説明

植物乾燥室及び植物の乾燥方法

【課題】植物の変色及び有効成分の破壊を防止することができる植物乾燥室及び植物の乾燥方法を提供する。
【解決手段】床11、側壁12、及び天井13により囲まれた室内14を備え、少なくとも床11及び側壁12には、遠赤外線を放射する多孔質の石盤15が配設されている。室内14には、加熱部16Aと、遠赤外線を放射する石塊16Bとを有する加熱器16が配置され、側壁12には、室内14の水分を外に排出する排出口17が開閉可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物を乾燥させる植物乾燥室及びそれを用いた植物の乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物の乾燥は熱風により行われていた(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、熱風により乾燥させると、植物の色が変色したり、植物の有効成分が壊れてしまう場合があった。そこで、植物の変色及び有効成分の破壊を防止することができる乾燥方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願平8−149969号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、植物の変色及び有効成分の破壊を防止することができる植物乾燥室及び植物の乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の植物乾燥室は、植物を乾燥させるものであって、少なくとも床及び側壁には、遠赤外線を放射する多孔質の石盤が配設され、室内には、加熱部と、遠赤外線を放射する石塊とを有する加熱器が配置され、室内の水分を外部に排出するための排出口を有し、この排出口は開閉可能とされ、解放することにより水分を外部に排出し、閉鎖することにより室内を密閉することができるものである。
【0006】
本発明の植物の乾燥方法は、植物乾燥室において植物を乾燥させるものであって、植物乾燥室には、室内の水分を外部に排出するための排出口を開閉可能に設けると共に、少なくとも床及び側壁に遠赤外線を放射する多孔質の石盤を配設し、室内には、加熱器と乾燥対処物である植物とを配置し、加熱器には、加熱部と、遠赤外線を放射する石塊とを有するものを用い、排出口を閉鎖して室内を密閉し、加熱器を加熱して植物を加熱したのち、排出口を解放し、解放した状態で加熱器を加熱して植物を加熱し乾燥させるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、少なくとも床及び側壁に遠赤外線を放射する多孔質の石盤を配設するようにしたので、植物に遠赤外線をむらなく照射することができると共に、植物から放出された水分を吸収することができる。また、遠赤外線を放射する石塊を有する加熱器を配置するようにしたので、よりむらなく遠赤外線を照射することができる。更に、排出口を開閉可能に設けるようにしたので、閉鎖して加熱することにより、植物から発生する水分により蒸した状態とすることができ、また、植物を急速に乾燥させることができる。よって、植物の変色及び有効成分の破壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態に係る植物乾燥室の構成を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施の形態に係る植物乾燥室10の構成を表すものである。この植物乾燥室10は、植物を乾燥させるものであり、枝葉、葉野菜、果実又はホップ(学名:Humulus lupulus)の毬果等、植物本来の色彩及び有効成分を変化させずに乾燥させたい場合に適している。
【0011】
この植物乾燥室10は、床11、側壁12、及び天井13により囲まれた室内14を有している。このうち少なくとも床11及び側壁12には、遠赤外線を放射する多孔質の溶岩石等よりなる石盤15が配設されている。遠赤外線により乾燥対象物である植物をむらなく乾燥させることができると共に、多孔質の溶岩石等を用いることにより、植物から放出された水分を吸収することができるからである。石盤15は、少なくとも床11及び側壁12の全面に張りつめられていることが好ましい。より高い効果を得ることができるからである。
【0012】
室内14には、床11のほぼ中央部に、加熱器16が配置されている。加熱器16は、加熱部16Aと、遠赤外線を放射する石塊16Bとを有しており、よりむらなく遠赤外線を照射することができるように構成されている。加熱部16Aは、例えば、電気式のものが取り扱いを容易とすることができるので好ましい。石塊16Bは、例えば、香花石により構成される。
【0013】
植物乾燥室10には、また、室内の水分を外部に排出するための排出口17A,17Bが開閉可能に設けられており、排出口17A,17Bを開放することにより室内14の水分を外部に排出し、閉鎖することにより室内14を密閉することができるようになっている。排出口17A,17Bを閉鎖して加熱することにより、植物から発生する水分により蒸した状態とすることができ、また、植物を急速に乾燥させることができるからである。排出口17Aは、例えば、側壁12に対して設けられており、室内14に乾燥対象物である植物を出し入れする際の出入口としての機能を兼ね備えていてもよい。
【0014】
排出口17Bは、例えば、側壁12の上方又は天井13に設けることが好ましい。排出口17Bの室内14の側には、例えば、エアサーキュレータ18を配設するようにしてもよく、排出口17Bの外側には、例えば、ダクト18Aを設けるようにしてもよい。また、側壁12には、例えば、室内14に空気を挿入するための挿入口19を開閉可能に設けることが好ましい。挿入口19から空気を挿入しながら、排出口17Bから水分を排出するようにすれば、水分を早く排出することができるからである。
【0015】
室内14の温度は、例えば、60℃から95℃の範囲内に設定されることが好ましい。この範囲内において、変色及び有効成分の破壊をより防止することができるからである。また、室内14には、例えば、乾燥対象物である植物を載置する棚20が配置される。棚20は、例えば、間隔を開けて網を複数重ねた多段式とし、移動可能とされることが好ましい。
【0016】
この植物乾燥室10を用い、例えば、次のようにして乾燥対象物である植物を乾燥させる。まず、例えば、棚20に乾燥対象物である植物を載せ、植物乾燥室10の室内14に配置する。次いで、例えば、排出口17A,17B及び挿入口19を閉鎖して室内14を密閉し、加熱部16Aを加熱して、室内14の温度を60℃から95℃とする(閉鎖加熱)。これにより、石塊16B及び石盤15から遠赤外線が放射され、植物に照射されることにより、植物がむらなく加熱される。また、室内14の湿度は、植物から放出された水分により高くなり、蒸した状態となる。その際、排出口17A,17Bは連続的に閉鎖してもよく、また、間欠的に開放して換気しながら閉鎖するようにしてもよい。
【0017】
この閉鎖加熱を一定時間、例えば、30分から8時間程度行ったのち、排出口17Bを開け、室内14の水分を外部に排出しながら、加熱器16により加熱を続ける(開放加熱)。その際、例えば、挿入口19を開け、送風機により空気を室内14に挿入するようにすることが好ましい。室内14の温度は、例えば、80℃から95℃とする。加熱時間は、例えば、1時間から5時間程度とすることが好ましい。これにより、植物が急速に乾燥する。なお、乾燥は、植物の乾燥後の重さが乾燥前の重さの20質量%から30質量%程度となるまで行うことが好ましく、また、水分率が2質量%から7質量%程度、更には2質量%から5質量%程度となるまで行うことが好ましい。
【0018】
このように本実施の形態によれば、少なくとも床11及び側壁12に遠赤外線を放射する多孔質の石盤15を配設するようにしたので、植物に遠赤外線をむらなく照射することができると共に、植物から放出された水分を吸収することができる。また、遠赤外線を放射する石塊16Bを有する加熱器16を配置するようにしたので、よりむらなく遠赤外線を照射することができる。更に、排出口17A,17Bを開閉可能に設けるようにしたので、閉鎖して加熱することにより、植物から発生する水分により蒸した状態とすることができ、また、植物を急速に乾燥させることができる。よって、植物の変色及び有効成分の破壊を防止することができる。
【実施例】
【0019】
(実施例1)
上述した植物乾燥室10を用いてホップの葉を乾燥させた。植物乾燥室10の床11及び側壁12の全面には、遠赤外線を放射する多孔質の溶岩石よりなる石盤15を配設した。床11のほぼ中央部には、加熱部16Aの上に香花石よりなる石塊16Bを載置した加熱器16を配置し、側壁12には、排出口17A,17B及び挿入口19を開閉可能に設け、排出口17Bの室内14の側にはエアサーキュレータ18を設けた。また、ホップの葉は、網を5段に重ねた多段式の棚20の上に載せ、室内14に配置した。
【0020】
次いで、排出口17A,17B及び挿入口19を閉鎖して室内14を密閉し、加熱器16により室内14の温度を60℃以上95℃以下とし、約1時間加熱した(閉鎖加熱)。なお、この閉鎖加熱では、排出口17A,17Bを間欠的に開放し、一時的に換気をした。続いて、排出口17B及び挿入口19を開け、挿入口19から空気を挿入し、排出口17Bから室内14の水分を外に排出しながら、加熱器16により室内14の温度を80℃以上95℃以下とし、約3時間加熱した(開放加熱)。これにより、ホップの葉の乾燥体を得た。なお、ホップの葉の乾燥前の重さは60kgであったが、乾燥後は15kgであり、乾燥体の水分率は3.0質量%から5.0質量%であった。また、乾燥体は、ホップの葉本来の鮮やかな緑色であり、ホップの葉の風味も生きていた。
【0021】
(比較例1−1)
上述した植物乾燥室10を用いず、熱風によりホップの葉を乾燥させた。その結果、乾燥にむらができ、色が茶色に変色してしまった。また、風味も低下してしまった。
【0022】
(比較例1−2)
上述した植物乾燥室10を用い、室内14を密閉せずに、排出口17A,17Bを開けた状態で加熱乾燥させた。その結果、乾燥に長時間を要し、むらがでてしまい、加熱器16近くのホップの葉が変色してしまった。
【0023】
(実施例2)
実施例1と同様の植物乾燥室10を用いて、りんごのジュースを搾った残りの固形物を乾燥させた。まず、りんごのジュースを絞った残りの固形物を多段式の棚20の上に載せ、室内14に配置した。次いで、排出口17A,17B及び挿入口19を閉鎖して室内14を密閉し、加熱器16により室内14の温度を70℃以上95℃以下とし、約6時間加熱した(閉鎖加熱)。なお、この閉鎖加熱では、排出口17A,17Bを間欠的に開放し、時折換気をした。続いて、排出口17B及び挿入口19を開け、挿入口19から空気を挿入し、排出口17Bから室内14の水分を外に排出しながら、加熱器16により室内14の温度を85℃以上95℃以下とし、約3時間加熱した(開放加熱)。これにより、乾燥体を得た。なお、りんごのジュースを絞った残りの固形物の乾燥前の重さは180kgであったが、乾燥後は45kgであり、乾燥体の水分率は3.5質量%であった。また、乾燥体は、きれいな黄金色であり、りんごの風味も生きていた。
【0024】
以上、実施の形態及び実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
植物の乾燥に用いることができる。
【符号の説明】
【0026】
10…植物乾燥室、11…床、12…側壁、13…天井、14…室内、15…石盤、16…加熱器、16A…加熱部、16B…石塊、17A,17B…排出口、18…エアサーキュレータ、18A…ダクト、19…挿入口、20…棚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を乾燥させる植物乾燥室であって、
少なくとも前記床及び側壁には、遠赤外線を放射する多孔質の石盤が配設され、
室内には、加熱部と、遠赤外線を放射する石塊とを有する加熱器が配置され、
室内の水分を外部に排出するための排出口を有し、この排出口は開閉可能とされ、解放することにより水分を外部に排出し、閉鎖することにより室内を密閉することができる
ことを特徴とする植物乾燥室。
【請求項2】
植物乾燥室において植物を乾燥させる方法であって、
植物乾燥室には、室内の水分を外部に排出するための排出口を開閉可能に設けると共に、少なくとも前記床及び側壁に遠赤外線を放射する多孔質の石盤を配設し、
室内には、加熱器と乾燥対処物である植物とを配置し、
前記加熱器には、加熱部と、遠赤外線を放射する石塊とを有するものを用い、
前記排出口を連続的に閉鎖又は間欠的に開放しながら閉鎖し、前記加熱器を加熱して前記植物を加熱したのち、前記排出口を解放し、解放した状態で前記加熱器を加熱して前記植物を加熱し乾燥させる
ことを特徴とする植物の乾燥方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−111069(P2013−111069A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263326(P2011−263326)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(508255171)株式会社大雄振興公社 (4)
【Fターム(参考)】