説明

映像補正装置、映像表示装置、撮像装置および映像補正プログラム

【課題】 画像を適切に強調する。
【解決手段】 映像補正装置は、複数の画素で構成された画像から特定色の領域を抽出すする特定色判定部23と、画像を強調するための補正量を定めるための強調係数を決定するコントラスト強調係数算出部17および色強調係数算出部31と、画像を構成する複数の画素それぞれの画素値を、画素値と決定された強調係数とに基づき定まる補正量で補正するコントラスト強調部29および色強調部33と、特定色の領域に含まれる複数の画素に対応し、画像を強調するための補正量を減少させる程度を定める平滑化係数を、特定色の領域の面積に基づいて決定する面積判定部25と、を備え、コントラスト強調係数算出部27は、平滑化係数でコントラスト強調係数を補正し、色強調係数算出部31は、平滑化係数で色強調係数を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は映像補正装置、映像表示装置、撮像装置および映像補正プログラムに関し、特に、画像のコントラストまたは色を強調する補正を行う映像補正装置、映像表示装置、映像記録装置および映像補正プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像に表される人の肌の色等の記憶色は、人が好ましいと感じる色で再現することが望まれる。特開2006−203431号公報(特許文献1)には、画像に存在する記憶色を目標とする色に補正する画像処理装置が記載されている。しかしながら、特開2006−203431号公報に記載の従来の画像処理装置は、画像に表されている記憶色を人が好ましいと感じる色に変換することができるが、例えば肌色の領域の大きさが大きな場合には、色が急激に変化して段差を発生してしまう場合がある。
【特許文献1】特開2006−203431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は上述した問題点を解決するためになされたもので、この発明の目的の1つは、画像を適切に強調することが可能な映像補正装置を提供することである。
【0004】
この発明の他の目的は、適切に強調した画像を表示することが可能な映像表示装置を提供することである。
【0005】
この発明のさらに他の目的は、撮像した画像を適切に強調することが可能な撮像装置を提供することである。
【0006】
この発明のさらに他の目的は、画像を適切に強調することが可能な映像補正プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、この発明のある局面によれば、映像補正装置は、複数の画素で構成された画像から所定の色を有する領域を抽出する領域抽出手段と、画像を強調するための補正量を定めるための強調係数を決定する強調係数算出手段と、画像を構成する複数の画素それぞれの画素値を、画素値と決定された強調係数とに基づき定まる補正量で補正する強調手段と、抽出された領域に含まれる複数の画素に対応し、画像を強調するための補正量を減少させる程度を定める平滑化係数を、抽出された領域の大きさに基づいて決定する平滑化係数決定手段と、を備え、強調係数算出手段は、決定された平滑化係数で強調係数を補正する。
【0008】
この局面に従えば、画像から所定の色を有する領域が抽出され、抽出された領域に含まれる複数の画素に対応し、画像を強調するための補正量を減少させる程度を定める平滑化係数が、その領域の大きさに基づいて決定され、画像を強調するための補正量を定めるための強調係数が、決定された平滑化係数で補正される。このため、画像中の所定の色を有する領域の強調の程度を、領域の大きさに応じて異ならせることができる。その結果、画像を適切に強調することが可能な映像補正装置を提供することができる。
ここで、画像の強調とは、例えばコントラスト強調、色強調をいい、所定の色とは、例えば記憶色をいい、肌色などの特定色を含む。
【0009】
好ましくは、平準化係数決定手段は、抽出された領域が大きいほど補正量を減少させる程度の大きな値に平滑化係数を決定する。
【0010】
この局面に従えば、画像中の所定の色を有する領域が大きいほど補正量を減少させる程度が大きくなり、強調の程度が小さくなるので、強調されることにより画像中の大きな領域で画素値が急激に変化する部分が発生するのを防止して、画質を向上することができる。
【0011】
好ましくは、強調係数算出手段は、抽出された領域に含まれる処理対象画素の画素値と周辺の画素の画素値との差が大きいほど補正量が小さくなるように、強調係数を補正する。
【0012】
この局面に従えば、画像中の所定の色を有する領域に含まれる処理対象画素の画素値と周辺の画素の画素値との差が大きいほど補正量が小さくなり、強調の程度が小さくなる。このため、画素値の変化の大きな部分が強調されることによりさらに画素値の差が大きくなるのを防止して、画質を向上することができる。
【0013】
この発明のさらに他の局面によれば、映像補正装置は、複数の画素で構成された画像から所定の色を有する領域を抽出する領域抽出手段と、画像を強調するための補正量を定めるための強調係数を決定する強調係数算出手段と、画像を構成する複数の画素それぞれの画素値を、画素値と決定された強調係数とにより定まる補正量で補正する強調手段と、を備え、強調係数算出手段は、抽出された領域に含まれる処理対象画素の画素値と周辺の画素の画素値との差が大きいほど画像を強調するための補正量が小さくなるように、強調係数を補正する。
【0014】
この局面に従えば、画像を強調するための補正量を定めるための強調係数が、画像中の所定の色を有する領域に含まれる処理対象画素の画素値と周辺の画素の画素値との差が大きいほど画像を強調するための補正量が小さくなるように補正され、強調の程度が小さくなる。このため、画素値の変化の大きな部分が強調されることによりさらに画素値の差が大きくなるのを防止して、画質を向上することができる。その結果、画像を適切に強調することが可能な映像補正装置を提供することができる。
【0015】
この発明のさらに他の局面によれば、映像補正装置は、画像から所定の色を有する領域を抽出する領域抽出手段と、画像を強調する強調手段と、抽出された領域に含まれる複数の画素に対応し、平滑化するための補正の程度を定める平滑化係数を、抽出された領域の大きさに基づいて決定する平滑化係数決定手段と、強調された画像を構成する複数の画素それぞれの画素値を、決定された平滑化係数に従って平滑化した値に補正する平滑化手段と、を備える。
【0016】
この局面に従えば、画像中で所定の色を有する領域に含まれる複数の画素に対応し、平滑化するための補正の程度を定める平滑化係数が、領域の大きさに基づいて決定され、強調された画像を構成する複数の画素それぞれの画素値が、決定された平滑化係数に従って平滑化した値に補正される。このため、画像中の所定の色を有する領域を平滑化するための補正の程度を、領域の大きさに応じて異ならせることができる。大きな領域と小さな領域とで平滑化の程度が異なるので、強調された画像が適切に平滑化される。その結果、画像を適切に強調することが可能な映像補正装置を提供することができる。
【0017】
好ましくは、平滑化係数決定手段は、抽出された領域が大きいほど平滑化するための補正の程度の大きい値に平滑化係数を決定する。
【0018】
この局面に従えば、画像中の所定の色を有する領域が大きいほど平滑化するための補正の程度が大きくされるので、強調されることにより画像中の大きな領域で画素値が急激に変化する部分が発生するのを防止して、画質を向上することができる。
【0019】
この発明のさらに他の局面によれば、映像表示装置は、上記の映像補正装置と、映像補正装置が出力する画像を表示する表示手段と、を備える。
【0020】
この局面に従えば、適切に強調した画像を表示することが可能な映像表示装置を提供することができる。
【0021】
この発明のさらに他の局面によれば、撮像装置は、上記した映像補正装置と、被写体を撮像し、映像補正装置に画像を出力する撮像手段と、を備える。
【0022】
この局面に従えば、撮像された画像を適切に強調することが可能な撮像装置を提供することができる。
【0023】
この発明のさらに他の局面によれば、映像補正プログラムは、複数の画素で構成された画像から所定の色を有する領域を抽出するステップと、画像を強調するための補正量を定めるための強調係数を決定するステップと、抽出された領域に含まれる複数の画素に対応し、画素値を強調するための補正量を減少させる程度を定める係数を、抽出された領域の大きさに基づいて決定するステップと、決定された平滑化係数で強調係数を補正するステップと、画像を構成する複数の画素それぞれの画素値を、画素値と強調係数とにより定まる補正量で補正するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0024】
この局面に従えば、画像を適切に強調することが可能な映像補正プログラムを提供することができる。
【0025】
この発明のさらに他の局面によれば、映像補正プログラムは、複数の画素で構成された画像から所定の色を有する領域を抽出するステップと、画像を強調するための補正量を定めるための強調係数を決定するステップと、抽出された領域に含まれる処理対象画素の画素値と周辺の画素の画素値との差が大きいほど画像を強調するための補正量が小さくなるように、強調係数を補正するステップと、画像を構成する複数の画素それぞれの画素値を、画素値と決定された強調係数とにより定まる補正量で補正するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0026】
この局面に従えば、画像を適切に強調することが可能な映像補正プログラムを提供することができる。
【0027】
この発明のさらに他の局面によれば、映像補正プログラムは、画像から所定の色を有する領域を抽出するステップと、画像を強調するステップと、抽出された領域に含まれる複数の画素に対応し、平滑化するための補正の程度を定める係数を、抽出された領域の大きさに基づいて決定するステップと、強調された画像を構成する複数の画素それぞれの画素値を、決定された係数に従って平滑化した値に補正するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0028】
この局面に従えば、画像を適切に強調することが可能な映像補正プログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下の説明では同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0030】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態における液晶プロジェクタの回路構成の概略を示すブロック図である。図1を参照して、液晶プロジェクタ1は、映像補正装置11と、ディスプレイ部41とを備える。
【0031】
ディスプレイ部41は、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の値をそれぞれが含む複数の画素データで構成される画像が入力される。ディスプレイ部41は、R、GおよびBの合計3色のフィルタを有し、光源から発光された光を3色にそれぞれ分光し、入力される映像データに従って3色の光それぞれを変調し、合成し、投影することにより、画像を投影面に表示する。なお、ここでは液晶プロジェクタ1を例に説明するが、例えば液晶表示装置、プラズマディスプレイパネル、有機EL(Electro−Luminescence)ディスプレイパネル等であってもよい。
【0032】
映像補正装置11は、外部から画像が入力される。映像補正装置11には、例えば、放送電波を受信するチューナ、被写体を撮像して画像を出力するCCD(Charge Coupled Device)、CMOSセンサなどの撮像装置、動画または静止画を記録するビデオディスク等の映像記録装置、動画を撮像するためのビデオカメラ、画像を撮像するデジタルスチルカメラ、画像を記録する画像記録装置等から画像が入力される。ここでいう画像は、静止画像に係わらず、動画像を含む。映像補正装置11は、動画像が入力される場合、1フレームの画像単位で処理する。
【0033】
映像補正装置11は、入力されるRGB表色系の画像をHSV表色系に変換する色変換部21と、画像中の画素の色が特定色か否かを判定するための特定色判定部23と、特定色の画素を含む領域の面積に基づき平滑化係数を決定する面積判定部25と、画像の輝度成分を強調するコントラスト強調部29と、輝度成分を強調する程度を定めるコントラスト強調係数を決定するコントラスト強調係数算出部27と、画像の色相(Hue)および彩度(Saturation)を強調する色強調部33と、色相成分および彩度成分を強調する程度を定める色強調係数を決定する色強調係数算出部31と、HSV表色系の画像をRGB表色系に変換する出力信号算出部35と、を含む。
【0034】
色変換部21は、RGB表色系の画像が外部から入力される。色変換部21は、RGB表色系の画像をHSV表色系に変換し、輝度成分の画像(Y)をコントラスト強調係数算出部27に出力し、色相成分の画像(SAT)および彩度成分の画像(HUE)を色強調係数算出部31に出力し、輝度成分の画像(Y)、色相成分の画像(SAT)および彩度成分の画像(HUE)を特定色判定部23に出力する。
【0035】
特定色判定部23は、画像に含まれる画素の色が特定色か否かを判定する。特定色は、予め定められた範囲の明度、色相および彩度の色をいう。記憶色を特定色とするのが好ましい。記憶色については、株式会社エヌ・ティ・ティピー・シーコミュニケーションズのインターネットホームページ(http://www.pc−view.net/word_id−1304.html)に、次の記載がある。記憶色とは、多くの人がイメージとして記憶している色である。記憶色の例としては、例えば、桜(ソメイヨシノ)の花の色、晴天の青い空、人間の肌の色が挙げられる。近年では、写真、フィルム写真またはデジタルカメラの画質に関連して使われることが多い。
(1)桜の花の色:多くの人が淡いピンクだと思っているけど、実際はほとんど白である。そのため、写真に撮ると白く写る。しかし、これだとほとんどの人が納得しないので、印刷物に載せるときは意図的にピンクを強くすることが多い。
(2)晴天の青い空:日本では、スッキリとした秋晴れでも水色に近い薄めの青である。しかし、印刷するときは地中海の空のように真っ青にすることが多い。あるいは、円偏向フィルター(PLフィルター)を使って、実際より青く撮影したりすることが多い。
(3)人間の肌の色:個人差はあるものの、実際の色は土のようにくすんだ黄土色で、そのままだとすごく不健康に見える。そのため、やはり実際より健康的な色に印刷することが多い。
特定色判定部23が判定する特定色は、1つであってもよいし、複数であってもよい。特定色を複数とする場合には、特定色判定部23は、複数の特定色それぞれについて、画像に含まれる画素の色がその特定色か否かを判定する。特定色判定部23は、輝度成分の画像(Y)、色相成分の画像(SAT)および彩度成分の画像(HUE)を用いて、画像中の画素の輝度、色相および彩度が、特定色として予め定められている輝度の範囲、色相の範囲および彩度の範囲にそれぞれ含まれるか否かを判断する。
【0036】
特定色判定部23は、画素の輝度、色相および彩度のすべてが、特定色として予め定められている輝度の範囲、色相の範囲および彩度の範囲にそれぞれ含まれる場合、その画素の色を特定色と判定する。特定色判定部23は、画素の色が特定色と判定された画素の画素値を「1」とし、特定色と判定されなかった画素の画素値を「0」とする特定色画像を面積判定部25に出力する。特定色画像は、入力された画像における特定色の画素の位置を特定する画像である。
【0037】
なお、ここでは、特定色か否かを輝度、色相および彩度で判断するようにしたが、色相および彩度のみで判断するようにしてもよいし、色相のみで判断するようにしてもよい。
【0038】
面積判定部25は、特定色画像に基づいて、特定色の画素(画素値が1の画素)で隣接する複数の画素の集合からなる領域を、特定色の領域に決定する。なお、特定色の画素で隣接する複数の画素の集合の数が所定数に満たない場合には、その集合からなる領域を、特定色の領域としない。この場合、特定色の領域とされなかった集合に含まれる画素の値を「0」に変更する。そして、面積判定部25は、特定色の領域の大きさから平滑化係数を決定する。領域の大きさは、特定色の領域に含まれる画素の数である。
【0039】
ここで、特定色の領域に含まれる画素数と平滑化係数との関係を説明する。図2は、画素数と平滑化係数との関係を示す図である。図2を参照して、画素数が多いほど平滑化係数が大きな値に関係付けられる。換言すれば特定色の領域が大きいほど、平滑化係数が大きな値となる関係にある。
【0040】
なお、ここでは、特定色の領域に含まれる画素数と平滑化係数との関係を例に説明するが、特定色の領域が画像中に占める割合と、平滑化計数との関係を定義するようにしてもよい。この場合、特定色の領域が画像中に占める割合が大きいほど平滑化係数を大きな値に関係付ける。
【0041】
図1に戻って、面積判定部25は、画素数と平滑化係数との関係を定義する関数を予め記憶しており、この関数を用いて画素数から平滑化係数を算出する。平滑化係数は、画素値を強調するための補正量を減少させる程度を定める係数である。平滑化係数と補正量を減少させる程度とは、平滑化係数が大きいほど、画素値を強調するための補正量を減少させる程度が大きく関係付けられる。また、複数の平滑化係数それぞれに画素数を関連付けた平滑化係数テーブルを予め記憶しておき、この平滑化係数テーブルを用いて、画素数に関連付けられた平滑化係数を決定するようにしてもよい。面積判定部25は、平滑化係数をコントラスト強調係数算出部27および色強調係数算出部31に出力する。
【0042】
コントラスト強調係数算出部27は、平滑化係数を用いて、輝度を強調するための補正量を定めるコントラスト強調係数を補正する。コントラスト強調係数算出部27は、平滑化係数が大きいほど、輝度を強調するための補正量が小さくがなるようにコントラスト強調係数を補正する。換言すれば、特定色の領域が大きいほど、輝度を強調するための補正量が小さくなるようにコントラスト強調係数を補正する。平滑化係数は、輝度を強調するための補正量を減少させる程度を定める係数である。
例えば、特定色を肌色とした場合、人の顔が画像の中で大きな面積を占める場合、コントラスト強調するための補正量を大きくすると、輝度の変化が急峻になる部分で段差が発生する場合があるので、強調するための補正量を小さくするのが好ましい。逆に、画像中に複数人の顔が含まれる場合、1つ1つの顔の面積は小さくなり、コントラスト強調するための補正量を大きくする方が、見栄えがよくなる。特定色の領域の面積が大きいほど、輝度を強調するための補正量が小さくなるようにコントラスト強調係数を補正するので、面積の大きな特定色の領域で画像の輝度が急激に変化するのを防止することができる。また、面積の小さな特定色の領域で画像の輝度の変化を強調するので、輝度の変化が激しく見栄えのよい画像とすることができる。
【0043】
また、コントラスト強調係数算出部27は、特定色の領域に含まれる複数の画素毎に、隣接する画素の画素値(輝度)に基づいて、コントラスト強調係数を補正する。隣接する画素の輝度との差が大きいほど輝度を強調するための補正量が小さくなるようにコントラスト強調係数を補正する。このため、特定色の領域のうちで画像の輝度の変化が大きな部分でコントラスト強調により輝度が強調されすぎるのを防止することができる。また、特定色の領域のうちで画像の輝度の変化が小さな部分でコントラスト強調により輝度が強調されるようにして、見栄えのよい画像とすることができる。
【0044】
ここで、コントラスト強調係数の補正の具体例を説明する。コントラスト強調係数算出部27は、次式(1)を用いてコントラスト強調係数を補正する。
Gt(n)=(L(n+1)×G(n+1)−(1−α)×A)/L(n)…(1)
ここで、nは画素に付された番号であり、画素が配列される順に付与される。Gt(n)は、n番目に配列された画素に対する補正後のコントラスト補正係数を示し、L(n),L(n+1)は、n番目およびn+1番目に配列された画素それぞれの輝度を示し、G(n+1)は、n+1番目に配列されたの画素に対するコントラスト補正係数である。αは平滑化係数であり、Aは定数である。ただし、式(1)は、L(n)<L(n+1)の場合に適用され、L(n)≧L(n+1)の場合は、次式(2)が適用される。
Gt(n)=(L(n+1)×G(n+1)+(1−α)×A)/L(n)…(2)
コントラスト強調部29は、輝度成分の画像(Y)に、コントラスト強調係数に従ってコントラストを強調するための補正量を定め、補正する処理を行う。コントラストを強調する処理は、従来用いられている手法を用いればよく、例えば、輝度の低い画素の輝度をより低くし、輝度の高い画素の輝度をより高い輝度に補正する。この場合の輝度の補正量が、コントラスト強調係数により定められる。コントラスト強調部29は、コントラスト強調した輝度成分の画像(Y)を出力信号算出部35に出力する。
【0045】
色強調係数算出部31は、平滑化係数を用いて、色相および彩度を強調するための補正量を定める色強調係数を補正する。色強調係数算出部31は、平滑化係数が大きいほど、色相および彩度を強調するための補正量が小さくなるように色強調係数を補正する。換言すれば、特定色の領域が大きいほど、色相および彩度を強調するための補正量が小さくなるように色強調係数を補正する。平滑化係数は、色相および彩度を強調するための補正量を減少させる程度を定める係数である。
例えば、特定色を肌色とした場合、人の顔が画像の中で大きな面積を占める場合、色強調するための補正量を大きくすると、色相および彩度の変化が急峻になる部分で段差が発生する場合があるので、強調するための補正量を小さくするのが好ましい。逆に、画像中に複数人の顔が含まれる場合、1つ1つの顔の面積は小さくなり、色強調するための補正量大きくする方が、見栄えがよくなる。特定色の領域の面積が大きいほど、色相および彩度を強調するための補正量が小さくなるように色強調係数を補正するので、面積の大きな特定色の領域で画像の色相および彩度が急激に変化するのを防止することができる。また、面積の小さな特定色の領域で画像の色相および彩度の変化を強調するので、色相および彩度の変化が激しく見栄えのよい画像とすることができる。
【0046】
また、色強調係数算出部31は、画像に含まれる複数の画素毎に、隣接する画素の画素値(色相および彩度)に基づいて、色強調係数を補正する。隣接する画素と色相および彩度の差が大きいほど色相および彩度を強調するための補正量が小さくなるように色強調係数を補正する。このため、特定色の領域のうちで画像の色相および彩度の変化が大きな部分で、色強調により色相および彩度が強調されすぎるのを防止することができる。また、特定色の領域のうちで画像の輝度の変化が小さな部分で色強調により色相および彩度が強調されるようにして、見栄えのよい画像とすることができる。
【0047】
色強調部33は、色相成分の画像(HUE)および彩度成分の画像(SAT)に、色強調係数に従って色相および彩度を強調するための補正量を定め、補正する処理を行う。色相および彩度を強調する処理は、従来用いられている手法を用いればよく、例えば、所定の範囲にある色相および彩度を、目標の色相および彩度に近づけるように補正する。この場合の色相および彩度の補正量が、色強調係数により定められる。色強調部33は、色強調した色相成分の画像(HUE)および彩度成分の画像(SAT)を出力信号算出部35に出力する。
【0048】
出力信号算出部35は、HSV表色系の画像をRGB表色系の画像に変換し、RGBそれぞれの画像をディスプレイ部41に出力する。
【0049】
図3は、映像補正装置で実行される映像補正処理の流れの一例を示す図である。図3を参照して、映像補正装置11は、画像が入力されるまで待機状態となり、画像が入力されると処理をステップS02に進める。すなわち、映像補正処理は、画像が入力されることを条件に実行される処理である。ここでは、RGB表色系の画像が入力される。
【0050】
ステップS02においては、RGB表色系の画像をHSV表色系の画像に変換し、輝度成分の画像(Y)、色相成分の画像(SAT)および彩度成分の画像(HUE)を生成する。そして、輝度成分の画像(Y)、色相成分の画像(SAT)および彩度成分の画像(HUE)から画像中に存在する特定色の領域を抽出する(ステップS03)。特定色は、予め定められた範囲の明度、色相および彩度の色をいう。具体的には、画像に含まれる画素の色が特定色か否かを判定し、画素の色が特定色と判定された画素の画素値を「1」とし、特定色と判定されなかった画素の画素値を「0」とする特定色画像を生成する。そして、特定色画像に基づいて、特定色の画素(画素値が1の画素)で隣接する複数の画素の集合からなる領域を、特定色の領域に決定する。特定色の領域は、複数家定される場合がある。
【0051】
ステップS04においては、特定色の領域の面積から特定色の領域の平滑化係数を決定する。具体的には、画素数と平滑化係数との関係を定義する関数を予め記憶しており、この関数を用いて、特定色の領域に含まれる画素の数から平滑化係数を算出する。
【0052】
次に未処理の特定色の領域が存在するか否かを判断し(ステップS05)、未処理の特定色の領域が存在するならば処理をステップS03に戻し、存在しなければ処理をステップS06に進める。したがって、画像中に複数の特定色の領域が存在する場合には、複数の特定色の領域ごとに平滑化係数が定められる。平滑化係数は、特定色の領域の面積から定められるので、複数の特定色の領域間で、異なる平滑化係数が定められる場合がある。
【0053】
ステップS06においては、強調処理を実行する。強調処理については後述するが、輝度成分の画像(Y)にコントラストを強調するコントラスト強調処理を実行し、色相成分の画像(HUE)および彩度成分の画像(SAT)に色相および彩度を強調する色強調処理を実行する。
【0054】
次のステップS07においては、コントラスト強調処理された輝度成分の画像(Y)と、色強調処理された色相成分の画像(HUE)および彩度成分の画像(SAT)とを、RGB表色系のR画像、G画像およびB画像に変換する。そして、変換された、RGB表色系のR画像、G画像およびB画像をディスプレイ部41に出力する。
【0055】
図4は、強調処理の流れの一例を示すフローチャートである。強調処理は、図3のステップS06において実行される処理である。図4を参照して、画像に含まれる画素のうちから処理対象とする画素を選択する(ステップS11)。ここでは、選択された画素を処理対象画素という。
【0056】
そして、処理対象画素に対応するコントラスト強調係数を取得する(ステップS12)。従来周知なコントラスト強調処理により定まるコントラスト強調係数を取得する。さらに、処理対象画素に対応する色強調係数を取得する(ステップS13)。従来周知な色強調処理により定まる色強調係数を取得する。そして、処理対象画素が特定色の領域に含まれるか否かを判断する(ステップS14)。処理対象画素が特定色の領域に含まれるならば処理をステップS15に進め、そうでなければ処理をステップS19に進める。特定色の領域に含まれる画素についてのみ、その画素に対応するコントラスト強調係数および色強調係数を補正するためである。特定色の領域は、図3のステップS03で抽出された特定色の領域であり、特定色画像において処理対象画素に対応する画素の画素値が「1」ならば特定色領域に含まれると判断する。
【0057】
ステップS15においては、図3のステップS04において決定された平滑化係数で、ステップS12で取得されたコントラスト強調係数を補正する。平滑化係数は、処理対象画素が含まれる特定色の領域に対して決定された平滑化係数である。具体的には、平滑化係数が大きいほど、輝度を強調するための補正量が小さくなるようにコントラスト強調係数を補正する。換言すれば、特定色の領域が大きいほど、輝度を強調するための補正量が小さくなるようにコントラスト強調係数を補正する。これにより、特定色の領域の面積が大きい場合、コントラスト強調するための補正量が小さくなるので、特定色の領域で輝度の変化が急峻になるのを防止することができる。また、逆に、特定色の領域の面積が小さい場合、コントラスト強調するための補正量が大きくなるので、輝度の変化が激しく見栄えのよい画像とすることができる。
【0058】
次に、処理対象画素の輝度と、処理対象画素に隣接する画素との差に基づいて、ステップS15で補正されたコントラスト強調係数を補正する(ステップS16)。隣接する画素の輝度との差が大きいほどコントラスト強調するための補正量が小さくなるようにコントラスト強調係数を補正する。このため、特定色の領域で画像の輝度の変化が大きな領域でコントラスト強調することにより輝度が強調されすぎるのを防止することができる。また、特定色の領域で画像の輝度の変化が小さな領域でコントラスト強調することにより輝度が強調されるようにして、見栄えのよい画像とすることができる。
【0059】
次のステップS17においては、図3のステップS04において決定された平滑化係数で、ステップS13で取得された色強調係数を補正する。平滑化係数は、処理対象画素が含まれる特定色の領域に対して決定された平滑化係数である。具体的には、平滑化係数が大きいほど、色相および彩度を強調するための補正量が小さくなるように色強調係数を補正する。換言すれば、特定色の領域が大きいほど、色相および彩度を強調するための補正量が小さくなるように色強調係数を補正する。特定色の領域の面積が大きい場合、色強調するための補正量が小さくなるので、色相および彩度が急峻に変化するのを防止することができる。逆に、特定色の領域の面積が小さい場合、色強調ための補正量が大きくなるので、色相および彩度の変化が激しく見栄えのよい画像とすることができる。
【0060】
次に、処理対象画素の画素値(色相および彩度)と、処理対象画素に隣接する画素の画素値との差に基づいて、ステップS17で補正された色強調係数を補正する。隣接する画素と色相および彩度の差が大きいほど色強調するための補正量が小さくなるように色強調係数を補正する。このため、特定色の領域で画像の色相および彩度の変化が大きな領域で、色強調することにより色相および彩度が強調されすぎて、がたつきが目立つのを防止することができる。また、特定色の領域で画像の輝度の変化が小さな領域で色強調することにより色相および彩度が強調されるようにして、見栄えのよい画像とすることができる。
【0061】
次のステップS19においては、輝度成分の画像(Y)に、コントラスト強調係数に従ってコントラストを強調する処理を行う。次のステップS20においては、色相成分の画像(HUE)および彩度成分の画像(SAT)に、ステップS18で補正された色強調係数に従って色強調する処理を行う。そして、未処理の画素が存在するか否かを判断し(ステップS21)、未処理の画素が存在すれば処理をステップS11に戻し、存在しなければ処理を映像補正処理に戻す。
【0062】
以上説明したように、第1の実施の形態における液晶プロジェクタ1が備える映像補正装置11は、画像を強調するための補正量を減少させる程度を定める平滑化係数を、特定色の領域の面積に基づいて決定し、平滑化係数でコントラスト強調係数および色強調係数を補正する。そして、画像を構成する複数の画素それぞれの画素値を、コントラスト強調係数で定まる補正量および色強調係数で定まる補正量で補正することにより、画像が強調される。このため、大きな面積の特定色の領域と小さな面積の特定色の領域とで強調の程度を異ならせるので、画像を適切に強調することができる。
【0063】
また、特定色の領域の面積が大きいほど補正量を減少させる程度を大きくする平滑化係数を決定するので、特定色の領域の面積が大きいほど画像を強調する程度が小さくなり、強調されることにより画像中の大きな領域で画素値が急激に変化する部分が発生するのを防止することができる。
【0064】
また、特定色の領域に含まれる処理対象画素の画素値と周辺の画素の画素値との差が大きいほど補正量が小さくなるように、コントラスト強調係数および色強調係数を補正する。このため、画素値の変化の大きな部分が強調されることによりさらに画素値の差が大きくなるのを防止して、画質を向上することができる。
<第2の実施の形態>
次に第2の実施の形態における液晶プロジェクタ1Aについて説明する。第1の実施の形態における液晶プロジェクタ1と同じ部材には同じ符号を付し、説明は繰り返さない。
【0065】
図5は、本発明の第2の実施の形態における液晶プロジェクタの回路構成を示すブロック図である。図5を参照して、液晶プロジェクタ1Aは、映像補正装置11Aと、ディスプレイ部41とを備える。
【0066】
映像補正装置11Aは、外部からRGB表色系の画像が入力される色変換部21と、特定色判定部23と、特定色の画素を含む領域の面積に基づき平滑化係数を決定する面積判定部25Aと、コントラスト強調部29と、コントラスト強調された輝度成分の画像を平滑化するための第1平滑化処理部37と、色強調部33と、色強調された色相成分の画像および彩度成分の画像を平滑化するための第2平滑化処理部39と、HSV表色系の画像をRGB表色系に変換する出力信号算出部35と、を含む。
【0067】
面積判定部25Aは、画素数と平滑化係数との関係を定義する関数を予め記憶しており、この関数を用いて画素数から平滑化係数を算出する。また、複数の平滑化係数それぞれに画素数を関連付けた平滑化係数テーブルを予め記憶しておき、この平滑化係数テーブルを用いて、画素数に関連付けられた平滑化係数を決定するようにしてもよい。面積判定部25Aは、平滑化係数を第1平滑化処理部37および第2平滑化処理部39に出力する。
【0068】
コントラスト強調部29は、輝度成分の画像(Y)に、コントラスト強調係数に従ってコントラストを強調する処理を行う。コントラストを強調する処理は、従来用いられている手法を用いればよく、例えば、輝度の低い画素の輝度をより低くし、輝度の高い画素の輝度をより高い輝度に補正する。コントラスト強調部29によりコントラスト強調された輝度成分の画像(Y)を第1平滑化処理部37に出力する。
【0069】
第1平滑化処理部37は、コントラスト強調部29によりコントラスト強調された輝度成分の画像(Y)を、平滑化処理する。第1平滑化処理部37は、平滑化の程度が異なる複数の平滑化フィルタを記憶しており、面積判定部25Aから入力される平滑化係数に基づいて、複数の平滑化フィルタのうちから平滑化に用いるフィルタを決定する。第1平滑化処理部37は、平滑化係数が大きいほど、平滑化するための補正量が大きくなる平滑化フィルタを用いる。これにより、特定色の領域が大きいほど、コントラスト強調された輝度が周辺の画素の輝度に近づくように平滑化される。
【0070】
特定色の領域が大きいほど、平滑化するための補正量が大きくなる平滑化フィルタで平滑化するのは、次の理由による。面積の大きな特定色の領域でコントラスト強調された結果、画像の輝度が急激に変化する部分が発生する場合がある。この場合に、平滑化するための補正量が大きな平滑化フィルタで平滑化すれば、画像の輝度の変化が急激になりすぎて発生した段差をなくすことができる。また、面積の小さな特定色の領域で、平滑化するための補正量が小さくなる平滑化フィルタで平滑化するので、画像の輝度の変化が強調され、輝度の変化が激しく見栄えのよい画像とすることができる。
【0071】
色強調部33は、色相成分の画像(HUE)および彩度成分の画像(SAT)に、色強調係数に従って色を強調する処理を行う。色を強調する処理は、従来用いられている手法を用いればよく、例えば、所定の範囲にある色相および彩度を、目標の色相および彩度に近づけるように補正する。色強調部33は、色強調した色相成分の画像(HUE)および彩度成分の画像(SAT)を第2平滑化処理部39に出力する。
【0072】
第2平滑化処理部39は、色強調部33により色強調された色相成分の画像(HUE)および彩度成分の画像(SAT)を、平滑化処理する。第2平滑化処理部39は、平滑化の程度が異なる複数の平滑化フィルタを記憶しており、面積判定部25Aから入力される平滑化係数に基づいて、複数の平滑化フィルタのうちから平滑化に用いるフィルタを決定する。第2平滑化処理部39は、平滑化係数が大きいほど、平滑化するための補正量が大きくなる平滑化フィルタを用いる。これにより、特定色の領域が大きいほど、色強調された色相および彩度が周辺の画像の色相および彩度に地被く近づくように平滑化される。
【0073】
特定色の領域が大きいほど、平滑化するための補正量が大きくなる平滑化フィルタで平滑化するのは、次の理由による。面積の大きな特定色の領域で色相および彩度が強調された結果、画像の色相および彩度が急激に変化する部分が発生する場合がある。この場合に、平滑化するための補正量が大きくなる平滑化フィルタで平滑化すれば、画像の色相および彩度の変化が急激になりすぎて発生した段差をなくすことができる。また、面積の小さな特定色の領域で、平滑化するための補正量が小さくなる平滑化フィルタで平滑化するので、画像の色相および彩度の変化が強調され、色相および彩度の変化が激しく見栄えのよい画像とすることができる。
【0074】
図6は、第2の実施の形態における映像補正装置で実行される映像補正処理の流れの一例を示す図である。図6を参照して、ステップS01〜ステップS05までの処理は、図3に示した第1の実施の形態における映像補正装置で実行される映像補正処理のステップS01〜ステップS05までの処理とそれぞれ同じなので、ここでは説明を繰り返さない。
【0075】
ステップS05において、未処理の特定色の領域が存在しないと判断された場合、次のステップS06Aにおいて、強調処理を実行する。強調処理は、従来知られている輝度成分の画像(Y)にコントラストを強調するコントラスト強調処理と、色相成分の画像(HUE)および彩度成分の画像(SAT)に色相および彩度を強調する色強調処理が実行される。
【0076】
次のステップS06Bにおいては、平滑化処理を実行する。そして、平滑化された輝度成分の画像(Y)と、色相成分の画像(HUE)および彩度成分の画像(SAT)とを、RGB表色系のR画像、G画像およびB画像に変換し(ステップS07)、それらをディスプレイ部41に出力する(ステップS08)。
【0077】
図7は、平滑化処理の流れの一例を示すフローチャートである。平滑化処理は、図6のステップS06Bにおいて実行される処理である。図7を参照して、画像に含まれる画素のうちから処理対象とする画素を選択する(ステップS31)。ここでは、選択された画素を処理対象画素という。
【0078】
そして、処理対象画素が特定色の領域に含まれるか否かを判断する(ステップS32)。処理対象画素が特定色の領域に含まれるならば処理をステップS33に進め、そうでなければ処理をステップS34に進める。特定色の領域は、図6のステップS03で抽出された特定色の領域であり、特定色画像において処理対象画素に対応する画素の画素値が「1」ならば特定色の領域に含まれると判断する。
【0079】
ステップS33においては、処理対象画素に対応する平滑化係数に、図6のステップS04において決定された平滑化係数を設定し、処理をステップS35に進める。ステップS34においては、処理対象画素に対応する平滑化係数に「0」を設定し、処理をステップS35に進める。
【0080】
ステップS35においては、ステップS33またはステップS34において設定され平滑化係数に対応する平滑化フィルタを決定する。平滑化するための補正量が異なる複数の平滑化フィルタを記憶しており、複数の平滑化フィルタのうちから処理対象画素に対して設定されている平滑化係数に対応する平滑化フィルタを決定する。平滑化係数が大きいほど、平滑化するための補正量が大きくなる平滑化フィルタを平滑化処理に用いる平滑化フィルタに決定する。輝度成分の画像(Y)に対して用いる平滑化フィルタと、色相成分の画像(HUE)に対して用いる平滑化フィルタと、彩度成分の画像(SAT)に対して用いる平滑化フィルタとを決定する。平滑化係数が0の場合には、平滑化フィルタを決定しない。すなわち、平滑化係数が0の場合には、平滑化処理は実行しない。特定色の領域のみを平滑化するためである。
【0081】
ステップS36においては、図6のステップS06Aにおいて、コントラスト強調された輝度成分の画像(Y)を、ステップS35で決定された平滑化フィルタを用いて平滑化し、輝度を補正する。ステップS37においては、図6のステップS06Aにおいて、色強調された色相成分の画像(HUE)を、ステップS35で決定された平滑化フィルタを用いて平滑化し、色相を補正する。ステップS38においては、図6のステップS06Aにおいて、色強調された彩度成分の画像(SAT)を、ステップS35で決定された平滑化フィルタを用いて平滑化し、彩度を補正する。
【0082】
そして、未処理の画素が存在するか否かを判断し(ステップS37)、未処理の画素が存在するならば処理をステップS31に戻し、存在しなければ処理を図6に示した映像補正処理に戻す。
【0083】
以上説明したように、第2の実施の形態における液晶プロジェクタ1Aは、特定色の領域に含まれる複数の画素に対応し、平滑化するための補正の程度を定める平滑化係数を、特定色の領域の大きさに基づいて決定する。そして、強調された画像を構成する複数の画素それぞれの画素値を、平滑化係数に従って平滑化した値に補正する。このため、特定色の領域を平滑化するための補正の程度を、特定色の領域の大きさに応じて異ならせることができる。大きな面積の特定色の領域と小さな面積の特定色の領域とで平滑化の程度が異なるので、強調された画像を適切に平滑化することができる。
【0084】
また、特定色の領域が大きいほど平滑化するための補正の程度の大きい値に平滑化係数を決定するので、強調されることにより画像中の大きな特定色の領域で画素値が急激に変化する部分が発生するのを防止し、画質を向上することができる。
なお、上述した実施の形態においては、映像表示装置の一例として液晶プロジェクタ1を例に説明したが、CCDまたはCMOSセンサと映像補正装置11,11Aとを備えた撮像装置として、本発明を捉えることができる。また、図3および図4、または図6および図7に示した映像補正処理を、映像補正装置11に実行させるための映像補正方法として発明をとらえることができ、さらに、図3および図4、または図6および図7に示した映像補正処理をコンピュータに実行させるための映像補正プログラムとして発明を捉えることができる。この際、コンピュータのCPUが映像補正プログラムを実行することにより、図3および図4、または図6および図7に示した映像補正処理がCPUにより実行される。
【0085】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1の実施の形態における液晶プロジェクタの回路構成の概略を示すブロック図である。
【図2】画素数と平滑化係数との関係を示す図である。
【図3】映像補正装置で実行される映像補正処理の流れの一例を示す図である。
【図4】強調処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施の形態における液晶プロジェクタの回路構成を示すブロック図である。
【図6】第2の実施の形態における映像補正装置で実行される映像補正処理の流れの一例を示す図である。
【図7】平滑化処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0087】
1,1A 液晶プロジェクタ、11,11A 映像補正装置、21 色変換部、23 特定色判定部、25,25A 面積判定部、27 コントラスト強調係数算出部、29 コントラスト強調部、31 色強調係数算出部、33 色強調部、35 出力信号算出部、37 第1平滑化処理部、39 第2平滑化処理部、41 ディスプレイ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素で構成された画像から所定の色を有する領域を抽出する領域抽出手段と、
前記画像を強調するための補正量を定めるための強調係数を決定する強調係数算出手段と、
前記画像を構成する複数の画素それぞれの画素値を、前記画素値と決定された前記強調係数とに基づき定まる補正量で補正する強調手段と、
抽出された前記領域に含まれる複数の画素に対応し、画像を強調するための補正量を減少させる程度を定める平滑化係数を、抽出された前記領域の大きさに基づいて決定する平滑化係数決定手段と、を備え、
前記強調係数算出手段は、決定された前記平滑化係数で前記強調係数を補正する、映像補正装置。
【請求項2】
前記平準化係数決定手段は、前記抽出された領域が大きいほど前記補正量を減少させる程度の大きな値に前記平滑化係数を決定する、請求項1に記載の映像補正装置。
【請求項3】
前記強調係数算出手段は、抽出された前記領域に含まれる処理対象画素の画素値と周辺の画素の画素値との差が大きいほど前記補正量が小さくなるように、前記強調係数を補正する、請求項1または2に記載の映像補正装置。
【請求項4】
複数の画素で構成された画像から所定の色を有する領域を抽出する領域抽出手段と、
前記画像を強調するための補正量を定めるための強調係数を決定する強調係数算出手段と、
前記画像を構成する複数の画素それぞれの画素値を、前記画素値と決定された前記強調係数とにより定まる補正量で補正する強調手段と、を備え、
前記強調係数算出手段は、抽出された前記領域に含まれる処理対象画素の画素値と周辺の画素の画素値との差が大きいほど画像を強調するための補正量が小さくなるように、前記強調係数を補正する、映像補正装置。
【請求項5】
画像から所定の色を有する領域を抽出する領域抽出手段と、
前記画像を強調する強調手段と、
抽出された前記領域に含まれる複数の画素に対応し、平滑化するための補正の程度を定める平滑化係数を、抽出された前記領域の大きさに基づいて決定する平滑化係数決定手段と、
強調された前記画像を構成する複数の画素それぞれの画素値を、決定された前記平滑化係数に従って平滑化した値に補正する平滑化手段と、を備えた映像補正装置。
【請求項6】
前記平滑化係数決定手段は、前記抽出された領域が大きいほど平滑化するための補正の程度の大きい値に前記平滑化係数を係数に決定する、請求項5に記載の映像補正装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の映像補正装置と、
前記映像補正装置が出力する画像を表示する表示手段と、を備えた映像表示装置。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の映像補正装置と、
被写体を撮像し、前記映像補正装置に画像を出力する撮像手段と、を備えた撮像装置。
【請求項9】
複数の画素で構成された画像から所定の色を有する領域を抽出するステップと、
前記画像を強調するための補正量を定めるための強調係数を決定するステップと、
抽出された前記領域に含まれる複数の画素に対応し、画素値を強調するための補正量を減少させる程度を定める係数を、抽出された前記領域の大きさに基づいて決定するステップと、
決定された前記平滑化係数で前記強調係数を補正するステップと、
前記画像を構成する複数の画素それぞれの画素値を、前記画素値と前記強調係数とにより定まる補正量で補正するステップと、をコンピュータに実行させる映像補正プログラム。
【請求項10】
複数の画素で構成された画像から所定の色を有する領域を抽出するステップと、
前記画像を強調するための補正量を定めるための強調係数を決定するステップと、
抽出された前記領域に含まれる処理対象画素の画素値と周辺の画素の画素値との差が大きいほど画像を強調するための補正量が小さくなるように、前記強調係数を補正するステップと、
前記画像を構成する複数の画素それぞれの画素値を、前記画素値と決定された前記強調係数とにより定まる補正量で補正するステップと、をコンピュータに実行させる映像補正プログラム。
【請求項11】
画像から所定の色を有する領域を抽出するステップと、
前記画像を強調するステップと、
抽出された前記領域に含まれる複数の画素に対応し、平滑化するための補正の程度を定める係数を、抽出された前記領域の大きさに基づいて決定するステップと、
強調された前記画像を構成する複数の画素それぞれの画素値を、決定された前記係数に従って平滑化した値に補正するステップと、をコンピュータに実行させる映像補正プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−219289(P2008−219289A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51895(P2007−51895)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】