説明

検出領域の設定装置

【課題】
監視領域を撮影した画像を用いて、監視可能な領域内の床面から高さのある任意の領域を検出処理の対象である検出領域として設定する設定装置を提供する。
【解決手段】監視領域を撮影した画像を表示し、画像上の二次元座標情報を床面上と床面以外とに区別して検出領域を指定するための指定点を入力し、床面上の指定点の二次元座標情報と撮像パラメータおよび床面以外の指定点の二次元座標情報を用いて床面以外の指定点の高さ情報を算出し、床面上の指定点は総て基準の高さ情報とし、床面以外の指定点は前記算出した高さ情報を用いて、画像上の二次元情報を三次元情報の検出領域情報に変換して検出領域情報とする設定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人や物など監視対象が監視領域に存在していることを三次元計測して検出する監視装置に関し、特に、監視領域の一部の領域に対して検出領域を設定、又は一部の領域を検出領域から外すことができる検出領域または非検出領域の設定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、監視領域を三次元計測して監視対象を検出する監視装置には、例えば特許文献1に記載されているように、マイクロ波を物体に照射し、その反射波を受信することにより、物体の位置(距離や方角)を検出するマイクロ波レーダ型の対象物検出装置が提案されている。
従来の対象物検出装置は、マイクロ波を使用しているため、監視領域を目視にて確認できない。このため、対象物検出装置では、監視領域を撮影した画像にレーダの検出範囲を表示させて、検出領域の確認および設定を行っている。
検出領域の設定は、先ず、画像上で検出領域としたい道路上を設定枠にて囲う。次に、設定枠の画素に対応する距離および方角を算出する。かかる距離及び方角から特定される範囲に位置する物体を検出対象とする。なお、検出対象である自動車は、道路面に使用されるアスファルトに比べ、マイクロ波の反射が強いことを利用し、最も強い反射波から算出される位置が特定された範囲内かを判定している。
【特許文献1】特開2001−155291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の対象物検出装置では、検出領域の設定枠は、道路面上に設定することを前提としているため、設定可能な範囲が道路面にしか形成できない。すなわち、設定枠が道路面上に存在するから、ビデオカメラの俯角、焦点距離、設置高を予め記憶しておくことにより、設定枠の画素に対応する距離および方角を算出できるのである。
【0004】
従来の対象物検出装置を用いて、検出領域を道路上ではない領域を設定しようとした場合について、図8を参照して具体的に説明する。
図8(b)は、対象物検出装置の配置状況を示すイメージ図である。先ず、対象物検出装置は、監視場所の上方から斜め下方を監視領域とするように設置されている。ここで、対象物検出装置は、ビデオカメラ1004とレーダ1003から構成されている。また、監視対象物として彫刻1001が設置されている。
【0005】
図8(a)は、ビデオカメラ1004が撮影した画像を示す図である。彫刻1001を監視すべく検出領域を設定する方法について説明する。図8(a)に示すように、彫刻1001を囲むように検出領域である設定枠1002を設定する。従来の対象物検出装置では、かかる設定枠1002が床面上(道路面)にあるとの前提になるため、図8(b)の1005に示すように、彫刻1001の対象物検出装置から奥行方向に床面まで延長した領域が設定されることになる。
【0006】
すなわち、画像上では検出領域として彫刻1001が設定されているように見えるが、算出される設定枠1002の画素に対応する距離は、例えば彫刻1001の頂上部で言えば、頂上部までの距離1006でなく彫刻1001の奥行方向の床面までの距離1005となる。このため、彫刻1001の位置は、レーダ1003での検出領域の距離範囲ではなくなり、彫刻1001を適正に監視できない。また、本来、監視したいのは、彫刻1001であるにも係わらず、レーダ1003では彫刻1001によって隠れて検出不可能な領域である彫刻1001の奥行方向の領域が設定されてしまう。
【0007】
したがって、従来の対象物検出装置では、道路面という水平面を検出範囲に設定する場合にしか適用できず、高さを有する監視対象の検出範囲を設定が困難であるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、かかる課題を鑑みてなされたものであり、画像上にて人間が直感的に認識できるように指定した検出領域において、高さ・幅・奥行きなどの体積を有する監視対象物を適切に検出できる監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために本発明は、三次元情報を用いて移動体を検出する検出器の監視領域中の一部について、検出領域または非検出領域を設定する設定装置であって、監視領域の画像を撮影する撮像部と、撮像部が撮影した画像を表示する表示部と、表示部に表示された画像上にて検出領域または非検出領域の指定操作をする入力部と、撮像部の設置高・俯角・焦点距離を含む撮像パラメータおよび検出領域または非検出領域を記憶する記憶部と、入力部から指定された指定点の画像上の二次元座標情報を床面上と床面以外とに区別した入力を受け、床面上の指定点の二次元座標情報と撮像パラメータおよび床面以外の指定点の二次元座標情報を用いて床面以外の指定点の高さ情報を算出し、床面上の指定点は総てを基準の高さ情報とし、床面以外の指定点は算出した高さ情報を用いて、画像上の二次元情報を三次元情報に変換した検出領域または非検出領域を前記記憶部に記憶させる制御部を具備した設定装置を提供する。
【0010】
かかる構成による設定装置は、撮像部にて取得した二次元情報である画像を操作者が表示部の表示を見ながら、画面上で検出領域としたい領域を特定する指定点を床面上と床面以外とを区別して指定することで、検出器が用いる三次元情報での検出領域に変換できる。
【0011】
本発明の好適な態様では、表示部に対して、これから入力する指定点が床面上か床面以外かを操作者に知らせるガイド表示させることで、操作者の入力を容易にさせことができる。
【0012】
本発明の好適な態様では、表示部に対して、床面上の指定点を入力した後に、床面以外の指定点の入力を行わせるガイド表示をさせることで、操作者の入力を容易にさせることができる。
【0013】
本発明の好適な態様では、画像上の二次元情報を画像の横方向と縦方向をそれぞれX軸・Y軸とするXY座標を定義し、床面上の指定点におけるXY座標情報と、前記撮像パラメータと、床面以外の指定点のY座標情報を用いて、画像の透視変換の逆変換を行ない前記床面以外の高さ情報を算出する。
【0014】
本発明の好適な態様では、床面以外の指定点は、床面上の指定点の監視領域中における直上の位置を指定する。
【発明の効果】
【0015】
かかる発明によれば、操作者が表示部の画像を見ながら、二次元情報である画像上に検出領域を指定することにより、三次元情報の検出領域または非検出領域を容易に設定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図を参照して、本願発明を美術館の監視システムに適用した場合の実施の形態を説明する。
図1は、監視システムの全体構成を示すブロック図である。監視システムは、美術館の警備員が待機している警備室等に設置される監視装置20と、美術館の各展示場・廊下・エントランスホールなどに適宜の数を侵入者や展示物の持ち去り検出のために設置される検出器10から構成している。監視装置20と各検出器10は、LAN(Local Area Network)28を介して接続されている。また、監視装置20は、電話回線29を介して図示していない警備センタと接続されている。なお、検出器10は、美術館等の規模に応じて、単数でも、複数でもよい。
【0017】
検出器10は、送信手段11・複数の受信手段12・撮像手段13・検出器記憶手段15・通信手段16、検出器制御手段14および各部に電源を供給する電源17から構成されている。
【0018】
送信手段11は、アンテナや発振素子等にて構成され、マイクロ波を監視領域に送信するとともに、監視領域に送信したマイクロ波の出力波形を受信手段12へ出力する。
【0019】
受信手段12は、アンテナ・ミキサ・フィルタ等にて構成され、送信手段11の送信したマイクロ波が監視領域内に存在するものに反射した反射波を受信するともに、送信手段11からの出力波形の入力を受けて反射波とのミキシングを行ないフィルタリングして測定データを検出器制御手段14に出力する。
また、受信手段12は、水平の左右に各1つ、および垂直方向に1つの合計3つを配置している。なお、垂直方向に設置される受信手段12は、水平方向の受信手段12のいずれかの水平方向に対する垂直な位置に配置しており、3つの受信手段12のアンテナの受信特性は、同一の方向に指向している。
【0020】
撮像手段13は、CCD等の撮像素子(光電変換素子)を用いたカメラであり、検出器10の監視領域を撮影する。撮像手段13は、送信手段11と受信手段12にて送受信されるマイクロ波にて検出し得る監視領域(センサ視野)の全てを含む画角を有している。後述する検出領域を設定する際の最大の範囲となる監視領域を少なくとも含む画像を用いたいからである。また、撮像手段13の撮像中心を撮像面から垂直に延ばした軸、即ち光軸は、受信手段12における指向中心の方向と略一致するよう検出器10の筐体に収納されている。
【0021】
検出器記憶手段15は、ROM(Read Only Memory)/RAM(Random Access Memory)から構成され、後述する検出領域情報・検出器制御手段14にて実行される各種プログラム・検出器10の各種パラメータ、各検出器10に固有に割り振られた検出器番号などを記憶する。
ここで、各種プログラムには、監視装置20からの制御コマンドに対する処理プログラム、異常判定処理手段141を実行するための異常判定処理プログラム、測距測角処理手段142を実行するための測距測角処理プログラムなどである。
【0022】
各種パラメータには、撮像手段13に関連する撮像パラメータとして設置高h、俯角ρ、焦点距離f等と、マイクロ波の送受信に関連するマイクロ波パラメータとして、各受信手段12の配置情報・受信手段12と撮像手段13との位置ずれの補正係数などである。
【0023】
通信手段16は、通信IC等にて構成され、LAN28を介して監視装置20および他の検出器10と各種通信を実行する。
【0024】
検出器制御手段14は、CPUにより構成され、検出器記憶手段15に記憶されている各種プログラムにしたがって検出器10の各構成要素を制御する。検出器制御手段14の主な機能として、測距測角処理手段142および異常判定処理手段141の機能がある。更に、監視装置20からのコマンドに基づいて、後述する検出領域を検出器記憶手段15に記憶する機能も実行する。ここでは、測距測角処理手段142と異常判定処理手段141について説明する。
【0025】
測距測角処理手段142は、いわゆるマイクロ波レーダセンサにおける2周波CWモノパルス方式にて、検出器10から監視領域内に存在する移動物体までの距離と水平角度と垂直角度の三次元情報を計測する処理である。具体的には、異なる2つの周波数のパルス状のマイクロ波を送信手段11から監視領域に向けて時分割に交互に送信し、監視領域からの当該マイクロ波パルスの反射波を複数の受信手段12で受信する。検出器15に記憶している各種パラメータと受信信号に基づいて、検出器10から移動物体までの距離と水平・垂直角度を計測する。
【0026】
すなわち、距離は、送信手段11から送信したマイクロ波の反射波における各周波数に含まれるドップラ成分を抽出し、抽出した各周波数のドップラ成分における位相差に基づいて測定する。角度は、強度差を水平または垂直に並んでいる2つの受信手段12におけるマイクロ波パルスの受信強度の差を算出する。また、同様に受信強度の和を算出する。かかる受信強度の差と和を用いて、受信手段12の指向中心の方向からのずれ量として角度を測定する。なお、距離と角度以外に、2周波CW方式を用いると、移動体の移動速度についても計測できる。
【0027】
かかる二周波CWモノパルス方式は、周知の方式なので詳細な説明は省略する。本実施の形態では、二周波CWモノパルス方式を用いて説明しているが、これに限るものではなく、例えば、監視領域に対して走査するよう受信アンテナの受信方向を自動的に変化させる機械式機構を持ったレーダセンサなど、三次元計測が可能な方式であれば如何なる方式を採用しても良いことはいうまでもない。
【0028】
異常判定処理手段141は、測距測角手段142により求めた三次元情報に基づき、監視領域の異常の有無を判定する。
すなわち、測距測角手段142にて求めた三次元情報から同一物体による情報を移動速度・検出位置等にもとづいてグルーピングする。次に、グルーピングした情報から物体の大きさを算出し、当該大きさが予め定めた監視対象の大きさ程度か判定する。更に、当該情報が監視対象の大きさ程度の場合は、存在している三次元位置が後述す検出器記憶手段15に記憶されている検出領域情報に基づき、検出領域の内側にあるか否かを判定する。ここで、検出領域内に存在する場合に異常判定をする。異常判定すると、通信手段16から異常信号を監視装置20へ送信する。
【0029】
例えば、美術館の展示品である彫刻を監視対象としている場合は、グルーピングされた情報群が形成する物体の大きさが、予め設定されている彫刻の大きさと同程度かを比較する。同程度でなければ、異常ではないと判定する。他方、同程度であれば、グルーピングされた情報群が形成する物体の重心が示す三次元位置が、検出領域内に存在しているかを判定する。検出領域内でない場合は、彫刻を見ている人等と判断し、異常ではないと判定する。他方、検出領域内に存在していれば、彫刻を持ち去ろうとしているとし、異常と判定し、監視装置20に通信手段16からLAN28を介して異常信号を送信する。
【0030】
次に、監視装置20の構成について説明する。監視装置20は、制御部21、記憶部22、表示部23、入力部24、通信制御部25、出力I/F26、電源27から構成される。
【0031】
記憶部22は、ROM(Read Only Memory)/RAM(Random Access Memory)から構成され、検出領域設定プログラムや異常通報のためのプログラム等の各種プログラム、設置している場所の識別コードや警備センタの電話番号など各種設定データ、ワーキングエリアなどを有している。
【0032】
表示部23は、液晶ディスプレイ・LED・スピーカ等にて構成され、撮像手段13が撮影した画像、所定のメッセージ等を表示する。
【0033】
入力部24は、ポインティングペン等を用いても良いが、本実施の形態ではマウスを用いる。入力部24は、検出領域の設定者が入力部24を操作して、表示部23に表示されている画像上にて検出領域を指定入力することができる。
【0034】
通信制御部25は通信ICにて構成され、LAN28を介した検出器10との通信を制御する。
【0035】
出力I/F26は、電話回線29に接続されているモデムにて構成され、異常信号などを外部の警備センタに送信する。
【0036】
制御部21はCPUにて構成され、記憶部22に記憶されている各種プログラムにしたがって監視装置20の各構成要素を制御する。ここでは、記憶部22に記憶されている検出領域設定処理プログラムを実行した場合の機能として、検出領域設定処理手段211について説明する。
【0037】
図2を参照して、検出領域設定処理手段211が行う検出領域設定処理について説明する。検出領域設定処理手段211は、記憶部22に記憶されている検出領域設定処理プログラムにしたがって処理を行う。
【0038】
先ず、検出器10の設定が完了しており、検出器10および監視装置20の電源がONになっている。そして、監視装置20の入力部24から操作者による検出領域の設定開始の入力があると、図2に示す検出領域設定処理がスタートする。
【0039】
ステップS001では、検出領域を設定したい検出器10を指定する。このときに表示部23の表示を図4(a)に示す。図4(a)では、表示部23の右下の40に指定されている検出器番号が「1」である旨が表示されている。
検出器番号の指定は、入力部24を操作し、表示部23における画面上の検出器番号エリア40にカーソルを合わせて、マウスボタンを押下することにより選択する。検出器番号エリア40は、マウスボタンを押下する毎に検出器番号が1ずつインクリメントする。なお、監視装置20にテンキーが備わっているならば、入力手段がテンキーであれば検出器10の検出器番号を直接入力しても良い。あるいは、監視装置20に接続されている検出器10の検出器番号を一覧表示し、入力部24にて検出領域を設定したい検出器10の検出器番号を指定しても良い。
【0040】
ステップS002では、ステップS001にて指定された検出器10の撮像手段13が撮影した画像を取得する。すなわち、通信制御部25からLAN28を介して、指定した検出器10に対して画像送信コマンドを送信する。そして、画像送信コマンドを通信手段16から受信した検出器10では、検出器14の制御により撮像手段13が撮影した画像、検出器記憶手段15に記憶している撮像パラメータ、マイクロ波センサパラメータおよび検出領域情報を通信手段16からLAN28を介して監視装置20に送信する。かかる画像等を通信制御部25にて受信し、記憶部22に記憶する。
【0041】
ステップS003では、記憶部22に記憶した画像を表示部23に表示し、当該画像に予め定めた座標系を適用する。具体的には、図4(b)に示すように、画像の横方向にX軸、縦方向にY軸とし、X軸とY軸の原点を画像の中心位置になるよう二次元の座標系を適用する。但し、以下の説明では図面が煩雑になるため、座標系の表示は省略する。
【0042】
ここで、設定対象となった検出器番号「1」である検出器10の設置場所について、図3を参照して説明する。図3は、検出器10を展示室36に設置している状態を示している。検出器10に収納された撮像手段13と送信手段11および受信手段12が、彫刻35に向けられて、展示室36の出入り口37に近い天井付近に設置されている。
【0043】
次に、ステップS004では、表示部23に検出領域の設定を容易にするための入力ガイダンス41を表示する(図4(b))。同図では、「床面」にハッチングが掛かっている。これは、操作者に対して、これから入力部24から指定する点が、画像における床面であると認識することをガイドしている。他方、「高さ」がハッチングされているときは、床からの高さ情報の入力である旨のガイドである。
【0044】
ステップS005では、床面領域を指定する。すなわち、図4の(c)に示すように、操作者が入力部24を使用し、指定点A、B、C、Dを指定する。具体的には、操作者は、表示部23を見ながら、監視対象である彫刻35の床面を囲むように、A(X,Y)、B(X,Y)、C(X,Y)、D(X,Y)にカーソルを合わせ、マウスボタンをそれぞれの点で押下する。なお、表示部23には、A、B、C、Dを結んだ線を表示されているので、設定される検出領域の具体的な状況を操作者が容易に確認できる。
【0045】
ステップS006では、床面の設定が終わると、操作者は、入力部24にて入力ガイダンス41の「高さ」にカーソルを合わせてマウスボタンを押下し、「高さ」がハッチングされたことを確認する。ここで、「高さ」がハッチングされていることは、これからの入力が検出領域の設定における床面からの高さ情報の入力をすることを意味する。
その後、床面として指定した点、例えばAにカーソルを合わせてマウスボタンを押下し、Aの上方向であって検出領域としたい位置へカーソルを合わせてマウスボタンを押下する。図4(d)のF(X,Y)を指定することになる。
【0046】
ステップS007では、検出器10から受信し記憶部22に記憶した撮像パラメータ(設置高h、焦点距離f、俯角ρ)を読み出す。次に、A、B、C、D、E、F、G、Hの実空間上の座標を算出する。ここで、FはAの直上,GはBの直上,HはCの直上、EはDの直上の点であり、実空間において床面からZの高さにある点である。
具体的には、床面上の点A、B、C、Dは、数式(1)及び数式(2)にX、Y座標を代入し、実空間の直交座標系であるU−V−W座標系に変換する。
【0047】
【数1】

【0048】
【数2】

【0049】
なお、点A、B、C、Dは床面上の点であるため、W座標は0となる。
そして、F及びAの座標に基づき、実空間上の座標における床面からFまでの高さWを算出する。具体的には、数式(3)にFのY座標である「Y」および直下床面である点Aの実空間におけるV座標である「V」を代入することで算出する。
【0050】
【数3】

【0051】
ここで、数式(1)(2)(3)は、透視変換の逆変換を実行するための関数である。すなわち、三次元情報(立体情報)から二次元情報(画像)に変換する透視変換の逆変換を行うことで、二次元情報(画像)から三次元情報(立体情報)に変換することができる。この透視変換の逆変換を実行するための関数は、幾何学的に立証されているので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0052】
実空間上の座標に変換された結果は、A(U,V,0)、B(U,V,0)、C(U,V,0)、D(U,V,0)となる。ここで、Wが0となっているは、床面を基準面としているからである。
【0053】
また、本実施の形態では、説明を簡単にするため、検出領域を直方体としている。このため、床面にない点であるE、F、G、Hは、数式3にて算出した高さWとなっている。床面にない点であるE、F、G、Hは、E(U,V,W)、F(U,V,W)、G(U,V,W)、H(U,V,W)となる。なお、床面以外の点について、個別に高さを設定する場合は、当該点から垂線を下ろした床面上の点のY座標を用いて、個別に算出すればよい。
【0054】
更に、実空間の直交座標系であるU−V−W座標系から検出器10を原点とした極座標系(r,θ,φ)に変換する。かかる極座標系を使用するのは、検出器10が検出器10からの距離r、水平方向の角度θ、及び垂直方向の角度φの情報によって、監視対象の位置を検出するためである。
【0055】
ステップS008では、表示部23に、図4(d)に示す検出領域ABCDEFGH47を表示する。
【0056】
ステップS009では、操作者が表示部23の表示を見て、入力された検出領域が所望の領域を示しているか確認する。そして、所望の領域であると確認ができると、OK釦44を押下する。OK釦44が押下されるとステップS011に進む。他方、操作者の意図と異なっていれば、NG釦45を押下する。NG釦45が押下されると、ステップS010に進む。
【0057】
ステップS010では、ステップS005〜S008までの処理に使用したデータをクリアし、ステップS005の処理に戻る。
【0058】
ステップS011では、ステップS007において算出した極座標系の検出領域情報を記憶部22に記憶する。
【0059】
ステップS012では、操作者が他にも検出領域を指定したい場合に押下する追加釦46が所定時間内に押されたか否か判断する。ここで、追加釦46が押下されると、ステップS005に戻り、次の検出領域の設定を行う。追加釦46の押下がなければ、ステップS013に進む。
【0060】
ステップS013では、ステップS011にて記憶部22に記憶させた検出領域情報を通信制御部25からLANを介して検出器10に送信し検出領域設定処理を終了する。
なお、検出器10では、かかる検出領域情報を通信手段16にて受信すると、検出器記憶手段15に上書き記憶させる。また、記憶部22に記憶した検出領域情報は削除してもよい。
また、1つの監視装置20に検出器10が複数接続されている場合には、それぞれの検出器について行う。
【0061】
本実施の形態では、検出領域情報が検出器10の監視範囲内に設定されることを前提に説明している。しかし、検出器10における、撮像手段13による撮影した画像がマイクロ波(送信手段11・受信手段12)による監視範囲からはみ出した領域を検出領域に設定している場合に、その旨を表示部23に表示するようにしてもよい。この場合は、予め、監視装置20にマイクロ波による監視範囲の情報を記憶させておき、検出領域情報と当該監視範囲の情報とを比較することで判断できる。
【0062】
次に、このように検出領域を設定された検知器10の動作を説明する。彫刻35が持ち去られたことを検出する処理を、図6のフロー図と、展示室36を横から見た図5を用いて説明する。
【0063】
図5(a)は、彫刻35が展示室36の本来の位置に置かれている様子を示している。70aは検出器10から彫刻上部までの距離、71aは検出器10から彫刻中央部までの距離、72aは検出器から彫刻下部までの距離、73は表示部23に表示された直方体ABCDEFGH47から特定される検出領域である。ここでは、説明を簡単にするため、極座標系の距離rに着目して説明する。
【0064】
まず、ステップS100では、検出器10のセンサ視野内で変動があったかどうかを調べる。変動が検出されない場合は、特に何もせず、このステップS100を繰り返す。
検出器10のセンサ視野内にて変動が検出された場合には、ステップS101に処理に進む。
【0065】
ステップS101では、ステップS100にて検出された変動が、検出領域73内部であるかどうかを調べる。検出器10は、設定した検出領域73以外でも、センサ視野内であれば変動を検出できるためである。
検出された変動が検出領域73以外の領域で検出された場合には、特に何もせず、ステップS100に処理を戻す。これは例えば、彫刻35の周囲を歩き回る入場者であると考えられ、その場合には特に警報を通報するなどの処理は必要ないからである。
変動が検出領域内で検出された場合には、ステップS102に処理を移す。
【0066】
ステップS102では、検出された変動が所定の閾値以上であるかどうかを調べる。
彫刻35が不審者により持ち去られた場合には、図5(b)に示すように、検出器10から彫刻下部までの距離72bは変わらないものの、検出器10から彫刻上部までの距離70b、彫刻中央部までの距離71bは大きく変わることがわかる。
【0067】
図5は横から見た、検出器10からの彫刻上部、彫刻中央部、彫刻下部までの3点について示しているが、本実施の形態では検出器10に三次元計測が可能なマイクロ波レーダセンサを用いているので、彫刻の各部について上記のような距離の変動を検出することが可能である。
従って、検出器からの各部の距離の変動が検出され、それが所定の閾値以上の場合には、彫刻35が持ち去られたと判断できるので、ステップS103にて異常信号を監視装置に送信する。
【0068】
本実施の形態においては、検出器10を屋内に設置して、監視対象物の持ち去り検出処理を例に説明したが、屋外に設置して、侵入監視センサとして用いることも可能である。この場合、例えば、検出器10を軒下に設置して、敷地内に侵入する不審者を検出するよう、門扉付近を検出領域とする。そして、その中に一定以上の変動が検出されたら不審者が侵入したとして警報を通報する。
【0069】
本実施の形態においては、検出領域内で検出された変動が所定の閾値以上の場合に、直ちに警報を通報するものとして説明している。これは監視対象物が高価な重要物の場合には有効であるが、何らかのノイズ原因により誤警報を通報する可能性が高まる。そこで検出領域内で検出された変動が、所定の閾値以上である状態が一定時間継続したかどうかも判断の尺度にしても良い。
【0070】
本実施の形態においては、検出領域の形状は、指定が簡単な直方体の例を示したが、床面に含まれる指定点を先に入力して、その後に高さを入力する手順であれば、直方体に限られない。指定点として底面の頂点と上面の頂点を順次指定し、両者を結ぶ辺を指定していくことで、より複雑な形状の検出領域を指定できる。
【0071】
本実施の形態においては、図3に示すように、検出器10を構成する撮像手段13と、センサ部分である送信手段11と受信手段12を同一の筐体に収納して説明した。このようにすれば、センサ視野と撮像手段13の視野とを略同一に調整する手間が軽減されるというメリットがある。また、監視装置20による異常発生の判断に同期して、例えば、彫刻35の持ち去りの瞬間を撮像手段13により証拠画像として撮像することも可能である。
【0072】
しかし、撮像手段13を別筐体とし、設置時に、検出器10の他の構成要素と組み合わせても良い。また、撮像手段13は検出領域の設定に使用するのみで、設定終了後は取り外す、という運用方法も考えられる。
この場合には、撮像手段13とセンサ視野との略同一を確保するために、図7に示すように、「はめあい」の構造を有することが望ましい。
【0073】
本実施の形態では、検出領域の設定として説明したが、設定した領域の移動体を検出しないように、いわゆる非検出領域として設定しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態における監視システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態における検出領域の設定方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態における監視システムの設置例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における表示部23の表示を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態における彫刻35の有無により、測定される距離の違いを示す図である。
【図6】本発明の実施の形態における異常を検出する方法を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態における「はめあい」の構造の例を示す図である。
【図8】従来技術を高さのある監視対象に適用した場合に設定される検出領域を説明する図である。
【符号の説明】
【0075】
10 検出器
11 送信手段
12 受信手段
13 撮像手段
14 検出器制御手段
15 検出器記憶手段
16 通信手段
17 電源
20 監視装置
21 制御部
22 記憶部
23 表示部
24 入力部
25 通信制御部
26 出力I/F
27 電源
28 LAN
29 電話回線
35 彫刻
40 検出器番号
41 入力ガイダンス
42 X軸
43 Y軸
44 OK釦
45 NG釦
46 追加釦
47 検出領域(画像上)
70 彫刻までの距離
71 彫刻までの距離
72 彫刻までの距離
73 検出領域(実空間)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元情報を用いて移動体を検出する検出器の監視領域中の一部について、検出領域または非検出領域を設定する設定装置であって、
前記監視領域の画像を撮影する撮像部と、
前記撮像部が撮影した画像を表示する表示部と、
前記表示部に表示された画像上にて検出領域または非検出領域の指定操作をする入力部と、
前記撮像部の設置高・俯角・焦点距離を含む撮像パラメータおよび検出領域または非検出領域を記憶する記憶部と、
前記入力部から指定された指定点の画像上の二次元情報を床面上と床面以外とに区別した入力を受け、前記床面上の指定点の二次元情報と前記撮像パラメータおよび前記床面以外の指定点の二次元情報を用いて前記床面以外の指定点の高さ情報を算出し、
前記床面上の指定点は総てを基準の高さ情報とし、前記床面以外の指定点は前記算出した高さ情報として、画像上の二次元情報を三次元情報に変換した検出領域または非検出領域を前記記憶部に記憶させる制御部を具備したことを特徴とする設定装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記表示部に対して、これから入力する指定点が床面上か床面以外かを操作者に知らせるガイド表示を行わせる請求項1に記載の設定装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記表示部に対して、床面上の指定点を入力した後に、床面以外の指定点の入力を行わせるガイド表示をさせる請求項2に記載の設定装置。
【請求項4】
前記画像上の二次元情報を画像の横方向と縦方向をそれぞれX軸・Y軸とするXY座標を定義し、
前記制御部は、前記床面上の指定点におけるXY座標情報と、前記撮像パラメータと、床面以外の指定点のY座標情報を用いて、画像の透視変換の逆変換を行ない前記床面以外の高さ情報を算出する請求項1乃至請求項3に記載の設定装置。
【請求項5】
前記床面以外の指定点は、前記床面上の指定点の監視領域中における直上の位置を指定する請求項1乃至請求項4に記載の設定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−13814(P2007−13814A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−194423(P2005−194423)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】