方向性結合器の実装構造及び方向性結合器
【課題】所定の分配比で出力される主出力信号端子と副出力信号端子との間のアイソレーションを改善した方向性結合器の実装構造及び方向性結合器を提供する。
【解決手段】方向性結合器1′は磁性体基板2−1,2−2と第1及び第2トランス5,6を含む積層体3と外部電極4−1〜4−6とを備える。第1トランス5の1次側コイル5−1の一方端に接続した外部電極4−2を信号の入力信号端子とし、他方端に接続した外部電極4−1を主出力信号端子とする。第2トランス6の2次側コイル6−2の他方端に接続した外部電極4−3を副出力信号の副出力信号端子とする。平面電極パターン81,82で構成されるコンデンサ8を磁性体基板2−2上に積層形成し、このコンデンサ8の端子81aを、終端抵抗が接続される外部電極4−5に接続すると共に、端子82aを接地される外部電極4−4に接続した。
【解決手段】方向性結合器1′は磁性体基板2−1,2−2と第1及び第2トランス5,6を含む積層体3と外部電極4−1〜4−6とを備える。第1トランス5の1次側コイル5−1の一方端に接続した外部電極4−2を信号の入力信号端子とし、他方端に接続した外部電極4−1を主出力信号端子とする。第2トランス6の2次側コイル6−2の他方端に接続した外部電極4−3を副出力信号の副出力信号端子とする。平面電極パターン81,82で構成されるコンデンサ8を磁性体基板2−2上に積層形成し、このコンデンサ8の端子81aを、終端抵抗が接続される外部電極4−5に接続すると共に、端子82aを接地される外部電極4−4に接続した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯電話等の移動体通信機に適用される方向性結合器の実装構造及び方向性結合器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の方向性結合器としては、例えば、非特許文献1に開示されたものがある。
図18に示すように、この方向性結合器100は、電極102をメガネ形の磁性体コア101に巻付けたもので、図19に示すような回路構成を成す。
かかる構成により、トランス110のコイル111に対するコイル112の巻線比を適宜設定すると共に、トランス120のコイル122に対するコイル121の巻線比を適宜設定することで、例えば、トランス110のポート110bから入力した信号Sを、ポート110aから主出力信号S1として出力すると共に、トランス120のポート120bから副出力信号S2として出力することができる。このとき、主出力信号S1と副出力信号S2とを、トランス110,120巻線比に対応した分配比で出力することができるようになっている。なお、図18及び図19に示す抵抗Rは、終端抵抗である。
【0003】
【非特許文献1】ミハエル ジー・エリス(Michael G.Ellis)、「高周波方向性結合器」(RF Directional Couplers)、エレクトロニック システム プロダクツ(Electronic System Products)、〔平成17年5月20日検索〕、インターネット<http://members.tripod.com/michaelgellis/direct.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した方向性結合器100では、主出力信号S1が出力されるポート110aと副出力信号S2が出力されるポート120bとの間のアイソレーションが劣るという問題がある。
すなわち、ポート110bから入力された入力信号Sの高周波成分は、方向性結合器100の内部で発生する微少なインダクタンス成分や容量成分と結合し易い。このため、高周波領域において、ポート110aとポート120bとの間のアイソレーションが劣化するおそれがあった。
【0005】
この発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、所定の分配比で出力される主出力信号端子と副出力信号端子との間のアイソレーションを改善した方向性結合器の実装構造及び方向性結合器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、第1磁性体基板と、この第1磁性体基板上に積層され且つ内部に第1及び第2トランスが形成された積層体と、この積層体上に設けられた第2磁性体基板とを備え、第1トランスの1次側コイルの両方の端子のそれぞれを、信号を入力するための入力信号端子,主出力信号を出力するための主出力信号端子とすると共に、2次側コイルの一方の端子をグランド端子として、他方の端子を第2トランスの2次側コイルの一方の端子に接続し、第2トランスの1次側コイルの一方の端子を第1トランスの主出力信号端子に接続すると共に他方の端子をグランド端子に接続し、2次側コイルの他方の端子を、副出力信号を出力する副出力信号端子とした方向性結合器の実装構造であって、入力信号端子,主出力信号端子を入力線路,主出力線路にそれぞれ接続すると共に、副出力信号端子を副出力線路に接続し、第2トランスの2次側コイルの一方の端子に、接地された終端抵抗を外部から接続すると共に、当該一方の端子に、接地されたコンデンサを終端抵抗と並列に外部から接続した構成とする。
かかる構成により、信号が入力線路から方向性結合器の入力信号端子に入力されると、主出力信号が第1トランスの主出力信号端子から主出力線路に出力されると共に、副出力信号が第2トランスの副出力信号端子から副出力線路に出力される。このとき、方向性結合器に入力された信号の高周波成分は、方向性結合器の第1及び第2トランス等の内部回路で発生する微少なインダクタンス成分や容量成分に結合し易い。このため、高周波領域において、主出力信号端子と副出力信号端子との間のアイソレーションが低下するおそれがある。しかし、この発明では、これらの端子間に誘起される高周波成分が第2トランスの一方の端子に接続されたコンデンサを通じて取り除かれるので、主出力信号端子と副出力信号端子との間のアイソレーションが改善される。
【0007】
請求項2の発明は、第1磁性体基板と、この第1磁性体基板上に積層され且つ内部に第1及び第2トランスが形成された積層体と、この積層体上に設けられた第2磁性体基板とを備え、第1トランスの1次側コイルの両方の端子のそれぞれを、信号を入力するための入力信号端子,主出力信号を出力するための主出力信号端子とすると共に、2次側コイルの一方の端子をグランド端子として、他方の端子を第2トランスの2次側コイルの一方の端子に接続し、第2トランスの1次側コイルの一方の端子を第1トランスの主出力信号端子に接続すると共に他方の端子をグランド端子に接続し、2次側コイルの他方の端子を、副出力信号を出力する副出力信号端子とした方向性結合器であって、積層体の内部,第1磁性体基板の下側又は第2磁性体基板の上側のいずれかに、一方端が第2トランスの2次側コイルの一方の端子に接続され且つ他方端がグランド端子に接続されたコンデンサを積層形成した構成とする。
かかる構成により、入力信号端子,主出力信号端子を入力線路,主出力線路にそれぞれ接続すると共に、副出力信号端子を副出力線路に接続し、第2トランスの2次側コイルの一方の端子に、接地された終端抵抗を外部から接続することで、方向性結合器として動作する。すなわち、信号が入力線路から入力信号端子に入力されると、主出力信号が第1トランスの主出力信号端子から主出力線路に出力されると共に、副出力信号が第2トランスの副出力信号端子から副出力線路に出力される。このとき、信号の高周波成分が、方向性結合器の第1及び第2トランス等の内部回路で発生する微少なインダクタンス成分や容量成分に結合し易いので、高周波領域において、方向性結合器の主出力信号端子と副出力信号端子との間のアイソレーションが低下するおそれがある。しかし、この発明では、これらの端子間で誘起される高周波成分が2次側コイルの一方の端子に接続されたコンデンサを通じて取り除かれ、主出力信号端子と副出力信号端子との間のアイソレーションが改善される。
【発明の効果】
【0008】
以上詳しく説明したように、この発明によれば、方向性結合器の主出力信号端子と副出力信号端子との間に誘起される高周波成分を、コンデンサを通じて取り除くことができ、この結果、主出力信号端子と副出力信号端子との間のアイソレーションが高められ、所望分配比の主出力信号と副出力信号とを得ることができるという優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の最良の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、この発明の第1実施例に係る方向性結合器の実装構造を示す斜視図であり、図2は、方向性結合器の分解斜視図である。
【0011】
図1に示すように、この実施例の方向性結合器1の実装構造では、信号Sの入力信号端子である外部電極4−2と主出力信号S1の主出力信号端子である外部電極4−1とを、入力線路200,主出力線路201にそれぞれ接続すると共に、副出力信号S2の副出力信号端子である外部電極4−3を副出力線路202に接続した。そして、外部電極4−5に、終端抵抗Rを接続して接地した。さらに、この外部電極4−5にコンデンサCを接続して接地した。すなわち、コンデンサCと終端抵抗Rとを方向性結合器1の外部電極4−5に並列に接続して接地した構造を成す。
【0012】
この実施例に適用される方向性結合器1は、第1磁性体基板としての磁性体基板2−1と、この磁性体基板2−1上に積層された積層体3と、この積層体3上に接着された第2磁性体基板としての磁性体基板2−2と、外部電極4−1〜4−6とで構成されている。
【0013】
積層体3は、図2に示すように、第1トランス5と、第2トランス6と、これら第1及び第2トランス5,6を外側から完全に覆った非磁性体層71〜75とを有して成る。
【0014】
各非磁性体層71〜75は、誘電体であり、第1及び第2トランス5,6は、この非磁性体層71〜74上にパターン形成されている。
具体的には、第1トランス5は、1次側コイル5−1とその上の2次側コイル5−2とを有している。そして、1次側コイル5−1は、導体パターン51と導体パターン52とで形成され、2次側コイル5−2は、導体パターン53と導体パターン54とで形成されている。
一方、第2トランス6は、1次側コイル6−1とその上の2次側コイル6−2とを有している。そして、1次側コイル6−1は、導体パターン63と導体パターン64とで形成され、2次側コイル6−2は、導体パターン61と導体パターン62とで形成されている。
【0015】
ここで、第1及び第2トランス5,6の構造について詳細に説明する。
最下層の導体パターン51,64は、磁性体基板2−1上に積層された非磁性体層71上にスパッタリングで導体膜を形成し、この導体膜の上に図示しないレジストパターンを形成した後、エッチングすることにより、パターン形成した。そして、非磁性体層72を導体パターン51,64上に積層した。この非磁性体層72は、感光性絶縁ペーストを塗布し、フォトリソグラフィによって形成される。そして、導体パターン52,63をこの非磁性体層72上にパターン形成した。以下、導体パターン51〜54や導体パターン61〜64も上記導体パターン51,64と同様の工法で形成し、非磁性体層71〜75も上記非磁性体層72と同様の工法で形成するので、以下、各導体パターンや非磁性体層の工法に関する記載は省略する。
図3は、導体パターン51,64の平面図であり、図4は、非磁性体層72の平面図であり、図5は、導体パターン52,63の平面図であり、図6は、導体パターン51,64と導体パターン52,63との接続構造を示す分解斜視図である。
図3に示すように、導体パターン51は、内側から引き出された内部電極51aとパターンの内側の端部51bとを有している。また、図5に示すように、導体パターン52は、外側に引き出された内部電極52aと、内側に端部52bとを有している。
そして、図6に示すように、導体パターン51の端部51bと導体パターン52の端部52bとが図4にも示す非磁性体層72のスルーホール72bを通じて接続されている。これにより、内部電極51a,52aを両端とするスパイラル状の1次側コイル5−1が形成されている。
一方、導体パターン64は、図3に示すように、隣の導体パターン51の外側中央部(内部電極52aと対応する位置)に引き出された内部電極64aを有しており、この内部電極64aが引き出された辺と反対側の辺で、左向きの端部64b〜64dと右向きの端部64e〜64hとが交互に並んでいる。また、図5に示すように、導体パターン63は、内側から導体パターン52,63の間の中央にまで引き出された内部電極63aを有しており、この内部電極63aの引き出し線の左側にパターンの端部63b〜63dが配されると共に、右側に端部63e〜63hが配されている。そして、図6に示すように、導体パターン64の端部64b〜64dと導体パターン63の端部63b〜63dとが図4にも示す非磁性体層72のスルーホール72b′〜72d′を通じて接続され、導体パターン64の端部64e〜64hと導体パターン63の端部63e〜63hとがスルーホール72e′〜72h′を通じて接続されている。これにより、内部電極64a,63aを両端とするスパイラル状の1次側コイル6−1が形成されている。
また、内部電極52a,64aの引き出し線同士が非磁性体層72のスルーホール72jを通じて接続されている。
【0016】
また、図2に示すように、導体パターン53,62は、導体パターン52,63の上に積層された非磁性体層73上にパターン形成されている。そして、非磁性体層74が導体パターン53,62上に積層された後、導体パターン54,61が非磁性体層74上にパターン形成されている。
図7は、導体パターン53,62の平面図であり、図8は、非磁性体層74の平面図であり、図9は、導体パターン54,61の平面図であり、図10は、導体パターン53,62と導体パターン54,61との接続構造を示す分解斜視図である。
図7に示すように、導体パターン53は、内側から導体パターン53,62の間の中央にまで引き出された内部電極53aを有しており、この内部電極53aの引き出し線の右側にパターンの端部53b〜53dが配されると共に、左側に端部53e〜53hが配されている。また、図9に示すように、導体パターン54は、隣の導体パターン61の外側中央部(内部電極62aと対応する位置)に引き出された内部電極54aを有しており、この内部電極54aが引き出された辺と反対側の辺で、右向きの端部54b〜54dと左向きの端部54e〜54hとが交互に並んでいる。
そして、図10に示すように、導体パターン53の端部53b〜53dと導体パターン54の端部54b〜54dとが図8にも示す非磁性体層74のスルーホール74b〜74dを通じて接続され、導体パターン53の端部53e〜53hと導体パターン54の端部54e〜54hとがスルーホール74e〜74hを通じて接続されている。これにより、内部電極53a,54aを両端とするスパイラル状の2次側コイル5−2が形成されている。
一方、図7に示すように、導体パターン62は、外側に引き出された内部電極62aと内側に位置する端部62bとを有している。また、図9に示すように、導体パターン61は、内側から引き出された内部電極61aと内側の端部61bとを有している。そして、図10に示すように、導体パターン62の端部62bと導体パターン61の端部61bとが図8にも示す非磁性体層74のスルーホール74b′を通じて接続されている。これにより、内部電極62a,61aを両端とするスパイラル状の2次側コイル6−2が形成されている。
また、内部電極54a,62aの引き出し線同士が非磁性体層72のスルーホール74jを通じて接続されている。
そして、図2に示すように、導体パターン54,61の上に非磁性体層75が積層され、この非磁性体層75上に磁性体基板2−2が接着されている。
【0017】
外部電極4−1〜4−6は、図1に示すように、上記構造の積層体3の外側に形成されている。
これにより、図2に示すように、外部電極4−1が導体パターン52,64の内部電極52a,64aの両方に電気的に接続し、外部電極4−2が導体パターン51の内部電極51aに電気的に接続している。そして、外部電極4−3が導体パターン61の内部電極61aに電気的に接続し、外部電極4−4が導体パターン53,63の内部電極53a,63aの両方に電気的に接続すると共に、外部電極4−5が導体パターン54,62の内部電極54a,62aの両方に電気的に接続している。
【0018】
図11は、方向性結合器1の電気的構造を示す模式図である。
上記のような導体パターン同士の接続や外部電極4−1〜4−6と内部電極との接続によって、電気的構造は、図11に示すような回路構造となる。
すなわち、第1トランス5の1次側コイル5−1の内部電極51aに接続した外部電極4−2を信号Sの入力信号端子とし、内部電極52aに接続した外部電極4−1を主出力信号S1の主出力信号端子とする。そして、2次側コイル5−2の一方の端子である内部電極53aに接続された外部電極4−4をグランド端子とする。また、第2トランス6の1次側コイル6−1の一方の端子である内部電極64aが1次側コイルの一方の端子である内部電極52aと接続しており、他方の端子である内部電極63aが第1トランス5の2次側コイル5−2の内部電極53aを介して外部電極4−4に接続している。そして、2次側コイル6−2の一方の端子である内部電極62aが第1トランス5の2次側コイル5−2の他方の端子である内部電極54aを介して外部電極4−5に接続している。そして、2次側コイル6−2の他方の端子である内部電極61aに接続した外部電極4−3を副出力信号S2の副出力信号端子とした。
【0019】
次に、この実施例が示す作用及び効果について説明する。
図12は、図1に示すこの実施例の方向性結合器の実装構造の等価回路図である。
方向性結合器1が、図11に示したような電気的構造をとることにより、図1の実装構造は、図12に示すような等価回路図で表すことができる。
この図12及び図1に示すように、信号Sを入力線路200に伝送させると、信号Sが外部電極4−2から方向性結合器1内に入力する。すると、主出力信号S1が外部電極4−1から主出力線路201に出力されると共に、副出力信号S2が外部電極4−3から副出力線路202に出力される。すなわち、方向性結合器1に入力した信号Sは、第1トランス5及び第2トランス6の巻線長比に対応した分配比で主出力線路201とと副出力線路202とに分配出力される。
ところで、信号の高周波成分は、第1及び第2トランス5,6等の内部回路に発生する微少なインダクタンス成分や容量成分に結合し易い。このため、高周波領域において、高周波成分がこれらの微少成分に結合して、方向性結合器1の外部電極4−1,4−3間のアイソレーションを低下させるおそれがある。この結果、主出力線路201からから出力される主出力信号S1と副出力線路202に出力される副出力信号S2とが、所望の分配比で出力されないおそれがある。
しかし、この実施例では、コンデンサCを外部から外部電極4−5に接続して接地した実装構造としたので、コンデンサCが、アイソレーション低下の原因となる上記微少なインダクタンス成分や容量成分を変化させる。この結果、外部電極4−1,4−3間のアイソレーションが改善する。また、コンデンサCが、接地に対する場合パスコンデンサとして機能し、外部電極4−1,4−3間に誘起される高周波成分をを低減させる。
このようにして、この実施例によれば、主出力信号S1及び副出力信号S2を外部電極4−1,4−3から所望の配分比で出力する。
【実施例2】
【0020】
次に、この発明の第2実施例について説明する。
図13は、この発明の第2実施例に係る方向性結合器の分解斜視図である。
この実施例の方向性結合器1′は、上記第1実施例に適用された方向性結合器1の磁性体基板2−2の上側にコンデンサ8が積層形成された構造を成す。
磁性体基板2−1と積層体3と磁性体基板2−2の積層部分は、上記第1実施例の方向性結合器1の構造と同じであるので、同一の符号を付して説明する。
図13に示すように、コンデンサ8は、平面電極パターン81,82で構成されている。
具体的には、誘電体である非磁性体層76を磁性体基板2−2に積層し、平面電極パターン81をこの非磁性体層76上にパターン形成する。そして、誘電体である非磁性体層77を平面電極パターン81に積層した後、平面電極パターン82を非磁性体層77上にパターン形成した。そして、平面電極パターン82を非磁性体層78で上から覆っている。
【0021】
図14は、平面電極パターン81を示す平面図であり、図15は、平面電極パターン82を示す平面図である。
図14に示すように、平面電極パターン81は、長方形状の平面体であり、端子81aが左側部に延出されている。この端子81aは、図13の一点鎖線で示すように、導体パターン54,62の内部電極54a,62aに対応する位置に形成されている。
また、平面電極パターン82も、図15に示すように、平面電極パターン81と同形であり、その端子82aが中央部に延出されている。この端子82aは、図13の二点鎖線で示すように、導体パターン53,63の内部電極53a,63aに対応する位置に形成されている。
これにより、平面電極パターン81と平面電極パターン82とが誘電体である非磁性体層77を挟んで対向し、所定容量のコンデンサ8を構成している。そして、コンデンサ8の一方の端子である端子81aが、外部電極4−5を介して第2トランス6の2次側コイル6−2の内部電極62aに接続されている。また、コンデンサ8の他方の端子である端子82aが、グランド端子である外部電極4−4に接続されている。
【0022】
次に、この実施例の方向性結合器が示す作用及び効果について説明する。
図16は、この実施例の方向性結合器の等価回路図である。
図16に示すように、信号Sを入力線路200に伝送させると、上記第1実施例と同様に、主出力信号S1と副出力信号S2とが主出力線路201と副出力線路202に所定の分配比で出力される。
このとき、上記第1実施例と同様に、高周波領域において、高周波成分が微少なインダクタンス成分や容量成分に結合して、方向性結合器1′の外部電極4−1,4−3間のアイソレーションを低下させるおそれがある。
しかし、この実施例では、コンデンサ8を磁性体基板2−2の上側に積層し、両端を外部電極4−4,4−5間に接続して、コンデンサ8を方向性結合器1′に内蔵した構成としたので、コンデンサ8が、内部に発生した微少なインダクタンス成分や容量成分を変化させ、外部電極4−1,4−3間のアイソレーションが改善する。したがって、この実施例においても、主出力信号S1及び副出力信号S2を外部電極4−1,4−3から所望の配分比で出力することができる。
【0023】
発明者等は、この実施例の効果を確認すべく、次のような実験を行った。
図17は、実験の結果を示す線図である。
この実験では、まず、コンデンサ8を有しない方向性結合器1を用いて、周波数約70MHz〜約3GHzの範囲の信号Sを外部電極4−2から入力し、外部電極4−1,4−3から出力される主出力信号S1と副出力信号S2とに基づいて、外部電極4−1,4−3間のアイソレーション値(dB)を測定した。
すると、図17の曲線I0で示すように、約400MHzで最低値−25dBとなり、周波数が高くなるに従って、アイソレーション値が高くなり、悪化することが確認された。
次に、コンデンサ8の容量値を1.0pF,1.5pF,2.0pF,2.5pFにそれぞれ設定した方向性結合器1′を用いて、上記と同様の測定を行った。
すると、図17の曲線I1〜I4で示すように、約400MHzを最低値として、周波数が高くなるに従ってアイソレーション値も高くなるものの、−20dBを超えることはなかった。かかる測定結果から、コンデンサ8を備えたアンテナモジュール1′では、アイソレーションが大幅に改善されていることが確認された。特に、1.5pFのコンデンサ8を備えた方向性結合器1′では、広い周波数範囲に亘って非常に良好なアイソレーション特性を示すことが確認された。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1実施例と同様であるので、その記載は省略する。
【0024】
なお、この発明は、上記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内において種々の変形や変更が可能である。
例えば、上記第2実施例では、上記第1実施例に適用された方向性結合器1の磁性体基板2−2の上側にコンデンサ8を積層形成した構造の方向性結合器1′を例示したが、コンデンサ8の形成箇所はここに限定されるものではない。例えば、コンデンサ8を積層体3内に積層形成した方向性結合器や、コンデンサ8を磁性体基板2−1の下側に積層形成した方向性結合器も、この発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の第1実施例に係る方向性結合器の実装構造を示す斜視図である。
【図2】方向性結合器の分解斜視図である。
【図3】最下層の導体パターンの平面図である。
【図4】非磁性体層の平面図である。
【図5】第2層の導体パターンの平面図である。
【図6】最下層の導体パターンと第2層の導体パターンとの接続構造を示す分解斜視図である。
【図7】第3層の導体パターンの平面図である。
【図8】非磁性体層の平面図である。
【図9】最上層の導体パターンの平面図である。
【図10】第3層の導体パターンと最上層の導体パターンとの接続構造を示す分解斜視図である。
【図11】方向性結合器の電気的構造を示す模式図である。
【図12】図1に示すこの実施例の方向性結合器の実装構造の等価回路図である。
【図13】この発明の第2実施例に係る方向性結合器の分解斜視図である。
【図14】下層の平面電極パターンを示す平面図である。
【図15】上層の平面電極パターンを示す平面図である。
【図16】第2実施例の方向性結合器の等価回路図である。
【図17】実験の結果を示す線図である。
【図18】従来の方向性結合器の一例を示す斜視図である。
【図19】図18の方向性結合器の等価回路図である。
【符号の説明】
【0026】
1,1′…方向性結合器、 2−1,2−2…磁性体基板、 3…積層体、 4−1〜4−6…外部電極、 5…第1トランス、 5−1,6−1…1次側コイル、 6…第2トランス、 8,C…コンデンサ、 51〜54,61〜64…導体パターン、 51a〜54a,61a〜64a…内部電極、 51b〜51h,52b〜52h,53b〜53h,54b〜54h,61b〜61h,62b〜62h,63b〜63h,64b〜64h…端部、 72b〜72h,72j,72b′〜72h′,74b〜74h,74j,74b′〜74h′…スルーホール、 71〜78…非磁性体層、 81,82…平面電極パターン、 81a,82a…端子、 200…入力線路、 201…主出力線路、 202…副出力線路、 S…入力信号、 S1…主出力信号、 S2…副出力信号。
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯電話等の移動体通信機に適用される方向性結合器の実装構造及び方向性結合器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の方向性結合器としては、例えば、非特許文献1に開示されたものがある。
図18に示すように、この方向性結合器100は、電極102をメガネ形の磁性体コア101に巻付けたもので、図19に示すような回路構成を成す。
かかる構成により、トランス110のコイル111に対するコイル112の巻線比を適宜設定すると共に、トランス120のコイル122に対するコイル121の巻線比を適宜設定することで、例えば、トランス110のポート110bから入力した信号Sを、ポート110aから主出力信号S1として出力すると共に、トランス120のポート120bから副出力信号S2として出力することができる。このとき、主出力信号S1と副出力信号S2とを、トランス110,120巻線比に対応した分配比で出力することができるようになっている。なお、図18及び図19に示す抵抗Rは、終端抵抗である。
【0003】
【非特許文献1】ミハエル ジー・エリス(Michael G.Ellis)、「高周波方向性結合器」(RF Directional Couplers)、エレクトロニック システム プロダクツ(Electronic System Products)、〔平成17年5月20日検索〕、インターネット<http://members.tripod.com/michaelgellis/direct.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した方向性結合器100では、主出力信号S1が出力されるポート110aと副出力信号S2が出力されるポート120bとの間のアイソレーションが劣るという問題がある。
すなわち、ポート110bから入力された入力信号Sの高周波成分は、方向性結合器100の内部で発生する微少なインダクタンス成分や容量成分と結合し易い。このため、高周波領域において、ポート110aとポート120bとの間のアイソレーションが劣化するおそれがあった。
【0005】
この発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、所定の分配比で出力される主出力信号端子と副出力信号端子との間のアイソレーションを改善した方向性結合器の実装構造及び方向性結合器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、第1磁性体基板と、この第1磁性体基板上に積層され且つ内部に第1及び第2トランスが形成された積層体と、この積層体上に設けられた第2磁性体基板とを備え、第1トランスの1次側コイルの両方の端子のそれぞれを、信号を入力するための入力信号端子,主出力信号を出力するための主出力信号端子とすると共に、2次側コイルの一方の端子をグランド端子として、他方の端子を第2トランスの2次側コイルの一方の端子に接続し、第2トランスの1次側コイルの一方の端子を第1トランスの主出力信号端子に接続すると共に他方の端子をグランド端子に接続し、2次側コイルの他方の端子を、副出力信号を出力する副出力信号端子とした方向性結合器の実装構造であって、入力信号端子,主出力信号端子を入力線路,主出力線路にそれぞれ接続すると共に、副出力信号端子を副出力線路に接続し、第2トランスの2次側コイルの一方の端子に、接地された終端抵抗を外部から接続すると共に、当該一方の端子に、接地されたコンデンサを終端抵抗と並列に外部から接続した構成とする。
かかる構成により、信号が入力線路から方向性結合器の入力信号端子に入力されると、主出力信号が第1トランスの主出力信号端子から主出力線路に出力されると共に、副出力信号が第2トランスの副出力信号端子から副出力線路に出力される。このとき、方向性結合器に入力された信号の高周波成分は、方向性結合器の第1及び第2トランス等の内部回路で発生する微少なインダクタンス成分や容量成分に結合し易い。このため、高周波領域において、主出力信号端子と副出力信号端子との間のアイソレーションが低下するおそれがある。しかし、この発明では、これらの端子間に誘起される高周波成分が第2トランスの一方の端子に接続されたコンデンサを通じて取り除かれるので、主出力信号端子と副出力信号端子との間のアイソレーションが改善される。
【0007】
請求項2の発明は、第1磁性体基板と、この第1磁性体基板上に積層され且つ内部に第1及び第2トランスが形成された積層体と、この積層体上に設けられた第2磁性体基板とを備え、第1トランスの1次側コイルの両方の端子のそれぞれを、信号を入力するための入力信号端子,主出力信号を出力するための主出力信号端子とすると共に、2次側コイルの一方の端子をグランド端子として、他方の端子を第2トランスの2次側コイルの一方の端子に接続し、第2トランスの1次側コイルの一方の端子を第1トランスの主出力信号端子に接続すると共に他方の端子をグランド端子に接続し、2次側コイルの他方の端子を、副出力信号を出力する副出力信号端子とした方向性結合器であって、積層体の内部,第1磁性体基板の下側又は第2磁性体基板の上側のいずれかに、一方端が第2トランスの2次側コイルの一方の端子に接続され且つ他方端がグランド端子に接続されたコンデンサを積層形成した構成とする。
かかる構成により、入力信号端子,主出力信号端子を入力線路,主出力線路にそれぞれ接続すると共に、副出力信号端子を副出力線路に接続し、第2トランスの2次側コイルの一方の端子に、接地された終端抵抗を外部から接続することで、方向性結合器として動作する。すなわち、信号が入力線路から入力信号端子に入力されると、主出力信号が第1トランスの主出力信号端子から主出力線路に出力されると共に、副出力信号が第2トランスの副出力信号端子から副出力線路に出力される。このとき、信号の高周波成分が、方向性結合器の第1及び第2トランス等の内部回路で発生する微少なインダクタンス成分や容量成分に結合し易いので、高周波領域において、方向性結合器の主出力信号端子と副出力信号端子との間のアイソレーションが低下するおそれがある。しかし、この発明では、これらの端子間で誘起される高周波成分が2次側コイルの一方の端子に接続されたコンデンサを通じて取り除かれ、主出力信号端子と副出力信号端子との間のアイソレーションが改善される。
【発明の効果】
【0008】
以上詳しく説明したように、この発明によれば、方向性結合器の主出力信号端子と副出力信号端子との間に誘起される高周波成分を、コンデンサを通じて取り除くことができ、この結果、主出力信号端子と副出力信号端子との間のアイソレーションが高められ、所望分配比の主出力信号と副出力信号とを得ることができるという優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の最良の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、この発明の第1実施例に係る方向性結合器の実装構造を示す斜視図であり、図2は、方向性結合器の分解斜視図である。
【0011】
図1に示すように、この実施例の方向性結合器1の実装構造では、信号Sの入力信号端子である外部電極4−2と主出力信号S1の主出力信号端子である外部電極4−1とを、入力線路200,主出力線路201にそれぞれ接続すると共に、副出力信号S2の副出力信号端子である外部電極4−3を副出力線路202に接続した。そして、外部電極4−5に、終端抵抗Rを接続して接地した。さらに、この外部電極4−5にコンデンサCを接続して接地した。すなわち、コンデンサCと終端抵抗Rとを方向性結合器1の外部電極4−5に並列に接続して接地した構造を成す。
【0012】
この実施例に適用される方向性結合器1は、第1磁性体基板としての磁性体基板2−1と、この磁性体基板2−1上に積層された積層体3と、この積層体3上に接着された第2磁性体基板としての磁性体基板2−2と、外部電極4−1〜4−6とで構成されている。
【0013】
積層体3は、図2に示すように、第1トランス5と、第2トランス6と、これら第1及び第2トランス5,6を外側から完全に覆った非磁性体層71〜75とを有して成る。
【0014】
各非磁性体層71〜75は、誘電体であり、第1及び第2トランス5,6は、この非磁性体層71〜74上にパターン形成されている。
具体的には、第1トランス5は、1次側コイル5−1とその上の2次側コイル5−2とを有している。そして、1次側コイル5−1は、導体パターン51と導体パターン52とで形成され、2次側コイル5−2は、導体パターン53と導体パターン54とで形成されている。
一方、第2トランス6は、1次側コイル6−1とその上の2次側コイル6−2とを有している。そして、1次側コイル6−1は、導体パターン63と導体パターン64とで形成され、2次側コイル6−2は、導体パターン61と導体パターン62とで形成されている。
【0015】
ここで、第1及び第2トランス5,6の構造について詳細に説明する。
最下層の導体パターン51,64は、磁性体基板2−1上に積層された非磁性体層71上にスパッタリングで導体膜を形成し、この導体膜の上に図示しないレジストパターンを形成した後、エッチングすることにより、パターン形成した。そして、非磁性体層72を導体パターン51,64上に積層した。この非磁性体層72は、感光性絶縁ペーストを塗布し、フォトリソグラフィによって形成される。そして、導体パターン52,63をこの非磁性体層72上にパターン形成した。以下、導体パターン51〜54や導体パターン61〜64も上記導体パターン51,64と同様の工法で形成し、非磁性体層71〜75も上記非磁性体層72と同様の工法で形成するので、以下、各導体パターンや非磁性体層の工法に関する記載は省略する。
図3は、導体パターン51,64の平面図であり、図4は、非磁性体層72の平面図であり、図5は、導体パターン52,63の平面図であり、図6は、導体パターン51,64と導体パターン52,63との接続構造を示す分解斜視図である。
図3に示すように、導体パターン51は、内側から引き出された内部電極51aとパターンの内側の端部51bとを有している。また、図5に示すように、導体パターン52は、外側に引き出された内部電極52aと、内側に端部52bとを有している。
そして、図6に示すように、導体パターン51の端部51bと導体パターン52の端部52bとが図4にも示す非磁性体層72のスルーホール72bを通じて接続されている。これにより、内部電極51a,52aを両端とするスパイラル状の1次側コイル5−1が形成されている。
一方、導体パターン64は、図3に示すように、隣の導体パターン51の外側中央部(内部電極52aと対応する位置)に引き出された内部電極64aを有しており、この内部電極64aが引き出された辺と反対側の辺で、左向きの端部64b〜64dと右向きの端部64e〜64hとが交互に並んでいる。また、図5に示すように、導体パターン63は、内側から導体パターン52,63の間の中央にまで引き出された内部電極63aを有しており、この内部電極63aの引き出し線の左側にパターンの端部63b〜63dが配されると共に、右側に端部63e〜63hが配されている。そして、図6に示すように、導体パターン64の端部64b〜64dと導体パターン63の端部63b〜63dとが図4にも示す非磁性体層72のスルーホール72b′〜72d′を通じて接続され、導体パターン64の端部64e〜64hと導体パターン63の端部63e〜63hとがスルーホール72e′〜72h′を通じて接続されている。これにより、内部電極64a,63aを両端とするスパイラル状の1次側コイル6−1が形成されている。
また、内部電極52a,64aの引き出し線同士が非磁性体層72のスルーホール72jを通じて接続されている。
【0016】
また、図2に示すように、導体パターン53,62は、導体パターン52,63の上に積層された非磁性体層73上にパターン形成されている。そして、非磁性体層74が導体パターン53,62上に積層された後、導体パターン54,61が非磁性体層74上にパターン形成されている。
図7は、導体パターン53,62の平面図であり、図8は、非磁性体層74の平面図であり、図9は、導体パターン54,61の平面図であり、図10は、導体パターン53,62と導体パターン54,61との接続構造を示す分解斜視図である。
図7に示すように、導体パターン53は、内側から導体パターン53,62の間の中央にまで引き出された内部電極53aを有しており、この内部電極53aの引き出し線の右側にパターンの端部53b〜53dが配されると共に、左側に端部53e〜53hが配されている。また、図9に示すように、導体パターン54は、隣の導体パターン61の外側中央部(内部電極62aと対応する位置)に引き出された内部電極54aを有しており、この内部電極54aが引き出された辺と反対側の辺で、右向きの端部54b〜54dと左向きの端部54e〜54hとが交互に並んでいる。
そして、図10に示すように、導体パターン53の端部53b〜53dと導体パターン54の端部54b〜54dとが図8にも示す非磁性体層74のスルーホール74b〜74dを通じて接続され、導体パターン53の端部53e〜53hと導体パターン54の端部54e〜54hとがスルーホール74e〜74hを通じて接続されている。これにより、内部電極53a,54aを両端とするスパイラル状の2次側コイル5−2が形成されている。
一方、図7に示すように、導体パターン62は、外側に引き出された内部電極62aと内側に位置する端部62bとを有している。また、図9に示すように、導体パターン61は、内側から引き出された内部電極61aと内側の端部61bとを有している。そして、図10に示すように、導体パターン62の端部62bと導体パターン61の端部61bとが図8にも示す非磁性体層74のスルーホール74b′を通じて接続されている。これにより、内部電極62a,61aを両端とするスパイラル状の2次側コイル6−2が形成されている。
また、内部電極54a,62aの引き出し線同士が非磁性体層72のスルーホール74jを通じて接続されている。
そして、図2に示すように、導体パターン54,61の上に非磁性体層75が積層され、この非磁性体層75上に磁性体基板2−2が接着されている。
【0017】
外部電極4−1〜4−6は、図1に示すように、上記構造の積層体3の外側に形成されている。
これにより、図2に示すように、外部電極4−1が導体パターン52,64の内部電極52a,64aの両方に電気的に接続し、外部電極4−2が導体パターン51の内部電極51aに電気的に接続している。そして、外部電極4−3が導体パターン61の内部電極61aに電気的に接続し、外部電極4−4が導体パターン53,63の内部電極53a,63aの両方に電気的に接続すると共に、外部電極4−5が導体パターン54,62の内部電極54a,62aの両方に電気的に接続している。
【0018】
図11は、方向性結合器1の電気的構造を示す模式図である。
上記のような導体パターン同士の接続や外部電極4−1〜4−6と内部電極との接続によって、電気的構造は、図11に示すような回路構造となる。
すなわち、第1トランス5の1次側コイル5−1の内部電極51aに接続した外部電極4−2を信号Sの入力信号端子とし、内部電極52aに接続した外部電極4−1を主出力信号S1の主出力信号端子とする。そして、2次側コイル5−2の一方の端子である内部電極53aに接続された外部電極4−4をグランド端子とする。また、第2トランス6の1次側コイル6−1の一方の端子である内部電極64aが1次側コイルの一方の端子である内部電極52aと接続しており、他方の端子である内部電極63aが第1トランス5の2次側コイル5−2の内部電極53aを介して外部電極4−4に接続している。そして、2次側コイル6−2の一方の端子である内部電極62aが第1トランス5の2次側コイル5−2の他方の端子である内部電極54aを介して外部電極4−5に接続している。そして、2次側コイル6−2の他方の端子である内部電極61aに接続した外部電極4−3を副出力信号S2の副出力信号端子とした。
【0019】
次に、この実施例が示す作用及び効果について説明する。
図12は、図1に示すこの実施例の方向性結合器の実装構造の等価回路図である。
方向性結合器1が、図11に示したような電気的構造をとることにより、図1の実装構造は、図12に示すような等価回路図で表すことができる。
この図12及び図1に示すように、信号Sを入力線路200に伝送させると、信号Sが外部電極4−2から方向性結合器1内に入力する。すると、主出力信号S1が外部電極4−1から主出力線路201に出力されると共に、副出力信号S2が外部電極4−3から副出力線路202に出力される。すなわち、方向性結合器1に入力した信号Sは、第1トランス5及び第2トランス6の巻線長比に対応した分配比で主出力線路201とと副出力線路202とに分配出力される。
ところで、信号の高周波成分は、第1及び第2トランス5,6等の内部回路に発生する微少なインダクタンス成分や容量成分に結合し易い。このため、高周波領域において、高周波成分がこれらの微少成分に結合して、方向性結合器1の外部電極4−1,4−3間のアイソレーションを低下させるおそれがある。この結果、主出力線路201からから出力される主出力信号S1と副出力線路202に出力される副出力信号S2とが、所望の分配比で出力されないおそれがある。
しかし、この実施例では、コンデンサCを外部から外部電極4−5に接続して接地した実装構造としたので、コンデンサCが、アイソレーション低下の原因となる上記微少なインダクタンス成分や容量成分を変化させる。この結果、外部電極4−1,4−3間のアイソレーションが改善する。また、コンデンサCが、接地に対する場合パスコンデンサとして機能し、外部電極4−1,4−3間に誘起される高周波成分をを低減させる。
このようにして、この実施例によれば、主出力信号S1及び副出力信号S2を外部電極4−1,4−3から所望の配分比で出力する。
【実施例2】
【0020】
次に、この発明の第2実施例について説明する。
図13は、この発明の第2実施例に係る方向性結合器の分解斜視図である。
この実施例の方向性結合器1′は、上記第1実施例に適用された方向性結合器1の磁性体基板2−2の上側にコンデンサ8が積層形成された構造を成す。
磁性体基板2−1と積層体3と磁性体基板2−2の積層部分は、上記第1実施例の方向性結合器1の構造と同じであるので、同一の符号を付して説明する。
図13に示すように、コンデンサ8は、平面電極パターン81,82で構成されている。
具体的には、誘電体である非磁性体層76を磁性体基板2−2に積層し、平面電極パターン81をこの非磁性体層76上にパターン形成する。そして、誘電体である非磁性体層77を平面電極パターン81に積層した後、平面電極パターン82を非磁性体層77上にパターン形成した。そして、平面電極パターン82を非磁性体層78で上から覆っている。
【0021】
図14は、平面電極パターン81を示す平面図であり、図15は、平面電極パターン82を示す平面図である。
図14に示すように、平面電極パターン81は、長方形状の平面体であり、端子81aが左側部に延出されている。この端子81aは、図13の一点鎖線で示すように、導体パターン54,62の内部電極54a,62aに対応する位置に形成されている。
また、平面電極パターン82も、図15に示すように、平面電極パターン81と同形であり、その端子82aが中央部に延出されている。この端子82aは、図13の二点鎖線で示すように、導体パターン53,63の内部電極53a,63aに対応する位置に形成されている。
これにより、平面電極パターン81と平面電極パターン82とが誘電体である非磁性体層77を挟んで対向し、所定容量のコンデンサ8を構成している。そして、コンデンサ8の一方の端子である端子81aが、外部電極4−5を介して第2トランス6の2次側コイル6−2の内部電極62aに接続されている。また、コンデンサ8の他方の端子である端子82aが、グランド端子である外部電極4−4に接続されている。
【0022】
次に、この実施例の方向性結合器が示す作用及び効果について説明する。
図16は、この実施例の方向性結合器の等価回路図である。
図16に示すように、信号Sを入力線路200に伝送させると、上記第1実施例と同様に、主出力信号S1と副出力信号S2とが主出力線路201と副出力線路202に所定の分配比で出力される。
このとき、上記第1実施例と同様に、高周波領域において、高周波成分が微少なインダクタンス成分や容量成分に結合して、方向性結合器1′の外部電極4−1,4−3間のアイソレーションを低下させるおそれがある。
しかし、この実施例では、コンデンサ8を磁性体基板2−2の上側に積層し、両端を外部電極4−4,4−5間に接続して、コンデンサ8を方向性結合器1′に内蔵した構成としたので、コンデンサ8が、内部に発生した微少なインダクタンス成分や容量成分を変化させ、外部電極4−1,4−3間のアイソレーションが改善する。したがって、この実施例においても、主出力信号S1及び副出力信号S2を外部電極4−1,4−3から所望の配分比で出力することができる。
【0023】
発明者等は、この実施例の効果を確認すべく、次のような実験を行った。
図17は、実験の結果を示す線図である。
この実験では、まず、コンデンサ8を有しない方向性結合器1を用いて、周波数約70MHz〜約3GHzの範囲の信号Sを外部電極4−2から入力し、外部電極4−1,4−3から出力される主出力信号S1と副出力信号S2とに基づいて、外部電極4−1,4−3間のアイソレーション値(dB)を測定した。
すると、図17の曲線I0で示すように、約400MHzで最低値−25dBとなり、周波数が高くなるに従って、アイソレーション値が高くなり、悪化することが確認された。
次に、コンデンサ8の容量値を1.0pF,1.5pF,2.0pF,2.5pFにそれぞれ設定した方向性結合器1′を用いて、上記と同様の測定を行った。
すると、図17の曲線I1〜I4で示すように、約400MHzを最低値として、周波数が高くなるに従ってアイソレーション値も高くなるものの、−20dBを超えることはなかった。かかる測定結果から、コンデンサ8を備えたアンテナモジュール1′では、アイソレーションが大幅に改善されていることが確認された。特に、1.5pFのコンデンサ8を備えた方向性結合器1′では、広い周波数範囲に亘って非常に良好なアイソレーション特性を示すことが確認された。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1実施例と同様であるので、その記載は省略する。
【0024】
なお、この発明は、上記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内において種々の変形や変更が可能である。
例えば、上記第2実施例では、上記第1実施例に適用された方向性結合器1の磁性体基板2−2の上側にコンデンサ8を積層形成した構造の方向性結合器1′を例示したが、コンデンサ8の形成箇所はここに限定されるものではない。例えば、コンデンサ8を積層体3内に積層形成した方向性結合器や、コンデンサ8を磁性体基板2−1の下側に積層形成した方向性結合器も、この発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の第1実施例に係る方向性結合器の実装構造を示す斜視図である。
【図2】方向性結合器の分解斜視図である。
【図3】最下層の導体パターンの平面図である。
【図4】非磁性体層の平面図である。
【図5】第2層の導体パターンの平面図である。
【図6】最下層の導体パターンと第2層の導体パターンとの接続構造を示す分解斜視図である。
【図7】第3層の導体パターンの平面図である。
【図8】非磁性体層の平面図である。
【図9】最上層の導体パターンの平面図である。
【図10】第3層の導体パターンと最上層の導体パターンとの接続構造を示す分解斜視図である。
【図11】方向性結合器の電気的構造を示す模式図である。
【図12】図1に示すこの実施例の方向性結合器の実装構造の等価回路図である。
【図13】この発明の第2実施例に係る方向性結合器の分解斜視図である。
【図14】下層の平面電極パターンを示す平面図である。
【図15】上層の平面電極パターンを示す平面図である。
【図16】第2実施例の方向性結合器の等価回路図である。
【図17】実験の結果を示す線図である。
【図18】従来の方向性結合器の一例を示す斜視図である。
【図19】図18の方向性結合器の等価回路図である。
【符号の説明】
【0026】
1,1′…方向性結合器、 2−1,2−2…磁性体基板、 3…積層体、 4−1〜4−6…外部電極、 5…第1トランス、 5−1,6−1…1次側コイル、 6…第2トランス、 8,C…コンデンサ、 51〜54,61〜64…導体パターン、 51a〜54a,61a〜64a…内部電極、 51b〜51h,52b〜52h,53b〜53h,54b〜54h,61b〜61h,62b〜62h,63b〜63h,64b〜64h…端部、 72b〜72h,72j,72b′〜72h′,74b〜74h,74j,74b′〜74h′…スルーホール、 71〜78…非磁性体層、 81,82…平面電極パターン、 81a,82a…端子、 200…入力線路、 201…主出力線路、 202…副出力線路、 S…入力信号、 S1…主出力信号、 S2…副出力信号。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1磁性体基板と、この第1磁性体基板上に積層され且つ内部に第1及び第2トランスが形成された積層体と、この積層体上に設けられた第2磁性体基板とを備え、上記第1トランスの1次側コイルの両方の端子のそれぞれを、信号を入力するための入力信号端子,主出力信号を出力するための主出力信号端子とすると共に、2次側コイルの一方の端子をグランド端子として、他方の端子を上記第2トランスの2次側コイルの一方の端子に接続し、上記第2トランスの1次側コイルの一方の端子を上記第1トランスの上記主出力信号端子に接続すると共に他方の端子を上記グランド端子に接続し、2次側コイルの他方の端子を、副出力信号を出力する副出力信号端子とした方向性結合器の実装構造であって、
上記入力信号端子,主出力信号端子を入力線路,主出力線路にそれぞれ接続すると共に、上記副出力信号端子を副出力線路に接続し、
上記第2トランスの2次側コイルの一方の端子に、接地された終端抵抗を外部から接続すると共に、当該一方の端子に、接地されたコンデンサを上記終端抵抗と並列に外部から接続した、
ことを特徴とする方向性結合器の実装構造。
【請求項2】
第1磁性体基板と、この第1磁性体基板上に積層され且つ内部に第1及び第2トランスが形成された積層体と、この積層体上に設けられた第2磁性体基板とを備え、
上記第1トランスの1次側コイルの両方の端子のそれぞれを、信号を入力するための入力信号端子,主出力信号を出力するための主出力信号端子とすると共に、2次側コイルの一方の端子をグランド端子として、他方の端子を上記第2トランスの2次側コイルの一方の端子に接続し、
上記第2トランスの1次側コイルの一方の端子を上記第1トランスの上記主出力信号端子に接続すると共に他方の端子を上記グランド端子に接続し、2次側コイルの他方の端子を、副出力信号を出力する副出力信号端子とした方向性結合器であって、
上記積層体の内部,上記第1磁性体基板の下側又は第2磁性体基板の上側のいずれかに、一方端が上記第2トランスの2次側コイルの一方の端子に接続され且つ他方端が上記グランド端子に接続されたコンデンサを積層形成した、
ことを特徴とする方向性結合器。
【請求項1】
第1磁性体基板と、この第1磁性体基板上に積層され且つ内部に第1及び第2トランスが形成された積層体と、この積層体上に設けられた第2磁性体基板とを備え、上記第1トランスの1次側コイルの両方の端子のそれぞれを、信号を入力するための入力信号端子,主出力信号を出力するための主出力信号端子とすると共に、2次側コイルの一方の端子をグランド端子として、他方の端子を上記第2トランスの2次側コイルの一方の端子に接続し、上記第2トランスの1次側コイルの一方の端子を上記第1トランスの上記主出力信号端子に接続すると共に他方の端子を上記グランド端子に接続し、2次側コイルの他方の端子を、副出力信号を出力する副出力信号端子とした方向性結合器の実装構造であって、
上記入力信号端子,主出力信号端子を入力線路,主出力線路にそれぞれ接続すると共に、上記副出力信号端子を副出力線路に接続し、
上記第2トランスの2次側コイルの一方の端子に、接地された終端抵抗を外部から接続すると共に、当該一方の端子に、接地されたコンデンサを上記終端抵抗と並列に外部から接続した、
ことを特徴とする方向性結合器の実装構造。
【請求項2】
第1磁性体基板と、この第1磁性体基板上に積層され且つ内部に第1及び第2トランスが形成された積層体と、この積層体上に設けられた第2磁性体基板とを備え、
上記第1トランスの1次側コイルの両方の端子のそれぞれを、信号を入力するための入力信号端子,主出力信号を出力するための主出力信号端子とすると共に、2次側コイルの一方の端子をグランド端子として、他方の端子を上記第2トランスの2次側コイルの一方の端子に接続し、
上記第2トランスの1次側コイルの一方の端子を上記第1トランスの上記主出力信号端子に接続すると共に他方の端子を上記グランド端子に接続し、2次側コイルの他方の端子を、副出力信号を出力する副出力信号端子とした方向性結合器であって、
上記積層体の内部,上記第1磁性体基板の下側又は第2磁性体基板の上側のいずれかに、一方端が上記第2トランスの2次側コイルの一方の端子に接続され且つ他方端が上記グランド端子に接続されたコンデンサを積層形成した、
ことを特徴とする方向性結合器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2008−199196(P2008−199196A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30722(P2007−30722)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
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