説明

樹脂塗布装置および樹脂塗布方法

【課題】LED素子の発光波長がばらつく場合にあってもLEDパッケージの発光特性を均一にして、生産歩留まりを向上させることができるLEDパッケージ製造システムにおける樹脂塗布装置および樹脂塗布方法を提供する。
【解決手段】蛍光体を含む樹脂によってLED素子を覆って成るLEDパッケージの製造に用いられる樹脂塗布装置であって、発光特性測定用として試し塗布材43に塗布した樹脂8に向かって励起光を照射し、試し塗布材43で反射して樹脂8を通過した光の発光特性を発光特性測定部によって測定した測定結果と、予め規定された発光特性との偏差を求め、この偏差に基づいて実生産用としてLED素子に塗布されるべき樹脂の適正樹脂塗布量を導出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDパッケージ製造システムに用いられる樹脂塗布装置および樹脂塗布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の照明装置の光源として、消費電力が少なく長寿命であるという優れた特性を有するLED(発光ダイオード)が、広範囲で用いられるようになっている。LED素子が発する基本光は、現在のところ赤、緑、青の3つに限られているため、一般的な照明用途として好適な白色光を得るためには、上述の3つの基本光を加色混合することによって白色光を得る方法や、青色LEDと青色と補色関係にある黄色の蛍光を発する蛍光体とを組み合わせることにより疑似白色光を得る方法などが用いられる。近年は後者の方法が広く用いられるようになっており、青色LEDとYAG蛍光体を組み合わせたLEDパッケージを用いた照明装置が、液晶パネルのバックライトなどに用いられるようになっている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献においては、側壁に反射面が形成された凹状の実装部の底面にLED素子を実装した後、実装部内にYAG系蛍光体粒子が分散された実装部内にYAG系蛍光体粒子が分散されたシリコーン樹脂やエポキシ樹脂などを注入して樹脂包装部を形成することにより、LEDパッケージを構成するようにしている。そして、樹脂注入後の実装部内における樹脂包装部の高さを均一にすることを目的として、規定量以上に注入された剰余樹脂を実装部から排出して貯留するための剰余樹脂貯蔵部を形成する例が記載されている。これにより、樹脂注入時にディスペンサからの吐出量がばらついている場合にあっても、LED素子上には一定の樹脂量を有し規定高さの樹脂包装部が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−66969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上述の先行技術例においては、個々のLED素子における発光波長のばらつきに起因して、製品となるLEDパッケージの発光特性がばらつくという問題があった。すなわちLED素子は複数の素子をウェハ上に一括して作り込む製造過程を経ており、この製造過程における種々の誤差要因、例えばウェハにおける膜形成時の組成の不均一などに起因して、ウェハ状態から個片に分割されたLED素子には、発光波長のばらつきが生じることが避けられない。そして上述例では、LED素子を覆う樹脂包装部の高さは均一に設定されていることから、個片のLED素子における発光波長のばらつきは、そのまま製品としてのLEDパッケージの発光特性のばらつきに反映され、結果として品質許容範囲から逸脱する不良品の増加を余儀なくされていた。このように、従来のLEDパッケージ製造技術には、個片のLED素子における発光波長のばらつきに起因して、製品としてのLEDパッケージの発光特性がばらつき、生産歩留まりの低下を招くという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、個片のLED素子の発光波長がばらつく場合にあってもLEDパッケージの発光特性を均一にして、生産歩留まりを向上させることができる樹脂塗布装置および樹脂塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の樹脂塗布装置は、蛍光体を含む樹脂を塗布する樹脂塗布部と、前記樹脂塗布部を制御して前記樹脂を測定用塗布処理として試し塗布材に試し塗布する第1塗布制御部と、前記樹脂塗布部を制御してLED素子に生産用塗布処理として前記樹脂を塗布する第2塗布制御部と、前記第1塗布制御部により前記樹脂が試し塗布された試し塗布材が載置される試し塗布材載置部と、前記試し塗布材載置部の上方に配置され前記蛍光体を励起する励起光を発光する光源部と、前記励起光を前記試し塗布材に試し塗布された前記樹脂に上方から照射することにより前記試し塗布材または前記試し塗布材載置部で反射して前記試し塗布された前記樹脂を通過した光の発光特性を測定する発光特性測定部と、前記発光特性測定部の測定結果と予め規定された発光特性との偏差を求め、この偏差に基づいて生産用として前記LED素子に塗布されるべき前記樹脂の適正樹脂塗布量を導出する塗布量導出処理部と、前記適正樹脂塗布量を前記第2塗布制御部に指令することにより、前記適正樹脂塗布量の樹脂を前記LED素子に塗布する前記生産用塗布処理を実行させる生産実行処理部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の樹脂塗布方法は、蛍光体を含む樹脂をLED素子に塗布する樹脂塗布方法であって、塗布量を可変に吐出する樹脂吐出部によって前記樹脂を発光特性測定用として試し塗布材に試し塗布する測定用塗布工程と、前記樹脂が試し塗布された試し塗布材を試し塗布材載置部に載置する試し塗布材載置工程と、前記試し塗布材載置部の上方に配置された光源部から前記蛍光体を励起する励起光を発光する励起光発光工程と、前記励起光を前記試し塗布材に塗布された樹脂に上方から照射することにより前記試し塗布材または前記試し塗布材載置部で反射して前記試し塗布された樹脂を通過した光の発光特性を測定する発光特性測定工程と、前記発光特性測定工程における測定結果と予め規定された発光特性との偏差を求め、この偏差に基づいて実生産用として前記LED素子に塗布されるべき前記樹脂の適正樹脂塗布量を導出する塗布量導出処理工程と、前記導出された適正樹脂塗布量を前記樹脂吐出部を制御する塗布制御部に指令することにより、この適正樹脂塗布量の樹脂をLED素子に塗布する生産用塗布処理を実行させる生産実行工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、励起光を試し塗布材に塗布された樹脂に上方から照射し試し塗布材または前記試し塗布材載置部で反射して前記樹脂を通過した光の発光特性を測定する発光特性測定部を設けたので、樹脂に含まれる蛍光体の濃度を、少ない樹脂量であっても良好に測定することができる。この測定結果と予め規定された発光特性との偏差を求め、この偏差に基づいて実生産用としてLED素子に塗布されるべき樹脂の適正樹脂塗布量を導出することにより、個片のLED素子の発光波長がばらつく場合にあっても、LEDパッケージの発光特性を均一にして、生産歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態の樹脂塗布装置を備えたLEDパッケージ製造システムの構成図
【図2】本発明の一実施の形態のLEDパッケージ製造システムによって製造されるLEDパッケージの構成図
【図3】本発明の一実施の形態のLEDパッケージ製造システムにおいて用いられるLED素子の供給形態および素子特性情報の説明図
【図4】本発明の一実施の形態の樹脂塗布情報の説明図
【図5】本発明の一実施の形態の部品実装装置の構成および機能の説明図
【図6】本発明の一実施の形態のLEDパッケージ製造システムにおいて用いられるマップデータの説明図
【図7】本発明の一実施の形態の樹脂塗布装置の構成および機能の説明図
【図8】本発明の一実施の形態の樹脂塗布装置に備えられた発光特性検査機能の説明図
【図9】本発明の一実施の形態のLEDパッケージ製造システムの制御系の構成図
【図10】本発明の一実施の形態のLEDパッケージ製造システムによるLEDパッケージ製造のフロー図
【図11】本発明の一実施の形態のLEDパッケージ製造システムにおける良品判定用のしきい値データ作成処理のフロー図
【図12】本発明の一実施の形態のLEDパッケージ製造システムにおける良品判定用のしきい値データの説明図
【図13】本発明の一実施の形態のLEDパッケージ製造システムにおける良品判定用のしきい値データを説明する色度図
【図14】本発明の一実施の形態のLEDパッケージ製造システムによるLEDパッケージ製造過程における樹脂塗布作業処理のフロー図
【図15】本発明の一実施の形態のLEDパッケージ製造システムによるLEDパッケージ製造過程における樹脂塗布作業処理の説明図
【図16】本発明の一実施の形態のLEDパッケージ製造システムによるLEDパッケージ製造過程を示す工程説明図
【図17】本発明の一実施の形態のLEDパッケージ製造システムによるLEDパッケージ製造過程を示す工程説明図
【図18】比較例の発光特性検査部の構成図
【図19】本発明の一実施の形態において(a)テープ状の試し塗布材を回収する経路の平面図と(b)エンボス状の試し塗布材を回収する経路の平面図と断面図
【図20】本発明の別の実施の形態の試し塗布材の断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず図1を参照して、LEDパッケージ製造システム1を説明する。
LEDパッケージ製造システム1は、基板に実装されたLED素子を、蛍光体を含む樹脂によって覆って成るLEDパッケージを製造する機能を有するものである。本実施の形態においては、図1に示すように、部品実装装置M1、キュア装置M2、ワイヤボンディング装置M3、樹脂塗布装置M4、キュア装置M5、個片切断装置M6の各装置をLANシステム2によって接続し、管理コンピュータ3によってこれらの各装置を統括して制御する構成となっている。
【0012】
部品実装装置M1は、LEDパッケージのベースとなる基板4(図2参照)にLED素子5を樹脂接着剤によって接合して実装する。
キュア装置M2は、LED素子5が実装された後の基板4を加熱することにより、実装時の接合に用いられた樹脂接着剤を硬化させる。
【0013】
ワイヤボンディング装置M3は、基板4の電極とLED素子5の電極とをボンディングワイヤによって接続する。
樹脂塗布装置M4は、ワイヤボンディング後の基板4において、各LED素子5毎に蛍光体を含む樹脂を塗布する。
【0014】
キュア装置M5は、樹脂塗布後の基板4を加熱することにより、LED素子5を覆って塗布された樹脂を硬化させる。
個片切断装置M6、は、樹脂が硬化した後の基板4を各個別のLED素子5毎に切断して、個片のLEDパッケージに分割する。これにより、個片に分割されたLEDパッケージが完成する。
【0015】
なお図1においては、部品実装装置M1〜個片切断装置M6の各装置を直列に配置して製造ラインを構成した例を示しているが、LEDパッケージ製造システム1としては必ずしもこのようなライン構成を採用する必要はなく、以下の説明において述べる情報伝達が適切になされる限りにおいては、分散配置された各装置によってそれぞれの工程作業を順次実行する構成であってもよい。
【0016】
また、ワイヤボンディング装置M3の前後に、ワイヤボンディングに先立って電極のクリーニングを目的としたプラズマ処理を行うプラズマ処理装置、ワイヤボンディング後に、樹脂塗布に先立って樹脂の密着性を向上させるための表面改質を目的としたプラズマ処理を行うプラズマ処理装置を介在させるようにしてもよい。
【0017】
ここで図2、図3を参照して、LEDパッケージ製造システム1における作業対象となる基板4、LED素子5および完成品としてのLEDパッケージ50について説明する。
図2(a)に示すように、基板4は、完成品において1つのLEDパッケージ50のベースとなる個片基板4aが複数個作り込まれた多連型基板であり、各個片基板4aには、それぞれLED素子5が実装される1つのLED実装部4bが形成されている。各個片基板4a毎においてLED実装部4b内にLED素子5を実装し、その後LED実装部4b内にLED素子5を覆って樹脂8を塗布し、さらに樹脂8の硬化後に工程完了済みの基板4を個片基板4a毎に切断することにより、図2(b)に示すLEDパッケージ50が完成する。
【0018】
LEDパッケージ50は、各種の照明装置の光源として用いられる白色光を照射する機能を有しており、青色LEDであるLED素子5と青色と補色関係にある黄色の蛍光を発する蛍光体を含んだ樹脂8とを組み合わせることにより、擬似白色光を得るようになっている。図2(b)に示すように、個片基板4aにはLED実装部4bを形成する例えば円形や楕円形の環状堤を有するキャビティ形状の反射部4cが設けられている。反射部4cの内側に搭載されたLED素子5のN型部電極6a、P型部電極6bは、個片基板4aの上面に形成された配線層4e,4dと、それぞれボンディングワイヤ7によって接続される。そして樹脂8はこの状態のLED素子5を覆って反射部4cの内側に所定厚みで塗布され、LED素子5から発光された青色光が樹脂8を透過して照射される過程において、樹脂8内含まれる蛍光体が発光する黄色と混色され、白色光となって照射される。
【0019】
図3(a)に示すように、LED素子5は、サファイア基板5a上にN型半導体5b、P型半導体5cを積層し、さらにP型半導体5cの表面を透明電極5dで覆って構成され、N型半導体5b、P型半導体5cにはそれぞれ外部接続用のN型部電極6a、P型部電極6bが形成されている。
【0020】
LED素子5は、図3(b)に示すように、複数が一括して形成された後に個片に分割された状態で保持シート10aに貼着保持されたLEDウェハ10から取り出される。LED素子5は、製造過程における種々の誤差要因、例えばウェハにおける膜形成時の組成の不均一などに起因して、ウェハ状態から個片に分割されたLED素子5には、発光波長など発光特性にばらつきが生じることが避けられない。そしてこのようなLED素子5をそのまま基板4に実装すると、製品としてのLEDパッケージ50の発光特性のばらつきとなる。
【0021】
このような発光特性のばらつきに起因する品質不良を防止するため、本実施の形態においては、同一製造過程で製造される複数のLED素子5の発光特性を予め計測し、各LED素子5と当該LED素子5の発光特性を示すデータとを対応させた素子特性情報を作成しておき、樹脂8の塗布において各LED素子5の発光特性に応じた適正量の樹脂8を塗布するようにしている。そして適正量の樹脂8を塗布するために、後述する樹脂塗布情報が予め準備される。
【0022】
まず、素子特性情報について説明する。
図3(c)に示すように、LEDウェハ10から取り出されたLED素子5は、個々を識別する素子ID(ここでは、当該LEDウェハ10における連番(i)にて個別のLED素子5を識別)が付与された上で、発光特性計測装置11に順次投入される。
【0023】
なお、素子IDとしては、LED素子5を個別に特定できる情報であれば、他のデータ形式のもの、例えばLEDウェハ10におけるLED素子5の配列を示すマトリクス座標をそのまま用いるようにしてもよい。このような形式の素子IDを用いることにより、後述する部品実装装置M1において、LED素子5をLEDウェハ10の状態のまま供給することが可能となる。
【0024】
発光特性計測装置11においては、各LED素子5にプローブを介して電力を供給して実際に発光させ、その光を分光分析して発光波長や発光強度などの所定項目について計測を行う。計測対象となるLED素子5については、予め発光波長の標準的な分布が参照データとして準備されており、さらにその分布における標準範囲に該当する波長範囲を複数の波長域に区分することにより、計測対象となった複数のLED素子5を、発光波長によってランク分けする。
【0025】
ここでは、波長範囲を5つに区分することにより設定されたランクのそれぞれに対応して、低波長側から順に、Binコード[1][2][3][4][5]が付与されている。そして素子ID12aにBinコード12bを対応させたデータ構成の素子特性情報12が作成される。
【0026】
すなわち素子特性情報12は、複数のLED素子5の発光波長を含む発光特性を予め個別に測定して得られた情報であり、予めLED素子製造メーカなどによって準備されてLEDパッケージ製造システム1に対して伝達される。この素子特性情報12の伝達形態としては、単独の記憶媒体に記録された形で伝達されてもよく、またLANシステム2を介して管理コンピュータ3に伝達するようにしてもよい。いずれにおいても、伝達された素子特性情報12は管理コンピュータ3において記憶され、必要に応じて部品実装装置M1に提供される。
【0027】
このようにして発光特性計測が終了した複数のLED素子5は、図3(d)に示すように特性ランク毎にソートされ、それぞれの特性ランクに応じて5種類に振り分けられ、5つの粘着シート13aに個別に貼着される。これにより、Binコード[1][2][3][4][5]のそれぞれに対応するLED素子5を粘着シート13aに貼着保持した3種類のLEDシート13A,13B,13C,13D,13Eが作成され、これらLED素子5を基板4の個片基板4aに実装する際には、LED素子5はこのようなランク分けが既になされたLEDシート13A,13B,13C,13D,13Eの形態で部品実装装置M1に供給される。このとき、LEDシート13A,13B,13C,13D,13Eのそれぞれには、Binコード[1][2][3][4][5]のいずれに対応したLED素子5が保持されているかを示す形で素子特性情報12が管理コンピュータ3から提供される。
【0028】
次に、上述の素子特性情報12に対応して予め準備される樹脂塗布情報について、図4を参照して説明する。
青色LEDとYAG系の蛍光体を組み合わせることにより白色光を得る構成のLEDパッケージ50では、LED素子5が発光する青色光とこの青色光によって蛍光体が励起されて発光する黄色光との加色混合が行われることから、LED素子5が実装される凹状のLED実装部4b内における蛍光体粒子の量が、製品のLEDパッケージ50の正規の発光特性を確保する上で重要な要素となる。
【0029】
上述のように、同時に作業対象となる複数のLED素子5の発光波長には、Binコード[1][2][3][4][5]によって分類されるばらつきが存在することから、LED素子5を覆って塗布される樹脂8中の蛍光体粒子の適正量は、Binコード[1][2][3][4][5]に応じて異なったものとなる。
【0030】
本実施の形態において準備される樹脂塗布情報14では、図4に示すように、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂などにYAG系の蛍光体粒子を含有させた樹脂8のBin分類別適正樹脂塗布量を、nl(ナノリットル)単位で、Binコード区分17に応じて予め規定している。すなわち、LED素子5を覆って樹脂8を樹脂塗布情報14に示される適正樹脂塗布量だけ正確に塗布すると、LED素子5を覆う樹脂中の蛍光体粒子の量は適正な蛍光体粒子供給量となり、これにより樹脂が熱硬化した後に完成品に求められる正規の発光波長が確保される。
【0031】
ここでは、蛍光体濃度欄16に示すように、樹脂8中の蛍光体粒子の濃度を示す蛍光体濃度を複数通り(ここではD1(5%),D2(10%),D3(15%)の3通り)に設定し、樹脂8の適正樹脂塗布量も使用する樹脂8の蛍光体濃度に応じて適正な(表現に違和感)数値を用いるようにしている。
【0032】
すなわち、蛍光体濃度D1の樹脂を塗布する場合には、Binコード[1][2][3][4][5]のそれぞれについて、適正樹脂塗布量VA0,VB0,VC0,VD0,VE0(適正樹脂塗布量15(1))の樹脂8を塗布する。同様に、蛍光体濃度D2の樹脂を塗布する場合には、Binコード[1][2][3][4][5]のそれぞれについて、適正樹脂塗布量VF0,VG0,VH0,VJ0,VK0(適正樹脂塗布量15(2))の樹脂8を塗布する。また蛍光体濃度D3の樹脂を塗布する場合には、Binコード[1][2][3][4][5]のそれぞれについて、適正樹脂塗布量VL0、VM0,VN0,VP0,VR0(適正樹脂塗布量15(3))の樹脂8を塗布する。このように異なった複数の蛍光体濃度毎にそれぞれ適正樹脂塗布量を設定するのは、発光波長のばらつきの程度に応じて最適の蛍光体濃度の樹脂8を塗布するのが品質確保の上で、より好ましいからである。
【0033】
図5を参照して、部品実装装置M1の構成および機能を説明する。
図5(a)の平面図に示すように、部品実装装置M1は、上流側から供給された作業対象の基板4を基板搬送方向(矢印a)に搬送する基板搬送機構21を備えている。基板搬送機構21には、上流側から順に、図5(b)にA−A断面にて示す接着剤塗布部A、図4(c)にB−B断面にて示す部品実装部Bが配設されている。
【0034】
接着剤塗布部Aは、基板搬送機構21の側方に配置され樹脂接着剤23を所定の膜厚の塗膜の形で供給する接着剤供給部22および基板搬送機構21と接着剤供給部22の上方で水平方向(矢印b)に移動自在な接着剤転写機構24を備えている。
【0035】
また部品実装部Bは、基板搬送機構21の側方に配置され、図3(d)に示すLEDシート13A,13B,13C,13D,13Eを保持する部品供給機構25および基板搬送機構21と部品供給機構25の上方で水平方向(矢印c)に移動自在な部品実装機構26を備えている。
【0036】
基板搬送機構21に搬入された基板4は、図5(b)に示すように、接着剤塗布部Aにて位置決めされ、各個片基板4aに形成されたLED実装部4bを対象として、樹脂接着剤23の塗布が行われる。
【0037】
すなわち、まず接着剤転写機構24を接着剤供給部22の上方に移動させて転写ピン24aを転写面22aに形成された樹脂接着剤23の塗膜に接触させ、樹脂接着剤23を付着させる。次いで接着剤転写機構24を基板4の上方に移動させて、転写ピン24aをLED実装部4bに下降させることにより(矢印d)、転写ピン24aに付着した樹脂接着剤23をLED実装部4b内の素子実装位置に転写により供給する。
【0038】
次いで接着剤塗布後の基板4は下流側へ搬送されて、図5(c)に示すように部品実装部Bにて位置決めされ、接着剤供給後の各LED実装部4bを対象として、LED素子5の実装が行われる。
【0039】
すなわち、まず部品実装機構26を部品供給機構25の上方に移動させて実装ノズル26aを部品供給機構25に保持されたLEDシート13A,13B,13C,13D,13Eのいずれかに対して下降させ、実装ノズル26aによってLED素子5を保持して取り出す。次いで部品実装機構26を基板4のLED実装部4bの上方に移動させて実装ノズル26aを下降させることにより(矢印e)、実装ノズル26aに保持したLED素子5をLED実装部4b内において接着剤が塗布された素子実装位置に実装する。
【0040】
この部品実装装置M1による基板4へのLED素子5の実装においては、予め作成された素子実装プログラム、すなわち部品実装機構26による個別実装動作においてLEDシート13A,13B,13C,13D,13EのいずれからLED素子5を取り出して基板4の複数の個片基板4aに実装するかの順序が予め設定されており、部品実装作業はこの素子実装プログラムにしたがって実行される。
【0041】
そして部品実装作業の実行に際しては、作業実行履歴から個別のLED素子5が基板4の複数の個片基板4aのうちのいずれに実装されたかを示す実装位置情報71a(図9参照)を抽出し記録する。そしてこの実装位置情報71aと個々の個片基板4aに実装されたLED素子5がいずれの特性ランク(Binコード[1][2][3][4][5])に対応するものであるかを示す素子特性情報12とを関連づけたデータが、マップ作成処理部74(図9参照)によって、図6に示すマップデータ18として作成されるようになっている。
【0042】
図6において、基板4の複数の個片基板4aの個別の位置は、X方向,Y方向の位置をそれぞれ示すマトリクス座標19X,19Yの組み合わせによって特定される。そしてマトリクス座標19X,19Yによって構成されるマトリックスの個別セルに、当該位置に実装されたLED素子5が属するBinコードを対応させることにより、部品実装装置M1によって実装されたLED素子5の基板4における位置を示す実装位置情報71aと、当該LED素子5についての素子特性情報12とを関連付けたマップデータ18が作成される。
【0043】
すなわち、部品実装装置M1は、当該装置によって実装されたLED素子5の基板4における位置を示す実装位置情報と、当該LED素子5についての素子特性情報12とを関連付けたマップデータ18を、基板4毎に作成するマップ作成処理部74を備えた構成となっている。そして作成されたマップデータ18は、LANシステム2を介して以下に説明する樹脂塗布装置M4に対してフィードフォワードデータとして送信される。
【0044】
次に図7と図8を参照して、樹脂塗布装置M4の構成および機能について説明する。
樹脂塗布装置M4は、部品実装装置M1によって基板4に実装された複数のLED素子5を覆って樹脂8を塗布する機能を有するものである。図7(a)の平面図に示すように、樹脂塗布装置M4は上流側から供給された作業対象の基板4を基板搬送方向(矢印f)に搬送する基板搬送機構31に、図7(b)にC−C断面にて示す樹脂塗布部Cを配設した構成となっている。樹脂塗布部Cには、下端部に装着された吐出ノズル33aから樹脂8を吐出する構成の樹脂吐出ヘッド32が設けられている。
【0045】
図7(b)に示すように、樹脂吐出ヘッド32はノズル移動機構34によって駆動され、ノズル移動機構34を塗布制御部36によって制御することにより、水平方向(図7(a)に示す矢印g)の移動動作および昇降動作を行う。樹脂吐出ヘッド32には樹脂8がディスペンサ33に装着されるシリンジに収納された状態で供給され、樹脂吐出機構35によって空圧をディスペンサ33内に印加することにより、ディスペンサ33内の樹脂8は吐出ノズル33aを介して吐出されて、基板4に形成されたLED実装部4bに塗布される。このとき、樹脂吐出機構35を塗布制御部36によって制御することにより、樹脂8の吐出量を任意に制御することができる。すなわち樹脂塗布部Cは、樹脂8を塗布量を可変に吐出して、任意の塗布対象位置に塗布する機能を有している。
【0046】
なお、樹脂吐出機構35には、空圧のディスペンサ33以外にもメカシリンダを用いたプランジャ方式、スクリューポンプ方式など、各種の液吐出方式を採用することができる。
【0047】
基板搬送機構31の側方には、試し打ち・測定ユニット40が樹脂吐出ヘッド32の移動範囲内に配置されている。試し打ち・測定ユニット40は、樹脂8を基板4のLED実装部4bに塗布する実生産用塗布作業に先立って、樹脂8の塗布量が適正であるか否かを、試し塗布した樹脂8の発光特性を測定することにより判定する機能を有するものである。
【0048】
蛍光体粒子を含有する樹脂8は、その組成・性状は必ずしも安定的ではなく、予め樹脂塗布情報14にて樹脂の適正塗布量を設定していても、時間の経過によって蛍光体の濃度や樹脂粘度が変動することが避けられない。
【0049】
このため、予め設定された適正塗布量に対応する吐出パラメータで樹脂8を吐出しても、樹脂塗布量そのものが既設定の適正値からばらつく場合や、さらには、塗布量自体は適正であっても濃度変化によって本来供給されるべき蛍光体粒子の供給量がばらつく結果となる。
【0050】
このような不都合を排除するため、本実施の形態では、所定のインターバルにて適正供給量の蛍光体粒子が供給されているか否かを検査するための試し塗布を、樹脂塗布装置M4にて実行し、さらに試し塗布された樹脂を対象として発光特性の測定を実行することにより、本来あるべき発光特性に則して蛍光体粒子の供給量を安定させるようにしている。
【0051】
そして本実施の形態に示す樹脂塗布装置M4に備えられた樹脂塗布部Cは、樹脂8を上述の発光特性測定用として試し塗布材43に試し塗布する測定用塗布処理と、実生産用として基板4に実装された状態のLED素子5に塗布する生産用塗布処理とを併せて実行する機能を有している。これらの測定用塗布処理および生産用塗布処理は、いずれも塗布制御部36が樹脂塗布部Cを制御することにより実行される。ただし、測定用塗布処理用と生産用塗布処理用とで、2つの異なる塗布制御部を用いて、制御してもよい。
【0052】
図8を参照して、試し打ち・測定ユニット40の詳細構成を説明する。
図8(a)に示すように、試し塗布材43は供給リール47に卷回収納されて供給され、試し打ちステージ40aの上面に沿って送られた後、試し塗布材と照射部46との間を経由して、巻き取りモータ49によって駆動される回収リール48に巻き取られる。
【0053】
なお、試し塗布材43を回収する機構としては、回収リール48に卷回して回収する方式以外にも、回収ボックス内に試し塗布材43を送り機構によって送り込む方式など、各種の方式を採用することができる。
【0054】
照射部46は、光源部45によって発光された励起光を試し塗布材43に対して照射する機能を有しており、光源部45の白色光または青色光を発生するLEDの発光した励起光が、ファイバケーブルによって導光される光集束ツール46bを介して、簡易暗箱機能を有する遮光ボックス46a内に導かれている。
【0055】
光源部45は樹脂8に含まれる蛍光体を励起する励起光を発光する機能を有しており、本実施の形態においては試し塗布材載置部41の上方に配置されて、測定光を試し塗布材43に対して光集束ツール46bを介して上方から照射する形態となっている。
【0056】
ここで試し塗布材43としては、平面シート状部材を所定幅のテープ材としたものや、同様のテープ材にLEDパッケージ50の凹部形状に対応したエンボス部43aが下面に突設されたエンボスタイプのものなどが用いられる(図8(b)参照)。
【0057】
試し塗布材43が試し打ち・測定ユニット40上を送られる過程において、試し塗布材43に対して樹脂吐出ヘッド32によって樹脂8が試し塗布される。この試し塗布は、下面側を試し打ちステージ40aによって支持された試し塗布材43に対して、図8(b)に示すように、吐出ノズル33aによって規定塗布量の樹脂8を試し塗布材43に吐出することによって行われる。
【0058】
図8(b)の(イ)は、前述のテープ材よりなる試し塗布材43に樹脂塗布情報14にて規定される既設定の適正吐出量の樹脂8を塗布した状態を示している。樹脂8の塗布の平面形状は円形である。
【0059】
図8(b)の(ロ)は、前述のエンボスタイプの試し塗布材43のエンボス部43a内に、同様に既設定の適正吐出量の樹脂8を塗布した状態を示している。エンボス部43aの開口の平面形状は円形に形成されている。
【0060】
なお、後述するように、試し打ちステージ40aにて塗布された樹脂8は、対象となるLED素子5に対して蛍光体供給量が適正であるか否かを実証的に判定するための試し塗布であることから、樹脂吐出ヘッド32による同一試し塗布動作で複数点に樹脂8を連続的に試し塗布材43上に塗布する場合には、発光特性測定値と塗布量との相関関係を示す既知のデータに基づいて塗布量を段階的に異ならせて塗布しておく。
【0061】
このようにして樹脂8が試し塗布された後に遮光ボックス46a内に導かれた試し塗布材43に対して、光源部45によって発光された白色光を、光集束ツール46bを介して上方から照射する。
【0062】
試し塗布材43としては、樹脂8に含まれている蛍光体が励起光で励起されて発する光を表面で反射するものを使用している。試し塗布材43の上方には、積分球44が配置されている。
【0063】
試し塗布材43の具体例は、ベース材として透光性材料を使用した場合には、ベース材の表面に反射材コートまたは拡散材コートなどを施したものを挙げることができる。また、非透光性のベース材の場合には、反射または拡散するようにベース材自体を表面加工したり、ベース材の表面に反射材コートまたは拡散材コートなどを施したものを挙げることができる。
【0064】
図8(c)は、試し塗布材載置部41、積分球44の構造を示している。
試し塗布材載置部41は、試し塗布材43の下面を支持する下部支持部材41bの上面に、試し塗布材43の両端面をガイドする機能を有する上部ガイド部材41cを装着した構造となっている。
【0065】
試し塗布材載置部41は、試し打ち・測定ユニット40における搬送時に試し塗布材43をガイドするとともに、測定用塗布処理において樹脂8が試し塗布された試し塗布材43を載置して位置を保持する機能を有している。
【0066】
積分球44は、円形の上側開口63と円形の下側開口64を有している。光集束ツール46bからの励起光hは、コリメータレンズ65によって平行光に変換され、さらに光彩絞り66によって、積分球44の上側開口63と同等に絞ることで、余分な光による上側開口63と下側開口64での乱反射を抑制している。光彩絞り66を通過した励起光hは、積分球44の上側開口63と下側開口64を通過して、樹脂8に上方から照射される。これによって励起光と樹脂8に含まれる蛍光体から発生した光(矢印i)は、下側開口64から積分球44の反射空間44b内に入射し、球状反射面44cによる全反射(矢印j)を反復する過程で、積分球44の出力部44dから測定光(矢印k)として取り出され、分光器42によって受光される。
【0067】
上述構成では、光源部45に用いられるLEDパッケージによって発光された励起光が試し塗布材43に試し塗布された樹脂8に照射される。この過程において、白色光中に含まれる青色光成分が樹脂8中の蛍光体を励起させて黄色光を発光させる。そしてこの黄色光と青色光が加色混合した白色光が樹脂8から上方に照射され、上述の積分球44を介して分光器42によって受光される。
【0068】
そして受光された白色光は、図7(b)に示すように、発光特性測定処理部39によって分析されて発光特性が測定される。ここでは、白色光の色調ランクや光束などの発光特性が検査され、検査結果として、規定の発光特性との偏差が検出される。積分球44、分光器42および発光特性測定処理部39は、励起光を試し塗布材43に塗布された樹脂8に光源部45によって発光された励起光(ここでは白色LEDにより発光された白色光)を上方から照射することによりこの樹脂8が発する光を、積分球44を介して分光器42で受光して、樹脂8が発する光の発光特性を測定する発光特性測定部を構成している。
【0069】
(比較例)
図18は比較例を示す。
この比較例の発光特性測定部では、上方から樹脂8に励起光hが照射され、樹脂8に混ぜられている蛍光体から発生した光iが、試し塗布材43を透過して下方に通過しており、この光を検出するために積分球44が試し塗布材43の下方に配置されている点が、図8(c)に示した実施例とは異なっている。その他は実施の形態と同じである。
【0070】
発光特性測定部を図8(c)に示した実施例の場合には、比較例と比較して以下に述べるような効果を得る。
比較例の発光特性測定部の場合には、樹脂8に励起光が照射されることによって、樹脂8から全方向に黄色光が放射されるため、試し塗布材43の下方に配置された積分球44では受光できない漏れ光が存在する。そのため、実施例の場合と比べると樹脂8の試し塗りの量が同じ場合には検出感度が低く、濃度変動の検出感度が低い。
【0071】
これに対して図8(c)に示した実施例の場合には、試し塗布材43の上方に積分球44を配置し、コリメートレンズ65が積分球44に向かって照射される励起光の直径を積分球44の上方開口63と同じにする。さらに、試し塗布材43が図8(b)の(イ)の場合には、積分球44の上方開口63によって、励起光が樹脂8の円形の直径と同じまたは僅かに小径にされてから、積分球44の下方開口64を介して樹脂8に照射される。
【0072】
また試し塗布材43が図8(b)の(ロ)の場合には、積分球44の上方開口63によって、励起光がエンボス部43aの開口と同じまたは僅かに小径にされてから、積分球44の下方開口64を介して樹脂8に照射される。
【0073】
この図8(b)の(イ)(ロ)の何れの場合も、樹脂8に含まれる蛍光体から発生した黄色光のほとんどが積分球44に入射するので、比較例の場合に比べて漏れ光が少なく、比較例の場合と比べると樹脂8の試し塗りの量が同じ場合には検出感度が高く、濃度変動の検出感度が高い。
【0074】
この実施例の発光特性測定部をLEDパッケージ製造システムに用いて樹脂塗布装置における樹脂8の塗布量を補正することによって、LEDパッケージの歩留まりが向上する。また、比較例の場合と比べると樹脂8の試し塗りの量が同じ場合には検出感度が高く、濃度変動の検出感度が高いため、試し塗りの量を低減して生産性の向上を実現することもできる。
【0075】
さらに、図8(a)に示したように、照射部46を通過して回収リール48に巻き取られる途中に、トップテープ供給部67を設けることによって、使用済みの試し塗布材43の後処理を改善できる。このトップテープ供給部67は、試し塗りされた樹脂8が残っている使用済みの試し塗布材43の上面に、試し塗りされた樹脂8を覆うようにシール材68aを貼り付けるように構成されており、回収リール48の掛け替え作業の際に未硬化の樹脂8を零す事態の発生を回避できる。
【0076】
図19(a)は試し塗布材43として表面がフラットなテープ状のものを使用した場合の前記シール材68aによるシール状態を示している。矢印P46は照射部46の位置を示している。矢印77は試し塗布材43の移送方向を示している。
【0077】
照射部46で測定に供した使用済みの樹脂8が載っている試し塗布材43に対して、照射部46の下手側において、上部ガイド部材41cの切欠部69から試し塗布材43の上面と上部ガイド部材41cの間に、シール材68aが供給される。この場合のシール材68aには、エンボス部75が形成されているとともに、試し塗布材43への貼り付け面に粘着剤76が塗布されている。そのため、回収リール48に試し塗布材43が巻き取られるに伴って、シール材68aが試し塗布材43の上面に貼り付けられて、使用済みの樹脂8が試し塗布材43とシール材68aのエンボス部75で包まれてシールされる。
【0078】
図19(b)はエンボス部43aが形成された試し塗布材43を使用した場合のシール材68bによるシール状態を示している。照射部46で測定に供した使用済みの樹脂8が載っている試し塗布材43に対して、照射部46の下手側において、上部ガイド部材41cの切欠部69から試し塗布材43の上面と上部ガイド部材41cの間に、表面がフラットなシール材68bが供給される。この場合のシール材68bには、試し塗布材43への貼り付け面に粘着剤76が塗布されている。そのため、回収リール48に試し塗布材43が巻き取られるに伴って、シール材68bが試し塗布材43の上面に貼り付けられて、使用済みの樹脂8が試し塗布材43のエンボス部43aとシール材68bで包まれてシールされる。
【0079】
図7(b)に示すように、発光特性測定処理部39の測定結果は塗布量導出処理部38に送られ、塗布量導出処理部38は、発光特性測定処理部39の測定結果と予め規定された発光特性との偏差を求め、この偏差に基づいて実生産用としてLED素子5に塗布されるべき樹脂8の適正樹脂塗布量を導出する処理を行う。塗布量導出処理部38によって導出された新たな適正吐出量は生産実行処理部37に送られ、生産実行処理部37は新たに導出された適正樹脂塗布量を塗布制御部36に指令する。これにより塗布制御部36は、ノズル移動機構34、樹脂吐出機構35を制御して、適正樹脂塗布量の樹脂8を基板4に実装されたLED素子5に塗布する生産用塗布処理を樹脂吐出ヘッド32に実行させる。
【0080】
この生産用塗布処理においては、まず樹脂塗布情報14に規定される適正樹脂塗布量の樹脂8を実際に塗布し、樹脂8が未硬化の状態で発光特性の測定を行う。そして得られた測定結果に基づき、生産用塗布において塗布された樹脂8を対象として発光特性を測定した場合における発光特性測定値の良品範囲を設定し、この良品範囲を生産用塗布における良否判定のしきい値(図9に示すしきい値データ81a参照)として用いるようにしている。
【0081】
すなわち、本実施の形態に示すLEDパッケージ製造システムにおける樹脂塗布方法では、発光特性測定用の光源部45として白色LEDを用いるとともに、生産用塗布における良否判定のしきい値設定の基となる予め規定された発光特性として、LED素子5に塗布された樹脂8が硬化した状態の完成製品について求められる正規の発光特性を、樹脂8が未硬化の状態であることによる発光特性の相違分だけ偏らせた発光特性を用いるようにしている。これにより、LED素子5への樹脂塗布過程における樹脂塗布量の制御を完成製品についての正規の発光特性に基づいて行うことが可能となっている。
【0082】
なお本実施の形態においては、光源部45として白色光を発するLEDパッケージ50を用いている。これにより、試し塗布された樹脂8の発光特性測定を、完成品のLEDパッケージ50において発光される励起光と同一特性の光によって行うことができ、より信頼性の高い検査結果を得ることができる。なお、完成品に用いられるものと同一のLEDパッケージ50を用いることは必ずしも必須要件ではない。発光特性測定には、一定波長の青色光を安定的に発光することが可能な光源装置(例えば青色光を発光する青色LEDや、青色レーザ光源など)であれば、検査用の光源部として用いることができる。但し、青色LEDを用いた白色光を発するLEDパッケージ50を用いることにより、安定的な品質の光源装置を低コストで選定することができるという利点を有する。ここでバンドパスフィルタを用いて、所定の波長の青色光を取り出すようにしてもよい。
【0083】
次に図9を参照して、LEDパッケージ製造システム1の制御系の構成について説明する。
なお、ここではLEDパッケージ製造システム1を構成する各装置の構成要素のうち、管理コンピュータ3、部品実装装置M1、樹脂塗布装置M4において、素子特性情報12、樹脂塗布情報14およびマップデータ18、上述のしきい値データ81aの送受信および更新処理に関連する構成要素を示すものである。
【0084】
図9において、管理コンピュータ3は、システム制御部60、記憶部61、通信部62を備えている。システム制御部60は、LEDパッケージ製造システム1によるLEDパッケージ製造作業を統括して制御する。記憶部61には、システム制御部60による制御処理に必要なプログラムやデータのほか、素子特性情報12、樹脂塗布情報14、さらには必要に応じてマップデータ18、しきい値データ81aが記憶されている。通信部62はLANシステム2を介して他装置と接続されており、制御信号やデータの授受を行う。素子特性情報12、樹脂塗布情報14は、LANシステム2および通信部62を介して、またはCDロム、USBメモリストレージ、SDカードなど単独の記憶媒体を介して、外部から伝達され記憶部61に記憶される。
【0085】
部品実装装置M1は、実装制御部70、記憶部71、通信部72、機構駆動部73およびマップ作成処理部74を備えている。実装制御部70は、部品実装装置M1による部品実装作業を実行するために、記憶部71に記憶された各種のプログラムやデータに基づいて、以下に説明する各部を制御する。記憶部71には、実装制御部70による制御処理に必要なプログラムやデータのほか、実装位置情報71aや素子特性情報12を記憶する。実装位置情報71aは、実装制御部70による実装動作制御の実行履歴データより作成される。素子特性情報12は、LANシステム2を介して管理コンピュータ3から送信される。通信部72は、LANシステム2を介して他装置と接続されており、制御信号やデータの授受を行う。
【0086】
機構駆動部73は、実装制御部70に制御されて、部品供給機構25や部品実装機構26を駆動する。これにより、基板4の各個片基板4aにLED素子5が実装される。マップ作成処理部74(マップデータ作成手段)は、記憶部71に記憶され部品実装装置M1によって実装されたLED素子5の基板4における位置を示す実装位置情報71aと、当該LED素子5についての素子特性情報12とを関連付けたマップデータ18を、基板4毎に作成する処理を行う。すなわち、マップデータ作成手段は部品実装装置M1に設けられており、マップデータ18は部品実装装置M1から樹脂塗布装置M4に送信される。な
お、マップデータ18を管理コンピュータ3経由で部品実装装置M1から樹脂塗布装置M4に送信するようにしてもよい。この場合には、マップデータ18は、図9に示すように、管理コンピュータ3の記憶部61にも記憶される。
【0087】
樹脂塗布装置M4は、塗布制御部36、記憶部81、通信部82、生産実行処理部37、塗布量導出処理部38、発光特性測定処理部39を備えている。塗布制御部36は、樹脂塗布部Cを構成するノズル移動機構34、樹脂吐出機構35および試し打ち・測定ユニット40を制御することにより、樹脂8を発光特性測定用として試し塗布材43に試し塗布する測定用塗布処理および実生産用としてLED素子5に塗布する生産用塗布処理を実行させる処理を行う。
【0088】
記憶部81には、塗布制御部36による制御処理に必要なプログラムやデータのほか、樹脂塗布情報14やマップデータ18、しきい値データ81a、実生産用塗布量81bを記憶する。樹脂塗布情報14はLANシステム2を介して管理コンピュータ3から送信され、マップデータ18は同様にLANシステム2を介して部品実装装置M1から送信される。通信部82はLANシステム2を介して他装置と接続されており、制御信号やデータの授受を行う。
【0089】
発光特性測定処理部39は、光源部45から発光された励起光を試し塗布材43に塗布された樹脂8に照射することによりこの樹脂が発する光の発光特性を測定する処理を行う。塗布量導出処理部38は、発光特性測定処理部39の測定結果と予め規定された発光特性との偏差を求め、この偏差に基づいて実生産用としてLED素子5に塗布されるべき樹脂8の適正樹脂塗布量を導出する演算処理を行う。そして生産実行処理部37は、塗布量導出処理部38により導出された適正樹脂塗布量を塗布制御部36に指令することにより、この適正樹脂塗布量の樹脂をLED素子5に塗布する生産用塗布処理を実行させる。
【0090】
なお、図9に示す構成において、各装置固有の作業動作を実行するための機能以外の処理機能、例えば部品実装装置M1に設けられているマップ作成処理部74の機能、樹脂塗布装置M4に設けられている塗布量導出処理部38の機能は、必ずしも当該装置に付属させる必要はない。例えば、マップ作成処理部74、塗布量導出処理部38の機能を管理コンピュータ3のシステム制御部60が有する演算処理機能によってカバーするようにし、LANシステム2を介して必要な信号授受を行うように構成してもよい。
【0091】
上述のLEDパッケージ製造システム1の構成において、部品実装装置M1、樹脂塗布装置M4はいずれもLANシステム2に接続されている。そして記憶部61に素子特性情報12が記憶された管理コンピュータ3およびLANシステム2は、複数のLED素子5の発光波長を含む発光特性を予め個別に測定して得られた情報を、素子特性情報12として部品実装装置M1に提供する素子特性情報提供手段となっている。同様に、記憶部61に樹脂塗布情報14が記憶された管理コンピュータ3およびLANシステム2は、規定の発光特性を具備したLEDパッケージ50を得るための樹脂8の適正樹脂塗布量と素子特性情報とを対応させた情報を樹脂塗布情報として樹脂塗布装置M4に提供する樹脂情報提供手段となっている。
【0092】
すなわち、素子特性情報12を部品実装装置M1に提供する素子特性情報提供手段および樹脂塗布情報14を樹脂塗布装置M4に提供する樹脂情報提供手段は、外部記憶手段である管理コンピュータ3の記憶部61より読み出された素子特性情報および樹脂塗布情報を、LANシステム2を介して部品実装装置M1および樹脂塗布装置M4にそれぞれ送信する構成となっている。
【0093】
次にLEDパッケージ製造システム1によって実行されるLEDパッケージ製造過程について、図10のフローに沿って、各図を参照しながら説明する。まず、素子特性情報12および樹脂塗布情報14を取得する(ST1)。すなわち、複数のLED素子5の発光波長を含む発光特性を予め個別に測定して得られた素子特性情報12および規定の発光特性を具備したLEDパッケージ50を得るための樹脂8の適正樹脂塗布量と素子特性情報12とを対応させた樹脂塗布情報14を、外部装置からLANシステム2を介して、または記憶媒体を介して取得する。
【0094】
この後、部品実装装置M1に実装対象となる基板4を搬入する(ST2)。そして図16(a)に示すように、接着剤転写機構24の転写ピン24aを昇降させることにより(矢印n)、LED実装部4b内の素子実装位置に樹脂接着剤23を供給した後、図16(b)に示すように、部品実装機構26の実装ノズル26aに保持したLED素子5を下降させ(矢印o)、樹脂接着剤23を介して基板4のLED実装部4b内に実装する(ST3)。そしてこの部品実装作業の実行データから、当該基板4について、実装位置情報71aと、それぞれのLED素子5の素子特性情報12とを関連付けたマップデータ18を
、マップ作成処理部74によって作成する(ST4)。次いでこのマップデータ18を部品実装装置M1から樹脂塗布装置M4に送信するとともに、管理コンピュータ3から樹脂塗布情報14を樹脂塗布装置M4に送信する(ST5)。これにより、樹脂塗布装置M4による樹脂塗布作業が実行可能な状態となる。
【0095】
次いで、部品実装後の基板4はキュア装置M2に送られ、ここで加熱されることにより、図16(c)に示すように、樹脂接着剤23が熱硬化して樹脂接着剤23aとなり、LED素子5は個片基板4aに固着される。次いで樹脂キュア後の基板4はワイヤボンディング装置M3に送られ、図16(d)に示すように、個片基板4aの配線層4e、4dを、それぞれLED素子5のN型部電極6a、P型部電極6bとボンディングワイヤ7によって接続する。
【0096】
次いで、良品判定用のしきい値データ作成処理が実行される(ST6)。この処理は、生産用塗布における良否判定のしきい値(図9に示すしきい値データ81a参照)を設定するために実行されるものであり、Binコード[1][2][3][4][5]に対応する生産用塗布のそれぞれについて反復して実行される。このしきい値データ作成処理の詳細について、図11,図12,図13を参照して説明する。図11において、まず樹脂塗布情報14に規定する蛍光体を純正濃度で含む樹脂8を準備する(ST11)。そしてこの樹脂8を樹脂吐出ヘッド32にセットした後、樹脂吐出ヘッド32を試し打ち・測定ユニット40の試し打ちステージ40aに移動させて樹脂8を樹脂塗布情報14に示す規定塗布量(適正樹脂塗布量)で試し塗布材43に塗布する(ST12)。次いで試し塗布材43に塗布された樹脂8を試し塗布材載置部41上に移動させ、LED素子5を発光させて樹脂8が未硬化の状態における発光特性を前述構成の発光特性測定部によって測定する(ST13)。そして発光特性測定部によって測定された発光特性の測定結果である発光特性測定値39aに基づき、発光特性が良品と判定されるための測定値の良品判定範囲を設定し(ST14)、設定された良品判定範囲をしきい値データ81aとして、記憶部81に記憶させるとともに管理コンピュータ3に転送して記憶部61に記憶させる(ST15)。
【0097】
図12はこのようにして作成されたしきい値データ、すなわち純正含有量の蛍光体を含有した樹脂8を塗布した後、樹脂未硬化状態において求められた発光特性測定値および発光特性が良品と判定されるための測定値の良品判定範囲(しきい値)を示している。図12(a)(b)(c)は、樹脂8における蛍光体濃度がそれぞれ5%。10%、15%である場合の、Binコード[1][2][3][4][5]に対応したしきい値を示すものである。
【0098】
例えば図12(a)に示すように、樹脂8の蛍光体濃度が5%である場合において、Binコード12bのそれぞれには適正樹脂塗布量15(1)のそれぞれに示す塗布量が対応しており、それぞれの塗布量で塗布した樹脂8にLED素子5の青色光を照射することにより樹脂8が発する光の発光特性を発光特性測定部によって測定した測定結果が、発光特性測定値39a(1)に示されている。そしてそれぞれの発光特性測定値39a(1)に基づいて、しきい値データ81a(1)が設定される。例えばBinコード[1]に対応して適正樹脂塗布量VA0で塗布した樹脂8対象として発光特性を測定した測定結果は
、図13に示す色度表上の色度座標ZA0(XA0、YA0)によって表される。そしてこの色度座標ZA0を中心として、色度表上におけるX座標、Y座標についての所定範囲(例えば±10%)が良品判定範囲(しきい値)として設定される。他のBinコード[2]〜[5]に対応した適正樹脂塗布量についても同様に、発光特性測定結果に基づいて良品判定範囲(しきい値)が設定される(図13に示す色度表上の色度座標ZB0〜ZE0参照)。ここで、しきい値として設定される所定範囲は、製品としてのLEDパッケージ50に求められる発光特性の精度レベルに応じて適宜設定される。
【0099】
そして図12(b)(c)は、同様に樹脂8の蛍光体濃度がそれぞれ10%、15%である場合の、発光特性測定値および良品判定範囲(しきい値)を示している。図12(b)、(c)において、適正樹脂塗布量15(2)、適正樹脂塗布量15(3)はそれぞれ蛍光体濃度がそれぞれ10%、15%である場合の適正樹脂塗布量を示しており、発光特性測定値39a(2)、発光特性測定値39a(3)は、それぞれ蛍光体濃度がそれぞれ10%、15%である場合の発光特定測定値を、またしきい値データ81a(2)、しきい値データ81a(3)はそれぞれの場合の良品判定範囲(しきい値)を示している。このようにして作成されたしきい値データは、生産用塗布作業において、対象となるLED素子5の属するBinコード12bに応じて使い分けられる。なお、(ST6)に示すしきい値データ作成処理は、LEDパッケージ製造システム1とは別に設けられた単独の検査装置によってオフライン作業として実行し、管理コンピュータ3に予めしきい値データ81aとして記憶させたものをLANシステム2経由樹脂塗布装置M4に送信して用いるようにしてもよい。
【0100】
この後、ワイヤボンディング後の基板4は樹脂塗布装置M4に搬送され(ST7)、図17(a)に示すように、反射部4cで囲まれるLED実装部4bの内部に、吐出ノズル33aから樹脂8を吐出させる。ここでは、マップデータ18、しきい値データ81aおよび樹脂塗布情報14に基づき、図17(b)に示す規定量の樹脂8でLED素子5を覆って塗布する作業が実行される(ST8)。この樹脂塗布作業処理の詳細について、図12,図13を参照して説明する。まず樹脂塗布作業の開始に際しては、必要に応じて樹脂収納容器の交換が行われる(ST21)。すなわち樹脂吐出ヘッド32に装着されるディスペンサ33を、LED素子5の特性に応じて選択された蛍光体濃度の樹脂8を収納したものに交換する。
【0101】
次いで樹脂塗布部Cによって、樹脂8を発光特性測定用として試し塗布材43に試し塗布する(測定用塗布工程)(ST22)。すなわち、試し打ち・測定ユニット40にて試し打ちステージ40aに引き出された試し塗布材43上に、図4にて規定される各Binコード12b毎の適正樹脂塗布量(VA0〜VE0)の樹脂8を塗布する。このとき適正樹脂塗布量(VA0〜VE0)に対応する吐出動作パラメータを樹脂吐出機構35に指令しても、吐出ノズル33aから吐出されて試し塗布材43に塗布される実際の樹脂塗布量は樹脂8の性状の経時変化などによって必ずしも上述の適正樹脂塗布量とはならず、図15(a)に示すように、実際樹脂塗布量はVA0〜VE0とは幾分異なるVA1〜VE1となる。
【0102】
次いで試し打ち・測定ユニット40において試し塗布材43を送ることにより、樹脂8が試し塗布された試し塗布材43を送り、試し塗布材載置部41に載置する(試し塗布材載置工程)。そして試し塗布材載置部41の上方に配置された光源部45から、蛍光体を励起する励起光を発光する(励起光発光工程)。そしてこの励起光を試し塗布材43に塗布された樹脂8に照射することにより、この樹脂8が発する光を、積分球44を介して分光器42によって受光し、発光特性測定処理部39によってこの光の発光特性測定を行う(発光特性測定工程)(ST23)。
【0103】
これにより、図15(b)に示すように、色度座標Z(図13参照)で表される発光特性測定値が得られる。この測定結果は、上述の塗布量の誤差および樹脂8中の蛍光体粒子の濃度変化などによって、必ずしも予め規定された発光特性、すなわち図12(a)に示す適正樹脂塗布時における標準的な色度座標ZA0〜ZE0とは一致しない。このため、得られた色度座標ZA1〜ZE1と、図12(a)に示す適正樹脂塗布時における標準的な色度座標ZA0〜ZE0との、X,Y座標における隔たりを示す偏差(ΔXA、ΔYA)〜(ΔXE、ΔYE)を求め、所望の発光特性を得るための補正の要否を判定する。
【0104】
ここでは測定結果はしきい値以内であるか否かの判定が行われ(ST24)、図15(c)に示すように、(ST23)にて求められた偏差としきい値とを比較することにより、偏差(ΔXA、ΔYA)〜(ΔXE、ΔYE)がZA0〜ZE0に対して±10%の範囲内にあるか否かを判断する。ここで、偏差がしきい値以内であれば、既設定の適正樹脂塗布量VA0〜VE0に対応する吐出動作パラメータをそのまま維持する。これに対し、偏差がしきい値を超えている場合には、塗布量の補正を行う(ST25)。すなわち発光特性測定工程における測定結果と予め規定された発光特性との偏差を求め、図15(d)に示すように、求められた偏差に基づいて、LED素子5に塗布されるべき実生産用の新たな適正樹脂塗布量(VA2〜VE2)を導出する処理を、塗布量導出処理部38によって実行する(塗布量導出処理工程)。
【0105】
ここで、補正後の適正樹脂塗布量(VA2〜VE2)は、既設定の適正樹脂塗布量VA0〜VE0に、それぞれの偏差に応じた補正分を加えた更新値である。偏差と補正分との関係は、予め既知の付随データとして樹脂塗布情報14に記録されている。そして補正後の適正樹脂塗布量(VA2〜VE2)に基づいて(ST22)、(ST23)、(ST24)、(ST25)の処理が反復実行され、(ST24)にて測定結果と予め規定された発光特性との偏差がしきい値以内であることが確認されることにより、実生産用の適正樹脂塗布量が確定する。すなわち上述の樹脂塗布方法においては、測定用塗布工程、透光部
材載置工程、励起光発光工程、発光特性測定工程および塗布量導出工程を反復実行することにより、適正樹脂塗布量を確定的に導出するようにしている。そして確定した適正樹脂塗布量は、記憶部81に実生産用塗布量81bとして記憶される。
【0106】
そしてこの後、次のステップに移行して捨て打ちが実行される(ST26)。ここでは、所定量の樹脂8を吐出ノズル33aから吐出させることにより、樹脂吐出経路内の樹脂流動状態を改善して、ディスペンサ33、樹脂吐出機構35の動作を安定させる。なお図14にて破線枠によって示す(ST27)(ST28)(ST29)(ST30)の処理は、(ST22)(ST23)(ST24)(ST25)に示す処理内容と同様であり、所望の発光特性が完全に確保されていることを入念的に確認する必要がある場合に実行されるものであり、必ずしも必須実行事項ではない。
【0107】
このようにして、所望の発光特性を与える適正樹脂塗布量が確定したならば、生産用塗布が実行される(ST31)。すなわち、塗布量導出処理部38によって導出され実生産用塗布量81bとして記憶されたた適正樹脂塗布量を、樹脂吐出機構35を制御する塗布制御部36に生産実行処理部37が指令することにより、この適正樹脂塗布量の樹脂8を基板4に実装されたLED素子5に塗布する生産用塗布処理を実行させる(生産実行工程)。
【0108】
そしてこの生産用塗布処理を反復実行する過程においては、ディスペンサ33による塗布回数をカウントしており、塗布回数が予め設定された所定回数を経過したか否かが監視される(ST32)。すなわちこの所定回数に到達するまでは、樹脂8の性状や蛍光体濃度の変化は少ないと判断して、同一の実生産用塗布量81bを維持したまま生産用塗布実行(ST31)を反復する。そして(ST32)にて所定回数の経過が確認されたならば、樹脂8の性状や蛍光体濃度が変化している可能性有りと判断して(ST22)に戻り、以下同様の発光特性の測定とその測定結果に基づく塗布量補正処理が反復して実行される。
【0109】
このようにして1枚の基板4を対象とする樹脂塗布が終了すると、基板4はキュア装置M5に送られ、キュア装置M5によって加熱することにより樹脂8を硬化させる(ST9)。これにより、図17(c)に示すように、LED素子5を覆って塗布された樹脂8は熱硬化して樹脂8aとなり、LED実装部4b内で固着状態となる。次いで、樹脂キュア後の基板4は個片切断装置M6に送られ、ここで基板4を個片基板4a毎に切断することにより、図17(d)に示すように、個片のLEDパッケージ50に分割する(ST10)。これにより、LEDパッケージ50が完成する。
【0110】
上記説明したように、上記実施の形態に示すLEDパッケージ製造システム1は、基板4に複数のLED素子5を実装する部品実装装置M1と、複数のLED素子5の発光波長を予め個別に測定して得られた情報を素子特性情報12として提供する素子特性情報提供手段と、規定の発光特性を具備したLEDパッケージ50を得るための樹脂8の適正樹脂塗布量と素子特性情報12とを対応させた情報を樹脂塗布情報14として提供する樹脂情報提供手段と、部品実装装置M1によって実装されたLED素子5の基板4における位置を示す実装位置情報71aと当該LED素子5についての素子特性情報12とを関連付けたマップデータ18を、基板4毎に作成するマップデータ作成手段と、マップデータ18と樹脂塗布情報14に基づき、規定の発光特性を具備するための適正樹脂塗布量の樹脂8を、基板4に実装された各LED素子に塗布する樹脂塗布装置M4とを備えた構成となっている。
【0111】
そして樹脂塗布装置M4は、塗布量を可変に吐出して任意の塗布対象位置に樹脂8を塗布する樹脂塗布部Cと、樹脂塗布部Cを制御することにより、樹脂8を発光特性測定用として試し塗布材43に試し塗布する測定用塗布処理および実生産用としてLED素子5に塗布する生産用塗布処理を実行させる塗布制御部36と、蛍光体を励起する励起光を発光する光源部を備え測定用塗布処理において樹脂8が試し塗布された試し塗布材43が載置される試し塗布材載置部41と、光源部から発光された励起光を試し塗布材43に塗布された樹脂8に照射することによりこの樹脂8が発する光の発光特性を測定する発光特性測定部と、発光特性測定部の測定結果と予め規定された発光特性との偏差を求め、この偏差に基づいて適正樹脂塗布量を補正することにより、LED素子5に塗布されるべき実生産用の適正樹脂塗布量を導出する塗布量導出処理部38と、導出された適正樹脂塗布量を塗布制御部36に指令することにより、この適正樹脂塗布量の樹脂をLED素子5に塗布する生産用塗布処理を実行させる生産実行処理部37とを備えた構成となっている。
【0112】
上記の実施の形態における試し塗布材43の具体例のうち、図8(b)の(ロ)に示したエンボス部43aの垂直方向の断面形状が、底部に向かって内径が小さくなる方向に傾斜した直線状の側壁を有していたが、図20に示すように、試し塗布材43のエンボス部43bの垂直方向の断面形状を円弧状、より具体的には半球に形成されている。その他は上記の実施の形態と同じである。
【0113】
このように試し塗布材43のエンボス部43bの垂直方向の断面形状半球に形成した場合には、励起光によって励起されて蛍光体から発生した光が、エンボス部43aの内側で有効に反射を繰り返して、満遍なく光線が樹脂8に行き渡ってから樹脂8の外へ放射されるので、底部に向かって内径が小さくなる方向に傾斜した直線状の側壁のエンボス部43aの場合に比べて、色度測定に必要な樹脂量を少なくできる。また、試し塗布材43のエンボス部43bの垂直方向の断面形状半球に形成した場合には、光の拡散によって、樹脂8内を通過する光路長が平均化されるので、コリメータレンズ65,光彩絞り66および積分球44で構成されている光学系の光学軸が、試し塗布材43に対して傾いた場合であっても、色度の検出誤差を小さくできる。
【0114】
なお、上記の実施の形態では、試し塗布材43で上方に反射し、前記試し塗布された樹脂を通過した光の発光特性を発光特性測定部39が測定する場合を例に挙げて説明したが、試し塗布材43を透過した光が上方へ反射するように試し塗布材載置部41の下部支持部材41bの表面を、光反射または光拡散するようにして加工して実施することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、蛍光体を含む樹脂でLED素子を覆ったLEDパッケージを製造する分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0116】
1 LEDパッケージ製造システム
2 LANシステム
4 基板
4a 個片基板
4b LED実装部
4c 反射部
5 LED素子
8 樹脂
12 素子特性情報
13A,13B,13C,13D,13E LEDシート
14 樹脂塗布情報
18 マップデータ
23 樹脂接着剤
24 接着剤転写機構
25 部品供給機構
26 部品実装機構
32 樹脂吐出ヘッド
33 ディスペンサ
33a 吐出ノズル
40 試し打ち・測定ユニット
40a 試し打ちステージ
41 試し塗布材載置部
42 分光器
43 試し塗布材
43a エンボス部
44 積分球
46 照射部
50 LEDパッケージ
63 上側開口
64 下側開口
65 コリメータレンズ
66 光彩絞り
67 トップテープ供給部
68a,68b シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体を含む樹脂を塗布する樹脂塗布部と、
前記樹脂塗布部を制御して前記樹脂を測定用塗布処理として試し塗布材に試し塗布する第1塗布制御部と、
前記樹脂塗布部を制御してLED素子に生産用塗布処理として前記樹脂を塗布する第2塗布制御部と、
前記第1塗布制御部により前記樹脂が試し塗布された試し塗布材が載置される試し塗布材載置部と、
前記試し塗布材載置部の上方に配置され前記蛍光体を励起する励起光を発光する光源部と、
前記励起光を前記試し塗布材に試し塗布された前記樹脂に上方から照射することにより前記試し塗布材または前記試し塗布材載置部で反射して前記試し塗布された前記樹脂を通過した光の発光特性を測定する発光特性測定部と、
前記発光特性測定部の測定結果と予め規定された発光特性との偏差を求め、この偏差に基づいて生産用として前記LED素子に塗布されるべき前記樹脂の適正樹脂塗布量を導出する塗布量導出処理部と、
前記適正樹脂塗布量を前記第2塗布制御部に指令することにより、前記適正樹脂塗布量の樹脂を前記LED素子に塗布する前記生産用塗布処理を実行させる生産実行処理部と
を備えたことを特徴とする樹脂塗布装置。
【請求項2】
前記光源部として、白色光を発するLEDパッケージを用いることを特徴とする
請求項1記載の樹脂塗布装置。
【請求項3】
前記発光特性測定部は、積分球を前記試し塗布材の上方に配置して成り、前記樹脂が発する光を前記積分球の開口を介して受光することを特徴とする
請求項1または2のいずれかに記載の樹脂塗布装置。
【請求項4】
蛍光体を含む樹脂をLED素子に塗布する樹脂塗布方法であって、
塗布量を可変に吐出する樹脂吐出部によって前記樹脂を発光特性測定用として試し塗布材に試し塗布する測定用塗布工程と、
前記樹脂が試し塗布された試し塗布材を試し塗布材載置部に載置する試し塗布材載置工程と、
前記試し塗布材載置部の上方に配置された光源部から前記蛍光体を励起する励起光を発光する励起光発光工程と、
前記励起光を前記試し塗布材に塗布された樹脂に上方から照射することにより前記試し塗布材または前記試し塗布材載置部で反射して前記試し塗布された樹脂を通過した光の発光特性を測定する発光特性測定工程と、
前記発光特性測定工程における測定結果と予め規定された発光特性との偏差を求め、この偏差に基づいて実生産用として前記LED素子に塗布されるべき前記樹脂の適正樹脂塗布量を導出する塗布量導出処理工程と、
前記導出された適正樹脂塗布量を前記樹脂吐出部を制御する塗布制御部に指令することにより、この適正樹脂塗布量の樹脂をLED素子に塗布する生産用塗布処理を実行させる生産実行工程と
を含むことを特徴とする樹脂塗布方法。
【請求項5】
前記光源部として白色光を発するLEDパッケージを用い、前記予め規定された発光特性は、LED素子に塗布された前記樹脂が硬化した状態の完成製品について求められる正規の発光特性を、前記樹脂が未硬化の状態であることによる発光特性の相違分だけ偏らせた発光特性であることを特徴とする
請求項4に記載の樹脂塗布方法。
【請求項6】
前記発光特性測定工程において、積分球を前記試し塗布材の上方に配置した状態で前記樹脂が発する光を前記積分球の開口を介して受光することを特徴とする
請求項4または5のいずれかに記載の樹脂塗布方法。
【請求項7】
前記測定用塗布工程、試し塗布材載置工程、発光特性測定工程および塗布量導出工程を反復実行することにより、前記適正樹脂塗布量を確定的に導出することを特徴とする
請求項4乃至6のいずれかに記載の樹脂塗布方法。
【請求項8】
前記試し塗布材は、表面に樹脂が試し塗布される凹部が形成されている
請求項1記載の樹脂塗布装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2013−48131(P2013−48131A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185405(P2011−185405)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】