説明

有機物を含む磁性微粒子

本発明は水分散可能な、磁性物質と有機化合物、たとえば医薬品または顔料を含む微粒子であって、それらは合計で微粒子の乾燥重量の少なくとも50%、または好ましくは70%以上を構成するものを提供する。この微粒子を製造する方法も提供され、該方法は水性コロイド中で磁性体物質に高分子電解質の層を形成し、該コーティングされたコロイドと高分子電解質と反対の符号のイオン電荷を有する有機物質とを組み合わせることを含む。有機物質の水への溶解性が貧弱である場合には、前記の組み合わせる工程は、物質を水混和性の有機溶媒中に溶解し、該溶液を高分子電解質でコーティングされた磁性コロイドて一緒にすることを含む。得られた磁性医薬品は磁性により誘導される医薬品デリバリーのために有用であり、および/または体内における医薬品分布の非侵略的な関しに有用である。染料および顔料を含む磁性微粒子は磁性インキとして有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照される関連出願
本出願は、2006年5月15日に出願された米国仮特許出願60/800,380号の優先権の利益を要求する。この出願は参照され、すべての目的のためのその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦により支援された研究開発の下でなされた発明の権利への宣言
本発明は、一部分が、国立衛生研究所(国立癌研究所許可P50CA58187)によって支援された。米国政府はこの発明について権利を有している。
【0003】
発明の分野
本発明は一般に医薬品、磁性薬品キャリアおよび磁性微粒子に関する。本発明は、医薬品を含む磁性微粒子、並びにこれの製造方法および使用方法を提供する。
【0004】
本発明の背景技術
系統的な投与の後に、選択された解剖部位内に制限されて存在する能力がある医薬についての必要が認識されている。この必要に対応する既知の方法のうちの1つは、所望の解剖部位における医薬品の閉じ込めが、磁気によって援助されるように、磁気特性を医薬品に賦与することである。これは、微視的な粒子中において医薬品および磁性成分を組み合わせることによりしばしば行われる。
【0005】
上記の原理に基づいて設計された様々な磁性医薬品は以前に報告されている。医薬品物質および磁性体は脂質小胞(リポソーム)内に一緒に組み入れられた(H.Kiwada, J.Sato,Y.Yamada,Y.Kato,1986.Chem.Pharm.Bull.34,4253−4258)。医薬品物質および磁性成分は、熱変性された化学的に架橋されたタンパク質(A.Senyei,C.Driscoll,KJ.Widder,1985.Meth.Enzymol.1 12,56−67)、化学的に架橋された炭化水素(M.I.Papissov,G.P.Samokhin,M.D.Smirnov,V.P.Torchilin,V.N.Smimov,1984.Bull.Exper.Biol.Med.(Moscow),98,372−374)、または結晶化された炭化水素(U.S.Pat.4,501,726)で作られた微粒子に共に組み込まれた。医薬品物質および磁性成分はシアノアクリレートポリマーで作られた微粒子内に一緒に導入された(A.Ibrahim、P.Couvreur、M.Roland、P.Speiser、1983、J.Pharm.Pharmacol。35、59−61)。医薬品物質および磁性成分は、粘度の高い生物学的適合性の流体の中で一緒に分散された。医薬品物質および磁性成分は、2つの反対の電荷を有する巨大分子により生成されたコアセルベーション錯体に共に組み入れられた(D.B.Kirpotin,A.F.Orlovski.In:Proc.5th Internat.Conf.Magnetic Fluids,Salaspilss,Latvija,1989,p.260− 261)。
【0006】
これらの公知の微粒子磁性医薬品は、水性媒体中でしばしば安定な分散体を形成するが、医薬品物質および/または磁性物質の保持量が比較的少ないという共通の欠点を有していた。この欠点は上に記述された技術において固有のものであり、磁性医薬品の微粒子中の薬および磁性成分をともに接合するために相当な量の中性成分を使用する必要によって引き起こされる。したがって、水性媒体中で安定に、小さなサイズで分散可能であり、それらの質量の大部分が活性成分、すなわち磁性物質および医薬品である、磁性医薬品キャリアに対する解決されていない必要が存在する。同様に、インキおよびペイントのような着色および印刷の技術分野において、種種の媒体上での制御された堆積および/またはイメージの検知のための、磁気的に敏感な形態での顔料および染料組成物を提供するという、解決されていない必要が存在する。
【0007】
簡潔な発明の要約
本発明は、微粒子の磁性キャリヤにおける、低い磁性および/または薬品保持の不利を克服し、かつ磁性医薬品の実際的な利用性を増加させることを目的とする。これは、医薬品に対して高い親和力がある物質で磁性成分をコーティングすることにより行われる。該物質は、医薬品とそのようなコーティングされた磁性成分と溶液中での相互作用により、医薬品と磁性成分とが微粒子の形態で共沈殿するような性質を有する。
【0008】
特には、我々は、高分子電解質で酸化鉄磁性体のコロイド粒子をコーティングし、さらにそのような高分子電解質でコーティングされた磁性コロイドを溶液中で、コーティングの電荷と反対の電荷を有することのできる薬剤分子と反応させる。これに制限されるものではないが、理論によれば、薬分子と高分子電解質コーティングの間の協同のクーロン力が、薬と磁性成分の間の複合体の形成を引き起こしたと仮定される。また、そのような複合体の低減された溶解度は、たとえば医療目的のための人体中への経口あるいは非経口投与のために、好適な微粒子の形での溶液からの分離を与える。
【0009】
上記の反応のために必要な高分子電解質コーティングの量は比較的少ないので、生じる磁性医薬品微粒子は、ほぼ医薬品と磁性体から構成され、両者を微粒子の乾燥重量の少なくとも50%、よりしばしばには70%、典型的に約90%で含む。
【0010】
有機染料および/または顔料物質が医薬品の代わりに使用され、着色あるいは印刷組成物、たとえばインキまたは塗料が得られる場合に同じ発明が適用でき、水分散性の磁性染料、または顔料微粒子を含み、染料または顔料と磁性材料との高い合計の含有量を有するものが得られる。
【0011】
本発明は新規な素材、およびその製造方法と使用のための方法を含んでいる。
【0012】
1つの実施態様では、本発明は、微粒子を含む組成物を提供し、該微粒子は以下を含む:
【0013】
(i) 磁性材料;
【0014】
(ii)前記の磁性材料と会合し、ある符号の電荷を有するポリマー;および
【0015】
(iii)イオン化可能な有機化合物、
ここで水性媒体中の該イオン化可能な有機化合物は、前記の電荷を有するポリマーの電荷とは反対の符号の電荷にイオン化可能であり、前記の磁性材料および有機化合物は合計で微粒子の乾燥重量の少なくとも50%を構成し、該微粒子は水中に分散可能である。典型的に、磁性微粒子の高分子電解質成分はポリマーであるが、微粒子に含まれる有機化合物はポリマーではない(非ポリマー)。好ましくは、前述の磁性材料および前述の有機化合物は合計で、微粒子の乾燥質量の少なくとも70%、あるいは少なくとも90%を構成する。
【0016】
ある実施態様では、磁性体はフェライト、磁鉄鉱あるいはマグヘマイトである。微粒子は、好ましくは10ナノメートルから10マイクメロメートル、より好ましくは30ナノメートルから3マイクロメートル、もっとも好ましくは1マイクロメートル以下のサイズを有する。1つの実施態様では、磁性材料はコロイド粒子、ナノ粒子あるいはナノ結晶の形をしており、単一の磁区、あるいは多数の磁区を含む。磁性体は好ましくは強磁性、常磁性、超常磁性の物質であり、ある場合には約1nmから約100nmまでの平均粒径のナノ粒子である。
【0017】
別の実施態様では、さらに有機化合物は、微粒子乾燥質量の少なくとも10%を構成する。
【0018】
別の実施態様では、組成物の有機化合物は、水にほとんど溶解せず、典型的に2mg/mL未満で可溶であり、好ましくは0.1mg/mL未満の溶解度である。
【0019】
ある好ましい実施態様では、前述の有機化合物は、抗癌剤または抗生物質のような医薬品である。
【0020】
別の実施態様では、磁性体をコーティングする荷電したポリマーはポリマー酸であり、有機化合物はプラス電荷にイオン化可能である。あるいは、電荷を有するポリマーはポリマー塩基であり、有機化合物は負電荷にイオン化可能である。
【0021】
別の実施態様では、微粒子は微粒子の循環時間を延ばすのに有効な表面被覆を含む。好ましくは、表面被覆は親水性ポリマー、たとえばその鎖の末端が粒子表面に追加(グラフトされた)ものを含む。そのような親水性の1つのポリマーとしてはポリ(アルキル・エーテル)があげられ、1つの実施態様ではポリ(エチレングリコール)である。
【0022】
別の実施態様では、微粒子はターゲット部分を含む。ターゲット部分は、抗体あるいはそれの抗原結合性フラグメントのようなポリペプチド;ペプチド、核酸、多糖あるいは小さな分子配位子であり、それらは興味のある人体領域あるいは細胞中に存在する分子マーカと特異的結合対を形成する。ターゲット部分(配位子)は、スペーサーを介して微粒子に直接連結されることができ、それは1つの実施態様では、親水性のポリマーである。
【0023】
本発明は、さらに微粒子含有組成物の製造方法に関する。該方法は、液体媒体中に分散された磁性体であって、該磁性体と会合されて該水性媒体中である符号に荷電したポリマーを有する磁性体と、前記の荷電したポリマーと反対の符号に荷電した水性媒体中のイオン化可能な有機化合物とを接触させて、微粒子を形成することを含む。磁性体および前記の有機化合物は全体として、微粒子の乾燥質量の、少なくとも50%、少なくとも70%あるいは少なくとも90%を構成する。ある場合には、前記液体媒体は水(つまり水性媒体中)を含み、および/または前記磁性体と会合してない電荷を有するポリマーを本質的に有しない。
【0024】
ある実施態様では、本発明方法において使用される有機物は、水に貧弱な溶解性を有する。その後、前記の接触は水含有媒体中に分散された前記の磁性体と、水混和性の有機溶剤を含む媒体中の有機物質の溶液との混合を含む。
【0025】
別の実施態様においては、磁性微粒子の製造方法はさらに、前記微粒子の循環時間を延長するのに有効な物質で微粒子をコーティングする工程を含む。ある場合には、循環を延長する物質は、親水性のポリマーを含む。その後、コーティングは、疎水性の部分に連結された親水性のポリマーと微粒子を接触させることにより、例えば達成できる。親水性のポリマーはさらにターゲット部分を含むことができる。
【0026】
別の実施態様においては、磁性体、高分子電解質および有機化合物を含む本発明の微粒子を含む医薬品組成物が提供され、ここで前記有機化合物は医薬品であり、前記微粒子は、薬学的に受容可能な媒体である。
【0027】
本発明は、さらに患者の疾病の治療方法を含んでいる。これは患者に本明細書に記述された微粒子の任意のものを含む有効量の組成物を投与することを含む。
【0028】
本発明はさらに、磁性微粒子中の前記の有機化合物が染料または顔料を含み、磁性体と一緒になって粒子乾燥質量の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは90%を構成し、組成物がそのような微粒子を含む態様に関する。
図面の簡単な説明
【0029】
図1は、例示的な有機医薬品のドキソルビシン(a)、および例示的な高分子電解質コンドロイチン硫酸の構造(b)の構造、および高分子電解質でコーティングされた磁性体Iおよびイオン化された有機医薬品化合物ドキソルビシンIIからの微粒子IIIの合成の概要の表現を示す。
【0030】
図2は、本明細書の例2により生成されたドキソルビシンおよびコンドロイチン硫酸Aを含む微粒子の蛍光顕微鏡写真イメージの複写である。
より大きな丸はサイズの参照として加えられたマウス赤血球である。
【0031】
図3は、本明細書の例1により生成されたコンドロイチン硫酸Aでコーティングされたγ酸化鉄の磁性ナノ粒子状物質の透過型電子顕微鏡イメージから得られた粒度分布ヒストグラムである。
【0032】
図4Aは、遊離の(結合されていない)ドキソルビシン(白丸)と、例4(黒点)および例3(三角)によって調製された磁性微粒子内のドキソルビシンとの効果の比較を示す、培養KB表皮癌細胞中で得られた細胞生存率対薬剤濃度のグラフである。これらの調製物の殺細胞効果の大きさが非常に接近していることに注意すべきである。
DXRはドキソルビシンを示す。
【0033】
図4Bは、遊離の(結合されていない)デキスニグルジピン(白丸)と、例5により調製された磁性微粒子内のデキスニグルジピン(黒丸)との効果の比較を示す、培養KB表皮癌細胞中で得られた細胞生存率対薬剤濃度のグラフである。これらの調製物の殺細胞効果の大きさが実質的に同一であることに注意すべきである。DNGはデキスニグルジピンを示す。
【0034】
図4Cは、例1によって調製された高分子電解質のコーティングを施した酸化鉄磁性体コロイドに暴露された培養KB表皮癌細胞中で得られた細胞生存率対鉄濃度のグラフである。磁性コロイドそれ自身は、研究された濃度範囲内では細胞毒素ではないことに注意すべきである。
【0035】
図5は、遊離の(結合されていないメトトレキセート(白丸)と、例6により調製された磁性微粒子内のメトトレキセート(黒丸)との効果の比較を示す、培養NCI H−1048肺癌細胞中で得られた細胞生存率対薬剤濃度のグラフである。磁性微粒子中の薬剤と、遊離の薬剤との殺細胞効果の大きさは実質的に同一であることに注意すべきである。MTXはメトトレキセートを示す。
【0036】
発明の詳細な説明
本発明は、医薬品物質、治療および診断に有用な物質、あるいは疾病予防に有用な物質、または顔料もしくは染料のような着色物質、種々の基体への印刷もしくは他の方法のイメージ形成物質などのような、ある有用性を有する有機物質(有機活性物質とも呼ばれる)と、磁性体を含有する磁性微粒子を含む組成物に関する。磁性体成分および医薬品成分または着色成分の微粒子中での組み合わせは有用である。それは微粒子への有機化合物の制御可能な堆積とその有用な積載をもたらし、磁場の印加または高周波数電磁場の印加により有機物質を調整し、粒子内に熱を発生させるか、または磁性成分の磁気特性を使用して、たとえばMRIのような磁気画像方法を使用して患者の体内における有機物質の定量と追跡を行うことができる。
【0037】
本発明の粒子状物質は、驚くほど大きな 磁性体と有機物の不意に大きな概略のペイロードを示し、好ましい実施態様では、有機物がそれ自身貧弱な水溶性を有する場合さえ、水に分散可能である。本発明は、さらに、そのような微粒子および組成物の調製にふさわしい方法に関する。本発明の磁性微粒子は、磁性体を含み、好ましくは高度に分散された形態(コロイド状)で含み、磁性体と一緒にされた(例えば、吸着された)高分子電解質を含み;さらに磁性体高分子電解質と会合された有機物、たとえば医薬品、染料、あるいは顔料を含み、医薬品(あるいは染料あるいは顔料)と磁性体の両者で、微粒子の乾燥質量に基づいて、少なくとも50%、少なくとも70%、あるいは少なくとも90%を構成する量で含まれる。粒子乾燥質量中の成分の量を分析するためには、当該技術分野において公知の任意の方法を使用することができる。これに制限されるものではないが、上記の方法としては、元素の定量のための、分光光度法、クロマトグラフィー法(HPLC)、質量分析法、マグニトメトリー、および誘導結合プラズマ発光分光分析法があげられる。粒子状物質の成分が公知であり、溶解された物質からの粒子状物質の分離が行なわれている場合(例えば、本明細書の例に記載されるように、磁性沈降によって)には、磁性体、高分子電解質および有機化合物の定量は計算で十分に行われる。本明細書において理解されるように、「乾燥質量」は微粒子の不揮発性成分の合計をいい、つまり、水および/またはそれ以外の溶剤を除く。そうしなければならないというわけではないが、水および/またはの他の溶剤を実際に除去することができ、正確な評価のために微粒子から蒸発させることができる。
【0038】
微粒子の磁性体は、例えば磁鉄鉱(Fe、およびγ鉄(III)酸化物(マグヘマイト)、あるいはそれらの組み合わせ);1つまたは複数の2価金属のフェライト(任意にランタニドまたは鉄群の他の金属(コバルト、ニッケル)を含む;あるいは純粋な磁性金属、あるいは磁性金属の合金を含むことができる。磁性体は、好ましくははコロイド、ナノ粒子あるいはナノ結晶の形態であり、たとえば約1nmから約200nm、好ましくは2−100nmの間のサイズを有する。それらの物理的性質によって、ナノ粒子またはナノ結晶の形態の磁性体は、強磁性体、常磁性あるいは超磁性であることができ、単一の磁区、あるいは一つの領域より多い磁区を構成することができる。
【0039】
磁性体は当該技術分野において公知の任意の方法によって調製されることができる。例えばフェライト、マグネタイト、マグヘマイト(γ鉄(III)酸化物)の酸化鉄磁性粒子、中間体が、当該技術分野において公知の方法により、第二鉄・第一鉄塩の水溶液からのアルカリ沈降反応によって調製できる。例えば、米国特許4,452,773;米国特許5,916,539;米国特許5,427,767を参照。特に好ましい方法では、米国特許5,411,730による高度に磁化された磁性酸化鉄ナノ粒子状物質についてのものを含む。この教示は、参照され本明細書に組込まれる。1つの例示的な方法では、本発明を実行するのに好適なマグネタイトのナノ粒子状物質を得るために、水溶液中で等モル量の塩化第二鉄と塩化第一鉄を組み合わせ、任意にデキストランのような安定化ポリマーあるいは本明細書に記載される高分子電解質を含み、pH8−10になるまで、濃アンモニアで溶液を滴定し、5−30分間、50−70℃の温度で生じるスラリーをインキュベートする。その後、反応混合物は、たとえば酢酸で中和され、透析されて塩類を回収する。その後は酸化鉄磁性体は磁石により分離され、蒸留水の中で再度分散できる。安定化ポリマーまたは高分子電解質が存在しない場合には、任意に、少量のHClと短時間の沸騰により、沈殿のコロイド状態への変換を達成できる。
【0040】
本発明の目的のために好適な高分子電解質は、一般に、高分子、すなわち繰り返し単位、好ましくは類似の化学構造を有する繰り返し単位からなる分子であり、概略で400から2,000,000の分子量を有し、水に可溶であり、その構造中にイオン化可能な基、すなわち電離してイオン電荷を形成することのできる官能基を有する。そのようなイオン化可能な基の例としては、上記の医薬品のキャラクタリゼーションの中で挙げられる。本発明によれば、磁性体をコーティングするために利用される高分子電解質の実効電荷は、好ましくは、高分子電解質でコーティングされた磁性体と医薬品が組み合わされる条件下で、医薬品の電荷と反対の電荷である。
【0041】
次のリストは、そのような高分子電解質の例である。
【0042】
天然および天然由来の酸性または塩基性の多糖類:
【0043】
ポリガラクツロン酸塩類、ヒアルロン酸、アラビアゴム、コンドロイチン硫酸A、B、およびC、ケラタン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリンおよびその誘導体、ペクチンおよびその誘導体、アルギン(ポリ−無水マンヌロン酸)酸、タイコ酸、キトサン;セルロース、アミロース、アミロペクチン、デキストランあるいはカルボキシアルキル基、硫酸基、アミノ−、モノ−、ジ−、トリアルキルアミノ−、テトラアルキルアンモニウム官能基の導入により得られる他の天然多糖類、窒素複素環を有する前記の多糖類、および多糖類の骨格に他のイオン化可能な基をグラフトして得られる誘導体。
【0044】
合成また天然の酸性または塩基性のポリペプチドおよびタンパク質:グルタミン酸、アスパラギン酸、リジン、アルギニン、オルニチン、側鎖中にイオン可能な官能基を有する他の非蛋白アミノ酸を含むポリマーおよびコポリマー;チトクロムC、ヒストン、プロタミン、トリプシンおよび部分的に加水分解されたコラーゲンのような高いか低い等電点を有するタンパク質。
【0045】
核酸、オリゴ−およびポリヌクレオチド、並びにそれらの誘導体。
【0046】
カルボン酸ポリマー:アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、プロパギル酸、スチレンカルボン酸、あるいは他のアルケニル−もしくはアルケニルアリールカルボン酸の単位を含むポリマーおよびコポリマー;ポリアミド、ポリエーテル、ポリエステルあるいは多環式の主鎖上の側鎖に、イオン化可能なカルボキシル基を含んでいるポリマーおよびコポリマー。
【0047】
ポリリン酸塩のようなポリマー主鎖に燐酸基を有するポリマー、あるいはポリビニルホスフェートのような側鎖に燐酸基を有するポリマー。
【0048】
以下のもののような、スルフォ基を有するポリマー:ポリビニルスルフェート、ポリビニルスルホネート、ポリスチレンスルホネート、硫酸化ロジン・ガム(ナフテネート)。
【0049】
ポリマーの主鎖または側鎖に複素環を含むポリマーアミンおよびアミノ。たとえばポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアルキルアミン、およびポリビニルトリアルキルアンモニウム塩、ポリビニルピリジン、4級化ポリビニルピリジン、ポリ(アルキレンイミン)、4級化ポリ(アルキレンイミン)、ポリ(アミノアルキル)アクリレート、ポリ(アルキルアミノアルキル)アクリレート、ポリ(アミノアルキル)ビニルアルコール、および上記のポリマーの単位を含むコポリマー。
【0050】
ポリマーの主鎖または側鎖にチオカルボン酸、ジチオカルボン酸、チオ硫酸およびチオ燐酸官能基を含むポリマー。
【0051】
高分子電解質は、本発明によれば、例えばポリアクリル酸エステルのようなポリマーカルボン酸、または多糖類、たとえばコンドロイチン硫酸Aあるいは硫酸デキストランであることができる。これらの化合物は水に可溶のポリマーである。また、そのような溶液では、それらは、負符号の多価のイオン電荷を得る。本発明は上記の例示された化合物に制限されないことが理解される。
【0052】
高分子電解質を有する磁性体のコーティングは多くの方法によって達成される。磁性体、例えば、ナノ粒子の形式の磁性体は、たとえば米国特許5,411,730に記載されたように、高分子電解質の存在下で形成できる。別法として、あらかじめ形成された磁性体は、磁性体への高分子電解質の吸着および/または化学的付着を促進する条件下で、高分子電解質とインキュベートすることができる。例えば、ナノ粒状磁性体は、好ましくは低いイオン強度で、水媒体中で高分子電解質と結合でき、超音波で処理できる。共有結合による付着(化学吸着)については、磁性体に化学的に反応性の官能基を含む高分子電解質が使用できる;例えばスルフィドリル基(−SH)−基が高分子電解質の構造へ導入され、金属酸化物磁性体ナノ粒子の表面と反応して高分子電解質をナノ粒子に付着するようにする。磁性体のより多くの完全なコーティングを達成するために、高分子電解質は、典型的には磁性体より過剰に加えられる。その後、高分子電解質でコーティングされた磁性体は、任意に、過剰の高分子電解質から、例えば沈降、磁気分離、限外濾過、透析あるいはサイズ排除クロマトグラフィーによって分離できる。驚くべきことに、過剰の高分子電解質の分離は、 磁性体と有機活性物質の有効成分との相互作用を妨げず、微粒子中の高分子電解質含有量を最小限にしつつ、水分散された微粒子を形成した。
【0053】
微粒子の有機物成分は、例えば医薬品物質、すなわち、人間または動物の診断、治療あるいは疾病予防に役立つ物質である。典型的には、医薬品物質はイオン化可能な有機物、すなわち、医薬品物質と高分子電解質でコーティングされた磁性粒子との間の相互作用が起こる水あるいは他の好適な液体媒体中で、全体として陽性または陰性のイオン電荷を得ることができるものである。有機化合物は典型的には非高分子化合物(しばしば「小さな分子」と呼ばれる)であり、微粒子の磁性体成分をコーティングする高分子電解質、これはポリマーで反復単位鎖を含む、に対立するものである。1つの実施態様では、有機物は水溶性であるかまたは、例えば、水に5mg/mL以上の溶解度を有している。他の実施態様では、有機物は水に対する溶解性は貧弱であり、5mg/mL未満、1mg/mL未満あるいは0.1mg/mL未満の水への溶解度を有する。驚くべきことに、たとえ微粒子内の有機物の水溶性が貧弱でも、微粒子は水中に分散可能であることが知られた。すなわち、1時間以上、または少なくとも20時間、溶液の中に懸濁状態で保持され、例えば医薬品含有微粒子を患者に投与するのに十分である。
【0054】
一般に、分子構造中に、低い水溶性に帰着する親油性を有する部分と、イオン化可能な部分を有するすべての医薬品が、本発明の範囲内に含まれる。そのようなイオン化可能な基の例は次のとおりである:アミノ、アミジノ、グアニジノ、アゾ、窒素含有複素環、フェノール、チオール、チオフェノール、カルボン酸、1,2−不飽和アルコール(エノール)、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸、スルホ−、スルホニック、スルフィニック、チオスルフォニック、ホスフィン、リン酸エステル、ホスホン酸、ホスフィン、チオホスホン酸、およびチオ燐酸塩基。親油性を備えた化合物は例えば、芳香族、縮合芳香族、脂環式、中鎖−および長鎖の脂肪族基、あるいはそれらの組み合わせを有する化合物である。
【0055】
例えば、そのような医薬品は、癌細胞の抗癌性化学療法への耐薬性感度を増加させるとして公知の薬品である、抗癌剤ドキソルビシンまたはデキシヌグルジピン(dexinuguldipine)であることができる(Hoffmanら、Biochem Pharmacol.49、603、1995年)。そのような不溶性の医薬品の別の例はクロファジミン(抗マイコバクテリア薬)である。さらなる別の例はアムホテリシンB(抗真菌薬)である(Physician’s Desk Reference,1995)。これらの医薬品は、イオン性会合をして水性環境中で正符号のイオン電荷を形成する能力のある、イオン化可能な基を有する。
【0056】
別の実施態様では、医薬品物質は抗癌性要素である。分類による商業的に提供される一般的に知られたいくつかの抗腫瘍薬(あるいは開発中のもの)の一部のリストは、以下のとおりである。構造に基づいたクラス:フルオロピリミジン 5−FU、フルオロデオキシウリジン、フトラフール、5’−デオキシフルオロウリジン、UFT、S−1カペシタビン;ピリミジンヌクレオシド−デオキシシチジン、シトシン アラビノシッド、5−アザシトシン、ゲンシタビン(Gemcitabine)、5−アザシトシン−アラビノシッド;プリン−6−メルカプトプリン、チオグアニン、アザチオプリン、アロプリノール、クラドリビン(Cladribine)、フルダラビン(Fludarabine)、ペントスタチン、2−クロロアデノシン;白金類似体−シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン(Oxaliplatin)、テトラプラチン(Tetraplatin)、白金−DACH、オルマプラチン、CI―973、JM−216;アントラサイクリン/アントラセネジオネス(Anthracenediones)−ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン(Epirubicin)、イダルビシン(Idarubicin)、ミトキサントロン(Mitoxantrone);エピポドフィロトキシンズ(Epipodophyllotoxins)−エトポシド、テニポシド(Teniposide);カンプトテシン−イリノテカン、トポテカン(Topotecan)、ルルトテカン(Lurtotecan)、シラテカン(Silatecan)、9−アミノ カンプトテシン、10,11−メチレンジオキシ カンプトテシン、9−ニトロ カンプトテシン、TAS 103、7−(4−メチル−ピペラジノ−メチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(S)−カンプトテシン、7−(2−N−イソプロピルアミノ)エチル)−20(S)−カンプトテシン;ホルモンおよびホルモン類似体−ジエチルスチルベストロール、タモキシフェン、トレメフィン(Toremefine)、トルムデックス(Tolmudex)、チミタク(Thymitaq)、フルタミド、ビカルタミド、フィナステリド(Finasteride)、エストラジオール、トリオキシフェン(Trioxifene)、デロロキシフェン(Droloxifene)、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲステロール(Megesterol)、アミノグルテチミド(Aminoglutethimide)、テストラクトン(Testolactone)およびその他のもの;酵素、タンパク質および抗体−アスパラギナーゼ、インターロイキン、インターフェロン、レウプロリド(Leuprolide)、ペガスパルガーゼ(Pegaspargase)およびその他のもの;ビンカアルカロイド−ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン(Vinorelbine)、ビンデシン(Vindesine);タキサンズ(Taxanes)−パクリタキセル、ドセタキセル(Docetaxel)。メカニズムに基づいた分類:抗ホルモン剤−ホルモンおよびホルモン類似体の分類参照、アナストロゾール;抗葉酸−メトトレキセート、アミノプテリン、トリメトレキサレート(Trimetrexate)、トリメトプリム、ピリトレキシム(Pyritrexim)、ピリメタミン、エダトレキサート(Edatrexate)、MDAM;反微小管薬−タキサンおよびビンカアルカロイド;アルキル化剤(古典的また非古典的)−ナイトロジェンマスタード類(メクロルエタミン(Mechlorethamine)、クロラムブシル、メルファラン、ウラシルマスタード)、オキサザホスホリン類(イホスファミド、シクロホスファミド、ペルホスファミド、トロフォスファミド)、アルキルスルホネート(ブスルファン)、ニトロソ尿素(カルムスチン(Carmustine)、ロムスチン(Lomustine)、ストレプトゾシン(Streptozocin))、チオテパ、ダカルバジンおよび他のもの;代謝拮抗物質−プリン類、ピリミジン類およびヌクレオシド、上記の物;抗生物質−アントラサイクリン/アントラセンディオン(Anthracenediones)、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、プリカマイシン、ペントスタチン、ストレプトゾシン;トポイソメラーゼ阻害剤−カンプトテシン(Topo I)、エピポドフィロトキシン、m−AMSA、エリプチシン(Topo II);抗ウイルス薬−AZT、ザルシタビン、ゲムシタビン(Gemcitabine)、ジダノシンおよび他のもの;様々な細胞毒性薬−ヒドロキシ尿素、ミトタン、融解毒素、PZA、ブリオスタチン、レチノイド、酪酸および誘導体、ペントサン、フマギリンおよび他のもの。
【0057】
上記のものに加えて、抗癌剤としては、制限するものではなく、任意のトポイソメラーゼ阻害剤、ビンカアルカロイド、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン(vinorelbine)、ビンフルニン(vinflunine)、およびビンポセチン(vinpocetine)、微小管解重合あるいは不安定化剤、微小管安定化剤、例えば、タキサン、パクリタキセルまたはドセタキセルのアミノアルキルあるいはアミノアシル類似体、例えば、2’−[3−(N(N)−ジエチルアミノ)プロピオニル]パクリタキセル、7−(N,N−ジメチルグリシル)パクリタキセル、および7−L−アラニルパクリタキセル、アルキル化剤、レセプター結着剤、チロシンキナーゼ阻害剤、脱リン酸化酵素阻害薬、シクリン依存性キナーゼ阻害剤、酵素抑制物質、オーロラキナーゼ阻害剤、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドおよびファーネシルトランスフェラーゼ(farnesyltransferase)阻害剤。
【0058】
別の実施態様では、本発明の磁性微粒子組成物に含まれる物質は、アントラサイクリン化合物あるいはその誘導体、カンプトセシン(camptothecine)化合物またはその誘導体、エリプチシン(ellipticine)化合物またはその誘導体、ビンカアルカノイドまたはその誘導体、ウォルトマンニン、その類似体および誘導体、あるいはオーロラキナーゼ阻害特性を有するピラゾロピリミジン化合物などの治療薬である。
【0059】
別の実施態様では、本発明のリポソーム組成に含まれる物質は、アントラサイクリン薬、ドキソルビシン、ダウノルビシン、マイトマイシンC、エピルビシン、ピラルビシン(pirarubicin)、ルビドマイシン(rubidomycin)、カルシノマイシン(carcinomycin)、N−アセチルアドリアマイシン(acetyladriamycin)、ルビダゾン(rubidazone)、5−イミドダウノマイシン(imidodaunomycin)、N−アセチルダウノマイシン(acetyldaunomycine)、ダウノリリン(daunoryline)、ミトキサンスロン(mitoxanthrone);カンプトテシン化合物、カンプトテシン、9−アミノカンプトテシン、7−エチルカンプトテシン、10−ヒドロキシカンプトテシン、9−ニトロカンプトテシン、10,11−メチレンジオキシカンプトテシン、9−アミノ−10,11−メチレンジオキシカンプトテシン、9−クロロ−10,11−メチレンジオキシカンプトテシンおよびイリノテカン(irinotecan)、トポテカン(topotecan)、ルルトテカン(lurtotecan)、シラテカン(silatecan)、(7−(4−メチルピペラジノメチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(S)−カンプトテシン、7−(4−メチルピペラジノメチレン)−10、11―メチレンジオキシ−20(S)−カンプトテシン、7−(2−N−イソプロピルアミノ)エチル−(20S)−カンプトテシン;エリプチシン化合物、エリプチシン、6−3−アミノプロピル−エリプチシン、2−ジエチルアミノエチル−エリプチシニウムおよびその塩類、ダテリプチウム(datelliptium)、レテリプチン(retelliptine)。
【0060】
別の実施態様では、本発明の磁性微粒子に含まれる医薬品化合物は、制限する物ではなく、以下の任意のものである:抗ヒスタミンエチレンジアミン誘導体(ブロムフェニファミン(bromphenifamine)、ジフェンヒドラミン);抗原生動物剤:キノロン(ヨードキノール);アミジン(ペンタミジン);駆虫薬(ピランテル);抗−住血吸虫薬(オキサミニキノン(oxaminiquine));殺菌性トリアゾール誘導体(フリコナゾール(fliconazole)、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール);抗菌性セファロスポリン(セファゾリン(cefazolin)、セフォニシド(cefonicid)、セフォタキシミン(cefotaxime)、セフタジミド(ceftazimide)、セフオキシム(cefuoxime));抗菌性ベータ・ラクタム誘導体(アズトレオパム(aztreopam)、セフメタゾール(cefmetazole)、セホキシチン(cefoxitin));エリソマイシン(erythromycine)群の抗生物質(エリスロマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、オレアンドマイシン);ペニシリン類(ベンジルペニシリン、フェノキシメチルペニシリン、クロキサシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、カルベニシリン);テトラシクリン類;他の抗菌性抗生物質、ノボビオシン、スペクチノマイシン、バンコマイシン;抗ミコバクテリウム薬品:アミノサリシクリル(aminosalicyclc)酸、カプレオマイシン、エタンブトール、イソニアジド、ピラジンアミド、リファブチン(rifabutin)、リファムピン、クロファジン(clofazime);抗ウイルス性アダマンタン:アマンタジン、リマンタジン(rimantadine);キニジン誘導体:クロロキン、ヒドロキシクロロキン、プロマキン(promaquine)、キオノン(qionone);抗菌性キオノン:シプロフロキサシン、エノキサシン、ロメフロキサシン、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、オフロキサシン;スルホンアミド;尿路抗生物質:メテナミン、ニトロフラントイン(nitrofurantoin)、トリメトプリム(trimetoprim);ニトロイミダゾール:メトロニダゾール;コリン作動性第四アンモニウム化合物(アンベチニウム(ambethinium)、ネオスチグミン、フィソスチグミン);抗アルツハイマー薬 アミノアクリジン(タクリン);抗パーキンソン病薬、(ベンズトロピン、ビペリデン、プロシクリジン(procyclidine)、トリヘキシルヘニジル);抗ムスカリン薬(アトロピン、ヒヨスチアミン、スコポラミン、プロパンセリン(propantheline));アドレナリン作用性ドーパミン(アルブテロール、ドブタミン、エフェドリン、エピネフリン、ノルエピネフリン、イソプロテレノール、メタプロペレノール、サルメトロール(salmetrol)、テルブタリン);エルゴタミン誘導体;骨格筋弛緩薬またはクラン(curane)シリーズ;中枢作用弛緩薬;バクロフェン(baclophen)、シクロベンゼピン(cyclobenzepine)、デントロレン(dentrolene);ニコチン;ベータ−アドレナリンブロッカー(アセブチル(acebutil)、アミオダロン);ベンゾジアゼピン(ジチアゼン(ditiazem));抗不整脈薬、(ジイソピラミド、エイカイジン(encaidine)、局所麻酔薬シリーズ・プロカイン、プロカインアミド、リドカイン、フレカイミド(flecaimide))、キニジン;ACE阻害薬:カプトプリル、エネラプリラット(enelaprilat)、ホシノプロール(fosinoprol)、キナプリル(quinapril)、ラミプリル(ramipril);抗リピデミック薬(antilipidemics):フルバスタチン(fluvastatin)、ゲムフィブロジル(gemfibrosil)、HMG−coA阻害剤(プラバスタチン(pravastatin));降圧薬:クロニジン、グアナベンズ、ピラゾシン(prazocin)、グアネチジン、グラナドリル(granadril)、ヒドララジン;および非冠血管拡張薬:ジピリダモール。
【0061】
別の実施態様では、磁性微粒子に含まれる医薬品物質は、水に不良にまたは乏しく可溶である。また、上に記載されたようなイオン化可能な官能基を有する。下記は、アメリカの病院医薬品集サービス、医薬品情報、1996年版および英国薬局方1993−1996による、適切なpH(6−8)の水において貧弱に可溶で、それらの分子構造にイオン化可能なグループを有する医薬品を例証するリストである。このリストはすべての臨床試験用医薬品を含まず、1996年時点で、あるいはその後米国で使用を承認されてない医薬品を含まない。しかし、疎水性およびイオン化可能なグループの存在に関して同様の特性を備えたものは、本発明の範囲内に含まれるものと認められる。
【0062】
抗ヒスタミン剤:ロラタジン(loratadine)、テルフェナジン(terfenadine)、ファモチジン、シプロヘプタジン、
【0063】
ブクリジン(buclizine)、シンナリジン。殺アメーバ薬:ヨードキノール、メベンダゾール、チアベンダゾール、オキサムニキン、チミダゾール(timidazole)。抗真菌剤:アムホテリシンB、イミダゾール誘導体(ブトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、オキシコナゾール、テルコナゾール)、ゲンチアナ紫、ナフビフィン(nafbifine)、テルビナフィン(terbinafine)、クリオキノール。抗ミコバクテリウム剤:リファブチン(rifabutin)、クロファジミン。抗マラリア剤:ピリメタミン、スルファドキシン(sulfadoxine)。抗菌性キノロン:ナリジクス酸。抗菌性スルホアミド:スルファジアジン、スルファメタゾール(sulfamethazole)、スルファメトキサゾール、スルファラジン(sulfalazine)、スルファキサゾール(sulfaxazole)、スルファジミジン(sulfadimidine)、スルファフラゾール、シルファソミジン(silfasomidine)。抗ウイルス薬:サキナビル、リトナビル、インディナビル(indinavir)、イドクスウリジン。抗腫瘍性剤:メルファラン、メルカプトプリン、チオグアニン。アドレナリン作用薬:サルメテロール(salmeterol)。抗凝血剤:ジクマロール、ニコウマロン(nicoumalone)。不整脈治療剤:ジソピラミド。ジヒドロピリジン類(カルシウムチャネル遮断薬):ニカルジピン(nicardipine)、ニフェジピン、ニモジピン(nimodipine)、フェロジピン、ニグルジピン(niguldipine)およびそれらのdex−鏡像異性体。抗高血圧剤:レセルピンおよびその誘導体、ピンドロール、プラゾリン(prazolin)。抗リピデミック薬(antilipidemics): フルバスタチン(fluvastatin)、ゲムフィブロジル(gemfibrozil)プラバスタチン(pravastatin);非ステロイド化合物抗炎症薬:サルサレート(salsalate)、エトドラク、イブプロフェン(ibuprophen)、インドメタシン、ケトプロフェン(ketoprophen)、メフェナミック(mephenamic)酸、ピロキシカム、ナプロキセン、アザプロパゾン(azapropazone)。不安緩解薬:ベンゾジアゼピン類(クロナゼパム、ブロマゼパム、アルプラゾラム、エスタゾラム、ロラゼパム、オキサゼパム、クアゼパム)。抗精神病薬:ハロペリドール、プリモジト(primozide)、ドロペリドール、フルフェナジン、スルピリド、ペルフェナジン、フルペンチオール(flupenthixol)。利尿剤:チアシド類(thiasides)(ベンドロフルメタジド(bendroflumethazide)、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド(hydroflumethiazide)、ポリチアジド)、メトラゾン(metholazone)、フロセミド、プテリジン(pteridines)類(トリアムテレン)。血糖低下性スルホン尿素:グリピジト(glipizide)、トラザミド、グリクラジド、グリベンクラミド。子宮収縮薬:プロストグランジン類(prostaglandines)(ジノプロストーン(dinoprostone))。抗プルティティックス剤(Antiprutitics)およびアランゲシックス(alangesics):ジブカイン、フェナゾピラジン。レチノール酸の誘導体:トレチノイン、イソトレチノイン。ピペリジノピリミジン 血管拡張薬/発毛剤:ミノキシジル(minoxidil)。ビタミン:リボフラビン、葉酸。排卵誘発剤:クロミフェン。反乾癬薬:ジチラノール(dithranol)。鎮吐薬:ドンペリドン、シクリジン。抗エストロゲン薬:タモキシフェン。血小板凝集阻害剤:チクロジピン(ticlodipine)、ジピリダモール。催眠薬:ゾピクロン、メタキアロン(metaqualone)。消化性潰瘍の治療薬:オメプラゾール、スルファザラジン(sulfazalazine)。抗下痢薬:ジペノキシレート(dipenoxylate)。抗痛風薬および抗甲状腺薬:アロプリノール、プロピルチオウラシル。免疫抑制薬:アザチオプリン。ステロイド:ヒドロコルチジン水素琥珀酸塩、スタノゾロール。咳抑制薬:ノスカピン。食欲抑制剤:デクスフェンフルラミン(dexfenfluramine)。
【0064】
さらに、本発明の物質は、医薬特性を有しない有機物を含むことができ、たとえば以下があげられる:織物染色、インキ、塗料、および着色プラスチックのための充填材として使用される有機染料および顔料;発泡体および食品の製造、および磁性特性を有する安定な有機コロイド、特には水性のコロイドが望まれる用途において使用される、体積増加、ガス発生物質。以下に記載されるように、それらの分子構造が、たとえば磁性コロイドの高分子電解質コーティングの電荷と反対のイオン電荷へのイオン化のために、磁性コロイド粒子との結合を与える限り、任意のタイプの天然または合成の有機染料(水溶性)あるいは顔料(それほど水溶性でない)を、微粒子の有機物成分として使用できる。これらの判定規準に基づいて、適切な染料および顔料の構造は、化学の当業者によって慣例的に選択されるであろう。
【0065】
本発明による微粒子の製作の方法は、ゼロではない電荷を有する高分子電解質でコーティングされた磁性体、たとえばコロイドまたはナノ粒子の形態にある磁性体と、たとえば医薬品のような有機化合物とを接触させることを含み、ここで有機化合物は接触される条件下においてその分子が高分子電解質コーティングと反対のイオン電荷を得ることができるように選択される。例えば、高分子電解質がポリアニオン(負電荷)で、酸性官能基、たとえばカルボキシル基、リン酸エステル基、硫酸エステル基、ホウ酸塩基を有する場合、有機物はアミンまたは複素環の窒素部分のような陽イオン的に解離する官能基を典型的に含む。高分子電解質がポリカチオンイオン(正電荷)で、たとえばポリマーアミンまたはアンモニウムを含む場合には、有機物は例えばカルボン酸塩、リン酸エステル、硫酸エステルあるいはホウ酸塩のような酸性基を典型的には含む。
【0066】
上記の方法および上記の物質の構造は、概略的に医薬品ドキソルビシンおよび高分子電解質コンドロイチン硫酸Aの例によって図1に例証される。
【0067】
高分子電解質でコーティングされた磁性体、例えば、ナノ粒子の形態のものは、医薬品物質と接触し、前記の医薬品物質を含んでいる磁性微粒子を生成する。接触工程は、たとえば、単に水、緩衝液あるいは生理学上受理可能な(例えば、注射可能な)溶液のような、水性媒体に、有機物および高分子電解質でコーティングされた磁性体を含む溶液を混合することにによる。
【0068】
比較的水溶性の有機の有効成分が高分子電解質でコーティングされた磁性体に典型的に水性溶液の形態で加えられるに際して、我々は驚くべきことに、それらが参照され本明細書に組込まれる米国特許6,048,650に記載された手続きにより、水混和性の有機溶媒中の溶液の形で高分子電解質でコーティングされた磁性体の水性溶液に加えられる場合、小さい水溶性を有するイオン化可能な有機化合物を、磁性体と共に微粒子に組み入れることができることを発見した。米国特許6,048,650は、水溶液中で高分子電解質と混合したときに水不溶性のイオン化可能な有機化合物の親水性の微粒子が形成されることを教示する。我々は予想外にも、高分子電解質に結合した磁性体、例えば超磁性ナノ粒子状物質も、同様に両方の成分を高効率(70%以上、あるいは90%以上)で取り込み、有機化合物と磁性体の両方を組込む親水性の、水分散可能な微粒子の形成が達成されることを発見した。
【0069】
混合工程に続き、有機溶媒が存在する場合、透析、磁気分離、限外濾過、サイズ排除クロマトグラフィーあるいは凍結乾燥を包含する蒸発によりそれを任意に回収することができる。微粒子調製の凍結乾燥は、炭水化物(例えばスクロース、ラクトース、トレハロース、またはポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミドあるいはデキストランのような中性の親水性のポリマー)のような安定剤の存在下で行なうことができる。磁気的に分離された微粒子あるいは凍結乾燥された微粒子は、任意の適当な媒体、たとえば水、貯蔵媒体および/または微粒子が医薬品の化合物を含む場合には患者への投与媒体中に再懸濁(再構成)することができる。
【0070】
磁性微粒子のサイズは、典型的には毛細血管(直径で6マイクロメートル未満)の通行を許可する範囲であり、より好ましくは2マイクロメートル未満であり、最も好ましくは約50ナノメートルと1マイクロメートルの間である。所望のサイズを得るために、微粒子サスペンジョンは画定された孔径を有するふるいまたはフィルタ、たとえばポリカーボネートまたはポリエステルにトラックエッチングされた膜フィルターで分画することができる。
【0071】
微粒子は、典型的には有機物および磁性成分を一緒にして50%以上含んでおり親水性である。すなわち、典型的には少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも6時間、最も好ましくは20時間の間、沈降反応および/または凝集に対して安定した水中分散液を形成する。医薬品化合物に対する磁性体の比率は、特定のタスクによって変わることがあるが、典型的には、磁性体および医薬品化合物の合計に対して、磁性体が5−95%の範囲であり、より多くの場合には磁性体が10−90%の範囲であり、最も多くの場合には磁性体が20−80%の範囲である。
【0072】
本発明の磁性微粒子は多くの有用性を持っている。その1つは磁気的に導かれるターゲットであり、粒子状物質は磁界によって所望のエリアに制限されるか保持される。他のものは、医薬品の作用と、高周波振動電磁場を加えることによる磁性成分の遠隔加熱の組み合わせである。熱の放出は、医薬品物質の放出を引き起こしまた調整することができ、それにより医薬品の活性をコントロールする価値のあるツールを提供する。そのような引き起こされた、または調整された放出を達成するために、高分子電解質成分は、たとえば所望の温度範囲の中に例えば曇点(コイル−小球遷移)を有するポリマーであり、たとえばポリ−N−イソプロピルアクリルアミドの誘導体あるいはN−イソプロピルアクリルアミドおよびアクリル酸またはメタアクリル酸のコポリマーである。別の有用性は、例えば磁気共鳴画像のような磁気共鳴に基づいた方法を使用する患者の体内における、磁性微粒子の非侵略的な検知と分布のモニターである。医薬品化合物の代わりに、染料あるいは顔料を含む本発明の磁性微粒子は、磁気的に判読可能で磁気的に抜染可能なインキの成分としての有用性を持っている。
【0073】
本発明の磁性医薬品微粒子が1種以上の磁性材料または薬剤を含むことがあることは認識される。高分子電解質コーティングも、また他の有用な添加剤を含むことができる。
【0074】
特に有用な添加剤は循環エフェクターおよびターゲット配位子である。
【0075】
循環エフェクターは、血流中の微粒子の持続性を延長し、これは腫瘍のような体の病気の領域でのそれらの蓄積を増加させる。たとえば米国特許5,013,556、および米国特許5,213,804を参照。循環エフェクターの1つの種類は微粒子の表面に末端がグラフトした、たとえばポリ(エチレングリコール)、ポリアクリルアミド、ポノオキサゾリジンのような親水性ポリマーである。グラフトを達成するために、循環エフェクターとして有用なポリマーは、たとえば磁性体、医薬品物質あるいは微粒子の高分子電解質成分と反応性の末端官能基を有し、これを微粒子と反応させて共有結合を形成する。
別法として、微粒子形成の前にあるいはその形成の後に、粒子の医薬品、磁性、高分子電解質成分に静電気的に引きつけられる、脂質グループあるいは高分子電解質鎖のような「アンカー」基が加えられる。典型的には、分子量500−20,000のポリマー、あるいは好ましくは分子量500−50,000のポリ(エチレングリコール)が、粒子の質量の0.1%から20%、より好ましくは0.5から10%で使用される。
【0076】
ターゲット配位子は、疾病の特有の分子マーカを有する細胞又は身体領域に結合する物質である。微粒子医薬品を送達するターゲット配位子の有用性は公知である。例えば米国特許5,213,804を参照。配位子は、特異的結合対の要素であり、そこでは第二の要素は、標的細胞または組織の露出した領域に存在する。そのような結合対は、例えば抗体抗原、エフェクター・レセプター、酵素基質およびレクチン炭水化物である。好ましいタイプのターゲット配位子は、抗体、すなわち免疫グロブリンの相補性決定領域(CDR)を含むポリペプチドである。全体の免疫グロブリン、並びにそれらの抗原結合性フラグメントとしては、天然あるいは組み換えにより導かれた物質、たとえばFab’Fv、単鎖抗体および単一領域抗体があげられる。人工のペプチド類、たとえばバイオディスプレイライブラリ(例えばファージ・ディスプレイライブラリ)の選択を介して導かれたもの、並びに様々の細胞表面レセプタと結合する天然のペプチド(ホルモン)は配位子として好適である。標的組織または細胞への特定の結合のために選択された核酸および小さな有機分子も、好適な配位子である。ある場合には、たとえば米国特許6,214,388に教示されるように、標的細胞へ微粒子のインターナリゼーションを引き起こす配位子を有することが望ましい。
【0077】
ターゲット配位子は、当該技術分野において公知の様々な結合方法によって微粒子の表面へ結合されることができる。Hermanson, Bioconjugate Techniques, Academic Press, 1996を参照。結合は粒子表面へ、またはスペーサー基、たとえば循環エフェクターポリマーに類似する親水性のポリマースペーサーを介して、導かれる。この場合、配位子は、化学的な活性基を介して微粒子にグラフトされたポリマースペーサーの自由な遠位端へ結合することができるか、またはポリマーアンカー構造に予め結合される。そのような配位子−ポリマー−アンカー構造は、粒子形成の前または後に、磁性物質−高分子電解質−医薬品化合物の組み合わせに加えることにより、微粒子に組み込むことができる。
【0078】
微粒子は、例えば生理学上受容可能な注射媒体、減菌剤中への希釈、種々の他の医薬品との配合や組み合わせのような公知の適当な方法により、医療用途のために配合可能であり、これらの微粒子は、体外で(「ex vivo」)使用されることができるとともに、任意の既知の方法によって人体に投与されることができる。微粒子は、任意の望ましい剤形の成分として投与できる。たとえば、錠剤、パッチ、ゲル剤、クレーム、軟膏剤、エアロゾルなどがあげられる。微粒子を含んでいる組成物は、経口的にあるいは医師の作業により任意の好適な腸管外のルート経由で投与できる。本明細書の開示では、我々は磁性微粒子への医薬品物質の配合を記載したが、適切な分子特性を有する他の有用な物質で同じ配合を行なうことができることはさらに認識される。また得られる磁性微粒子は、例えばバイオテクノロジー、酵素不動化、様々な材料の製作、分析化学のような医学以外に分野に有用性を持っていることがあり、そのような有用性も本明細書の開示によってカバーされる。
【0079】

例1
コンドロイチン硫酸Aでコーティングされた酸化鉄磁性体コロイド
コンドロイチン硫酸Aの50mgが蒸留水の1mLに溶かされた。この溶液0.3mLに、68.4mg/mLの鉄を含んでいるコロイド状のγ酸化鉄が加えられ、混合物は15分間超音波で処理された。その後、pH7.4の、1.5MのNaClおよび0.2Mのヒドロキシエチルピペラジンスルホネート−Naを含んでいる溶液(10x HEPES−NS)の0.1mLが加えられた。混合物は、溶離剤として、0.15M NaCl−20 mM HEPES−Na、pH7.4を使用して、セファロースCL−4Bの上でクロマトグラフィで分離された。鉄コロイドを含んでいる、暗色の画分が採取され、0.22のμmフィルタで濾過して殺菌された。生成物は、鉄を5.6mg/mL、コンドロイチン硫酸Aを0.96mg/mL含んでいた。図3はこの例によって生成されたコロイド粒子の透過型電子顕微鏡視界から得られた粒度分布ヒストグラムを示す。
【0080】
例2
ポリエチレンイミンでコーティングされた酸化鉄磁性体コロイド
68.4mg/mLの鉄を含んでいるコロイド状のγ酸化鉄の0.3mLが、塩化水素酸でpH3.5に調節されたポリエチレンイミン(Polymine P(シグマ・ケミカル社))を44mg含んでいる水溶液の1mLに加えられた。混合物は15分間超音波で処理された。得られた溶液は、溶離剤として脱イオン水を使用し、セファロースCL−4Bの上でクロマトグラフィで分離され、0.22μmフィルタによって濾過されて殺菌され、1.54mg/mlの鉄の濃度の、ポリエチレンイミンでコーティングされた鉄コロイドを与えた。
【0081】
例3
磁性ドキソルビシン
例1により得られた、コンドロイチン硫酸でコーティングされた酸化第二鉄の20μLと、ドキソルビシン注射溶液USP(ドキソルビシンの2mg/mL)の30μLが、pH 7.4の、0.15M NaClおよび20mM HEPES−Na(Ix HEPES−NS)をさらに含んでいる水溶液、100μLの全容積中で混合された。微粒子が直ちに形成された。それらは、反応槽を磁石へ暴露することにより分離され、好適な量のIx HEPES−NS中で渦流により再懸濁された。微小球粒子は74.9%のFe、16.0%のドキソルビシンを含み、残部はコンドロイチン硫酸であった。パーセンテージは乾燥質量の合計に基づく。図2は、この例によって生成された磁性ドキソルビシンの蛍光顕微鏡イメージを示す。マウス赤血球(大きな球体は直径でおよそ6nmである)は、粒径の比較評価のために加えられた。
【0082】
例4
磁性ドキソルビシン−異なる例
ド キソルビシン溶液の容積を20μLに減らして、例3の手続きが繰り返された。微粒子は、77.6%のFe、13.0%のドキソルビシンを含み、残部はコンドロイチン硫酸であった。パーセンテージは乾燥質量の合計に基づく。
【0083】
例5
磁性デキスニグルジピン
例1によって得られたコンドロイチン硫酸でコーティングされた鉄コロイドの20μLが、渦流により2mg/mLのデキスニグルジピン(BYK Guldenファーマシューティカルズ)および16%のDMSOを含んでいる溶液の40μLと混合された。水と、10xHEPES−NSが、0.15M NaClおよび20mM HEPESに加えられ、100μLの最終体積とされた。2時間の後、微粒子は磁石によって分離され、Ix HEPE−NSの好適な容積中で再懸濁された。微粒子は次のものを含んでいた(乾燥質量基準):デキスニグルジピン46.1%。Fe 48.3%、残部のコンドロイチン硫酸。
【0084】
例6
磁性メトトレキセート
例2のようにして得られたポリエチレンイミンでコーティングされた鉄コロイドの40μLが、メトトレキセート(アメトプテリン(Ametopterin)、(シグマ・ケミカル社))溶液(水中4mg/mL、pH 7.4)の30μLと混合された。微粒子は磁石によって分離され、Ix HEPES−NSの中で再懸濁された。微粒子は86.9mgのFeおよび81.3mgのメトトレキセートを含んでいた。
【0085】
例7
磁性ドキソルビシンの生物活性
人間の表皮癌細胞(KB)を、37℃および5%のCOで、10%のウシ胎児血清で補われたRPMI 1470培地において成長させた。細胞は、96−ウエル組織培養プレート中に、5,000/ウエルの濃度でおかれ、48時間、付着し順応させた。遊離のドキソルビシンおよび再懸濁された、上記の例3および4により得られた磁性ドキソルビシン微粒子は、薬/mlの0.01−10マイクログラムの濃度範囲をカバーするように、ウエルに加えられた。薬への19時間の暴露の後、細胞は72時間新鮮な培地に暴露された。また、細胞生存率は文献に記載されられるような従来のテトラゾリウム(MTT)検定を使用して分析された。図4Aに示されるように、磁性薬の細胞毒性は遊離の薬のそれに近似していた。図4Cに示されるように、コンドロイチン硫酸塩でコーティングを施した酸化第二鉄単独では細胞無毒性だった。
【0086】
例8
磁性デキスニグルジピンの生物活性
例7に記載されたように、細胞は育てられ配置された。0.03−15マイクログラム/mlのデキスニグルジピン濃度の範囲をカバーするように、遊離のデキスニグルジピン(溶液)あるいは例5のようにして得られた磁性デキスニグルジピンは、細胞へ加えられた。細胞生存率検定および他の検定条件は例7での通りだった。図4Bに示されるように、磁性デキスニグルジピンの細胞毒性は遊離の薬剤のものと同じである。
【0087】
例9
磁性メトトレキセートの生物活性
人間の肺小細胞がん細胞(NCI−H1048)は、例7に記載された検定のために調製された。細胞は、薬液の形態または、例6に記載されたようにして得られた磁性体形態のメトトレキセートに、様々な濃度(0.001−2マイクログラム/ml)で94時間暴露された。薬物曝露の後の細胞生存率はMTT検定を使用して決定された。図5に表示された結果は、磁性薬の細胞増殖抑制性の特性が遊離の薬剤のものに近似していることを示す。
【0088】
例10
硫酸デキストランでコーティングされたマグヘマイト
γ酸化鉄(マグヘマイト)は、等モルの量の塩化第一鉄・塩化第二鉄とアンモニアを含む水溶液からのアンモニア沈降反応と空気酸化により得られたコロイド状の物質を乾燥することにより得られた。マグヘマイトの104.1mgを、研和w/ガラス棒を使用して、水3 mL中の101.3mgの硫酸デキストラン(DSおよびシグマ・ケミカル社、生成物番号D5224)の溶液中で分散し、次に、先細のプローブを使用して10分間、超音波で処理された。Branson Sonifier 250を使用して、電力スケール20−22の設定で行った。反応混合物は、0.25インチx0.25インチのNeFeB磁石への接触によって磁気的に分離された。上澄みは回収され、およびペレットは、簡単な(1分)超音波処理によって水1mL中に再度分散された。分散は、5,000回/毎分の回転数で3分間、エッペンドルフ型遠心機で遠心分離され、また、上澄みは0.2マイクロメートルのポリエーテルスルホンフィルタを通された。この物質は16.8mg/mLの鉄を含んでいた。
【0089】
例11
クロファジミンを含む磁性微粒子
例10によって作られた硫酸デキストランでコーティングされたマグヘマイトの0.1mL、0.4mLの水、およびDMSOの中のクロファジミン(シグマ・ケミカル社)の5mg/mLの溶液の0.4 mLが、ガラス・バイアル中で混合された。対照として、0.4mLクロファジミン溶液が磁性体および/または高分子電解質のない状態で水の0.5mLと混合された。混合物に、例10でのように、5M NaClの0.03mLが加えられ、粒子状物質が磁石によって分離された。上澄みは廃棄された。また磁性ペレットは1mLの水中で再度分散された。再沈殿、磁気分離および再分散工程が繰り返された。また、粒子状物質は簡単な(1秒)超音波処理を使用して、1mLの水中に再度分散した。この生成物は、クロファジミンの0.58±0.02mg/mLおよび鉄の1.14±0.03mg/mLを含んでいた。薬/鉄比率はO.51+/−O.O3。
【0090】
例12
水中の硫酸デキストランでコーティングされたマグヘマイト、磁性クロファジミン微粒子およびクロファジミンの凝集安定性
例9および10により作られた生成物の粒径は、生成の1時間後、および周囲温度での20時間の貯蔵の後に準弾性光散乱法を使用して、決定された。次のサイズ・データはナノメートルでの、平均±SDであり、単一分散(ガウス)法を使用して決定された。ND−全体が沈降;測定できなかった。高分子電解質でコーティングされたマグヘマイトおよび磁性クロファジミン微粒子の両方のサイズは、観察の期間、安定していた。
【0091】
【表1】

【0092】
例13
アムホテリシンBを含んでいる磁性微粒子
殺菌性抗生物質アムホテリシンB(AMB;シグマ・ケミカル社(アメリカ)から得られた)は、2mg/mLで、80%(体積)のジメチルスルホキシド(DMSO)水溶液に溶かされた。HEPES−NS中に0.0566mgの鉄および0.0096mgのChSAを含むコンドロイチン硫酸A(ChSA)でコーティングされた酸化鉄磁性体コロイドのアリコートを、0.01−0.05mgのAMBを含んでいるAMB溶液のアリコートと一緒にし、0.11−0.15mLの最終容積とし、渦流で簡単に混合した。粒子状物質は、磁石への混合物の暴露(1.5分)によって分離された。また、上澄み流体は分光光度法を使用して、鉄、AMBおよびChSAについて分析された。粒子状物質中のAMBの取り込みは実際的に完了していた。鉄、AMBおよびChSAの残留量に基づいて、粒子組成が決定された(表2)。ここで磁性体(酸化第二鉄)と抗生物質(AMB)の合計は92.3%−93.6%だった。また、抗生物質の含量は粒子乾燥質量の27%−42%だった。
【0093】
【表2】

【0094】
本明細書に提供される例と実施態様は、本発明を例示するものであり、本発明の範囲を何ら制限するものではない。本発明の様々な改良は、当該技術分野における当業者には明白であり、この出願の精神および範囲、およびクレームの範囲内に含まれる。本明細書に引用された出版物、特許、および特許出願はすべて、参照され、その目的のためにそれらの全体が組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】図1は、例示的な有機医薬品のドキソルビシン(a)、および例示的な高分子電解質コンドロイチン硫酸の構造(b)の構造、および高分子電解質でコーティングされた磁性体Iおよびイオン化された有機医薬品化合物ドキソルビシンIIからの微粒子IIIの合成の概要の表現を示す。
【図2】図2は、本明細書の例2により生成されたドキソルビシンおよびコンドロイチン硫酸Aを含む微粒子の蛍光顕微鏡写真イメージの複写である。
【図3】図3は、本明細書の例1により生成されたコンドロイチン硫酸Aでコーティングされたγ酸化鉄の磁性ナノ粒子状物質の透過型電子顕微鏡イメージから得られた粒度分布ヒストグラムである。
【図4A】図4Aは、遊離の(結合されていない)ドキソルビシン(白丸)と、例4(黒点)および例3(三角)によって調製された磁性微粒子内のドキソルビシンとの効果の比較を示す、培養KB表皮癌細胞中で得られた細胞生存率対薬剤濃度のグラフである。DXRはドキソルビシンを示す。
【図4B】図4Bは、遊離の(結合されていない)デキスニグルジピン(白丸)と、例5により調製された磁性微粒子内のデキスニグルジピン(黒丸)との効果の比較を示す、培養KB表皮癌細胞中で得られた細胞生存率対薬剤濃度のグラフである。
【図4C】図4Cは、例1によって調製された高分子電解質のコーティングを施した酸化鉄磁性体コロイドに暴露された培養KB表皮癌細胞中で得られた細胞生存率対鉄濃度のグラフである。
【図5】図5は、遊離の(結合されていないメトトレキセート(白丸)と、例6により調製された磁性微粒子内のメトトレキセート(黒丸)との効果の比較を示す。
【図1a】

【図1b】

【図1c】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子を含む組成物であって、該微粒子は
(i) 磁性体;
(ii) 前記磁性体と会合されたポリマーであって、荷電を生じうるイオン化可能な官能基を有するポリマー;および
(iii)イオン化可能な有機化合物を含み、
ここで、水媒体中の前記のイオン化可能な有機化合物は、前記ポリマーの荷電の符号と反対の符号の荷電にイオン化可能であり、そして前記の磁性体と有機化合物は合計で微粒子乾燥質量の少なくとも50%を構成し、そして前記の微粒子は水に分散可能である。
【請求項2】
前記の磁性体と有機化合物は合計で微粒子乾燥質量の少なくとも70%、または少なくとも90%を構成する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記の有機化合物が微粒子乾燥質量の少なくとも10%を構成する、クレーム1あるいは2記載の組成物。
【請求項4】
前記の有機化合物が水に貧弱に可溶性である、請求項1から3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
前記の有機化合物が医薬品、染料あるいは顔料である、請求項1から4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
前記の有機化合物が抗癌剤、抗菌薬、ドキソルビシン、メトトレキセート、デキスニグルジピン、クロファジミンあるいはアムホテリシンBである、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記の磁性体がフェライト、マグネタイトあるいはマグヘマイトである、請求項1から6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
前記の有機物が医薬品で、前記微粒子がその表面に、微粒子の血液循環時間を拡張するのに有効なコーティングを有する、請求項5記載の組成物。
【請求項9】
前記の微粒子がその表面に、親水性のポリマー、ポリ(アルキルエーテル)あるいはポリ(エチレングリコール)を含むコーティングを有する、請求項1から8のいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
前記の微粒子がターゲット部位を含む、請求項1から9のいずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
前記の微粒子が、前記のコーティングに結合したターゲット部位を含む、請求項8または9記載の組成物。
【請求項12】
前記の有機物が医薬品であり、微粒子は薬学的に受容可能な媒体中にある、請求項1から11のいずれか1項記載の組成物。
【請求項13】
前記の微粒子が約10ナノメートルと約10マイクロメートルの間、あるいは約30ナノメートルと約3マイクロメートルの間の平均サイズを有する、請求項1から12のいずれか1項記載の組成物。
【請求項14】
前記磁性体が強磁性、常磁性、または超磁性のナノ粒子の形態であり、該ナノ粒子が少なくとも1つの磁区を有する、請求項1から13のいずれか1項記載の組成物。
【請求項15】
前記の磁性体の前記のナノ粒子が、約1nmから約100nmの間のサイズを有する、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
微粒子含有組成物の調製方法であって、液体媒体中に分散された磁性体であって該磁性体と会合されて該媒体中でイオン化されて電荷を有する荷電ポリマーを有する磁性体と、前記の荷電を有するポリマーの荷電と反対の符号の荷電を該媒体中で示すイオン化可能な有機化合物とを接触させ、微粒子を形成する工程を含む方法。
【請求項17】
磁性体および前記の有機化合物が合計で微粒子乾燥質量の少なくとも50%を構成する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
磁性体および前記の有機化合物が合計で微粒子乾燥質量の少なくとも70%、または少なくとも90%を構成する、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記の液体媒体が本質的に、前記の磁性体と会合していない荷電ポリマーを実質的に含まない、請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記の液体媒体が水を含む請求項16記載の方法。
【請求項21】
前記の有機物が水に貧弱な可溶性ょ有する、請求項21記載の方法。
【請求項22】
前記の接触が、水含有媒体中に分散された前記の磁性体と、水混和性の有機溶剤を含む媒体中の前記有機物質の溶液とを混合することを含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記の有機化合物が医薬品であり、さらに前記微粒子を微粒子血液循環時間を延長するのに有効な物質でコーティングする工程を更に含む、請求項16記載の方法。
【請求項24】
さらに親水性のポリマーで前記微粒子をコーティングする工程をさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項25】
前記のコーティングする工程が、微粒子と、疎水性の部分が結合された親水性のポリマーと接触させることを含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記の親水性のポリマーがさらにターゲット部位を含む、請求項24記載の方法。
【請求項27】
請求項12記載の組成物の有効量を患者に投与することを含む患者の治療方法。
【請求項28】
医薬品としての、請求項1から15のいずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項29】
有機物が染料または顔料である、ペイント、インキあるいは着色媒体としての、請求項1から15のいずれか1項記載の組成物の使用。

【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−537537(P2009−537537A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511048(P2009−511048)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/011719
【国際公開番号】WO2007/133801
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(508337639)
【出願人】(508337640)
【出願人】(508337651)
【Fターム(参考)】