説明

有機薄膜トランジスタ

【課題】塗工や印刷等の簡便なプロセスで製造でき、再現性の良い特性が得られる有機薄膜トランジスタを提供すること。
【解決手段】有機半導体層1を具備する有機薄膜トランジスタにおいて、前記有機半導体層1が下記一般式で示される繰り返し単位を有する重合体を主成分とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体層を有する有機薄膜トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機半導体材料を利用した有機薄膜トランジスタの研究開発が盛んである。有機半導体材料は、印刷法、スピンコート法等のウェットプロセスによる簡便な方法で容易に薄膜形成が可能であり、従来の無機半導体材料を利用した薄膜トランジスタと比し、製造プロセス温度を低温化できるという利点がある。これにより、一般に耐熱性の低いプラスチック基板上への形成が可能となり、ディスプレイ等のエレクトロニクスデバイスの軽量化や低コスト化できるとともに、プラスチック基板のフレキシビリティーを活かした用途等、多様な展開が期待できる。
これまでに、有機半導体材料としてペンタセン等のアセン系材料が報告されている(例えば、特許文献1)。このペンタセンを有機半導体層として利用した有機薄膜トランジスタは、比較的高移動度であることが報告されているが、これらアセン系材料は汎用溶媒に対し極めて溶解性が低く、それを有機薄膜トランジスタにおける有機半導体層として薄膜化する際には、真空蒸着工程を経る必要がある。ゆえに、前述したような塗布や印刷などの簡便なプロセスで薄膜を形成できるという有機半導体材料への期待に応えるものではない。
また、高分子有機半導体材料として、ポリ(3−アルキルチオフェン)(非特許文献1)やジアルキルフルオレンとビチオフェンとの共重合体(非特許文献2)等が提案されている。これらの高分子有機半導体材料は、アルキル基の導入により、低いながらも溶解性を有するため、真空蒸着工程を経ず、塗布や印刷で薄膜化が可能である。しかしながら、これらの高分子有機半導体材料は、分子間が整列した状態において、高移動度が実現されるため、その薄膜形成に際し、溶媒種、塗工方法等により配列状態が異なり、結果としてトランジスタ特性にバラツキが生じたり、特性の再現性に欠けるということが問題になっている。
【特許文献1】特開平5−55568号公報
【非特許文献1】Appl.Phys.Lett.,69(26),4108(1996)
【非特許文献2】Science,290,2123(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上述の問題を解決し、塗工や印刷等の簡便なプロセスで製造でき、再現性の良い特性が得られる有機薄膜トランジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定の構造を有する重合体を有機薄膜トランジスタの半導体層として用いることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は以下の(1)〜(5)からなる。
(1)有機半導体層を具備する有機薄膜トランジスタにおいて、前記有機半導体層が下記一般式(I)で示される繰り返し単位を有する重合体を主成分とすることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
【0005】
【化1】

【0006】
(式中、Ar、Ar3、Ar4 は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基の2価基であり、Ar2 は置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表す。R1、R2 は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、または置換もしくは無置換のアルキルチオ基から選択された基を表し、xおよびyは、それぞれ独立に、0から2までの整数を表し、nは0または1の整数を表す。)
【0007】
(2)前記有機半導体層が、下記一般式(II)で示される繰り返し単位を有する重合体を主成分とすることを特徴とする前記(1)記載の有機薄膜トランジスタ。
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基の2価基であり、Ar2 は置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表す。R1、R2、R3、R4 は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、または置換もしくは無置換のアルキルチオ基から選択された基を表し、xおよびyは、それぞれ独立に、0から2までの整数を表し、zおよびuは、それぞれ独立に、0から4までの整数を表し、nは0または1の整数を表す。)
【0010】
(3)前記有機半導体層が、下記一般式(III)で示される繰り返し単位を有する重合体を主成分とすることを特徴とする前記(1)記載の有機薄膜トランジスタ。
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基の2価基であり、R1、R2、R3、R4、R5 は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、または置換もしくは無置換のアルキルチオ基から選択された基を表し、xおよびyは、それぞれ独立に、0から2までの整数を表し、zおよびuは、それぞれ独立に、0から4までの整数を表し、vは0から5までの整数を表し、nは0または1の整数を表す。)
【0013】
(4)前記有機薄膜トランジスタが、前記有機半導体層と、この有機半導体層を通じて電流を流すための対をなす電極を設けてなる構造体と、第三の電極とからなることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
【0014】
(5)前記第三の電極は、前記構造体に絶縁膜を介して設けたことを特徴とする前記(4)記載の有機薄膜トランジスタ。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、塗工や印刷等の簡便なプロセスで製造でき、再現性の良い特性が得られる有機薄膜トランジスタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明を詳細に説明する。
「トランジスタ構造」
図1の(A)〜(D)は本発明に係わる有機薄膜トランジスタの概略構造を示す図である。本発明に係わる有機薄膜トランジスタの有機半導体層1は、上記各一般式で示した繰り返し単位を有する重合体を主成分とする。本発明の有機薄膜トランジスタには、空間的に分離されたソース電極2、ドレイン電極3およびゲート電極4が設けられており、(C)および(D)に示すようにゲート電極4と有機半導体層1の間には絶縁膜5が設けられていてもよい。有機薄膜トランジスタはゲート電極4への電圧の印加により、ソース電極2とドレイン電極3の間の有機半導体層1内を流れる電流がコントロールされる。
【0017】
本発明の有機薄膜トランジスタは、支持体上に設けることができ、例えば、ガラス、シリコン、プラスチック等の一般に用いられる基板を利用できる。また、導電性基板を用いることにより、ゲート電極と兼ねること、さらにはゲート電極と導電性基板とを積層した構造にすることもできるが、本発明の有機薄膜トランジスタが応用されるデバイスのフレキシビリティー、軽量化、安価、耐衝撃性等の特性が所望される場合、プラスチックシートを支持体とすることが好ましい。
プラスチックシートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等からなるフィルム等が挙げられる。
【0018】
本発明の有機薄膜トランジスタにおいては、有機半導体層は上記一般式(I)、(II)あるいは(III)で示される繰り返し単位を有する重合体を主成分とするが、この重合体について詳細に説明する。
本発明で用いられる上記一般式(I)、(II)あるいは(III)で示される繰り返し単位を有する重合体の製造は、例えば、アリールハロゲン化物とアリールホウ素化合物を用いたクロスカップリング反応(Suzuki Coupling)、アリールハロゲンとアリールスズ化合物を用いたクロスカップリング反応(Stille Coupling)などを用いることができ、公知の方法により製造可能である。
【0019】
一例として、Suzuki Couplingを用いた本発明に使用される重合体の製造方法について説明する。本発明における重合体は、一般的にはボロン酸化合物またはボロン酸エステル化合物およびハロゲン化合物が化学量論的に等しく存在する溶液中、パラジウム触媒および塩基の存在下、加熱することにより重合反応が進行し得ることができる。また、複数種のボロン酸化合物あるいはハロゲン化合物を反応系内に添加することにより、ランダム共重合体を得ることもでき、諸特性を調整することも可能である。
アリールハロゲン化物のハロゲン原子としては、反応性の観点からヨウ素化物または臭素化物が好ましい。
アリールホウ素化合物としては、アリールボロン酸またはアリールボロン酸エステルが用いられる。アリールボロン酸エステルは、アリールボロン酸を用いた場合に生ずる三量体からなる環状無水物(ボロキシン)を生成せず、また、合成物の結晶性が高く、精製が容易であることからより好ましい。
【0020】
アリールボロン酸エステルの合成方法としては、以下のような方法が挙げられる。
(i)アリールボロン酸とアルカンジオールを無水有機溶媒中にて加熱反応する。
(ii)アリールハロゲン化物のハロゲン部位をメタル化した後に、アルコキシボロンエステルを加える反応。
(iii)アリールハロゲンのグリニャール試薬を調製した後に、アルコキシボロンエステルを加える反応。
(iv)アリールハロゲン化物とビス(ピナコラト)ジボロンやビス(ネオペンチル グリコラト)ジボロンをパラジウム触媒下にて加熱反応する。
【0021】
パラジウム触媒としてはPd(PPh3)4、PdCl2(PPh3)2、Pd(OAc)2、PdCl2 またはパラジウムカーボンに配位子として別途トリフェニルホスフィンを加える、など種々の触媒をもちいることができるが、最も汎用的にはPd(PPh3)4 がもちいられる。
【0022】
本反応には塩基が必ず必要であるが、Na2CO3、NaHCO3、K2CO3 などの比較的弱い塩基が良好な結果を与える。立体障害等の影響を受ける場合には、Ba(OH)2 やK3PO4 などの強塩基が有効である。その他苛性ソーダ、苛性カリ、金属アルコシド等、例えばカリウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、リチウムt−ブトキシド、カリウム2−メチル−2−ブトキシド、ナトリウム2−メチル−2−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、カリウムメトキシドなどももちいることができる。
【0023】
また、反応をよりスムーズに進行させるために相間移動触媒を用いてもよく、好ましくは、テトラアルキルハロゲン化アンモニウム、テトラアルキル硫酸水素アンモニウム、またはテトラアルキル水酸化アンモニウムであり、好ましい例としては、テトラ-n-ブチルハロゲン化アンモニウム、ベンジルトリエチルハロゲン化アンモニウム、または、トリカプリルイルメチル塩化アンモニウムである。
【0024】
反応溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル等のアルコールおよびエーテル系、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル系の他、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等をあげることができる。
【0025】
上記重合反応の反応温度は、用いるモノマーの反応性、また、反応溶媒により適宜設定されるが、溶媒の沸点以下に抑えることが好ましい。
上記重合反応における反応時間は、用いるモノマーの反応性、または、望まれる重合体の分子量などにおいて適宜設定することができ、2〜50時間が好適であり、さらには、5〜24時間がより好ましい。
また、以上の重合操作において分子量を調節するために分子量調節剤、または末端修飾基として重合体の末端を封止するための封止剤を反応系に添加することも可能であり、反応開始時に添加しておくことも可能である。従って、本発明における重合体の末端には停止剤に基づく基が結合してもよい。
分子量調節剤、末端封止剤としては、フェニルボロン酸、ブロモベンゼン、ヨウ化ベンゼン等、反応活性基を1個有する化合物が挙げられる。
【0026】
本発明の重合体の好ましい分子量はポリスチレン換算数平均分子量で1000〜1000000であり、より好ましくは2000〜500000である。分子量が小さすぎる場合にはクラックの発生等成膜性が悪化し実用性に乏しくなる。また分子量が大きすぎる場合には、一般の有機溶媒への溶解性が悪くなり、溶液の粘度が高くなって塗工が困難になり、やはり実用上問題になる。
【0027】
また、機械的特性を改良するために重合時に分岐化剤を少量加えることもできる。使用される分岐化剤は、重合反応活性基を3つ以上(同種でも異種でもよい)有する化合物である。これらの分岐化剤は単独で使用してもよく、また複数併用してもよい。
【0028】
以上のようにして得られた本発明の重合体は、重合に使用した塩基、未反応モノマー、末端停止剤、又、重合中に発生した無機塩等の不純物を除去して使用される。これら精製操作は再沈澱、抽出、ソックスレー抽出、限外濾過、透析等をはじめとする従来公知の方法を使用できる。
【0029】
このようにして得られる一般式(I)、(II)および(III)で表される重合体の具体例を以下に示す。
前記一般式(I)における置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基Ar2 としては単環基、多環基(縮合多環基、非縮合多環基)の何れでもよく、一例として以下のものを挙げることができる。例えばフェニル基、ナフチル基、ピレニル基、フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などが挙げられる。前記一般式(I)における置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基の2価基Ar、Ar3、Ar4 としては、一例として上記の置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基の二価基が挙げられる。
【0030】
また、これら環状構造を有する基(Ar、Ar2、Ar3、Ar4 )は、以下の通り、種々の置換基を有していてもよい。
(1)ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基。
(2)炭素数1〜25の直鎖または分岐鎖の、アルキル基、アルコキシ基。これらはさらにハロゲン原子、シアノ基、フェニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルチオ基で置換されていてもよい。
(3)アリールオキシ基。(アリール基としてフェニル基、ナフチル基を有するアリールオキシ基が挙げられる。これらは、ハロゲン原子を置換基として含有しても良く、炭素数1 〜25の直鎖または分岐鎖の、アルキル基、アルコキシ基、又はアルキルチオ基を含有していても良い。具体的には、フェノキシ基、1 −ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、6−メチル−2−ナフチルオキシ基等が挙げられる。)
(4)アルキルチオ基又はアリールチオ基。(アルキルチオ基又はアリールチオ基としては、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。)
(5)アルキル置換アミノ基。(具体的には、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(p −トリル)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ユロリジル基等が挙げられる。)
(6)アシル基。(アシル基としては、具体的にはアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、マロニル基、ベンゾイル基等が挙げられる。)
【0031】
本発明の重合体(I)〜(III)は芳香環上にハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアルコキシ基を置換基として有していてもよく、溶媒への溶解性向上の観点からは、置換基もしくは無置換の、アルキル基、アルコキシ基またはアルキルチオ基を有する事が好ましい。これら置換基の炭素数が増加すれば溶解性はより向上するが、その反面、電荷輸送性等の特性は低下してしまうため、溶解性が損なわれない範囲で所望の特性が得られるような置換基を選択することが好ましい。その場合の好適な置換基の例としては炭素数が1〜25の、アルキル基、アルコキシ基及びアルキルチオ基が挙げられる。これら置換基は同一のものを複数導入してもよいし、異なるものを複数導入してもよい。また、これらのアルキル基、アルコキシ基及びアルキルチオ基はさらにハロゲン原子、シアノ基、アリール基、ヒドロキシル基、カルボキシル基または、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基、アルコキシ基またはアルキルチオ基で置換されたアリール基を含有していてもよい。
アルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−エチルヘキシル基、トリフルオロメチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を一例として挙げることができ、アルコキシ基、アルキルチオ基としては上記アルキル基の結合位に酸素原子または硫黄原子を挿入して、それぞれアルコキシ基またはアルキルチオ基としたものが一例として挙げられる。
【0032】
「塗布方法:有機半導体層」
本発明に係わる前記重合体は、例えばジクロロメタン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、トルエン、ジクロロベンゼン及びキシレン等の溶剤に溶解して、支持体上に塗布することによって薄膜を形成することができる。
これら有機半導体薄膜の作製方法としては、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、ディスペンス法等が挙げられ、材料に応じて、適した上記製膜方法と、上記溶媒から適切な溶媒が選択される。
【0033】
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、有機半導体層の膜厚としては、特に制限はないが、均一な薄膜(即ち、有機半導体層のキャリア輸送特性に悪影響を及ぼすギャップやホールがない)が形成されるような厚みに選択される。
有機半導体薄膜の厚みは、一般に1μm以下、特に5〜200nmが好ましい。
【0034】
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、上記重合体を主成分として形成される有機半導体層は、ソース電極、ドレイン電極及び絶縁膜に接して形成されてもよい。
【0035】
「絶縁膜」
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて用いられる絶縁膜には、種々の絶縁膜材料を用いることができる。例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコウム酸化チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウム等の無機系絶縁材料が挙げられる。
また、例えば、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリエステル、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、無置換またはハロゲン原子置換ポリパラキシリレン、ポリアクリロニトリル、シアノエチルプルラン等の高分子化合物を用いることができる。
さらに、上記絶縁材料を2種以上合わせて用いても良い。特に材料は限定されないが、中でも誘電率が高く、導電率が低いものが好ましい。
上記材料を用いた絶縁膜の作製方法としては、例えば、CVD法、プラズマCVD法、プラズマ重合法、蒸着法のドライプロセスや、スプレーコート法、スピンコート法、ディップコート法、インクジェット法、キャスト法、ブレードコート法、バーコート法等の塗布によるウェットプロセスが挙げられる。
【0036】
「HMDS等 有機半導体/絶縁膜界面修飾」
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、絶縁膜と有機半導体層の接着性を向上、ゲート電圧の低減、リーク電流低減等の目的で、これら層間に有機薄膜を設けても良い。有機薄膜は有機半導体層に対し、化学的影響を与えなければ、特に限定されないが、例えば、有機分子膜や高分子薄膜が利用できる。
有機分子膜としては、オクタデシルトリクロロシランやヘキサメチレンジシラザン等を具体的な例としたカップリング剤が挙げられる。また、高分子薄膜としては、上述の高分子絶縁膜材料を利用することができ、これらが絶縁膜の一種として機能していても良い。また、この有機薄膜をラビング等により、異方性処理を施していても良い。
【0037】
「電極」
本発明の有機薄膜トランジスタに用いられるゲート電極、ソース電極、ドレイン電極としては、導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン、鉛、タンタル、インジウム、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム等、及びこれらの合金やインジウム・錫酸化物等の導電性金属酸化物、あるいはドーピング等で導電率を向上させた無機及び有機半導体、例えば、シリコン単結晶、ポリシリコン、アモルファスシリコン、ゲルマニウム、グラファイト、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチエニレンビニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等が挙げられる。
ソース電極及びドレイン電極は、上記導電性の中でも半導体層との接触面において、電気抵抗が少ないものが好ましい。
電極の形成方法としては、上記材料を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅等の金属箔上に熱転写、インクジェット等によるレジストを用いてエッチングする方法がある。また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、導電性微粒子分散液を直接インクジェットによりパターニングしても良いし、塗工膜からリソグラフィーやレーザーアブレーション等により形成しても良い。さらに導電性ポリマーや導電性微粒子を含むインク、導電性ペースト等を凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等の印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
【0038】
「引出し電極、保護層」
また、本発明の有機薄膜トランジスタは、必要に応じて各電極からの引出し電極を設けることができる。
本発明の有機トランジスタは、大気中でも安定に駆動するものであるが、機械的破壊からの保護、水分やガスからの保護、またはデバイスの集積の都合上の保護等のため必要に応じて保護層を設けることもできる。
【0039】
「応用デバイス」
本発明の有機薄膜トランジスタは、液晶、有機EL、電気泳動等の表示画像素子を駆動するための素子として利用でき、これらの集積化により、いわゆる「電子ペーパー」と呼ばれるディスプレイを製造することが可能である。また、ICタグ等のデバイスとして、本発明の有機薄膜トランジスタを集積化したICを利用することが可能である。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明は下記例に限定されない。
本発明で用いられる重合体の合成例を示す。
なお、下記合成例1〜3、実施例1〜6、比較例1,2及び図1〜4は基礎出願に係るものであり、下記合成例4〜7、実施例7〜14及び図5〜8は新たな出願に係るものである。
(合成例1) 重合体1の合成
【0041】
【化4】

【0042】
100ml三つ口フラスコに、上記ジボロンエステル体0.872g(1.5mmol)、ジブロモ体1.069g(1.5mmol)、相間移動触媒として、Aliquat336(アルドリッチ社製)12.1mg(0.03mmol)、フェニルボロン酸5.5mg(0.045mmol)、また、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム4.33mg(0.00375mmol)、トルエン11mlを加え、窒素ガス置換した後、2M-炭酸ナトリウム水溶液を3.1ml加え、17時間還流したのち、停止反応として、ブロモベンゼン118mg(0.75mmol)を加え8時間還流した。その後、反応溶液を室温に戻した後、有機層をメタノール/水の混合溶媒中に滴下し再沈殿させることによりポリマーを得た。次いで、得られたポリマーをジクロロメタン溶液とし、イオン交換水で十分に洗浄した後に、テトラヒドロフラン溶液としメタノール中に滴下し再沈殿することによりポリマーを精製した。収量1.20g、収率91%。
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定したポリスチレン換算の数平均分子量は48200、質量平均分子量は134600であった。
示差操作熱量測定から求めたガラス転移温度は、122.1℃であった。
元素分析値(計算値);C:83.04%(83.23%)、H:8.05%(7.90%)、N:1.53%(1.59%)、S:7.49%(7.28%)
【0043】
(合成例2) 重合体2の合成
【0044】
【化5】

【0045】
100ml三つ口フラスコに、上記ジボロンエステル体0.872g(1.5mmol)、ジブロモ体0.838g(1.5mmol)、相間移動触媒として、Aliquat336(アルドリッチ社製)12.1mg(0.03mmol)、フェニルボロン酸5.5mg(0.045mmol)、また、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム4.33mg(0.00375mmol)、トルエン11mlを加え、窒素ガス置換した後、2M-炭酸ナトリウム水溶液を3.1ml加え、20時間還流したのち、停止反応として、ブロモベンゼン118mg(0.75mmol)を加え6時間還流した。その後、反応溶液を室温に戻した後、有機層をメタノール/水の混合溶媒中に滴下し再沈殿させることによりポリマーを得た。次いで、得られたポリマーをジクロロメタン溶液とし、イオン交換水で十分に洗浄した後に、テトラヒドロフラン溶液としメタノール中に滴下し再沈殿することによりポリマーを精製した。収量1.07g、収率98%。
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定したポリスチレン換算の数平均分子量は5900、質量平均分子量は11800であった。
示差操作熱量測定から求めたガラス転移温度は、108.3℃であった。
元素分析値(計算値);C:77.46%(77.75%)、H:7.12%(7.08%)、N:1.79%(1.93%)、S:8.69%(8.83%)
【0046】
(合成例3) 重合体3の合成
【0047】
【化6】

【0048】
100ml三つ口フラスコに、上記ジボロンエステル体0.872g(1.5mmol)、ジブロモ体0.853g(1.5mmol)、相間移動触媒として、Aliquat336(アルドリッチ社製)12.1mg(0.03mmol)、フェニルボロン酸5.5mg(0.045mmol)、また、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム4.33mg(0.00375mmol)、トルエン11mlを加え、窒素ガス置換した後、2M-炭酸ナトリウム水溶液を3.1ml加え、30時間還流したのち、停止反応として、ブロモベンゼン118mg(0.75mmol)を加え6時間還流した。その後、反応溶液を室温に戻した後、有機層をメタノール/水の混合溶媒中に滴下し再沈殿させることによりポリマーを得た。次いで、得られたポリマーをジクロロメタン溶液とし、イオン交換水で十分に洗浄した後に、テトラヒドロフラン溶液としメタノール中に滴下し再沈殿することによりポリマーを精製した。収量1.10g、収率99%。
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定したポリスチレン換算の数平均分子量は8500、質量平均分子量は19400であった。
示差操作熱量測定から求めたガラス転移温度は、84.1℃であった。
元素分析値(計算値);C:81.30%(81.58%)、H:7.94%(7.80%)、N:1.84%(1.90%)、S:8.48%(8.71%)
【0049】
(合成例4) 重合体3−2の合成
【0050】
【化7】

【0051】
50ml三つ口フラスコに、上記ジボロンエステル体0.872g(1.5mmol)、ジブロモ体0.853g(1.5mmol)、相間移動触媒として、Aliquat336(アルドリッチ社製)12.1mg(0.03mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム8.7mg(0.00752mmol)、トルエン6mlを加え、窒素ガス置換した後、2M-炭酸ナトリウム水溶液を3.5ml加え、13時間還流したのち、停止反応として、まず、フェニルボロン酸73mg(0.6mmol)を加え5時間還流した後、次いで、ブロモベンゼン109mg(0.69mmol)を加え4時間還流した。その後、反応溶液を室温に戻した後、有機層をメタノール/水の混合溶媒中に滴下し再沈殿させることによりポリマーを得た。次いで、得られたポリマーをクロロホルム溶液とし、イオン交換水で十分に洗浄した後に、テトラヒドロフラン溶液としメタノール中に滴下し再沈殿することによりポリマーを精製した。収量1.07g、収率97%。
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定したポリスチレン換算の数平均分子量は42600、重量平均分子量は164600であった。
元素分析値(計算値); C:81.42%(81.58%)、H:8.01%(7.80%)、N:1.92%(1.90%)、S:8.64%(8.71%)
【0052】
(合成例5) 重合体4の合成
【0053】
【化8】

【0054】
50ml三つ口フラスコに、上記ジボロンエステル体0.872g(1.5mmol)、ジブロモ体0.612g(1.5mmol)、相間移動触媒として、Aliquat336(アルドリッチ社製)13.4mg(0.033mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム8.7mg(0.0075mmol)、トルエン6.2mlを加え、窒素ガス置換した後、2M-炭酸ナトリウム水溶液を3.5ml加え、13時間還流したのち、停止反応として、まず、フェニルボロン酸73mg(0.6mmol)を加え5時間還流した後、次いで、ブロモベンゼン109mg(0.69mmol)を加え同様に4時間還流した。その後、反応溶液を室温に戻した後、有機層をメタノール/水の混合溶媒中に滴下し再沈殿させることによりポリマーを得た。次いで、得られたポリマーをクロロホルム溶液とし、イオン交換水で十分に洗浄した後に、テトラヒドロフラン溶液としメタノール中に滴下し再沈殿することによりポリマーを精製した。収量0.844g、収率98%。
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定したポリスチレン換算の数平均分子量は40900、重量平均分子量は176400であった。
元素分析値(計算値); C:78.98%(79.26%)、H:7.22%(7.18%)、N:2.57%(2.43%)、S:11.04%(11.13%)
【0055】
(合成例6) 重合体5の合成
【0056】
【化9】

【0057】
50ml三つ口フラスコに、上記ジボロンエステル体0.938g(1.5mmol)、ジブロモ体1.219g(1.5mmol)、相間移動触媒として、Aliquat336(アルドリッチ社製)12.6mg(0.03mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム8.7mg(0.00752mmol)、トルエン6.2mlを加え、窒素ガス置換した後、2M-炭酸ナトリウム水溶液を3.5ml加え、4時間還流したのち、停止反応として、まず、フェニルボロン酸73mg(0.6mmol)を加え3時間還流した後、次いで、ブロモベンゼン118mg(0.75mmol)を加え3時間還流した。
その後、反応溶液を室温に戻した後、有機層をメタノール/水の混合溶媒中に滴下し再沈殿させることによりポリマーを得た。
次いで、得られたポリマーをクロロホルム溶液とし、イオン交換水で十分に洗浄した後に、テトラヒドロフラン溶液としメタノール中に滴下し再沈殿することによりポリマーを精製した。収量1.23g、収率80%。
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定したポリスチレン換算の数平均分子量は35700、重量平均分子量は184300であった。
元素分析値(計算値); C:82.35%(82.60%)、H:8.61%(8.76%)、N:1.45%(1.37%)、S:6.10%(6.26%)
【0058】
(合成例7) 重合体6の合成
【0059】
【化10】

【0060】
50ml三つ口フラスコに、上記ジボロンエステル体0.938g(1.5mmol)、ジブロモ体0.852g(1.5mmol)、相間移動触媒として、Aliquat336(アルドリッチ社製)12.8mg(0.03mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム8.7mg(0.00752mmol)、トルエン6.2mlを加え、窒素ガス置換した後、2M-炭酸ナトリウム水溶液を3.5ml加え、4時間還流したのち、停止反応として、まず、フェニルボロン酸73mg(0.6mmol)を加え3時間還流した後、次いで、ブロモベンゼン118mg(0.75mmol)を加え3時間還流した。その後、反応溶液を室温に戻した後、有機層をメタノール/水の混合溶媒中に滴下し再沈殿させることによりポリマーを得た。次いで、得られたポリマーをクロロホルム溶液とし、イオン交換水で十分に洗浄した後に、テトラヒドロフラン溶液としメタノール中に滴下し再沈殿することによりポリマーを精製した。収量0.76g、収率65%。
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定したポリスチレン換算の数平均分子量は29700、重量平均分子量は154700であった。
元素分析値(計算値); C:79.87%(80.05%)、H:7.99%(7.88%)、N:1.74%(1.80%)、S:8.35%(8.22%)
【0061】
(有機薄膜トランジスタ評価用基板の作製例)
30mm□のp−ドープされたシリコン基板表面を熱酸化してSiO2 の絶縁膜を200nm形成した後、片面だけレジスト膜(東京応化製:TSMR8800)で覆い、もう片面をフッ酸により酸化膜を除去した。次いで、この熱酸化膜を除去した面にアルミニウムを300nm蒸着した。その後、レジスト膜をアセトンで除去し、有機薄膜トランジスタ評価用基板を作製した。
【0062】
(実施例1)
上記方法にて作製した有機薄膜トランジスタ評価用基板上に、合成例1で合成した重合体を用いて、下記の有機薄膜トランジスタを作製した。
上記重合体1の約1.0質量%のTHF/パラキシレン=8/2の混合溶媒からなる溶液を基板上にスピンコートして乾燥することにより、膜厚30nmの有機半導体層を作製した。
次いで、チャネル長30μm、チャネル幅10mmとなるように、金を蒸着することにより膜厚100nmのソース電極およびドレイン電極を形成し、有機薄膜トランジスタを作製した。
さらに、この有機薄膜トランジスタの特性の再現性を確認するため、同様の操作を繰り返し、有機薄膜トランジスタを作製した。
これら作製した有機薄膜トランジスタは、図1(D)の構造を有し、支持体として用いたp−ドープされたシリコン基板は下部に設けたアルミニウム薄膜とともにゲート電極として作用する。
このように作製した有機薄膜トランジスタの特性である電界効果移動度を測定した。
このデバイスのトランジスタ特性の測定結果を図2に示す。図2中、VDS はソース・ドレイン間の電圧であり、ID はドレイン電流であるが、ID と下記式中のIDS は同意である。
なお、有機薄膜トランジスタの電界効果移動度の算出には、以下の式を用いた。
DS =μCin W(VG−VTH 2/2L
(ただし、Cin はゲート絶縁膜の単位面積あたりのキャパシタンス、Wはチャネル幅、Lはチャネル長、VG はゲート電圧、IDS はソースドレイン電流、μは移動度、VTH はチャネルが形成し始めるゲートの閾値電圧である。)
作製した有機薄膜トランジスタの電界効果移動度は、それぞれ、2.4×10-3cm2/VS および1.9×10-3cm2/VS であった。
このように、作製したトランジスタは、素子間のバラツキが少なく、再現性良くトランジスタ特性が得られていることがわかる。
【0063】
(実施例2)
実施例1において、上記重合体1の1.0質量%トルエン溶液を用いてスピンコートした以外は、実施例1と同様にして、2つの有機薄膜トランジスタを作製した。
このように作製した有機薄膜トランジスタの特性である電界効果移動度を測定したところ、1.9×10-3cm2/VS および2.0×10-3cm2/VS であった。
このように、作製したトランジスタは、素子間のバラツキが少なく、かつ、再現性良くトランジスタ特性が得られていることがわかる。
また、実施例1と実施例2から、再現性に優れ、かつ、溶媒種による特性のバラツキも少ない有機薄膜トランジスタが提供できることが明らかとなった。
【0064】
(実施例3)
実施例1において、上記重合体2の1.0質量%のTHF/パラキシレン=8/2の混合溶媒からなる溶液を用いてスピンコートした以外は、実施例1と同様にして、2つの有機薄膜トランジスタを作製した。
このデバイスのトランジスタ特性の測定結果を図3に示す。
このように作製した有機薄膜トランジスタの特性である電界効果移動度を測定したところ、4.2×10-4cm2/VS および4.3×10-4cm2/VS であった。
このように、作製したトランジスタは、素子間のバラツキが少なく、かつ、再現性良くトランジスタ特性が得られていることがわかる。
【0065】
(実施例4)
実施例1において、上記重合体2の1.0質量%トルエン溶液を用いてスピンコートした以外は、実施例1と同様にして、2つの有機薄膜トランジスタを作製した。
このように作製した有機薄膜トランジスタの特性である電界効果移動度を測定したところ、4.3×10-4cm2/VS および4.1×10-4cm2/VS であった。
このように、作製したトランジスタは、素子間のバラツキが少なく、かつ、再現性良くトランジスタ特性が得られていることがわかる。
また、実施例3と実施例4から、再現性に優れ、かつ、溶媒種による特性のバラツキも少ない有機薄膜トランジスタが提供できることが明らかとなった。
【0066】
(実施例5)
実施例1において、上記重合体3の1.0質量%のTHF/パラキシレン=8/2の混合溶媒からなる溶液を用いてスピンコートした以外は、実施例1と同様にして、2つの有機薄膜トランジスタを作製した。
このデバイスのトランジスタ特性の測定結果を図4に示す。
このように作製した有機薄膜トランジスタの特性である電界効果移動度を測定したところ、1.8×10-4cm2/VS および1.3×10-4cm2/VS であった。
このように、作製したトランジスタは、素子間のバラツキが少なく、かつ、再現性良くトランジスタ特性が得られていることがわかる。
【0067】
(実施例6)
実施例1において、上記重合体3の1.0質量%トルエン溶液を用いてスピンコートした以外は、実施例1と同様にして、2つの有機薄膜トランジスタを作製した。
このように作製した有機薄膜トランジスタの特性である電界効果移動度を測定したところ、1.4×10-4cm2/VS および1.7×10-4cm2/VS であった。
このように、作製したトランジスタは、素子間のバラツキが少なく、かつ、再現性良くトランジスタ特性が得られていることがわかる。
また、実施例5と実施例6から、再現性に優れ、かつ、溶媒種による特性のバラツキも少ない有機薄膜トランジスタが提供できることが明らかとなった。
【0068】
(比較例1)
実施例1において、SiO2 絶縁膜上に、9,9−ジオクチルフルオレンとビチオフェンとの共重合体の0.5質量%キシレン溶液をスピンコートして成膜した以外は実施例1と同様にして有機薄膜トランジスタを作製した。
この有機薄膜トランジスタの電界効果移動度は、5.1×10-4cm2/VS 、1.6×10-3cm2/VS であった。
【0069】
(比較例2)
実施例1において、SiO2 絶縁膜上に、9,9−ジオクチルフルオレンとビチオフェンとの共重合体の0.5質量%テトラヒドロフラン溶液をスピンコートして成膜した以外は実施例1と同様にして有機薄膜トランジスタを作製した。
この有機薄膜トランジスタの電界効果移動度は、1.3×10-4cm2/VS 、5.2×10-4cm2/VS であった。
【0070】
(実施例7)
実施例1において、上記重合体3−2の1.0wt%のTHF/パラキシレン=8/2の混合溶媒からなる溶液を用いてスピンコートし、ソース電極およびドレイン電極のチャネル長を50μm、チャネル幅を9mmとした以外は、実施例1と同様にして、2つの有機薄膜トランジスタを作製した。
このデバイスのトランジスタ特性の測定結果を図5に示す。
このように作製した有機薄膜トランジスタの特性である電界効果移動度を測定したところ、2.0×10-4cm2/VS および1.8×10-4cm2/VS であった。
このように、作製したトランジスタは、素子間のバラツキが少なく、かつ、再現性良くトランジスタ特性が得られていることがわかる。
【0071】
(実施例8)
実施例1において、上記重合体3−2の1.0wt%トルエン溶液を用いてスピンコートし、ソース電極およびドレイン電極のチャネル長を50μm、チャネル幅を9mmとした以外は、実施例1と同様にして、2つの有機薄膜トランジスタを作製した。
このように作製した有機薄膜トランジスタの特性である電界効果移動度を測定したところ、1.8×10-4cm2/VS および1.9×10-4cm2/VS であった。
このように、作製したトランジスタは、素子間のバラツキが少なく、かつ、再現性良くトランジスタ特性が得られていることがわかる。
また、実施例7と実施例8から、再現性に優れ、かつ、溶媒種による特性のバラツキも少ない有機薄膜トランジスタが提供できることが明らかとなった。
【0072】
(実施例9)
実施例1において、上記重合体4の1.0wt%のTHF/ラキシレン=8/2の混合溶媒からなる溶液を用いてスピンコートし、ソース電極およびドレイン電極のチャネル長を50μm、チャネル幅を9mmとした以外は、実施例1と同様にして、2つの有機薄膜トランジスタを作製した。
このデバイスのトランジスタ特性の測定結果を図6に示す。
このように作製した有機薄膜トランジスタの特性である電界効果移動度を測定したところ、6.1×10-4cm2/VS および6.7×10-4cm2/VS であった。
このように、作製したトランジスタは、素子間のバラツキが少なく、かつ、再現性良くトランジスタ特性が得られていることがわかる。
【0073】
(実施例10)
実施例1において、上記重合体4の1.0wt%トルエン溶液を用いてスピンコートし、ソース電極およびドレイン電極のチャネル長を50μm、チャネル幅を9mmとした以外は、実施例1と同様にして、2つの有機薄膜トランジスタを作製した。
このように作製した有機薄膜トランジスタの特性である電界効果移動度を測定したところ、6.2×10-4cm2/VS および6.4×10-4cm2/VS であった。
このように、作製したトランジスタは、素子間のバラツキが少なく、かつ、再現性良くトランジスタ特性が得られていることがわかる。
また、実施例9と実施例10から、再現性に優れ、かつ、溶媒種による特性のバラツキも少ない有機薄膜トランジスタが提供できることが明らかとなった。
【0074】
(実施例11)
実施例1において、上記重合体5の1.0wt%のTHF/パラキシレン=8/2の混合溶媒からなる溶液を用いてスピンコートした以外は、実施例1と同様にして、2つの有機薄膜トランジスタを作製した。
このデバイスのトランジスタ特性の測定結果を図7に示す。
このように作製した有機薄膜トランジスタの特性である電界効果移動度を測定したところ、3.9×10-5cm2/VS および4.2×10-5cm2/VS であった。
このように、作製したトランジスタは、素子間のバラツキが少なく、かつ、再現性良くトランジスタ特性が得られていることがわかる。
【0075】
(実施例12)
実施例1において、上記重合体5の1.0wt%トルエン溶液を用いてスピンコートした以外は、実施例1と同様にして、2つの有機薄膜トランジスタを作製した。
このように作製した有機薄膜トランジスタの特性である電界効果移動度を測定したところ、4.0×10-5cm2/VS および3.8×10-5cm2/VS であった。
このように、作製したトランジスタは、素子間のバラツキが少なく、かつ、再現性良くトランジスタ特性が得られていることがわかる。
また、実施例11と実施例12から、再現性に優れ、かつ、溶媒種による特性のバラツキも少ない有機薄膜トランジスタが提供できることが明らかとなった。
【0076】
(実施例13)
実施例1において、上記重合体6の1.0wt%のTHF/パラキシレン=8/2の混合溶媒からなる溶液を用いてスピンコートした以外は、実施例1と同様にして、2つの有機薄膜トランジスタを作製した。
このデバイスのトランジスタ特性の測定結果を図8に示す。
このように作製した有機薄膜トランジスタの特性である電界効果移動度を測定したところ、9.3×10-5cm2/VS および8.7×10-5cm2/VS であった。
このように、作製したトランジスタは、素子間のバラツキが少なく、かつ、再現性良くトランジスタ特性が得られていることがわかる。
【0077】
(実施例14)
実施例1において、上記重合体6の1.0wt%トルエン溶液を用いてスピンコートした以外は、実施例1と同様にして、2つの有機薄膜トランジスタを作製した。
このように作製した有機薄膜トランジスタの特性である電界効果移動度を測定したところ、8.5×10-5cm2/VS および8.8×10-5cm2/VS であった。
このように、作製したトランジスタは、素子間のバラツキが少なく、かつ、再現性良くトランジスタ特性が得られていることがわかる。
また、実施例13と実施例14から、再現性に優れ、かつ、溶媒種による特性のバラツキも少ない有機薄膜トランジスタが提供できることが明らかとなった。
【0078】
以上の結果から、9,9−ジオクチルフルオレンとビチオフェンとの共重合体は、トランジスタ特性がバラツキを示すのに対し、本発明の高分子有機半導体を用いた有機薄膜トランジスタは、再現性が高く、溶媒種による影響が少ないことがわかる。
すなわち、簡便な製造プロセスでバラツキが少なく、特性の再現性の高い有機薄膜トランジスタを提供できることが明らかになった。
【0079】
本発明によれば、塗工や印刷等の簡便なプロセスで製造でき、再現性の良い特性が得られる有機薄膜トランジスタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】(A)〜(D)は本発明に係わる有機薄膜トランジスタの概略構造を示す図である。
【図2】実施例1で作製したデバイスのトランジスタ特性の測定結果を示す図である。
【図3】実施例3で作製したデバイスのトランジスタ特性の測定結果を示す図である。
【図4】実施例5で作製したデバイスのトランジスタ特性の測定結果を示す図である。
【図5】実施例7で作製したデバイスのトランジスタ特性の測定結果を示す図である。
【図6】実施例9で作製したデバイスのトランジスタ特性の測定結果を示す図である。
【図7】実施例11で作製したデバイスのトランジスタ特性の測定結果を示す図である。
【図8】実施例13で作製したデバイスのトランジスタ特性の測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0081】
1 有機半導体層
2 ソース電極
3 ドレイン電極
4 ゲート電極
5 ゲート絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機半導体層を具備する有機薄膜トランジスタにおいて、前記有機半導体層が下記一般式(I)で示される繰り返し単位を有する重合体を主成分とすることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
【化1】


(式中、Ar、Ar3、Ar4 は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基の2価基であり、Ar2 は置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表す。R1、R2 は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、または置換もしくは無置換のアルキルチオ基から選択された基を表し、xおよびyは、それぞれ独立に、0から2までの整数を表し、nは0または1の整数を表す。)
【請求項2】
前記有機半導体層が、下記一般式(II)で示される繰り返し単位を有する重合体を主成分とすることを特徴とする請求項1記載の有機薄膜トランジスタ。
【化2】


(式中、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基の2価基であり、Ar2 は置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表す。R1、R2、R3、R4 は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、または置換もしくは無置換のアルキルチオ基から選択された基を表し、xおよびyは、それぞれ独立に、0から2までの整数を表し、zおよびuは、それぞれ独立に、0から4までの整数を表し、nは0または1の整数を表す。)
【請求項3】
前記有機半導体層が、下記一般式(III)で示される繰り返し単位を有する重合体を主成分とすることを特徴とする請求項1記載の有機薄膜トランジスタ。
【化3】


(式中、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基の2価基であり、R1、R2、R3、R4、R5 は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、または置換もしくは無置換のアルキルチオ基から選択された基を表し、xおよびyは、それぞれ独立に、0から2までの整数を表し、zおよびuは、それぞれ独立に、0から4までの整数を表し、vは0から5までの整数を表し、nは0または1の整数を表す。)
【請求項4】
前記有機薄膜トランジスタが、前記有機半導体層と、この有機半導体層を通じて電流を流すための対をなす電極を設けてなる構造体と、第三の電極とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項5】
前記第三の電極は、前記構造体に絶縁膜を介して設けたことを特徴とする請求項4記載の有機薄膜トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−273937(P2007−273937A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209826(P2006−209826)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】