説明

検出装置、駆動装置

【課題】回転体の正確な回転角度の算出などに必要な処理量を削減する。
【解決手段】回転体の回転角度に応じて、それぞれの位相が異なる複数の正弦波信号を出力する検出手段と、前記複数の正弦波信号に基づいて、前記回転体の回転角度を算出する算出手段と、前記回転体の、基準となる回転角度を含む基準信号を出力する基準信号出力手段と、前記算出手段により算出された回転角度と、前記基準信号出力手段が出力した基準信号に含まれる回転角度とに基づいて、前記検出手段により出力された前記複数の正弦波信号の振幅が同一または略同一になるように調整する調整手段と、を有することを特徴とする検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石などを設けた回転体の回転角度の検出方法が様々提案されている。例えば、回転体の近傍に固定された磁気センサと、回転体と、を相対的に回転させる。そして、当該回転に応じて変化する、磁気センサからの出力信号に基づいて、回転体の回転速度を検出する。
【0003】
ところで、磁気センサからの出力信号には、出力ゲイン(振幅)の相違が存在する場合がある。このような出力信号の出力ゲインの相違が存在する場合には、検出される回転角度に誤差が生じるようになる。
【0004】
特許文献1記載の技術では、各相ごとに、出力信号をサンプリングして、当該サンプリングされたデータから標準偏差を算出する。そして、当該標準偏差の逆数を出力信号に乗算することで、振幅を規格化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1記載の技術では、各相ごとに正弦波信号の所定区間内を複数回サンプリングして、誤差算出などの処理を行なう必要があるため、処理量が多くなるという問題がある。
【0006】
本発明では、このような問題を鑑みて、回転体の正確な回転角度の算出などに必要な処理量を削減した検出装置、駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、回転体の回転角度に応じて、それぞれの位相が異なる複数の正弦波信号を出力する検出手段と、前記複数の正弦波信号に基づいて、前記回転体の回転角度を算出する算出手段と、前記回転体の、基準となる回転角度を含む基準信号を出力する基準信号出力手段と、前記算出手段により算出された回転角度と、前記基準信号出力手段が出力した基準信号に含まれる回転角度とに基づいて、前記検出手段により出力された前記複数の正弦波信号の振幅が同一または略同一になるように調整する調整手段と、を有することを特徴とする検出装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の検出装置、駆動装置であれば、回転体の正確な回転角度の算出などに必要な処理量を削減することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態の検出装置の機能構成例を示した図。
【図2】本実施形態の駆動アンプなどの機能構成例を示した図。
【図3】本実施形態の正弦波信号の一例を示した図。
【図4】本実施形態の振幅が同一の合成信号の一例を示した図。
【図5】本実施形態の振幅が異なる合成信号の一例を示した図。
【図6】本実施形態の逆正接角度の一例を示した図。
【図7】符号処理手段の処理の一例を示した図。
【図8】基準信号の一例を示した図。
【図9】データテーブルの一例を示した図。
【図10】回転体の回転角度と、検出誤差との対応を示した図。
【図11】振幅が同一の場合の差動信号の一例を示した図。
【図12】変換手段の処理内容を説明するための図。
【図13】本実施形態の供給手段の機能構成例を示した図。
【図14】本実施形態の上側アームの機能構成例を示した図。
【図15】本実施形態のコンパレータの処理内容を示す図。
【図16】変調手段からの出力信号の一例を示す図。
【図17】相状態とホール信号との対応を示す図。
【図18】相状態と出力する信号の対応を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の各実施形態において、機能構成例、処理フローの説明では、同じ処理については、同じ参照番号、同じステップ番号を付加し、重複説明を省略する。
<実施形態1>
図1に、本実施例の検出装置100とモータ101などの機能構成例を示す。また、図2に、図1記載の「差動アンプ116など」の機能構成例を示す。図1の例のモータ101は例えばブラシレスモータであり、固定子105、回転体(ロータ)106、N個のホール素子110を含む。Nは2以上の整数であり、図1の例では、N=3となる。図1の例では、固定子105には、3相の励磁コイル104U、104V、104Wが設けられている。
【0011】
供給手段102は、3相の励磁コイル104U、104V、104Wそれぞれに対して、交流電流iU、iV、iWを供給する。交流電流iU、iV、iWが供給されると、励磁コイル104U、104V、104Wそれぞれで磁界が発生される。
【0012】
図1の例では、モータ101の回転体106には、回転方向に沿って、永久磁石106aが多極着磁されている。図1の例では、N極とS極の4ペアの永久磁石106aが設けられている。そして、3相の励磁コイル104U、104V、104Wによる発生された磁界と、当該永久磁石106aの磁界との相互関係により、回転トルクが生じ、回転体106が回転する。
【0013】
3個のホール素子110U、110V、110Wのそれぞれは、回転体106の回転角度に応じて、正弦波信号を出力する。正弦波信号とは、回転体106の回転角度(回転位置)を示す信号であり、正弦波形状である。これら3個の正弦波信号それぞれの位相は異なる。
【0014】
図1の例では、3個のホール素子110U、110V、110Wは、着磁位相基準で互いに120度ずつずらして、配置される。これにより、3個のホール素子110U、110V、110Wは、位相がそれぞれ120度ずつ異なる3相の正弦波信号(正弦波形状の電圧)である差動信号HU+、HU−、HV+、HV−、HW+、HW−を出力する。図1の例では、回転体106に着磁極数は4ペアなので、回転体106が1回転すると、正弦波信号HU、HV、HWは4周期分出力される。
【0015】
図1の例では、ホール素子110Uから出力された差動信号HU+、HU−は、差動アンプ116(図2参照)に入力される。また、ホール素子110Vから出力された差動信号HV+、HV−は、差動アンプ116に入力される。また、ホール素子110Wから出力された差動信号HW+、HW−は、コンパレータ112に入力される。図1の他の手段については後述する。
【0016】
次に、図2について説明する。差動アンプ116は、U相用のU相差動アンプ116Uと、V相用の差動アンプ116Vと、が含まれている。U相差動アンプ116Uは、U相の差動信号HU+、HU−をシングルエンド化することにより、アナログホール信号HAUとして出力する。同様に、V相用の差動アンプ116Vは、V相の差動信号HV+、HV−をシングルエンド化することにより、アナログホール信号HAVを出力する。
【0017】
図3に、アナログホール信号の一例を示す。なお、図3には、W相の差動信号HW+、HW−をシングルエンド化したアナログホール信号HAWも記載するが、この例では実際には、差動アンプ116ではアナログホール信号HAWは生成されておらず、参考のために記載している。ホール素子110U、110V、110Wはそれぞれ、図3記載のように、位相差がそれぞれ120度ずつずれるように配置され、回転角度θに対して正弦波状に変化する信号を出力する。なお、図1の例では、回転体106に着磁極数は4ペアなので、回転角度θは回転子の1/4回転を360°で示すものとする。また、図3記載のアナログホール信号HAU、HAV、HAWの振幅値をそれぞれAu、Av、Awとする。そうすると、Av=2となり、Au=Aw=1となり、Av>Au、Awとなる。図3記載のアナログホール信号HAU、HAV、HAWの式を以下の式(1)〜(3)に示す。
【0018】
【数1】

そして、以降の処理で、アナログホール信号HAU、HAVの各振幅Au、Avを同一または略同一になるようにフィードバック処理を行なう。
【0019】
変換手段118は、減算アンプ(減算手段)1182と、加算アンプ(加算手段)1184と、を含む。減算アンプ(減算手段)1182は以下の式(4)の左辺を演算し、加算アンプ(加算手段)1184は以下の式(5)の左辺を演算する。
【0020】
【数2】

ただし、上記式(4)(5)では、以降の処理によるフィードバック制御が反映されること(つまり、回転体106を回転させ始めた時から所定時間を経過した場合)により、Au=Avとなる場合を示す。
【0021】
また、変換手段118は、U相とV相との軸変換を行なったことから、X相、Y相の信号Vx、Vyを出力する。図4にフィードバック制御が反映されることにより、Au=Avとなる場合のVx、Vyの一例を示す。図4に示すように、信号Vx、Vyは、それぞれ互いに90度の位相差をもつ正弦波信号である。このように、正確に90度の位相差を持つ正弦波信号であれば、後述する検出手段122により、正確な回転体106の回転角度θdを検出することが出来る。
【0022】
また、図5に、フィードバック制御が反映される前(つまり、回転体106が回転し始めた場合)、つまり、Av>Auの場合のVx、Vyの一例を示す。図5に示すように、振幅値が異なることから、正確に、90度の位相差を持つ正弦波信号を生成することが出来ない。また、信号Vx、Vyをそれぞれ合成信号という。変換手段118の詳細については後述する。
【0023】
合成信号Vx、Vyはそれぞれアナログデジタル変換手段120に入力される。そしてアナログデジタル変換手段120(以下、「AD変換手段120」という。)は、合成信号Vx、Vyをアナログ値からデジタル値に変換する。図2の例では、AD変換手段120は、x相用のAD変換手段120xと、y相用のAD変換手段120yと、を含む。そして、AD変換手段120xは、合成信号Vxに対してデジタル変換処理を行なう。また、AD変換手段120yが、合成信号Vyに対してデジタル変換処理を行なう。
【0024】
また、図2では、x相用のAD変換手段120xと、y相用のAD変換手段120yと、を設けたが、1つのAD変換手段を合成信号Vx、合成信号Vyに対して、時分割で使用するようにしてもよい。
【0025】
デジタル値に変換された合成信号Vxd、Vydは、算出手段122に入力される。算出手段122は、合成信号Vxd、Vydに基づいて、回転体106の回転角度を算出する。図2の例では、算出手段122は、除算手段1222、逆正接手段1224、符号処理手段1226と、を含む。
【0026】
除算手段1222は、合成信号Vydを合成信号Vxdで除算し、除算結果を出力する。次に、逆正接手段1224は、当該出力された除算結果に対して逆正接を行なう。つまり、除算手段1222、逆正接手段1224による演算は以下の式(6)となる。
θp=arctan(Vy/Vx) (6)
ただし、θpは、逆正接手段1224の出力結果であり、以下では、逆正接角度θpという。図6に回転角度θと逆正接角度θpとの関係を示す。
【0027】
逆正接角度θpは符号処理手段1226に入力される。図7に、符号化処理手段1226の処理の一例を示す。符号化処理手段1226は、図7に示す処理を行なうことで回転体106の回転角度を検出する。
【0028】
図7の例では、逆正接角度θpを90度単位で処理する。図7では、例えば、0<逆正接角度θp≦90度の場合であり、合成信号Vxの符号が+の場合であり、かつ、合成信号Vyの符号が−の場合である場合には、符号処理手段1226は、回転体106の検出角度θdとしてθpを出力する。また、他の条件の場合については、図7に示す通りである。
【0029】
なお、回転体106を回転させ始めたときには、フィードバック制御が反映されていないことから、正弦波信号の振幅の相違(図3や図5参照)による誤差が、検出された回転角度θdに含まれている。また、フィードバック制御が反映されると、検出される回転角度θdには、誤差が含まれなくなる。
【0030】
なお、AD変換手段120を、変換手段118と検出手段122の間に設けずに、除算手段1222と、逆正接手段1224の間に設けるようにしてもよい。この場合には、AD変換手段120は、除算手段1222のアナログ結果をデジタル変換して、逆正接手段1224に入力させるようにしてもよい。
【0031】
符号処理手段1226により出力された回転角度(検出角度)θdは、例えば、制御装置300(図1参照)に入力される。制御装置300は、入力された回転角度θdを用いて、モータ101の位置制御などを行なう。また、回転角度θdは、調整手段124にも入力される。調整手段124は、比較手段1242と、ゲイン決定手段1246と、ゲイン乗算手段1248とを含む。
【0032】
また、基準信号出力手段125から、基準信号が出力され、比較手段1242に入力される。ここで、基準信号出力手段125とは、ホール素子110Wとコンパレータ112を含む。ホール素子110Wは、差動信号HW+、HW−をコンパレータ112に出力する。また、基準信号出力手段125は、同期センサともいう。
【0033】
コンパレータ112は、差動信号HW+、HW−同士を大小比較して、2値化信号である基準信号θhwを出力する。例えば、基準信号θhwは、HU+≧HU−となる区間ではハイ状態とし、HU+<HU−となる区間ではロー状態とする。
【0034】
図8に、基準信号θhwの一例を示す。図8の横軸は、回転体106の回転角度θである。図8に示す基準信号θhwでは、θ=0度〜180の場合には、ロー状態(値が0)となり、θ=180度〜360度の場合には、ハイ状態(値が1)となる。
【0035】
また、基準信号生成手段125は、ホール素子110Wおよびコンパレータ112とは別個に設けるようにしてもよい。
【0036】
そして、比較手段1242は、基準信号θhwと、検出角度θdと、を比較して、その比較結果である検出誤差Δθを出力する。ここで、比較手段1242の比較とは、基準信号θhwに含まれる、回転体106の回転角度から、検出角度θdを減算することである。
【0037】
更に詳細には、回転体106の回転角度が、基準信号θhwの立ち上がりエッジになる角度θ(以下、立ち上がり角度θという。)になる度に、以下の式(7)の演算を行なうことである。また、回転体106の回転角度が、基準信号θhwの立ち下がりエッジになる角度θ(以下、立ち下がり角度θという。)になる度に、以下の式(8)の演算を行なうことである。
Δθ=θ−θd (7)
Δθ=θ−θd (8)
図8の例では、立ち上がり角度θ=180度となり、立ち下がり角度θ=0度となる。
【0038】
このように、基準信号θhwには、予め定められた所定角度(基準となる回転角度であり、上記例では、0度と180度)が含まれている。そして、基準信号出力手段125であるホール素子110Wからの出力信号が2値化された場合に、当該基準となる回転角度で立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジになるように、ホール素子110W、およびホール素子110U、110Vを配置させる。
【0039】
また、基準信号に含まれる回転角度θ、θは、算出手段122で算出された回転角度θdよりも低分解能に示されている。
【0040】
また、その他の例として、回転体106の回転角度が、立ち上がり角度θまたは立ち下がり角度θのうちどちらか一方になった時に、比較手段1242は、検出誤差Δθを算出するようにしてもよい。このようにすることで演算量を削減することが出来る。
【0041】
検出誤差Δθは、ゲイン決定手段1246に入力される。ゲイン決定手段1246は、入力された検出誤差Δθに基づいて、ゲインKを決定する。ここで、ゲイン決定手段1246は、予め記憶手段1247に記憶されたデータテーブルに基づいて、ゲインKを決定する。
【0042】
図9に、データテーブルの一例を示す。図9の例では、縦軸がゲインKを示し、横軸が検出誤差Δθを示す。ゲイン決定手段1246は、当該データテーブルを参照して、検出誤差Δθに対応するゲインKを決定する。
【0043】
次に、図9に示すデータテーブルの作成手法について説明する。ホール素子110U、ホール素子110Vからのアナログホール信号(差動アンプ116からの出力信号)HAU、HAVの振幅Au、Avに差がある場合には、例えば、図3のようになる。図3の例では、振幅比Au/Av=0.5となる。
【0044】
また、図3記載の、変換手段118による軸変換処理後のアナログホール信号HAU、HAVは、図5に示す信号となる。また、仮に、振幅Au=Avとなる場合のアナログホール信号HAU、HAVは、図4に示す信号となる。図4と図5の波形の差異が、回転角度の検出誤差Δθが生じる原因となる。
【0045】
アナログホール信号HAU、HAVが図5のときの検出誤差は、図10に示すように、回転角度θに対して、1/2周期で変化することが、解析計算により算出することが出来る。そして、検出誤差Δθを演算するタイミングを回転体106の回転角度が所定角度(この例では、0度、180度)と定めていることから、振幅比Au/Av=0.5の場合には、検出誤差は、30度となる。
【0046】
そして、振幅比を様々変えて、定めた振幅比ごとに、検出誤差を求める。そして、複数の振幅比と、当該複数の振幅比についての検出誤差を対応させて、プロットする。なお、図9の例では、ゲインKは、振幅比の逆数としているが、ゲインKを振幅比としてもよい。また、図9記載のデータテーブルは、ホール素子110U、110Vの配置位相差により変化する。従って、データテーブルを作成作業は、実際に実施する検出装置100のホール素子110U、110Vの配置位相差と同一の状況下で行なう。
【0047】
説明を図2に戻す。ゲイン決定手段1246により決定されたゲインKは、ゲイン乗算手段1248に入力される。また、信号出力手段126は、ホール素子110Uを駆動させる駆動信号(駆動電圧)HUdをゲイン乗算手段1248及びホール素子110Uに対して出力している。ホール素子110Uは、当該駆動信号HUdにより駆動している。
【0048】
ゲイン乗算手段1248は、入力された駆動信号HUdに対して、入力されたゲインK(ゲイン決定手段1246により決定されたゲインK)を乗算して、駆動信号HVdを出力する。ここで、駆動信号HVdとは、ホール素子110Vを駆動するための信号である。このように、駆動信号HVdは、検出誤差を解消するためのゲインKが駆動号HUdに乗算されていることから、アナログホール信号HAU、HAVの振幅Au、Avとの振幅を同一または略同一にすることが出来る。
【0049】
また、駆動信号HVdにゲインKを乗算する構成とせずに、差動アンプ116や変換手段118からの出力信号に対してゲインKを乗算する構成としても良い。
【0050】
このように調整手段124は、算出手段122により算出された回転角度θdと、基準信号出力手段124が出力した基準信号HAWに含まれる回転角度θhw(上記例では、90度と180度)とに基づいて、ホール素子110U、110Vにより出力された複数の正弦波信号の振幅比を調整する。
【0051】
図11にHAU、HAVの振幅が同一になった場合を示す。このようにフィードバック制御が反映されると、図11に示すように、HAU、HAVの振幅が同一となる。また、上述したように、HAU、HAVが図11になった場合の変換手段118からの出力信号は図4のようになる。なお、図11には、HAWの波形も示す。
【0052】
次に、図12を用いて変換手段118の軸変換処理(式(4)(5))の意味を説明する。図12に示すように、直交するXY平面上に、Y軸に対して+60度の方向にU軸を、−60度の方向にV軸をとる。U軸V軸上の長さ1の単位ベクトルU、Vを考えれば、ベクトル(U+V)がY軸上の単位ベクトルになり、ベクトル(U−V)は、X軸上の長さ31/2(ルート3)のベクトルになる。つまり、変換手段118は、120度の角をなすUV軸から90度の角をなすXY軸への座標変換を示している。そして、式(4)において、変換後の長さを等しくするために(HAU−HAV)には1/31/2を乗じることでVxを求めている。
【0053】
また、上述では、変換手段118は、それぞれの位相差が90度となる合成信号を出力すると説明したが、変換手段118に入力される複数の正弦波信号のうち少なくとも1つ(HAUまたは/およびHAV)と90度の位相差をもつ合成信号を、当該少なくとも1つの正弦波信号と共に出力するようにしてもよい。
【0054】
上記説明では、3つのホール素子110U、V、Wについて説明した。4つ以上のホール素子であっても、本実施例の発明は実施することが出来る。この場合には、基準信号出力手段125は、2つ以上のホール素子としてもよい。この場合には、当該2つ以上のホール素子それぞれからの出力信号をコンパレータ112に入力させ基準信号を生成する。
【0055】
この実施形態1の検出装置によれば、算出手段122からの回転角度θdと、基準信号(図2の例ではθhw)に含まれる回転角度に基づいて、調整手段124はホール素子110U、110Vの振幅を同一または略同一になるように調整する。
【0056】
従って、正弦波信号のサンプリングなどをする必要はなく、演算量を削減することが出来る。
【0057】
また、変換手段118を設けることが好ましい。変換手段118を設けることで、検出手段110U、110Vから出力される正弦波信号の位相差が90度でない場合でも、当該変換手段118から位相差が90度となる合成信号を出力することが出来る。従って、算出手段122は、正確な回転角度θdを求めることが出来る。
【0058】
また、基準信号出力手段125として、安価であり、モータ101に備えられているホール素子110Wを用いることが好ましい。そして、ホール信号110Wから出力された正弦波信号をコンパレータ112により2値化した信号を基準信号として用いるので、安価に検出装置100を製造することが出来る。
【0059】
また、検出手段110U、110Vとして、安価であり、モータ101に備えられているホール素子を用いることが好ましい。従って、安価に検出装置100を製造することが出来る。
[実施形態2]
実施形態2では、実施形態1で説明した検出装置100を含むモータ101の駆動装置を説明する。図13に、図1に示す供給手段102の詳細な機能構成例を示す。本実施形態2では、図1と図13を用いて説明する。
【0060】
図1、図13に示すように、コンパレータ112は、ホール素子110Uから出力される差動信号HU+およびHU−、ホール素子110Vから出力される差動信号HV+およびHV−、ホール素子110Wから出力される差動信号HW+およびHW−は全て、コンパレータ112に入力される。
【0061】
図14にコンパレータ112の2値手法について示す。コンパレータ112は、図14に示す処理を行なう。例えば、HU+≧HU−となる区間ではハイ状態であり、HU+<HU−となる区間ではロー状態となる。コンパレータ112により出力された2値化信号をホール信号HG(HU、HV、HW)として供給手段102に対して、出力する。
【0062】
また、図13の例では、供給手段102は、変調手段1022と、転流制御手段1024と、駆動転流手段1026と、を含む。図13に示すように、駆動転流手段1026は、U相用の上側アーム1028uとU相用の下側アーム1030uと、V相用の上側アーム1028vとU相用の下側アーム1030vと、W相用の上側アーム1028wと下側アーム1030wとを有する。上側アームが第1アームともいい、下側アームは第2アームともいう。
【0063】
U相用の上側アーム1028uとU相用の下側アーム1030uは、励磁コイル104uに接続されており、励磁コイル104uに電流を供給する。V相用の上側アーム1028vとU相用の下側アーム1030vは、励磁コイル104vに接続されており、励磁コイル104vに電流を供給する。W相用の上側アーム1028wとU相用の下側アーム1030wは、励磁コイル104wに接続されており、励磁コイル104wに電流を供給する。
【0064】
図15に、U、V、W相の上側アーム1028の機能構成例を示す。上側アーム1028は、電源Vccに接続されたスイッチング素子1032とダイオード1034が並列に接続されている。U、V、W相の下側アーム1030も同様の構成である。
【0065】
U、V、W相の上側アーム1028、下側アーム1030のスイッチング素子1032は、ゲート信号UH、VH、Wh、UL、VL、WLにより切り換え駆動される。そして、U、V、W相の上側アーム1028、下側アーム1030は、相が対応するコイル端子103U、103V、103Wにパルス幅変調された電圧を印加することにより、相が対応する励磁コイル104u、104v、104wに電流を供給する。当該電流の供給により、回転体106を回転駆動させる。
【0066】
また、制御装置300は、駆動電圧指令値Vampを変調手段1022に対して出力する。図16に変調手段1022の動作原理を示す。図16の1段目に示す搬送波Vcは、所定のPWM周期の三角波であり、接地GNDから電源電圧Vccまでの振幅を持つ。搬送波VcのPWM周期をTpとする。変調手段1022は、0以上の値である振幅指令値Vampと、搬送波Vcを大小比較して、図16の2段目に示すPWM信号Xonを生成する。
【0067】
次に、図16の3段目に示すように、変調手段1022は、PWM信号Xonに対して時間tdだけ遅れた信号であるPWM相ゲート信号XHを生成する。また、図16の4段目に示すように、変調手段1022は、PWM信号Xonを反転し、立ち上がり(Xonでは立ち下がり部分)を時間tdの2倍だけ遅らせた信号であるPWM相ゲート信号XLを生成する。なお、時間tdは、上側アーム1028u、v、wと下側アーム1030u、v、wそれぞれのスイッチング素子1032(図15記載)の短絡防止を目的に設けられた短絡防止区間(デッドタイム)である。
【0068】
転流制御部81は、コンパレータ112から出力されたホール信号HG(HU、HV、HW)のハイまたはローの論理に基づいて、U相、V相、W相のそれぞれに適切なゲート信号を選択して出力する。
【0069】
まず、矩形波駆動で回転体106を回転させるためには、図17に示すようにホール信号HU、HV、HWの状態(ハイ状態またはロー状態)の組み合わせに従って、U相、V相、W相をPWM相、LOW相、HiZ相のいずれかの相状態に予め割り振る。このように、ホール信号の状態と、当該相状態と、を対応付けて、転流制御手段1024は、当該対応情報を保持しておく。図17の例では、Aに示すように、ホール信号HU、HV、HWの状態が(ハイ状態、ロー状態、ハイ状態)の場合には、U相、V相、W相をそれぞれLOW相、PWM相、Hiz相とする。
【0070】
図18に、相状態と、出力する信号の対応表を示す。転流制御手段1024は、図18に示す対応表を保持している。ただし、図18中のYは、U、V、Wに相当する。例えば、転流制御手段1024は、図17の例では、Aに示すように、ホール信号HU、HV、HWの状態が(ハイ状態、ロー状態、ハイ状態)の場合には、U相、V相、W相をそれぞれLOW相、PWM相、Hiz相とする。
【0071】
そして、U相はLOW相であることから、上側アーム1028uに送信される信号UHは常にロー信号となり、下側アーム1030uに送信される常にハイ信号となる。また、V相はPWM相であることから、上側アーム1028vに送信される信号VHは、XH信号(変調手段1022から出力された信号)となり、下側アーム1030vに送信される信号VLは、XL信号(変調手段1022から出力された信号)となる。また、W相はHiz相であることから、上側アーム1028wに送信される信号WHは、常にロー信号となり、下側アーム1030wに送信される信号WLは、常にロー信号となる。
【0072】
転流制御手段1024による、上側アーム信号YH、下側アーム信号YL(Y=U、V、W)への信号出力は、PWM周期Tp(図16参照)ごとに、3相とも同時に更新される。つまり、転流制御手段1024は、ホール素子110U、110V、110Wからの出力信号(正弦波信号)に基づいて、転流タイミングを決定している。つまり、モータ101の駆動には、転流制御手段1024による転流タイミングの検出処理も含まれる。また、回転体106の回転方向を逆転する場合は、図17においてPWM相とLOW相を入れ替えて選択すればよい。
【0073】
また、検出手段110および基準信号出力手段125をホール素子とした場合には、供給手段1024は、検出手段から出力された複数の正弦波信号と、基準信号出力手段125から出力された基準信号と、に基づいて、駆動信号を供給するという構成になる。また、検出手段110をホール素子とし、基準信号出力手段125を別個に設けた場合には、供給手段1024は、検出手段から出力された複数の正弦波信号に基づいて、駆動信号を供給するという構成になる。
【0074】
本実施形態2の駆動装置によれば、検出手段110U、110V(検出手段110U、110V)とから出力された正弦波信号、および、基準信号出力手段125(ホール素子110W)から出力された基準信号(正弦波信号)と、により回転体106の正確な回転角度θdを検出できる(実施形態1で説明)。それと共に、検出手段110U、110Vからの正弦波信号HU、HWと、基準信号出力手段125からの基準信号HWとに基づいて、回転体106に対して駆動信号を供給することが出来る。
【0075】
つまり、モータ106(例えば、ブラシレスモータ)に既存のホール素子からの出力信号を、回転体106の回転駆動、回転体106の回転角度θdの検出処理にも利用することが出来、角度検出機能を備えるモータ駆動装置を安価に製造することが出来る。
【符号の説明】
【0076】
100 検出装置
101 モータ
102 供給手段
104 励磁コイル
105 固定子
106 回転体
110 ホール素子
112 コンパレータ
116 差動アンプ
118 変換手段
120 AD変換手段
122 算出手段
124 調整手段
126 信号出力手段
1242 比較手段
1246 ゲイン決定手段
1248 ゲイン乗算手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0077】
【特許文献1】特開2010−25830号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の回転角度に応じて、それぞれの位相が異なる複数の正弦波信号を出力する検出手段と、
前記複数の正弦波信号に基づいて、前記回転体の回転角度を算出する算出手段と、
前記回転体の、基準となる回転角度を含む基準信号を出力する基準信号出力手段と、
前記算出手段により算出された回転角度と、前記基準信号出力手段が出力した基準信号に含まれる回転角度とに基づいて、前記検出手段により出力された前記複数の正弦波信号の振幅が同一または略同一になるように調整する調整手段と、を有することを特徴とする検出装置。
【請求項2】
前記検出手段から出力された前記複数の正弦波信号を相互演算することにより、当該複数の正弦波信号それぞれの位相差を90度とする変換手段を有することを特徴とする請求項1記載の検出装置。
【請求項3】
前記基準信号は、前記回転体の回転角度が前記基準となる回転角度になったときに、ハイまたはローに切り替わる2値信号であり、
前記調整手段は、前記基準信号は、前記ハイまたは前記ローに切り替わる度に、前記複数の正弦波信号の振幅比を調整することを特徴とする請求項1または2記載の検出装置。
【請求項4】
前記検出手段は、ホール素子であることを特徴とする請求項1〜3何れか1項記載の検出装置。
【請求項5】
前記基準信号出力手段は、ホール素子を含むことを特徴とする請求項1〜4何れか1項記載の検出装置。
【請求項6】
前記基準信号に含まれる回転角度は、前記算出手段により算出された回転角度より低分解能であることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の検出装置。
【請求項7】
請求項1〜6何れか1項記載の検出装置と、
前記検出手段から出力された前記複数の正弦波信号に基づいて、前記回転体に対して駆動信号を供給して前記回転体を回転させる供給手段と、を有する駆動装置。
【請求項8】
請求項1〜6何れか1項記載の検出装置と、
前記検出手段から出力された前記複数の正弦波信号と、前記基準信号出力手段から出力された前記基準信号とに基づいて、前記回転体に対して駆動信号を供給して前記回転体を回転させる供給手段と、を有する駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−101000(P2013−101000A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243764(P2011−243764)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】