説明

構成部分複合体、並びに構成部分複合体を製造するための方法

本発明は、特に自動車に使用するための構成部分複合体であって、第1の接触表面(3)を備えた第1の構成部分(1)と、第2の接触表面(5)を備えた少なくとも1つの第2の構成部分(4)とを有しており、前記第1の接触表面(3)が、マイクロ構造(7)を備えた表面組織(6)を有し、前記マイクロ構造(7)上にナノ構造(10)が重ねられている形式のものに関する。本発明によれば、前記両構成部分(1,4)の前記両接触表面(3,5)間に、素材結合するための媒体、特に接着剤層(12)が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載した構成部分複合体、並びに請求項11の上位概念部に記載した構成部分複合体を製造するための方法に関する。
【0002】
このような形式の構成部分複合体は、事前公開されていないDE102008040782A1号明細書により公知である。この公知の構成部分複合体においては、第1の構成部分の第1の接触表面に、レーザによって、マイクロ構造及び該マイクロ構造に重ねられたナノ構造が生ぜしめられる。次いで、第1の構成部分が、第2の接触表面を有する第2の構成部分によって射出成形で包囲され、この際に、第1の構成部分を表面微細加工することによって、両構成部分の両接触表面間の気密な接続が形成される。
【0003】
また、金属部分をプラスチックによって射出成形で包囲することは公知である。この場合、プラスチック材料との形状結合(形状による束縛)を可能にするために、金属部分に、例えばリブ又はウェーハ構造等のアンダカット部を備えたマクロ的な構造部が設けられている。使用された熱可塑性プラスチックは金属に付着しないにも拘わらず、振動負荷を巧みに利用することによって初めのうちは構成部分の気密性が得られる。しかしながらこの気密性は、温度変化及び/又は繰り返し応力又は媒体の影響を受けて一時的にしか得られない。
【0004】
また、"Frima TaiseiPlas"(大成プラス株式会社)の特許明細書によれば、金属部分の表面を化学的に微細加工し、続いてこのような形式で微細加工された表面に、射出成形法によりプラスチック構成部分を射出成形することが公知である。
【0005】
DE102004034824B4号明細書によれば、少なくとも1つの金属製のシール層を備えた金属性のフラットシール(Flachdichtung)が公知である。この場合、金属製のシール層は、レーザ光線によって生ぜしめられた表面構造(Oberflaechenstruktur)を備えており、該表面構造にエラストマー材料が被着される。
【0006】
また、表面における接着剤の取付けを改善するために、複数の構成部分を、場合によっては接着促進剤を介在して互いに結合することが公知である。
【0007】
発明の開示
従来技術のものから出発して、本発明の課題は、特に自動車のエンジンルーム内において構成部分複合体がさらされるような、温度変化及び繰り返し応力若しくは媒体の影響下においても、特に高いシール性が得られるような構成部分複合体を提供することである。この構成部分複合体は、有利には確実かつ持続的に気密でなければならない。さらに本発明の課題は、相応の構成部分複合体を製造するための方法を提供することである。
【0008】
この課題は、請求項1に記載した特徴を有する構成部分複合体によって、及び請求項12に記載した特徴を有する製造方法によって解決された。本発明の有利な実施態様は、従属請求項に記載されている。本発明の枠内において、明細書、請求項及び/又は図面に開示された特徴のうちの少なくとも2つよりなるすべての組み合わせが可能である。繰り返しを避けるために、方法に従って開示された特徴は、装置に従って開示された特徴でもあり、かつ請求可能である。同様に、装置に従って開示された特徴は、方法に従って開示された特徴でもあり、かつ請求可能である。
【0009】
本発明は、構成部分を素材結合(素材同士の結合)により結合する媒体特に接着剤層を介在させて両構成部分を接合する前に、構成部分複合体の第1の構成部分の表面を、マイクロ構造の他にナノ構造をも有する表面が得られるように、微細加工する、という思想に基づいている。この場合、ナノ構造はマイクロ構造上に位置するように配置され、マイクロ構造上にナノ構造が重ねられるようになっている。このような形式の表面微細加工された第1の構成部分は、構成部分複合体において、媒体特に接着剤層と第1の構成部分の接触表面との間のより改善された付着を保証する。
【0010】
本発明の特に有利な実施態様によれば、第2の接触表面も、前記第2の構成部分において、マイクロ構造及び該マイクロ構造に重ねられたナノ構造を備えた表面組織を有している。それによって2つの構成部分間の特に堅固で気密な結合が形成される。
【0011】
この場合、表面組織は選択的に、電磁線によって、電気的な微細加工によって又は機械的な微細加工によって形成されるので、それぞれの使用状況に応じて、表面構造の構成を最適化することができる。
【0012】
本発明の実施態様によれば、有利にはマイクロ構造のマイクロ構造エレメントが、1μm〜約999μm範囲の直径を有している。特に有利には、ナノ構造のナノ構造エレメントが、追加的に又は選択的に約1nm〜約999nm範囲の直径を有している。
【0013】
特に有利には、表面組織を生ぜしめるための電磁線としてレーザ光線が使用される。このために特に有利には、超短波パルスレーザが使用される。この場合、表面組織が、効果を高めるためにかつ/または不動態化のためにプロセス媒体の影響下で生ぜしめられるようになっていれば、特に有利である。この場合、プロセスガス特に不活性ガスが使用される。特に有利には、プロセスガスとして有利には、鋼又はアルミニウムより成る第1の構成部分上に酸化層が形成されるのを阻止するヘリウムが使用される。
【0014】
本発明の有利な実施態様によれば、使用された電磁線特にレーザ光線の波長は、約10nm〜約11μmの間の範囲より選択されている。また特に有利には、電磁線の波長は、約100nm〜約1500nmの間の波長範囲より選択されている。追加的に又は選択的に、有利な形式で、光線パルス継続時間特にレーザ光線パルス継続時間は、約10fs〜約10μs、特に有利には約100fs〜約100psの間の範囲より選択されている。相応の光線パラメータを選択することによって、重ねられたナノ構造を備えたマイクロ構造を有する所望の表面組織が得られる。
【0015】
特に堅固な構成部分複合体を形成するために、第2の接触表面、有利には第2の構成部分全体が、プラスチック特に熱可塑性プラスチックより形成されていて、第1の構成部分が少なくとも部分的に、前記第2の構成部分によって射出成形で包囲されている。これによって、接着剤層による素材結合(素材同士の結合)の他に、追加的に両構成部分間の形状結合(形状による束縛)が得られる。
【0016】
特に有利な実施例によれば、第1の構成部分と前記第2の構成部分とが、少なくともほぼ同じ熱膨張係数を有しており、それによって温度変化においても、シール性をより確実に保証することができる。
【0017】
特に有利には、構成部分複合体は、燃料噴射弁の構成部分であるか、又は特に制御装置のためのハウジングカバーの構成部分であるか、又はセンサの構成部分である。
【0018】
本発明はまた、構成部分複合体、特に前記構成部分複合体を製造するための方法に関する。
【0019】
この方法によれば、第1の構成部分と第2の構成部分との間に接着剤層を施す前に、第1の構成部分の接触表面が微細加工される。本発明の方法の核心は、第1の構成部分に表面微細加工を施し、この表面微細加工はマイクロ構造を有していて、このマイクロ構造にナノ構造が重ねられており、この表面微細加工によって、両構成部分の接触表面間に配置された媒体特に接着剤層と相俟って、特に第1の構成部分と接着剤層との間で構成部分複合体の改善されたシール性が得られる、という点にある。
【0020】
構成部分表面を化学的に変化させ、例えば不導体化させ、微細加工の効果を高めるために、第1の構成部分だけに形成されているか又は特に有利には両構成部分の接触表面に形成されている表面微細加工が、電磁線によって、有利な形式でプロセス媒体の影響下特にプロセスガス雰囲気下において生ぜしめられるようにすれば、特に有利である。
【0021】
本発明の実施態様によれば、有利には、表面微細加工を生ぜしめるために、超短波パルスレーザが使用される。
【0022】
媒体特に接着剤層との、表面微細加工に基づく接着性と共に、頑丈な形状結合(形状による束縛)を保証するために、有利には第1の構成部分を射出成形で包囲することによって、第2の構成部分と第1の構成部分とが形状結合式に結合されるようになっている。
【0023】
本発明のその他の利点、特徴及び詳細を、以下に図示の実施例を用いて具体的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】表面構造部を備えた第1の構成部分の斜視図である。
【図2】図1に示した表面構造部の概略的な拡大図である。
【図3】図1に示した第1の構成部分と、第2の構成部分と、これらの第1及び第2の構成部分間に配置された接着剤層とを備えた、構成部分複合体の断面図である。
【0025】
図1には、図3に示した構成部分複合体2の構成部分としての第1の構成部分1が示されている。
【0026】
第1の構成部分1は、図示の実施例では金属より構成されていて、第1の接触表面3を有している。該第1の接触表面3によって、第1の構成部分1は、図3に示した構成部分複合体2内において、接着剤層12を介在して、第2の接触表面5を有する第2の構成部分4に接続されている。
【0027】
第1の構成部分1、より正確には第1の接触表面3は、表面組織6を有している。表面組織6は図2に概略的に示されている。図1に示されているように、第1の接触表面3は全面的に表面組織6を有している。図2に示した表面組織6は、隆起部状及び/又は窪み状のマイクロ構造エレメント8を備えたマイクロ構造7を有している。マイクロ構造エレメント8は、ナノ構造エレメント9とナノ構造10とを備えており、ナノ構造10は、マイクロ構造エレメント8の外側領域にも存在する。ナノ微細加工/マイクロ微細加工された構成部分表面(第1の接触表面3)は、図3に示した構成部分複合体2において、第1の構成部1と接着剤層12との間で特に高い付着力を提供する。
【0028】
表面組織6を形成するために、まず構造化(微細加工)されていない第1の接触面3が、パルス発振されたレーザ光線によって照射される。この場合、レーザ光線は、第1の構成部分1の微細加工しようとする領域をスキャニングするように、スキャナーシステムによって偏光される。所望の表面構造を得るために、有利には高いパルス繰り返し周波数を有するフェムトレーザ(Femto-Laser)、ピコレーザ(Piko-Laser)又はナノセカンドレーザ(Nanosekunden-Laser)が使用される。図2に示した表面構造6を製造するための微細加工プロセスは、アルミニウム又は鋼より製造された第1の構成部分1上に酸化物層を形成するために、有利にはプロセスガス中で行われる。有利な形式で、レーザ光線が第1の接触表面3上において第1の構成部分1に対して相対的に移動する移動距離は、100mm/sと10000mm/sとの間である。
【0029】
図3に示した構成部分複合体2を製造するために、第1の構成部分1、正確には第1の接触表面3はその表面組織6が、接着剤層12を介在させて第2の構成部分4に接続される。この場合、第2の構成部分4は、金属、特に鋼、プラスチック、特に熱可塑性プラスチック又は熱硬化性プラスチック又はセラミックより成っていてよい。特に、第2の構成部分4の第2の接触表面5も、第1の構成部分1の第1の接触表面3に相当する表面組織6を有している。
【0030】
図示していない実施例において、第1の構成部分1は、第2の構成部分4によって少なくとも部分的に射出成形により包囲されていてよい。第2の構成部分4が第1の構成部分1の周縁つば11を抱き込むことによって、2つの構成部分1,4間の形状結合(形状による束縛)が得られる。選択的に、第1の構成部分1に、例えば第2の構成部分4によって射出成形で包囲された舌片その他を設けてもよい。特に有利には、第2の構成部分4は、ガラス繊維強化された及び/又はミネラル強化された(minerarverstaerkte)プラスチック、有利には熱可塑性プラスチック又は熱硬化性樹脂より成っている。
【0031】
種々異なる変化実施例が考えられる。例えば、第1の接触表面3に部分的に表面組織6だけを設けてもよい。表面組織6は、電磁線によってだけではなく、選択的に電気的な微細加工によって又は機械的な微細加工によっても生ぜしめられる。
【0032】
自動車技術分野において使用される以外の使用分野は、接着剤との摩擦力結合(摩擦力による束縛)による緊密な結合を必要とするすべての構成部分である。
【符号の説明】
【0033】
1 第1の構成部分、 2 構成部分複合体、 3 第1の接触表面、 4 第2の構成部分、 5 第2の接触表面、 6 表面組織、 7 マイクロ構造、 8 マイクロ構造エレメント、 9 ナノ構造エレメント、 10 ナノ構造、 11 周縁つば、 12 接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に自動車に使用するための構成部分複合体(2)であって、第1の接触表面(3)を備えた第1の構成部分(1)と、第2の接触表面(5)を備えた少なくとも1つの第2の構成部分(4)とを有しており、前記第1の接触表面(3)が、マイクロ構造(7)及び該マイクロ構造(7)上に重ねられたナノ構造(10)を備えた表面組織(6)を有している形式のものにおいて、
前記両構成部分(1,4)の前記両接触表面(3,5)間に、素材結合するための媒体、特に接着剤層(12)が配置されていることを特徴とする、構成部分複合体。
【請求項2】
前記第2の接触表面(5)も、前記第2の構成部分(4)において、マイクロ構造(7)及び該マイクロ構造(7)上に重ねられたナノ構造(10)を備えた表面組織(6)を有している、請求項1記載の構成部分複合体。
【請求項3】
前記表面組織(6)が、電磁線によって、電気的な微細加工によって又は機械的な微細加工によって生ぜしめられる、請求項1又は2記載の構成部分複合体。
【請求項4】
前記マイクロ構造(7)が、1μm〜約999μm範囲の直径を有するマイクロ構造エレメント(8)及び/又は約1nm〜約999nm範囲の直径を有するナノ構造エレメント(9)を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の構成部分複合体。
【請求項5】
前記表面組織(6)が、100fs〜100psのパルス継続時間を有するレーザによって、有利にはプロセス媒体雰囲気下、特にプロセスガス雰囲気下で生ぜしめられる、請求項1から4までのいずれか1項記載の構成部分複合体。
【請求項6】
前記表面組織(6)が、約10nm〜約11μm、特に有利には約100nm〜約1500nmの範囲の電磁線波長によって、及び/又は約100fs〜約10μs、特に有利には約10fs〜約100psの範囲の電磁線パルス継続時間によって、生ぜしめられる、請求項1から5までのいずれか1項記載の構成部分複合体。
【請求項7】
前記第1の接触表面(3)が金属より成っていて、前記第2の接触表面(5)が金属、特に鋼、プラスチック、特に熱可塑性プラスチック又は熱硬化性プラスチック、又はセラミックより構成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の構成部分複合体。
【請求項8】
前記第2の接触表面(5)、有利には第2の構成部分(4)全体が、プラスチック、特に熱可塑性プラスチックより構成されていて、前記第1の構成部分(1)が少なくとも部分的に前記第2の構成部分(4)によって射出成形で包囲されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の構成部分複合体。
【請求項9】
前記第1の構成部分(1)と前記第2の構成部分(4)とが、少なくともほぼ同じ熱膨張係数を有している、請求項1から8までのいずれか1項記載の構成部分複合体。
【請求項10】
前記第1の接触表面(3)若しくは第2の接触表面(5)が全面的に表面組織(6)を備えている、請求項1から9までのいずれか1項記載の構成部分複合体。
【請求項11】
前記構成部分複合体(2)が、燃料噴射弁の構成部分であるか、又は特に制御装置のためのハウジングカバーの構成部分であるか、又はセンサの構成部分である、請求項1から10までのいずれか1項記載の構成部分複合体。
【請求項12】
第1の接触表面(3)を備えた第1の構成部分(1)と、第2の接触表面(5)を備えた少なくとも1つの第2の構成部分(4)とを有しており、前記第1の接触表面(3)が、マイクロ構造(7)及び該マイクロ構造(7)上に重ねられたナノ構造(10)を有する表面組織(6)を備えている形式の、請求項1から11までのいずれか1項記載の構成部分複合体(2)を製造するための方法において、
前記両接触表面(3,5)間に、これらの両接触表面(3,5)を素材結合するための、媒体、特に接着剤層(12)を被着することを特徴とする、構成部分複合体を製造するための方法。
【請求項13】
第1の接触表面(3)又は両接触表面(3,5)において表面微細加工を電磁線によって生ぜしめ、該表面微細加工を、プロセス媒体、特にプロセスガス雰囲気下で、有利な形式で不動態化のために及び/又は効果を高めるために行う、請求項12記載の方法。
【請求項14】
表面組織(6)を、100fs〜100psのパルス継続時間を有するレーザによって生ぜしめる、請求項12又は13記載の方法。
【請求項15】
前記第1の構成部分(1)を、特に有利には少なくとも部分的にプラスチック材料より形成された第2の構成部分(4)で以て有利な形式で少なくとも部分的に射出成形により包囲することによって、前記第1の構成部分(1)を前記第2の構成部分(4)に形状結合式に結合する、請求項12から14までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−502329(P2013−502329A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525103(P2012−525103)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059432
【国際公開番号】WO2011/020640
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】