説明

映像表示装置

【課題】同一視野内に外界像と表示素子により表示される表示画像を重ね合わせて観察する映像表示装置において表示画像の見易さを簡単な構成で確保することが可能な映像表示装置を提供すること
【解決手段】外界像20bと表示画像20cを同一視野20内で観察可能な映像表示装置1Aは、透過型の表示素子3Aと、液晶7を画素ごとに駆動することによって外界から表示素子に至る光束の透過量を調節するように構成され、表示素子に積層された液晶シャッター2Aと、表示素子3Aが表示画像20cを表示するときに表示画像20cに対応する部分の液晶シャッターの光束の透過量が減少するように表示素子と調光素子の駆動を制御するコントローラ回路22と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
同一視野内に外界像と表示素子により表示される表示画像を重ね合わせて観察する映像表示装置においては表示画像の見易さを確保する必要がある。
【0003】
特許文献1は、透過型の表示素子の背面に透過散乱型の液晶表示素子を積層した表示装置を開示しており、液晶表示素子を動作させた領域では外界像光は散乱して白色化するため、それに対応する領域では表示素子に表示される画像は見易くなる。
【0004】
特許文献2は、画素構造を有する液晶シャッターに結像された外界像と、それと共役の位置に配置された表示素子に表示された画像をハーフミラーで合成して接眼光学系により観察する映像表示装置を開示している。表示画像に対応した画素に入射する外界からの光束を液晶シャッターで遮光することにより表示画像の透けを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−122590号公報
【特許文献2】特許第2840692号公報明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、散乱光が表示素子に漏れるため、外界像光の影響を受けずに映像を表示するのは困難である。特許文献2では、液晶シャッターと光学的に共役な位置に表示素子を配置しているため、位置合わせの困難性から表示画像に対応した画素に入射する外界からの光束を液晶シャッターで十分に遮光することは困難になる。即ち、表示素子の表示面上に表示された画像とそれに対応してシャッター面上に形成された画像を一致させることが困難となり、表示画像の見易さは不十分である。また、ハーフミラーを使用して合成しているので明るさが半分になるという問題もあった。
【0007】
そこで、本発明は、同一視野内に外界像と表示素子により表示される表示画像を重ね合わせて観察する映像表示装置において表示画像の見易さを簡単な構成で確保することが可能な映像表示装置を提供することを例示的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の映像表示装置は、外界像と表示画像を同一視野内で表示する映像表示装置であって、前記表示画像を表示する透過型の表示素子と、前記表示素子に積層され、外界から前記表示素子に至る光束の透過量を前記表示素子の画素ごとに調節する調光素子と、前記表示素子が前記表示画像を表示するときに前記表示画像に対応する部分の前記調光素子の光束の透過量が減少するように前記表示素子と前記調光素子の駆動を制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、同一視野内に外界像と表示素子により表示される表示画像を重ね合わせて観察する映像表示装置において表示画像の見易さを簡単な構成で確保することが可能な映像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の映像表示装置の部分断面図である。(実施例1)
【図2】図1に示す映像表示装置に表示された画像を示す図である(実施例1)
【図3】図1に示す映像表示装置の変形例の部分断面図である。(実施例1)
【図4】図1に示す表示素子の画素領域の部分平面図である。(実施例1)
【図5】図1に示す映像表示装置の回路構成を示すブロック図である。(実施例1)
【図6】本発明の映像表示装置の光路図である。(実施例2)
【図7】図6に示す虚像を正立像として観察する画像反転手段の斜視図と部分透過側面図である。(実施例2)
【図8】図6に示す液晶シャッターと表示素子の画素の位置関係の模式図である。(実施例2)
【図9】本発明の映像表示装置の光路図である。(実施例3)
【図10】本発明の映像表示装置の部分断面図である。(実施例4)
【図11】本発明の映像表示装置の部分断面図である。(実施例5)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態を、添付図面を参照して説明する。本発明の映像表示装置は、同一視野内に外界の光景(外界像)と表示素子により表示された表示画像を重ね合わせて観察する映像表示装置である。例えば、映像表示装置は、非表示状態では透明なディスプレイに映像を表示する表示装置である。あるいは、映像表示装置は、自動車のフロントガラスに速度情報等を投影表示するヘッドアップディスプレイ、コンピュータグラフィック等を外界像に重ねて観察する光学シースルーヘッドマウントディスプレイなどに適用可能である。
【実施例1】
【0012】
以下、図1〜6を参照して、実施例1の映像表示装置1Aについて説明する。図1(a)は、実施例1の映像表示装置1Aの部分断面図であり、図1(b)はその動作を説明する部分断面図である。映像表示装置1Aは外界等からの光の透過、遮光制御を行う液晶シャッター2Aと、それに積層(物理的に隣接)する形で設けられた表示素子3Aを有する。
【0013】
なお、本実施例では、液晶シャッター2Aと表示素子3Aの一部の構成要素が共通に使用されて両者は一体となっているが、このような構造も「積層」と呼んでいる。従って、液晶シャッター2Aと表示素子3Aが分離されていなくてもよい。もちろん、後述する図3に示すように両者は分離されていてもよい。
【0014】
液晶シャッター2Aは、光束の透過、遮光を行う為に一般に用いられている方式の液晶シャッターであるが、完全に遮光しなくてもよい。即ち、外界から表示素子3Aに至る光束の透過量を調節するように構成された調光素子であれば足り、調節は減光や遮光を含む。液晶シャッター2Aは、液晶7と、液晶7の偏光方向を変更する電圧を印加可能で液晶7を挟むように画素ごとに設けられた透明電極(第2の透明電極)6、8を有する。また、液晶シャッター2Aは、それらを挟む形で設けられた透明な一対のガラス部材(第2のガラス部材)5、9及び偏光板4、10を更に有する。尚、言うまでも無く、透明電極6、8の何れか一方は共通電極として一体化し、前述した画素構造になっていなくてもよい。
【0015】
液晶シャッター2Aは、透明電極6、8に電圧を印加しないOFF動作状態で光を透過する開口状態となり、電圧を印加するON動作状態で遮光するように、液晶7の特性及び偏光板4、10は構成されている。
【0016】
表示素子3Aは、略透明な発光層13を挟むように、透明な絶縁層11、15を介して画素構造を有する透明電極(第1の透明電極)12、14を対向配置している。透明電極12、14に電圧を印加することによって発光層13を発光させるEL(エレクトロ・ルミネッセンス)を用いている。16は透明性を有するガラス部材である。このように表示素子3Aは透過型の表示素子である。透明電極12、14は一対の第1のガラス部材9、16に挟まれているが、図1では、一対の第1のガラス部材9、16の一つであるガラス部材9は一対の第2のガラス部材の一つを兼ねている。これにより、部品点数を削減して光軸方向に小型化を図ることができる。
【0017】
なお、本実施例では自発光型の表示素子を使用しているが、本発明は外光によって発光する表示素子も使用可能である。
【0018】
液晶シャッター2Aの透明電極6a、8a及びそれに対応する位置に設けられた表示素子3Aの透明電極12a、14aに電圧を印加しないOFF状態では、液晶シャッター2Aは開口状態、表示素子3Aは透明状態となっている。従って、外界光Laはそのまま映像表示装置1Aを透過する。
【0019】
液晶シャッター2Aの透明電極6b、8b及び6c、8cに電圧を印加したON状態では、液晶シャッター2Aは閉じた状態になり外界光Lb、Lcは遮光される。この時、これに対応する位置にある表示素子3Aの透明電極12b、14bに電圧を印加した場合は、12b、14bに対応する領域の発光層13は発光し、表示光Ldを射出する。
【0020】
液晶シャッター2Aを閉じた状態で、表示素子3Aの透明電極12c、14cの電圧を印加しない場合は、透明電極12c、14cの領域は透明な状態を保っているが、シャッター2が遮光された状態なので、外界光Lcは遮光され外界像は見えない。
【0021】
液晶シャッター2Aは表示素子3Aに積層されている。即ち、特許文献2のように、光学的に共役な位置に配置されていない。このため、表示画像に対応した画素に入射する外界からの光束を液晶シャッターで遮光する精度が向上し、表示画像の見易さは十分となる(例えば、表示画像の透けを十分に防止することもできる)。また、積層構造により、特許文献2のようなハーフミラーによる画像合成手段が不要となるので、光量不足の問題を解消することができる。
【0022】
図2は、液晶シャッター2Aと表示素子3Aに上記の動作をさせた場合に映像表示装置1Aの視野領域20の状態を示したものである。液晶シャッター2A及び表示素子3Aの透明電極に電圧を印加しない円柱の領域20aでは、略透明となり、外界像20bを含む外界像を直接見ることができる。外界像20bは矢印形状、水平線、その他の背景を含む。
【0023】
表示素子3Aの20cで示す領域の透明電極に電圧を印加すると、表示素子20cに対応する領域の発光層が発光し、円柱画像20cを表示画像として見ることができる。この時、円柱画像20cの領域に対応する液晶シャッター2Aの領域を閉じた状態にすれば、外界光を遮光できるので、外界像光の影響の無い状態で画像を表示することができる。即ち、発光領域の画像の輝度が低い場合や、発光しない黒色の状態をも表示することができる。
【0024】
ここで、表示素子3Aを透過する外界像光の透過効率を上げるため、表示素子3Aを構成する画素29の領域内の一部に、例えば、図4に示すように透明部を設け、発光部29aと透明部29bとするような構造にすることもできる。
【0025】
図5は、映像表示装置1Aの回路構成を示すブロック図である。同図において、21は画像生成回路である。画像生成回路21は、CG(コンピュータグラフィックス)等の映像信号21aと映像信号のタイミング等を制御する制御信号21bをコントローラ回路(制御手段)22に送る。画像生成回路21はパーソナルコンピュータを用いた構成やDVDプレーヤ等の録画像を供給する装置を用いた構成であってもよい。
【0026】
コントローラ回路22は、表示素子3Aに表示画像を表示させるように表示素子3Aの図2の領域20aに対応する画素には液晶7に電圧を印加せずに円柱画像20cに対応する画素には電圧を印加するように発光層13の駆動を制御する。また、コントロール回路22は、表示素子3Aが円柱画像20cを表示するときに円柱画像20cを表示する画素に対応する部分の液晶シャッター2Aの光束の透過量が減少するように表示素子3Aと液晶シャッター2Aの駆動を制御する。なお、透過量を「減少」することはゼロ(遮光)も含む。
【0027】
より具体的には、コントローラ回路22は表示素子駆動回路23に映像信号22a及び制御信号22cを送り、表示素子駆動回路23は表示素子3Aを駆動すべく表示素子3Aに駆動信号23a、及び制御信号23bを送る。これにより、画像生成回路21で生成されたCG等の画像が表示素子3A上に表示される。
【0028】
一方、コントローラ回路22は、画像生成回路21で生成されたCG等の画像に対応した表示領域を閉じた状態にすべく、シャッター駆動信号22bと制御信号22dを液晶シャッター駆動回路24に送る。これに応答して、液晶シャッター駆動回路24はその画像領域においてシャッターを動作すべく液晶シャッター2Aに駆動信号24a及び制御信号24bを送る。
【0029】
表示領域に対応した領域の外界像の光束を液晶シャッター2Aにより遮光することにより、黒色や輝度の低い状態の画像も外界像に影響されること無く表示することができる。また、液晶シャッター2Aの透明電極6、8に印加する電圧を可変することにより液晶シャッター2Aを透過する外界光の透過率を表示画像に対応して変更し、表示画像を透けた状態にして外界像と重ね合せて見ることもできる。
【0030】
外界光を液晶シャッター2Aにより表示素子3Aの画素毎に対応させて遮光する上で、液晶シャッター2Aは表示素子3Aにできる限り近づけて設けることが望ましい。映像表示装置1Aは液晶シャッター2Aと表示素子3Aが一体になっていたが、製造上、図3に示すように表示素子3Aに透明ガラス部材17を追加して表示素子3Bとし、液晶シャッター2Bと別体にしてもよい。
【0031】
尚、上記実施例では、シャッター機能を有する素子として液晶を用いたが、表示画像の画素に対応して画素ごとに外界光の光調が可能な素子であればよく、エレクトロクロミック素子等であってもよい。
【実施例2】
【0032】
以下、図6〜9を参照して、実施例2の映像表示装置1Cについて説明する。実施例1では、表示素子上に表示された映像を直接眼で観察しているが、実施例2では表示素子上に表示された映像を表示素子の射出側に配置された接眼光学系32を介して観察する。図6は、実施例2の映像表示装置1Cの光路図である。
【0033】
図6において、31は、液晶シャッター2Cの入射側に配置され、外界像30aを映像表示装置1Cの表示素子3Cの表示面上に30bとして結像させる結像光学系である。外界像30aは映像表示装置1Cの液晶シャッター2Cを介して表示素子3Cの表示面上に30bとして結像される。表示素子3Cの表示面上に結像された外界像30b、或いは表示素子3Cの表示面上に表示された画像は、接眼光学系32により虚像30cとして観察者36により観察される。
【0034】
実施例1で述べたように、表示素子3Cの外界側に積層された液晶シャッター2Cを表示素子3Cの表示画像に対応して動作させ、外界像の光束の透過、遮光を制御することにより、表示素子3Cに表示された画像に対する外界像光の影響を制御できる。
【0035】
ここで、外界像30aから結像光学系31への入射光L1の入射角をθ1、接眼光学系32からの射出光L2の射出角をθ2とすると、入射角θ1と射出角θ2が等しくなるように結像光学系31及び接眼光学系32は構成されている。これにより、外界像30aは等倍で虚像30cとして観察することができる。
【0036】
実施例2では、図6に示すように、外界像30aに対し観察者36が観察する虚像30cは上下左右がそれぞれ反転した像となる。これを外界像と同じ方向の正立像として観察するためには、例えば、図7(a)、(b)に示す平面ミラー37、38、39、40を使用する一般的な方法により実現できる。図7(a)、(b)は、虚像30を正立像として観察する構成を示す斜視図と部分透過側面図である。
【0037】
これにより、接眼光学系からの射出光L3は、水平方向で互いに直角に配置された平面ミラー37、38により左右方向で反転され、さらに垂直方向で互いに直角に配置された平面ミラー39、40で上下方向に反転される。
【0038】
本実施例では結像光学系32を介して外界像30aを表示素子上に結像するので、液晶シャッター2Cと表示素子3Cとの位置関係が実施例1と異なる。
【0039】
図8は、実施例2における液晶シャッター2Cと表示素子3Cの画素の位置関係の模式図である。表示素子3Cの画素ピッチをP、液晶シャッター2Cの画素ピッチをP1、表示素子3Cの発光面3Caと、液晶シャッター2Cのシャッター面2Caとの距離をb、結像光学系31の後ろ側焦点距離をfとする。画像中心からn番目の位置の画素における表示素子3Cと液晶シャッター2Cの画素のズレ量をdとすると、次式が成立する。
【0040】
尚、上記発光面3Caは表示素子3Cの発光層の位置(実施例1における発光層13)であり、液晶シャッター面2Caは液晶シャッター2Cの液晶面の位置(実施例1における液晶7)を示す。実際には発光層及び液晶面は数μm〜数十μmの厚さを有するが、数mmの厚さを有する表示素子及び液晶シャッターに比べ十分小さいので発光面及び液晶層の厚さは無視して考えることができる。
(数1)
d=n・P・b/f
また、液晶シャッター2Cの画素ピッチP1は次式を満足するので、
(数2)
P1=(n・P−d)/n
数式1、2からより液晶シャッター2Cの画素ピッチP1は次式で表される。
(数3)
P1=P(1−b/f)
表示素子3Cの画素ピッチPと液晶シャッター2Cの画素ピッチP1が数式3を満足するように、表示素子3Cと液晶シャッター2Cの中心部n=1番目の画素で画素中心を一致させ、外側端部でズレ量dを発生するように積層する。
【0041】
なお、上述した表示素子3Cと液晶シャッター2Cの画素ピッチ及び配置の関係は、垂直方向について述べたものであるが、水平方向、すなわち紙面に対し垂直方向に対しても同じである。
【実施例3】
【0042】
以下、図9を参照して、実施例3の映像表示装置1Cについて説明する。本実施例は、外界像45aの中間像45bを形成した後、結像光学系46にて映像表示装置1Cの表示素子3Cの表示面上に外界像45cを結像するようにしたものである。
【0043】
表示素子面上に形成された外界像45cは正立像として結像するので、接眼光学系47で観察される虚像45dは外界像45aと同じ向きに観察され、図7に示す画像反転手段は不要である。
【0044】
外界像45aとその虚像45dが同じ倍率で観察されるためには、実施例2で述べた如く、結像光学系46への外界像の入射角θ1と接眼光学系47からの射出角θ2が等しいように結像光学系46と接眼光学系47が構成される必要がある。
【0045】
本実施例の映像表示装置1Cの液晶シャッター2Cと表示素子3Cの画素の位置関係は数式3を満足し、本実施例の映像表示装置1Cは実施例2と同様である。
【実施例4】
【0046】
以下、図10を参照して、実施例4の映像表示装置1Dについて説明する。図10(a)は、実施例4の映像表示装置1Dの部分断面図であり、液晶シャッター2Dと表示素子3Dは実施例1、2と同様の構造を有する。本実施例は、外界像を表示素子面上に結像させる結像光学系と、表示素子面上に結像された外界像或いは表示素子面上に表示された画像を観察する接眼光学系に、マイクロレンズアレイを用いる。なお、結像光学系と接眼光学系の少なくとも一方が、画素ごとにレンズが対応するマイクロレンズアレイを有してもよいし、結像光学系と接眼光学系のいずれもかかるマイクロレンズアレイを有してもよい。
【0047】
図10(a)において、51は外界像を表示素子3Dの表示面上に結像させるための結像光学系を構成するマイクロレンズアレイである。53は不要光によるコントラストの低下等を押えるための開口部53aを有する遮光マスクであるが、構成上必須ではないので省くことは可能である。55は表示素子3Dに表示された画像、或いは表示素子面上に結像された外界像を観察するための接眼光学系を構成するマイクロレンズアレイである。マイクロレンズアレイ51、55の各レンズは液晶シャッター2D及び表示素子3Dの少なくとも1画素毎に対応するように設けられている。
【0048】
液晶シャッター2Dの画素52aがOFF状態の時、実施例1で述べた如く液晶シャッター2Dの画素52aは開口状態にある。従って、外界像からの光束L5は、液晶シャッター2Dの画素52aを透過し、さらにそれに対応して設けられた遮光マスク53の開口部53aを通り、結像用のマイクロレンズ51aにより、表示素子3Dの対応する画素54a上に結像される。
【0049】
表示素子3Dの画素54aがOFF状態であれば、外界像からの光束L5はそのまま表示素子3Dの画素54aを透過し、接眼用マイクロレンズ55aにより観察者の眼36の網膜上に結像される。即ち、映像表示装置50を介して外界像を観察することができる。
【0050】
液晶シャッター2DがON状態の画素52bでは、液晶シャッター2Dが閉じた状態にあるので、外界からの光束L6は液晶シャッター2Dにより遮光される。この時、液晶シャッター2Dbに対応する表示素子の画素54bをON状態にすれば、画素54bは発光し、表示画像光束L7を射出する。表示画像光束L7は、表示素子3Dの画素54bに対応した接眼用マイクロレンズ55bにより観察者の眼36の網膜上に結像される。
【0051】
以上、表示素子3Dの外界側に積層された液晶シャッター2Dを表示素子3Dの表示画像に対応して動作させ、外界像の光束の透過、遮光を制御することにより、表示素子3Dに表示された画像に対する外界像光の影響を制御できる。
【0052】
図10(b)は、マイクロレンズアレイ51、55、液晶シャッター2D、表示素子3Dの位置関係を示す模式図である。
【0053】
表示素子3Dの画素ピッチをP、液晶シャッター2Dの画素ピッチをP1、マイクロレンズアレイ51のレンズピッチをP2、マイクロレンズアレイ55のレンズのピッチをP3とする。また、表示素子3Dと液晶シャッター2Dの距離をb1、表示素子3Dとマイクロレンズアレイ51及び55の距離をそれぞれb2、b3とする。更に、中心からn番目の画素における表示素子の画素と液晶シャッターの画素のズレ量をd1、同様に表示素子に対すマイクロレンズアレイ51及びマイクロレンズアレイ55の中心からn番目のレンズのズレ量をそれぞれd2、d3とする。また、表示素子3Dから観察者の眼36の瞳位置36aまでの距離をeとすると、表示素子3Dと液晶シャッター2Dの中心からn番目の画素のズレ量d1は、数式1のfをeに置き換えた次式で与えられる。
(数4)
d1=n・P・b1/e
同様に、表示素子3Dに対するマイクロレンズアレイ51、55の中心からn番目のレンズのズレ量は、それぞれ次式で与えられる。
(数5)
d2=n・P・b2/e
(数6)
d3=n・P・b3/e
また、液晶シャッター32の画素ピッチP1は、次式で与えられる。
(数7)
P1=(n・P+d1)/n
数式4、7より液晶シャッター2Dの画素ピッチP1は次式で与えられる。
(数8)
P1=P(1+b1/e)
同様に、マイクロレンズアレイ51、55のピッチP2、P3はそれぞれ次式で与えられる。
(数9)
P2=P(1+b2/e)
(数10)
P3=P(1−b3/e)
表示素子3Dに対する液晶シャッター2D、マイクロレンズアレイ51、55は、上記に示すピッチを用い、中心部n=1番目の画素及びレンズの中心をそれぞれ一致させ、外側端部で上記のズレ量が発生するように積層する。
【0054】
表示素子3Dの画素中心、液晶シャッター2Dの開口中心、マイクロレンズアレイ51、55のレンズ中心は、図10(b)に示すように、これらの中心と観察者の瞳位置36aの瞳中心とを結ぶ略直線上(gで示す)に位置することになる。
【0055】
今、観察者の瞳位置36aと表示素子3Dの距離eを20mmとし、その時の、表示素子3Dの画素の解像度を4分とすると、表示素子3Dの画素ピッチPは23μmとなる。
【0056】
表示素子3Dと液晶シャッター2Dの距離b1、表示素子3Dとマイクロレンズアレイ51の距離b2、表示素子3Dとマイクロレンズアレイ55の距離b3をそれぞれ0.5mm、1.5mm、1mmとする。すると、液晶シャッター2Dの画素ピッチP1は数式8からP1=23.6μm、マイクロレンズアレイ51のレンズピッチP2は数式9からP2=24.7μm、マイクロレンズアレイ55のレンズピッチP3は数式10からP3=21.9μmとなる。
【0057】
実施例2と同様に、上述した表示素子3Dに対する液晶シャッター2D、マイクロレンズアレイ51、55の位置関係は、垂直方向に対して述べたものであるが、水平方向、すなわち紙面に対し垂直方向に対しても同じである。
【0058】
表示素子3Dの画素構造を図4に示す構造とし、マイクロレンズアレイ51による表示素子3Dに対する外界像の結像位置を透明部29bとすることにより、外界像光の透過効率を上げ、外界像をより明るくすることができる。
【0059】
この時、マイクロレンズアレイ55に対する表示素子3Dの発光位置と外界像光の結像位置がずれるが、このずれに対する瞳位置36aでのズレ量をDとする。マイクロレンズアレイ55のレンズ径は21.9μm、表示素子3Dとマイクロレンズアレイ55との距離1mmより、マイクロレンズ55と瞳の距離は19mm(=20mm−1mm)とすると、ズレ量Dは次式で与えられる。従って、瞳孔径(通常4mm程度)に比べて小さいので外界像光及び表示光の何れも瞳孔に入り画像がケラレルことは無い。
(数11)
D=0.438mm(=20mm×21.9μm/1mm)
実施例4によれば、外界像光をマイクロレンズ51により表示素子面上に結像させ、マイクロレンズ55により画素毎に観察者の眼の網膜上に結像させており、画像を反転させる必要が無く光学系の光軸方向の厚さを小さくして装置の小型化を達成することができる。
【実施例5】
【0060】
以下、図11を参照して、実施例5の映像表示装置1Eについて説明する。映像表示装置1Eは、観察者の左右の眼36L、36Rに対応して一対の映像表示装置1EL、1ERを設けている。図11は、実施例5の映像表示装置1Eの部分断面図である。映像表示装置1EL、1ERの間隔は観察者の眼の幅hに合わせる必要があるため、映像表示装置とは無関係に決定される。
【0061】
映像表示装置の水平方向の画角αを大きくしようとすると、中心部で左右の映像表示装置が干渉してしまう。これは、特に、観察者に対し光軸方向に離れる程顕著になる。
【0062】
そこで、本実施例は、外界像を表示素子面上に結像するマイクロレンズアレイ61を、図中A(斜線部)で示す干渉領域において左右共通に使えるようにして画角を大きく確保している。更に、観察者の眼幅に合せて観察位置を調整できるようにしている。
【0063】
各映像表示装置は、液晶シャッター2E、表示素子3E、接眼用マイクロレンズアレイ64を有すると共に、結像光学系を除く2つの映像表示装置のそれぞれをマイクロレンズアレイ61が延びる方向に平行な方向に移動する手段を有する。液晶シャッター2E、表示素子3E、マイクロレンズアレイ64は液晶シャッター2D、表示素子3D、マイクロレンズアレイ55と同様の構成を有する。
【0064】
マイクロレンズアレイ61のレンズのピッチP4は一定であるので、左右の映像表示装置とマイクロレンズアレイ61との位置関係は、ピッチP4単位で矢印B、C方向に移動する限り同じである。初期の眼幅をh0、観察者の眼幅をhとすると、次式を満足するように、左右の映像表示装置を矢印B又はC方向に移動させることにより、位置関係を保ちながら観察者の眼幅に合せることができる。
(数12)
(h−h0)/2=P4×n
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
映像表示装置は、ヘッドマウントディスプレイやヘッドアップディスプレイなど各種のディスプレイに適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1A、1B、1C、1D、1E 映像表示装置
2A、2B、2C、2D、2E 液晶シャッター(調光素子)
3A、3B、3C、3D、3E 表示素子
22 コントローラ回路(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外界像と表示画像を同一視野内で表示する映像表示装置であって、
前記表示画像を表示する透過型の表示素子と、
前記表示素子に積層され、外界から前記表示素子に至る光束の透過量を前記表示素子の画素ごとに調節する調光素子と、
前記表示素子が前記表示画像を表示するときに前記表示画像に対応する部分の前記調光素子の光束の透過量が減少するように前記表示素子と前記調光素子の駆動を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
前記表示素子は、発光層と、前記発光層を駆動するように前記発光層を挟むように画素ごとに設けられた第1の透明電極と、前記第1の透明電極を挟む一対の第1のガラス部材と、を有し、
前記調光素子は、液晶を駆動するように前記液晶を挟むように画素ごとに設けられた第2の透明電極と、前記第2の透明電極を挟む一対の第2のガラス部材と、を有することを特徴とする請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項3】
前記一対の第1のガラス部材の一つは前記第2のガラス部材を兼ねていることを特徴とする請求項2に記載の映像表示装置。
【請求項4】
前記調光素子の入射側に配置された結像光学系と、前記表示素子の射出側に配置された接眼光学系を更に有することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の映像表示装置。
【請求項5】
前記接眼光学系が形成する虚像を正立像に反転する手段を更に有することを特徴とする請求項4に記載の映像表示装置。
【請求項6】
前記結像光学系と前記接眼光学系の少なくとも一方は、画素ごとにレンズが対応するマイクロレンズアレイを有することを特徴とする請求項4に記載の映像表示装置。
【請求項7】
前記結像光学系と前記接眼光学系はいずれも画素ごとにレンズが対応するマイクロレンズアレイを有し、
ある画素について、前記結像光学系を構成するマイクロレンズのレンズ中心、前記調光素子の開口中心、前記表示素子の画素中心、前記接眼光学系を構成するマイクロレンズのレンズ中心を結ぶ直線は瞳位置を通ることを特徴とする請求項4に記載の映像表示装置。
【請求項8】
前記外界像を前記表示素子に結像する結像光学系を更に有し、
前記結像光学系は画素ごとにレンズが対応するマイクロレンズアレイを有し、
観察者の左右の眼のそれぞれに対応して2つの映像表示装置が設けられ、
前記結像光学系を構成するマイクロレンズは前記観察者の左右の眼に対して共通に設けられ、
前記結像光学系を除く前記2つの映像表示装置のそれぞれを前記結像光学系のマイクロレンズが延びる方向に平行に移動する手段を更に有することを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載の映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−44836(P2013−44836A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181163(P2011−181163)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】