説明

検査システム、および検査システムにおける検出画像の処理方法

【課題】
半導体ウェハを検査する検査システムにおいて、取得した画像の検査方向を考慮した回路を追加しなくても、画像の比較検査を行うことができる検査システムを提供する。
【解決手段】
検査対象を電子ビームまたは光で走査して画像データを生成する検出部,画像データを格納する検査処理用メモリ,検査処理用メモリに格納された画像データを読み出して検査処理を行う検査処理部,画像データに制御情報を付加する制御情報付加部を備え、検査処理部は、付加された制御情報に基づいて画像データを読み出す構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハの欠陥を検出する検査システムに係り、特に半導体ウェハの全面の画像を連続的に取得し、画像比較によって欠陥を検出する検査システムおよび検査システムにおける検出画像の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置がウェハに形成されるプロセスにおいて、ウェハを検査装置で検査して欠陥の有無、およびその分類を行い、プロセス条件を適正化することが行われている。欠陥の有無を判定する検査では、ウェハ上を、順方向と逆方向を交互にストライプ状に走査しながら、隣接する画像同士を比較して欠陥を検出する、ウェハの全面を検査する方法と、予め決められた領域のみを撮像し、予め用意された参照画像と比較して欠陥を検出する方法とが適宜使い分けられている。
【0003】
前者の場合、取得された画像は、検査方向によって反転して検出されるため、順方向と逆方向の変わり目の画像同士は、直接比較できない。そこで、例えば、逆方向の画像のみ反転させ、2つの検出画像を同一方向にそろえるようにメモリに書き込む回路を設けることで、それ以降は検査方向に影響をうけずに欠陥を検出する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記従来技術に記載された画像を反転させてメモリへ書き込む回路を設ける方法では、新たな回路の追加およびデータ制御の追加のために、新たな設計が必要であり、コストが上昇する。さらに、画像を反転させる制御が回路というハードウェアに依存するため、全面検査の場合にしか適用できないという制限があり、検査画像を自由に選択することができない。
【0005】
【特許文献1】特開2005−134976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ウェハを検査する検査システムにおいて、取得した画像の検査方向を考慮した回路を追加しなくても、画像の比較検査を行うことができる検査システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の実施態様は、検査対象を電子ビームまたは光で走査して画像データを生成する検出部,画像データを格納する検査処理用メモリ,検査処理用メモリに格納された画像データを読み出して検査処理を行う検査処理部,画像データに制御情報を付加する制御情報付加部を備え、検査処理部は、付加された制御情報に基づいて画像データを読み出す構成としたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施態様によれば、ウェハを検査する検査システムにおいて、取得した画像の検査方向を考慮した回路を追加しなくても、画像の比較検査を行うことができる検査システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内において適時変更可能である。
【0010】
図1は、電子ビームを用いた回路パターン検査装置の構成図であり、主要な構成を略縦断面図と機能図とで表している。回路パターン検査装置1は、室内が真空排気される検査室2と、検査室2内に被検査基板9を搬送するための予備室(図示せず)を備えており、この予備室は検査室2とは独立して真空排気できるように構成されている。また、回路パターン検査装置1は、検査室2と予備室の他に画像処理部5から構成されている。
【0011】
検査室2は、大別して、電子光学系カラム3,試料室8,光学顕微鏡室4から構成されている。電子光学系カラム3は、電子銃10,引き出し電極11,コンデンサレンズ12,ブランキング偏向器13,絞り14,走査偏向器15,対物レンズ16,反射板17,E×B偏向器18,二次電子検出器20から構成され、電子ビーム19を被検査基板9へ照射するとともに、被検査基板9から発生した二次電子を検出する。
【0012】
試料室8は、試料台30,Xステージ31,Yステージ32,回転ステージ33,位置モニタ測長器34,被検査基板高さ測定器35から構成されている。
【0013】
光学顕微鏡室4は、検査室2の室内における電子光学系カラム3の近傍であって、互いに影響を及ぼさない程度離れた位置に配置されている。光学顕微鏡室4は光源40,光学レンズ41,CCDカメラ42により構成されている。電子光学系カラム3と光学顕微鏡室4の間の距離は既知であり、Xステージ31又はYステージ32が電子光学系カラム3と光学顕微鏡室4の間の既知の距離を往復移動するようになっている。
【0014】
電子信号検出部7は、二次電子検出器20からの出力信号を増幅するプリアンプ21,増幅信号をアナログからデジタルへ変換するAD変換器22を備え、それぞれを駆動するためのプリアンプ駆動電源27,AD変換器駆動電源28,逆バイアス電源29と、これらに電気を供給する高圧電源26を備える。増幅されたデジタル信号は、光変換手段23で光信号に変換され、光伝送手段24を通って電気変換手段25で電気信号に変換され、画像処理部5の記憶手段45へ送られる。なお、図示していないが、CCDカメラ42で取得した光学画像も同様にして、画像処理部5へ送られる。
【0015】
画像処理部5は、記憶手段45,画像処理回路46,欠陥データバッファ47,演算部48,全体制御部49から構成されている。画像処理回路46では、記憶手段45に記憶された画像を読み出し、特定位置だけ離れた画像同士の位置合わせ、信号レベルの規格化,ノイズ信号を除去するための各種画像処理を施し、画像の信号を比較演算する。演算部48は、比較演算された差画像信号の絶対値を、所定のしきい値と比較し、所定のしきい値よりも差画像信号レベルが大きい場合に欠陥候補と判定し、全体制御部49へ欠陥候補のID(Identification,識別符号),位置,数の情報を送る。欠陥データバッファ47は、画像処理回路46で比較演算された差画像信号を一時的に記憶し、全体制御部49へ送る。全体制御部49は、演算部48から送られた欠陥候補の情報や欠陥データバッファに格納された画像をインターフェース6へ送信したり、インターフェース6から入力された回路パターン検査装置1の制御情報を補正制御回路61へ送信したりする。
【0016】
電子線画像あるいは光学画像は、インターフェース6の画像表示部56に表示される。回路パターン検査装置1の各部の動作命令及び動作条件は、インターフェース6から指示命令が入力され、画像処理部5の全体制御部49から補正制御回路61へ送られる。インターフェース6では、電子ビーム19の発生時の加速電圧,偏向幅,偏向速度,電子信号検出部7の信号取り込みタイミング,Xステージ31やYステージ32の移動速度等の条件が、目的に応じて任意にあるいは選択して設定できる。
【0017】
インターフェース6は、例えば、ディスプレイの機能を有し、マップ表示部55には、検出された複数の欠陥の分布が、被検査基板9である半導体ウェハを模式的に表したマップの上に記号化されて表示される。画像取得指示領域57は、検出された欠陥ごと、あるいは領域ごとに電子線画像あるいは光学画像を取得する指示を出す部分である。画像処理指示領域58は、取得した画像の明るさ調整やコントラスト調整を指示する部分である。処理条件設定領域59は、電子ビーム19を被検査基板9に照射するときの偏向幅,偏向速度,対物レンズの焦点距離,焦点深度などの各種条件を設定するために使用される。
【0018】
ディスプレイの画面には、モード切替えボタン60が配置され、「検査」「欠陥確認」「レシピ作成」「ユーティリティ」の各モードを選択できる。「レシピ作成」モードは自動検査の条件を設定するモードである。「ユーティリティ」モードは、他のモードには現れない。
【0019】
補正制御回路61は、電子ビーム19の発生時の加速電圧,偏向幅,偏向速度,電子信号検出部7の信号取り込みタイミング,Xステージ31やYステージ32の移動速度等が、画像処理部5の全体制御部49から送られた指示命令に従うように制御する。また、位置モニタ測長器34,被検査基板高さ測定器35の信号から、被検査基板9の位置や高さをモニタし、その結果から補正信号を生成し、走査信号発生器43や対物レンズ電源44に補正信号を送り、電子ビーム19が常に正しい位置に照射されるように偏向幅,偏向速度,対物レンズの焦点距離,焦点深度を変える。
【0020】
電子銃10には、拡散補給型の熱電界放出電子源が使用されている。この電子銃10を用いることにより、従来の例えばタングステン・フィラメント電子源や、冷電界放出型電子源に比べて安定した電子ビーム電流を確保することができるため、明るさ変動の少ない電子ビーム画像が得られる。また、この電子銃10により電子ビーム電流を大きく設定することができるため、高速検査を実現できる。
【0021】
電子ビーム19は、電子銃10と引き出し電極11との間に電圧を印加することで電子銃10から引き出される。電子ビーム19の加速は、電子銃10に高電圧の負の電位を印加することで決まる。これにより、電子ビーム19は、その電位に相当するエネルギーで試料台30の方向に進み、コンデンサレンズ12で収束され、さらに対物レンズ16により細く絞られて試料台30に搭載された被検査基板9に照射される。
【0022】
ブランキング偏向器13,走査偏向器15は、ブランキング信号及び走査信号を発生する走査信号発生器43により制御される。ブランキング偏向器13は、電子ビーム19が絞り14の開口部を通過しないように電子ビーム19を偏向し、電子ビーム19の被検査基板9への照射を防ぐ機構である。電子ビーム19は、対物レンズ16により細く絞られ、走査偏向器15により、被検査基板9上で走査される。走査には往復走査と片側走査とが選択できる。往復走査は、細く絞られた電子ビーム19を行きと帰りの両方で試料を照射するものである。片側走査は、行きのときに試料を照射し、帰りは電子ビーム19の走査信号は走査偏向器15に印加されているが、電子ビーム19をブランキング偏向器13でブランキングして、電子ビーム19が試料へ照射されないようにするものである。
【0023】
対物レンズ16のレンズ強度は、対物レンズ電源44の電圧を補正制御回路61で調整することにより、変えることができる。コンデンサレンズ12のレンズ強度も図示しないレンズ電源の電圧を補正制御回路61で調整することにより、変えることができる。
【0024】
被検査基板9には、リターディング電源36により負の電圧を印加できるようになっている。リターディング電源36の電圧を調節することにより、電子ビームを減速させ、電子銃10の電位を変えることなしで被検査基板9への電子線照射エネルギーを調節することができる。
【0025】
Xステージ31,Yステージ32の上には被検査基板9が搭載されている。検査実行時には、Xステージ31,Yステージ32を静止させ、電子ビーム19を二次元に走査する方法と、Xステージ31を静止させ、Yステージ32をY方向に連続して一定速度で移動させながら、電子ビーム19をX方向に走査する方法とがある。ある特定の比較的小さい領域を検査する場合には、前者のステージを静止させて検査する方法が、比較的広い領域を検査するときは、後者のステージを連続的に一定速度で移動して検査する方法が有効である。
【0026】
Xステージ31またはYステージ32の一方を連続的に移動させながら、被検査基板9の画像を取得する場合、ステージの移動方向に対して略直角方向に電子ビーム19を走査し、被検査基板9から発生した二次電子を電子ビーム19の走査、及びステージの移動と同期して二次電子検出器20で検出する。
【0027】
被検査基板9上に電子ビーム19を照射することによって発生した二次電子は、被検査基板9に印加された負の電圧により加速される。被検査基板9の上方に、E×B偏向器18が配置され、これにより加速された二次電子は所定の方向へ偏向される。E×B偏向器18に印加する電圧で磁界の強度を変え、偏向量を調整することができる。また、E×B偏向器18の電磁界は、被検査基板9に印加した負の電圧に連動させて可変させることができる。E×B偏向器18により偏向された二次電子は、所定の条件で反射板17に衝突する。この反射板17は、被検査基板9に照射する電子ビーム19の走査偏向器15のシールドパイプを兼ね、円錐形状をしている。この反射板17に加速された二次電子が衝突すると、反射板17からは数eVから50eVの間のエネルギーを持つ第二の二次電子が発生する。
【0028】
位置モニタ測長器34として、本実施例ではレーザ干渉を原理とした測長計をX方向とY方向に用い、Xステージ31及びYステージ32の位置を電子ビーム19を照射しながら測定し、補正制御回路61に送信されるように構成されている。また、Xステージ31,Yステージ32,回転ステージ33の各駆動モータの回転数も、図示しない各々のドライバ回路から補正制御回路61に送信されるように構成されている。補正制御回路61は、これらのデータに基づいて電子ビーム19が照射されている領域や位置が正確に把握できるようになっており、電子ビーム19の照射位置の位置ずれを補正制御回路61より補正する。また、電子ビーム19を照射した領域を記憶できるようになっている。
【0029】
被検査基板高さ測定器35には、電子ビーム以外の測定方式である光学式測定器、例えばレーザ干渉測定器や反射光の位置で変化を測定する反射光式測定器が使用される。例えば、スリットを通過した細長い白色光を透明な窓越しに被検査基板9に照射し、反射光の位置を検出し、位置の変動から高さの変化量を算出する方式が知られている。被検査基板高さ測定器35は、Xステージ31,Yステージ32に搭載され、被検査基板9の高さを測定する。被検査基板高さ測定器35の測定データに基づいて、電子ビーム19を細く絞るための対物レンズ16の焦点距離がダイナミックに補正され、常に非検査領域に焦点が合った電子ビーム19を照射できるようになっている。また、被検査基板9の反りや高さ歪みを、電子ビーム19の照射前に予め測定し、そのデータに基づいて、対物レンズ16の検査領域毎の補正条件を設定するように構成することも可能である。
【0030】
図2は、本発明の実施態様における、画像処理システムの基本構成を示す構成図である。検出部100では、電子ビームや光を被検査基板へ照射し、画像データを取得する。一方、画像データを取得したときの検査方向等の情報が、制御情報付加部101によって、画像データに付加され、書き込み制御部102によって、記憶手段45内の分配用メモリ103に、画像データと制御情報とが書き込まれる。次に、読み出し制御部104は、制御情報に従って画像データのみを分配用メモリ103から読み出し、分配制御部105へ送る。ヘッダとフッタの情報は分配制御部105へは送られない。分配制御部105は、読み出された画像データを複数の検査処理用メモリ106,108,110へ分配する。複数の検査処理部107,109,111は、検査処理用メモリ106,108,110と対になっており、各メモリに分配された画像データ同士を比較し、信号に差がある部分を欠陥として検出する。
【0031】
図3は、被検査基板9の画像データの走査方向を示す平面図、図4,図5は、記憶手段45に画像データが格納されるときのデータ構成図である。図3において、0で示す矢印方向を順方向とし、1で示す矢印方向を逆方向として、画像データ301,302,303,304が取得される。これらの画像データは、互いに同一形状の回路パターンを有するように取得されるので、相互に比較して信号に差のある領域を欠陥として検出することができる。また、画像データを取得するときは、順方向では、電子ビームの走査の順序a,b,cの順番で画像データ301が取得され、走査の順序d,e,fの順番で画像データ302が取得される。逆方向では、走査の順序g,h,iの順番で画像データ303が取得され、走査の順序j,k,lの順番で画像データ304が取得され、分配用メモリ103へ格納される。
【0032】
取得した画像データそれぞれは同一形状の回路パターンであるので、画像データを比較するときは、順方向の場合は、画像データ301の走査の順序a,b,cと、画像データ302の走査の順序d,e,fとが対応するように比較しなければならない。画像データ302と画像データ303とを比較するときは、画像データ303の検査方向が逆方向なので、画像データ302の走査の順序d,e,fに対して、画像データ303の順序g,h,iを順序i,h,gに変えてから、検査処理用メモリ106へ格納し、比較検査する。
【0033】
図4(a)は、比較検査する前の検査処理用メモリ106に格納される画像データの検査方向との関係を示すものであり、例えば、4つの画像データ301,302,303,304の間では、画像データ301は順序a,b,c、画像データ302は順序d,e,f、画像データ303は順序i,h,g、画像データ304は順序l,k,jというように、検査方向が逆方向である画像データ303と画像データ304は、走査の順序とは逆にされて検査処理用メモリ106に格納される。これにより、画像データ301,302,303,304が同じ方向の回路パターンになるので、お互いを比較検査することができる。
【0034】
図4(b),(c),(d)に、分配用メモリ103に格納された画像データの一例を示す。図4(b)では、画像データ302が走査の順序d,e,fで分配用メモリ103へ書き込まれる。読み出す場合は、ヘッダ403、またはフッタ404に格納されたフラグ0を読み取り,書き込みと同じ順方向に画像データを読み出して、図4(a)の画像データ302に示される順序d,e,fで、検査処理用メモリ106へ格納される。
【0035】
図4(c)は、画像データ303が走査の順序g,h,iで逆方向から分配用メモリ103へ書き込まれた場合を示す。画像データ303は、図3に示したように、検査方向が逆方向で画像化されたものであるから、比較検査前の検査処理用メモリ106には、図4(a)に示すように、順序i,h,gにして格納しなければならない。したがって、分配用メモリ103から検査処理用メモリ106へ画像データ303を移動させるときには、図4(c)に示すように、書き込みの順序とは逆方向に読み出して順序i,h,gになるように、画像データ303にヘッダ405、およびフッタ406を付加し、書き込みと読み出しの方向が逆方向であることを示す、例えばフラグ1を、ヘッダ405とフッタ406の両方に格納しておく。フラグ1をヘッダ405とフッタ406の両方に格納しておくので、読み出し方向がどちらであっても、画像データ303の前後に設けられたフラグ1を検知することによって、書き込み方向とは逆の方向に画像データを読み出すようにする。図4(c)に示す例では、順序i,h,gで読み出すことができ、図4(a)に示す検査処理用メモリ106に、順序i,h,gで画像データ303を格納することができる。
【0036】
図4(d)は、画像データ303が走査の順序g,h,iで順方向から分配用メモリ103へ書き込まれた場合を示す。図4(a)に示したように、検査処理用メモリ106へは、順序i,h,gで画像データ303を格納しなければならない。ヘッダ405、またはフッタ406に格納されたフラグ1を検出することにより、書き込み方向とは逆の方向に読み出すことになるので、順序i,h,gで読み出され、図4(a)に示す検査処理用メモリ106には、順序i,h,gで画像データ303を格納することができる。
【0037】
図5は、分配用メモリ103が複数の画像データを連続して格納できる場合の一例を示し、画像データは、図3に示した取得順に格納されている。画像データそれぞれにヘッダとフッタが付加され、画像データが順方向で取得された場合は、フラグ0が格納され、画像データが逆方向で取得された場合は、フラグ1が格納されている。
【0038】
例えば、画像データ301,画像データ302,画像データ303,画像データ304という順番で読み出す場合に、読み出し制御部104は、まず画像データ301のヘッダ401のフラグ0を読み込み、フラグ0に従って順序a,b,cで画像データ301を検査処理用メモリ106へ送る。同様に、画像データ302のヘッダ403のフラグ0を読み込み、フラグ0に従って順序d,e,fで画像データ302を検査処理用メモリ106へ送る。次に、画像データ303のヘッダ405のフラグ1を読み込み、フラグ1に従って書き込み時とは逆の方向の順序i,h,gで画像データ303を読み込み、検査処理用メモリ106へ送る。次に、画像データ304のヘッダ407のフラグ1を読み込み、フラグ1に従って書き込み時とは逆の方向の順序l,k,jで画像データ304を読み込み、検査処理用メモリ106へ送る。このように、画像データのヘッダとフッタの両方に、画像データ取得時の走査の方向を示す符号を格納することで、検査処理用メモリに常に同一の検査方向の回路パターンの画像データを格納することができる。
【0039】
図6は、画像処理システムの基本構成を示す構成図であり、図2に示した構成を簡略化したものである。図6に示した実施例では、取得した画像データを分配用メモリ103に一旦格納せずに、直接検査処理用メモリ106,108,110へ送る構成としている。検出部100で検出された画像データ毎に、ヘッダとフッタを設定し、制御情報付加部101で検査方向を示すフラグ等の制御情報を付加する。この画像データは、分配制御部105へ送られ、分配制御部105では、フラグに従って画像データの順序を並べ替えて検査処理用メモリ106,108,110へ画像データを分配する。画像データが分配されるときには、ヘッダとフッタの制御情報は削除される。検査処理用メモリ106,108,110と検査処理部107,109,111とは対になっており、検査処理部107,109,111で信号の差がとられて欠陥が検出される。図2と異なるのは、分配用メモリ103を省略した構成とした点であり、その結果、書き込み制御部102と読み出し制御部104も不要となっている。
【0040】
本実施例では、検査方向が逆の場合に、分配制御部105で、画像データの順序を逆にする必要があるため、分配制御部105での制御が複雑になるが、分配メモリに一旦格納する必要がないので、メモリへの書き込み,読み出し時間が不要となり、高速化をはかることができる。
【0041】
図7は、画像処理部5で実行される検査処理の内容を示す構成図である。検査処理部107は、図2や図6に示した検査処理用メモリ106から、処理パラメータである画像データサイズ,画像検出方向,次ヘッダ位置が格納されたヘッダの情報を読み出す。次に、読み出したヘッダの情報に従い、画像データを検査処理用メモリ106から検査処理部107へ読み込む。検査処理部107は、読み込んだヘッダの情報に従い、画像データの検査処理を行う。
【0042】
検査処理は、図2に示した検査処理部107,109,111に読み込まれた各画像データの信号量のレベルを揃えるように調整し、図1に示した演算部48で2つの画像データを比較し、差をとることで行われる。3つの画像データのいずれかに欠陥がある場合、3つの画像データのパターンが同一で、信号レベルも同一であれば、2つの画像データの比較を2回行うことで、どの画像データに欠陥があるかを知ることができる。比較により、信号量に差がある画素が抽出され、ノイズ成分と欠陥とを区別するために、差の信号量が予め設定された閾値よりも大きい値の画素を欠陥と判定し、その座標を求める。欠陥の大きさ,形状は様々なので、代表座標の求め方を予め定義しておき、ひとつの欠陥について代表座標を決定し、全体制御部49へ送信する。代表座標の求め方として、たとえば、重心の座標,長手方向の中心の座標等が考えられる。次に、画像データに付加されたヘッダの次ヘッダ位置に基づいて、次の画像データを読み込み,検査処理を繰り返す。
【0043】
以上述べた本発明の実施態様によれば、ウェハを検査する検査システムにおいて、取得した画像の検査方向を、画像データに付加したヘッダとフッタに書き込み、検査方向を考慮して画像データを検査処理用メモリへ読み込んで比較検査を行うので、画像データを検査方向で反転させるための専用の回路を新たに設けることなく、画像データの比較検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】電子ビームを用いた回路パターン検査装置の構成図。
【図2】画像処理システムの基本構成を示す構成図。
【図3】被検査基板の画像データの走査方向を示す平面図。
【図4】記憶手段に画像データが格納されるときのデータ構成図。
【図5】記憶手段に画像データが格納されるときのデータ構成図。
【図6】画像処理システムの基本構成を示す構成図。
【図7】画像処理部で実行される検査処理の内容を示す構成図。
【符号の説明】
【0045】
1 回路パターン検査装置
5 画像処理部
6 インターフェース
9 被検査基板
19 電子ビーム
45 記憶手段
46 画像処理回路
47 欠陥データバッファ
48 演算部
49 全体制御部
55 マップ表示部
56 画像表示部
61 補正制御回路
100 検出部
101 制御情報付加部
102 書き込み制御部
103 分配用メモリ
104 読み出し制御部
105 分配制御部
106,108,110 検査処理用メモリ
107,109,111 検査処理部
301,302,303,304 画像データ
401,403,405,407 ヘッダ
402,404,406,408 フッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象を電子ビームまたは光で走査して画像データを生成する検出部、該画像データを格納する検査処理用メモリ、該検査処理用メモリに格納された前記画像データを読み出して検査処理を行う検査処理部、前記画像データに制御情報を付加する制御情報付加部を備え、前記検査処理部は、付加された前記制御情報に基づいて前記画像データを読み出すことを特徴とする検査システム。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記制御情報付加部は、前記画像データにヘッダ及びフッタを付加し、該ヘッダおよびフッタに同一内容の前記制御情報が書き込まれることを特徴とする検査システム。
【請求項3】
請求項1の記載において、前記画像データを前記走査の順序で書き込む分配用メモリを備え、前記制御情報付加部で前記画像データに付加された制御情報に基づいて、前記分配用メモリに画像データが書き込まれたときの順序に対して読み出される順序が同じか逆かを決定し、決定された順序で読み出されて前記検査処理用メモリに書き込まれることを特徴とする検査システム。
【請求項4】
請求項1の記載において、前記制御情報は、前記画像データの次に格納される画像データのヘッダの位置を示す情報を含むことを特徴とする検査システム。
【請求項5】
請求項1の記載において、前記検査処理用メモリは複数であり、前記検査処理部は複数であり、前記画像データに付加される前記制御情報は少なくとも分配情報を含み、該分配情報に基づいて前記複数の検査処理用メモリへ前記画像データを分配する分配処理部を備えたことを特徴とする検査システム。
【請求項6】
請求項5の記載において、前記分配処理部の前段にバッファメモリである分配用メモリ、該分配用メモリへの前記画像データの書き込み制御を行う分配用メモリ書き込み制御部、前記分配用メモリからの前記画像データの読み出し制御を行う分配用メモリ読み出し制御部を備えることを特徴とする検査システム。
【請求項7】
検査対象を電子ビームまたは光で走査して生成された画像データに制御情報を付加して検査処理用メモリへ格納し、付加された前記制御情報に基づいて前記検査処理用メモリに格納された前記画像データを読み出し、画像データを比較して欠陥を検出することを特徴とする検査システムにおける検出画像の処理方法。
【請求項8】
請求項7の記載において、前記画像データにヘッダ及びフッタが付加され、該ヘッダおよびフッタに同一内容の前記制御情報が書き込まれることを特徴とする検査システムにおける検出画像の処理方法。
【請求項9】
請求項7の記載において、前記画像データは分配用メモリに前記走査の順序で書き込まれ、前記画像データに付加された制御情報に基づいて、前記分配用メモリに画像データが書き込まれたときの順序に対して読み出される順序が同じか逆かを決定し、決定された順序で読み出されて前記検査処理用メモリに書き込まれることを特徴とする検査システムにおける検出画像の処理方法。
【請求項10】
請求項7の記載において、前記制御情報は、前記画像データの次に格納される画像データのヘッダの位置を示す情報を含むことを特徴とする検査システムにおける検出画像の処理方法。
【請求項11】
請求項7の記載において、前記検査処理用メモリは複数であり、前記画像データに付加される前記制御情報は少なくとも分配情報を含み、該分配情報に基づいて前記複数の検査処理用メモリへ前記画像データを分配することを特徴とする検査システムにおける検出画像の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−128626(P2010−128626A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300312(P2008−300312)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】