説明

映像監視システム

【課題】 当該監視空間の監視映像の中から不審な監視対象を絞り込んで通知する。
【解決手段】 屋内施設内に設置される複数の照明装置11,…のうち、各照明装置11ごと、あるいは適宜選択される照明装置11に供給される電力を取り込んで屋内施設内の監視空間を撮像する撮像カメラ部12と、監視対象を判定する属性情報が設定され、撮像カメラ部で撮像された映像の中に属性情報に相当する映像が存在するとき、その存在映像を画像処理結果の映像として抽出し出力する画像処理部15と、撮像カメラで撮像された映像及び画像処理結果の映像を所定の通信プロトコルに従ってパケット化し、電力線通信ネットワーク3に伝送する電力線通信手段16,17とを有する各撮像・画像処理系を備えた映像監視システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィスや店舗等の屋内施設に設けた照明装置に引き込む電力線を利用して監視カメラを設置し、施設内を移動する人間,小動物等の監視対象を追跡し監視する映像監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィスや店舗等の屋内施設に監視カメラを設置し、この監視カメラで撮影された映像を管理人室あるいは監視センタ等に送信し、屋内施設内に不審が侵入しているか否かを監視している。
【0003】
ところで、監視カメラで撮影された映像をもとに人間等の監視対象を追跡する場合、できる限り非監視領域を減らすために、監視カメラを密に設置することが望まれている。
【0004】
しかし、新たに多数の監視カメラを設置する場合、各監視カメラへ給電する電力線の他、監視カメラの映像を監視センタ等に伝送する伝送手段を新設しなければならず、インフラ整備の為に大幅なコストアップとなる問題がある。
【0005】
また、近年、一般住宅におけるセキュリティを確保するために、既に住宅内に設置されている蛍光灯等の照明装置に電力線が引き込まれているので、当該照明装置に管球ソケット等を取り付け、当該管球ソケット等に監視カメラを装着し、この監視カメラで撮影された映像を電力線を介して伝送する技術が提案されている(特許文献1)。
【0006】
この特許文献1による技術は、既存の照明装置に使用されている電力線を利用することから、監視カメラへの電力供給用の配線工事が不要となり、また、カメラ設置用のスペースを確保する必要がなくなることから、監視カメラを容易、かつ、低コストで設置できる。
【特許文献1】特開2004−228967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1による技術では、次のような問題が指摘されている。
【0008】
(イ) 一般住宅向けの監視装置であることから、狭い室内の監視に限られ、比較的広域の監視空間を持つ屋内施設内を移動する監視対象を追従しながら監視する構成となっていない。
【0009】
(ロ) 広域の監視空間を持つ屋内施設内では、密に監視カメラを設置する必要があるが、このとき、各照明装置ごとに監視カメラを設置した場合、監視カメラの設置台数が多くなり、コストアップとなる問題がある。
【0010】
(ハ) 多数の監視カメラで撮像された映像を同時に管理人室あるいは監視センタ等に送信し表示した場合、一人の監視員によって監視することが難しく、常時複数の監視員を常駐させる必要がある。
【0011】
(ニ) また、ある監視カメラで撮影された映像を画像処理しつつ、監視対象の移動軌跡から特定の監視カメラを選択制御しつつ監視対象を追従監視する機能を備えていない。従って、広域監視における監視能の低下は避けられない。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、比較的広い監視空間であっても、当該監視空間の監視映像の中から不審な監視対象を絞り込んで通知可能とする映像監視システムを提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明の目的は、比較的広い監視空間であっても、少ない台数の監視カメラを効率的に配置し、移動する監視対象を追跡監視可能とする映像監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、屋内施設内の監視空間を移動する監視対象を監視する本発明の監視映像システムは、前記屋内施設内に設置される複数の照明装置のうち、各照明装置ごと、あるいは適宜選択される照明装置に供給される電力を取り込んで前記屋内施設内の監視空間を撮像する撮像手段と、前記監視対象を判定する属性情報が設定され、前記撮像手段で撮像された映像の中に前記属性情報に相当する映像が存在するとき、その存在映像を画像処理結果の映像として抽出し出力する画像処理手段と、前記撮像手段で撮像された映像及び前記画像処理結果の映像を所定の通信プロトコルに従ってパケット化し、電力線通信ネットワークに伝送する電力線通信手段とを有する各撮像・画像処理系とを備えた構成である。
【0015】
また、本発明は、前述した各撮像・画像処理系の他に新たに、電力線通信ネットワークに接続され、前記各撮像・画像処理系から伝送されてくる前記画像処理結果の映像を受けたときにイベント発生と判断し、前記撮像手段ごとに当該画像処理結果の映像を映像蓄積系に蓄積していく情報管理系を設けた構成であってもよい。
【0016】
さらに、本発明は、電力線通信ネットワークまたは情報管理系に接続され、常時は各撮像・画像処理系から伝送されてくる撮像手段で撮像された映像を表示し、情報管理系からイベント発生の判断のもとに表示指示を受けたとき、前記画像処理結果の映像を表示する表示系を設けた構成であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、比較的広い監視空間であっても、当該監視空間の監視映像の中から不審な監視対象を絞り込んで迅速に監視部署に通知することができる映像監視システムを提供できる。
【0018】
また、本発明は、比較的広い監視空間であっても、少ない台数の監視カメラを効率的に配置し、移動する監視対象を追跡監視できる映像監視システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る映像監視システムの一実施の形態を示す構成図である。
この映像監視システムは、複数の撮像・画像処理系1,…と、各撮像・画像処理系1,…で撮像された映像及び画像処理結果である注目する監視対象の映像を収集し管理する映像管理制御系2とが電力線をLANとする電力線通信ネットワーク3によって接続されている。
【0020】
各撮像・画像処理系1,…は、蛍光灯その他の照明灯等の照明装置11、オフィスや店舗等の屋内施設内の監視空間を撮影する撮像カメラ部12、電力線通信ネットワーク3から電力を引き込んで照明装置11,撮像カメラ部12その他必要な構成要素に電力を給電する電源ユニット13、エンコーダ14、画像処理部15、通信ユニット16、電力線通信モデム17等で構成され、さらに映像管理制御系2から送信されてくるパン・チルト・ズーム制御指令のもとに、撮像カメラ部12をパン・チルト・ズーム制御を行うPTZ制御部18が設けられている。
【0021】
照明装置11は、通常、オフィスや店舗等の屋内施設に格子状に配置されている。そこで、これら照明装置11,…ごとに、あるいは多数の照明装置11,…の中から所要とする照明装置11,…を選択し、その選択された照明装置11に引き込んでいる引き込み電力線19を利用して撮像カメラ部12を接続する。
【0022】
各撮像カメラ部12は、例えばCMOS(Complementary Metal−Oxide Semiconductor)やCCD(Charge Coupled Device)撮像素子を備えた撮像カメラであって、オフィスや店舗等の屋内施設内の監視空間の監視映像を撮像する。
【0023】
エンコーダ14は、撮影カメラ部12で撮影された映像がNTSC等のアナログ映像であるとき、その映像をMPEG2,MPEG4,MotionJPEGなどのデジタル映像に変換する機能を持っている。従って、撮影カメラ部12が監視空間内をデジタル映像として撮影する場合にはエンコーダ14は不要となる。
【0024】
画像処理部15は、撮影カメラ部12で撮影されたアナログ映像またはデジタル映像の中から注目する監視対象を抽出処理するものであって、具体的には、監視対象をおおよそ認識できる輪郭を表す粗なる属性情報,例えば人間の顔,身体等に関するパターン情報または定義情報や特定の人物の顔、容姿等の特徴パターン情報または定義情報が設定され、撮影カメラ部12で撮影された映像が属性情報に該当するとき、当該映像を画像処理結果の映像として抽出し出力する機能を有する。この属性情報には、人間だけでなく、例えば小動物を含めることができる。
【0025】
通信ユニット16は、エンコーダ14を介し、あるいはエンコーダ14を介することなく撮像カメラ部12から得られるデジタル映像や画像処理部15の画像処理結果の映像を、カメラIDとともにTCP/IPの通信プロトコルに従ってパケット化し、電力線通信モデル17で変調し、電力線通信ネットワーク3に伝送する。
【0026】
なお、画像処理部15としては、撮影カメラ部12のアナログ映像の中から監視対象を抽出処理するが、例えばエンコーダ14で変換されたデジタル映像または撮影カメラ部12から直接得られるデジタル映像から画像処理してもよく、あるいは各撮像・画像処理系1内に設けずに、電力線通信ネットワーク3に接続し、当該電力線通信ネットワーク3を介して伝送されてくる映像の中から監視対象を抽出処理する構成でもよい。
【0027】
PTZ制御部18は、映像管理制御系2の後記する情報管理系から送られてくるパン・チルト・ズーム等の制御指令(追跡指令)に基づき、撮像カメラ部12に監視対象を追跡するパン・チルト・ズーム等の制御を実施する機能を有する。
【0028】
映像管理制御系2は、情報管理系21、映像蓄積系22及び表示系23で構成される。なお、情報管理系21、映像蓄積系22及び表示系23は、それぞれ電力線通信ネットワーク3に接続され、図示されていないが内部的には映像を復調する電力線通信モデルが内蔵されている。
【0029】
情報管理系21は、複数の撮像・画像処理系1,…からカメラIDを含む画像処理結果の映像を受けたとき、イベント発生と判断し、カメラIDごとにイベント発生時刻及び画像処理結果の映像を順次時系列的に映像蓄積系22に蓄積するとともに、表示系23に表示指示を送出し、イベント発生対象となった画像処理結果の映像を表示させる。
【0030】
また、情報管理系21は、前述する映像蓄積機能だけでなく、情報加工機能及びカメラ制御機能を備えている。
【0031】
情報管理系21の情報加工機能は、画像処理結果の映像から真に不審な監視対象を確定できる映像を抽出する処理を行う。
【0032】
すなわち、情報加工機能は、具体的には記憶装置24が設けられ、この記憶装置24には、例えば監視対象の異常行動パターン,監視対象の監視空間内の進入禁止箇所(部屋を含む)への接近、監視空間内の非接近対象物への接近等のピックアップ条件情報の他、監視員より随時入力される不審確定情報(特定色の服装,特定髪型,特定眼鏡データ、特定部位形状、移動方向等の何れか1種類以上)が設定され、前述したイベント発生と判断されたとき、画像処理結果の映像がピックアップ条件情報に属するか否か、属すると判断されたときに画像処理結果の映像が随時入力された不審確定情報に該当するか否かを判断し、真に確定できる監視対象の画像処理結果の映像を抽出し、カメラIDごとに記憶装置24に記憶するとともに、表示系23に対して当該記憶装置24に記憶された監視対象の画像処理結果の映像を表示する。なお、前記カメラ制御機能については後記する。
【0033】
情報管理系21のカメラ制御機能は、撮影カメラ部12としてPTZカメラを設置した場合、例えば視対象である移動する人間が常にPTZカメラの監視視野中心部に位置するようなパン・チルト・ズーム等の制御指令(追跡指令)を送出し、前記移動する人間がPTZカメラの監視視野から外れるときに前記監視対象の移動方向に対応する撮像・画像処理系1に対してパン・チルト・ズーム制御指令を伝送する機能を有する。
【0034】
前記映像蓄積系22は、ハードディスクの記憶媒体が設けられ、例えば図2に示すような映像管理テーブル22a及び画像処理結果蓄積領域22bが設けられている。映像管理テーブル22aには、カメラID、カメラ設置情報(固定式カメラ設置時のカメラ設置位置,カメラ傾斜角度,カメラ視野方向等)、イベント発生時刻、蓄積領域アドレス等の項目が設けられ、イベント発生毎にカメラIDに対応付けてイベント発生時刻、蓄積領域アドレスを書き込む。画像処理結果蓄積領域22bにはカメラIDごとに画像処理結果の映像を時系列的に蓄積する。
【0035】
前記表示系23は、複数の撮像・画像処理系1,…から送られてくるカメラIDを含むデジタル映像のうち、個別のカメラIDごと、あるいは複数のカメラIDごとにエリア分けされた複数の表示領域にデジタル映像を表示する一方、イベント発生と判断されたときに情報管理系21から送られてくる表示指令に従い、撮像・画像処理系1から送られてくるイベント発生対象となった画像処理結果の映像を表示する。
【0036】
なお、情報管理系21、映像蓄積系22及び表示系23は、電力線通信ネットワーク3にそれぞれ個別に接続されているが、例えば情報管理系21をサーバ本体とし、このサーバ本体となる情報管理系21に接続する構成であってもよい。
【0037】
次に、撮像カメラ部12,…の設置方法について説明する。
一般に、オフィスや店舗等の屋内施設では、蛍光灯等の照明装置11が格子状にくまなく設置されていることから、格子状に配置される照明装置11ごとに対応して撮像カメラ部12を設置してもよいが、例えば少ない台数の撮像カメラ部12を用いて、できる限り非監視領域を減らし、かつ、非監視領域が存在する場合でも隣接する撮像カメラ部12どうしで十分に監視視野範囲をカバーできるように、適宜照明装置11を選択し、かつ、選択された照明装置11に引き込まれている引き込み電力線19の電力を有効に利用し、複数の撮像カメラ部12を効率的に設置すれば、広域な映像監視システムを実現する。これにより、監視対象を広域に追跡することが可能となる。
【0038】
具体的には図3に示すように幾つかのカメラ設置方法が挙げられるが、設置コスト及び監視能等の関係から適宜選択するものとする。
【0039】
(1) 各撮像カメラ部12,…の監視視野が、施設内の監視空間にモレなく、ダブりなく設置する方法(図3(a)参照)。
【0040】
(2) 各撮像カメラ部12,…の監視視野が、施設内の監視空間にモレあり、ダブりなく設置する方法(図3(b)参照)。
【0041】
(3) 各撮像カメラ部12,…の監視視野が、施設内の監視空間にモレなく、ダブり有りの状態で設置する方法(図3(c)参照)。
【0042】
(4) 各撮像カメラ部12,…の監視視野が、施設内の監視空間にモレあり、ダブり有りの状態で設置する方法(図3(d)参照)。
【0043】
図3(a)〜(d)に示す設置方法は、原則固定設置式となるが、カメラ設置時に撮像カメラ部12を手動操作で適宜な傾斜角度及び視野方向に設定できる。
【0044】
(5) 撮像カメラ部12,…としてPTZカメラを用いた場合、PTZ制御部18からのPTZ制御のもとに監視視野を自由に設定可能な設置方法である。
【0045】
ところで、前記(1)の設置方法は、撮像カメラ部12を密に設置するので、監視空間に遮蔽物がない限り、監視空間をくまなく監視することが可能である。しかし、撮像カメラ部12どうしの間にダブりがないため、監視対象が移動している場合には厳密に監視対象の位置情報を求めることが難しい。但し、映像管理テーブル22aにカメラ設置情報が設定されていれば、設置当初のカメラ設置情報と監視対象の映っている映像画面位置(画素位置)とから動いている監視対象のおおよその位置を算出できる。
【0046】
前記(2)の設置方法は、選択された照明装置11,…に対応させて撮像カメラ部12を設置する方法である。この設置方法は、非監視領域が多く存在するが、ダブりがないために、撮像カメラ部12の台数が少なくなってコスト的に有利となるが、前述同様に厳密に人間の位置情報を求めることが難しい。但し、設置当初のカメラ設置情報と監視対象の映っている映像画面位置(画素位置)とからおおよその位置を算出できる
前記(3)及び前記(4)の設置方法は、相互の撮像カメラ部12どうしにダブりがあるため、複数のカメラの視差情報をもとに移動する監視対象の位置情報を容易に求めることができる。
【0047】
前記(5)の設置方法は、情報管理系21からパン・チルト・ズーム制御指令を送信し、PTZ制御部18を介してPTZカメラの監視視野を自由に設定できる。これにより、例えば通常は固定視点でなるべく監視視野を広くするようなカメラ画角で監視空間を監視し、監視対象があるPTZカメラの監視視野に入って来たとき、その周辺のPTZカメラをPTZ制御すれば、隣接するPTZカメラで監視対象の動きをとらえることが可能である。つまり、複数のPTZカメラを動的に連携させつつ、監視視野をダブらせつつ監視対象を捉え、それらの視差情報からより詳細に監視対象の情報を得ることができる。
【0048】
なお、PTZカメラを前記(1)または(2)の設置方法で設置し、あるPTZカメラが監視対象を捉えた段階で前記(5)の状態へ遷移し、監視対象を追跡する構成としてもよい。
【0049】
次に、以上のように構成された映像監視システムの作用について説明する。
各撮像カメラ部12は、それぞれ対応する監視空間を撮影したデジタル映像を通信ユニット16に送出する。通信ユニット16は、カメラIDとともにデジタル映像をTCP/IPの通信プロトコルに従ってパケット化し、電力線通信モデル17で変調し、電力線通信ネットワーク3に伝送する。
【0050】
映像管理制御系2の表示系23は、各複数の撮像・画像処理系1,…から送られてくる映像をカメラIDのもとに選択的、あるいは複数の映像をエリア分けして表示する。
【0051】
このとき、画像処理部15は、撮像カメラ部12で撮像された映像を取り込み、監視対象を判定する粗なる属性情報,例えば監視対象が人間である場合、前述したように人間のおおよそ顔,身体等に関するパターン情報や特定の人間のおおよそ顔、容姿等の特徴パターン情報等を参照し、撮影された映像が属性情報に該当するか否かを判断し、該当する場合には当該映像を画像処理結果の映像として抽出し、TCP/IPの通信プロトコルに従ってパケット化し、電力線通信モデル17で変調し、電力線通信ネットワーク3に伝送する。
【0052】
ここで、情報管理系21は、カメラIDを含む画像処理結果の映像を受けたとき、イベント発生と判断し、カメラIDごとに映像管理テーブル22aにイベント発生時刻及び蓄積領域アドレスを書き込むとともに、映像蓄積系22の画像処理結果蓄積領域22bの該当する蓄積領域アドレスに画像処理結果の映像を順次蓄積していく。また、情報管理系21は、表示系23に表示指令を送出し、画像処理結果の映像を表示させる。
【0053】
その結果、表示系23に表示された画像処理結果の映像から特定の不審物ではないが、監視空間内に監視対象を入ったことを確認できる。また、画像処理結果の映像が映像蓄積系22に蓄積されているので、必要なときに日時を指定し、時系列的な画像処理結果の映像を読み出して表示系23に表示すれば、監視対象自身の容姿や監視対象の行動を確認できる。
【0054】
また、情報管理系21は、人間の異常行動パターン,進入禁止箇所(部屋を含む)、非接近対象物等に関する詳細なピックアップ条件情報の他、随時入力される不審確定情報(特定色の服装,特定髪型,特定眼鏡データ、移動方向等の何れか1種類以上)が設定されているので、イベント発生と判断したとき、該当カメラIDの画像処理結果の映像を表示系23に表示するとともに、画像処理結果の映像がピックアップ条件情報に該当するか否かを判断し、該当すると判断したとき、その画像処理結果の映像のみを抽出した後、当該抽出した映像が不審確定情報に合致するか否かを判断する。そして、抽出映像(画像処理結果の映像)が不審確定情報であるとき、当該抽出映像をカメラIDごとに記憶装置24に順次記憶するとともに、表示系23に継続表示し、抽出映像が不審確定情報に該当しないとき、既に表示系23に表示されている画像処理結果の映像を消去し、各複数の撮像・画像処理系1,…から送られてくる映像をカメラIDのもとに選択的、あるいは複数の映像をエリア分けして表示する。
【0055】
これにより、監視員は、不審となる抽出映像を読み出して表示系23に表示すれば、不審となる監視対象を確実に特定でき、必要な防護処置を講じることができる。
【0056】
次に、撮像カメラ部12にPTZカメラを用いた場合、相互の撮像カメラ部12の連携動作例について、図4を参照して説明する。
【0057】
各PTZカメラとしては、少ない台数を用い、できる限り監視領域を広くとり、かつ、監視視野のダブりを最小限に抑えることを考慮し、適宜に照明装置11を選択し、それら選択された照明装置11に引き込む電力引き込み電力線19に接続し、対応する監視空間を撮像するように設置する。
【0058】
このような状態において、画像処理部15は、PTZカメラから監視空間内に入ってくる監視対象となる人間の映像を受けたとき、その映像の中から属性情報に該当する監視対象の映像を抽出し、カメラIDとともに画像処理結果の映像を通信ユニット12及び電力線通信モデル17を介して電力線通信ネットワーク3に伝送する。
【0059】
このとき、情報管理系21は、例えば図4に示す処理手順に従って処理を実行する。
情報管理系21は、画像処理結果の映像を受信したとき、イベント発生と判断し(S1)、前述したように当該イベントに関する情報を映像管理テーブル22aに書き込んだ後、画像処理結果の映像を映像蓄積系22の画像処理結果蓄積領域22bに蓄積し(S2)、さらに表示指令を出して表示系23に画像処理結果の映像を表示させる(S3)。
【0060】
しかる後、予め設定されるフラグ等に基づき、この段階で監視対象を追跡するか否かを判断し(S4)、追跡しないと判断されたとき、画像処理結果の映像がピックアップ条件情報及び不審確定情報に該当するか否かを判断し(S5,S6)、何れにも該当すると判断されたとき、監視対象を追跡すると判断する。
【0061】
情報管理系21は、ステップS4においてフラグから追跡すると判断されたとき、あるいはステップS6にて最終的に不審確定情報に該当すると判断されたとき、PTZカメラの監視視野中心部で監視対象を追跡するようなPTZ制御指令を電力線通信ネットワーク3に送出する(S7)。
【0062】
一方、カメラIDに対応する撮像・画像処理系1は、図5に示すような処理手順に従って処理する。すなわち、撮像・画像処理系1のPTZ制御部18は、追跡指令有りかを判断し(S11)、追跡指令有りと判断されたときには監視視野中心部に監視対象が位置するようにPTZカメラに対してパン・チルト・ズーム制御を実施する(S12)。監視対象が監視視野中心部に有るか否かは例えば撮像カメラ部12や画像処理部15の出力映像、あるいは画像処理部15の出力指令等に基づいて判断する。
【0063】
このとき、画像処理部15は、PTZカメラから得られる映像から画像処理結果の映像を抽出し送信するとともに(S13)、監視対象がPTZカメラの監視視野から外れたか否かを判断し(S14)、監視対象が外れない限り追跡指示をPTZ制御部18に与える。
【0064】
なお、監視対象がPTZカメラの監視視野から外れた場合には、PTZカメラで撮影された映像を送信する(S15)。
【0065】
一方、情報管理系21は、該当PTZカメラに対応する撮像・画像処理系1から監視対象の監視視野外れ情報を受けるか、あるいは表示系23に表示される画像処理結果の映像及びその移動方向からPTZカメラの監視視野から監視対象が外れそうなとき、監視員から移動方向周辺に設置される撮像・画像処理系1への切替え指示を受けたとき(S8)、移動方向周辺に設置される撮像・画像処理系1に対してTZカメラの監視視野中心部で監視対象を追跡するPTZ制御指令を電力線通信ネットワーク3に送出し(S9)、ステップS10を経てステップS8に戻り、同様の処理を繰り返し実行する。
【0066】
該当撮像・画像処理系1は、図5に示す処理を実行する。
【0067】
従って、以上のような実施の形態によれば、各照明装置11ごと、あるいは適宜選択される照明装置11に供給される電力を取り込む電力線19に撮像カメラ部12を接続するとともに、撮像カメラ部12出力側に画像処理部15を設け、当該画像処理部15では、撮像カメラ部12で撮像された映像と予め定める監視対象を大まかに判定する属性情報とを照合し、撮像された映像が属性情報に該当するとき、画像処理結果の映像として情報管理系21に伝送するので、監視空間の監視映像の中から不審な監視対象を絞り込んで確実に情報管理系21に通知できる。
【0068】
この情報管理系21は、受け取った画像処理結果の映像を映像蓄積系22に時系列的に蓄積するので、必要な時に監視空間に入った不審な監視対象の映像を読み出して確認することができ、また受け取った画像処理結果の映像を表示系23に表示すれば、速やかに監視空間に入った不審な監視対象の状態を注意深く監視することが可能である。
【0069】
さらに、情報管理系21は、画像処理結果の映像がピックアップ条件情報に属するか否かを判断し、属するときに不審確定情報に該当する否かを判断するので、真に不審な監視対象を確定でき、しかもその際に画像処理結果の映像を表示系23に表示しているので、監視員は不審な監視対象を確実、かつ、視覚的に認識できる。
【0070】
さらに、屋内施設内にPTZカメラを設置した場合、情報管理系21は、画像処理結果の映像からイベント発生と判断し、当該PTZカメラに対してパン・チルト・ズーム制御指令を伝送するので、移動する監視対象を容易に追従することができ、監視対象が該当PTZカメラの監視視野から外れたとき、監視対象の移動方向のPTZカメラに対してパン・チルト・ズーム制御指令を伝送するので、比較的広い監視空間であっても、少ない台数の監視カメラを効率的に配置し、移動する監視対象を追跡監視することができる。
【0071】
(その他の実施の形態)
(1) 画像処理部15は、監視対象のおおよその輪郭形状等のパターン情報などを属性情報として設定し、撮像映像と比較するようにしたが、例えば属性情報として、移動する監視対象を検出するために背景差分法やフレーム間差分法を利用してもよい。この場合には、今回映像が背景(前回)映像と異なることを条件情報を属性情報とするものである。
【0072】
(2) PTZカメラを含む複数の撮像カメラ部12で同時に監視対象を撮像され、情報管理系21に伝送される場合があるが、このような場合には予め複数の撮像・画像処理系1,…に優先順位を設定しておき、その優先順位を従って画像処理結果の映像を蓄積・表示し、またPTZ制御を実施する。
【0073】
その他、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る映像監視システムの一実施の形態を変電所に適用した構成図。
【図2】図1に示す映像蓄積系などに設けられる映像管理テーブルのデータ配列例を示す図。
【図3】複数の撮像カメラ部の設置方法を説明する図。
【図4】図1に示す情報管理系の処理手順の一例を説明する図。
【図5】図1に示す撮像・画像処理系の処理手順の一例を説明する図。
【符号の説明】
【0075】
1…撮像・画像処理系、2…映像管理制御系、3…電力線通信ネットワーク、11…照明装置、12…撮像カメラ部(PTZカメラを含む)、13…電源ユニット、14…エンコーダ、15…画像処理部、16…通信ユニット、17…電力線通信モデム、18…PTZ制御部、21…情報管理系、22…映像蓄積系、23…表示系、24…記憶装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内施設内の監視空間を移動する監視対象を監視する監視映像システムにおいて、
前記屋内施設内に設置される複数の照明装置のうち、各照明装置ごと、あるいは適宜選択される照明装置に供給される電力を取り込んで前記屋内施設内の監視空間を撮像する撮像手段、前記監視対象を判定する属性情報が設定され、前記撮像手段で撮像された映像の中に前記属性情報に相当する映像が存在するとき、その存在映像を画像処理結果の映像として抽出し出力する画像処理手段と、前記撮像手段で撮像された映像及び前記画像処理結果の映像を所定の通信プロトコルに従ってパケット化し、電力線通信ネットワークに伝送する電力線通信手段とを有する各撮像・画像処理系を備えたことを特徴とする映像監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の映像監視システムにおいて、
前記電力線通信ネットワークに接続され、前記各撮像・画像処理系から伝送されてくる前記画像処理結果の映像を受けたときにイベント発生と判断し、前記撮像手段ごとに当該画像処理結果の映像を映像蓄積系に蓄積していく情報管理系を設けたことを特徴とする映像監視システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の映像監視システムにおいて、
前記電力線通信ネットワークまたは前記情報管理系に接続され、常時は前記各撮像・画像処理系から伝送されてくる前記撮像手段で撮像された映像を表示し、前記情報管理系から前記イベント発生の判断のもとに表示指示を受けたとき、前記画像処理結果の映像を表示する表示系を設けたことを特徴とする映像監視システム。
【請求項4】
請求項1に記載の映像監視システムにおいて、
前記電力線通信ネットワークに接続され、前記監視対象に関するピックアップ条件情報が設定され、前記各撮像・画像処理系から伝送されてくる前記画像処理結果の映像を受けてイベント発生と判断したとき、当該画像処理結果の映像が前記ピックアップ条件情報に属するか否かを判断し、当該画像処理結果の映像がピックアップ条件情報に属するとき、当該画像処理結果の映像が不審確定情報に該当する否かを判断し、該当すると判断されたときに当該画像処理結果の映像を記憶する情報管理系を設けたことを特徴とする映像監視システム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4に記載の映像監視システムにおいて、
前記画像処理手段は、前記電力線通信ネットワークに接続され、前記撮像手段で撮像された映像の中に前記属性情報に相当する映像が存在するとき、その存在映像を画像処理結果の映像として抽出しパケット化して前記電力線通信ネットワークに伝送することを特徴とする映像監視システム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4に記載の映像監視システムにおいて、
前記属性情報は、監視対象をおおよそ判定するに相当する輪郭を表す情報であることを特徴とする映像監視システム。
【請求項7】
請求項4に記載の映像監視システムにおいて、
前記ピックアップ条件情報は、前記画像処理結果の映像に対する異常行動パターン,侵入禁止箇所(部屋を含む)への侵入、非接近対象物の接近に関する情報等であることを特徴とする映像監視システム。
【請求項8】
請求項4に記載の映像監視システムにおいて、
前記不審確定情報は、特定色の服装,特定髪型,特定眼鏡データ、特定部位の形状、移動方向等の何れか1種類以上の情報であることを特徴とする映像監視システム。
【請求項9】
請求項1ないし請求項4に記載の映像監視システムにおいて、
前記各撮像手段がPTZカメラである場合、
前記情報管理系は、前記イベント発生と判断されたとき、当該PTZカメラの監視視野中央部に前記画像処理結果の映像が位置するように該当撮像・画像処理系に対してパン・チルト・ズーム制御指令を伝送し、また、前記画像処理結果の映像が当該PTZカメラの監視視野から外れるときに前記監視対象の移動方向に対応する撮像・画像処理系に対してパン・チルト・ズーム制御指令を伝送する手段を設け、
該当する撮像・画像処理系は、前記パン・チルト・ズーム制御指令を受けたとき、前記PTZカメラをパン・チルト・ズーム制御するPTZ制御手段を設けたことを特徴とする映像監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−60261(P2009−60261A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224417(P2007−224417)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】