説明

検索装置、プログラム、及び検索方法

【課題】検索技術において、擬人化の程度をより向上させる。
【解決手段】所定の検索対象物を所定のジャンルで分類したときの各ジャンルに関するユーザの嗜好状況を示すユーザ嗜好情報を記憶するユーザ嗜好記憶手段9、及び検索対象物を対象とするユーザ嗜好情報を考慮した検索を、検索結果がユーザにより採択されるまで繰り返す検索処理を行う検索手段を備えた検索装置において、検索処理が行われる毎に前記採択に至るまでに要した検索回数Nを、所定の検索履歴を生成すべく記憶する検索履歴記憶手段10、11を設け、検索手段により、検索履歴中の検索回数Nに基づき、所定の場合には、ユーザ嗜好情報により示されるユーザの嗜好と異なる検索結果となる検索を行うようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の検索対象物について、それを分類する所定のジャンルに関するユーザの嗜好を考慮した検索を行う検索装置、プログラム、及び検索方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、カーナビゲーションシステム等が有するエージェント機能は、エージェントと呼ばれる所定のソフトウェア、音声による入出力を行うための音声認識手段、運転者等のユーザの嗜好や検索対象等を記憶するデータベース、データベースに基づく検索を行うための検索システム等によって実現される。擬人化したエージェントによれば、ユーザの発話に適合した応対を音声により行ったり、ユーザの発話による種々の要求内容を認識し、その要求に適合した検索結果を音声により提案したりすることができる。つまり、エージェント機能は、エージェントとユーザがより高度なコミュニケーションを取ることを可能にし、運転を有意義なものにしてくれる。
【0003】
このようなエージェント機能における検索方法に関する技術として、過去の履歴情報を利用し、レストラン等の検索結果を提示するものが知られている(たとえば特許文献1参照)。また、ユーザの嗜好情報に基づき、案内するレストランを選択して提示し、この選択が否定されると、別ジャンルのレストランを紹介するようにしたものも知られている(たとえば特許文献2参照)。
【0004】
一方、エージェント機能における回答方法に関する技術としては、ユーザへの検索結果の回答に際し、検索結果についての自信度に応じて、感情表現を加えるとともに、提示した検索結果に対するユーザからの回答に応じ、応答を変えるようにしたものが知られている(たとえば特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−222688号公報
【特許文献2】特開2001−249945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のエージェント機能によれば、エージェントはユーザからの検索要求に対し、毎回、ユーザの嗜好に適合した検索結果を提案するので、その提案を選択するユーザに対し、選択の偏りを生じさせることになる。また、エージェント機能は、擬人化していることが、従来のナビゲーション装置における検索システムに対する利点である。しかし、常にユーザの要求どおりに応対したり、ユーザの嗜好に適合した検索結果ばかりを提案したりするのであれば、真に擬人化を図ったものとはいえない。つまり、従来のナビゲーション装置において、検索結果の提示を、単に音声による提示に置き換えただけのものにすぎない。実際の人間同士の会話においては、たまには相手により自分の嗜好が否定されたりするからである。
【0007】
本発明の目的は、このような従来技術の問題点に鑑み、検索装置又は検索方法において、擬人化の程度をより向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための第1の発明は、所定の検索対象物を所定のジャンルで分類したときの各ジャンルに関するユーザの嗜好状況を示すユーザ嗜好情報を記憶するユーザ嗜好記憶手段と、検索対象物を対象とするユーザ嗜好情報を考慮した検索を、検索結果がユーザにより採択されるまで繰り返す検索処理を行う検索手段とを備えた検索装置に関する。そして、検索処理が行われる毎に、前記採択に至るまでに要した検索回数Nを、所定の検索履歴を生成すべく記憶する検索履歴記憶手段を備え、検索手段は、検索履歴中の検索回数Nに基づき、所定の場合に、ユーザ嗜好情報により示されるユーザの嗜好と異なる検索結果となる検索を行うものであることを特徴とする。
【0009】
ここで、検索装置としては、たとえば、カーナビゲーションシステムに組み込まれ、各種設備等の検索を行うものが該当する。検索対象物としては、たとえば、レストランが該当する。検索対象物を分類している各ジャンルとしては、たとえば、検索対象物がレストランである場合の「和食」、「中華料理」、「フランス料理」、及び「イタリア料理」が該当する。ユーザの嗜好状況としては、たとえば、「好き」、「普通」、「嫌い」の語によって示されるものが該当する。検索結果についてユーザによる採択がなされたことは、たとえば、ユーザによる肯定を意味する発話を認識したことによって確認することができる。
【0010】
各回の検索は、検索毎に異なる検索結果が得られるように、検索の条件、方法、論理等に変化を加えながら行うことができる。検索手段による検索は、たとえば、ユーザによる検索対象物に関する検索依頼を受け入れたことに応答して開始される。あるいは所定の時間が到来したことに基づいて開始される場合もある。検索は種々の条件を付して行うことができる。たとえば、現在地を中心とする所定の範囲内に存する検索対象物のみを対象として行ったり、ユーザが指定した条件に該当する検索対象物のみを対象として行ったりすることができる。所定の場合としては、たとえば、直近の数件の検索処理において検索回数Nがすべて1であるような場合や、検索回数Nの和が所定値以下であるような場合が該当する。
【0011】
この構成において、検索処理を開始すると、検索手段は検索履歴を参照し、過去の検索処理において採択に至るまでに要した検索回数Nに基づき、たとえば、直近の数件の検索処理において検索回数Nがすべて1であるような場合、ユーザの嗜好と敢えて異なる検索結果となる検索を行う。検索回数Nがすべて1であるということは、ユーザは各検索処理において初回の検索による検索結果を採択しており、ユーザは検索結果に非常に満足している状況であることを示している。このような状況において、敢えてユーザの嗜好と異なる検索結果を提案することは、ユーザの嗜好の偏りを是正し、嗜好に幅をもたせるアドバイスともなり得る。したがって、そのような提案に沿った音声によるメッセージを併せて出力することにより、すべてユーザの嗜好どおりの結果しか提示しない場合よりも、より人間と相対峙しているような感覚をユーザに対して与えることができる。
【0012】
第2の発明に係る検索装置は、所定の検索対象物を所定のジャンルで分類したときの各ジャンルに関するユーザの嗜好状況を示すユーザ嗜好情報を記憶するユーザ嗜好記憶手段、及び検索対象物を対象とするユーザ嗜好情報を考慮した検索を、検索結果がユーザにより採択されるまで繰り返す検索処理を行う検索手段を備えた検索装置に関する。そして、検索処理が行われる毎に、前記採択に至るまでに要した検索回数N、及び採択された検索結果としての検索対象物が属する前記分類によるジャンルを、所定の検索履歴を生成すべく記憶する検索履歴記憶手段を備え、検索手段は、検索履歴中の検索回数N及び対応するジャンルに基づき、所定の場合に、前記ユーザ嗜好情報により示されるユーザの嗜好と異なる検索結果となる検索を行うものであることを特徴とする。すなわち、第1発明に比べて、さらに、採択された検索結果としての検索対象物が属するジャンルの履歴をも考慮して、ユーザ嗜好と異なる検索結果となる検索を行うことができるようにしている。
【0013】
第3の発明に係る検索装置は、第2発明において、検索手段は、ユーザ嗜好と異なる検索結果となる検索を、検索履歴中のジャンルに基づき、検索結果としての検索対象物が、検索履歴中のジャンルにおける偏りを是正することとなるジャンルに属するものとなるように行うものであることを特徴とする。たとえば、検索履歴における直近数件の検索処理に係るジャンルがすべて同一であるとすれば、検索対象物から、そのジャンルに属するものを除外することにより、偏りを是正する方向での検索結果の提示を行うことができる。
【0014】
第4の発明に係る検索装置は、第1〜第3のいずれかの発明において、検索手段は、検索履歴中の検索回数Nに基づく所定の判定対象値が大きいほどユーザ嗜好に沿った検索結果となり、判定対象値が小さいほどユーザ嗜好と異なる結果となるように、検索を行うものであることを特徴とする。判定対象値としては、たとえば、検索履歴における直近数回分の検索処理についての検索回数Nの和が該当する。
【0015】
第5の発明に係る検索装置は、第1〜第4のいずれかの発明において、各回の検索毎に、検索結果がユーザ嗜好に沿っているか又はユーザ嗜好と異なっているかの程度に応じて、異なる内容のメッセージの発声を行うことを特徴とする。たとえば、検索結果がユーザ嗜好に完全に沿っている場合には、検索結果としての検索対象物が属するジャンルを「****」とすれば、「****にしましょう。」と発声し、検索結果がユーザ嗜好に反する場合には、「今回は、****にしてみませんか。」と発声することが該当する。
【0016】
第6の発明に係る検索装置は、第1〜第5のいずれかの発明において、採択に至るまでの検索回数をカウントする手段を備え、検索手段は、カウント値が多いほどユーザ嗜好に沿った検索結果となり、カウント値が少ないほどユーザ嗜好と異なる検索結果となるように、各回の検索を行うものであることを特徴とする。たとえば、第4発明において、各回の検索に使用する判定対象値として、このカウント値を加算したものを採用することにより達成することができる。
【0017】
第7の発明に係る検索装置は、第1〜第6のいずれかの発明において、検索対象とすべき検索対象物の前記分類によるジャンルが指定されており、そのジャンルが検索履歴において、最近多く記録されていると所定の基準に基づいて判定できる場合には、指定されているジャンルとは異なるジャンルの検索対象物を対象とする検索を行うことをユーザに対して提案する手段を有することを特徴とする。所定の基準としては、たとえば、検索履歴における直近数件の検索処理において、当該ジャンルが所定以上の頻度で記録されているか否かの基準が該当する。
【0018】
第8の発明に係る検索装置は、第7発明において、前記提案手段は、検索履歴において、前記指定されているジャンルに対応する検索回数Nに基づく所定の判定対象値が所定値より大きい場合には、前記提案をより強く行うものであることを特徴とする。判定対象値としては、たとえば、検索履歴における直近数回分の検索処理についての検索回数Nの和が該当する。
【0019】
第9の発明に係る検索装置は、第1〜第8のいずれかの発明において、検索対象とすべき検索対象物の前記分類によるジャンルとしてユーザの嗜好と異なるものが指定されているとユーザ嗜好情報に基づいて判定できる場合、又は検索装置が車両に搭載されていて同乗者がいる場合には、いつもとは異なる傾向で検索を行う旨の音声によるメッセージを出力するとともに、検索手段は、ユーザ嗜好情報、及び検索履歴を参照することなく検索処理を行うものであることを特徴とする。
【0020】
第10の発明に係るプログラムは、コンピュータを、第1〜第9のいずれかの発明に係る検索装置における各手段として機能させることを特徴とする。
【0021】
第11の発明に係る発明は、所定の検索対象物を所定のジャンルで分類したときの各ジャンルに関するユーザの嗜好状況を示すユーザ嗜好情報を記憶するユーザ嗜好記憶工程、及び前記検索対象物を対象とするユーザ嗜好情報を考慮した検索を、検索結果がユーザにより採択されるまで繰り返す検索処理を行う検索工程を備えた検索方法に関する。そして検索処理が行われる毎に前記採択に至るまでに要した検索回数Nを、所定の検索履歴を生成すべく記憶する検索履歴記憶工程を備え、検索工程では、検索履歴中の検索回数Nに基づき、所定の場合に、ユーザ嗜好情報により示されるユーザの嗜好と異なる検索結果となる検索を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、所定の検索履歴に基づき、所定の場合に、ユーザ嗜好情報により示されるユーザの嗜好と異なる検索結果となる検索を行うようにしたため、検索装置をより擬人化することができる。また、ユーザの嗜好の偏りを是正し、嗜好の幅を広げる方向での提案を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は本発明の一実施形態に係るナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。この装置は、装置が搭載されている車両に関する車両情報を提供するナビゲーション処理部1、エージェント機能に関する処理を行うエージェント処理部3、運転者等のユーザの発話による音声を入力するためのマイク5、マイク5を介して入力される音声を音声信号に変換する音声入力装置6、音声入力装置6からの音声信号に基づきユーザの発言内容を判断する入力演算部7、入力演算部7からの発言内容に関する情報に基づき、レストラン等の検索を行う検索システム8、検索システム8からの検索結果に対して必要な処理を施す出力演算部12、出力演算部12の処理結果を音声信号に変換する音声出力装置13、及び音声出力装置13からの音声信号を音声に変換して発声するスピーカ14を備える。
【0024】
ナビゲーション処理部1には、車両の目的地を示す目的地データ、及び車両が現在走行している位置を示す現在地データ等の車両情報2が随時入力される。エージェント処理部3は、ユーザとの会話によって得られる車両内データ4を有する。車両内データ4には、同乗者の有無、同乗者の数、同乗者は家族、友人又は恋人であるか等の情報が含まれる。
【0025】
検索システム8は、ユーザ嗜好記憶部9、最終結果記憶部10、及び“検索回数/件”記憶部11を備える。ユーザ嗜好記憶部9は、過去の検索履歴やユーザとエージェントとの会話内容に基づいて得られる、ユーザが好む料理等のユーザの嗜好を示すデータを記憶する。最終結果記憶部10は、ユーザが最終的に採択した検索結果としてのレストランのジャンル、つまりそのレストランに行って食べた料理のジャンルを記憶する。“検索回数/件”記憶部11は、各件の検索処理において、検索結果としてのレストランをユーザが採択し、そのレストランに行くことを決定するまでに行った検索の回数Nを記憶する。この検索回数Nは、検索結果をユーザが拒否した回数に対応する。
【0026】
図2は上記構成におけるレストランの検索処理を示すフローチャートである。レストランの検索処理は、検索結果をユーザが肯定し、採択するまで検索を繰り返すことにより行われる。つまり、検索結果として提示したレストランに決定する旨のユーザからの返答が得られたときに終了する。検索処理に際しては、エージェント処理部3は、ステップ21において、ナビゲーション処理部1に入力される車両情報(ナビゲーションデータ)に基づき、車両の現在地を監視するとともに、エージェント処理部3が有する車両内データに基づき、車両に乗車している者の人数を把握している。
【0027】
この状態において、ナビゲーション装置は、次のような場合に、レストランの検索処理を開始する。すなわち、マイク5を通じてユーザからレストランの検索依頼があったことに応答して検索処理を開始する。また、所定の食事時間となったことに基づいてナビゲーション装置がスピーカ14を通じ、「レストランの検索を行いますか」と提案した結果、マイク5を通じてユーザがレストランの検索を行うことを承諾したことに応答して検索処理を開始する。検索処理は、検索システム8において行われる。
【0028】
検索処理を開始すると、ナビゲーション装置は、まず、ステップ22において、検索処理における検索回数をカウントするためのカウンタCを1に設定する。次に、ステップ23において、ステップ21で把握している乗車人数に基づき、乗車人数が1人、すなわち運転者のみが乗車しているのであれば検索対象のレストランを定食屋の範囲に限定し、乗車人数が2人以上、すなわち同乗者がいるのであれば検索対象を通常のレストランの範囲とするといったように、レストランのおおまかな分類に基づき、検索対象とするレストランの範囲をおおまかに限定する。
【0029】
その後、ステップ24において、ユーザ嗜好記憶部9のデータに基づき、ユーザの各料理に対する嗜好の状況を示すユーザ嗜好情報を取得する。また、最終結果記憶部10のデータに基づき、最近の各検索処理において、ユーザが最終的に採択したレストランのジャンルを示す最終結果情報を取得する。また、“検索回数/件”記憶部11のデータに基づき、最近の各検索処理における検索回数Nを取得する。
【0030】
図3はこれらの取得情報を例示する図である。同図(a)は、ユーザ嗜好記憶部9から取得されるユーザ嗜好情報を示す表であり、左欄の「和食」、「中華料理」、「フランス料理」、及び「イタリア料理」の各料理ジャンルについて、ユーザの嗜好の程度を右欄において、「好き」、「普通」、及び「嫌い」により示している。
【0031】
図3(b)〜(c)はそれぞれケース1〜3の3つのケースにおける、直近の何件かのレストラン検索における上記最終結果情報及び検索回数Nを示す表である。「使用日」の欄には、各件の検索処理を行った日の日付が示されている。「最終結果」の欄には各日付の検索処理における最終結果情報が示されている。また、「検索回数/件」の欄には、各日付の検索処理における検索回数Nが示されている。最終結果情報を構成する各レストランのジャンルとして、各レストランが提供する料理のジャンルが用いられている。
【0032】
次に、ステップ25において、直近3件分の検索回数Nの合計値ΣNが、12を超えるか、12以下でかつ7以上であるか、又は6以下であるかを判定する。12を超える場合はステップ26へ進み、12以下でかつ7以上である場合はステップ27へ進み、6以下である場合にはステップ28へ進む。
【0033】
ここで、ΣNが12を超えているということは、ユーザが検索結果に満足していない傾向にあることを意味する。ΣNが12以下で7以上であるということは、ΣNはさほど大きくもなく、かといって検索結果については1回の検索でユーザが肯定的結論を出していない傾向があるので、ユーザは検索結果をある程度は信頼していることを意味する。ΣNが6以下であるということは、最近では1〜2回の検索で肯定的結論を出しているので、ユーザは検索結果を完全に信頼していることを意味する。
【0034】
ステップ26へ進むと、上記ユーザ嗜好情報により示されるユーザ嗜好を重視して検索を行い、ステップ29において、従来どおりのユーザの嗜好に合わせた検索結果の抽出を行う。そして、ステップ32において、検索結果として抽出したレストランのジャンル「****」に基づき、「****にしましょう。」との発声を行う。これにより、ユーザに対して不快な気持ちを与えるのを極力防止することができる。
【0035】
ステップ27へ進んだ場合には、最近の傾向を重視した検索を行い、ステップ30において、上記ユーザ嗜好情報により示されるユーザの嗜好を重視しつつも、上記最終結果情報により示される最近の最終結果に対応するジャンルの傾向から外れるようにして、ジャンルにおける採択の偏りを減らす方向での提案とになるように、検索結果の抽出を行う。そして、ステップ33において、検索結果として抽出したレストランのジャンル「****」に基づき、「たまには****にしましょうか。」との発声を行う。
【0036】
また、ステップ28へ進んだ場合には、ユーザの嗜好に敢えて反する方向で検索を行い、ステップ31において、ユーザにおいて新たな採択の幅が増えるような提案となるように、敢えてユーザの嗜好から外れた検索結果の抽出を行う。そして、ステップ34において、検索結果として抽出したレストランのジャンル「****」に基づき、「今回は、****にしてみませんか。」との発声を行う。
【0037】
検索結果についての発声が完了すると、次に、ステップ35において、ユーザの反応が肯定的か否か、すなわち検索結果が採択されたか否かを判定する。否定的であると判定した場合には、ステップ36においてカウンタCに1を加算してからステップ23へ戻り、上述と同様にしてステップ24〜34の処理を行う。ただし、2回目以降の処理の場合、ステップ25の判定においては、3件分の検索回数Nの合計値ΣNに代えて、該合計値ΣNに対しカウンタCの値を加えた値を用いて、同様の判定が行われる。したがって、検索回数が増えるほど、ユーザの嗜好がより重視される検索が行われることになる。
【0038】
ステップ35において、ユーザの反応が肯定的であると判定した場合には、ステップ37において、検索結果の反映を行う。すなわち、最終的な検索結果としてのレストランのジャンルを、日付とともに、最終結果記憶部10において記憶する。また、カウンタCの値を、日付とともに、“検索回数/件”記憶部11において記憶する。これにより図2の処理を終了する。
【0039】
このレストラン検索処理によれば、ステップ25による場合分けに応じて、ステップ26〜28のいずれかの検索を行うようにしたため、従来の検索システムの場合のように毎回のレストラン検索においてユーザの嗜好に従順な検索結果のみを提案したり、ユーザの嗜好を無視した提案を行ってユーザに不愉快な思いをさせたりすることなく、ナビゲーション装置をより高度に擬人化することができる。
【0040】
たとえば、図3(b)に示すケース1の場合、直近3件の検索処理における検索回数Nはそれぞれ「8」、「2」、及び「5」である。したがって、その合計値ΣNは15であり、12を超えているので、ユーザの嗜好を重視し、ユーザの嗜好に合わせた検索結果を抽出することになる(ステップ26、29)。つまり、ΣNの値が本ケースのような場合には検索回数が多くて検索に長時間を要するとユーザは不満に思うであろうし、これ以上ユーザに不満をもたれると困る。そこで、図3(a)のユーザ嗜好情報に基づき、ユーザが嫌いなフランス料理のレストランは検索対象から外し、ユーザが好む和食のレストランを検索結果として抽出し(ステップ29)、「和食にしましょう。」と発声するようにしている(ステップ32)。
【0041】
また、図3(c)に示すケース2の場合、直近3件分の検索回数Nは「3」、「1」、及び「5」である。したがって、ΣNは9であり、7以上で12以下であるから、図3(a)の表で示されるユーザの嗜好を重視しつつも、最近の最終結果の傾向性から外れるようにして、採択の偏りを減らす方向での提案を行うことができるように、検索結果を抽出する(ステップ27、30)。つまり、ΣNの値が本ケースのような場合には検索に時間を要しても不満は少ないだろうし、図3(c)の最終結果情報によれば最終的にイタリア料理に決めている場合は中華料理に比べて少ない。また、フランス料理も少ないけど、図3(a)のユーザ嗜好情報によればフランス料理を提案すると否定される。そこで、ユーザの採択によるジャンルの偏りを是正する方向での提案となるように、イタリア料理のレストランを検索結果として抽出し(ステップ30)、「たまには、イタリア料理にしてみましょうか。」と発声するようにしている(ステップ33)。
【0042】
また、図3(d)に示すケース3の場合、直近3件分の検索回数Nは「1」、「1」、及び「1」である。したがって、ΣNは3であり、6以下であるから、敢えてユーザの嗜好に反する結果となるように検索を行う(ステップ28、31、34)。つまり、ΣNの値が本ケースのような場合には検索に時間を要しても不満はないだろうし、図3(c)の最終結果情報によれば和食が連続している。そこで、ユーザが嫌いなフランス料理のレストランを検索結果として抽出し、「今回は、フランス料理にしてみませんか。」と発声するようにしている(ステップ34)。
【0043】
本実施形態によれば、最近の検索処理における検索回数Nに応じ、検索回数Nが多いときには検索結果に対するユーザの満足度が低いと捉え、ユーザの嗜好により沿った検索を行う一方、検索回数Nが少ないときには検索結果に対するユーザの満足度が高いと捉えてユーザの嗜好に反する提案をも行うようにしたため、ナビゲーション装置を、より擬人化し、かつ、ユーザの採択の偏りを解消して採択の幅を広げることができる。つまり、図3(b)〜(d)で示されるような各ジャンルに対応する検索回数Nを、各ジャンルについて平均化させることになる。また、ユーザの嗜好に反する提案ばかりしていたりすると、逆に装置が使いにくいものになるので、敢えてユーザの嗜好に反する提案をするタイミングを、検索結果に対するユーザの満足度が高いとき等に設定することによって、装置が使いにくいものとなるのを防止することができる。
【0044】
なお、本発明は上述実施形態に限定されることなく、適宜変形して実施することができる。たとえば、上述においては、単にレストランの検索が依頼され、又はレストランの検索の提案が承諾されたことに応じて行われる検索処理について述べた。しかし、「和食」といったようなレストランのジャンルを指定してレストランの検索を依頼された場合についても本発明を適用することができる。
【0045】
すなわち、ジャンルを指定してレストランの検索が依頼された場合、ユーザの指定したジャンルとは異なるジャンルのレストランの検索を行うことを提案することができる。つまり、たとえば、ユーザにより「和食が食べたいのですけど、レストランを探してください。」との発話がなされることにより、「和食」の指定を伴うレストランの検索が依頼されたとき、最終結果記憶部10のデータに基づき、最近、最終的に「和食」のレストランが採択される結果が続いていると判定できる場合には、「この間も行ったばかり・・・。」、「たまには他の料理も食べない?」というように、他のジャンルのレストランの検索を促すような提案を行うことができる。
【0046】
また同様にして、「和食が食べたいのですけど、レストランを探してください。」との発話による「和食」の指定を伴うレストランの検索が依頼されたとき、最終結果記憶部10のデータに基づき、最近、最終的に「和食」のレストランが採択される結果が続いていると判定できるとともに、“検索回数/件”記憶部11のデータに基づき、ユーザは検索結果を信頼していると判定できる場合には、「嗜好を変えて、フランス料理も試してみませんか?」、又は「私はフランス料理が食べてみたい。」と発声し、敢えて、ユーザの嗜好に反する提案を行うことができる。
【0047】
また、上述においては、検索において考慮すべきユーザの嗜好として、レストランが提供する料理のジャンルを対象とする場合について述べているが、この代わりに、レストランの種類に関するユーザ嗜好を考慮してレストランの検索を行う場合にも、本発明を適用することができる。レストランの種類としては、和食のレストランとして、「寿司屋」、「蕎麦屋」、「定食屋」等を挙げることができる。この場合、ユーザ嗜好の対象を料理ジャンルからレストランの種類に変更するだけで、図2の処理をそのまま適用することができる。
【0048】
また、上述においては、直近3件の検索処理における検索回数Nを考慮して、検索方法の場合分けを行うようにしているが、考慮すべき検索処理の件数としてはこれに限らず、適宜他の件数を採用することができる。また、ステップ25による場合分けにおいて、閾値として、「12」及び「6」を用いているが、この値についても、適宜、他の数値を採用することができる。
【0049】
また、上述においては、単にレストランの検索が依頼され、又はレストランの検索の提案が承諾されたことに応じて行われる検索処理について述べているが、これに限らず、ユーザ自身の嗜好とは異なるジャンルを指定して検索が依頼された場合にも本発明を提供することができる。たとえばユーザにより「フランス料理が食べたいので、レストランを探してください。」との発話がなされることにより、「フランス料理」の指定を伴うレストランの検索が依頼されたとする。このとき、ユーザ嗜好記憶部9のデータに基づき、ユーザの嗜好に反する検索が依頼されたと判定することができ、あるいはさらに、最終結果記憶部10のデータに基づき、今までの最終結果のジャンル、たとえば「定食屋」とは異なる傾向のジャンル、たとえば「レストラン」を指定した検索が依頼されたと判定することができる場合には、「(いつもと違いますね)、今日は何かあるのですか?」と問いかけて、これに対しユーザが「同乗者(友人、恋人、又は家族)がいます。」と応えた場合には、さらに「いつもと違う傾向で探します。」と発声し、ユーザ嗜好情報や最終結果情報、検索回数N等の今までの履歴を参照することなく検索を行うことができる。
【0050】
また、上述においては、同乗者がいる場合については特に言及しなかったが、同乗者がいる場合にも、本発明を適用することができる。たとえば、ユーザによる「レストランを検索してください。」との発話に対し、「今日は、大勢で食事に行くので、いつもとは違う傾向で検索しますね。」、「フランス料理はどうですか?」と応対し、ユーザ嗜好情報や最終結果情報、検索回数N等の今までの履歴を参照することなく検索を行うことができる。
【0051】
また、上述においては、ステップ28においてユーザの嗜好に反する検索を行うようにしており、その具体例として、図3(d)のケース3においては、図3(a)のユーザ嗜好情報においてユーザが「嫌い」とされているフランス料理のレストランを検索結果として抽出するようにしているが、この代わりに、ユーザの嗜好が「普通」である中華料理やイタリア料理のレストランを検索結果として提案するようにしてもよい。また、初回から所定回数までの検索においてはユーザが嫌いな料理のレストランを検索結果として提案し、それらの提案がユーザによって拒否され、所定回数を超えた検索を行うときに、ユーザの嗜好が普通である料理のレストランを提案するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態に係るナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の装置におけるレストランの検索処理を示すフローチャートである。
【図3】図1の装置において記憶されるユーザ嗜好情報、最終結果情報、及び検索回数Nを例示する図である。
【符号の説明】
【0053】
1:ナビゲーション処理部、2:車両情報、3:エージェント処理部、4:車両内データ、5:マイク、6:音声入力装置、7:入力演算部、8:検索システム、9:ユーザ嗜好記憶部、10:最終結果記憶部、11:“検索回数/件”記憶部、12:出力演算部、13:音声出力装置、14:スピーカ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の検索対象物を所定のジャンルで分類したときの各ジャンルに関するユーザの嗜好状況を示すユーザ嗜好情報を記憶するユーザ嗜好記憶手段、及び
前記検索対象物を対象とする前記ユーザ嗜好情報を考慮した検索を、検索結果がユーザにより採択されるまで繰り返す検索処理を行う検索手段を備えた検索装置であって、
前記検索処理が行われる毎に前記採択に至るまでに要した検索回数Nを、所定の検索履歴を生成すべく記憶する検索履歴記憶手段を備え、
前記検索手段は、前記検索履歴中の検索回数Nに基づき、所定の場合に、前記ユーザ嗜好情報により示されるユーザの嗜好と異なる検索結果となる検索を行うものであることを特徴とする検索装置。
【請求項2】
所定の検索対象物を所定のジャンルで分類したときの各ジャンルに関するユーザの嗜好状況を示すユーザ嗜好情報を記憶するユーザ嗜好記憶手段、及び
前記検索対象物を対象とする前記ユーザ嗜好情報を考慮した検索を、検索結果がユーザにより採択されるまで繰り返す検索処理を行う検索手段を備えた検索装置であって、
前記検索処理が行われる毎に、前記採択に至るまでに要した検索回数N、及び採択された検索結果としての検索対象物が属する前記分類によるジャンルを、所定の検索履歴を生成すべく記憶する検索履歴記憶手段を備え、
前記検索手段は、前記検索履歴中の検索回数N及び対応するジャンルに基づき、所定の場合に、前記ユーザ嗜好情報により示されるユーザの嗜好と異なる検索結果となる検索を行うものであることを特徴とする検索装置。
【請求項3】
前記検索手段は、前記ユーザ嗜好と異なる検索結果となる検索を、前記検索履歴中のジャンルに基づき、検索結果としての検索対象物が、前記検索履歴中のジャンルにおける偏りを是正することとなるジャンルに属するものとなるように行うものであることを特徴とする請求項2に記載の検索装置。
【請求項4】
前記検索手段は、前記検索履歴中の検索回数Nに基づく所定の判定対象値が大きいほど前記ユーザ嗜好に沿った検索結果となり、前記判定対象値が小さいほど前記ユーザ嗜好と異なる結果となるように、前記検索を行うものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の検索装置。
【請求項5】
前記各回の検索毎に、検索結果が前記ユーザ嗜好に沿っているか又はユーザ嗜好と異なっているかの程度に応じて、異なる内容のメッセージの発声を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の検索装置。
【請求項6】
前記採択に至るまでの検索回数をカウントする手段を備え、前記検索手段は、前記カウント値が多いほど前記ユーザ嗜好に沿った検索結果となり、前記カウント値が少ないほど前記ユーザ嗜好と異なる検索結果となるように、各回の検索を行うものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の検索装置。
【請求項7】
検索対象とすべき検索対象物の前記分類によるジャンルが指定されており、そのジャンルが前記検索履歴において、最近多く記録されていると所定の基準に基づいて判定できる場合には、指定されているジャンルとは異なるジャンルの検索対象物を対象とする検索を行うことをユーザに対して提案する手段を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の検索装置。
【請求項8】
前記提案手段は、前記検索履歴において、前記指定されているジャンルに対応する検索回数Nに基づく所定の判定対象値が所定値より大きい場合には、前記提案をより強く行うものであることを特徴とする請求項7に記載の検索装置。
【請求項9】
検索対象とすべき検索対象物の前記分類によるジャンルとしてユーザの嗜好と異なるものが指定されていると前記ユーザ嗜好情報に基づいて判定できる場合、又は検索装置が車両に搭載されていて同乗者がいる場合には、いつもとは異なる傾向で検索を行う旨の音声によるメッセージを出力するとともに、前記検索手段は、前記ユーザ嗜好情報、及び検索履歴を参照することなく前記検索処理を行うものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の検索装置。
【請求項10】
コンピュータを、請求項1〜9のいずれかの検索装置における各手段として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項11】
所定の検索対象物を所定のジャンルで分類したときの各ジャンルに関するユーザの嗜好状況を示すユーザ嗜好情報を記憶するユーザ嗜好記憶工程、及び
前記検索対象物を対象とする前記ユーザ嗜好情報を考慮した検索を、検索結果がユーザにより採択されるまで繰り返す検索処理を行う検索工程を備えた検索方法であって、
前記検索処理が行われる毎に前記採択に至るまでに要した検索回数Nを、所定の検索履歴を生成すべく記憶する検索履歴記憶工程を備え、
前記検索工程では、前記検索履歴中の検索回数Nに基づき、所定の場合に、前記ユーザ嗜好情報により示されるユーザの嗜好と異なる検索結果となる検索を行うことを特徴とする検索方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−330858(P2006−330858A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−150178(P2005−150178)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】