説明

樹脂成形装置

【課題】樹脂成形装置の小型化ならびに低コスト化を実現することで、完成製品の製造ライン内に樹脂成形装置を組み込むことを可能とし、半製品の中間在庫を不要にする。
【解決手段】密閉された内部に溶融樹脂材Mを溜めることが可能で、かつ、該内部に圧縮空気を供給することが可能なタンク10と、このタンクに対し、その内部と連通させた状態で一体的に結合された射出ノズル40とを備えている。タンク10の内部に供給される圧縮空気の圧力によって溶融樹脂材Mを射出ノズルから所定の金型内に充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばアンテナ基板の外側を樹脂材で被う防水加工に際し、この基板がセットされた金型内に溶融樹脂を充填するための樹脂成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の樹脂成形装置における一般的な構成が図7に示されている。この構成では、タンク110の外周に設けられているヒーター130の加熱温度が、熱電対134の測定値に基づく温度調整器132の制御によって調整される。このヒーター130の加熱に伴うタンク110内の温度上昇により、該タンク110内に入れた樹脂材が溶融して溶融樹脂材Mになる。そして、タンク110内の溶融樹脂材Mは、ギヤポンプ100の駆動により、ホース200を通って射出ノズル140から基板がセットされた金型(図示省略)内に供給される。この射出ノズル140およびホース200についても個々のヒーター142,210によって加熱されており、それぞれの加熱温度は熱電対146,214の測定値に基づく温度調整器144,212の制御によって調整される。
なお、図7で示す構成と類似する樹脂成形装置としては、特許文献1に開示されている技術がある。
【特許文献1】特開2007−125783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図7で示す樹脂成形装置においては、タンク110の傍らにギヤポンプ100を設置するスペースを確保する必要があるとともに、タンク110から射出ノズル140まで溶融樹脂材Mを供給するホース200と、その加熱設備が必要になる。このため、樹脂成形装置が大型になり、かつ、コストアップも招く。したがって、金型で防水加工された基板を半製品とする完成製品の製造ライン内に、樹脂成形装置を組み込むことが難しく、半製品である基板の中間在庫が必要になる。
【0004】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、樹脂成形装置の小型化ならびに低コスト化を実現することで、完成製品の製造ライン内に樹脂成形装置を組み込むことを可能とし、半製品の中間在庫を不要にする等の要望に対応することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
第1の発明は、密閉された内部に溶融樹脂材を溜めることが可能で、かつ、該内部に圧縮空気を供給することが可能なタンクと、このタンクに対し、その内部と連通させた状態で一体的に結合された射出ノズルとを備えている。そして、タンクの内部に供給される圧縮空気の圧力によって溶融樹脂材を射出ノズルから所定の金型内に充填するように構成されている。
【0006】
この構成により、タンク内の溶融樹脂材が射出ノズルから金型内に直接充填され、樹脂成形装置の小型化ならびに低コスト化を実現できる。この結果、金型で成形される物を半製品とする完成製品の製造ライン内に、樹脂成形装置を組み込むことが可能となり、半製品の中間在庫を不要にする等の要望へと展開することができる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、タンクがヒーターを備えており、このヒーターは温度調整器の設定値に基づいてタンク内の温度調整が可能に構成されている。
この構成においては、タンクに入れた樹脂材をヒーターの加熱によって溶融させるとともに、その溶融樹脂材の温度を管理することができる。
【0008】
第3の発明は、第2の発明において、ヒーターがタンクの壁部に設けられており、かつ、タンクの内部で相対向する壁部の間にわたって熱伝導板が設けられている。
これにより、ヒーターの熱が熱伝導板を通じてタンクの中央付近にまで効率よく伝わることとなり、樹脂材の溶融状態が均一になる。
【0009】
第4の発明は、第1,2又は3の発明において、射出ノズルがヒーターを備えており、このヒーターは温度調整器の設定値に基づいて射出ノズル内の温度調整が可能に構成されている。
この構成では、射出ノズルのヒーターによって、その内部の溶融樹脂材の温度を管理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図1〜図6を用いて説明する。
図1および図2で示すように、溶融樹脂材Mを溜めるタンク10は円筒形の容器であって、その上面の開放部10aは蓋14によって閉塞されている。また、図3で明らかなように、タンク10の内部には相対向する内壁部の間にわたって熱伝導板12が設けられている。
蓋14は、複数本のボルト16によってタンク10に締め付けられている。そして、タンク10における開放部10aの端面と蓋14の下面とには、図4で示すように相互に嵌り合う凹凸部18が設けられている。したがって、開放部10aを蓋14で閉塞すれば、タンク10の内部は密閉された状態になる。なお、各ボルト16を弛めて蓋14をタンク10から外すことにより、開放部10aからタンク10の内部に樹脂材を入れることができる。
【0011】
蓋14の中心部には、エアチューブ20の端部が管継手22で結合され、このエアチューブ20はタンク10の内部に連通している。このエアチューブ20により、空気圧縮機24から送り出される圧縮空気が圧力調整装置26および電磁弁28を通ってタンク10の内部に供給される(図2)。電磁弁28は、その切り替え制御によってタンク10内への圧縮空気の供給を止めることができる。
タンク10の外周には、このタンク10の内部を加熱するためのヒーター30が設けられている。このヒーター30の温度は、熱電対34による測定値に基づく温度調整器32の制御によって調整される。したがって、このヒーター30は、タンク10内の温度が温度調整器32の設定値に保たれるように該タンク10を加熱する。このヒーター30の加熱によってタンク10内の温度が上昇し、このタンク10内に入れた固形の樹脂材が溶融して図2で示す溶融樹脂材Mになる。
【0012】
タンク10のノズル接続部10bには、射出ノズル40が接続されている。この射出ノズル40は、タンク10内の溶融樹脂材Mを図2で示す金型50のキャビティー52に射出し、あるいは射出を止めることができる構成になっている。
射出ノズル40の外周には、この射出ノズル40を加熱するためのヒーター42が設けられている。このヒーター42の温度は、熱電対46による測定値に基づく温度調整器44の制御によって調整される。したがって、このヒーター42は、射出ノズル40内の温度が温度調整器44の設定値に保たれるように該射出ノズル40を加熱する。このヒーター42の加熱によって射出ノズル40内に入っている固形の樹脂材が溶融する。
【0013】
つづいて、樹脂成形装置によってアンテナ基板の外側を樹脂材で被う場合の作業を説明する。
まず、タンク10の開放部10aから内部に固形の樹脂材を入れ、開放部10aを蓋14で閉塞して各ボルト16を締め付ける。一方、金型50の上型50Aおよび下型50Bを型開きした状態で、下型50Bに基板Pをセットした後、上型50Aを合わせて型締めを行う。そして、上型50Aの側から射出ノズル40の先端部をキャビティー52に挿通させる(図2)。
つぎに、タンク10および射出ノズル40を個々のヒーター30,42によって加熱する。これにより、前述したようにタンク10および射出ノズル40の内部温度が上昇し、それぞれの内部に入っている固形の樹脂材が溶融して溶融樹脂材Mになる。タンク10の内部においては、ヒーター30の熱が熱伝導板12を通じて中央付近にまで効率よく伝わり、樹脂材の溶融状態が均一になる。
【0014】
タンク10および射出ノズル40の内部温度が、個々の温度調整器32,44の設定温度に達したら、電磁弁28が開く方に切り替え制御される。これにより、エアチューブ20からタンク10内に圧縮空気が供給され、タンク10の内部において圧力の上昇が起こる。射出ノズル40の端部にあるゲート(図示省略)は、機械的に開閉する周知の機構を有し、この機構はタンク10の内部圧力が上昇することによって開く。この結果、射出ノズル40から金型50のキャビティー52に溶融樹脂材Mが充填され、基板Pの外側が樹脂材で被われる。なお、タンク10の内部において、射出ノズル40に向かう部分はテーパー面10cになっている(図2)。このテーパー面10cは、タンク10内での圧縮空気による圧力伝達の効率化、溶融樹脂材Mの通路断面積の減少に伴う空気の巻き込み防止といった機能を果たす。
金型50のキャビティー52に充填された溶融樹脂材Mが冷却されて固まったら、電磁弁28を閉じる方に切り替え制御し、金型50を型開きして樹脂材で防水加工された基板Pを取り出す。
【0015】
以上の説明から明らかなように、タンク10内の溶融樹脂材Mを射出ノズル40からダイレクトに金型50のキャビティー52充填することにより、樹脂成形装置の小型化ならびに低コスト化を実現できる。したがって、樹脂材で防水加工された基板Pを半製品とする完成製品の製造ライン内に、樹脂成形装置を組み込むことが可能となり、半製品の中間在庫を不要にすることができる。
【0016】
以上は本発明を実施するための最良の形態を図面に関連して説明したが、この実施の形態は本発明の趣旨から逸脱しない範囲で容易に変更または変形できるものである。
例えば、図5で示すようにタンク10内の熱伝導板12を十字状に二枚合わせで構成することもでき、それによってヒーター30の熱がタンク10内の中央付近にまで、より効率よく伝わることになる。
また、タンク10内を密閉するための前述した凹凸部18の嵌合に代えて、図6で示すようにタンク10における開放部10aの端面と蓋14の下面との間にリング状のガスケット19を介在させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】樹脂成形装置を表した外観斜視図。
【図2】樹脂成形装置を表した断面図。
【図3】タンクの平面図。
【図4】図2の一部を拡大して表した断面図。
【図5】変更例を図3と対応させて表した平面図。
【図6】変更例を図4と対応させて表した断面図。
【図7】従来の樹脂成形装置を表した断面図。
【符号の説明】
【0018】
10 タンク
40 射出ノズル
50 金型
M 溶融樹脂材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉された内部に溶融樹脂材を溜めることが可能で、かつ、該内部に圧縮空気を供給することが可能なタンクと、このタンクに対し、その内部と連通させた状態で一体的に結合された射出ノズルとを備え、タンクの内部に供給される圧縮空気の圧力によって溶融樹脂材を射出ノズルから所定の金型内に充填するように構成された樹脂成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載された樹脂成形装置であって、
タンクがヒーターを備えており、このヒーターは温度調整器の設定値に基づいてタンク内の温度調整が可能に構成されている樹脂成形装置。
【請求項3】
請求項2に記載された樹脂成形装置であって、
ヒーターはタンクの壁部に設けられており、かつ、タンクの内部で相対向する壁部の間にわたって熱伝導板が設けられている樹脂成形装置。
【請求項4】
請求項1,2又は3に記載された樹脂成形装置であって、
射出ノズルがヒーターを備えており、このヒーターは温度調整器の設定値に基づいて射出ノズル内の温度調整が可能に構成されている樹脂成形装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−274340(P2009−274340A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128064(P2008−128064)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】