標識抗体を固体基質に固定し、そして試験される試料を結合分子と接触させる。適当な期間のインキュベーションの後、抗体−抗原二成分複合体の形成を可能にするのに十分な期間、検出可能なシグナルを誘起することができるレポーター分子で標識された第二の抗体を加え、そして抗体−抗原−標識抗体の三成分複合体を形成できるように十分な時間を見込んでインキュベートする。次いで任意の未反応材料を洗い流し、そしてシグナルの観察により抗原の存在を決定するか、または公知の量の抗原を含有する対照試料と比較することにより定量することができる。前進アッセイの変法には、試料および抗体の双方を同時に結合抗体に加える同時アッセイ、または標識抗体および試験される試料を最初に組み合わせ、インキュベートし、そして未標識表面結合抗体に加える逆行アッセイ(reverse assay)が含まれる。これらの技術は当業者に周知であり、そして軽微な変更の可能性は容易に明らかになろう。本明細書で使用される際には「サンドイッチアッセイ」は基本的な2部位技術における全ての変法を包含すると意図される。本発明のイムノアッセイに関しては、唯一の限定因子は、標識抗体がp11ポリペプチドもしくは関連する調節タンパク質またはそのフラグメントに特異的である抗体であるという点である。
【0057】
最も一般的に用いられるレポーター分子は酵素、フルオロフォアまたは放射性核種含有分子のいずれかである。酵素イムノアッセイの場合、通常グルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸により酵素を第二の抗体に抱合させる。しかしながら容易に認識されるように、広範な種類の様々なライゲーション技術が存在し、それは当業者に周知である。一般的に用いられる酵素には、とりわけ西洋ワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータガラクトシダーゼおよびアルカリホスファターゼが含まれる。特異的酵素と共に用いられる基質は一般的に対応する酵素の加水分解時の検出可能な色の変化の生成に関して選択される。例えばp−ニトロフェニルリン酸がアルカリホスファターゼ抱合体との使用に適当であり;ペルオキシダーゼ抱合体に関しては1,2−フェニレンジアミンまたはトルイジンが一般的に使用される。前記された色素生成基質よりもむしろ蛍光生成物を生じる蛍光発生基質を用いることも可能である。次いで適切な基質を含有する溶液を三次複合体に加える。基質は第二抗体に連結された酵素と反応し、定性的な可視シグナルを生じ、それを通常分光光度法によりさらに定量して血清試料中に存在する目的のポリペプチドまたはポリペプチドフラグメントの量の評価を得ることができる。
【0058】
これに代えて、フルオレセインおよびローダミンのような蛍光化合物をその結合能力を改変することなく抗体に化学的に結合させることができる。特定の波長の光の照明により活性化されると、蛍光色素で標識された抗体は光エネルギーを吸収し、分子において励起状態を誘起し、続いて特徴的なより長い波長で光を発光する。発光は光学顕微鏡で視覚的に検出可能な特徴的な色として現れる。免疫蛍光およびEIA技術は双方共に当分野において非常によく確立されており、そして本方法に関して特に好ましい。しかしながら放射性同位元素、化学発光または生物発光分子のようなその他のレポーター分子を用いることもできる。要求される用途に適合させるために手順を変える方法は当業者には容易に明らかになろう。
【0059】
抗体が治療用途を意図される場合、それらはその免疫原性を最小にするようにヒト定常領域を有するのが好ましい。適切な抗原特異性のドナー抗体分子からの可変領域をコードするDNAを、ヒト抗体分子の定常領域をコードするDNAと一緒にスプライシングすることによりキメラ抗体を作成する。抗体をさらに修飾して、ヒト以外の残基を除去するように加えて修飾されたヒト化抗体を提供することができる。ヒト化抗体は大部分でヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、ここでレシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基を、望ましい特異性、親和性および能力を有するマウス、ラットまたはウサギのようなヒト以外の種(ドナー抗体)のCDRからの残基と置換する。ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基をヒト以外の対応する残基により置換する場合もある。ヒト化抗体はレシピエント抗体または移入されたCDRもしくはフレームワーク配列のいずれでも見出されない残基を含み得る。これらの修飾を行って抗体の性能をさらに精緻にし、そして最適化する。一般的にヒト化抗体は少なくとも一つの、そして典型的には二つの可変ドメインを含み、ここでヒト以外の免疫グロブリンのものに対応する全てのまたは実質的に全てのCDR領域、および全てのまたは実質的に全てのFR領域はヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体はまた典型的にはヒト免疫グロブリンである免疫グロブリン定常領域またはドメイン(Fc)の少なくとも一部を含むのが最適であろう。これに代えて、ヒト以外の供給源に由来するが、完全なヒト免疫グロブリン遺伝子を用いる抗体を、例えばファージディスプレイ技術またはトランスジェニック動物、例えばヒトIgVおよびIgC遺伝子を有するトランスジェニックマウスを用いて作成でき、そしてかかる抗体が呈する免疫原性は最小限であるはずである。
【0060】
「治療上有効量」とは、本明細書で使用される際にはp11/5−HT受容体関連障害の病理学的影響を処置するかまたは寛解させるのに十分な薬物の量を指す。例えばp11/5−HT受容体関連障害の病理学的影響を処置するかまたは寛解させるのに十分なp11モジュレーターの治療上有効量は、p11発現を誘起もしくは阻止のいずれか、またはニューロン細胞膜で5−HT1B受容体レベルを調節(上方または下方のいずれか)するのに十分な量である。それ故にうつ病の病理学的影響を処置するかまたは寛解させるのに十分なp11モジュレーターの治療上有効量は、p11発現を誘起するか、またはニューロン細胞膜に5−HT1B受容体を補充するp11の能力を増大させるかのいずれかに十分な量である。逆に不安障害の病理学的影響を処置するかまたは寛解させるのに十分なp11モジュレーター治療上有効量は、p11発現を阻止するかまたはニューロン細胞膜で5−HT1B受容体を下方調節するかのいずれかに十分な量であろう。静脈内、皮下、筋肉内、経皮または脳内投与を含む当分野において公知の方法を介してp11モジュレーターを投与することができる。投与は注射によるように急速に、または緩徐な注入によるような時間をかけて、または徐放処方の投与でよい。
【0061】
「p11ノックアウト」なる語句は全体的もしくは部分的欠陥、改変もしくは変異を有するか、またはp11遺伝子において欠けているかもしくは欠損しているDNA配列を指す。それ故に「p11ノックアウトマウス」または「p11ノックアウトトランスジェニックマウス」とは、該マウスに導入されたDNAが、p11タンパク質を発現する遺伝子において欠陥、欠損、変異または改変を含有するマウスを指す。p11遺伝子における欠陥または欠損の結果として、p11ノックアウトマウスはニューロン細胞膜で有する5−HT1B受容体がより少なく、および/またはニューロン細胞膜での5−HT1B受容体の低下を呈するか、もしくは5−HT1B受容体が存在しないことを示し、それにより野生型マウスと比較してうつ病様の表現型を呈する。「ノックアウト」なる用語は元来の遺伝子と比較していずれかの場所での1ヌクレオチドから全遺伝子の欠失までの偏差を指し得る。標的相同組換えのような当分野において公知の任意の技術を用いてノックアウトマウスを作成することができる。
【0062】
「組換え」なる用語は、その天然または内因性供給源から単離されており、そして化学的または酵素的のいずれかで修飾されて自然発生フランキングヌクレオチドを欠失するか、または自然発生しないフランキングヌクレオチドを提供するDNAを指す。フランキングヌクレオチドは記載された配列またはヌクレオチドの部分配列から上流または下流のいずれかにあるこれらのヌクレオチドである。
【0063】
「ベクター」は本明細書で使用される際には望ましい細胞または組織に組換え核酸を分配するいずれかのものであり、例えば細胞を感染、トランスフェクト、または一過性もしくは持続的に形質導入することができるウイルスである。ベクターは裸の核酸またはタンパク質もしくは脂質と複合された核酸でよいと認識される。ベクターは場合によってはウイルス性もしくは細菌性核酸および/もしくはタンパク質、ならびに/または膜(例えば細胞膜、ウイルス性脂質エンベロープ等)を含む。本出願の目的に関しては、ベクターはまた組換え核酸を含む細胞でもよい。ベクターは典型的には目的の核酸をプロモーターの制御下に置く発現カセットを含み得るか、または単純にその発現が望まれる遺伝子の上流に挿入を達成するための標的配列によりフランキングされたプロモーターを含み得ると認識される。ベクターには、限定するものではないが、DNAのフラグメントが結合し、そして複製できるようになるレプリコン(例えばプラスミド、バクテリオファージ)が含まれる。故にベクターには限定するものではないがRNA、自己複製環状DNA(プラスミド)が含まれ、そして発現および非発現プラスミドの双方が含まれる。組換え微生物または細胞培養が「発現ベクター」の宿主であると記載される場合、これには、染色体外環状DNAおよび宿主の(複数の)染色体に組み込まれているDNAの双方が含まれる。ベクターが宿主細胞により維持されている場合、ベクターは有糸分裂の間に、自律的構造として細胞により安定して複製され得るか、または宿主のゲノム内に組み込まれ得るかのいずれかである。
【0064】
「コードする核酸」なる語句は転写および/または翻訳された場合に特異的タンパク質またはペプチドを発現するコドンを含有する核酸を指す。核酸配列は加えてフランキング配列、イントロン、および/または続いて翻訳後切断されるペプチドをコードする配列を含み得る。核酸配列にはRNAに転写されるDNA鎖配列およびタンパク質に翻訳されるRNA配列の双方が含まれる。核酸配列には全長核酸配列および全長配列から誘導される非全長配列の双方が含まれる。配列には天然の配列および、例えば特異的な宿主細胞におけるコドン優先性に配列を適合させるために縮重コドンを利用する配列が含まれるということがさらに理解されよう。
「核酸」は本明細書で使用される際にはDNAまたはRNAでよい。また核酸には、ポリメラーゼにより正確に解読されることを許容し、そしてその核酸によりコードされるポリペプチドの発現を改変しない、修飾されたヌクレオチドも含まれ得る。
【実施例】
【0065】
実施例
実施例1
酵母2ハイブリッドスクリーニング
5−HT1B受容体の機能をよりよく理解するために、この受容体の第三細胞内ループを酵母2ハイブリッドスクリーニングのベイトとして使用する。ラット5−HT1B受容体の第三細胞内ループ(アミノ酸226−311)を全長cDNAラット脳ライブラリーからPCR増幅し、そしてGAL4 DNA結合ドメイン融合タンパク質として発現するためにベイトpAS2由来ベクターのNco I/Sal部位にサブクローニングする。酢酸リチウム法を用いて5−HT1B受容体−ベイトプラスミドを酵母株CG1945に形質転換する。抗GAL4 DNA結合ドメイン抗体を用いて免疫ブロットにより融合タンパク質の大きさおよび発現レベルを確認する。pACT2ラット脳cDNAライブラリーを酵母株Y187に形質転換する。ベイトおよびプレイ形質転換体をYPD培地上で対にし、そしてヒスチジンレポーター遺伝子の発現に関して選択的な培地(−LWH)にプレートする。pACT2ラット脳cDNAライブラリーから244×106二倍体クローンをスクリーニングする。この培地で成長させた後、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−D−ガラクトシドオーバーレイアッセイを実施する。300を超えるクローンが選択培地で成長し、そしてβ−ガラクトシダーゼレポーター遺伝子に関して陽性である。酵母抽出物を二重陽性クローンから調製する。プレイインサートをPCR(5’−CGCGTTTGGAATCACTACA GGGATG−3’および5’−GAAATTGAGATGGTGCACGATGCAC−3’)により増幅し、そしてプレイベクターオリゴヌクレオチド(5’−GGCTTACCCATACGATGTTC−3’)を用いてシークエンシングする。BLAST検索によりp11を主要プレイとして同定する。p11プレイプラスミドクローンを酵母から選択的にレスキューし、DNA増幅のために大腸菌に形質転換し、そして相互作用の特異性を確認するために酵母株Y187に(i)元来の5−HT1B受容体−ベイトベクター、(ii)トランス活性化を確認するためのベイト対照ベクター、(iii)二つのその他の無関係のベイト構築物、pRP21およびCΔ115、または(iv)5−HT1A、5−HT2A、5−HT5A、5−HT6、D1またはD2受容体の第三細胞内ループに相当するベイト構築物で再形質転換する。5−HT1A(アミノ酸218−345)、5−HT2A(アミノ酸236−302)、5−HT5A(アミノ酸233−295)、5−HT(アミノ酸209−265)、D1(アミノ酸256−312)およびD2(アミノ酸211−343)受容体の各々に対応するベイトをラット脳cDNAライブラリーからPCR増幅により作成し、そしてpAS2由来のベクターにサブクローニングする。これらのベイトの各々を酵母にp11プレイ構築物と共に同時形質転換し、そして−LWまたは−LWH培地およびX−galオーバーレイアッセイを用いることにより相互作用を分析する。全ての同時形質転換体を非選択培地(−LW)対照プレートで成長させた。選択培地(−LWH)ではp11と5−HT1B受容体との陽性相互作用が検出されるが、その他のいずれのベイトとも相互作用は検出されない。
【0066】
29個の二重陽性プレイクローンのうち、26個がp11に関する遺伝子をコードする。このアッセイでp11は5−HT1B受容体と相互作用するが、5−HT1A、5−HT2A、5−HT5A、5−HT、ドーパミンDまたはドーパミンD受容体、二つの無関係のベイト(Cデルタ115およびpRP21)、または空のプラスミドとは相互作用せず、それはp11の5−HT1B受容体との会合の特性を示している。
【0067】
実施例2
免疫共沈降
内因性p11(S1)を含有するHeLa細胞をDMEM培地中60%コンフルエンスまで成長させ、そしてリポフェクタミンを用いて製造者のプロトコールにしたがってpcDNA3.1−5−HT1BR−V5または空のプラスミド構築物でトランスフェクトする。トランスフェクションの後、細胞抽出物を4℃で可溶化する(50mM Tris、pH7.4/150mM NaCl/2mM EDTA/2mM EGTA/0.1%Tritonおよびプロテアーゼ阻害剤中)。細胞抽出物を抗V5モノクローナル抗体で免疫沈降し、プロテインGと共にインキュベートし、そして完全に洗浄する。その他の実験では、野生型およびp11 KOマウスの大脳皮質からの脳組織を可溶化バッファー中4℃でホモジナイズする。脳抽出物を.ポリクローナル5−HT1B受容体抗体で免疫沈降し、プロテインAと共にインキュベートし、そして完全に洗浄する。細胞および脳組織からの免疫沈降をSDS−PAGEゲルに流し、そしてPVDF膜に移す。p11に対するマウスモノクローナル抗体(1/100)を用いて免疫ブロッティングを実施する。マウスIgGに対して指向するHRP連結二次抗体と共にインキュベートすることにより抗体結合を検出し、化学発光が増強される。
p11はHeLa細胞および脳組織において5−HT1B受容体と免疫共沈降する。
【0068】
実施例3
免疫蛍光
HeLa細胞をpcDNA3.1−5−HT1BRまたはpcDNA3.1−V5構築物でトランスフェクトする。トランスフェクション後36時間の細胞を4%パラホルムアルデヒド/0.01M PBSで10分間固定する。PBS中10%BSAと共にインキュベートすることにより非特異的染色を遮断する。抗V5−FITC抗体(1/500)および抗マウスp11抗体(1/1000)、続いてAlexa Fluor568標識ヤギ抗マウス二次抗体(1/500)と共にインキュベートすることにより5−HT1B受容体およびp11を可視化する。PBSで洗浄した後、Gel/Mountを用いてスライドにカバースリップをマウントする。レーザー走査顕微鏡を用いて蛍光タンパク質の画像を獲得する。
免疫蛍光は細胞表面のp11と5−HT1B受容体の間での顕著な共局在化を示す。
【0069】
実施例4
インサイチュハイブリダイゼーション実験
ロックフェラー大学、カロリンスカ研究所および国立衛生研究所の実験動物保護委員会からのガイドラインにしたがって全ての動物実験を実施する。成熟雄Sprague Dawleyラットからの脳を用いてp11遺伝子発現の局所分布および5−HT1B受容体遺伝子発現とそれの共分布を決定する。いくつかの実験に関してはp11 KOマウスからの脳およびその野生型の対応物を使用する。p11 mRNA発現に及ぼす向精神薬処置の効果を研究するために、野生型成熟雄C57Bl6マウスをベヒクル、イミプラミン(10mg/kg、i.p.)、ハロペリドール(1mg/kg、i.p.)、ジアゼパム(5mg/kg、i.p.)、トラニルシプロミン(10mg/kg、i.p.)またはリスペリドン(1mg/kg、i.p.)の単回注射または反復注射(1日1回、14日間)で処置する。動物を最後の注射の1時間後に屠殺する。p11発現に及ぼす電撃療法(ECT)の影響を研究するために、雄Spraque Dawleyラット(200g)を、耳クリップ電極を介して毎日10日間ECTに暴露し(45mA;0.3秒)、そして最後の刺激の18時間後に屠殺する。対照動物に、ラットの耳に電極をクリップするが電流を適用しない偽処置を施す。
イミプラミンおよびトラニルシプロミンで14日間の処置の後、ならびに電撃療法の反復の後、前脳でp11 mRNAが上方調節されるが、ハロペリドール、リスペリドンまたはジアゼパムでは上方調節されない。
【0070】
実施例5
マウスうつ病モデルならびに正常およびうつ病のヒトにおけるp11タンパク質レベル
野生型成熟雄C57Bl6マウスをベヒクルまたはイミプラミン(10mg/kg、i.p.)で1日1回14日間処置し、そして最後の注射の1時間後に屠殺する。雄Spraque Dawleyラットを、耳クリップ電極を介して毎日10日間ECTに暴露し(45mA;0.3秒)、そして最後の刺激の18時間後に屠殺する。成熟雌無力(helpless)H/Rouenマウスおよび非無力NH/Rouenマウスを屠殺する。これらの三つの異なる処置群および対応する対照から、前頭皮質を切り裂き、そして凍結する。
【0071】
正常対照および大うつ病を患う患者のヒト帯状皮質からの新鮮凍結組織をStanley Foundation Neuropathology Consortiumから入手する。凍結皮質を1% SDS中で超音波処理し、そして10分間煮沸する。ビシンコニン酸タンパク質アッセイ法によりタンパク質を決定するためにホモジネートの小アリコートを保持する。
【0072】
10−20%グラジエントアクリルアミドゲルを用いて均等量のタンパク質を処理する。p11に対するポリクローナルまたはモノクローナル抗体(ヒト試料に関して1/1000、およびげっ歯類試料に関して1/200)ならびにアクチンに対するポリクローナル抗血清(1/1000)のいずれかで免疫ブロッティングを実施する。増強された化学発光により抗体結合を検出し、そして国立衛生研究所 IMAGE1.63ソフトウェアを用いてデンシトメトリーにより定量する。p11のレベルをアクチンのレベルに対して正規化する。全てのデータは正規化されたレベルとして提示される。
【0073】
うつ病の遺伝的マウスモデルにおけるp11 mRNAの調節を研究するために、成熟雌および雄無力H/Rouenマウスおよび非無力NH/Rouenマウスからの前脳組織を比較する。p11 mRNAおよびタンパク質はH/Rouenマウスにおいてより著明に低い。類似の結果が双方の性で見出される。
【0074】
正常対照および大うつ病を患う患者のヒト帯状皮質の40μm厚のクリオスタット切片をStanley Foundation Neuropathology Consortiumから入手する。双方の性(正常およびうつ病群の双方で女性6人および男性9人)、ならびに年齢29−68歳(正常)および30−65歳(うつ病)からの試料を分析する。うつ病の患者の疾患の期間は1から42年で異なる。うつ病の個体のうち7人が自殺した。脳組織を凍結する前の死後の脳組織の間隔は8−42時間(正常)および7−47時間(うつ病)であり、そして組織のpHは5.8−6.6(正常)および5.9−6.5(うつ病)である。ラット5−HT1B受容体遺伝子のコード化配列のヌクレオチド1159−1420、マウスまたはヒトp11遺伝子のコード化配列のヌクレオチド1−293、およびラットp11遺伝子のコード化配列のヌクレオチド1−287の各々のPCR増幅によりインサイチュハイブリダイゼーションプローブを作成する。様々なPCRフラグメントをpCRII−TOPOベクターにサブクローニングする。ヒト組織に関する研究を除いて、全研究用に12μm厚のクリオスタット切片を作成する。前記されたようにラット5−HT1B受容体遺伝子またはマウス、ラットもしくはヒトp11遺伝子に対応するcDNAからのインビトロ転写物により調製された[−35S]UTP標識リボプローブで切片をハイブリダイズする(S5)。ハイブリダイゼーションの後、切片をBiomax MRフィルムに7から24日間暴露し、そしてNIH Image1.63ソフトウェアを用いて分析する。特記しない場合、縁前方/前帯状皮質で分析を行う。いくつかの切片を細胞分析用にIlford K5エマルジョンに浸漬する。8週後、切片を展開し、ニッスル染色し、そしてマウントする。
【0075】
H/Rouenマウスに類似して、単極性大うつ病障害を患っていた患者の前帯状皮質においてp11 mRNAおよびタンパク質が下方調節される。
【0076】
実施例6
p11/5−HT1B受容体同時トランスフェクション実験
存在する場合、低い天然p11を含有するCOS7細胞をp11(pcDNA3.1−p11)、5−HT1B(pcDNA3.1−5−HT1BR−V5)、ドーパミンD受容体(pcDNA3.1−D1R−V5)、または空のプラスミドでトランスフェクトする。プレートされたCOS7細胞を、1mg/mlスルホ−NHS−LC−ビオチンを含有する培地と共に氷上で30分間インキュベートする。細胞をTBSで濯いでビオチン反応をクエンチする。修飾RIPAバッファー(1%Triton X−100、0.1%SDS、0.5%デオキシコール酸、50mM NaPO、150mM NaCl、2mM EDTA、50mM NaF、10mMピロリン酸ナトリウム、1mMオルトバナジウム酸ナトリウム、1mM PMSFおよび1mg/mlロイペプチン)300μl中で細胞を溶解する。ホモジネートを14000gで、4℃で15分間遠心する。上澄15μlを除去して5−HT1B受容体の全レベルを測定する。残りの上澄を50%Neutravidinアガロース100μlと共に4℃で3時間インキュベートし、そして短時間遠心する。細胞質5−HT1B受容体を含有する上澄を収集する。その後、アガロースビーズをRIPAバッファーで3回洗浄し、そして最後の短時間遠心の後、結合タンパク質をSDS試料バッファー40μlに再懸濁し、そして煮沸する。抗V5(5−HT1B受容体を検出するために;1:1000)および抗p11(1:1000)抗体を用いて全ての細胞質およびビオチン化(表面)タンパク質に関して定量的ウェスタンブロットを実施する。増強された化学発光、続いてオートラジオグラフィーにより免疫反応性ビーズを検出する。NIH Image1.63ソフトウェアを用いてバンドの強度を定量する。各ウェルに関して表面/全体の比率を計算する。対照実験により、細胞内タンパク質アクチンはこのアッセイではビオチン化されないことが確認された。
【0077】
5−HT1B受容体およびp11で同時トランスフェクトされた細胞は細胞表面で5−HT1B受容体単独でトランスフェクトされた細胞よりも多くの5−HT1Bを呈する。対照的に表面の全ドーパミンD受容体に対する比率はp11の不在の存在下で類似する。
【0078】
実施例7
COS7細胞におけるcAMP測定
DMEM培地で成長させたCOS7細胞を5−HT1B受容体および/またはp11でトランスフェクトする。36時間後、細胞をテオフィリン(5mM)およびパルギリン(10μM)で15分間前処理する。次いでセロトニン(10μM)を伴うかまたは伴わないベヒクルまたはフォルスコリン(10μM)をさらに15分間添加する。処理の終わりに薬物含有培地を除去し、ウェルをPBSで濯ぎ、そして細胞を収集する。直接的cAMP酵素イムノアッセイキットにより製造者の説明書にしたがってcAMP形成を定量する。対照実験により、セロトニンがトランスフェクトされていないCOS7細胞においてcAMP形成を改変しないことが示される。
【0079】
セロトニン(10mM)が5−HT1B受容体でトランスフェクトされたCOS−7細胞におけるフォルスコリン誘起のcAMP形成に対抗する能力は、同時トランスフェクトされたp11の存在下で増大される。p11を伴うかまたは伴わないでフォルスコリンに対するcAMP応答において有意な差はない。データは、p11を伴うかまたは伴わないでフォルスコリン刺激された条件に対して正規化され、そして平均T SEMを表す。
【0080】
実施例8
p11を過剰発現するトランスジェニックマウスの作成および分析
カルシウム/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼII(CamKII)プロモーターの下でドキシサイクリン調節可能なp11の過剰発現を伴うランスジェニックマウスを作成する。PCRを用いてマウスp11をMycエピトープタグと融合し、そしてpTetスプライスのSal I/Hind III部位にサブクローニングする(S6)。このプラスミド(pTetOp−p11−Myc)をtTA発現CHO細胞(Dr Patrick Allenより寄贈)にトランスフェクトする。これらの細胞の抽出物からのMycの発現を抗Myc(1:1000)抗体を用いる免疫ブロッティングにより確認する。p11−Mycが発現されることを確認した後、DNAフラグメント(pTetOp−p11−Myc、SV40イントロン、およびポリ(A)+シグナルを含有)を直線化し、電気溶出により精製し、そしてC57BL6マウスからの卵母細胞の前核にマイクロインジェクトし、そして偽妊娠C57BL6/CBAマウス(Rockefeller University Transgenic Facility)に移植する。テールDNAを導入遺伝子に関してPCRにより分析する(5’−TATAGTCGACATGATGCCATCCC AAATGG−3’および5’−TATAAAGCTTCTAC AAATCTTCTTCAGAAATCAATTTT TGTTCAGATTTCTTCCCCTTCTG−3’)。pTetOp−p11−Myc構築物に関して陽性である創始マウスをC57Bl6マウスと交雑させてF1マウスを作成する。F1同胞を交雑させることによりF2ホモ接合性pTetOp−p11−Myc−トランスジェニックマウスが得られる。(ホモ接合性遺伝子型は、それらの野生型マウスとの交雑により確認される。)これらのマウスをCamKIIプロモーター下でtTAを発現するC57Bl6マウスと交雑させる(S7)。PCRにより前記のプライマー(p11−Mycを検出するため)および5’−GAGCTGCTTAATGAGGTCG GAATC−3’および5’−TCTAAAGGGCAAAAGTGAGTATGG−3’(tTAを検出するため)を用いてマウスの遺伝子型を同定する。二重トランスジェニックマウスにおけるp11−Mycの過剰発現を、抗Myc抗体を用いる免疫ブロッティングにより、およびマウスp11遺伝子に対するインサイチュハイブリダイゼーションにより確認する(図S2)。CamKIIに推進されるtTAの発現をtTAのコード化領域に対するリボプローブ(Dr Alexei Morozov, Columbia Universityより寄贈)でのインサイチュハイブリダイゼーションを用いて検出する(図S2)。行動実験では、二重トランスジェニックマウスを対照として提供された導入遺伝子を発現しないか、または一つの導入遺伝子を発現する同腹仔と比較する。いく匹かの二重トランスジェニックマウスは飲料水中50mg/lドキシサイクリンを実験前に18日間投与される。
【0081】
ドキシサイクリン不在下では、前脳でセロトニンを含有しないトランスジェニックマウスではニューロンにおけるp11が上昇しているが、縫線核におけるセロトニンニューロンでは上昇しない。これらのマウスは黒質での機能的5−HT1B受容体が増加しており、そしてオープンフィールド試験において接触走性の低下(不安関連窮迫困難の指標)および水平方向活動性の増大を呈する。それらはまた尾懸垂試験において不動性の低下を示す(うつ病様状態の指標)。故にp11を過剰発現するマウスはあたかも抗うつ剤で処置されたように振る舞うが、交絡因子は、それらが一般的に異常に活動的であるように思われるということである。ドキシサイクリンで処置されたトランスジェニックマウスは正規化されたp11発現を有し(図S4)、そして接触走性、不動性または水平方向活動性の有意な改変はない。
【0082】
実施例9
p11ノックアウトマウスの作成および分析
p11KOマウスの作成および分析
ラットp11のコード化配列からのプローブを用いて6個のゲノムクローンをBACライブラリースクリーニングから単離する。13.7kbのBam HIフラグメントをBACクローンからサブクローニングし、そして制限酵素分析によりマッピングする。マウスp11遺伝子はATG含有エクソン、3.5kbイントロン、続いて停止コドンを有する別のエクソンを含有する。p11遺伝子のATG含有エクソンにわたる11.3kbのターゲティングベクター(5’Hinc II−Bgl II+[Bam H1−loxPNeoloxP−Kpn I]+Apa I−Eco RV 3’)をpBSK(−)で作成する(図S5)。ターゲティングベクターを129SvEv ES細胞にエレクトロポレートし、そしてG418により組換えクローンに関して選択する。各々SpeIおよびBam HI/Sal Iの各々で消化されたES細胞DNAの分析において、5’および3’外部プローブ(各々300bp Bam HI/Bsp M1フラグメントおよび285bp Bam HI/ScaIフラグメント)を用いるサザンブロッティングにより相同組換えに関してESクローンを陽性として同定する。陽性クローンをC57BL/6胚盤胞に注射し、そしてキメラ雄をC57BL/6雌と繁殖させて生殖細胞系伝達を得る。ヘテロ接合子孫を交配させてノックアウトおよび野生型マウスを作成する。テールDNAからのサザンブロッティングにより、双方の対立遺伝子がp11 KOマウスで変異していることが確認された(図S5)。p11ノックアウトマウスにおけるp11遺伝子の不在はさらにマウスp11遺伝子に対するプローブでのインサイチュハイブリダイゼーションを用いて確認される(図S5)。以下のオリゴヌクレオチド5’−CATTCAGAGGTGAACCCTGCTGAGGG−3’、5’−CCTGTCAGCCACTCTATAT GCTCCTAATC−3’および5’−GGCCAGCTCATTCCTCCC ACTCATG−3’を用いるPCR手順を発展させて野生型、ヘテロ接合性、およびノックアウトマウスを区別する(図S5)。このPCR基盤の研究法は日常的な遺伝子型決定に用いられる。一次皮質培養物での研究を除いて、全ての実験をヘテロ接合体繁殖から作成されたp11 KOおよび野生型同腹仔で実施する。ヘテロ接合体×ヘテロ接合体繁殖により29%野生型、53%p11ヘテロ接合体および18%p11 KOマウスを生じた。なぜKOマウスがより少ないのかは明らかではないが、p11が初期胚移植に関与していることが見出されている(S8)。ヘテロ接合体p11マウスをC57Bl6マウスと2世代戻し交配させる。104個の特異的C57Bl6マーカー(Rockefeller University Genomics Resource Center)を用いるマイクロサテライト遺伝子型決定により、実験動物の繁殖に用いられたヘテロ接合体p11マウスは74±2.8%C57Bl6バックグラウンドであることが示される。
【0083】
定量的受容体オートラジオグラフィー
クリオスタット切片(12μm厚)をp11 KOおよび野生型マウスから作成する。アンタゴニスト[125I]シアノピンドロール(0.3、1、3、10、30、100pM;2200Ci/ミリモル)、5−HT1A遮断薬として100nM 8−OH−DPATおよびβ−アドレナリン作動性受容体遮断薬として30μM イソプロテレノールを含有する170mM Tris/150mM NaCl、pH7.4(25℃)中で切片を2時間インキュベートすることにより5−HT1B受容体を検出する(S9)。非特異的結合を100μMセロトニンの存在下での測定により決定する。置換実験では、漸増濃度のセロトニン(0、0.3、1、3、10、30、100、300、1000、10000nM)を前記したような10pM[125I]シアノピンドロールと共にインキュベートする。切片を9 170mM Tris/4mM CaCl2/0.1%アスコルビン酸、pH7.4(25℃)中アンタゴニスト[H]GR125743(0.3、1、3、10、30nM;80Ci/ミリモル;GE Healthcare)と共に2時間インキュベートすることにより5−HT1B受容体もまた検出する。100μMセロトニンの存在下での測定により非特異的結合を決定する。切片を50mM Tris、pH7.4、4mMCaCl、1mM MgClおよび0.1%ウシ血清アルブミン(25℃)中アゴニスト[H]8−ヒドロキシ−2−(ジ−n−プロピルアミノ)−テトラリン([H]8−OH−DPAT;10nM;125Ci/ミリモル;GE Healthcare)、5−HT7受容体遮断薬として300nM SB−269970と共に1時間インキュベートすることにより5−HT1A受容体を検出する。100μMセロトニンの存在下での測定により非特異的結合を決定する。アンタゴニスト[H]7−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−3−メチル−5−フェニル−1H−3−ベンズアゼピン−7−オール([H]SCH23390;2nM;87.0Ci/ミリモル)を含有する25mM Tris/100mM NaCl/1mM MgCl/1μMパルギリン/20nMミアンセリン/0.001%アスコルビン酸中で切片を2時間インキュベートすることによりD1様受容体を検出する。100μM SKF82958の存在下での測定により非特異的結合を決定する。アンタゴニスト[H]ラクリプリド(5nM;72Ci/ミリモル)を含有する170mM Tris/120mM NaCl/5mM KCl/2mM CaCl/1mM MgCl/10μM GTP/0.001%アスコルビン酸と共に切片を1時間インキュベートすることによりD2様受容体を検出する。100μMキンピロールの存在下での測定により非特異的結合を決定する。全てのオートラジオグラフィー実験の終わりに切片をその対応する冷結合バッファー中2×5分間濯ぎ、4℃の蒸留水に浸漬し、そして冷気下で乾燥させる。切片をBiomax MRフィルムに3−5日間([125I]シアノピンドロール)または4−10週間([H]GR125743、[H]8−OHDPAT、[H]SCH23390、[H]ラクリプリド)マイクロスケールの[125I]または[H]と一緒に並置する。NIH Image1.63画像分析システムでいくつかの脳領域における光学密度測定値が得られる。全結合から非特異的標識のデジタルサブトラクションにより特異的結合を計算する。マイクロスケールの[H]または[125I]から作成された標準曲線を用いて光学密度をタンパク質のミリグラムあたりのフェムトモルに変換する。飽和および置換実験から得られたデータを非線形回帰方程式を用いて分析する。
【0084】
オートラジオグラフィーリガンド結合実験により、野生型マウスよりもp11 KOの淡蒼球において5−HT1B受容体アンタゴニスト放射性リガンド[125I]ヨードシアノピンドロールおよび[H]GR125743に関する結合部位が少ないことが示された。同様に[125I]ヨードシアノピンドロール結合は野生型マウスよりもp11 KOの黒質網様部において低い(77.3±5.8対98.8±6.2フェムトモル/mgタンパク質;P<0.05スチューデントt検定)。野生型とp11 KOマウスとの間に結合[125I]ヨードシアノピンドロールを置換するセロトニンの親和性には差異はない[半有効濃度(EC50)値:57対52nM)。野生型とp11 KOマウスとの間で5−HT1A、DまたはD受容体の量の差異は検出されない。[125I]ヨードシアノピンドロール結合もまたNH/Rouenマウスに対してH/Rouenマウスで低下する。
【0085】
5−HT1Aまたは5−HT1B受容体刺激に応答した[35S]GTPγS結合
野生型、p11 KOおよびp11トランスジェニックマウスからの新鮮なクリオスタット切片(12μm)を、100mMNaCl、\10 3mM MgCl、0.2mM EGTA、2mM GDPおよび内因性アデノシンを除去するために1U/mlアデノシンデアミナーゼを追加したTris−HCl 50mM(pH7.4)中30分間プレインキュベートする。その後切片を40pM[35S]GTP Sを含有する同一溶液中、50μM 5−HT1A受容体アゴニスト、8−OH−DPATまたは5−HT1B受容体アゴニスト、アンピルトリンを伴って(刺激条件)、または伴わずに(基本条件)25℃で2時間インキュベートする。10μMの未標識GTP Sと共にインキュベートした隣接する切片からのオートラジオグラフで非特異的標識(バックグラウンド)を決定する。切片を50mM Tris−HClバッファーで2回(各3分)、蒸留水で1回(30秒)濯いでバッファー塩を除去し、そして空気乾燥させる。Biomax MRフィルムで2−4日間暴露することによりオートラジオグラフが得られる。NIH Image1.63画像分析システムでいくつかの脳領域における光学密度測定値が得られる。
【0086】
p11 KOマウスの細胞膜での5−HT1B受容体の数の低下は、5−HT1B受容体アゴニスト、アンピルトリンがこれらのマウスの淡蒼球における[35S]グアノシン5'−O−(3'−チオ三リン酸(GTP−S)結合を増大させる能力の低下に反映される。対照的に野生型およびp11 KOマウスにおける5−HT1A受容体アゴニスト、8−OH−DPAT[(+/−)−8−ヒドロキシ−2−(ジ−n−プロピルアミノ)テトラリン]による[35S]GTP−S結合に差異はない(6.0±2.1対5.0±2.0光学密度単位)。p11 KOマウスの細胞表面での機能的5−HT1B受容体の数の低下はまた、セロトニンおよびアンピルトリンがp11 KOマウスからの一次皮質培養物におけるホスホ−Thr202/Tyr204−ERK1/2(細胞外シグナル調節キナーゼ)レベルを下方調節する能力、ならびにアンピルトリンがp11 KOマウスからの線状体切片においてcAMP−依存性タンパク質キナーゼによりリン酸化される部位であるホスホ−Ser−シナプシンIを低下させる能力の喪失に反映される。
【0087】
一次皮質培養物におけるリン酸化ERK1/2を検出するためのウェスタンブロッティング
WT×WTまたはp11KO×p11KO繁殖から生じたE18マウスから皮質を除去し、トリプシン処理し(0.25%)、粉砕により分離し、そしてポリ−L−リジン(1mg/ml)コーティングされた6ウェルプレートにプレートする。5%ウシ胎仔血清、4mM L−グルタミン、B−27栄養素補給、ペニシリン(5U/ml)およびストレプトマイシン(5μg/ml)伴うDMEMを含有する培地で培養物(500000セル/ml)を成長させる。2週後に培養物をベヒクル、セロトニン(10μM)またはアンピルトリン(10μM)で15分間処理する。処理の最後に薬物含有培地を除去し、ウェルを氷冷PBSで濯ぎ、セルスクレーパーによりニューロンを除去し、そして液体窒素中で凍結する。凍結細胞試料を1%SDS中で超音波処理し、そして10分間煮沸する。ビシンコニン酸タンパク質アッセイ法によるタンパク質決定のためにホモジネートの小アリコートを保持する。前記したように10%アクリルアミドゲルを使用することにより均等量のタンパク質を処理する(S10)。ホスホ−Thr202/Tyr204−ERK1/2に対するリン酸化部位特異的抗体またはリン酸化部位特異的でない全ERK1/2に対する抗体で免疫ブロッティングを実施する。増強された化学発光により抗体結合を検出し、そして国立衛生研究所 IMAGE1.63ソフトウェアを用いてデンシトメトリーにより定量する。ERK1/2のリン酸化形態のレベルをその全レベルに対して正規化する。全てのデータは正規化されたレベルとして提示される。
【0088】
脳切片におけるリン酸化シナプシンIを検出するためのウェスタンブロッティング
前記したような野生型およびp11 KOマウスから線状体の切片(300μm)を調製する(S10)。切片をKrebsバッファー(118mM NaCl/4.7mM KCl/1.5mM Mg2SO4/1.2mM KH2PO4/25mM NaHCO3/11.7mMグルコース/1.3mM CaCl2)中30℃で一定の酸素添加で(95%O2/5%CO2)60分間プレインキュベートし、30分後にバッファーを変える。切片をベヒクルまたはアンピルトリン(50μM)で2分間処理する。薬物処理の後、バッファーを除去し、切片をドライアイス上で急速に凍結し、1%SDS中で超音波処理し、そして10分間煮沸する。ビシンコニン酸タンパク質アッセイ法によるタンパク質決定のためにホモジネートの小アリコートを保持する。10%アクリルアミドゲルを使用することにより均等量のタンパク質を処理する。PKAおよびCamKIIによりリン酸化される部位であるホスホ−Ser9−シナプシンIに対するリン酸化部位特異的ウサギポリクローナル抗体、またはリン酸化部位特異的でないウサギポリクローナルシナプシン抗体で免疫ブロッティングを実施する。増強された化学発光により抗体結合を検出し、そして国立衛生研究所 IMAGE1.63ソフトウェアを用いてデンシトメトリーにより定量する。シナプシンのリン酸化形態のレベルをその全レベルに対して正規化する。全てのデータは正規化されたレベルとして提示される。
【0089】
電気生理学
フルオロタン麻酔した雄p11 KOおよび野生型マウス(4−7週齢)を断頭する。その脳を迅速に除去し、そしてマイクロスライサーで側坐核を含有する脳冠状切片(400μm厚)を調製する。切片を酸素添加された(95%O2+5%CO2)、126NaCl、2.5KCl、1.2NaH2PO4、1.3MgCl2、2.4CaCl2、10グルコースおよび26NaHCO3(mMで)を含有する人工脳脊髄液(aCSF)(pH7.4)中32℃で少なくとも1時間インキュベートする。切片を正立顕微鏡にマウントされた記録チャンバーに移し、そして28℃で酸素添加されたaCSFで連続的に灌流する。側坐核の切片表面に位置するaCSFで充填されたガラスマイクロピペットを用いて細胞外電場電位を記録する。10kHzで獲得されるAxopatch200B増幅器を介してシグナルを500倍に増幅し、2kHzでフィルタリングし、そして獲得およびpClamp9データ分析ソフトウェアを用いてコンピューターに記録する。切片の表面の記録電極近くに置かれた同心両極刺激電極でシナプス反応を惹起する。切片に適用された刺激の強度のfEPSP振幅への依存性はWTおよびp11 KOマウスで類似し、それはグルタミン酸作動性12シナプス伝達がWTおよびp11 KOマウス間で異ならないことを実証している。刺激強度の増大により惹起される電場電位の振幅を測定することにより試験される各切片に関して確立された刺激/応答曲線により評価されるように、最大応答の50−70%を生じる強度で単一の刺激(0.1ミリ秒間隔)を15秒毎に適用する。グルタミン酸作動性シナプス伝達に及ぼすセロトニン受容体活性化の影響を評価するために、セロトニンを灌流溶液に適用しながらfEPSP/PS振幅を測定する。セロトニン(50μM;10μMフルオキセチンの存在下)はWTマウスからの切片においてfEPSP/PSの振幅を抑制し(72 ベースライン値の2.7%)、そしてこの効果はp11 KOマウスからの切片では除かれる(98 ベースライン値の3.6%)。数値を平均 SEMとして表現する。薬物は三方活栓を切り替えることにより灌流溶液中で適用される
【0090】
セロトニンは5−HT1B受容体を介して大脳皮質に由来するニューロンの末端でグルタミン酸放出を低下させ、そして皮質線状体シナプスでのシナプス伝達を阻止する。グルタミン酸作動性線維の短い電気刺激により惹起され、そして側坐核で細胞外で記録される興奮性シナプス後電場電位(fEPSP)の振幅をモニタリングする。fEPSPは野生型およびp11 KOマウスの双方で切片の電気刺激により放出される内因性グルタミン酸により活性化されるAMPA受容体により媒介される[AMPA受容体アンタゴニスト、6−シアノ−7−ニトロキノキサリン−2,3−ジオン(CNQX)の15分後、ベースラインと比較してfEPSP/集合スパイク(PS)低下、各々77および81%]。灌流溶液に適用された場合、セロトニンは野生型マウスからの切片におけるfEPSP/PSの振幅を抑制するが、p11 KOマウスからの切片では抑制しない。
【0091】
モノアミンおよび代謝物の組織含量
雄p11 KO、p11ヘテロ接合体および野生型マウス(遺伝子型あたりn=8)を収束マイクロ波照射により屠殺し、そして線状体、皮質および海馬を別々にし、そしてドライアイス上で凍結する。次いで組織試料を10容量の0.1N TCA中で超音波処理し、ボルテックスし、そして12000gで2分間遠心する。上澄を収集し、そして電気化学検出を備えたHPLC(HPLC−EC)を用いてセロトニンおよびセロトニン代謝物、5−ヒドロキシインドール酢酸(5−HIAA)に関して分析する。塩基不活性化シリカHypersil 5μm C18分析カラム(4.6×150mm)を用いて75mMリン酸一ナトリウム、350mg/l 1−オクタンスルホン酸ナトリウム塩、0.5mM EDTA、0.8%テトラヒドロフラン(HPLC等級、阻害剤不含)および8%アセトニトリル、pH3(リン酸で調整)からなる移動相で、流速1.2ml/分でセロトニンおよび5−HIAAを分離する。ガラス状炭素二重電極を有する電気化学検出器を使用する(電極1=680mV、レンジ、0.5nA;電極2=−100mV、レンジ、0.2nA)。ピーク高さおよび試料濃度を計算するEZChromソフトウェアを用いてデータを収集する。セロトニンおよび5−HIAAに関する感度は0.1ピコモル/mlである。
【0092】
5−HT1B受容体は自己受容体として振る舞い、そしてセロトニン放出を阻止する。p11は縫線核で発現されるので、セロトニンおよびその主要代謝物、5−ヒドロキシインドール酢酸(5−HIAA)の量を野生型およびp11 KOマウスの投射部、主に皮質、線状体および海馬で測定する。5−HTターンオーバーおよび/または5−HT1B受容体による代謝の負の調節、ならびに5−HT1B受容体機能に及ぼすp11の増強の役割にしたがって、p11 KOマウスはセロトニンターンオーバーおよび/または代謝のレベルを増大させている。
【0093】
行動分析:オープンフィールド分析
完全コンピューター化マルチケージ赤色および赤外感受性運動検出システムで日中に30分間(結果を毎5分間分析する)水平方向活動性を測定する。末梢活動性の値を全水平方向活動性により13に分け、接触走性を決定する。アンピルトリン(5mg/kg、i.p.)での実験では、動物を注射後15分間試験する。いくつかのアンピルトリン処置マウスは実験前日までイミプラミン(10mg/kg、i.p.)を毎日4週間注射されていた。
【0094】
行動分析:尾懸垂試験
抗うつ剤様活性のモデルである尾懸垂試験を前記のように実施し(S11)、そしてC57Bl6(S12)およびNMRIマウス(S13)に関して確認されたものを修飾したものである。マウスは粘着テープを使用して(尾の先端から2cmの距離)個々に水平バーに尾により懸垂される(床からの距離は35cmの距離)。典型的にはマウスは、一時的に増加する不動性の期間が散在するいくつかの逃避志向性行動を実証した。6分間の試験期間はビデオテープに録画され、そして遺伝子型を知らない観察者により採点される。記録されたパラメーターは不動で過ごした秒数である。アンピルトリン(5mg/kg)およびイミプラミン(10mg/kg)での実験では、動物を注射後15分間試験する。
【0095】
行動分析:スクロース消費試験
個々に収容されたp11 KOマウスおよび野生型マウスで単一の瓶の手順を用いてスクロース消費を試験する。96時間の間、水中2%スクロース溶液の消費を測定する。次の実験では同一の期間、水の摂取を測定する。
【0096】
p11欠失の行動的影響を評価するために、基本条件下で、ならびに薬物未使用マウスおよびイミプラミンで長期間処置されているマウスにおけるアンピルトリンに対して応答した、野生型およびp11 KOマウスにおける接触走性を比較する。イミプラミンで処置された動物では、アンピルトリンは野生型マウスの接触走性において有意な低下を引き起こすが、p11 KOマウスでは引き起こさない(図4G)。加えて、生理食塩水注射された野生型ではp11 KOマウスよりも接触走性が少ない(図4C)。薬物未使用野生型およびp11 KOマウスはアンピルトリン不在下または存在下のいずれかで類似の接触走性を呈する。野生型マウスと比較してp11 KOマウスでは、ベースライン条件下およびアンピルトリンまたはイミプラミンのいずれかでの急性処置後の双方で、尾懸垂試験における不動性が増大する(図4H)。これらの行動結果により、p11 KOマウスはうつ病様表現型を呈し、そしてp11は5−HT1B受容体を介してイミプラミンに対する行動的応答を媒介することが示される。p11 KOマウスのうつ病様表現型をさらに支持するに、p11 KOマウスがその野生型同腹仔よりも美味な2%スクロース溶液の消費が少なく(1.74±0.07対2.17±0.11ml/g体重/日;P<0.05スチューデントt検定)、それは甘い報酬に対する応答性の低下を示している。水摂取はp11 KOマウスおよびその野生型同腹仔で類似し(1.51±0.05対1.42±0.05ml/g体重/日)、それはこの行動における体液均衡の崩れの役割を排除する。
【0097】
実施例10:ヒト末梢血単核細胞(PBMC)におけるp11の検出
ヘパリン化チューブに全血(10−15ml)を収集する。血液1mlは単核細胞およそ1miljを生じるが、その数は個体間で相当異なる。血液をリン酸基盤の生理食塩水(PBS)で1:1に希釈する。Lymphoprep(Medinor カタログ番号1114547)2.5mlを15mlチューブに加え、そして希釈した血液10mlを上部に注意深く層にする。チューブを1800rpmおよび室温で20分間回転させる。パスツールピペットを使用してPBMCを2本のチューブから1本の透明の15mlチューブに収集する。このチューブをPBSで充填し、そして1500rpmで10分間遠沈させる。次いで細胞をPBSで2回洗浄する(血小板およびLymphoprepを除去する)。計数するために、PBMCを元来の全血容量10mlあたり培地(90%ウシ胎仔血清/10%DMSO)1mlで希釈する。(トリパンブルーで1:10希釈して計数)。PBMCを−80℃(ドライアイス)または冷却器で凍結し、そしてそれを保存し、そして−80℃で分配する。ウェルあたり0.5milj PBMCを96ウェルプレートに加える。プレートを回転させ、そして上澄を捨てる。細胞をBD固定バッファー(BD Biosciences、カタログ番号554715のキットより)中で固定する。同一キットからの透過バッファーを加え、そして細胞を洗浄する。ここで細胞は細胞内染色の準備が整っている。p11抗体(BD Biosciences;2,5μg/ml)を透過バッファーで希釈し、そしてウェルに加える。一つのウェルをIgG1対照のために使用する。細胞をピペッティングにより懸濁する。細胞を30分間インキュベートし、そして透過バッファーで洗浄する。二次抗体(例えばヤギ抗マウスPE抱合)を透過バッファーで希釈し、そして各ウェルに加える。細胞を懸濁し、そして30分間インキュベートする。それを透過バッファーで2回およびPBS−1%FCSで1回洗浄する。二重染色のために、二次抗体をPBS−1%FCS−1%NMS(正常マウス血清)100μlで1回洗浄することにより遮断する。遮断工程は次の抗体が任意の残りの二次抗体に結合することを回避するために必要である。表面マーカーを染色するために、CD14−PerCP含有PBS(単球を識別するため)またはCD3−PerCPおよびCD56−PE(T細胞およびNK細胞を識別するため)またはCD19−FITC(B細胞を識別するため)を各ウェルに加える。細胞をピペッティングにより懸濁し、そして冷蔵庫内で10分間インキュベートする。次いでそれをPBS−1%FCS200μlで1回洗浄する。標準的なFACS手順を用いて様々な型の単核細胞におけるp11の染色を決定する。p11はいくつかの白血球、単球、NKキラー細胞およびCD−8陽性T細胞において高度に発現される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象からの生物学的試料中のp11のレベルを決定すること、および該p11レベルを参照と比較することを含み、ここで参照と比較してp11の異常レベルはp11/5−HT受容体関連障害の陽性診断を構成する対象においてp11/5−HT受容体関連障害を診断する方法。
【請求項2】
該p11/5−HT受容体関連障害が異常に低いレベルのp11に関連する障害であり、ここで対照対象と比較して対象において低下したp11のレベルがかかる障害の陽性診断を構成する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
異常に低いレベルのp11に関連する該障害がうつ病、強迫性障害、薬物依存、摂食障害、アルツハイマー病、注意欠陥障害および注意欠陥多動性障害からなる群から選択される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
異常に低いレベルのp11に関連する該障害がうつ病である請求項2に記載の方法。
【請求項5】
該p11/5−HT受容体関連障害が異常に高いレベルのp11に関連し、ここで対照対象のレベルと比較して対象において上昇したp11のレベルがかかる障害の陽性診断を構成する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
異常に高いレベルのp11に関連する該障害が躁病、双極性障害、不安障害、攻撃性、睡眠障害、性機能障害および胃腸障害からなる群から選択される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
該p11のレベルが該対象からの該生物学的試料中の単球および/またはリンパ球におけるp11タンパク質レベルを検定することにより決定される請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
該p11のレベルが該対象からの生物学的試料中のp11 mRNAレベルを検定することにより決定される請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
a)均等量のp11遺伝子生成物を含有する第1試料および第2試料を提供すること;
b)第1試料を候補p11モジュレーターと接触させること;および
c)第1試料中のp11遺伝子生成物の量が候補p11モジュレーターと接触させていない第2試料中のp11遺伝子生成物の量と相対して増加または減少しているかどうかを決定すること;の工程を含み、ここで遺伝子生成物の量の増加は候補モジュレーターが異常に低いレベルのp11に関連する障害を処置するかまたは寛解させるのに有用であり得ることを示し、一方遺伝子生成物の量の低下は候補モジュレーターが異常に高いレベルのp11に関連する障害を処置するかまたは寛解させるのに有用であり得ることを示すp11/5−HT受容体関連障害を処置するかまたは寛解させるのに有用なモジュレーターを同定するための方法。
【請求項10】
a)細胞表面で均等数の5−HT1B受容体を含有する第1試料および第2試料を提供すること;
b)第1試料を候補p11モジュレーターと接触させること;および
c)第1試料の細胞表面での5−HT1B受容体の数が第2試料と相対して増加しているかどうかを決定すること;の工程を含み、ここで細胞表面での5−HT1B受容体の数の増加は候補モジュレーターが異常に低いレベルのp11活性に関連する障害を処置するかまたは寛解させるのに有用であり得ることを示し、一方細胞表面での5−HT1B受容体の量の低下は候補モジュレーターが異常に高いレベルのp11活性に関連する障害を処置するかまたは寛解させるのに有用であり得ることを示すp11/5−HT受容体関連障害を処置するかまたは寛解させるのに有用なモジュレーターを同定するための方法。
【請求項11】
該モジュレーターがうつ病、強迫性障害、薬物依存、摂食障害、アルツハイマー病、注意欠陥障害または注意欠陥多動性障害からなる群から選択されるp11/5−HT受容体関連障害を処置するかまたは寛解させるのに有用であり、該候補モジュレーターがp11発現を上方調節する能力に関して検定することを含む請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
該p11/5−HT受容体関連障害がうつ病である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
p11モジュレーターが三環系抗うつ剤、セロトニン再取り込み阻害剤またはモノアミンオキシダーゼ阻害剤である請求項9、10、11または12に記載の方法。
【請求項14】
候補p11擬似物質が5−HT1B受容体をニューロン細胞膜に補充する能力に関して検定することを含むp11/5−HT受容体関連障害を処置するかまたは寛解させるのに有用なp11擬似物質を同定するための方法。
【請求項15】
該候補p11擬似物質が異常に低いレベルのp11に関連する障害を処置するかまたは寛解させるのに有用であり、ここで該候補p11擬似物質は5−HT1B受容体をニューロン細胞膜に補充する請求項14に記載の方法。
【請求項16】
該障害がうつ病、強迫性障害、薬物依存、摂食障害、アルツハイマー病、注意欠陥障害および注意欠陥多動性障害から選択される請求項15に記載の方法。
【請求項17】
該障害がうつ病である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
一つまたはそれより多いp11/5−HT受容体関連障害を患うと診断された対象に治療上有効量のp11モジュレーターまたはp11擬似物質を投与することを含む該対象におけるp11機能障害を処置するかまたは寛解させる方法。
【請求項19】
p11/5−HT受容体関連障害がうつ病、強迫性障害、薬物依存、摂食障害、アルツハイマー病、注意欠陥障害および注意欠陥多動性障害からなる群から選択され、該対象に治療上有効量のp11モジュレーターまたはp11擬似物質を投与することを含み、ここでp11モジュレーターまたは擬似物質はp11発現を上方調節するか、または5−HT1B受容体をニューロン細胞膜に補充する請求項18に記載の方法。
【請求項20】
該p11/5−HT受容体関連障害がうつ病である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
p11/5−HT受容体関連障害が躁病、双極性障害、不安障害、攻撃性、睡眠障害、性機能障害および胃腸障害からなる群から選択され、該対象に治療上有効量のp11モジュレーターまたはp11擬似物質を投与することを含み、ここで該p11モジュレーターまたは擬似物質はp11発現を阻止するか、またはニューロン細胞膜で5−HT1B受容体を下方調節する請求項18に記載の方法。
【請求項22】
同一種の野生型の哺乳動物と比較してp11遺伝子に欠陥、変異または欠損を有するヒト以外のp11ノックアウト哺乳動物。
【請求項23】
マウスであるヒト以外のp11ノックアウト哺乳動物。
【請求項24】
該マウスが野生型マウスと比較してp11タンパク質を過少発現する請求項23に記載のノックアウトマウス。
【請求項25】
該マウスが野生型マウスと比較してニューロン細胞膜で5−HT1B受容体がより少ない請求項23に記載のノックアウトマウス。
【請求項26】
該マウスがうつ病様表現型を呈する請求項23、24または25のいずれかに記載のマウス。
【請求項27】
a)有効量の新規精神治療薬をp11ノックアウトマウスおよび対照マウスに投与すること;
b)該ノックアウトマウスおよび対照マウスにおいてp11レベルおよび/または該薬剤に対する行動的応答のレベルを評価すること;
c)p11ノックアウトマウスにおける該p11レベルおよび/または行動的応答を対照マウスと比較すること;
を含むp11/5−HT受容体関連障害を研究するか、またはp11/5−HT受容体関連障害の処置に有用な新規精神治療薬を開発するための方法。
【請求項28】
該p11/5−HT受容体関連障害がうつ病、不安障害、攻撃性、躁病、双極性障害、睡眠障害、強迫性障害、薬物依存、摂食障害、性機能障害、アルツハイマー病、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害および胃腸障害からなる群から選択される請求項27に記載の方法。
【請求項29】
調節プロモーターの制御下でp11をコードする導入遺伝子を含むヒト以外の哺乳動物。
【請求項30】
マウスである請求項29に記載の哺乳動物。
【請求項31】
プロモーターがカルモジュリン/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼII(CamKII)プロモーターである請求項29または30に記載の哺乳動物。
【請求項32】
p11/5−HT受容体関連障害を患う患者の脳においてp11の発現を増強する核酸を投与することを含む該患者においてp11発現を増強する方法。
【請求項33】
核酸がp11をコードする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
p11/5−HT受容体関連障害がうつ病、強迫性障害、薬物依存、摂食障害、注意欠陥障害または注意欠陥多動性障害およびアルツハイマー病から選択される異常に低いレベルのp11に関連する障害である請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
p11/5−HT受容体関連障害がうつ病である請求項32から34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
該核酸がp11をコードするDNA構築物を含む組換え複製欠損アデノウイルスベクターにより分配される求項32から35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
該DNA構築物が神経組織特異的プロモーターの制御下にある請求項36に記載の方法。
【請求項38】
該核酸が患者の脳細胞により発現されるレベルよりも高いレベルでp11を発現する神経幹細胞により分配される請求項32から35のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
p11をコードする該核酸が海馬に分配される請求項32から38のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2009−544278(P2009−544278A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515484(P2009−515484)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/013948
【国際公開番号】WO2007/146372
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(596171834)ザ ロックフェラー ユニヴァーシティ (11)
【Fターム(参考)】