説明

有機ヒ素剤を使用する併用療法

本発明は、併用療法を提供し、ここで1種以上の他の治療剤が有機ヒ素剤、好ましくは、SGLU−1もしくはその薬学的に受容可能な塩とともに投与される。本発明はまた、癌の処置のための方法に関し、上記方法は、別の治療剤と組み合わせてSGLU−1を投与する工程を包含する。本発明の別の局面は、SGLU−1および別の治療剤を含むキットに関する。一実施形態において、この別の治療剤は、ボルテゾミブ、メルファラン、デキサメタゾン、イリノテカン、オキサリプラチン、5−フルオロウラシル、ドキソルビシン、およびソラフェニブから選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
この出願は、2007年11月2日に出願された、米国仮出願第61/001,575号(この内容は、その全体が参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
三酸化ヒ素(無機化合物)は、再発したもしくは難治性の急性前骨髄球性白血病(APL)を有する患者の処置に対して既に承認されており、他の白血病型のための治療として評価されつつある。しかし、米国での予備データおよび近年の経験では、他の血液の癌においても同様に、三酸化ヒ素の一定の役割が示唆されている。その結果として、抗白血病薬剤としての三酸化ヒ素の活性は、多くのタイプの白血病において、現在調査されつつある。調査されつつある白血病タイプのうちのいくつかの応答速度に関して、上記結果は有利に思われるが、三酸化ヒ素の全身毒性は、問題である(Soignetら,1999;Wiernikら,1999;Geisslerら,1999;Rousselotら,1999)。
【0003】
S−ジメチルアルシノ−グルタチオン(SGLU−1)は、妨害されたミトコンドリア機能、増大した反応性酸素種(ROS)生成、改変されたシグナル伝達、および抗脈管形成によって媒介される、多面的な作用機構を有し、複数のインビトロおよび動物癌モデルに対して活性であることが示されてきた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本発明の一局面は、1種以上の他の治療剤が、有機ヒ素剤、好ましくは、以下に示されるSGLU−1もしくはその薬学的に受容可能な塩:
【0005】
【化1】

とともに投与される併用療法を提供する。
【0006】
このような併用処置は、上記処置の個々の成分の同時、逐次的もしくは別個の投与によって、達成され得る。
【0007】
特定の実施形態において、本発明は、癌の処置のための方法に関し、上記方法は、別の治療剤と組み合わせてSGLU−1を投与する工程を包含する。特定の実施形態において、上記癌は、脳、肺、肝臓、脾臓、腎臓、リンパ節、小腸、膵臓、血球、骨、結腸、胃、乳房、子宮内膜、前立腺、精巣、卵巣、中枢神経系、皮膚、頭頸部、食道、および骨髄の癌から選択される。
【0008】
本発明の別の局面は、SGLU−1および別の治療剤を含むキットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、HCT116結腸癌、RPMI 8226多発性骨髄腫、およびHepG2肝細胞癌細胞株におけるSGLU−1単一薬剤の用量応答を示す。
【図2】図2は、実施例2に記載されるように、メルファラン(2.5μM)とSGLU−1(0.31μMおよび0.63μM)併用、および単一薬剤の存在下でインキュベートしたRPMI 8226細胞の%生存性 対 ビヒクルコントロールを示す。
【図3】図3は、実施例2に記載されるように、ボルテゾミブ(2.5nM)とSGLU−1(0.625μMおよび1.125μM)併用、および単一薬剤の存在下でインキュベートしたRPMI 8226細胞の、%生存性 対 ビヒクルコントロールを示す。
【図4】図4は、実施例2に記載されるように、デキサメタゾン(3.75nMおよび7.5nM)とSGLU−1(0.31μMおよび1.25μM)併用、および単一薬剤の存在下でインキュベートしたRPMI 8226細胞の、%生存性 対 ビヒクルコントロールを示す。
【図5】図5は、実施例2に記載されるように、イリノテカン(1μM)とSGLU−1(0.63μMおよび1.25μM)併用、および単一薬剤の存在下でインキュベートしたHCT116細胞の、%生存性 対 ビヒクルコントロールを示す。
【図6】図6は、実施例2に記載されるように、オキサリプラチン(5μM)とSGLU−1(0.31μMおよび0.63μM)併用、および単一薬剤の存在下でインキュベートしたHCT116細胞の、%生存性 対 ビヒクルコントロールを示す。
【図7】図7は、実施例2に記載されるように、5−フルオロウラシル(3μM)とSGLU−1(0.625μMおよび1.25μM)併用、および単一薬剤の存在下でインキュベートしたHCT116細胞の、%生存性 対 ビヒクルコントロールを示す。
【図8】図8は、実施例2に記載されるように、5−フルオロウラシル(2μM)とSGLU−1(1μMおよび2μM)併用、および単一薬剤の存在下でインキュベートしたHepG2細胞の、%生存性 対 ビヒクルコントロールを示す。
【図9】図9は、実施例2に記載されるように、ドキソルビシン(78nM)とSGLU−1(1μMおよび2μM)併用、および単一薬剤の存在下でインキュベートしたHepG2細胞の、%生存性 対 ビヒクルコントロールを示す。
【図10】図10は、実施例2に記載されるように、ソラフェニブ(312.5nM)とSGLU−1(1μMおよび2μM)併用、および単一薬剤の存在下でインキュベートしたHepG2細胞の、%生存性 対 ビヒクルコントロールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(発明の詳細な説明)
本発明の一局面は、1種以上の他の治療剤が、有機ヒ素剤、好ましくは、以下に示されるSGLU−1:
【0011】
【化2】

とともに投与される併用療法を提供する。
【0012】
このような併用処置は、上記処置の個々の成分の同時、逐次的、もしくは別個の投与によって達成され得る。このような併用は、相乗的(併用によって誘発される効果が、個々の薬物によって誘発される効果の予測される合計を超える)であってもよいし、相加的(併用によって誘発される効果が、個々の薬物による効果の合計に等しい)であってもよい。
【0013】
特定の実施形態において、SGLU−1は、ボルテゾミブ(bortezomib)、メルファラン、デキサメタゾン、イリノテカン、オキサリプラチン、5−フルオロウラシル、ドキソルビシン、およびソラフェニブ(sorafenib)から選択される別の治療剤と組み合わせて投与される。特定の実施形態において、上記他の治療剤は、ボルテゾミブ、デキサメタゾン、イリノテカン、オキサリプラチン、およびソラフェニブ、好ましくは、ボルテゾミブから選択される。特定のこのような実施形態において、上記併用は、相乗的である。特定の代替の実施形態において、上記併用は、相加的である。
【0014】
特定の実施形態において、SGLU−1は、上記併用が相乗的であるように、別の治療剤と組み合わせて投与される。特定のこのような実施形態において、上記他の治療剤は、ボルテゾミブおよびオキサリプラチンから選択される。
【0015】
特定の実施形態において、SGLU−1は、上記併用が相加的であるように、別の治療剤と組み合わせて投与される。特定のこのような実施形態において、上記他の治療剤は、デキサメタゾン、イリノテカン、およびソラフェニブから選択される。
【0016】
本発明の別の局面は、癌の処置のための方法に関し、上記方法は、別の治療剤と組み合わせて、SGLU−1を投与する工程を包含する。特定のこのような実施形態において、本発明は、脳、肺、肝臓、脾臓、腎臓、リンパ節、小腸、膵臓、血球、骨、結腸、胃、乳房、子宮内膜、前立腺、精巣、卵巣、中枢神経系、皮膚、頭頸部、食道、および骨髄の癌から選択される癌の処置するための方法に関する。特定のこのような実施形態において、上記癌は、血液学的な癌である。
【0017】
特定の実施形態において、上記癌は、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄形成異常、骨髄増殖性疾患、および難治性白血病から選択される。特定のこのような実施形態において、上記癌は、急性前骨髄球性白血病である。
【0018】
特定の実施形態において、上記癌は、多発性骨髄腫、結腸、および肝細胞癌から選択される。
【0019】
本明細書で使用される場合、および当該分野で十分に理解されるように、「処置」とは、有益な結果もしくは所望の結果(臨床的結果を含む)を得るためのアプローチである。有益なもしくは望ましい臨床的結果としては、検出可能か検出不能かに拘わらず、1つ以上の症状もしくは状態の緩和もしくは改善、疾患の程度の軽減、疾患の安定化した(すなわち、悪化しない)状態、疾患の拡がりの防止、疾患進行の遅延もしくは緩慢化、上記疾患状態の改善もしくは一時的緩和、ならびに寛解(部分的もしくは全体的に拘わらず)が挙げられるが、これらに限定されない。「処置」とはまた、処置を受けていない場合に予測される生存と比較して、長期の生存を意味し得る。
【0020】
本発明の別の局面は、SGLU−1および別の治療剤を含むキットに関する。特定の実施形態において、上記他の治療剤は、ボルテゾミブ、メルファラン、デキサメタゾン、イリノテカン、オキサリプラチン、5−フルオロウラシル、ドキソルビシン、およびソラフェニブから選択される。
【0021】
上記SGLU−1の投与は、数分〜数日の範囲に及ぶ間隔だけ、上記他の治療剤の前に行われ得るか、もしくは上記他の治療剤の後に行われ得る。特定のこのような実施形態において、上記SGLU−1および上記他の治療剤は、互いに、約1分、約5分、約10分、約30分、約60分、約2時間、約4時間、約6時間、8時間、約10時間、約12時間、約18時間、約24時間、約36時間、もしくはさらに約48時間以内に、またはそれ以上の間隔で投与され得る。好ましくは、上記SGLU−1および上記他の治療剤の投与は、互いに、約1分、約5分、約30分、もしくはさらに約60分以内であり得る。
【0022】
特定の実施形態において、上記SGLU−1および上記他の治療剤は、異なる投与レジメンに従って投与され得(例えば、上記SGLU−1は、例えば、1日に1回投与され得る一方で、上記他の治療剤が、3週間ごとに1回のみ投与され得る)、その結果、ある場合には、上記SGLU−1および上記他の治療剤の投与は、互いに、約60分以内であり得るが、他の場合には、上記SGLU−1および上記他の治療剤の投与は、互いに、数日もしくはさらには数週間以内である。
【0023】
特定の実施形態において、SGLU−1は、薬学的キャリアをさらに含む処方物として提供され、ここで上記処方物は、5〜8、もしくはさらに5〜7のpHを有する。
【0024】
本明細書で記載される化合物は、当該分野で周知であるように、処置されるべき障害、ならびに上記患者の年齢、状態および体重に依存して、種々の形態において投与され得る。例えば、上記化合物が、経口投与されるべき場合、それらは、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、もしくはシロップ剤として処方され得る;または非経口投与のためには、それらは、注射物(静脈内、筋肉内、もしくは皮下)として、または点滴注入処方物として処方され得る。これら処方物は、従来の手段によって調製され得、そして望ましい場合、上記活性成分は、任意の従来の添加剤もしくは賦形剤(例えば、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味矯臭薬、可溶化剤、懸濁補助物質、乳化剤、コーティング剤、シクロデキストリン、および/もしくは緩衝化剤)と混合され得る。上記投与は、上記症状、上記患者の年齢および体重、処置もしくは予防されるべき障害の性質および重篤度、投与経路ならびに上記薬物の形態に依存して変動する。単一投与形態を生成するためのキャリア物質と組み合わされ得る活性成分の量は、一般に、治療効果を生じる上記化合物の量である。
【0025】
特定の実施形態において、上記SGLU−1および上記他の治療剤は、同じ形態で存在し得る(例えば、両方とも、錠剤として投与され得るか、または両方とも、静脈内投与され得る)一方で、特定の代替の実施形態において、上記SGLU−1および上記他の治療剤は、異なる形態で存在し得る(例えば、一方は錠剤として投与され得るが、他方は静脈内投与される)。
【0026】
所定の患者において処置の効力に関して、最も有効な結果を生じる組成物の投与の正確な時間および/もしくは量は、特定の化合物の活性、薬物動態、およびバイオアベイラビリティー、上記患者の生理学的状態(年齢、性別、疾患タイプおよび段階、全般的な肉体的状態、所定の投与量に対する応答性、ならびに薬物療法のタイプを含む)、投与経路などに依存する。しかし、上記ガイドラインは、上記処置を細かく調和させるため、例えば、至適時間および/もしくは投与量を決定するためのベースとして使用され得、これらは、上記被験体をモニターする工程、ならびに上記投与量および/もしくはタイミングを調節する工程からなる慣用的実験のみを要する。
【0027】
語句「薬学的に受容可能な」とは、妥当な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症なくして、ヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに適切な、妥当な利益/リスク比と釣り合っている、それらリガンド、物質、組成物および/もしくは投与形態に言及するために、本明細書で使用される。
【0028】
語句「薬学的に受容可能なキャリア」とは、本明細書で使用される場合、薬学的に受容可能な物質、組成物、もしくはビヒクル(例えば、液体もしくは個体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒もしくは被包剤(encapsulating material))を意味する。各キャリアは、上記処方物の他の成分と適合性でありかつ上記患者に有害でないという意味において「受容可能な」であるはずである。薬学的に受容可能なキャリアとして働き得る物質のいくつかの例としては、以下が挙げられる:(1)糖(例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース);(2)デンプン(例えば、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、および置換されたもしくは置換されていないβ−シクロデキストリン);(3)セルロース、およびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロース);(4)粉末化トラガカントガム;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)賦形剤(例えば、カカオ脂および坐剤用ワックス);(9)油(例えば、落花生油、綿実油、紅花油、ごま油、オリーブ油、コーン油、および大豆油);(10)グリコール(例えば、プロピレングリコール);(11)ポリオール(例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコール);(12)エステル(例えば、オレイン酸エチル、およびラウリン酸エチル);(13)寒天;(14)緩衝化剤(例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム);(15)アルギン酸;(16)発熱物質非含有水;(17)等張性生理食塩水;(18)リンゲル溶液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;ならびに(21)薬学的処方物において使用される他の非毒性の適合性物質。特定の実施形態において、本発明の薬学的組成物は、非発熱性である(すなわち、患者に投与された場合に、顕著な体温上昇を誘導しない)。
【0029】
用語「薬学的に受容可能な塩」とは、上記インヒビターの比較的非毒性の、無機酸付加塩および塩基付加塩をいう。これら塩は、上記インヒビターの最終的な単離および精製の間に、またはその遊離塩基形態において精製されたインヒビターと、適切な有機酸もしくは無機酸と別個に反応させ、このように形成された塩を単離することによって、その場で調製され得る。代表的な塩としては、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチレート、メシレート、グルコヘプタン酸塩、ラクトビオネート、ラウリル硫酸塩、およびアミノ酸塩などが挙げられる(例えば、Bergeら(1977)「Pharmaceutical Salts」,J.Pharm.Sci.66:1−19を参照のこと)。
【0030】
他の場合において、本発明の方法において有用なインヒビターは、1個以上の酸性官能基を含み得、従って、薬学的に受容可能な塩を、薬学的に受容可能な塩基とともに形成し得る。用語「薬学的に受容可能な塩」とは、これらの場合において、インヒビターの比較的非毒性の,無機塩基付加塩および有機塩基付加塩をいう。これら塩は、上記インヒビターの最終的な単離および精製の間に、またはその遊離酸形態において上記精製されたインヒビターと、適切な塩基(例えば、薬学的に受容可能な金属カチオンの水酸化物、炭酸物、もしくは炭酸水素物)と、アンモニアと、もしくは薬学的に受容可能な1級、2級もしくは3級の有機アミンと別個に反応させることによって、同様にその場で調製され得る。代表的なアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、およびアルミニウム塩などが挙げられる。塩基付加塩の形成のために有用な代表的な有機アミンとしては、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどが挙げられる(例えば、Bergeら(前出)を参照のこと)。
【0031】
湿潤剤(wetting agent)、乳化剤、および滑沢剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム)、ならびに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、矯味矯臭剤、および芳香剤、保存剤および抗酸化剤はまた、上記組成物中に存在し得る。
【0032】
薬学的に受容可能な抗酸化剤の例としては、以下が挙げられる:(1)水溶性抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、システインヒドロクロリド、重硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど);(2)油溶性抗酸化剤(例えば、アスコルビルパルミテート、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロールなど);および(3)金属キレート化剤(例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など)。
【0033】
経口投与に適切な処方物は、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ(風味付けした基剤(flavored basis)、通常は、スクロースおよびアカシアガムもしくはトラガカントガムを使用する)、散剤、顆粒剤の形態において、または水性液体もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁物として、または水中油型もしくは油中水型液体エマルジョンとして、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤として、またはトローチ剤(pastille)(不活性マトリクス(例えば、ゼラチンおよびグリセリン、もしくはスクロースおよびアカシアガムを使用する)ならびに/あるいはマウスウォッシュなどとして存在し得、各々は、活性成分として所定の量のインヒビターを含む。組成物はまた、ボーラス、舐剤、もしくはパスタ剤としても投与され得る。
【0034】
経口投与のための固体投与形態(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤など)において、上記活性成分は、1種以上の薬学的に受容可能なキャリア(例えば、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム、および/もしくは以下のうちのいずれかと混合される:(1)充填剤もしくは増量剤(例えば、デンプン、シクロデキストリン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/もしくはケイ酸);(2)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、および/もしくはアカシアガム);(3)保湿剤(humectant)(例えば、グリセロール);(4)崩壊剤(例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケート、および炭酸ナトリウム);(5)溶解遅延剤(solution retarding agent)(例えば、パラフィン);(6)吸収促進剤(例えば、4級アンモニウム化合物);(7)湿潤剤(例えば、アセチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート);(8)吸収剤(例えば、カオリンおよびベントナイトクレイ);(9)滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物);ならびに(10)着色剤。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、上記薬学的組成物はまた、緩衝化剤を含み得る。類似のタイプの固体組成物はまた、ラクトースもしくは乳糖、および高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を使用して、軟質充填ゼラチンカプセルおよび硬質充填ゼラチンカプセルにおける充填剤として使用され得る。
【0035】
錠剤は、必要に応じて、1種以上の補助成分と圧縮もしくは成形によって作製され得る。圧縮された錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンもしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、グリコール酸ナトリウムデンプンもしくは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤もしくは分散剤を使用して調製され得る。成形された錠剤は、適切な機械中で、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化インヒビターの混合物を成形することによって作製され得る。
【0036】
錠剤、および他の固体投与形態(例えば、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤)は、必要に応じて刻み目が入れられていてもよいし(score)、コーティングおよび殻(例えば、腸溶性コーティングおよび医薬処方分野で周知の他のコーティング)とともに調製されてもよい。それらはまた、例えば、種々の割合においてヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用して、上記活性成分の遅延放出もしくは制御された放出を提供して、所望の放出プロフィール、他のポリマーマトリクス、リポソームおよび/もしくはミクロスフェアを提供するように、処方され得る。それらは、例えば、細菌保持フィルタを介する濾過によって、または使用直前に、滅菌水、もしくはいくつかの他の滅菌注射用媒体中に溶解され得る滅菌固体組成物の形態で、滅菌剤を組み込むことによって、滅菌され得る。これら組成物はまた、必要に応じて、不透明化剤(opacifying agent)を含み得、組成物の一部(of a composition)であり得、これらは、上記活性成分のみを、または優先的には、胃腸管の特定の部分において、必要に応じて、遅延した様式において放出する。使用され得る埋め込み組成物(embedding composition)の例は、ポリマー物質およびワックスを含む。上記活性成分はまた、適切な場合、上記賦形剤のうちの1種以上とともに、微小被包形態(micro−encapsulated form)であり得る。
【0037】
経口投与用の液体投与形態としては、薬学的に受容可能なエマルジョン、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁物、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられる。上記活性化合物に加えて、上記液体投与形態は、当該分野で一般に使用される不活性希釈剤(例えば、水もしくは他の溶媒)、可溶化剤および乳化剤(例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール)、油(特に、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ひまし油、およびごま油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物を含み得る。
【0038】
不活性希釈剤の他に、上記経口用組成物は、補助剤(例えば、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、矯味矯臭剤、着色剤、芳香剤および保存剤)を含み得る。
【0039】
懸濁物は、上記活性インヒビターに加えて、懸濁剤(例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド(aluminum metahydroxide)、ベントナイト、寒天およびトラガカントガム、ならびにこれらの混合物を含み得る。
【0040】
非経口投与に適した本発明の薬学的組成物は、1種以上のインヒビターを、1種以上の薬学的に受容可能な滅菌水性もしくは非水性溶液、分散物、懸濁物もしくはエマルジョン(これらは、抗酸化剤、緩衝化剤、静菌剤、意図されたレシピエントの血液と等張である処方物にする溶質、または懸濁剤もしくは濃化剤を含み得る)、または使用直前に滅菌注射用溶液もしくは懸濁物に再構成され得る滅菌散剤と組み合わせて含み得る。
【0041】
本発明の薬学的組成物において使用され得る適切な水性および非水性キャリアの例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの適切な混合物、植物性油(例えば、オリーブ油)、および注射用有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)が挙げられる。適切な流動性は、例えば、コーティング物質(例えば、レシチン)の使用によって、分散物の場合には必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持され得る。
【0042】
これら組成物はまた、補助物質(例えば、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤)を含み得る。微生物活動の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸など)を含めることによって確実にされ得る。張度調節剤(例えば、糖、塩化ナトリウムなど)を上記組成物に含めることもまた、望ましいかもしれない。さらに、上記注射用薬学的形態の長期の吸収は、吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を含めることによってもたらされ得る。
【0043】
いくつかの場合では、薬物の効果を長期化するために、皮下注射もしくは筋肉内注射からの上記薬物の吸収を遅らせることは望ましい。例えば、非経口投与された薬物の遅延された吸収は、上記薬物を油性ビヒクルに溶解もしくは懸濁することによって達成される。
【0044】
注射用デポー形態は、生分解性ポリマー(例えば、ポリラクチド−ポリグリコリド)中にインヒビターの微小被包マトリクスを形成することによって作製される。薬物 対 ポリマーの比および使用される特定のポリマーの性質に依存して、薬物放出速度は、制御され得る。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射用処方物はまた、上記薬物を、身体組織と適合性であるリポソームもしくはマイクロエマルジョン中に捕捉することによって調製される。
【0045】
語句「非経口投与」および「非経口的に投与される」とは、本明細書で使用される場合、腸管投与および局所投与以外の投与様式(通常、注射による)を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、包内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管(transtracheal)、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内および胸骨内の注射、および注入が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
語句「全身投与」、「全身的に投与される」、「末梢投与」および「末梢に投与される」とは、本明細書で使用される場合、中枢神経系への直接ではない、リガンド、薬物、もしくは他の物質の投与を意味し、その結果、それらは、患者の系に入り、従って、代謝および他の同様のプロセスに供される(例えば、皮下投与)。
【0047】
患者への本発明の治療用組成物の投与は、あるとすれば、毒性を考慮に入れて、化学療法剤の投与のための一般的プロトコルに従う。上記処置サイクルは、必要に応じて反復されることが予測される。種々の標準的治療もしくは補助的癌治療、ならびに外科手術的介入は、上記記載されるヒ素剤と組み合わせて適用され得ることもまた予期される。
【0048】
選択された投与経路に拘わらず、上記インヒビター(これは適切な水和形態において使用され得る)、および/もしくは本発明の薬学的組成物は、当業者に公知の従来の方法によって、薬学的に受容可能な投与形態へと処方される。
【0049】
本発明の薬学的組成物中の上記活性成分の実際の投与レベルは、上記患者に対して毒性でないように、特定の患者に対して所望の治療的応答、組成、および投与様式を達成するに有効な、上記活性成分の量を得るように変動し得る。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
SGLU−1、ボルテゾミブ、デキサメタゾン、ドキソルビシン、メルファラン、5−フルオロウラシル、イリノテカン、ソラフェニブおよびオキサリプラチン単一薬剤の細胞傷害性効果を、CellTiter−Glo(Promega)アッセイを使用して、上記それぞれの細胞株において決定した(SGLU−1については図1。他の単一薬剤についてのデータは示さず)。データ点を、XLfitソフトウェアパッケージを使用してフィットさせ、単一薬剤に関するIC50値を、決定した。上記IC50値に基づいて、上記研究の組み合わせ部分について濃度範囲を選択した。
【0051】
実験設定:RPMI−8226細胞を、RPMI−1640(2mM グルタミンジペプチド、10mM HEPES、1mM ピルビン酸ナトリウム、および10% ウシ胎仔血清(FBS)を補充)中で培養した。HepG2細胞およびHCT116細胞を、RPMI−1640(2mM グルタミンジペプチド、および10% FBSを補充)中で培養した。ボルテゾミブおよびSGLU−1を除く全ての化合物のストック溶液を、DMSO中に調製した。ストック溶液濃度は、上記化合物が細胞培養物に添加されたときに、DMSOの最高濃度が1%を超えないようにした。ボルテゾミブを、製造業者の説明書に従って生理食塩水中に再構成し、SGLU−1を、適切な培養培地中に再構成した。
【0052】
RPMI 8226細胞を、96ウェルプレート中、10,000細胞/ウェルで播種する一方、HepG2細胞およびHCT116細胞を、5,000細胞/ウェルで播種し、37℃、5% CO細胞培養インキュベーターにおいて一晩インキュベートした。播種の24時間後、全ての化合物を、適切なウェルに添加した。細胞を、72時間にわたって化合物に曝し、CellTiter−Gloアッセイを、製造業者の説明書に従って行った。
【0053】
(実施例2)
実施例1からの結果を使用して、あらゆる相乗的相互作用もしくは相加的相互作用を調査するために、上記SGLU−1との併用研究のための各化合物の濃度範囲を選択した。二次元連続希釈濃度マトリクス96ウェルプレートを、試験薬剤の濃度の特有の組み合わせを含む、各ウェルを用いて設定した(プロトタイプのマトリクスプレート設定は、表1に示す)。図2〜10に認められるように、相加的効果および相乗的効果が観察された。
【0054】
【表1】

実験設定:SGLU−1−薬物組み合わせアッセイについては、RPMI−8226細胞を、10,000細胞/ウェルにおいて96ウェルプレートに播種した。HepG2細胞およびHCT116細胞を、5,000細胞/ウェルにおいて96ウェルプレートに播種した。プレートを、37℃、5% CO細胞培養インキュベーター中で一晩インキュベートした。試験化合物を、播種の24時間後に添加した。全ての薬剤のストック溶液を、実施例1に記載されるとおりに調製した。SGLU−1を、各アッセイについて粉末化ストックから新たに作製した。一旦培養培地中に入れたら、それを、上記細胞に添加する前に長くても1時間、氷上で保持した。細胞を、72時間にわたって上記薬物の組み合わせに曝し、その時点で、CellTiter−Glo(Promega)アッセイを、製造業者の説明書に従って行って、生存細胞数を決定した。
【0055】
本明細書で引用される全ての刊行物および特許は、それらの全体が本明細書に参考として援用される。
【0056】
当業者は、慣用的な実験のみを使用して、本明細書で記載される本の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、またはこれらを確かめることが可能である。このような等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌を処置するための方法であって、該方法は、式(I)の構造:
【化3】

を有する化合物もしくはその薬学的に受容可能な塩;ならびに
ボルテゾミブ、デキサメタゾン、イリノテカン、オキサリプラチン、5−フルオロウラシル、およびソラフェニブから選択される、1種以上の他の治療剤
を投与する工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記化合物は、薬学的キャリアをさらに含む処方物として提供され、ここで該処方物は、5〜7のpHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物は、経口投与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物は、静脈内投与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物および前記1種以上の他の治療剤は、一緒になって相乗的である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記1種以上の他の治療剤は、ボルテゾミブおよびオキサリプラチンから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物および前記1種以上の他の治療剤の治療効果は、一緒になって相加的である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記1種以上の他の治療剤は、デキサメタゾン、イリノテカン、5−フルオロウラシル、およびソラフェニブから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記癌は、脳、肺、肝臓、脾臓、腎臓、リンパ節、小腸、膵臓、血球、骨、結腸、胃、乳房、子宮内膜、前立腺、精巣、卵巣、中枢神経系、皮膚、頭頸部、食道、および骨髄の癌から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記癌は、血液学的な癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記癌は、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄形成異常、骨髄増殖性疾患、難治性白血病および前骨髄球性白血病から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物および前記1種以上の他の治療剤は、同時に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記1種以上の他の治療剤は、前記化合物の投与前もしくは投与後に、約5分以内から約48時間以内に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記1種以上の他の治療剤は、前記化合物の投与前もしくは投与後に、約5分以内から約1時間以内に投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
SGLU−1、ならびにボルテゾミブ、メルファラン、デキサメタゾン、イリノテカン、オキサリプラチン、5−フルオロウラシル、ドキソルビシン、およびソラフェニブから選択される別の治療剤を含む、キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−502985(P2011−502985A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532063(P2010−532063)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/012385
【国際公開番号】WO2009/061373
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(507348805)ジオファーム オンコロジー, インコーポレイテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】ZIOPHARM ONCOLOGY,INC.
【住所又は居所原語表記】One First Avenue,Paris Building #34,Navy Yard Plaza,Boston,MA 02129,United States of America
【Fターム(参考)】