説明

有機薄膜トランジスタの製造方法

【課題】有機薄膜トランジスタを構成するソース電極およびドレイン電極を、有機溶剤を分散溶媒とする、金属ナノ粒子の分散液を利用して作製することができる、有機薄膜トランジスタの製造方法を提供する。
【解決手段】記ソース電極およびドレイン電極の形成工程では、
超微細インクジェット印刷装置を用いて、金属ナノ粒子分散液を所定のパターン形状に塗布して、金属ナノ粒子分散液塗布層を形成し、
該金属ナノ粒子分散液塗布層を加熱焼成処理して、金属ナノ粒子の焼結体層からなるソース電極およびドレイン電極を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作層として、有機半導体の薄膜層を利用する、有機薄膜トランジスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)は、例えば、液晶ディスプレイなどのフラット・パネルディスプレイ装置において、各ピクセルの表示動作を制御するスイッチング素子、各ピクセルを駆動させる駆動素子として、広く利用されている。薄膜トランジスタの作製に利用される基板材料として、各種の光透過性の絶縁性高分子材料で作製される基板、例えば、プラスチック基板の利用も進められている。
【0003】
絶縁性高分子材料で作製される基板、例えば、プラスチック基板の耐熱性は、無機材料で作製される基板、例えば、ガラス基板の耐熱性と比較すると、大幅に劣っている。そのため、薄膜トランジスタの動作層に利用される、半導体薄膜層として、低温条件での作製が可能な有機半導体の薄膜層を利用する、有機薄膜トランジスタの応用が進められている。
【0004】
有機薄膜トランジスタにおける、実効的なチャネル層は、ゲート絶縁膜と有機半導体の薄膜層との接合界面に形成される。この実効的なチャネル層における、キャリア移動度を向上させるため、ゲート絶縁膜の表面に、予め、有機半導体を構成する有機化合物の「自己組織化単分子膜」を形成する手法が利用されている(特許文献1)。この「自己組織化単分子膜」上に、有機化合物からなる層を積層すると、積層される有機化合物は、自己組織化単分子膜中の分子の秩序性に従って、秩序的な配向を保持した状態(エピタキシャル成長様の積層状態)となる。
【0005】
一方、下層に「自己組織化単分子膜」が存在していない領域では、その領域に有機化合物からなる層を積層すると、秩序的な配向を実質的に具えていない状態となっている。例えば、有機化合物の分子は、局所的には、ある程度、その配向は揃った部位は存在するが、全体的には「無秩序な配置」で堆積された状態となっている。
【0006】
有機薄膜トランジスタを構成するソース電極およびドレイン電極を、ゲート電極に対して、自己整合した形状に形成する手法が提案されている。具体的には、ソース電極およびドレイン電極の形成に、金属ナノ粒子の分散液を塗布した後、その塗布膜層を低温焼成処理して、金属ナノ粒子の焼成体層を利用する際、この塗布膜層の端が、ゲート電極の側端位置に自己整合する状態とする。例えば、ゲート電極の形状に合わせて、ゲート電極を被覆しているゲート絶縁膜表面のチャネル領域に相当する部分をレジストで被覆する。また、ソース電極形成部とドレイン電極形成部用の開口部を取り巻くように、ゲート絶縁膜表面を該レジストで被覆している状態とする。金属ナノ粒子の分散液が、水系溶媒を分散溶媒とする際、レジスト表面は、撥液性であるが、開口部に露呈するゲート絶縁膜表面は、親液性である状況では、レジスト表面への金属ナノ粒子分散液の滲み出しが防止される。従って、ゲート電極の側端位置では、開口部に塗布された金属ナノ粒子の分散液は、そのレジストの側端に接するように、「自己整合的な」塗布膜層となっている。引き続き、塗布膜層に含まれる分散溶媒を蒸散させ、仮焼成処理して、次いで、レジストを剥離し、塗布膜層の本焼成を行う。その結果、作製されたソース電極およびドレイン電極は、ゲート電極に対して、自己整合した形状に形成される(特許文献2)。レジストの除去した後、有機半導体の薄膜層を形成し、ゲート電極を被覆しているゲート絶縁膜表面のチャネル領域に相当する部分、ソース電極とドレイン電極の一部を被覆するように、有機半導体の薄膜層をパターニングする。
【特許文献1】米国特許第6,433,359号明細書
【特許文献2】特開2006−286719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の有機薄膜トランジスタを構成するソース電極およびドレイン電極を、金属ナノ粒子の分散液を利用して作製する工程は、低温条件で実施でき、各種の光透過性の絶縁性高分子材料で作製される基板、例えば、プラスチック基板の利用に適合している。
【0008】
しかしながら、ソース電極形成部とドレイン電極形成部用の開口部を取り巻くように、ゲート絶縁膜表面をレジストで被覆する前処理工程が必要である。また、レジスト表面は、撥液性であるが、開口部に露呈するゲート絶縁膜表面は、親液性である特徴を利用するため、水系溶媒を分散溶媒とする、金属ナノ粒子の分散液を使用する必要がある。加えて、レジストを剥離する際、塗布膜層に含まれる分散溶媒を蒸散させ、仮焼成処理して、該塗布膜層の剥離を回避する必要がある。換言するならば、金属ナノ粒子の分散液中には、バインダ樹脂成分を配合し、該塗布膜層の剥離を回避する必要がある。
【0009】
従って、上記のレジスト表面は、撥液性であるが、開口部に露呈するゲート絶縁膜表面は、親液性である特徴を利用する手法は、水系溶媒に代えて、有機溶剤を分散溶媒とする、金属ナノ粒子の分散液を使用する場合には、適用できない。また、金属ナノ粒子の分散液中に、バインダ樹脂成分を配合しない場合、レジストを剥離する際、塗布膜層に含まれる分散溶媒を蒸散させ、仮焼成処理して、該塗布膜層の剥離を回避する手段は利用できない。
【0010】
水系溶媒に代えて、有機溶剤を分散溶媒とする、金属ナノ粒子の分散液を使用する場合、特には、金属ナノ粒子の分散液中に、バインダ樹脂成分を配合しない場合に、有機薄膜トランジスタを構成するソース電極およびドレイン電極を、金属ナノ粒子の分散液を利用して作製するには、新たな手法の開発が必要である。
【0011】
本発明は、前記の課題を解決するものである。すなわち、本発明の目的は、有機薄膜トランジスタを構成するソース電極およびドレイン電極を、有機溶剤を分散溶媒とする、金属ナノ粒子の分散液を利用して作製することができ、その際、ソース電極形成部とドレイン電極形成部に対応する開口部を設けたレジストを利用せず、インクジェット印刷法を適用して、金属ナノ粒子の分散液を塗布する手法を利用する、有機薄膜トランジスタの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記の課題を解決するため、鋭意検討を行った。
【0013】
まず、対象とする有機薄膜トランジスタは、例えば、液晶ディスプレイなどのフラット・パネルディスプレイ装置において、各ピクセルの表示動作を制御するスイッチング素子、各ピクセルを駆動させる駆動素子である点に留意した。すなわち、一ピクセルのサイズを基準に、その駆動用のTFTの素子サイズは決定される点に留意した。一ピクセルのサイズを、400μm×400μmの矩形と仮定すると、その駆動用のTFTの素子の作製部分は、例えば、300μm×300μm以下となる。その場合、有機薄膜トランジスタのゲート電極のゲート幅:WGは、300μm以下、例えば、100μm〜300μmの範囲に選択され、ゲート長:LGは、5μm〜30μmの範囲に選択される。ゲート電極のサイズに対応して、ソース電極およびドレイン電極のサイズが決定される。従って、ソース電極を、長さ:LS、幅:WSの矩形、ドレイン電極を、長さ:LD、幅:WDの矩形とする場合、長さ:LSと長さ:LDは、100μm以下の範囲、例えば、30μm〜100μmの範囲、幅:WSと幅:WDは、250μm以下の範囲、例えば、80μm〜250μmの範囲に選択される。
【0014】
その際、例えば、ソース電極とドレイン電極で挟まれるチャネル領域のサイズ、すなわち、チャネル領域の長さ:Lchannelは、ゲート長:LGを基準として、2LG≧Lchannel≧LGの範囲に選択する。すなわち、ソース電極とドレイン電極の間の間隙:LS-Dは、ゲート長:LGを基準として、2LG≧LS-D≧LGの範囲に選択する。例えば、チャネル領域の直上から観察した際、ゲート電極の側端と、ソース電極およびドレイン電極との間の水平方向の間隙:ΔLS-G、ΔLD-Gは、1/2・LG≧ΔLS-G、ΔLD-G≧0の範囲に選択する。
【0015】
上記のソース電極およびドレイン電極の目標サイズ、ならびに、ゲート電極に対する、アライメント精度の目標を考慮すると、その作製に利用される金属ナノ粒子分散液塗布層のパターンを描画する精度は、最小線幅/最小スペース幅は、少なくとも、1/2・LG以下の範囲であることが好ましいと結論した。前記の金属ナノ粒子分散液塗布層のパターンを描画する精度を達成する手段として、超微細インクジェット印刷装置を用いて、金属ナノ粒子分散液を所定のパターン形状に塗布して、金属ナノ粒子分散液塗布層を形成する手法が利用できることを見出した。
【0016】
一方、有機薄膜トランジスタでは、「ON状態」において、チャネル領域のゲート電極の直上の、ゲート絶縁膜と有機半導体層との界面に「実効的なチャネル層」が形成される。その際、「実効的なチャネル層」として機能する、ゲート絶縁膜との界面近傍の有機半導体層中のキャリア移動度を向上させると、「ON状態」のドレイン電流Id-ONが増加する。その手段として、例えば、ゲート絶縁膜の表面に、有機半導体を構成する有機化合物の「自己組織化単分子膜」を形成し、該「自己組織化単分子膜」を下地層として、真空蒸着法を用いて、有機半導体膜を形成する手法が利用できることを見出した。また、「自己組織化単分子膜」を下地層として、真空蒸着法を用いて形成される、有機半導体膜を採用すると、「OFF状態」のドレイン電流Id-OFFは低減されることも確認される。そのため、ON/OFF電流比:Id-ON/Id-OFFが、格段に向上されることが確認される。
【0017】
本発明者らは、上記の知見に基づき、本発明を完成させた。
【0018】
本発明の第一の形態にかかる有機薄膜トランジスタの製造方法は、
有機薄膜トランジスタを製造する方法であって、
基板上に、ゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極表面を被覆するゲート絶縁膜を、基板上に形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上に、ソース電極およびドレイン電極を形成する工程と、
前記ソース電極とドレイン電極表面を被覆するように、有機半導体膜を、ゲート絶縁膜上に形成する工程を有し、
前記有機半導体膜の形成工程では、
真空蒸着法を用いて、有機半導体膜の形成を行い、
前記ソース電極およびドレイン電極の形成工程では、
超微細インクジェット印刷装置を用いて、金属ナノ粒子分散液を所定のパターン形状に塗布して、金属ナノ粒子分散液塗布層を形成し、
該金属ナノ粒子分散液塗布層を加熱焼成処理して、金属ナノ粒子の焼結体層からなるソース電極およびドレイン電極を形成する
ことを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法である。
【0019】
本発明の第二の形態にかかる有機薄膜トランジスタの製造方法は、
有機薄膜トランジスタを製造する方法であって、
基板上に、ゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極表面を被覆するゲート絶縁膜を、基板上に形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上に、有機半導体膜を形成する工程と、
前記有機半導体膜上に、ソース電極およびドレイン電極を形成する工程を有し、
前記有機半導体膜の形成工程では、
真空蒸着法を用いて、有機半導体膜の形成を行い、
前記ソース電極およびドレイン電極の形成工程では、
超微細インクジェット印刷装置を用いて、金属ナノ粒子分散液を所定のパターン形状に塗布して、金属ナノ粒子分散液塗布層を形成し、
該金属ナノ粒子分散液塗布層を加熱焼成処理して、金属ナノ粒子の焼結体層からなるソース電極およびドレイン電極を形成する
ことを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法である。
【0020】
本発明にかかる有機薄膜トランジスタの製造方法では、
前記超微細インクジェット印刷装置を用いて形成される、金属ナノ粒子分散液塗布層の最小線幅を、1μm〜10μmの範囲に選択し、
金属ナノ粒子分散液塗布層の塗布膜厚を、30nm〜600nmの範囲に選択することができる。
【0021】
また、前記超微細インクジェット印刷装置を用いた金属ナノ粒子分散液の塗布では、
吐出される液滴量を、0.3フェムトリットル〜1フェムトリットルの範囲に選択することができる。
【0022】
一方、前記金属ナノ粒子分散液中に分散されている、金属ナノ粒子の平均粒子径を、1〜100nmの範囲に選択することが好ましい。
【0023】
前記金属ナノ粒子分散液中に分散されている、金属ナノ粒子は、
金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、タンタル、ビスマス、インジウム、錫、チタン、アルミニウムからなる金属の群より選択される、一種類の金属からなるナノ粒子、二種類以上の金属からなるナノ粒子の混合物、あるいは、該金属の群より選択される、二種類以上の金属の合金からなるナノ粒子であることが好ましい。
【0024】
加えて、前記超微細インクジェット印刷装置を用いて吐出される、前記金属ナノ粒子分散液の20℃における液粘度を、2mPa・s〜30mPa・sの範囲に選択することが好ましい。
【0025】
特に、本発明にかかる有機薄膜トランジスタの製造方法では、
前記超微細インクジェット印刷装置を用いて吐出される、前記金属ナノ粒子分散液は、
固形成分として、前記金属ナノ粒子を分散溶媒中に均一に分散してなる分散液であり、
該金属ナノ粒子表面は、かかる金属ナノ粒子に含まれる金属元素と配位的な結合が可能な基として、窒素、酸素、またはイオウ原子を含み、これら原子の有する孤立電子対による配位的な結合が可能な基を有する有機化合物1種以上により被覆されており、
前記金属ナノ粒子100質量部に対して、前記窒素、酸素、またはイオウ原子を含む基を有する有機化合物一種以上を総和として、10〜50質量部を含有していることが望ましい。
【0026】
その際、前記超微細インクジェット印刷装置を用いて吐出される、前記金属ナノ粒子分散液は、
分散溶媒として、液体状有機物または有機溶剤を、一種、あるいは二種以上含有し、
少なくとも、前記液体状有機物または有機溶剤の一つには、融点は、20℃以下、沸点は、80〜300℃の範囲である有機溶剤を選択することが好ましい。
【0027】
また、前記分散溶媒は、
100℃以上に加熱した際、該分散溶媒100質量部当たり、前記金属ナノ粒子表面を被覆する前記窒素、酸素、またはイオウ原子を含む基を有する有機化合物を50質量部以上溶解可能な、高溶解性を有する有機溶剤または液体状有機物の一種からなる溶媒、あるいは二種以上からなる混合溶媒であることが好ましい。
【0028】
例えば、分散溶媒として、炭素数10〜18のアルカン、あるいは、炭素数8〜12の第一級アルコールを選択することができる。
【0029】
さらには、前記超微細インクジェット印刷装置を用いて吐出される、前記金属ナノ粒子分散液は、
該分散液中に含まれる分散溶媒が一部蒸散除去され、前記分散溶媒の容積比率が、20〜50体積%の範囲となるまで濃縮が施された濃縮分散液は、20℃におけるその液粘度が20Pa・s〜1000Pa・sの範囲の粘稠な濃縮液となることが望ましい。
【0030】
一方、前記金属ナノ粒子分散液塗布層を加熱焼成処理する際、
その焼成温度を、100℃〜230℃の範囲に選択する。
【0031】
本発明にかかる有機薄膜トランジスタの製造方法では、
前記有機半導体層は、
ペンタセンまたはヘキサデカフルオロ銅フタロシアニンからなる層であることが好ましい。
【発明の効果】
【0032】
本発明にかかる有機薄膜トランジスタの製造方法を利用することで、有機薄膜トランジスタを構成するソース電極およびドレイン電極を、有機溶剤を分散溶媒とする、金属ナノ粒子の分散液を利用して作製することができる。特には、ソース電極およびドレイン電極の作製工程では、ソース電極形成部とドレイン電極形成部に対応する開口部を設けたレジストを必要とせず、インクジェット印刷法を適用して、金属ナノ粒子の分散液を塗布する手法を利用することで、目的とするソース電極形成部とドレイン電極形成部に金属ナノ粒子の分散液を塗布することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に、本発明にかかる有機薄膜トランジスタの製造方法をより詳しく説明する。
【0034】
まず、本発明の第一の形態にかかる有機薄膜トランジスタの製造方法は、下記の構造を有する、第一の形態の有機薄膜トランジスタの製造に適用される。
【0035】
また、本発明の第二の形態にかかる有機薄膜トランジスタの製造方法は、下記の構造を有する、第二の形態の有機薄膜トランジスタの製造に適用される。
【0036】
第一の形態の有機薄膜トランジスタは、
基板と、
該基板上に形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極表面を被覆するように、基板上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成された、ソース電極およびドレイン電極と、
前記ソース電極とドレイン電極表面を被覆するように、ゲート絶縁膜上に形成された有機半導体膜とで構成されている。
【0037】
第二の形態の有機薄膜トランジスタは、
基板と、
該基板上に形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極表面を被覆するように、基板上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成された有機半導体膜と、
前記有機半導体膜上に形成された、ソース電極およびドレイン電極とで構成されている。
【0038】
この有機薄膜トランジスタを作製する際、基板は、絶縁性材料で形成される基板である。液晶ディスプレイなどのフラット・パネルディスプレイ装置に応用する際には、光透過性の絶縁性材料で形成される基板が利用される。無機の絶縁性材料で形成される光透過性基板、例えば、ガラス基板を使用することができる。また、光透過性の絶縁性有機樹脂材料で形成される基板、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミドなどの光透過性プラスチック材料で形成される基板を使用することができる。
【0039】
本発明の有機薄膜トランジスタの製造方法が対象とする、上記の有機薄膜トランジスタでは、例えば、ゲート電極のサイズは、ゲート長:LGは、5μm〜30μmの範囲、好ましくは、7μm〜20μmの範囲に選択し、ゲート幅:WGは、100μm〜300μmの範囲に選択する。
【0040】
また、チャネル長:Lchannelは、ゲート長:LGを基準として、2LG≧Lchannel≧LGの範囲、好ましくは、4/3・LG≧Lchannel≧LGの範囲に選択する。すなわち、ゲート電極を挟むように形成される、ソース電極およびドレイン電極のゲート電極側の側端間の間隔:LS-Dは、ゲート長:LGを基準として、2LG≧LS-D≧LGの範囲、好ましくは、4/3・LG≧LS-D≧LGの範囲に選択する。
【0041】
ゲート電極は、ゲート絶縁膜の下に位置し、ソース電極およびドレイン電極は、ゲート絶縁膜の上に位置するが、直上から観察した際、
ソース電極およびドレイン電極の形状は、実質的に、それぞれ、長さLSの短辺、長さWSの長辺を有する矩形、長さLDの短辺、長さWDの長辺を有する矩形と見做すことができ、
また、ゲート絶縁膜の形状は、長さLGの短辺、長さWGの長辺を有する矩形と見做すことができるように、各電極のパターン形状を選択することが好ましい。
【0042】
通常、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の形状を前記のように選択する際、ソース電極およびドレイン電極の矩形パターンの一辺と、ゲート電極の矩形パターンの長さWGの長辺が並行となるように配置する。例えば、ソース電極およびドレイン電極の矩形パターンの長さWSの長辺、長さWDの長辺が、ゲート電極の矩形パターンの長さWGの長辺が並行となるように配置する。その際、ソース電極およびドレイン電極の矩形パターンの長さWSの長辺、長さWDの長辺は、ゲート電極の矩形パターンの長さWGの長辺より短くし、また、長さWSの長辺と長さWDの長辺を等しい長さに選択する。すなわち、WG>WS=WDの条件を満足するように選択する。例えば、WG>WS=WD≧1/2・WGの条件、好ましくは、WG>WS=WD≧2/3・WGの条件を満足するように選択する。例えば、ソース電極およびドレイン電極の矩形パターンの長さWSの長辺、長さWDの長辺を、WG>WS=WD≧2/3・WGの条件を満す範囲で、70μm〜250μmの範囲に選択する。
【0043】
一方、有機薄膜トランジスタの動作層として利用される有機半導体の薄膜層は、少なくとも、チャネル長:Lchannelのチャネル領域は、実質的に、長さLchannelの短辺、長さWchannelの長辺を有する矩形と見做すことができるように、パターンニングする。このチャネル領域の幅:Wchannelは、ゲート電極のゲート幅:WGより狭くする。通常、チャネル領域の幅:Wchannelは、ソース電極およびドレイン電極の矩形パターンの長さWSの長辺、長さWDの長辺よりも狭くすることが好ましい。すなわち、少なくとも、WG>Wchannelの条件を満足し、好ましくは、WG>WS=WD≧Wchannelの条件を満足するように選択する。例えば、WG>WS=WD≧Wchannel≧1/2・WGの条件、より好ましくは、WG>WS=WD≧Wchannel≧2/3・WGの条件を満足するように選択する。例えば、チャネル領域の幅:Wchannelを、WG>WS=WD≧Wchannel≧2/3・WGの条件を満す範囲で、70μm〜250μmの範囲に選択する。
【0044】
有機薄膜トランジスタにおいて、チャネル領域の長さ:Lchannelは、ソース電極およびドレイン電極のゲート電極側の側端間の間隔:LS-Dに相当している。チャネル領域の直上から観察した際、ソース電極のゲート電極側の側端と、ゲート電極の側端との間隙:ΔLS-Gと、ドレイン電極のゲート電極側の側端と、ゲート電極の側端との間隙:ΔLD-Gとは、その合計は、(LS-D−LG)=(ΔLS-G+ΔLD-G)となっている。従って、LG≧(ΔLS-G+ΔLD-G)≧0、好ましくは、1/3・LG≧(ΔLS-G+ΔLD-G)≧0の範囲とする。例えば、ゲート長:LGは、5μm〜30μmの範囲、好ましくは、7μm〜20μmの範囲に選択される際、(ΔLS-G+ΔLD-G)は、0μm〜20μmの範囲、好ましくは、0μm〜10μmの範囲に選択する。
【0045】
ソース電極およびドレイン電極の矩形パターンを形成する際、そのパターン描画精度は、前記の(ΔLS-G+ΔLD-G)の値よりも、より高い精度であることが必要である。換言するならば、そのパターン描画精度は、最小のスペース幅が、1μm〜10μmの範囲となるように選択することが好ましい。また、描画される線幅のバラツキ(直線からの揺らぎ幅)は、1μm〜10μmの範囲となるように、パターン描画精度を保持することが好ましい。超微細インクジェット印刷装置を用いて、描画する際、個々の液滴が塗布されるドット径(直径)は、描画精度に応じて、0.5μm〜5μmの範囲となるように、液滴の吐出条件を設定する。
【0046】
ゲート電極を形成する金属として、従来から有機薄膜トランジスタのゲート電極の形成に利用されている金属種は、本発明でも利用できる。本発明の有機薄膜トランジスタの製造方法においては、ゲート電極を形成する金属として、Au、Ag、Cu、Al、Cr、Ni、Tiから選択される金属を採用することが好ましい。基板上に、ゲート電極を形成する際、蒸着法、スパッタ法を利用して、金属薄膜を形成し、フォトリソグラフ法を適用して、所望の形状パターンにパターニングを行う手法が利用できる。また、ゲート電極の形成工程でも、超微細インクジェット印刷装置を用いて、金属ナノ粒子分散液を所定のパターン形状に塗布して、基板上に金属ナノ粒子分散液塗布層を形成し、該金属ナノ粒子分散液塗布層を加熱焼成処理して、金属ナノ粒子の焼結体層からなるゲート電極を形成することもできる。
【0047】
ゲート絶縁膜を形成する絶縁材料として、従来から有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜の形成に利用されている絶縁材料は、本発明でも利用できる。本発明の有機薄膜トランジスタの製造方法においては、ゲート絶縁膜を形成する絶縁材料として、無機絶縁材料、例えば、SiO2、SiN、Al23、Ta25が、好適に利用できる。これら無機絶縁材料からなるゲート絶縁膜の形成は、PE・CVD(Plasma-Enhanced Chemical Vapor Phase Deposition)法、スパッタ法を利用して、所望の膜厚の絶縁膜を形成し、フォトリソグラフ法を適用して、所望の形状パターンにパターニングを行う手法が利用できる。ゲート絶縁膜の膜厚は、用いる絶縁膜の比誘電率:εr-I、ならびに、絶縁耐性を考慮して、所望のゲート耐圧を達成できる範囲に選択する。
【0048】
例えば、ゲート絶縁膜を形成する絶縁材料として、絶縁破壊電界強度:EB=3MV/cm、比誘電率:εr-I=4のSiO2を利用する場合、ゲート絶縁膜の膜厚:Tinsulatorは、最大定格ゲート電圧VG-MAXに対して、EB<(VG-MAX/Tinsulator)の範囲に選択することが好ましい。
【0049】
ゲート電極の厚さ:Tgateは、通常、その表面を被覆するゲート絶縁膜の膜厚:Tinsulatorよりも、薄くなるように選択することが好ましい。すなわち、Tinsulator≧Tgateの条件を満足するように選択する。例えば、3/4・Tinsulator≧Tgate≧1/8・Tinsulatorの条件、好ましくは、2/3・Tinsulator≧Tgate≧1/6・Tinsulatorの条件を満足するように、ゲート電極の厚さ:Tgateを選択する。
【0050】
前記の条件を満たす範囲では、ゲート電極の側端による段差(Tgate)よりも、形成されるゲート絶縁膜の膜厚:Tinsulatorが厚いため、この段差部の側壁面に対しても、ゲート絶縁膜による被覆が確実に達成される。
【0051】
あるいは、本発明の有機薄膜トランジスタの製造方法においては、ゲート絶縁膜を形成する絶縁材料として、有機絶縁材料、例えば、エポキシ樹脂などの絶縁性樹脂材料を利用することもできる。絶縁性樹脂材料を使用する場合も、ゲート絶縁膜の膜厚は、用いる絶縁膜の比誘電率:εr-I、ならびに、絶縁耐性を考慮して、所望のゲート耐圧を達成できる範囲に選択する。
【0052】
ゲート絶縁膜上に形成される有機半導体の薄膜層が、動作層として利用される。その際、チャネル領域では、ゲート電極の直上、ゲート絶縁膜と有機半導体との界面に実効的なチャネル層が形成される。すなわち、ゲート電極に印加されるゲート電圧:VGが、閾値バイアス:Vthを超えた時点(VG<Vth)で、前記の実効的なチャネル層を経由するドレイン電流:Id-ONが流れ、「ON状態」となる。
【0053】
本発明の有機薄膜トランジスタの製造方法においても、ゲート絶縁膜上に有機半導体の薄膜層を形成する際、予め、ゲート絶縁膜表面に、有機半導体を構成する有機化合物の「自己組織化単分子膜(Self Assembled Monolayer:SAM)」を形成する手法を利用することが好ましい。この手法に関しては、例えば、米国特許第6,433,359号明細書(特許文献1)、Frank-J. Meyer zu Heringdorf, et al. "Growth Dynamics of Pentacene Thin Films", Nature Vol.412, 517 (2001)などに、その詳細が開示されている。
【0054】
有機半導体を構成する有機化合物の「自己組織化単分子膜」を形成する手法では、有機化合物が単分子で分散している、単分子分散液中に、浸漬すると、ゲート絶縁膜表面に吸着した単分子を核として、「自己組織的」にラテラル方向に単分子膜が成長し、最終的に、規則的な分子配向を有する「自己組織化単分子膜」が形成される。
【0055】
例えば、n−オクタデシルフォスフォン酸(C1837PO3H)を用いて、「自己組織化単分子膜」を作製する際には、ゲート電極表面に形成された下地絶縁膜上に、n−オクタデシルフォスフォン酸(C1837PO3H)の固定がなされることが好ましい。具体的には、下地絶縁膜の表面に存在するヒドロキシ基(−OH)と、該フォスフォン酸とのエステル結合を介して、固定がなされることが好ましい。この目的で利用される、下地絶縁膜としては、アルミニウム酸化物、銀酸化物、タンタル酸化物など、ゲート電極を構成する金属を酸化させることにより形成可能な金属酸化物からなる膜を採用することが好ましい。
【0056】
その後、「自己組織化単分子膜」を下地層として、有機化合物を、真空蒸着法を利用して、堆積すると、堆積される層も、下地層の規則性を反映した、秩序配列を保持した有機半導体の薄膜層となる。
【0057】
この「自己組織化単分子膜」を下地層として利用する、有機半導体の薄膜層の形成法は、下地層上での堆積過程は、真空蒸着法を利用するため、蒸散可能な低分子型の有機半導体材料に適用できる。例えば、テトラセン、ペンタセンなどのアセン類、オリゴチオフェン誘導体、フタロシアニン類からなる有機半導体の薄膜層の形成に好適に利用できる。作製する有機半導体層が、代表的なp型有機半導体であるペンタセン、または代表的なn型有機半導体であるヘキサデカフルオロ銅フタロシアニンからなる層である際、特に有効な手段となる。本発明の有機薄膜トランジスタの製造方法においても、作製する有機半導体層は、ペンタセンまたはヘキサデカフルオロ銅フタロシアニンからなる層であることが好ましい。
【0058】
その際、対象となる有機薄膜トランジスタのスイッチング動作は、ゲート電極に印加されるゲート電圧:VGが、閾値バイアス:Vthを超えた時点(|VG|>|Vth|)で、「ON状態」となる、「エンハンスト・モード型」である。従って、ゲート電極に印加されるゲート電圧:VGが、VG=0Vの状態では、ゲート電極の直上のチャネル領域では、該有機半導体層内にキャリアが存在していない状態(空乏化状態)であることが必要である。作製する有機半導体層の膜厚:Tchannnelは、前記の「空乏化」条件を満足する膜厚の範囲に選択される。
【0059】
「空乏化」の条件を満足する膜厚の範囲は、ゲート電極の金属材料Mgateの仕事関数eψ(Mgate)eV、ゲート絶縁膜の絶縁材料Igateの電子親和力eχ(Igate)eVと比誘電率:εr-I、有機半導体の電子親和力eχ(Schannel)eVと比誘電率:εr-OS、ならびに、ゲート絶縁膜の膜厚:Tinsulatorに基づき、MIS構造を仮定して、poisson方程式の数値計算に基づき、算定することができる。現実的には、有機半導体自体、残留するキャリアの濃度は低く、通常、有機半導体層の膜厚:Tchannnelが10nm以下の範囲で、上記の「空乏化」の条件を満足する。
【0060】
なお、実際のスイッチング動作時に、ゲート電極に印加されるゲート電圧:VG-ONを印加した際、MIS構造を構成する有機半導体層の厚さ方向に、伝導帯のポテンシャル変化(バンド・ベンディング)が生じる。その結果、ゲート絶縁膜と有機半導体層の界面にキャリアの蓄積が生じ、実効的なチャネル層として機能する。一方、例えば、n型有機半導体層の最上面において、伝導帯エネルギーレベル:ECは、少なくとも、quasi−Fermiレベル(Ef)より十分に高いレベルに維持されることが望ましい。作製する有機半導体層の膜厚:Tchannnelの下限は、前記の条件を満足する膜厚の範囲に選択される。一方、有機半導体層の膜厚:Tchannnelが不必要に厚いと、動作上は特に問題はないが、その作製に要する時間が、不必要に長くなる。
【0061】
通常、有機半導体層の膜厚:Tchannnelは、30nm〜100nmの範囲に選択することが好ましい。
【0062】
例えば、p型有機半導体材料であるペンタセンで形成される有機半導体層を採用する場合には、該有機半導体層の膜厚:Tchannnelは、30nm〜50nmの範囲に選択することが好ましい。また、n型有機半導体材料であるヘキサデカフルオロ銅フタロシアニンで形成される有機半導体層を採用する場合には、該有機半導体層の膜厚:Tchannnelは、30nm〜50nmの範囲に選択することが好ましい。
【0063】
本発明に第一の形態かかる有機薄膜トランジスタの製造方法では、作製される有機薄膜トランジスタは、ゲート絶縁膜上に、ソース電極およびドレイン電極を形成した後、このソース電極とドレイン電極表面を被覆するように、有機半導体膜を、ゲート絶縁膜上に形成する。
【0064】
従って、ソース電極とドレイン電極の膜厚:TS,TDに相当する段差部を被覆して、ソース電極とドレイン電極の表面を被覆するように、有機半導体膜の形成を行う。そのため、ソース電極とドレイン電極のゲート電極側の側端部は、傾斜を有する側面を有する形状とする。この傾斜(テーパ)を有する側面の平均傾斜角:θS,θDは、70°≧θS≧45°、70°≧θD≧45°の範囲に選択することが好ましい。
【0065】
また、前記段差部の被覆をより確実に実施する上では、ソース電極とドレイン電極の膜厚:TS,TDを、有機半導体層の膜厚:Tchannnelの10倍以下に選択することが望ましい。通常、ソース電極とドレイン電極の膜厚:TS,TDは、50nm〜1000nmの範囲に、好ましくは、100nm〜300nmの範囲に選択する。

本発明に第二の形態かかる有機薄膜トランジスタの製造方法では、作製される有機薄膜トランジスタは、ゲート絶縁膜上に、有機半導体膜を形成した後、この有機半導体膜の表面に、ソース電極およびドレイン電極を形成する。
【0066】
実際の液晶ディスプレイなどのフラット・パネルディスプレイ装置に利用する際には、作製された有機薄膜トランジスタを保護する目的で、表面保護膜によって被覆される。この表面保護膜の被覆を考慮すると、ソース電極とドレイン電極のゲート電極側の側端部は、傾斜を有する側面を有する形状とする。この傾斜(テーパ)を有する側面の平均傾斜角:θS,θDは、70°≧θS≧45°、70°≧θD≧45°の範囲に選択することが好ましい。
【0067】
表面保護膜の段差部の被覆性を考慮すると、ソース電極とドレイン電極の膜厚:TS,TDは、50nm〜1000nmの範囲に、好ましくは、100nm〜300nmの範囲に選択する。
【0068】
本発明の第一の形態にかかる有機薄膜トランジスタの製造方法では、ゲート絶縁膜上に、ソース電極およびドレイン電極を形成する際、超微細インクジェット印刷装置を用いて、金属ナノ粒子分散液を所定のパターン形状に塗布して、金属ナノ粒子分散液塗布層を形成し、該金属ナノ粒子分散液塗布層を加熱焼成処理して、金属ナノ粒子の焼結体層からなるソース電極およびドレイン電極を形成する手法を利用している。
【0069】
その際、超微細インクジェット印刷装置を用いて、金属ナノ粒子分散液を所定のパターン形状に塗布して、金属ナノ粒子分散液塗布層を形成するため、国際公開第2005/025787号パンフレットに開示される金属ナノ粒子分散液を利用している。
【0070】
国際公開第2005/025787号パンフレットに開示される金属ナノ粒子分散液は、微細な液滴の形状で噴射し、積層塗布可能な金属ナノ粒子分散液である。前記金属ナノ粒子の平均粒子径は、1〜100nmの範囲に選択され、該金属ナノ粒子分散液は、固形成分として、前記金属ナノ粒子を分散溶媒中に均一に分散してなる分散液である。
【0071】
該金属ナノ粒子表面は、かかる金属ナノ粒子に含まれる金属元素と配位的な結合が可能な基として、窒素、酸素、またはイオウ原子を含み、これら原子の有する孤立電子対による配位的な結合が可能な基を有する化合物1種以上により被覆されており、前記金属ナノ粒子100質量部に対して、前記窒素、酸素、またはイオウ原子を含む基を有する化合物一種以上を総和として、10〜50質量部を含有している。
【0072】
一方、分散溶媒は、有機溶剤一種、あるいは二種以上の液体状有機物からなる混合溶媒であり、少なくとも、温度15℃以上において、均一な液体状態を示し、該分散溶媒を構成する、有機溶剤一種、あるいは二種以上の液体状有機物の少なくとも一つは、前記窒素、酸素、またはイオウ原子を含む基を有する化合物一種以上に対する親和性を有している。なお、該分散溶媒自体の液粘度(20℃)は、10 mPa・s以下の範囲に選択されている。
【0073】
金属ナノ粒子分散液中において、前記分散溶媒の容積比率は、55〜80体積%の範囲に選択し、該金属ナノ粒子分散液の液粘度(20℃)は、2 mPa・s〜30 mPa・sの範囲に選択されている。特に、前記金属ナノ粒子分散液中に含まれる分散溶媒を一部蒸散除去して、前記分散溶媒の容積比率が、20〜50 体積%の範囲となるまで濃縮が施された濃縮分散液は、その液粘度(20℃)は、20 Pa・s〜1000 Pa・sの範囲の粘稠な濃縮液となるという特徴を有している。
【0074】
例えば、前記の金属ナノ粒子分散液は、インクジェット印刷法を適用して、微細な液滴として噴射後、飛翔して、対象物上に堆積するまでの間に、この液滴中に含まれる分散溶媒が蒸散すると、濃縮された液の粘度は急速に増し、着弾する時点では、粘稠な濃縮液となる。
【0075】
すなわち、金属ナノ粒子分散液をゲート絶縁膜上に微小な液滴として噴射する際、少なくとも、液滴の平均径を3μm以下の範囲とすることにより、含有される分散溶媒の蒸散が促進され、着弾する時点では、金属ナノ粒子分散液の液滴中に残留する分散溶媒量は有意に低下し、それに伴い流動性が極度に低下する。その結果、噴射される金属ナノ粒子分散液の液滴は小さい上に、着弾した液滴の金属ナノ粒子分散液の流動性も低下しているので、一液滴当たり形成される、金属ナノ粒子分散液の塗布ドットの直径は、0.5μm〜5μmと非常に小さくなる。その後、なお、残留する分散溶媒も、個々の塗布ドットの皮膜は薄いため、瞬時に大部分が蒸発し、ゲート絶縁膜上には、緻密に積層された金属ナノ粒子が、その粒子間の狭い隙間のみに分散溶媒が浸潤した高粘度体として付着する。このドット塗布操作を繰り返すことにより、ゲート絶縁膜上に、塗布ドット径の金属ナノ粒子塗布膜が厚く積層形成することも可能である。
【0076】
上記の機構によって、低い液粘度の金属ナノ粒子分散液を、微細な液滴として、噴射塗布して、高い液粘度を示す分散液の塗布層を形成する上では、分散溶媒の容積含有比率の変化に伴い、その液粘度の変化がより急激に生じることが好ましく、平均粒子径をより小さい範囲に選択することが好ましい。すなわち、金属ナノ粒子の平均粒子径を、1〜20nmの範囲に選択することがより好ましい。また、当初の金属ナノ粒子分散液中に含まれる、金属ナノ粒子の含有量を、40質量%以上に選択して、相対的に分散溶媒の容積含有比率を、微細な液滴として、噴射する上で必要とする高い流動性を達成できるものの、可能な限り低い水準に設定することが好ましい。一方、当初の金属ナノ粒子分散液中に含まれる、分散溶媒の容積含有比率が高いと、噴射後、着弾するまでに溶媒の蒸発が目標とする値まで進行せず、着弾した時点の金属ナノ粒子分散液は、なお、相当の流動性を示す。その場合、例えば、金属ナノ粒子塗布層の側壁部を急峻な傾斜構造に形成することは困難となる。
【0077】
以下に、本発明で好適に利用される、金属ナノ粒子分散液の構成を更に詳しく説明する。
【0078】
該金属ナノ粒子分散液は、ソース電極とドレイン電極の微細な平面パターンを高い精度で描画するため、目標とする最小線幅、平面形状サイズに応じて、金属ナノ粒子の平均粒子径は1〜100nmの範囲に選択する。好ましくは、平均粒子径を1〜20nmの範囲に選択する。含有される金属ナノ粒子自体の平均粒子径を前記の範囲に選択することで、超微細インクジェット印刷装置により、極めて微細な線幅のパターンへの塗布を可能としている。
【0079】
分散液中における、金属ナノ粒子同士の凝集を防ぐために、金属ナノ粒子の表面に低分子による被覆層を設け、液体中に分散された状態となっているものを利用する。すなわち、該金属ナノ粒子分散液を積層塗布した塗布層を加熱処理して、含有されている金属ナノ粒子同士、その接触界面における融着を起こすように、金属ナノ粒子の表面には、酸化膜が実質的に存在しない状態となっているものを利用する。
【0080】
具体的には、金属ナノ粒子の表面は、かかる金属ナノ粒子に含まれる金属元素と配位的な結合が可能な基として、窒素、酸素、またはイオウ原子を含む基を有する化合物1種以上により被覆された状態とする。すなわち、かかる金属ナノ粒子に含まれる金属元素と配位的な結合が可能な基として、窒素、酸素、またはイオウ原子を含む基を有する化合物1種以上により、金属ナノ粒子の金属表面を均一に被覆した状態とする、例えば、末端アミノ基を1以上有するアミン化合物などにより被覆された状態を保持しつつ、一種以上の有機溶剤中に分散されてなる金属ナノ粒子の分散液を用いる。
【0081】
この被覆層の役割は、加熱処理を施すまでは、金属ナノ粒子が互いにその金属表面が直接接触しない状態とすることによって、分散液中に含有される金属ナノ粒子の凝集を抑制し、保管時の耐凝集性を高く維持することである。また、仮に塗布を行う際など、水分や大気中の酸素分子と接しても、金属ナノ粒子の表面は、既に被覆層で覆われており、水分子や酸素分子との直接的な接触に至らないので、水分や大気中の酸素分子による金属超微粒子表面の自然酸化膜の形成も抑制する機能をも有する。
【0082】
この金属ナノ粒子表面の均一な被覆に利用される化合物は、金属元素と配位的な結合を形成する際、窒素、酸素、またはイオウ原子上の孤立電子対を有する基を利用するものである。例えば、窒素原子を含む基として、アミノ基が挙げられる。また、イオウ原子を含む基としては、スルファニル基(−SH)、スルフィド型のスルファンジイル基(−S−)が挙げられる。また、酸素原子を含む基としては、ヒドロキシ基(−OH)、エーテル型のオキシ基(−O−)が挙げられる。
【0083】
利用可能なアミノ基を有する化合物の代表として、アルキルアミンを挙げることができる。なお、かかるアルキルアミンは、金属元素と配位的な結合を形成した状態で、通常の保管環境、具体的には、40℃に達しない範囲では、脱離しないものが好適であり、沸点が60℃以上の範囲、好ましくは100℃以上、より好ましくは、150℃以上の範囲となるものが好ましい。一方、導電性ナノ粒子ペーストの加熱処理を行う際には、金属ナノ粒子表面から離脱した後、最終的には、分散溶媒とともに、蒸散することが可能であることが必要である。少なくとも、その沸点が300℃を超えない範囲、通常、250℃以下の範囲となるアルキルアミンが好ましい。例えば、アルキルアミンとして、そのアルキル基は、C8〜C18の範囲に選択され、アルキル鎖の末端にアミノ基を有するものが用いられる。例えば、前記C8〜C18の範囲のアルキルアミンは、熱的な安定性もあり、また、室温付近での蒸気圧もさほど高くなく、室温等で保管する際、含有率を所望の範囲に維持・制御することが容易であるなど、ハンドリング性の面から好適に用いられる。
【0084】
一般に、かかる配位的な結合を形成する上では、第一級アミン型のものがより高い結合能を示し好ましいが、第二級アミン型、ならびに、第三級アミン型の化合物も利用可能である。また、1,2−ジアミン型、1,3−ジアミン型など、近接する二以上のアミノ基が結合に関与する化合物も利用可能である。また、分散溶媒に溶解可能な程度の比較的分子量が小さいポリアミン型化合物を利用することもできる。場合によっては、ポリオキシアルキレンアミン型のエーテル型のオキシ基(−O−)を鎖中に含む、鎖状のアミン化合物を用いることもできる。その他、末端のアミノ基以外に、親水性の末端基、例えば、水酸基を有するヒドロキシアミン、例えば、エタノールアミンなどを利用することもできる。
【0085】
また、利用可能なスルファニル基(−SH)を有する化合物の代表として、アルカンチオールを挙げることができる。なお、かかるアルカンチオールも、金属元素と配位的な結合を形成した状態で、通常の保管環境、具体的には、40℃に達しない範囲では、脱離しないものが好適であり、沸点が60℃以上の範囲、好ましくは100℃以上、より好ましくは、150℃以上の範囲となるものが好ましい。一方、金属ナノ粒子分散液の塗布膜の加熱処理を行う際には、金属ナノ粒子表面から離脱した後、最終的には、分散溶媒とともに、蒸散することが可能であることが必要である。少なくとも、沸点が300℃を超えない範囲、通常、250℃以下の範囲となるアルカンチオールが好ましい。例えば、アルカンチオールとして、そのアルキル基は、C4〜C20が用いられ、さらに好ましくはC8〜C18の範囲に選択され、アルキル鎖の末端にスルファニル基(−SH)を有するものが用いられる。例えば、前記C8〜C18の範囲のアルカンチオールは、熱的な安定性もあり、また、室温付近の蒸気圧もさほど高くなく、室温等で保管する際、含有率を所望の範囲に維持・制御することが容易であるなど、ハンドリング性の面から好適に用いられる。一般に、第一級チオール型のものがより高い結合能を示し好ましいが、第二級チオール型、ならびに、第三級チオール型の化合物も利用可能である。また、1,2−ジチオール型などの、二以上のスルファニル基(−SH)が結合に関与するものも、利用可能である。また、分散溶媒に溶解可能な程度の比較的分子量が小さなポリチオエーテル型化合物を利用することもできる。
【0086】
また、利用可能なヒドロキシ基を有する化合物の代表として、アルカンジオールを挙げることができる。一例として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール類などを挙げることができる。また、分散溶媒に溶解可能な程度の比較的分子量が小さいなポリエーテル型化合物を利用することもできる。なお、かかるアルカンジオールも、金属元素と配位的な結合を形成した状態で、通常の保管環境、具体的には、40℃に達しない範囲では、脱離しないものが好適であり、沸点が60℃以上の範囲、通常、100℃以上の範囲、より好ましくは、150℃以上の範囲となるものが好ましい。一方、金属ナノ粒子を含む積層塗布層の加熱処理を行う際には、金属ナノ粒子表面から離脱した後、最終的には、分散溶媒とともに、蒸散することが可能であることが必要である。少なくとも、沸点が300℃を超えない範囲、通常、250℃以下の範囲となるアルカンジオールが好ましい。例えば、1,2−ジオール型などの、二以上のヒドロキシ基が結合に関与するものなどが、より好適に利用可能である。
【0087】
金属ナノ粒子分散液中に含有される金属ナノ粒子は、前述の窒素、酸素、またはイオウ原子を含み、これら原子の有する孤立電子対による配位的な結合が可能な基を有する化合物1種以上を、表面被覆層として有する状態で、分散溶媒中に分散されている。かかる表面被覆層は、保管している際、金属ナノ粒子相互の表面が直接接触することを回避する機能を果せる範囲で、不必要に過剰な被覆分子が存在しないように、適正な被覆比率を選択する。すなわち、加熱して、低温焼成する際、共存している分散溶媒中に、これら被覆層分子を溶出、離脱することが可能である、適正な含有量であって、被覆保護機能を達成できる範囲に被覆比率を選択する。例えば、金属ナノ粒子100質量部に対して、前述の窒素、酸素、またはイオウ原子を含み、これら原子の有する孤立電子対による配位的な結合が可能な基を有する化合物1種以上が総和として、一般に、10〜50質量部を、より好ましくは、20〜50質量部を含有するように、被覆比率を選択することが好ましい。なお、かかる金属ナノ粒子100質量部に対して、その表面を被覆している、窒素、酸素、またはイオウ原子を含み、これら原子の有する孤立電子対による配位的な結合が可能な基を有する化合物1種以上の総和は、金属ナノ粒子の平均粒子径にも依存する。すなわち、金属ナノ粒子の平均粒子径がより小さくなると、金属ナノ粒子100質量部当たりの、ナノ粒子表面の表面積総和は、平均粒子径に反比例して増加するため、被覆分子の総和は、それに従って、より高い比率を必要とする。その点を考慮に入れ、金属ナノ粒子の平均粒子径を1〜20nmの範囲に選択する際には、金属ナノ粒子100質量部に対して、その表面を被覆している被覆分子の総和は、20〜50質量部の範囲に選択することが好ましい。
【0088】
金属ナノ粒子分散液に含有される分散溶媒として利用される有機溶剤は、室温においては、上述の表面被覆層を設けた金属ナノ粒子を分散させる役割を有するが、加熱した際には、金属ナノ粒子表面の被覆層分子を溶出、離脱することが可能である溶媒としての機能を発揮する。その際、加熱状態における被覆層分子の溶出段階において、蒸散が顕著に進行しない高沸点の液体状有機物を利用する。従って、100℃以上に加熱した際、好ましくは、該分散溶媒100質量部当たり、金属ナノ粒子表面を被覆する前記窒素、酸素、またはイオウ原子を含む基を有する化合物を50質量部以上溶解可能な、高溶解性を有する有機溶剤一種、あるいは二種以上の液体状有機物からなる混合溶媒を利用する。また、100℃以上に加熱した際、金属ナノ粒子表面を被覆する前記窒素、酸素、またはイオウ原子を含む基を有する化合物に対して、任意な組成の相溶物を形成できる有機溶剤一種、あるいは二種以上の液体状有機物からなる混合溶媒、特には、高い相溶性を示すものを利用すると一層好ましい。
【0089】
具体的には、被覆層分子が、窒素、酸素、またはイオウ原子を含み、これら原子の有する孤立電子対による配位的な結合が可能な基を利用して、金属ナノ粒子表面上に配位している。その際、残る炭化水素鎖、骨格部分に対する親和性を利用して、分散溶媒に含まれる有機溶剤は、被覆層分子で覆われた金属ナノ粒子の分散状態の維持、あるいは互いの相溶性を達成させる機能を発揮する。金属ナノ粒子表面への配位的な結合に起因する、被覆層分子の親和力は、物理的吸着よりも強固ではあるものの、加熱に伴って、急速に低下する。一方、温度上昇に付随して、有機溶剤の示す溶解特性が増す結果、両者の均衡する温度以上に加熱すると、温度上昇に従って、加速度的に被覆層分子の脱離、溶出が促進される。最終的には、加熱中に存在する分散溶媒の中に、金属ナノ粒子表面の被覆層分子の殆ど全てが溶解され、金属ナノ粒子表面には、実質的に被覆層分子が残留していない状態が達成される。
【0090】
勿論、この被覆層分子の金属ナノ粒子表面からの溶出過程と再付着過程とは、熱的平衡関係にあるため、加熱時における、該分散溶媒に対する被覆層分子の溶解度は十分に高いことがより望ましい。積層されている金属ナノ粒子相互の隙間に浸潤している分散溶媒へ、被覆層分子の溶出が一旦なされても、かかる狭い隙間を介して、塗布層内部から外縁部へと、被覆層分子が拡散・流出するには、更なる時間を要する。金属ナノ粒子相互の焼結が進行する間における、被覆層分子の再付着を効果的に抑制する上では、上記する高い溶解性を示す有機溶剤の利用が望ましい。
【0091】
すなわち、分散溶媒として利用される有機溶剤は、金属ナノ粒子表面の被覆層分子に対する親和性を示すものの、室温付近では、かかる有機溶剤中へ金属ナノ粒子表面の被覆層分子は、容易には溶出することはないが、加熱に付随して、溶解度が上昇し、100℃以上に加熱した際には、かかる有機溶剤中へ被覆層分子が溶出可能となるものが利用される。例えば、金属ナノ粒子の表面に被覆層を形成している化合物、例えば、アルキルアミンなどアミン化合物に対しては、そのアルキル基部分と親和性を示す、鎖状の炭化水素基を含有するが、かかるアミン化合物の溶解性が高すぎ、室温付近でも、金属ナノ粒子表面の被覆層が消失するような高い極性を示す溶剤ではなく、非極性溶剤あるいは低極性溶剤を選択することが好ましい。加えて、低温焼成処理を行う温度においても、熱分解などを起こすことがない程度には熱的な安定性を有し、また、沸点は、少なくとも、80℃以上で、好ましくは、150℃以上、300℃を超えない範囲であることが好ましい。また、微細なラインを形成する際、そのインクジェット法による塗布の工程において、金属ナノ粒子分散液を所望の液粘度範囲に維持することが必要である。そのハンドリング性の面を考慮すると、室温付近では容易に蒸散することのない、前記の高沸点を示す、無極性溶媒あるいは低極性溶媒、例えば、炭素数10〜18のアルカン類、例えば、テトラデカンなど、炭素数8〜12の第一級アルコール類、例えば、1−デカノールなどが好適に用いられる。但し、利用される分散溶媒自体の液粘度は、少なくとも、10 mPa・s(20℃)以下、好ましくは、0.2〜3 mPa・s(20℃)の範囲である溶媒を選択することが望ましい。
【0092】
一方、金属ナノ粒子分散液は、微細な液滴として噴射して塗布する方法であるインクジェット法を適用して、微細なパターンの描画に利用される。従って、金属ナノ粒子分散液は、採用する描画手法に応じて、適合する液粘度を有するものに、調製することが必要である。具体的には、微細配線パターンの描画にインクジェット法を利用するため、該金属ナノ粒子分散液は、その液粘度を、2〜30 mPa・s(20℃)の範囲に選択することが望ましい。その際、該分散液中における分散溶媒の容積比率は、55〜80体積%の範囲に選択されていることがより好ましい。一方、インクジェット法を利用して、微細な液滴を噴射した後、飛翔し、塗布面に着弾する際には、微細な液滴から分散溶媒が一部蒸散する結果、濃縮を受け、その液粘度は、20 Pa・s〜1000 Pa・s(20℃)まで上昇することが望ましい。その際、該濃縮された分散液中における分散溶媒の容積比率は、20〜50体積%の範囲になることがより好ましい。なお、該金属ナノ粒子分散液の液粘度は、用いる金属ナノ粒子の平均粒子径、分散濃度、用いている分散溶媒の種類に依存して決まり、前記の三種の因子を適宜選択して、目的とする液粘度に調節することができる。
【0093】
具体的には、金属ナノ粒子分散液の組成は、該分散液中における分散溶媒の容積比率は、55〜80体積%の範囲に選択されている際、その液粘度を、2〜30 mPa・s(20℃)の範囲となるが、仮に、配合される分散溶媒の量を減じて、分散溶媒の容積比率が20〜50体積%の範囲となる、対応する濃厚な分散液を調製すると、かかる濃厚な分散液の示す液粘度は、20 Pa・s〜1000 Pa・s(20℃)の範囲となるように選択することが好ましい。
【0094】
例えば、分散溶媒として、上述する高沸点を示す、無極性溶媒あるいは低極性溶媒に加えて、液粘度を調整するとともに、加熱した際、被覆層分子の溶出に利し、一方、室温付近では、被覆層分子の離脱を抑制する機能、さらには、離脱に対する補償機能を示すような、比較的に低極性の液状有機物を添加、配合することができる。かかる補足的に添加、配合される低極性の液状有機物は、主な溶媒成分に対して、均一な混合を達成でき、また、その沸点は、主な溶媒成分と同様に高沸点であることが望ましい。例えば、主な溶媒成分が、炭素数8〜12の第一級アルコール類、例えば、1−デカノールなどである際には、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールなどの分岐のジオール類、また、主な溶媒成分が、炭素数10〜18のアルカン類、例えば、テトラデカンなどである際には、ビス2−エチルヘキシルアミンなどの分岐を有するジアルキルアミン類などを、補足的に添加、配合される低極性の液状有機物として利用することができる。
【0095】
金属ナノ粒子分散液は、加熱した際、重合を起こし、硬化する熱硬化型のエポキシ樹脂成分など、バインダ樹脂成分や被覆剤分子との反応性を示す酸無水物等を含有していない構成とすることで、低温焼成処理を進める過程においても、内部で、重合物の生成は無く、分散溶媒自体の流動性を顕著に低下させる要因を排除している。
【0096】
加熱処理に際して、金属ナノ粒子の表面を被覆しているアルキルアミンなどの被覆層分子は上述の分散溶媒中に溶出、離脱され、金属ナノ粒子相互の凝集を抑制していた被覆層が消失する。その結果、徐々に金属ナノ粒子の融着、融合による凝集が進行し、最終的にランダムチェーンが形成される。その際、金属ナノ粒子相互の低温焼結が進行するとともに、金属ナノ粒子間の隙間空間が減少し、全体の体積収縮が起こり、ランダムチェーンが相互に緻密な接触を達成する。その金属ナノ粒子間の隙間空間が減少する際、この隙間空間を占めている分散溶媒は、流動性を保持するので、金属ナノ粒子間の隙間が隘路となったとしても、外部へと押し出され、全体の体積収縮が進行する。この低温焼成過程における、加熱処理温度は、有機半導体層に損傷を与えない温度範囲に選択する。具体的には、有機半導体層の作製時、有機半導体材料の蒸着源の加熱温度以下の温度を選択することが好ましい。従って、低温焼成過程における、加熱処理温度は、通常、250℃以下、好ましくは、100℃〜230℃の範囲、より好ましくは、130℃〜200℃の範囲に選択する。その際、被覆層分子は上述の分散溶媒中に溶出、離脱がなされ、得られる金属ナノ粒子の焼結体は、不均一な金属ナノ粒子の凝集を反映する表面の凹凸の無い、平滑な面形状を示す。加えて、より緻密で、極めて低抵抗、例えば、体積固有抵抗率は10×10-6Ω・cm以下の導電体層となる。一方、全体の体積収縮に伴い、外部への押し出される分散溶媒と、それに溶解する被覆層分子は、加熱を継続する間に、徐々に蒸散して、最終的に得られる金属ナノ粒子の焼結体内に、残余する有機物量は、極限られたものとなる。具体的には、バインダー樹脂成分として、前記の低温焼成工程を終えた後も、得られる金属ナノ粒子の焼結体中に残留し、導電体層の構成要素となる熱硬化性樹脂成分などを含有していないので、導電体層中における金属ナノ粒子の焼結体自体の体積占有率が高いものとなる。その結果、金属ナノ粒子の焼結体自体の低い体積抵抗率に加えて、かかる導電体層全体の熱伝導率も、その金属体の体積占有率の高さによって、格段に優れたものとなる。その双方の利点から、流れる電流密度が高い場合における、微細な配線パターンを形成する上で、該金属ナノ粒子分散液を利用する微細な焼結体層の形成はより適するものとなる。

本発明にかかる有機薄膜トランジスタの製造方法では、前記の低温焼成処理により形成される、金属ナノ粒子の焼結体からなる導電体層を、ソース電極およびドレイン電極の形成に利用している。従って、利用する金属ナノ粒子を構成する金属種は、有機半導体層に対する、ソース電極およびドレイン電極に適する金属種を選択する。例えば、前記金属ナノ粒子分散液中に分散されている、金属ナノ粒子は、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、タンタル、ビスマス、インジウム、錫、チタン、アルミニウムからなる金属の群より選択される、一種類の金属からなるナノ粒子、二種類以上の金属からなるナノ粒子の混合物、あるいは、該金属の群より選択される、二種類以上の金属の合金からなるナノ粒子であることが好ましい。
【0097】
例えば、ペンタセンで形成される有機半導体層の場合には、金属ナノ粒子は、金、銀、銅、白金、パラジウムからなる金属の群より選択される、一種類の金属からなるナノ粒子、あるいは、該金属の群より選択される、二種類以上の金属の合金からなるナノ粒子であることが好ましい。また、ヘキサデカフルオロ銅フタロシアニンで形成される有機半導体層の場合には、金属ナノ粒子は、金、銀、銅、白金、パラジウムからなる金属の群より選択される、一種類の金属からなるナノ粒子、あるいは、該金属の群より選択される、二種類以上の金属の合金からなるナノ粒子であることが好ましい。
【0098】
作製されるソース電極とドレイン電極の膜厚:TS,TDは、50nm〜1000nmの範囲に、好ましくは、100nm〜300nmの範囲に選択する。それに対応して、金属ナノ粒子の焼結体の作製に利用される、金属ナノ粒子の平均粒子径:D(直径)は、TS,TDを基準として、その1/20以下の範囲、好ましくは、1/30以下の範囲に選択することが望ましい。例えば、金属ナノ粒子の平均粒子径:D(直径)は、1〜20nmの範囲に選択することが望ましい。
【0099】
金属ナノ粒子を構成する金属種として、高い導電性に加えて、延性、展性にも優れる金、銀、銅、白金、パラジウムのいずれかを選択することがより好ましく、なかでも、金ナノ粒子または銀ナノ粒子を利用することがさらに好ましい。例えば、金ナノ粒子または銀ナノ粒子を利用する際にも、かかる金属ナノ粒子の平均粒子径:D(直径)を、1〜20nmの範囲に選択し、当初の金属ナノ粒子分散液中に含まれる、該金属ナノ粒子の含有量を、40質量%以上に選択する形態とすることがより望ましい。
【0100】
低温焼成処理により形成される、金属ナノ粒子の焼結体からなる導電体層では、その表面には、金属ナノ粒子の平均粒子径:D(直径)に起因する微小な凹凸構造が残る。その微小な凹凸構造は、金属ナノ粒子の平均粒子径:D(直径)の1/8〜1/4程度である。金属ナノ粒子の平均粒子径:D(直径)を、1〜20nmの範囲に選択すると、微小な凹凸構造は、大きくとも、5nm以下となり、その上面の被覆するように有機半導体層を形成する際、実質的に問題とならない範囲である。すなわち、有機半導体層の膜厚:Tchannnelに対して、前記微小な凹凸構造の大きさは、1/10を超えない範囲であり、有機半導体層を積層した際、この微小な凹凸構造を埋め込む形状となる。
【0101】
また、金属ナノ粒子分散液をゲート絶縁膜上に微小な液滴として噴射する際、少なくとも、液滴の平均径を3μm以下の範囲とすることにより、含有される分散溶媒の蒸散が促進され、着弾する時点では、金属ナノ粒子分散液の液滴中に残留する分散溶媒量は有意に低下し、それに伴い流動性が極度に低下する。その結果、噴射される金属ナノ粒子分散液の液滴は小さい上に、着弾した液滴の金属ナノ粒子分散液の流動性も低下しているので、一液滴当たり形成される、金属ナノ粒子分散液の塗布ドットの直径は、0.5μm〜5μmと非常に小さくなる。
【0102】
従って、一液滴当たり形成される、金属ナノ粒子分散液の塗布ドットの直径は、0.5〜5μmであるので、該金属ナノ粒子の塗布層においては、その最小線幅は、塗布ドットの直径の2倍程度とすることが可能である。
【0103】
従って、ソース電極およびドレイン電極の矩形パターンを形成する際、そのパターン描画精度は、最小線幅は、塗布ドットの直径の2倍程度、すなわち、1μm〜10μmの範囲となるように、塗布ドットの直径を選択することが可能である。換言するならば、そのパターン描画精度は、最小のスペース幅が、1μm〜10μmの範囲となるように選択することが可能である。また、描画される線幅のバラツキ(直線からの揺らぎ幅)も、1μm〜10μmの範囲とすることが可能である。
【0104】
一液滴当たり形成される、金属ナノ粒子の塗布ドットの直径は、インクジェット法によって吐出される液滴のサイズによって決まる。上記の金属ナノ粒子の分散液を用いて、一液滴当たり形成される、金属ナノ粒子分散液の塗布ドットの直径を、0.5μm〜5μmの範囲とする際、吐出される液滴のサイズ(直径)は、0.3μm〜3μmの範囲とする。この液滴の吐出条件を達成するため、本発明では、超微細インクジェット印刷装置を用いて、吐出される液滴のサイズ(直径)を、0.3μm〜3μmの範囲に設定している。
【0105】
実際には、吐出される液滴のサイズ(直径)を、0.3μm〜3μmの範囲とする際、液滴が飛翔する間に、その表面から含有される分散溶媒の蒸散が促進され、着弾する時点では、金属ナノ粒子分散液の液滴中に残留する分散溶媒量は有意に低下し、それに伴い流動性が極度に低下する。着弾する直前には、液滴のサイズ(直径)は、0.3μm〜3μmの範囲よりも有意に小さくなっており、また、流動性も極度に低下する結果、塗布ドットの直径を、0.5μm〜5μmの範囲となっている。分散溶媒の蒸散に伴い、液滴の体積が80%まで減少すると、塗布ドットの直径が、0.5μm〜5μmの範囲となる際、その塗布ドットの平均化した高さは、塗布ドットの直径の1/8程度となる。
【0106】
上記の金属ナノ粒子分散液を利用して、超微細インクジェット印刷装置を用いて、描画する場合、各金属ナノ粒子分散液の塗布ドットでは、高い液粘度の分散液となっており、表面での更なる塗れ拡がりは起こらない。従って、描画された金属ナノ粒子分散液の塗布層の側壁面は、急峻な傾斜角を示す状態となっている。その傾斜角:θdは、80°≧θd≧60°の範囲とすることが可能である。その後、低温焼成処理を施すと、金属ナノ粒子相互の融着が進行し、塗布層の膜厚;Tdから、金属ナノ粒子の焼結体層の膜厚:Tbakedへと減少する。その減少比率:Tbaked/Tdは、3/4〜3/5程度である。従って、金属ナノ粒子の焼結体層における側壁面も、急峻な傾斜角を示す状態となっている。その傾斜角:θbakedは、70°≧θbaked≧45°の範囲とすることが可能である。
【0107】
本発明で利用される金属ナノ粒子分散液の調製方法を、以下に説明する。
【0108】
前記の金属ナノ粒子では、低温焼成過程における、加熱処理温度は、250℃以下、好ましくは、100℃〜230℃の範囲に選択する際も、清浄な金属表面を保持する限り、良好な焼結体を形成することができる。さらには、室温付近でも、これら金属ナノ粒子は、その金属表面を直接接触させると、互いに、融着して、凝集してしまい易い。そのため、例えば、市販されている金属ナノ粒子分散液を原料として、分散溶媒を所望の有機溶剤への変換し、また、適正な分散溶媒の含有比率、液粘度の調整を図って、目的組成の金属ナノ粒子分散液を調製する際、例えば、下記する手順を利用することが望ましい。
【0109】
原料に利用する、金属ナノ粒子分散液としては、金属ナノ粒子の表面をアルキルアミンなどの表面被覆分子で被覆保護し、かかるアルキルアミンなどの表面被覆分子の溶解性は乏しく、留去が可能な無極性溶媒、あるいは、低極性溶媒中、好ましくは、沸点が少なくとも150℃以下の無極性溶媒、あるいは、低極性溶媒中に、表面被覆分子で被覆された金属ナノ粒子が均一に分散されているものを利用する。先ず、アルキルアミンなどの表面被覆分子の離脱を抑制しつつ、該金属ナノ粒子分散液に含有される分散溶媒の除去を行う。
【0110】
該分散溶媒の除去は、減圧留去の手法が適当であるが、この減圧留去の間に、金属ナノ粒子表面の表面被覆分子の脱離を抑制するため、必要に応じて、該被覆層分子に対して、親和性が優り、かつ、減圧留去される分散溶媒よりも、沸点が有意に高い保護用の溶媒成分を添加、混合した上で、減圧留去を行うことができる。例えば、減圧留去される分散溶媒がトルエンであり、金属ナノ粒子の被覆層分子として、アルキルアミンである、ドデシルアミンを利用している場合、前記保護用の溶媒成分として、ジオール系溶媒、例えば、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールなどの各種グリコール類を少量添加することが可能である。加えて、ドデシルアミンなどの、金属ナノ粒子の被覆層分子として利用する、アルキルアミンに代えて、金属ナノ粒子の被覆層分子に利用可能であり、より沸点の高い別種のアミン類を添加することもできる。この別種のアミン類は、分散溶媒の減圧留去に際し、当初に存在する金属ナノ粒子の被覆層分子の一部を置換する目的で利用することもできる。この別種のアミン類などの、置換される被覆層分子成分には、各種グリコール類などの保護用の溶媒成分との親和性を有し、同時に、アミノ基などの配位結合可能な基を具える、沸点の高い液状有機化合物が利用可能である。例えば、2−エチルヘキシルアミンや、ジェファーミンEDR148(2,2−(エチレンジオキシ)ビスエチルアミン)などが利用可能である。
【0111】
前記の金属ナノ粒子分散液を調製する過程において、分散溶媒を上述する高沸点を示す、無極性溶媒あるいは低極性溶媒へと変換、再分散を行う際、表面に被覆層を有する金属ナノ粒子以外に、被覆層が欠落して、凝集を生じた金属ナノ粒子塊が混入する場合もあり、均一な分散化を図った再分散液を、サブ・ミクロン穴径のフィルター、例えば、0.2μmメンブランフィルターで濾過して、凝集を生じた金属ナノ粒子塊を除く処理を施すことが望ましい。この濾過処理を施すことで、目的とする高沸点の分散溶媒中に、表面に被覆層を有する金属ナノ粒子が均一に分散した、高い流動性の分散液により高い確実性で調製される。
【0112】
本発明にかかる有機薄膜トランジスタの製造方法では、インクジェット印刷法を適用して、上記の金属ナノ粒子分散液の塗布膜を形成する際、吐出される液滴のサイズ(直径)をより微細化するため、超微細インクジェット印刷装置を用いている。
【0113】
本発明で利用する金属ナノ粒子分散液は、金属ナノ粒子の表面に被覆分子層を設けているが、分散液の液温を上昇させると、該被覆分子層を構成する有機化合物分子は、分散溶媒中に溶出する。この現象を回避するため、インクジェット印刷法における微小液滴の吐出を行う際、分散液の液温を上昇させる、サーマル方式を採用することはできない。従って、分散液の液温上昇を伴わない、微小液滴の吐出手法である、静電吸引方式を採用する。特に、静電吸引方式の特徴である、ノズル先端の開口径と印加電圧を制御することで、吐出される微小液滴の液量:VOを制御できることを利用している。吐出される微小液滴は、その表面張力のため、実質的に球形となり、そのサイズ(直径):DOは、VO=(4/3)π・(DO/2)3の関係を満足する。その際、微小液滴を吐出させる、ノズル先端の開口径(直径):Dopenは、DO>Dopen≧1/3・DOの範囲とする。例えば、吐出される微小液滴のサイズ(直径):DOを、0.3μmに選択する際には、ノズル先端の開口径(直径):Dopenは、0.3μm>Dopen≧0.1μmの範囲とする。
【0114】
本発明で利用する超微細インクジェット印刷装置では、その微小液滴を吐出させる、ノズル先端の開口径(直径):Dopenを、例えば、0.1μm〜1μmの範囲に選択している。
【0115】
特開2004−164487号公報に開示される超微細流体ジェット装置の動作原理を採用した、静電吸引方式の超微細インクジェット印刷装置は、前記の目的に好適に利用できる。特許第3975272号公報に記載される超微細流体ジェット装置では、絶縁体で形成されるノズルは、ノズル先端の開口径が10nm〜8,000nmの範囲、例えば、100nm〜1000nmの範囲の極めて小さな開口径に選択可能なノズルである。一方、このノズル先端と塗布対象面との距離は、例えば、100μm以下に選択されている。
【0116】
描画される微細なパターンの最小パターン・サイズを考慮した上で、そのノズル先端の開口径(直径):Dopenを、10nm〜8,000nmの範囲で適宜選択される。
【0117】
一方、該超微細インクジェット印刷用ノズルを利用して、微小液滴として吐出させる、金属ナノ粒子分散液中に含有される、金属ナノ粒子の平均粒子径:D(直径)は、少なくとも、ノズル先端の開口径(直径):Dopenを基準として、1/2・Dopen≧Dの範囲に選択する。通常、金属ナノ粒子の平均粒子径:D(直径)は、ノズル先端の開口径(直径):Dopenを基準として、1/5・Dopen≧D≧1/200・Dopenの範囲、好ましくは、1/10・Dopen≧D≧1/100・Dopenの範囲に選択する。
【0118】
また、かかる微細な開口径を有する絶縁体製ノズル・チップは、ノズル内部の穴径は、その基部の管内径より、ノズル先端の開口径まで、徐々に細くなるテーパー状の内壁面構造を有するものとする。また、ノズルの壁面層の厚さ(肉厚)は、一般に、径方向では均一にするため、その断面形状は、内壁面と外面とは同心円の形態とされる。加えて、ノズル先端の開口から基部の穴まで、同一の中心軸を有する回転対称性を有する内壁面構造と外面構造を持つ、尖頭状の外形形状を示すノズル・チップに設計する。
【0119】
該ノズル・チップの内側に、金属ナノ粒子分散液と接し、該分散液に電界を印加する電極を配置する。また、ノズルの先端部の外面にも電極を設け、該ノズル内部の電極との間に印加される電圧によって、金属ナノ粒子分散液中に電界が印加される状態とされる。
【0120】
そのノズルの壁面層の厚さ(肉厚)は、通常、ノズル基部では、連結される液導入管部の末端における導入管の管肉厚を超えない範囲に選択することが望ましい。そして、ノズルの先端に進むにつれて、壁面層の厚さ(肉厚)を徐々に薄くする形態とする。その最も壁面層の厚さ(肉厚)が薄くなる先端部においても、ノズルに要求される機械的強度を満足するように、ノズルを構成する材料に応じて、その厚さ(肉厚)を適宜選択する。
【0121】
該ノズルから吐出させ、塗布する対象の金属ナノ粒子分散液として、平均粒子径1〜100nm、望ましくは平均粒子径1〜20nmの金属ナノ粒子、例えば、該金属元素として、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、アルミニウムなどの金属単体、あるいは、それらの合金からなる金属ナノ粒子を含む分散液が利用される。かかる金属ナノ粒子を含有する分散液を、その液粘度を2mPa・s〜30mPa・s(20℃)の範囲に調製された分散液として、吐出させる。ノズル内壁面は、吐出を行う際、該固体分散媒質と接触するので、一定以上の磨耗耐性を有する絶縁材料で作製することが望ましい。すなわち、ノズルの絶縁材料は、かかる硬度、磨耗特性、弾性変形に対する機械的強度、また、絶縁破壊電界強度などの要件を満足するものが利用される。
【0122】
ノズル先端の開口径(直径):Dopenが、200nmの場合、吐出される微小液滴のサイズ(直径):DOは、約1μm程度と見積もられ、その微小液滴の液量:VOは、約0.7fLに相当している。
【0123】
従って、上記の微小口径ノズルを利用する超微細インクジェット印刷装置を用いる際、吐出される微小液滴の液量は、0.3フェムトリットル〜1フェムトリットルの範囲に選択すること好ましい。
【0124】
本発明の第二の形態にかかる有機薄膜トランジスタの製造方法では、作製される有機薄膜トランジスタは、ゲート絶縁膜上に、有機半導体膜を形成した後、この有機半導体膜の表面に、ソース電極およびドレイン電極を形成する。
【0125】
その際、ゲート絶縁膜上に、有機半導体膜を形成する工程では、第一の形態にかかる有機薄膜トランジスタの製造方法で利用される手法を用いることができる。さらには、ゲート絶縁膜上に有機半導体の薄膜層を形成する際、予め、ゲート絶縁膜表面に、有機半導体を構成する有機化合物の「自己組織化単分子膜」を形成する手法を利用することが好ましい。
【0126】
加えて、有機半導体膜の表面に、ソース電極およびドレイン電極を形成する工程でも、第一の形態にかかる有機薄膜トランジスタの製造方法で利用される手法を用いることができる。
【0127】
その際、膜厚:Tchannnelの有機半導体膜の表面に、金属ナノ粒子分散液の塗布膜が形成される。この金属ナノ粒子分散液の塗布膜中には、分散溶媒が含まれているが、塗布された時点で、分散溶媒の一部は蒸散除去された状態となっている。そのため、残留している分散溶媒中に溶出する有機半導体の量は僅かである。さらに、低温焼成処理を施す際、分散溶媒が蒸散されると、有機半導体膜と形成される金属ナノ粒子の焼結体層との界面に、溶出していた有機半導体は再析出する。
【0128】
結果的に、一旦形成される有機半導体膜の表面に、金属ナノ粒子の焼結体層が接する界面の近傍では、部分的に有機半導体膜の溶出と、再析出に起因して、有機半導体分子の配向に乱れが導入される。しかしながら、ソース電極およびドレイン電極の直下の領域においても、有機半導体膜とゲート絶縁膜との界面近傍の有機半導体分子の配向は保持されている。
【0129】
また、金属ナノ粒子分散液の塗布膜から、その周囲への分散溶媒の濡れ拡がりも抑制されている。従って、ソース電極およびドレイン電極によって挟まれている、チャネル領域に形成されている有機半導体膜への影響は実質的に皆無となっている。
【実施例】
【0130】
以下に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、これら実施例は、本発明における最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明は、かかる具体例により限定されるものではない。
【0131】
(実施例1)
実施例1は、本発明の第一の形態にかかる有機薄膜トランジスタの製造方法を適用して、ペンタセンからなる有機半導体層を動作層とする有機薄膜トランジスタを作製する事例である。
【0132】
実施例1で作製される有機薄膜トランジスタは、下記の構成を有している。
【0133】
基板1として、厚さ500μmのポリエチレンテレフタレートフィルム基板を用いている。あるいは、厚さ500μmのガラス基板を用いている。
【0134】
ゲート電極2は、TFTのスイッチング動作に利用されるチャネル領域の部分の形状は、矩形形状としている。その矩形形状において、ゲート長:LGは、1μmに、ゲート幅:WGは、300μmに選択している。ゲート電極2の金属種は、アルミニウムであり、膜厚:Tgate=20nmの蒸着膜を、上記の形状パターンにパターニングする。
【0135】
ゲート電極2を被覆し、基板1の表面全体を覆うように、自己組織化単分子膜(SAM膜)/AlOxからなるゲート絶縁膜3を形成する。その際、ゲート電極2の直上のAlOx層の膜厚:TAlOxは、TAlOx=3.6nmとしている。また、基板1の表面上の領域では、AlOx膜上に、自己組織化単分子膜(SAM膜)を形成しており、該SAM膜の膜厚は、2.1nmとしている。
【0136】
ゲート絶縁膜3上、ゲート電極2を挟む位置に、ソース電極4、ドレイン電極5形成用の金属ナノ粒子分散液の塗布膜を形成する。該金属ナノ粒子分散液は、平均粒子径D:3nmの銀ナノ粒子の表面に、ドデシルアミン(融点28.3℃、沸点248℃、)による被覆剤分子層を形成したものを、分散溶媒N14(テトラデカン、粘度 2.0〜2.3 mPa・s(20℃)、融点5.86℃、沸点253.57℃、日鉱石油化学製)中に分散したものである。該金属ナノ粒子分散液中には、銀ナノ粒子100質量部当たり、被覆剤分子のドデシルアミンが20質量部、分散溶媒のN14が52質量部含まれている。該銀ナノ粒子分散液の液粘度は、10mPa・s(20℃)である。
【0137】
前記の銀ナノ粒子分散液を用いて、超微細インクジェット装置の吐出孔の口径:Dopenを0.2μmに選択し、噴射される液滴量を0.7fLに設定し、塗布膜を形成する。噴射時の液滴量VO:0.7fLの液滴は、球形形状と仮定すると、液滴径:DO(直径)は、1μmに相当する。この塗布条件では、噴射時の液滴量0.7fLの一液滴で描画されるドットの径は、平均1〜2μmである。
【0138】
ソース電極4形成用の金属ナノ粒子分散液塗布膜の形状は、短辺:LS=2μm、長辺:WS=300μmの矩形とし、塗布膜の厚さ:TS-drawは、0.3μmに選択している。該塗布膜の矩形パターンの長辺と、ゲート電極3のソース電極側の側端との間隔:ΔLS-Gは、ΔLS-G=1μmに選択している。
【0139】
ドレイン電極5形成用の金属ナノ粒子分散液塗布膜の形状は、短辺:LD=2μm、長辺:WD=300μmの矩形とし、塗布膜の厚さ:TD-drawは、0.3μmに選択している。該塗布膜の矩形パターンの長辺と、ゲート電極3のドレイン電極側の側端との間隔:ΔLD-Gは、ΔLD-G=1μmに選択している。
【0140】
該金属ナノ粒子分散液塗布膜に、温度130℃、時間60分間、窒素ガス気流中で低温焼成処理を施し、銀ナノ粒子の焼結体層とする。
【0141】
別途、ゲート絶縁膜に利用するSAM膜上に、同じ条件で作製される、幅2μm、長さ100μmの矩形形状の銀ナノ粒子の焼結体層において、該焼結体層の平均膜厚:Tbakedを測定すると、0.3μmである。また、該銀ナノ粒子焼結体層の抵抗率は、25μΩ・cmであった。
【0142】
低温焼成処理により得られる銀ナノ粒子の焼結体層を、ソース電極4、ドレイン電極5として利用している。従って、ソース電極4、ドレイン電極5の膜厚:TS,TDは、平均0.3μmと見積もられる。また、銀ナノ粒子焼結体層の矩形パターンの各辺における線幅の乱れ(微小凹凸):δLS,δLDは、100nmと見積もられる。
【0143】
作製されたソース電極4とドレイン電極5の間隔:LS-Dは、2μmであった。チャネル領域の長さの設計値:Lchannel=3μmに対して、その差(Lchannel−LS-D)は、僅かに1μmであった。
【0144】
自己組織化単分子膜(SAM膜)/AlOxからなるゲート絶縁膜3の形成は、下記の工程で行う。まず、Alのゲート電極2の表面に、プラズマ酸化処理を施し、Alの表面に、AlOx層を形成する。その後、水洗処理を施すと、このAlOx層の表面には、Al−OH型のヒドロキシ基が高密度で存在する状態となる。その後、単分子分散溶液中に浸漬し、AlOx層の表面に自己組成的に単分子膜を形成する。該単分子分散溶液は、n−オクタデシルフォスフォン酸(C1837PO3H)を、分散溶媒2プロパノール中に、分散濃度1質量%以上で分散したものである。液温30℃の該単分子分散溶液中に、12時間浸漬した後、取り出し、残余する分散液を、窒素ブロー処理により除去する。n−オクタデシルフォスフォン酸(C1837PO3H)は、AlOx層表面のAl−OH型のヒドロキシ基と反応し、エステル結合を形成する結果、AlOx層表面に自己組織化単分子膜が形成される。
【0145】
AlOx層の表面に「自己組織化単分子膜」が形成されたゲート絶縁膜3の表面に、ペンタセンを蒸着法により堆積させる。堆積されるペンタセン蒸着膜の膜厚:Tchannnelは、30nmに選択している。ペンタセンの蒸着条件は、ペンタセンの蒸着源温度230℃、基板温度60℃を選択している。なお、堆積されるペンタセン蒸着膜の膜厚:Tchannnelは、別途、ゲート絶縁膜に利用するSAM膜/AlOx積層膜上に、同じ蒸着条件で、ペンタセン蒸着膜を作製し、蒸着時間と蒸着膜厚の相関を測定した結果に基づき、推定した値である。その際、ペンタセン蒸着膜の膜厚の測定は、ペンタセン蒸着膜の比屈折率を、固体の比屈折率と等しいと仮定して、エリプソメトリー法により行うことができる。
【0146】
最終的に、有機半導体層6を所定のパターン形状、長さ:LOS=300μm、幅:WOS=300μmの矩形形状にパターニングする。
【0147】
作製された有機薄膜トランジスタの閾値電圧:Vthを、ドレイン・ソース電圧VD-S=−2.5Vの条件で測定した。該有機薄膜トランジスタの閾値電圧は、Vth=−0.5Vと測定された。また、「ON状態」:ゲート電圧:VG-ON=−3Vを印加時のドレイン電流Id-ONと、「OFF状態」:ゲート電圧:VG-OFF=0Vを印加時のドレイン電流Id-ONの比、ON/OFF電流比:Id-ON/Id-OFFは、約1×106であった。
【0148】
(実施例2)
実施例2は、本発明の第一の形態にかかる有機薄膜トランジスタの製造方法を適用して、ヘキサデカフルオロ銅フタロシアニンからなる有機半導体層を動作層とする有機薄膜トランジスタを作製する事例である。
【0149】
実施例2で作製される有機薄膜トランジスタは、下記の構成を有している。
【0150】
基板1として、厚さ500μmのポリエチレンテレフタレート基板を用いている。あるいは、厚さ500μmのシリコン酸化膜/Si基板を用いている。
【0151】
ゲート電極2は、TFTのスイッチング動作に利用されるチャネル領域の部分の形状は、矩形形状としている。その矩形形状において、ゲート長:LGは、1μmに、ゲート幅:WGは、300μmに選択している。ゲート電極2の金属種は、アルミニウムであり、膜厚:Tgate=20nmの蒸着膜を、上記の形状パターンにパターニングする。
【0152】
ゲート電極2を被覆し、基板1の表面全体を覆うように、自己組織化単分子膜(SAM膜)/AlOxからなるゲート絶縁膜3を形成する。その際、ゲート電極2の直上のAlOx層の膜厚:TAlOxは、TAlOx=3.6nmとしている。また、基板1の表面上の領域では、AlOx膜上に、自己組織化単分子膜(SAM膜)を形成しており、該SAM膜の膜厚は、2.1nmとしている。
【0153】
ゲート絶縁膜3上、ゲート電極2を挟む位置に、ソース電極4、ドレイン電極5形成用の金属ナノ粒子分散液の塗布膜を形成する。該金属ナノ粒子分散液は、平均粒子径D:3nmの銀ナノ粒子の表面に、ドデシルアミン(融点28.3℃、沸点248℃、)による被覆剤分子層を形成したものを、分散溶媒N14(テトラデカン、粘度 2.0〜2.3 mPa・s(20℃)、融点5.86℃、沸点253.57℃、日鉱石油化学製)中に分散したものである。該金属ナノ粒子分散液中には、銀ナノ粒子100質量部当たり、被覆剤分子のドデシルアミンが20質量部、分散溶媒のN14が52質量部含まれている。該銀ナノ粒子分散液の液粘度は、10mPa・s(20℃)である。
【0154】
前記の銀ナノ粒子分散液を用いて、超微細インクジェット装置の吐出孔の口径:Dopenを0.2μmに選択し、噴射される液滴量を0.7fLに設定し、塗布膜を形成する。噴射時の液滴量VO:0.7fLの液滴は、球形形状と仮定すると、液滴径:DO(直径)は、1μmに相当する。この塗布条件では、噴射時の液滴量0.7fLの一液滴で描画されるドットの径は、平均1〜2μmである。
【0155】
ソース電極4形成用の金属ナノ粒子分散液塗布膜の形状は、短辺:LS=2μm、長辺:WS=300μmの矩形とし、塗布膜の厚さ:TS-drawは、0.3μmに選択している。該塗布膜の矩形パターンの長辺と、ゲート電極3のソース電極側の側端との間隔:ΔLS-Gは、ΔLS-G=1μmに選択している。
【0156】
ドレイン電極5形成用の金属ナノ粒子分散液塗布膜の形状は、短辺:LD=2μm、長辺:WD=300μmの矩形とし、塗布膜の厚さ:TD-drawは、0.3μmに選択している。該塗布膜の矩形パターンの長辺と、ゲート電極3のドレイン電極側の側端との間隔:ΔLD-Gは、ΔLD-G=1μmに選択している。
【0157】
該金属ナノ粒子分散液塗布膜に、温度130℃、時間60分間、窒素ガス気流中で低温焼成処理を施し、銀ナノ粒子の焼結体層とする。
【0158】
別途、ゲート絶縁膜に利用するSAM膜/AlOx積層膜上に、同じ条件で作製される、幅2μm、長さ300μmの矩形形状の銀ナノ粒子の焼結体層において、該焼結体層の平均膜厚:Tbakedを測定すると、0.3μmである。また、該銀ナノ粒子焼結体層の抵抗率は、25μΩ・cmであった。
【0159】
低温焼成処理により得られる銀ナノ粒子の焼結体層を、ソース電極4、ドレイン電極5として利用している。従って、ソース電極4、ドレイン電極5の膜厚:TS,TDは、平均0.3μmと見積もられる。また、銀ナノ粒子焼結体層の矩形パターンの各辺における線幅の乱れ(微小凹凸):δLS,δLDは、100nmと見積もられる。
【0160】
作製されたソース電極4とドレイン電極5の間隔:LS-Dは、2μmであった。チャネル領域の長さの設計値:Lchannel=3μmに対して、その差(Lchannel−LS-D)は、僅かに1μmであった。
【0161】
自己組織化単分子膜(SAM膜)/AlOxからなるゲート絶縁膜3の形成は、下記の工程で行う。まず、Alのゲート電極2の表面に、プラズマ酸化処理を施し、Alの表面に、AlOx層を形成する。その後、水洗処理を施すと、このAlOx層の表面には、Al−OH型のヒドロキシ基が高密度で存在する状態となる。その後、単分子分散溶液中に浸漬し、AlOx層の表面に自己組成的に単分子膜を形成する。該単分子分散溶液は、n−オクタデシルフォスフォン酸(C1837PO3H)を、分散溶媒2プロパノール中に、分散濃度1質量%以上で分散したものである。液温30℃の該単分子分散溶液中に、12時間浸漬した後、取り出し、残余する分散液を、窒素ブロー処理により除去する。n−オクタデシルフォスフォン酸(C1837PO3H)は、AlOx層表面のAl−OH型のヒドロキシ基と反応し、エステル結合を形成する結果、AlOx層表面に自己組織化単分子膜が形成される。
【0162】
AlOx層の表面に「自己組織化単分子膜」が形成されたゲート絶縁膜3の表面に、ヘキサデカフルオロ銅フタロシアニンを蒸着法により堆積させる。堆積されるヘキサデカフルオロ銅フタロシアニン蒸着膜の膜厚:Tchannnelは、30nmに選択している。ヘキサデカフルオロ銅フタロシアニンの蒸着条件は、ヘキサデカフルオロ銅フタロシアニンの蒸着源温度230℃、基板温度90℃を選択している。なお、堆積される蒸着膜の膜厚:Tchannnelは、別途、ゲート絶縁膜に利用するSAM膜/AlOx積層膜上に、同じ蒸着条件で、蒸着膜を作製し、蒸着時間と蒸着膜厚の相関を測定した結果に基づき、推定した値である。その際、ヘキサデカフルオロ銅フタロシアニン蒸着膜の膜厚の測定は、ヘキサデカフルオロ銅フタロシアニン蒸着膜の比屈折率を、固体の比屈折率と等しいと仮定して、エリプソメトリー法により行うことができる。
【0163】
最終的に、有機半導体層6を所定のパターン形状、長さ:LOS=300μm、幅:WOS=300μmの矩形形状にパターニングする。
【0164】
作製された有機薄膜トランジスタの閾値電圧:Vthを、ドレイン・ソース電圧VS-D=3Vの条件で測定した。該有機薄膜トランジスタの閾値電圧は、Vth=1.5Vと測定された。また、「ON状態」:ゲート電圧:VG-ON=3Vを印加時のドレイン電流Id-ONと、「OFF状態」:ゲート電圧:VG-OFF=0Vを印加時のドレイン電流Id-ONの比、ON/OFF電流比:Id-ON/Id-OFFは、約1×104であった。
【0165】
(実施例3)
実施例3は、本発明の第二の形態にかかる有機薄膜トランジスタの製造方法を適用して、ペンタセンからなる有機半導体層を動作層とする有機薄膜トランジスタを作製する事例である。
【0166】
実施例3で作製される有機薄膜トランジスタは、下記の構成を有している。
【0167】
基板1として、厚さ500μmのポリエチレンナフタレート(PEN)基板を用いている。
【0168】
ゲート電極2は、TFTのスイッチング動作に利用されるチャネル領域の部分の形状は、矩形形状としている。その矩形形状において、ゲート長:LGは、1μmに、ゲート幅:WGは、300μmに選択している。ゲート電極2の金属種は、Alであり、膜厚:Tgate=20nmの蒸着膜を、上記の形状パターンにパターニングする。
【0169】
ゲート電極2を被覆し、基板1の表面全体を覆うように、自己組織化単分子膜(SAM膜)/AlOxからなるゲート絶縁膜3を形成する。その際、ゲート電極2の直上のAlOx層の膜厚:TAlOxは、TAlOx=3.6nmとしている。また、基板1の表面上の領域では、AlOx膜上に、自己組織化単分子膜(SAM膜)を形成しており、該SAM膜の膜厚は、2.1nmとしている。
【0170】
自己組織化単分子膜(SAM膜)/AlOxからなるゲート絶縁膜3の形成は、下記の工程で行う。まず、Alのゲート電極2の表面に、プラズマ酸化処理を施し、Alの表面に、AlOx層を形成する。その後、水洗処理を施すと、このAlOx層の表面には、Al−OH型のヒドロキシ基が高密度で存在する状態となる。その後、単分子分散溶液中に浸漬し、AlOx層の表面に自己組成的に単分子膜を形成する。該単分子分散溶液は、n−オクタデシルフォスフォン酸を、分散溶媒2プロパノール中に、分散濃度1質量%以上で分散したものである。液温30℃の該単分子分散溶液中に、12時間浸漬した後、取り出し、残余する分散液を、窒素ブロー処理により除去する。n−オクタデシルフォスフォン酸(C1837PO3H)は、AlOx層表面のAl−OH型のヒドロキシ基と反応し、エステル結合を形成する結果、AlOx層表面に自己組織化単分子膜が形成される。
【0171】
AlOx層の表面に「自己組織化単分子膜」が形成されたゲート絶縁膜3の表面に、ペンタセンを蒸着法により堆積させる。堆積されるペンタセン蒸着膜の膜厚:Tchannnelは、30nmに選択している。ペンタセンの蒸着条件は、ペンタセンの蒸着源温度230℃、基板温度60℃を選択している。
【0172】
その後、有機半導体層6を所定のパターン形状、長さ:LOS=300μm、幅:WOS=300μmの矩形形状にパターニングする。
【0173】
有機半導体膜6上、ゲート電極2を挟む位置に、ソース電極4、ドレイン電極5形成用の金属ナノ粒子分散液の塗布膜を形成する。該金属ナノ粒子分散液は、平均粒子径D:3nmの銀ナノ粒子の表面に、ドデシルアミン(融点28.3℃、沸点248℃)による被覆剤分子層を形成したものを、分散溶媒N14(テトラデカン、粘度 2.0〜2.3 mPa・s(20℃)、融点5.86℃、沸点253.57℃、日鉱石油化学製)中に分散したものである。該金属ナノ粒子分散液中には、銀ナノ粒子100質量部当たり、被覆剤分子のドデシルアミンが20質量部、分散溶媒のN14が52質量部含まれている。該銀ナノ粒子分散液の液粘度は、10 mPa・s(20℃)である。
【0174】
前記の銀ナノ粒子分散液を用いて、超微細インクジェット装置の吐出孔の口径:Dopenを0.2μmに選択し、噴射される液滴量を0.7fLに設定し、塗布膜を形成する。噴射時の液滴量VO:0.7fLの液滴は、球形形状と仮定すると、液滴径:DO(直径)は、1μmに相当する。この塗布条件では、噴射時の液滴量0.7fLの一液滴で描画されるドットの径は、平均1〜2μmである。
【0175】
ソース電極4形成用の金属ナノ粒子分散液塗布膜の形状は、短辺:LS=2μm、長辺:WS=300μmの矩形とし、塗布膜の厚さ:TS-drawは、0.3μmに選択している。該塗布膜の矩形パターンの長辺と、ゲート電極3のソース電極側の側端との間隔:ΔLS-Gは、ΔLS-G=1μmに選択している。
【0176】
ドレイン電極5形成用の金属ナノ粒子分散液塗布膜の形状は、短辺:LD=2μm、長辺:WD=300μmの矩形とし、塗布膜の厚さ:TD-drawは、0.3μmに選択している。該塗布膜の矩形パターンの長辺と、ゲート電極3のドレイン電極側の側端との間隔:ΔLD-Gは、ΔLD-G=1μmに選択している。
【0177】
該金属ナノ粒子分散液塗布膜に、温度130℃、時間60分間、窒素ガス気流中で低温焼成処理を施し、銀ナノ粒子の焼結体層とする。
【0178】
別途、ゲート絶縁膜に利用するAlOx膜上に、同じ条件で作製される、幅2μm、長さ300μmの矩形形状の銀ナノ粒子の焼結体層において、該焼結体層の平均膜厚:Tbakedを測定すると、0.3μmである。また、該銀ナノ粒子焼結体層の抵抗率は、25μΩ・cmであった。
【0179】
低温焼成処理により得られる銀ナノ粒子の焼結体層を、ソース電極4、ドレイン電極5として利用している。従って、ソース電極4、ドレイン電極5の膜厚:TS,TDは、平均0.3μmと見積もられる。また、銀ナノ粒子焼結体層の矩形パターンの各辺における線幅の乱れ(微小凹凸):δLS,δLDは、100nmと見積もられる。
【0180】
作製されたソース電極4とドレイン電極5の間隔:LS-Dは、2μmであった。チャネル領域の長さの設計値:Lchannel=3μmに対して、その差(Lchannel−LS-D)は、僅かに1μmであった。
【0181】
作製された有機薄膜トランジスタの閾値電圧:Vthを、ドレイン・ソース電圧VD-S=−2.5Vの条件で測定した。該有機薄膜トランジスタの閾値電圧は、Vth=−0.5Vと測定された。また、「ON状態」:ゲート電圧:VG-ON=−3.0Vを印加時のドレイン電流Id-ONと、「OFF状態」:ゲート電圧:VG-OFF=0Vを印加時のドレイン電流Id-ONの比、ON/OFF電流比:Id-ON/Id-OFFは、約1×106であった。
【0182】
(実施例4)
実施例4は、本発明の第二の形態にかかる有機薄膜トランジスタの製造方法を適用して、ヘキサデカフルオロ銅フタロシアニンからなる有機半導体層を動作層とする有機薄膜トランジスタを作製する事例である。
【0183】
実施例4で作製される有機薄膜トランジスタは、下記の構成を有している。
【0184】
基板1として、厚さ500μmのポリエチレンナフタレート(PEN)基板を用いている。
【0185】
ゲート電極2は、TFTのスイッチング動作に利用されるチャネル領域の部分の形状は、矩形形状としている。その矩形形状において、ゲート長:LGは、1μmに、ゲート幅:WGは、300μmに選択している。ゲート電極2の金属種は、Alであり、膜厚:Tgate=20nmの蒸着膜を、上記の形状パターンにパターニングする。
【0186】
ゲート電極2を被覆し、基板1の表面全体を覆うように、自己組織化単分子膜(SAM膜)/AlOxからなるゲート絶縁膜3を形成する。その際、ゲート電極2の直上のAlOx層の膜厚:TAlOxは、TAlOx=3.6nmとしている。また、基板1の表面上の領域では、AlOx膜上に、自己組織化単分子膜(SAM膜)を形成しており、該SAM膜の膜厚は、2.1nmとしている。
【0187】
自己組織化単分子膜(SAM膜)/AlOxからなるゲート絶縁膜3の形成は、下記の工程で行う。まず、Alのゲート電極2の表面に、プラズマ酸化処理を施し、Alの表面に、AlOx層を形成する。その後、水洗処理を施すと、このAlOx層の表面には、Al−OH型のヒドロキシ基が高密度で存在する状態となる。その後、単分子分散溶液中に浸漬し、AlOx層の表面に自己組成的に単分子膜を形成する。該単分子分散溶液は、n−オクタデシルフォスフォン酸(C1837PO3H)を、分散溶媒2プロパノール中に、分散濃度1質量%以上で分散したものである。液温30℃の該単分子分散溶液中に、12時間浸漬した後、取り出し、残余する分散液を、窒素ブロー処理により除去する。n−オクタデシルフォスフォン酸(C1837PO3H)は、AlOx層表面のAl−OH型のヒドロキシ基と反応し、エステル結合を形成する結果、AlOx層表面に自己組織化単分子膜が形成される。
【0188】
AlOx層の表面に「自己組織化単分子膜」が形成されたゲート絶縁膜3の表面に、ヘキサデカフルオロ銅フタロシアニンを蒸着法により堆積させる。堆積されるヘキサデカフルオロ銅フタロシアニン蒸着膜の膜厚:Tchannnelは、30nmに選択している。ヘキサデカフルオロ銅フタロシアニンの蒸着条件は、蒸着源温度230℃、基板温度90℃を選択している。
【0189】
その後、有機半導体層6を所定のパターン形状、長さ:LOS=300μm、幅:WOS=300μmの矩形形状にパターニングする。
【0190】
有機半導体膜6上、ゲート電極2を挟む位置に、ソース電極4、ドレイン電極5形成用の金属ナノ粒子分散液の塗布膜を形成する。該金属ナノ粒子分散液は、平均粒子径D:3nmの銀ナノ粒子の表面に、ドデシルアミン(融点28.3℃、沸点248℃)による被覆剤分子層を形成したものを、分散溶媒N14(テトラデカン、粘度 2.0〜2.3 mPa・s(20℃)、融点5.86℃、沸点253.57℃、日鉱石油化学製)中に分散したものである。該金属ナノ粒子分散液中には、銀ナノ粒子100質量部当たり、被覆剤分子のドデシルアミンが20質量部、分散溶媒のN14が52質量部含まれている。該銀ナノ粒子分散液の液粘度は、10 mPa・s(20℃)である。
【0191】
前記の銀ナノ粒子分散液を用いて、超微細インクジェット装置の吐出孔の口径:Dopenを0.2μmに選択し、噴射される液滴量を0.7fLに設定し、塗布膜を形成する。噴射時の液滴量VO:0.7fLの液滴は、球形形状と仮定すると、液滴径:DO(直径)は、1μmに相当する。この塗布条件では、噴射時の液滴量0.7fLの一液滴で描画されるドットの径は、平均1〜2μmである。
【0192】
ソース電極4形成用の金属ナノ粒子分散液塗布膜の形状は、短辺:LS=2μm、長辺:WS=300μmの矩形とし、塗布膜の厚さ:TS-drawは、0.3μmに選択している。該塗布膜の矩形パターンの長辺と、ゲート電極3のソース電極側の側端との間隔:ΔLS-Gは、ΔLS-G=1μmに選択している。
【0193】
ドレイン電極5形成用の金属ナノ粒子分散液塗布膜の形状は、短辺:LD=2μm、長辺:WD=300μmの矩形とし、塗布膜の厚さ:TD-drawは、0.3μmに選択している。該塗布膜の矩形パターンの長辺と、ゲート電極3のドレイン電極側の側端との間隔:ΔLD-Gは、ΔLD-G=1μmに選択している。
【0194】
該金属ナノ粒子分散液塗布膜に、温度130℃、時間60分間、窒素ガス気流中で低温焼成処理を施し、銀ナノ粒子の焼結体層とする。
【0195】
別途、ゲート絶縁膜に利用するAlOx膜上に、同じ条件で作製される、幅2mm、長さ300mmの矩形形状の銀ナノ粒子の焼結体層において、該焼結体層の平均膜厚:Tbakedを測定すると、0.3μmである。また、該銀ナノ粒子焼結体層の抵抗率は、25μΩ・cmであった。
【0196】
低温焼成処理により得られる銀ナノ粒子の焼結体層を、ソース電極4、ドレイン電極5として利用している。従って、ソース電極4、ドレイン電極5の膜厚:TS,TDは、平均0.3μmと見積もられる。また、銀ナノ粒子焼結体層の矩形パターンの各辺における線幅の乱れ(微小凹凸):δLS,δLDは、100nmと見積もられる。
【0197】
作製されたソース電極4とドレイン電極5の間隔:LS-Dは、2μmであった。チャネル領域の長さの設計値:Lchannel=3μmに対して、その差(Lchannel−LS-D)は、僅かに1μmであった。
【0198】
作製された有機薄膜トランジスタの閾値電圧:Vthを、ドレイン・ソース電圧VD-S=1.5Vの条件で測定した。該有機薄膜トランジスタの閾値電圧は、Vth=1Vと測定された。また、「ON状態」:ゲート電圧:VG-ON=3Vを印加時のドレイン電流Id-ONと、「OFF状態」:ゲート電圧:VG-OFF=0Vを印加時のドレイン電流Id-ONの比、ON/OFF電流比:Id-ON/Id-OFFは、約1×104であった。
【0199】
なお、図1の(a)は、実施例3または実施例4に記載する製造方法に従って作製される有機薄膜トランジスタの構造を模式的に示す。また、図1の(b)には、ペンタセン膜上に、ソース電極4とドレイン電極5の間隔:LS-Dを、1μm、2μm、5μmとして作製されたソース電極4とドレイン電極5の線幅の乱れ(微小凹凸):δLS,δLDを顕微鏡観察した画像イメージを示す。加えて、図1の(c)には、ペンタセン膜上に形成されたソース電極4とドレイン電極5を含むチャネル領域の表面を、AFM(Atomic Force Microscopy)によって、その凹凸を観測した二次元画像イメージを示す。図1の(c)には、ソース電極4とドレイン電極5の断面形状は、実際には、図1の(a)に模式的に示す凸形状を示すことが示されている。すなわち、超微細インクジェット装置を利用して描画されるスポットでは、塗布された銀ナノ粒子分散液は、高い液粘度を示す状態となり、隣接するスポット間での濡れ広がりによる平坦化が抑えられていることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0200】
本発明の有機薄膜トランジスタの製造方法は、絶縁性高分子材料で作製される基板、例えば、プラスチック基板上に作製される、液晶ディスプレイなどのフラット・パネルディスプレイ装置において、各ピクセルの表示動作を制御するスイッチング素子、各ピクセルを駆動させる駆動素子用の有機薄膜トランジスタの製造に、好適に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0201】
【図1】実施例3または実施例4に記載する製造方法に従って作製される有機薄膜トランジスタの構造を模式的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機薄膜トランジスタを製造する方法であって、
基板上に、ゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極表面を被覆するゲート絶縁膜を、基板上に形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上に、ソース電極およびドレイン電極を形成する工程と、
前記ソース電極とドレイン電極表面を被覆するように、有機半導体膜を、ゲート絶縁膜上に形成する工程を有し、
前記有機半導体膜の形成工程では、
真空蒸着法を用いて、有機半導体膜の形成を行い、
前記ソース電極およびドレイン電極の形成工程では、
超微細インクジェット印刷装置を用いて、金属ナノ粒子分散液を所定のパターン形状に塗布して、金属ナノ粒子分散液塗布層を形成し、
該金属ナノ粒子分散液塗布層を加熱焼成処理して、金属ナノ粒子の焼結体層からなるソース電極およびドレイン電極を形成する
ことを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項2】
有機薄膜トランジスタを製造する方法であって、
基板上に、ゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極表面を被覆するゲート絶縁膜を、基板上に形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上に、有機半導体膜を形成する工程と、
前記有機半導体膜上に、ソース電極およびドレイン電極を形成する工程を有し、
前記有機半導体膜の形成工程では、
真空蒸着法を用いて、有機半導体膜の形成を行い、
前記ソース電極およびドレイン電極の形成工程では、
超微細インクジェット印刷装置を用いて、金属ナノ粒子分散液を所定のパターン形状に塗布して、金属ナノ粒子分散液塗布層を形成し、
該金属ナノ粒子分散液塗布層を加熱焼成処理して、金属ナノ粒子の焼結体層からなるソース電極およびドレイン電極を形成する
ことを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項3】
前記超微細インクジェット印刷装置を用いて形成される、金属ナノ粒子分散液塗布層の最小線幅を、1μm〜10μmの範囲に選択し、
金属ナノ粒子分散液塗布層の塗布膜厚を、30nm〜600nmの範囲に選択する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項4】
前記超微細インクジェット印刷装置を用いた金属ナノ粒子分散液の塗布では、
吐出される液滴量を、0.3フェムトリットル〜1フェムトリットルの範囲に選択する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項5】
前記金属ナノ粒子分散液中に分散されている、金属ナノ粒子の平均粒子径を、1〜100nmの範囲に選択する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項6】
前記金属ナノ粒子分散液中に分散されている、金属ナノ粒子は、
金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、タンタル、ビスマス、インジウム、錫、チタン、アルミニウムからなる金属の群より選択される、一種類の金属からなるナノ粒子、二種類以上の金属からなるナノ粒子の混合物、あるいは、該金属の群より選択される、二種類以上の金属の合金からなるナノ粒子である
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項7】
前記超微細インクジェット印刷装置を用いて吐出される、前記金属ナノ粒子分散液の20℃における液粘度を、2mPa・s〜30mPa・sの範囲に選択する
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項8】
前記超微細インクジェット印刷装置を用いて吐出される、前記金属ナノ粒子分散液は、
固形成分として、前記金属ナノ粒子を分散溶媒中に均一に分散してなる分散液であり、
該金属ナノ粒子表面は、かかる金属ナノ粒子に含まれる金属元素と配位的な結合が可能な基として、窒素、酸素、またはイオウ原子を含み、これら原子の有する孤立電子対による配位的な結合が可能な基を有する有機化合物1種以上により被覆されており、
前記金属ナノ粒子100質量部に対して、前記窒素、酸素、またはイオウ原子を含む基を有する有機化合物一種以上を総和として、10〜50質量部を含有している
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項9】
前記超微細インクジェット印刷装置を用いて吐出される、前記金属ナノ粒子分散液は、
分散溶媒として、液体状有機物または有機溶剤を、一種、あるいは二種以上含有し、
少なくとも、前記液体状有機物または有機溶剤の一つには、融点は、20℃以下、沸点は、80〜300℃の範囲である有機溶剤を選択する
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項10】
分散溶媒として、炭素数10〜18のアルカン、あるいは、炭素数8〜12の第一級アルコールを選択する
ことを特徴とする請求項9に記載の有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項11】
前記分散溶媒は、
100℃以上に加熱した際、該分散溶媒100質量部当たり、前記金属ナノ粒子表面を被覆する前記窒素、酸素、またはイオウ原子を含む基を有する有機化合物を50質量部以上溶解可能な、高溶解性を有する有機溶剤または液体状有機物の一種からなる溶媒、あるいは二種以上からなる混合溶媒である
ことを特徴とする請求項8に記載の有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項12】
前記超微細インクジェット印刷装置を用いて吐出される、前記金属ナノ粒子分散液は、
該分散液中に含まれる分散溶媒が一部蒸散除去され、前記分散溶媒の容積比率が、20〜50体積%の範囲となるまで濃縮が施された濃縮分散液は、20℃におけるその液粘度が20Pa・s〜1000Pa・sの範囲の粘稠な濃縮液となる
ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項13】
前記金属ナノ粒子分散液塗布層を加熱焼成処理する際、
その焼成温度を、100℃〜230℃の範囲に選択する
ことを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項14】
前記有機半導体層は、
ペンタセンまたはヘキサデカフルオロ銅フタロシアニンからなる層である
ことを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の有機薄膜トランジスタの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−224714(P2009−224714A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70082(P2008−70082)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)【国等の委託研究の成果に係る記載事項】 平成19年度、文部科学省、科学技術総合研究委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(508082865)株式会社エスアイジェイテクノロジ (1)
【出願人】(000233860)ハリマ化成株式会社 (167)
【Fターム(参考)】