樹脂発泡シート及び発泡樹脂製容器
【課題】ソリッド層の表面に接着させた表装シートなどの接着物を容易に剥離しうる樹脂発泡シートを提供し、ひいては、表面に表装シートなどを接着させて用いられる用途に適した発泡樹脂製容器を提供することを課題としている。
【解決手段】発泡層の表面にソリッド層が形成されている樹脂発泡シートであって、前記ソリッド層の表面粗さが0.10μm以上の算術平均粗さ(Ra)となるように形成されていることを特徴とする樹脂発泡シートなどを提供する。
【解決手段】発泡層の表面にソリッド層が形成されている樹脂発泡シートであって、前記ソリッド層の表面粗さが0.10μm以上の算術平均粗さ(Ra)となるように形成されていることを特徴とする樹脂発泡シートなどを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂製容器の形成に用いられ、発泡層の表面にソリッド層が形成されている樹脂発泡シートと、発泡層の表面にソリッド層が形成されている樹脂発泡シートが成形加工されてなる発泡樹脂製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乾麺や粉末スープをカップ状の容器に収容させた即席麺等の食品が広く利用されており、この即席麺の容器としては、軽量でありながらも比較的高い強度を有し、しかも、断熱性に優れていることから樹脂発泡シートによって形成された発泡樹脂製容器が広く用いられている。
【0003】
このような発泡樹脂製容器の形成に用いられる樹脂発泡シートには、発泡性樹脂組成物をシート状に発泡させた発泡層のみからなるシートや、複数の発泡層や、発泡層と非発泡状態のソリッド層とを積層させた積層シートが用いられている。
なかでも、表面にソリッド層を有する樹脂発泡シートは、該ソリッド層による強度の向上を期待することができ、例えば、下記特許文献1には、ソリッド層でカップ内面を形成し箸などとの衝突に対する強度の向上された発泡樹脂製の食品容器が記載されている。
【0004】
ところで、近年の環境意識の向上に伴い、このような食品容器には、より環境にやさしい素材が積極的に取り入れられるようになっており、特許文献1や、あるいは、下記特許文献2などに示されているように、紙製の表装シートを発泡樹脂製容器の表面に接着させることが行われている。
また、発泡層の表面にはキメ細かな印刷を施すことが困難であるため、特許文献1記載の発泡樹脂製容器のように外側が発泡層となるように形成されている場合に、その美観の向上を目的として表装シートを発泡樹脂製容器の表面に接着させることが行われるようになってきている。
しかし、特許文献1記載の発泡樹脂製容器のように外側を発泡層によって形成させるとこの外側の表面を薄い気泡膜によって形成させることになり、表装シートが接着された場合に、例えば、容器使用後の紙と樹脂との分別などを目的として表層シートを剥離しようとするとその剥離力によって発泡樹脂製容器を構成する樹脂発泡シートに凝集破壊が生じて発泡樹脂製容器の表面の一部が表装シート側に付着した状態で分離されるおそれがある。
一方で、表装シートなどが付着される側に、単に、ソリッド層を設けて樹脂発泡シートの強度を向上させると、例えば、紙製の表装シートを用いた場合に表装シートの剥離に際して表装シートが破壊されてその一部が樹脂発泡シートに付着した状態となるおそれを有する。
【0005】
表面に表装シートなどを接着させても、樹脂発泡シートや表装シートが破壊することを抑制しつつ容易に剥離可能とすることは、上記のような発泡樹脂製容器の形成に用いられる場合のみならず樹脂発泡シートに広く一般に求められている事柄ではあるが、これまでに十分な対策が確立されていない。
そして、従来、この剥離性について十分な検討がなされていないことから、表面に表装シートが接着されて用いられる発泡樹脂製容器も使用後等において表装シートとの分離が困難となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−247354号公報
【特許文献2】特開2003−40277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ソリッド層の表面に接着させた表装シートなどの接着物を容易に剥離しうる樹脂発泡シートを提供し、ひいては、表面に表装シートなどを接着させて用いられる用途に適した発泡樹脂製容器を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく検討を行った結果、ソリッド層の表面をある程度粗化させることで表装シートなどを接着させた際にこのソリッド層と表装シートとの界面における剥離性を向上させうることを見出し本発明の完成に至った。
【0009】
すなわち、樹脂発泡シートに係る本発明は、発泡層の表面にソリッド層が形成されている樹脂発泡シートであって、前記ソリッド層の表面粗さが0.10μm以上の算術平均粗さ(Ra)となるように形成されていることを特徴としている。
【0010】
また、発泡樹脂製容器に係る本発明は、発泡層の表面にソリッド層が形成されている樹脂発泡シートが成形加工されてなる発泡樹脂製容器であって、外表面が前記ソリッド層によって形成されており、該ソリッド層によって形成されている前記外表面が、0.10μm以上の算術平均粗さ(Ra)を有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ソリッド層が所定以上の表面粗さを有していることから、例えば、表装シートなどとの間に適度な点接触を形成させることができ、表装シートが過度に接着されることを抑制させ得る。
したがって、表装シートなどをソリッド層に接着させても容易に剥離することができ、この剥離に際してソリッド層と発泡層との間に剥離が生じたり、表装シートが破壊したりすることを抑制させうる。
すなわち、本発明によれば、ソリッド層からの剥離性に優れた樹脂発泡シートが提供され、表面に表装シートを接着させて用いられるような用途に適した発泡樹脂製容器が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る樹脂発泡シートの構造を示す断面図。
【図2】本実施形態に係る発泡樹脂製容器の使用例(食品容器)を示す断面図。
【図3】樹脂発泡シートの製造方法に用いる装置構成を示す概略図。
【図4】合流金型の構造を示す断面図。
【図5】ソリッド層側から冷却しつつ共押し出しを実施する様子を示した断面図。
【図6】フラットダイを用いた他の実施形態を示す上面図(a)及び側面図(b)。
【図7】他実施形態に係る樹脂発泡シートの構造を示す断面図。
【図8】図7に示した樹脂発泡シートを用いた容器の構成を示す断面図。
【図9】他実施形態に係る樹脂発泡シートの構造を示す断面図。
【図10】実施例において樹脂発泡シートの製造に用いた装置構成を示す概略図。
【図11】実施例において樹脂発泡シートの製造に用いた合流金型の構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態について説明する。
まず、樹脂発泡シートと、該樹脂発泡シートが用いられてなる容器について説明する。
図1は、本実施形態に係る樹脂発泡シートの断面図であり、この図1にも示されているように、本実施形態に係る樹脂発泡シート1は、気泡が含有されていない非発泡状態に形成されたソリッド層10と、発泡状態に形成されている発泡層20との2層構造を有しており、ソリッド層10は、その表面粗さが0.10μm以上の算術平均粗さ(Ra)となるように形成されている。
なお、この表面粗さについては、JIS B 0601に基づき測定することができ、より具体的には、後述する実施例に記載の方法によって測定され得る。
【0014】
この図1のように発泡層20の表面にソリッド層10が形成されている樹脂発泡シート1は、例えば、非発泡な状態で押し出し可能な樹脂組成物(以下「非発泡性樹脂組成物」ともいう)と加熱溶融状態での押し出しを実施することで発泡を生じさせ得る樹脂組成物(以下「発泡性樹脂組成物」ともいう)とを共押し出しする方法や、発泡層のみからなるシートと、ソリッド層となる非発泡な樹脂フィルムとをヒートラミネートする方法などによって形成されうる。
【0015】
したがって、ソリッド層10の表面粗さ(算術平均粗さ:Ra)を0.10μm以上とする具体的な方法としては、例えば、上記のいずれかの方法によってソリッド層と発泡層とが積層された樹脂発泡シートを作製し、その後、ソリッド層の表面をショットブラストなどによって粗化させたり、少なくとも片面に算術平均粗さ0.10μm以上となるマット加工が施された樹脂フィルムを後者のヒートラミネート法によって発泡層のみからなるシートに積層したり、あるいは、前者の共押し出しにおいてソリッド層の表面粗さがある程度以上となるように用いる非発泡性樹脂組成物の配合を調整したり、適度な押し出し条件を設定したりする方法などが挙げられる。
【0016】
なかでも、共押し出しによる方法は、所定以上の表面粗さを有する樹脂発泡シートを容易に製造可能であるばかりでなくソリッド層10と発泡層20との間に優れた接着力を発揮させやすく好適である。
本発明の樹脂発泡シート1は、ソリッド層10が所定以上の表面粗さを有していることで表装シートなどを比較的小さな引き剥がし力で剥離可能に形成されているが、このことに加えてソリッド層10と発泡層20との間の接着力が向上されることによって表装シートなどを剥がす際にその応力によって発泡層20とソリッド層10との間に層間剥離が発生してしまうことを防止しうる。
【0017】
そして、本実施形態の樹脂発泡シート1は、シート成形法などによる成形加工によって容器を構成すべく用いられる。
したがって、この容器の状態で所定以上の表面粗さを有していることが重要であり、ソリッド層10が外側となるように成形加工された発泡樹脂製容器においてその表面が0.10μm以上の算術平均粗さ(Ra)となっていることが重要である。
そのため、元の樹脂発泡シート1の表面が成形加工において若干平滑化されることを考慮すると容器に用いる樹脂発泡シート1としては、表面粗さ(算術平均粗さ:Ra)が0.12μm以上とされていることが好ましい。
この樹脂発泡シート1の表面粗さ(算術平均粗さ:Ra)が0.12μm以上とされていることで発泡樹脂製容器の外表面に0.10μm以上の算術平均粗さ(Ra)をより確実に付与させることができる。
【0018】
なお、樹脂発泡シート1のソリッド層10に形成される表面粗さは、表装シートなどの剥離性の観点からは、その上限が特に定められるべきものではないが、極端に大きな算術平均粗さ(Ra)が樹脂発泡シート1に付与されると発泡樹脂製容器の外表面に必要以上の“粗れ”を生じさせてしまうこととなるため、その上限値は、0.5μmとされることが好ましい。
【0019】
なお、樹脂発泡シート1が発泡樹脂製容器の形成に用いられるような場合においては、前記発泡層20が、通常、0.3〜5mmのいずれかの厚みとされ、この発泡層20の表面に10〜300μmのいずれかの厚みのソリッド層10が共押し出しによって形成されることで発泡層20の発泡状態がソリッド層10の表面にある程度反映されてその算術平均粗さ(Ra)が0.12μm以上とされ得る。
【0020】
このソリッド層10の形成に用いられる非発泡性樹脂組成物は、特にその使用材料に限定が加えられるものではなく、通常、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂や、ポリスチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂をベースポリマーとして含有する樹脂組成物が好適に用いられ得る。
なかでも、ポリスチレン系樹脂は、比較的安価でありながら強度や耐熱性などにおいて優れており、樹脂発泡シートが容器を構成する部材として用いられる場合などにおいてそのベースポリマーとして好適に用いられ得る。
【0021】
前記ベースポリマーとしては、例えば、前記ポリスチレン系樹脂であれば、スチレン系単量体から選ばれる1種以上の重合体や、スチレン系単量体と該スチレン系単量体と共重合可能なビニル系単量体との共重合体が挙げられる。
前記スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、t−ブチルスチレン、ジメチルスチレンが挙げられる。
また、前記ビニル系単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートが挙げられる。
【0022】
また、ソリッド層10の形成に用いる非発泡性樹脂組成物には、上記のようなベースポリマーに加えて、一般的なポリマーフィルムの材料などとして用いられる添加剤を含有させることができ、例えば、耐候剤や老化防止剤といった各種安定剤、滑剤などの加工助剤、帯電防止剤、スリップ剤、顔料、充填剤などを添加剤としてさらに含有させることができる。
このソリッド層10の表面粗さを発泡層20との共押し出しにおける押し出し条件のみによって0.12μm以上の算術平均粗さ(Ra)とすることが困難である場合には、例えば、上記非発泡性樹脂組成物に無機物粒子や前記ベースポリマーとの相溶性の低いポリマーからなるポリマー粒子を含有させて表面粗さの調整を図ることも可能である。
【0023】
前記発泡層20の形成に用いられる発泡性樹脂組成物は、例えば、ソリッド層10の形成に用いられた非発泡性の樹脂組成物に、さらに、発泡のための成分を含有させたものを採用することができる。
なお、前記ソリッド層10の形成に用いる非発泡性樹脂組成物と発泡層20の形成に用いる発泡性樹脂組成物は、ソリッド層10と発泡層20との接着強度の観点から同種のベースポリマーが採用されていることが好ましく、例えば、ソリッド層10の形成にポリスチレン系樹脂が用いられる場合には、発泡性樹脂組成物のベースポリマーには、ソリッド層10と同じかまたは異なるポリスチレン系樹脂が用いられることが好ましい。
すなわち、ソリッド層10と発泡層20との形成にいずれにもポリスチレン系樹脂をそれぞれベースポリマーとして採用することによって共押し出しにおける界面での相溶性を向上させることができ、接着強度の向上を図ることができる。
【0024】
また、非発泡性樹脂組成物に含有させる発泡のための成分としては、例えば、少なくともベースポリマーの融点において気体状態となるガス成分や、該ガス成分によって気泡を形成させる際の核となる核剤や、少なくともベースポリマーの融点において熱分解を生じて気体が発生される熱分解型発泡剤などが挙げられる。
【0025】
前記ガス成分としては、プロパン、ブタン、ペンタンなどの脂肪族炭化水素;;1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(HCFC−141b)、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン(HCFC−142b)、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HCFC−124)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)などのフロン系ガス成分;窒素、二酸化炭素、アルゴン、水などが挙げられる。
なかでも、脂肪族炭化水素が好ましい。
なお、これらのガス成分は単独で使用されても複数併用されてもよい。
【0026】
前記核剤としては、例えば、タルク、マイカ、シリカ、珪藻土、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸バリウム、ガラスビーズなどの無機化合物粒子、ポリテトラフルオロエチレン、などの有機化合物粒子などが挙げられる。
【0027】
さらに、加熱分解型の発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウムとクエン酸の混合物などが挙げられる。
【0028】
なお、発泡層20の発泡倍率としては、特に限定されるものではないが、通常、見掛け密度が0.07〜0.45g/cm3の範囲の内のいずれかとされ得る。
そして、この発泡層20は、その厚み方向中心部から前記ソリッド層10との界面側にかけて発泡倍率を低下させた状態となるように形成されていることが好ましい。
発泡層20は、通常、その発泡倍率を低くさせることで強度を向上させ得る。
しかし、その一方で発泡倍率を低くすると、樹脂発泡シート1の軽量性や断熱性などが損なわれてしまうおそれを有する。
したがって、上記のようにソリッド層10に向けて傾斜的に発泡倍率を低下させることで樹脂発泡シート1に優れた断熱性や軽量性を付与させつつソリッド層10との界面における強度を向上させうる。しかも、ソリッド層10に剥離方向への応力が加えられた場合に、その応力がソリッド層10と発泡層20との界面に集中することを抑制することができ、ソリッド層10と発泡層20との剥離強度に優れた樹脂発泡シートを形成させ得る。
【0029】
次いで、図2を参照しつつ、前記樹脂発泡シート1の用途の一例である、容器について説明する。
図2は、食品容器100の断面図を示しており、この図にも示されているように本実施形態における食品容器100は、前記樹脂発泡シート1によって形成された発泡樹脂製容器50に表装シート60が接着されて形成されている。
より具体的には、前記発泡樹脂製容器50は、前記樹脂発泡シート1を用いたシート成形によってバケツ形状に成形加工されたものであり、しかも、前記表装シート60が接着される外表面側が前記ソリッド層10となるように深絞りされて形成されたものである。
しかも、前記表装シート60が接着されている発泡樹脂製容器50の外表面は、0.10μm以上の算術平均粗さ(Ra)となるように形成されている。
【0030】
前記表装シート60には、印刷等によって装飾の施された紙や樹脂フィルムが用いられ得る。
特に、食品容器100に紙製の表装シートが採用される場合においては、発泡樹脂製容器と表装シートとの材質が大きく異なることから分別の要望が強く本発明の効果がより顕著に発揮されうる。
【0031】
すなわち、食品容器100の発泡樹脂製容器50にはソリッド層10の表面が適度に粗化されていることから表装シート60が接着されるに際して必要以上の接着力とならず、この表装シート60とソリッド層10との界面の剥離に要する力がソリッド層10と発泡層20との間の剥離強度を上回って発泡樹脂製容器50を構成している樹脂発泡シートに凝集破壊が発生されるおそれが低減されている。
しかも、紙製の表装シートを用いても表装シートが破けてしまうおそれを防止しつつ発泡樹脂製容器50から剥離することができる。
【0032】
上記のような食品容器や、それに用いる樹脂発泡シートは、以下のようにして作製することができる。
【0033】
図3は、本実施形態に係る樹脂発泡シートの製造方法に用いられる製造装置の一例(共押し出し)を示す構成図であり、この図3にも示されているように、樹脂発泡シートの製造方法においては、タンデム押し出し機である第1押し出し機70と、シングル押し出し機である第2押し出し機80とを有し、これらの押し出し機において溶融混練された樹脂組成物が合流される合流金型XHと、該合流金型XHで合流された樹脂組成物を筒状に吐出するサーキュラーダイCDとを有する設備が用いられる。
また、この製造装置には、サーキュラーダイCDから筒状に吐出された樹脂発泡シートをソリッド層の側(図3では外側)から空冷する冷却装置CLと、この筒状の樹脂発泡シートを拡径して所定の大きさの筒状にするためのマンドレルMDと、該マンドレルMD通過後の樹脂発泡シートをスリットして2枚のシートに分割するスリット装置(図示せず:図3においては上下に分割する様子のみを示す)と、スリットされた樹脂発泡シート1を複数のローラ91を通過させた後に巻き取るための巻き取りローラ92がさらに備えられている。
【0034】
前記第1押し出し機70は、発泡層20を形成させるためのものであり、その上流側の押し出し機(以下「上流側押し出し機70a」ともいう)には、ベース樹脂などの材料を投入するためのホッパー71と、炭化水素などのガス成分をシリンダー内に供給するためのガス導入部72が設けられている。
そして、この上流側押し出し機70aの下流側には、ベース樹脂とガス性成分とを含有する発泡性樹脂組成物を溶融混練して合流金型XHに吐出するための押し出し機(以下「下流側押し出し機70b」ともいう)が備えられている。
【0035】
また、前記第2押し出し機80は、ソリッド層10を形成させるためのものであり、ベース樹脂などの材料をホッパー81から投入して、シリンダー内部で非発泡性樹脂組成物を溶融混練して合流金型XHに吐出すべく構成されている。
【0036】
前記合流金型XHは、図4にその概略断面図を示すように、発泡性樹脂組成物を通過させる流路の途中に設けられた円環状のスリットから非発泡性樹脂組成物が吐出され、発泡性樹脂組成物に非発泡性樹脂組成物の外皮を被覆させた状態でサーキュラーダイCDへ供給を行うべく構成されている。
【0037】
したがって、図5にサーキュラーダイCDの吐出孔CDaから発泡性樹脂組成物と非発泡性樹脂組成物とを共押し出しする様子を断面図で示しているように、筒状の樹脂発泡シート1は、その外側にソリッド層10が配されており、前記冷却装置CLは、このソリッド層10が配された外側から筒状の樹脂発泡シート1に対して気体を吹き付けて気流AFによって冷却を実施し得るように配されている。
【0038】
このような装置によって樹脂発泡シートを作製するには、まず、第1押し出し機70のホッパー71から発泡層20の形成に用いる樹脂材料を投入し、且つ第2押し出し機80のホッパー81からソリッド層10の樹脂材料を投入し、各押し出し機内で樹脂の溶融温度以上の温度に加熱し、溶融混練を実施する。
なお、発泡性樹脂組成物や非発泡性樹脂組成物にベースポリマーとなる樹脂材料以外に添加剤等を含有させる場合には、これらも併せてホッパーから投入して各押し出し機で溶融混練を実施すればよい。
【0039】
これらの押し出し機の内、第1押し出し機70においては、上流側押し出し機70aに設けられたガス導入部72からガス成分を圧入して、溶融樹脂と混合する。
第1押し出し機70における上流側押し出し機70aで溶融混練された発泡性樹脂組成物は、下流側押し出し機70bで押し出し発泡に適した温度に調整して合流金型XHへと送り、一方で第2押し出し機80では、非発泡性樹脂組成物をソリッド層10の形成に適した温度に調整して合流金型XHへと送る。
【0040】
そして、合流金型XH内で合流されたそれぞれの樹脂組成物を、サーキュラーダイCDの円環状の吐出孔CDaから円筒状に共押し出しさせ、前記発泡性樹脂組成物においては発泡させて発泡層20を形成させ、前記非発泡性樹脂組成物においてはソリッド層10を形成させる。
このときソリッド層10と発泡層20との形成に、例えば、いずれもポリスチレン系樹脂を採用するなどして同種の樹脂材料を用いることでその界面における相溶性を向上させることができソリッド層10と発泡層20との剥離強度の向上を図ることができる。
【0041】
また、ソリッド層10を形成させる非発泡性樹脂組成物は、樹脂温を高温に設定して、メルトテンション(溶融張力)を低下させることで発泡層の発泡に伴う凹凸がソリッド層10の表面に形成されやすくなり、表面粗さ(算術平均粗さ:Ra)の値の大きなソリッド層10を形成させることが容易となる。
したがって、非発泡性樹脂組成物の樹脂温を非発泡性樹脂組成物よりも高い温度に設定して共押し出しを実施することでソリッド層10の表面粗さを0.10μm以上あるいは0.12μm以上の算術平均粗さ(Ra)とすることが容易となる。
【0042】
なお、このときソリッド層10の側から冷却装置CLによって冷却を実施しつつ共押し出しを実施することがソリッド層10と発泡層20との剥離強度の向上を図る上で重要である。
このことについてより詳しく説明すると、ソリッド層10の直下(内側)における発泡層20の発泡倍率が高いとそれだけ発泡層の強度が低下することになるため、得られる樹脂発泡シートに十分な剥離強度を付与することが困難になるおそれを有する。
一方で、ソリッド層10の側から冷却を行うことでソリッド層10の直下における気泡の成長を抑制しソリッド層10と発泡層20との剥離強度の向上を図ることができる。
【0043】
なお、このソリッド層10からの冷却は、発泡層20において形成される気泡が十分に成長してしまう前に、所定の熱量を除去することが可能な条件で実施されることが好ましい。
例えば、ポリスチレン系樹脂を用いた樹脂発泡シートを、その押し出し速度が3〜6m/min程度となるように押し出す場合には、前記サーキュラーダイCDの吐出孔CDaからの距離(図5のL)25mm以内、且つソリッド層10の表面からの距離(図5のD)25mm以内において、80℃未満の温度の気体を樹脂発泡シートの面積1m2当たりに0.1m3以上吹き付けて冷却を実施することが好ましい。
【0044】
なお、冷却風が強過ぎる場合には、押し出された樹脂発泡シートに気流によるバタツキを生じさせたり、樹脂発泡シートとともに吐出孔CDaから排出される低分子成分が気体出口に堆積して、この堆積物を樹脂発泡シートに付着させたりするおそれがある。
そのため、サーキュラーダイからの距離(L)は、3mm以上であることが好ましく、4〜15mmのいずれかであることがさらに好ましく、5〜10mmのいずれかであることが最も好ましい。
また、ソリッド層10の表面からの距離(D)は、3mm以上であることが好ましく、4〜15mmのいずれかであることがさらに好ましく、5〜10mmのいずれかであることが最も好ましい。
さらに、気体の温度も極端に低いと堆積物が生じたり、また、樹脂発泡シートにシワが発生したりするなどその外観を低下させるおそれを有する。
したがって、気体の温度は、10〜70℃のいずれかの温度であることが好ましく、20〜60℃のいずれかであることがより好ましく、35〜50℃のいずれかであることが特に好ましい。
また、風量については、円筒状の樹脂発泡シートの外周面1m2当たり0.2m3以上とすることがより好ましく、0.25m3以上とすることが特に好ましい。
【0045】
このようにしてソリッド層10と発泡層20との剥離強度の向上が図られた円筒状の樹脂発泡シートは、その後、マンドレルMDによって拡径された状態を保持させるとともに、該マンドレルMDによって切断容易な温度にまで冷却を行い、スリット装置によって2箇所切開して、上下それぞれに複数のローラ21を経て、巻き取りローラ22に巻き取らせる。
【0046】
なお、サーキュラーダイを用いる方法に代えてフラットダイを用いる場合もソリッド層の側から冷却を行いつつ共押し出しを実施する場合においては、本発明の意図する範囲である。
例えば、図6に示すようにフラットダイFDの開口方向と平行に配したローラRを利用して、該ローラRによってソリッド層10の側から冷却を実施しつつ共押し出しを実施する方法も採用が可能である。
【0047】
すなわち、共押し出しされる樹脂発泡シートのシート幅以上の長さを有するローラRをフラットダイFDの吐出孔FDaの吐出方向前方でその外周面が前記吐出孔FDaから遠ざかる方向に回転させつつ、この外周面上に加熱溶融された状態の非発泡性樹脂組成物と発泡性樹脂組成物との積層体(樹脂発泡シート1)を共押し出しして、しかも、非発泡性樹脂組成物側、すなわち、ソリッド層側が前記ローラRの外周面に接するように共押し出しを行うことでソリッド層10と発泡層20との剥離強度に優れる樹脂発泡シートを得ることができる。
このときローラRに水、蒸気、油などの適度な熱媒を循環させることでその表面温度をソリッド層の冷却に適した温度に維持させることができる。
【0048】
この方法を採用する場合においては、このローラRの表面状態をソリッド層10の表面状態に反映させることができ、例えば、表面粗化されたローラを用いて該ローラの表面の凹凸状態をソリッド層10の表面に転写することでソリッド層10の表面粗さを算術平均粗さ0.10μm以上(好ましくは、0.12μm以上)とさせることができる。
【0049】
なお、上記においては、ソリッド層と発泡層とが、各1層ずつ形成されている樹脂発泡シートを例示しているが、例えば、図7の断面図に示すように、発泡層20を介して両表面に所定の表面粗さを有したソリッド層10、10’が形成されている樹脂発泡シートも上記に示した製造方法によって製造が可能である。
例えば、図7に示すような両面に算術平均粗さ0.10μm以上の表面粗さを有するソリッド層10、10’が形成されている樹脂発泡シートを用いて、図8に断面図を示した食品容器100のように円形底面100bを有し、該底面100bの外周から外側に傾斜して起立した周側壁100wを有し、該周側壁100wの上端部から外側に延びる鍔部100fが形成されている発泡樹脂製容器50を構成させることで、この発泡樹脂製容器50の周側壁100wの外側に接着される表装シート60の剥離性のみならず、この発泡樹脂製容器50の開口を閉塞させるべく周囲を前記鍔部100fに接着される封止シート65の剥離性をも向上させ得る。
【0050】
この図7、図8に示されているように両面にソリッド層を形成させ、しかも、剥離性のみならずソリッド層と発泡層との剥離強度の向上が求められる場合には、この剥離強度の向上が求められる側において前記冷却を行いつつ共押し出しすればよく、両面において剥離強度の向上が求められる場合には、例えば、サーキュラーダイを用いる場合には、筒状体の内外両方から気体を吹き付ければよく、フラットダイを用いる場合には、冷却用のローラを2本用意して、その間に樹脂発泡シートを挟んで両側から冷却を実施すればよい。
【0051】
また、上記においては、発泡層が1層のみの場合を例示しているが、この発泡層についても、例えば、図9にその断面図を示すように、発泡倍率の異なる複数の発泡層を形成させる場合も本発明の意図する範囲である。
【0052】
なお、得られた樹脂発泡シートは、真空成形や真空圧空成形などといった一般的なシート成形方法によって発泡樹脂製容器に成形加工することができる。
このとき、樹脂発泡シートのソリッド層に形成されている表面粗さが維持された状態で発泡樹脂製容器を形成させることが好ましい。
すなわち、外表面に表装シートを接着させて用いられる発泡樹脂製容器を形成させるような場合においては、外表面が前記ソリッド層となるように樹脂発泡シートを成形加工し、しかも、ソリッド層によって形成されている前記外表面が、0.10μm以上の算術平均粗さ(Ra)を有している状態となるようにして発泡樹脂製容器を形成させることが表装シートなどの剥離性の観点から重要である。
【0053】
このような表面粗さを有する発泡樹脂製容器は、粘着層を有した表装シートなどをその表面に巻きかけた状態で接着させて食品などを収容するための容器とすることができ、その使用後には、この表装シートを容易に剥離することができる。
このことによって、例えば、紙製の表装シートが接着されて用いられた場合において、用済み後に紙とプラスチックとの素材ごとの分別が容易に実施可能となる。
【0054】
なお、ここでは詳述しないが、樹脂発泡シートや発泡樹脂製容器に関して従来公知の技術事項を、本発明の効果が著しく損なわれない範囲において採用することが可能である。
【実施例】
【0055】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
樹脂発泡シートの作製には、図10に示すような装置構成の設備を用いた。
また、合流金型は、図11に示す構造のものを用いた。
より詳しくは、第1押し出し機70として、口径が115mmの単軸押し出し機(上流側押し出し機70a)と、該単軸押し出し機に接続された口径が150mmの単軸押し出し機(下流側押し出し機70b)とからなるタンデム型押し出し機を用意した。
また、第2押し出し機80として口径が115mmの単軸押し出し機を用意した。
そして、第1押し出し機70から、発泡性樹脂組成物を合流金型XH’に導入し、その外側に、第2押し出し機80から非発泡性樹脂組成物が被覆されるように合流金型XH’にそれぞれの押し出し機を接続した。
【0057】
そして、上記第1押し出し機70に、ポリスチレン系樹脂(PSジャパン社製、商品名「G0002」)100重量部に対して、ポリスチレン系樹脂に核剤として粒径が5〜15μmのタルク粒子及び分散剤が添加されてなるマスターバッチ(キハラ化成社製、商品名「SMA−01」、タルク粒子:約40重量%)が0.6重量部となる割合で樹脂材料を供給して樹脂温度220℃にて溶融混練した後、上流側押し出し機70aにガス成分としてブタン(ノルマルブタン:65重量%、イソブタン:35重量%)2.8重量部を圧入した上で溶融混練して発泡性樹脂組成物を作製し、次に、下流側押し出し機70bで樹脂温度を155℃まで低下させて合流金型XH’に供給した。
【0058】
また、上記第2押し出し機80においては、耐衝撃性ポリスチレン(東洋スチレン社製、商品名「HIPS,E641N」、メルトフローレイト:3.6g/10分)を供給して樹脂温度220℃にて溶融混練した後に樹脂温度180℃まで冷却し合流金型XH’に供給した。
【0059】
そして、これらの押出し機から、合流金型内XH’に発泡性樹脂組成物ならびに非発泡性樹脂組成物を押し出して、断面円形状の発泡性樹脂組成物層の外周面に非発泡性樹脂組成物層が積層された状態で共押し出し用のサーキュラーダイに連続的に供給して、該サーキュラーダイの円形の吐出孔から押し出し発泡させ、円筒状の樹脂発泡シートを製造した。
なお、第1押し出し機70からの押し出し量は142kg/時間、第2押し出し機80からの押し出し量は58kg/時間であった。
また、共押し出しに用いたサーキュラーダイCDは、内側の先端面直径が215mmで且つ開口部のクリアランスが0.74mmであった。
なお、この実施例1では、第1押し出し機70と第2押し出し機80との間において合流金型内XH’に樹脂組成物を押し出し可能に接続された第3押し出し機85からの押し出しは実施しなかった。
【0060】
また、上記共押し出しにおいては、押し出された円筒状の樹脂発泡シートの外周面と内周面とに40℃の温度の空気を吹きつけ空冷を行った。
なお、外周面側からは2.75m3/分、内周面からは1.60m3/分の風量でそれぞれ空冷を実施した。
【0061】
この共押し出しにおいては、このように樹脂発泡シートを空気によって冷却しつつ徐々に拡径させ、さらに、一定径(直径:670mm)を有する円柱状の冷却マンドレルMDに連続的に供給して冷却し、その後、この円筒状の樹脂発泡シートをその押し出し方向にそって連続的に切断して切り開き、展開してシート状とした。
【0062】
得られた樹脂発泡シートは、坪量481g/m2、発泡層341g/m2、ソリッド層140g/m2、幅1052mm、厚み2.35mmであった。
【0063】
(実施例2)
第1押し出し機70として、口径が115mmの単軸押し出し機(上流側押し出し機70a)と、該単軸押し出し機に接続された口径が150mmの単軸押し出し機(下流側押し出し機70b)とからなるタンデム型押し出し機を用意した。
また、第2押し出し機80として口径が115mmの単軸押し出し機を用意する一方、第3の押し出し機85として口径が90mmの単軸押し出し機を用意した。
そして、第1押し出し機70から、高発泡性の発泡性樹脂組成物を合流金型XH’に導入し、その外側に、第3押し出し機85から、低発泡性の発泡性樹脂組成物が被覆され、さらにその外側に第2押し出し機80から非発泡性樹脂組成物が被覆されるように合流金型XH’にそれぞれの押し出し機を接続した。
【0064】
そして、上記第1押し出し機70に、ポリスチレン系樹脂(PSジャパン社製、商品名「G0002」)100重量部に対して、ポリスチレン系樹脂に核剤として粒径が5〜15μmのタルク粒子及び分散剤が添加されてなるマスターバッチ(キハラ化成社製、商品名「SMA−01」、タルク粒子:約40重量%)が0.6重量部となる割合で樹脂材料を供給して樹脂温度220℃にて溶融混練した後、上流側押し出し機70aにガス成分としてブタン(ノルマルブタン:65重量%、イソブタン:35重量%)2.8重量部を圧入した上で溶融混練して高発泡性の発泡性樹脂組成物を作製し、次に、下流側押し出し機70bで樹脂温度を154℃まで低下させて合流金型XH’に供給した。
【0065】
また、上記第2押し出し機80においては、耐衝撃性ポリスチレン(東洋スチレン社製、商品名「HIPS,E641N」、メルトフローレイト:3.6g/10分)を供給して樹脂温度220℃にて溶融混練した後に樹脂温度181℃まで冷却し合流金型XH’に供給した。
【0066】
さらに、上記第3押し出し機85においては、ポリスチレン(東洋スチレン社製、商品名「GPPS,HRM18」)100重量部に対して、ポリスチレンに核剤として粒径が5〜15μmのタルク粒子及び分散剤が添加されてなるマスターバッチ(キハラ化成社製、商品名「SMA−01」、タルク:約40重量%)が1.4重量部となる割合で樹脂材料を供給して樹脂温度220℃にて溶融混練した後にブタン(ノルマルブタン:65重量%、イソブタン:35重量部)2.1重量部を圧入した上で溶融混練して低発泡性の発泡性樹脂組成物を作製し、樹脂温度161℃まで冷却し合流金型XH’に供給した。
【0067】
そして、これらの押出し機から、合流金型内に2種類の発泡性樹脂組成物ならびに1種類の非発泡性樹脂組成物を押し出して、断面円形状の高発泡性の発泡性樹脂組成物層の外周面に低発泡性の発泡性樹脂組成物層を積層し、さらに、その外側に非発泡性樹脂組成物層が積層された状態で共押し出し用のサーキュラーダイCDに連続的に供給して、該サーキュラーダイCDの円形の吐出孔から押し出し発泡させ、円筒状の樹脂発泡シートを製造した。
なお、第1押し出し機70からの押し出し量は152kg/時間、第2押し出し機80からの押し出し量は73kg/時間、第3押し出し機85からの押し出し量は25kg/時間であった。
また、共押し出しに用いたサーキュラーダイCDは、内側の先端面直径が215mmで且つ開口部のクリアランスが0.74mmであった。
【0068】
なお、上記共押し出しにおいて、押し出された円筒状の樹脂発泡シートの外周面と内周面とに2.75m3/分、1.60m3/分の風量で40℃の温度の空気を吹きつけて空冷を行った点、冷却マンドレルMDに連続的に供給して冷却し、連続的に切断して切り開き、展開してシート状とした点については実施例1と同じである。
【0069】
この共押し出しにおいて得られた樹脂発泡シートは、坪量480g/m2、発泡層(2層の合計)340g/m2、ソリッド層140g/m2、幅1052mm、厚み2.35mmであった。
【0070】
(比較例1)
第1押し出し機70として、口径が115mmの単軸押し出し機(上流側押し出し機70a)と、該単軸押し出し機に接続された口径が150mmの単軸押し出し機(下流側押し出し機70b)とからなるタンデム型押し出し機を用意した。
そして、上記第1押し出し機70に、ポリスチレン系樹脂(PSジャパン社製、商品名「G0002」)100重量部に対して、ポリスチレン系樹脂に核剤として粒径が5〜15μmのタルク粒子及び分散剤が添加されてなるマスターバッチ(キハラ化成社製、商品名「SMA−01」、タルク粒子:約40重量%)が0.7重量部となる割合で樹脂材料を供給して樹脂温度220℃にて溶融混練した後、上流側押し出し機70aにガス成分としてブタン(ノルマルブタン:65重量%、イソブタン:35重量%)3.0重量部を圧入した上で溶融混練して発泡性樹脂組成物を作製し、次に、下流側押し出し機70bで樹脂温度を157℃まで低下させて合流金型XH’を通じてサーキュラーダイCDに供給した。(第2押し出し機80、第3押し出し機85は、稼動させなかった。)
【0071】
そして、上記実施例1、2と同様に、押し出された円筒状の樹脂発泡シートの外周面と内周面とに2.80m3/分、1.60m3/分の風量で40℃の温度の空気を吹きつけて空冷を行った点、冷却マンドレルMDに連続的に供給して冷却し、連続的に切断して切り開き、展開してシート状とした。
この発泡押し出しにおいて得られた発泡層のみからなる樹脂発泡シートは、坪量340g/m2、厚み2.20mmであった。
【0072】
この発泡押し出しにおいて得られた樹脂発泡シート上にTダイを用いて耐衝撃性ポリスチレン(東洋スチレン社製、商品名「HIPS,E641N」、メルトフローレイト:3.6g/10分)を非発泡状態で押し出して被覆することによりソリッド層を形成させた。この発泡層のみからなる樹脂発泡シートに非発泡性樹脂組成物を被覆してソリッド層を形成させた樹脂発泡シートは、坪量480g/m2、厚み2.35mmであった。
【0073】
[表面粗さ測定:樹脂発泡シート]
実施例、比較例の樹脂発泡シートから、縦20mm×横20mmの正方形試料をシート幅方向に10点採取し、キーエンス社製粗さ計「LT−9500」にてソリッド層の表面を測定長さ5000μm、基準長さ50μmで測定し算術平均粗さを求めた。
なお、10点の試料に対し、シート押し出し方向、幅方向にそれぞれ算術平均粗さを測定し、これらの平均値を樹脂発泡シートの算術平均粗さとした。
この測定結果を表1に示す。
【0074】
[表面粗さ測定:発泡樹脂製容器]
実施例、比較例の樹脂発泡シートを用いて直径90mmの円形底面を有し、該底面の外周から外側に傾斜して起立した高さ105mmの周側壁を有し、上面視における輪郭が直径140mmの円形となるように形成されたバケツ型容器をシート成型法によって作製し、前記周側壁から縦20mm×横20mmの正方形試料を周方向に10個採取した。
なお、容器はソリッド層が外側となるように作製し、試料の採取位置は底面から約40mm高さのところとした。
得られた試料に対し、樹脂発泡シートの表面粗さ測定と同様にして算術平均粗さを測定し、これらの平均値を発泡樹脂製容器の算術平均粗さとした。
この測定結果を表1に示す。
【0075】
[紙製表装シートの剥離性評価]
上記のバケツ型容器に粘着剤を介して紙巻きを実施して、粘着剤の乾燥のため1日置いた後、この紙製の表装シートを手で剥がし、剥離性を評価した。
実施例、比較例、それぞれ各10個の試料を作製し、10個中、1個でも紙が残ったものは「×」として判定し、1つも紙が残らないものを「○」として判定した。
この評価結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
この表からも、ソリッド層の表面粗さを所定以上にすることで表装シートなどの接着物に対する剥離性に優れた樹脂発泡シートとなることがわかる。
【符号の説明】
【0078】
1 樹脂発泡シート
10 ソリッド層
20 発泡層
50 発泡樹脂製容器
60 表装シート
100 食品容器
AF 気流
CD サーキュラーダイ
CDa 吐出孔
CL 冷却装置
FD フラットダイ
FDa 吐出孔
MD マンドレル
R ローラ
XH 合流金型
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂製容器の形成に用いられ、発泡層の表面にソリッド層が形成されている樹脂発泡シートと、発泡層の表面にソリッド層が形成されている樹脂発泡シートが成形加工されてなる発泡樹脂製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乾麺や粉末スープをカップ状の容器に収容させた即席麺等の食品が広く利用されており、この即席麺の容器としては、軽量でありながらも比較的高い強度を有し、しかも、断熱性に優れていることから樹脂発泡シートによって形成された発泡樹脂製容器が広く用いられている。
【0003】
このような発泡樹脂製容器の形成に用いられる樹脂発泡シートには、発泡性樹脂組成物をシート状に発泡させた発泡層のみからなるシートや、複数の発泡層や、発泡層と非発泡状態のソリッド層とを積層させた積層シートが用いられている。
なかでも、表面にソリッド層を有する樹脂発泡シートは、該ソリッド層による強度の向上を期待することができ、例えば、下記特許文献1には、ソリッド層でカップ内面を形成し箸などとの衝突に対する強度の向上された発泡樹脂製の食品容器が記載されている。
【0004】
ところで、近年の環境意識の向上に伴い、このような食品容器には、より環境にやさしい素材が積極的に取り入れられるようになっており、特許文献1や、あるいは、下記特許文献2などに示されているように、紙製の表装シートを発泡樹脂製容器の表面に接着させることが行われている。
また、発泡層の表面にはキメ細かな印刷を施すことが困難であるため、特許文献1記載の発泡樹脂製容器のように外側が発泡層となるように形成されている場合に、その美観の向上を目的として表装シートを発泡樹脂製容器の表面に接着させることが行われるようになってきている。
しかし、特許文献1記載の発泡樹脂製容器のように外側を発泡層によって形成させるとこの外側の表面を薄い気泡膜によって形成させることになり、表装シートが接着された場合に、例えば、容器使用後の紙と樹脂との分別などを目的として表層シートを剥離しようとするとその剥離力によって発泡樹脂製容器を構成する樹脂発泡シートに凝集破壊が生じて発泡樹脂製容器の表面の一部が表装シート側に付着した状態で分離されるおそれがある。
一方で、表装シートなどが付着される側に、単に、ソリッド層を設けて樹脂発泡シートの強度を向上させると、例えば、紙製の表装シートを用いた場合に表装シートの剥離に際して表装シートが破壊されてその一部が樹脂発泡シートに付着した状態となるおそれを有する。
【0005】
表面に表装シートなどを接着させても、樹脂発泡シートや表装シートが破壊することを抑制しつつ容易に剥離可能とすることは、上記のような発泡樹脂製容器の形成に用いられる場合のみならず樹脂発泡シートに広く一般に求められている事柄ではあるが、これまでに十分な対策が確立されていない。
そして、従来、この剥離性について十分な検討がなされていないことから、表面に表装シートが接着されて用いられる発泡樹脂製容器も使用後等において表装シートとの分離が困難となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−247354号公報
【特許文献2】特開2003−40277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ソリッド層の表面に接着させた表装シートなどの接着物を容易に剥離しうる樹脂発泡シートを提供し、ひいては、表面に表装シートなどを接着させて用いられる用途に適した発泡樹脂製容器を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく検討を行った結果、ソリッド層の表面をある程度粗化させることで表装シートなどを接着させた際にこのソリッド層と表装シートとの界面における剥離性を向上させうることを見出し本発明の完成に至った。
【0009】
すなわち、樹脂発泡シートに係る本発明は、発泡層の表面にソリッド層が形成されている樹脂発泡シートであって、前記ソリッド層の表面粗さが0.10μm以上の算術平均粗さ(Ra)となるように形成されていることを特徴としている。
【0010】
また、発泡樹脂製容器に係る本発明は、発泡層の表面にソリッド層が形成されている樹脂発泡シートが成形加工されてなる発泡樹脂製容器であって、外表面が前記ソリッド層によって形成されており、該ソリッド層によって形成されている前記外表面が、0.10μm以上の算術平均粗さ(Ra)を有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ソリッド層が所定以上の表面粗さを有していることから、例えば、表装シートなどとの間に適度な点接触を形成させることができ、表装シートが過度に接着されることを抑制させ得る。
したがって、表装シートなどをソリッド層に接着させても容易に剥離することができ、この剥離に際してソリッド層と発泡層との間に剥離が生じたり、表装シートが破壊したりすることを抑制させうる。
すなわち、本発明によれば、ソリッド層からの剥離性に優れた樹脂発泡シートが提供され、表面に表装シートを接着させて用いられるような用途に適した発泡樹脂製容器が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る樹脂発泡シートの構造を示す断面図。
【図2】本実施形態に係る発泡樹脂製容器の使用例(食品容器)を示す断面図。
【図3】樹脂発泡シートの製造方法に用いる装置構成を示す概略図。
【図4】合流金型の構造を示す断面図。
【図5】ソリッド層側から冷却しつつ共押し出しを実施する様子を示した断面図。
【図6】フラットダイを用いた他の実施形態を示す上面図(a)及び側面図(b)。
【図7】他実施形態に係る樹脂発泡シートの構造を示す断面図。
【図8】図7に示した樹脂発泡シートを用いた容器の構成を示す断面図。
【図9】他実施形態に係る樹脂発泡シートの構造を示す断面図。
【図10】実施例において樹脂発泡シートの製造に用いた装置構成を示す概略図。
【図11】実施例において樹脂発泡シートの製造に用いた合流金型の構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態について説明する。
まず、樹脂発泡シートと、該樹脂発泡シートが用いられてなる容器について説明する。
図1は、本実施形態に係る樹脂発泡シートの断面図であり、この図1にも示されているように、本実施形態に係る樹脂発泡シート1は、気泡が含有されていない非発泡状態に形成されたソリッド層10と、発泡状態に形成されている発泡層20との2層構造を有しており、ソリッド層10は、その表面粗さが0.10μm以上の算術平均粗さ(Ra)となるように形成されている。
なお、この表面粗さについては、JIS B 0601に基づき測定することができ、より具体的には、後述する実施例に記載の方法によって測定され得る。
【0014】
この図1のように発泡層20の表面にソリッド層10が形成されている樹脂発泡シート1は、例えば、非発泡な状態で押し出し可能な樹脂組成物(以下「非発泡性樹脂組成物」ともいう)と加熱溶融状態での押し出しを実施することで発泡を生じさせ得る樹脂組成物(以下「発泡性樹脂組成物」ともいう)とを共押し出しする方法や、発泡層のみからなるシートと、ソリッド層となる非発泡な樹脂フィルムとをヒートラミネートする方法などによって形成されうる。
【0015】
したがって、ソリッド層10の表面粗さ(算術平均粗さ:Ra)を0.10μm以上とする具体的な方法としては、例えば、上記のいずれかの方法によってソリッド層と発泡層とが積層された樹脂発泡シートを作製し、その後、ソリッド層の表面をショットブラストなどによって粗化させたり、少なくとも片面に算術平均粗さ0.10μm以上となるマット加工が施された樹脂フィルムを後者のヒートラミネート法によって発泡層のみからなるシートに積層したり、あるいは、前者の共押し出しにおいてソリッド層の表面粗さがある程度以上となるように用いる非発泡性樹脂組成物の配合を調整したり、適度な押し出し条件を設定したりする方法などが挙げられる。
【0016】
なかでも、共押し出しによる方法は、所定以上の表面粗さを有する樹脂発泡シートを容易に製造可能であるばかりでなくソリッド層10と発泡層20との間に優れた接着力を発揮させやすく好適である。
本発明の樹脂発泡シート1は、ソリッド層10が所定以上の表面粗さを有していることで表装シートなどを比較的小さな引き剥がし力で剥離可能に形成されているが、このことに加えてソリッド層10と発泡層20との間の接着力が向上されることによって表装シートなどを剥がす際にその応力によって発泡層20とソリッド層10との間に層間剥離が発生してしまうことを防止しうる。
【0017】
そして、本実施形態の樹脂発泡シート1は、シート成形法などによる成形加工によって容器を構成すべく用いられる。
したがって、この容器の状態で所定以上の表面粗さを有していることが重要であり、ソリッド層10が外側となるように成形加工された発泡樹脂製容器においてその表面が0.10μm以上の算術平均粗さ(Ra)となっていることが重要である。
そのため、元の樹脂発泡シート1の表面が成形加工において若干平滑化されることを考慮すると容器に用いる樹脂発泡シート1としては、表面粗さ(算術平均粗さ:Ra)が0.12μm以上とされていることが好ましい。
この樹脂発泡シート1の表面粗さ(算術平均粗さ:Ra)が0.12μm以上とされていることで発泡樹脂製容器の外表面に0.10μm以上の算術平均粗さ(Ra)をより確実に付与させることができる。
【0018】
なお、樹脂発泡シート1のソリッド層10に形成される表面粗さは、表装シートなどの剥離性の観点からは、その上限が特に定められるべきものではないが、極端に大きな算術平均粗さ(Ra)が樹脂発泡シート1に付与されると発泡樹脂製容器の外表面に必要以上の“粗れ”を生じさせてしまうこととなるため、その上限値は、0.5μmとされることが好ましい。
【0019】
なお、樹脂発泡シート1が発泡樹脂製容器の形成に用いられるような場合においては、前記発泡層20が、通常、0.3〜5mmのいずれかの厚みとされ、この発泡層20の表面に10〜300μmのいずれかの厚みのソリッド層10が共押し出しによって形成されることで発泡層20の発泡状態がソリッド層10の表面にある程度反映されてその算術平均粗さ(Ra)が0.12μm以上とされ得る。
【0020】
このソリッド層10の形成に用いられる非発泡性樹脂組成物は、特にその使用材料に限定が加えられるものではなく、通常、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂や、ポリスチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂をベースポリマーとして含有する樹脂組成物が好適に用いられ得る。
なかでも、ポリスチレン系樹脂は、比較的安価でありながら強度や耐熱性などにおいて優れており、樹脂発泡シートが容器を構成する部材として用いられる場合などにおいてそのベースポリマーとして好適に用いられ得る。
【0021】
前記ベースポリマーとしては、例えば、前記ポリスチレン系樹脂であれば、スチレン系単量体から選ばれる1種以上の重合体や、スチレン系単量体と該スチレン系単量体と共重合可能なビニル系単量体との共重合体が挙げられる。
前記スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、t−ブチルスチレン、ジメチルスチレンが挙げられる。
また、前記ビニル系単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートが挙げられる。
【0022】
また、ソリッド層10の形成に用いる非発泡性樹脂組成物には、上記のようなベースポリマーに加えて、一般的なポリマーフィルムの材料などとして用いられる添加剤を含有させることができ、例えば、耐候剤や老化防止剤といった各種安定剤、滑剤などの加工助剤、帯電防止剤、スリップ剤、顔料、充填剤などを添加剤としてさらに含有させることができる。
このソリッド層10の表面粗さを発泡層20との共押し出しにおける押し出し条件のみによって0.12μm以上の算術平均粗さ(Ra)とすることが困難である場合には、例えば、上記非発泡性樹脂組成物に無機物粒子や前記ベースポリマーとの相溶性の低いポリマーからなるポリマー粒子を含有させて表面粗さの調整を図ることも可能である。
【0023】
前記発泡層20の形成に用いられる発泡性樹脂組成物は、例えば、ソリッド層10の形成に用いられた非発泡性の樹脂組成物に、さらに、発泡のための成分を含有させたものを採用することができる。
なお、前記ソリッド層10の形成に用いる非発泡性樹脂組成物と発泡層20の形成に用いる発泡性樹脂組成物は、ソリッド層10と発泡層20との接着強度の観点から同種のベースポリマーが採用されていることが好ましく、例えば、ソリッド層10の形成にポリスチレン系樹脂が用いられる場合には、発泡性樹脂組成物のベースポリマーには、ソリッド層10と同じかまたは異なるポリスチレン系樹脂が用いられることが好ましい。
すなわち、ソリッド層10と発泡層20との形成にいずれにもポリスチレン系樹脂をそれぞれベースポリマーとして採用することによって共押し出しにおける界面での相溶性を向上させることができ、接着強度の向上を図ることができる。
【0024】
また、非発泡性樹脂組成物に含有させる発泡のための成分としては、例えば、少なくともベースポリマーの融点において気体状態となるガス成分や、該ガス成分によって気泡を形成させる際の核となる核剤や、少なくともベースポリマーの融点において熱分解を生じて気体が発生される熱分解型発泡剤などが挙げられる。
【0025】
前記ガス成分としては、プロパン、ブタン、ペンタンなどの脂肪族炭化水素;;1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(HCFC−141b)、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン(HCFC−142b)、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HCFC−124)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)などのフロン系ガス成分;窒素、二酸化炭素、アルゴン、水などが挙げられる。
なかでも、脂肪族炭化水素が好ましい。
なお、これらのガス成分は単独で使用されても複数併用されてもよい。
【0026】
前記核剤としては、例えば、タルク、マイカ、シリカ、珪藻土、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸バリウム、ガラスビーズなどの無機化合物粒子、ポリテトラフルオロエチレン、などの有機化合物粒子などが挙げられる。
【0027】
さらに、加熱分解型の発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウムとクエン酸の混合物などが挙げられる。
【0028】
なお、発泡層20の発泡倍率としては、特に限定されるものではないが、通常、見掛け密度が0.07〜0.45g/cm3の範囲の内のいずれかとされ得る。
そして、この発泡層20は、その厚み方向中心部から前記ソリッド層10との界面側にかけて発泡倍率を低下させた状態となるように形成されていることが好ましい。
発泡層20は、通常、その発泡倍率を低くさせることで強度を向上させ得る。
しかし、その一方で発泡倍率を低くすると、樹脂発泡シート1の軽量性や断熱性などが損なわれてしまうおそれを有する。
したがって、上記のようにソリッド層10に向けて傾斜的に発泡倍率を低下させることで樹脂発泡シート1に優れた断熱性や軽量性を付与させつつソリッド層10との界面における強度を向上させうる。しかも、ソリッド層10に剥離方向への応力が加えられた場合に、その応力がソリッド層10と発泡層20との界面に集中することを抑制することができ、ソリッド層10と発泡層20との剥離強度に優れた樹脂発泡シートを形成させ得る。
【0029】
次いで、図2を参照しつつ、前記樹脂発泡シート1の用途の一例である、容器について説明する。
図2は、食品容器100の断面図を示しており、この図にも示されているように本実施形態における食品容器100は、前記樹脂発泡シート1によって形成された発泡樹脂製容器50に表装シート60が接着されて形成されている。
より具体的には、前記発泡樹脂製容器50は、前記樹脂発泡シート1を用いたシート成形によってバケツ形状に成形加工されたものであり、しかも、前記表装シート60が接着される外表面側が前記ソリッド層10となるように深絞りされて形成されたものである。
しかも、前記表装シート60が接着されている発泡樹脂製容器50の外表面は、0.10μm以上の算術平均粗さ(Ra)となるように形成されている。
【0030】
前記表装シート60には、印刷等によって装飾の施された紙や樹脂フィルムが用いられ得る。
特に、食品容器100に紙製の表装シートが採用される場合においては、発泡樹脂製容器と表装シートとの材質が大きく異なることから分別の要望が強く本発明の効果がより顕著に発揮されうる。
【0031】
すなわち、食品容器100の発泡樹脂製容器50にはソリッド層10の表面が適度に粗化されていることから表装シート60が接着されるに際して必要以上の接着力とならず、この表装シート60とソリッド層10との界面の剥離に要する力がソリッド層10と発泡層20との間の剥離強度を上回って発泡樹脂製容器50を構成している樹脂発泡シートに凝集破壊が発生されるおそれが低減されている。
しかも、紙製の表装シートを用いても表装シートが破けてしまうおそれを防止しつつ発泡樹脂製容器50から剥離することができる。
【0032】
上記のような食品容器や、それに用いる樹脂発泡シートは、以下のようにして作製することができる。
【0033】
図3は、本実施形態に係る樹脂発泡シートの製造方法に用いられる製造装置の一例(共押し出し)を示す構成図であり、この図3にも示されているように、樹脂発泡シートの製造方法においては、タンデム押し出し機である第1押し出し機70と、シングル押し出し機である第2押し出し機80とを有し、これらの押し出し機において溶融混練された樹脂組成物が合流される合流金型XHと、該合流金型XHで合流された樹脂組成物を筒状に吐出するサーキュラーダイCDとを有する設備が用いられる。
また、この製造装置には、サーキュラーダイCDから筒状に吐出された樹脂発泡シートをソリッド層の側(図3では外側)から空冷する冷却装置CLと、この筒状の樹脂発泡シートを拡径して所定の大きさの筒状にするためのマンドレルMDと、該マンドレルMD通過後の樹脂発泡シートをスリットして2枚のシートに分割するスリット装置(図示せず:図3においては上下に分割する様子のみを示す)と、スリットされた樹脂発泡シート1を複数のローラ91を通過させた後に巻き取るための巻き取りローラ92がさらに備えられている。
【0034】
前記第1押し出し機70は、発泡層20を形成させるためのものであり、その上流側の押し出し機(以下「上流側押し出し機70a」ともいう)には、ベース樹脂などの材料を投入するためのホッパー71と、炭化水素などのガス成分をシリンダー内に供給するためのガス導入部72が設けられている。
そして、この上流側押し出し機70aの下流側には、ベース樹脂とガス性成分とを含有する発泡性樹脂組成物を溶融混練して合流金型XHに吐出するための押し出し機(以下「下流側押し出し機70b」ともいう)が備えられている。
【0035】
また、前記第2押し出し機80は、ソリッド層10を形成させるためのものであり、ベース樹脂などの材料をホッパー81から投入して、シリンダー内部で非発泡性樹脂組成物を溶融混練して合流金型XHに吐出すべく構成されている。
【0036】
前記合流金型XHは、図4にその概略断面図を示すように、発泡性樹脂組成物を通過させる流路の途中に設けられた円環状のスリットから非発泡性樹脂組成物が吐出され、発泡性樹脂組成物に非発泡性樹脂組成物の外皮を被覆させた状態でサーキュラーダイCDへ供給を行うべく構成されている。
【0037】
したがって、図5にサーキュラーダイCDの吐出孔CDaから発泡性樹脂組成物と非発泡性樹脂組成物とを共押し出しする様子を断面図で示しているように、筒状の樹脂発泡シート1は、その外側にソリッド層10が配されており、前記冷却装置CLは、このソリッド層10が配された外側から筒状の樹脂発泡シート1に対して気体を吹き付けて気流AFによって冷却を実施し得るように配されている。
【0038】
このような装置によって樹脂発泡シートを作製するには、まず、第1押し出し機70のホッパー71から発泡層20の形成に用いる樹脂材料を投入し、且つ第2押し出し機80のホッパー81からソリッド層10の樹脂材料を投入し、各押し出し機内で樹脂の溶融温度以上の温度に加熱し、溶融混練を実施する。
なお、発泡性樹脂組成物や非発泡性樹脂組成物にベースポリマーとなる樹脂材料以外に添加剤等を含有させる場合には、これらも併せてホッパーから投入して各押し出し機で溶融混練を実施すればよい。
【0039】
これらの押し出し機の内、第1押し出し機70においては、上流側押し出し機70aに設けられたガス導入部72からガス成分を圧入して、溶融樹脂と混合する。
第1押し出し機70における上流側押し出し機70aで溶融混練された発泡性樹脂組成物は、下流側押し出し機70bで押し出し発泡に適した温度に調整して合流金型XHへと送り、一方で第2押し出し機80では、非発泡性樹脂組成物をソリッド層10の形成に適した温度に調整して合流金型XHへと送る。
【0040】
そして、合流金型XH内で合流されたそれぞれの樹脂組成物を、サーキュラーダイCDの円環状の吐出孔CDaから円筒状に共押し出しさせ、前記発泡性樹脂組成物においては発泡させて発泡層20を形成させ、前記非発泡性樹脂組成物においてはソリッド層10を形成させる。
このときソリッド層10と発泡層20との形成に、例えば、いずれもポリスチレン系樹脂を採用するなどして同種の樹脂材料を用いることでその界面における相溶性を向上させることができソリッド層10と発泡層20との剥離強度の向上を図ることができる。
【0041】
また、ソリッド層10を形成させる非発泡性樹脂組成物は、樹脂温を高温に設定して、メルトテンション(溶融張力)を低下させることで発泡層の発泡に伴う凹凸がソリッド層10の表面に形成されやすくなり、表面粗さ(算術平均粗さ:Ra)の値の大きなソリッド層10を形成させることが容易となる。
したがって、非発泡性樹脂組成物の樹脂温を非発泡性樹脂組成物よりも高い温度に設定して共押し出しを実施することでソリッド層10の表面粗さを0.10μm以上あるいは0.12μm以上の算術平均粗さ(Ra)とすることが容易となる。
【0042】
なお、このときソリッド層10の側から冷却装置CLによって冷却を実施しつつ共押し出しを実施することがソリッド層10と発泡層20との剥離強度の向上を図る上で重要である。
このことについてより詳しく説明すると、ソリッド層10の直下(内側)における発泡層20の発泡倍率が高いとそれだけ発泡層の強度が低下することになるため、得られる樹脂発泡シートに十分な剥離強度を付与することが困難になるおそれを有する。
一方で、ソリッド層10の側から冷却を行うことでソリッド層10の直下における気泡の成長を抑制しソリッド層10と発泡層20との剥離強度の向上を図ることができる。
【0043】
なお、このソリッド層10からの冷却は、発泡層20において形成される気泡が十分に成長してしまう前に、所定の熱量を除去することが可能な条件で実施されることが好ましい。
例えば、ポリスチレン系樹脂を用いた樹脂発泡シートを、その押し出し速度が3〜6m/min程度となるように押し出す場合には、前記サーキュラーダイCDの吐出孔CDaからの距離(図5のL)25mm以内、且つソリッド層10の表面からの距離(図5のD)25mm以内において、80℃未満の温度の気体を樹脂発泡シートの面積1m2当たりに0.1m3以上吹き付けて冷却を実施することが好ましい。
【0044】
なお、冷却風が強過ぎる場合には、押し出された樹脂発泡シートに気流によるバタツキを生じさせたり、樹脂発泡シートとともに吐出孔CDaから排出される低分子成分が気体出口に堆積して、この堆積物を樹脂発泡シートに付着させたりするおそれがある。
そのため、サーキュラーダイからの距離(L)は、3mm以上であることが好ましく、4〜15mmのいずれかであることがさらに好ましく、5〜10mmのいずれかであることが最も好ましい。
また、ソリッド層10の表面からの距離(D)は、3mm以上であることが好ましく、4〜15mmのいずれかであることがさらに好ましく、5〜10mmのいずれかであることが最も好ましい。
さらに、気体の温度も極端に低いと堆積物が生じたり、また、樹脂発泡シートにシワが発生したりするなどその外観を低下させるおそれを有する。
したがって、気体の温度は、10〜70℃のいずれかの温度であることが好ましく、20〜60℃のいずれかであることがより好ましく、35〜50℃のいずれかであることが特に好ましい。
また、風量については、円筒状の樹脂発泡シートの外周面1m2当たり0.2m3以上とすることがより好ましく、0.25m3以上とすることが特に好ましい。
【0045】
このようにしてソリッド層10と発泡層20との剥離強度の向上が図られた円筒状の樹脂発泡シートは、その後、マンドレルMDによって拡径された状態を保持させるとともに、該マンドレルMDによって切断容易な温度にまで冷却を行い、スリット装置によって2箇所切開して、上下それぞれに複数のローラ21を経て、巻き取りローラ22に巻き取らせる。
【0046】
なお、サーキュラーダイを用いる方法に代えてフラットダイを用いる場合もソリッド層の側から冷却を行いつつ共押し出しを実施する場合においては、本発明の意図する範囲である。
例えば、図6に示すようにフラットダイFDの開口方向と平行に配したローラRを利用して、該ローラRによってソリッド層10の側から冷却を実施しつつ共押し出しを実施する方法も採用が可能である。
【0047】
すなわち、共押し出しされる樹脂発泡シートのシート幅以上の長さを有するローラRをフラットダイFDの吐出孔FDaの吐出方向前方でその外周面が前記吐出孔FDaから遠ざかる方向に回転させつつ、この外周面上に加熱溶融された状態の非発泡性樹脂組成物と発泡性樹脂組成物との積層体(樹脂発泡シート1)を共押し出しして、しかも、非発泡性樹脂組成物側、すなわち、ソリッド層側が前記ローラRの外周面に接するように共押し出しを行うことでソリッド層10と発泡層20との剥離強度に優れる樹脂発泡シートを得ることができる。
このときローラRに水、蒸気、油などの適度な熱媒を循環させることでその表面温度をソリッド層の冷却に適した温度に維持させることができる。
【0048】
この方法を採用する場合においては、このローラRの表面状態をソリッド層10の表面状態に反映させることができ、例えば、表面粗化されたローラを用いて該ローラの表面の凹凸状態をソリッド層10の表面に転写することでソリッド層10の表面粗さを算術平均粗さ0.10μm以上(好ましくは、0.12μm以上)とさせることができる。
【0049】
なお、上記においては、ソリッド層と発泡層とが、各1層ずつ形成されている樹脂発泡シートを例示しているが、例えば、図7の断面図に示すように、発泡層20を介して両表面に所定の表面粗さを有したソリッド層10、10’が形成されている樹脂発泡シートも上記に示した製造方法によって製造が可能である。
例えば、図7に示すような両面に算術平均粗さ0.10μm以上の表面粗さを有するソリッド層10、10’が形成されている樹脂発泡シートを用いて、図8に断面図を示した食品容器100のように円形底面100bを有し、該底面100bの外周から外側に傾斜して起立した周側壁100wを有し、該周側壁100wの上端部から外側に延びる鍔部100fが形成されている発泡樹脂製容器50を構成させることで、この発泡樹脂製容器50の周側壁100wの外側に接着される表装シート60の剥離性のみならず、この発泡樹脂製容器50の開口を閉塞させるべく周囲を前記鍔部100fに接着される封止シート65の剥離性をも向上させ得る。
【0050】
この図7、図8に示されているように両面にソリッド層を形成させ、しかも、剥離性のみならずソリッド層と発泡層との剥離強度の向上が求められる場合には、この剥離強度の向上が求められる側において前記冷却を行いつつ共押し出しすればよく、両面において剥離強度の向上が求められる場合には、例えば、サーキュラーダイを用いる場合には、筒状体の内外両方から気体を吹き付ければよく、フラットダイを用いる場合には、冷却用のローラを2本用意して、その間に樹脂発泡シートを挟んで両側から冷却を実施すればよい。
【0051】
また、上記においては、発泡層が1層のみの場合を例示しているが、この発泡層についても、例えば、図9にその断面図を示すように、発泡倍率の異なる複数の発泡層を形成させる場合も本発明の意図する範囲である。
【0052】
なお、得られた樹脂発泡シートは、真空成形や真空圧空成形などといった一般的なシート成形方法によって発泡樹脂製容器に成形加工することができる。
このとき、樹脂発泡シートのソリッド層に形成されている表面粗さが維持された状態で発泡樹脂製容器を形成させることが好ましい。
すなわち、外表面に表装シートを接着させて用いられる発泡樹脂製容器を形成させるような場合においては、外表面が前記ソリッド層となるように樹脂発泡シートを成形加工し、しかも、ソリッド層によって形成されている前記外表面が、0.10μm以上の算術平均粗さ(Ra)を有している状態となるようにして発泡樹脂製容器を形成させることが表装シートなどの剥離性の観点から重要である。
【0053】
このような表面粗さを有する発泡樹脂製容器は、粘着層を有した表装シートなどをその表面に巻きかけた状態で接着させて食品などを収容するための容器とすることができ、その使用後には、この表装シートを容易に剥離することができる。
このことによって、例えば、紙製の表装シートが接着されて用いられた場合において、用済み後に紙とプラスチックとの素材ごとの分別が容易に実施可能となる。
【0054】
なお、ここでは詳述しないが、樹脂発泡シートや発泡樹脂製容器に関して従来公知の技術事項を、本発明の効果が著しく損なわれない範囲において採用することが可能である。
【実施例】
【0055】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
樹脂発泡シートの作製には、図10に示すような装置構成の設備を用いた。
また、合流金型は、図11に示す構造のものを用いた。
より詳しくは、第1押し出し機70として、口径が115mmの単軸押し出し機(上流側押し出し機70a)と、該単軸押し出し機に接続された口径が150mmの単軸押し出し機(下流側押し出し機70b)とからなるタンデム型押し出し機を用意した。
また、第2押し出し機80として口径が115mmの単軸押し出し機を用意した。
そして、第1押し出し機70から、発泡性樹脂組成物を合流金型XH’に導入し、その外側に、第2押し出し機80から非発泡性樹脂組成物が被覆されるように合流金型XH’にそれぞれの押し出し機を接続した。
【0057】
そして、上記第1押し出し機70に、ポリスチレン系樹脂(PSジャパン社製、商品名「G0002」)100重量部に対して、ポリスチレン系樹脂に核剤として粒径が5〜15μmのタルク粒子及び分散剤が添加されてなるマスターバッチ(キハラ化成社製、商品名「SMA−01」、タルク粒子:約40重量%)が0.6重量部となる割合で樹脂材料を供給して樹脂温度220℃にて溶融混練した後、上流側押し出し機70aにガス成分としてブタン(ノルマルブタン:65重量%、イソブタン:35重量%)2.8重量部を圧入した上で溶融混練して発泡性樹脂組成物を作製し、次に、下流側押し出し機70bで樹脂温度を155℃まで低下させて合流金型XH’に供給した。
【0058】
また、上記第2押し出し機80においては、耐衝撃性ポリスチレン(東洋スチレン社製、商品名「HIPS,E641N」、メルトフローレイト:3.6g/10分)を供給して樹脂温度220℃にて溶融混練した後に樹脂温度180℃まで冷却し合流金型XH’に供給した。
【0059】
そして、これらの押出し機から、合流金型内XH’に発泡性樹脂組成物ならびに非発泡性樹脂組成物を押し出して、断面円形状の発泡性樹脂組成物層の外周面に非発泡性樹脂組成物層が積層された状態で共押し出し用のサーキュラーダイに連続的に供給して、該サーキュラーダイの円形の吐出孔から押し出し発泡させ、円筒状の樹脂発泡シートを製造した。
なお、第1押し出し機70からの押し出し量は142kg/時間、第2押し出し機80からの押し出し量は58kg/時間であった。
また、共押し出しに用いたサーキュラーダイCDは、内側の先端面直径が215mmで且つ開口部のクリアランスが0.74mmであった。
なお、この実施例1では、第1押し出し機70と第2押し出し機80との間において合流金型内XH’に樹脂組成物を押し出し可能に接続された第3押し出し機85からの押し出しは実施しなかった。
【0060】
また、上記共押し出しにおいては、押し出された円筒状の樹脂発泡シートの外周面と内周面とに40℃の温度の空気を吹きつけ空冷を行った。
なお、外周面側からは2.75m3/分、内周面からは1.60m3/分の風量でそれぞれ空冷を実施した。
【0061】
この共押し出しにおいては、このように樹脂発泡シートを空気によって冷却しつつ徐々に拡径させ、さらに、一定径(直径:670mm)を有する円柱状の冷却マンドレルMDに連続的に供給して冷却し、その後、この円筒状の樹脂発泡シートをその押し出し方向にそって連続的に切断して切り開き、展開してシート状とした。
【0062】
得られた樹脂発泡シートは、坪量481g/m2、発泡層341g/m2、ソリッド層140g/m2、幅1052mm、厚み2.35mmであった。
【0063】
(実施例2)
第1押し出し機70として、口径が115mmの単軸押し出し機(上流側押し出し機70a)と、該単軸押し出し機に接続された口径が150mmの単軸押し出し機(下流側押し出し機70b)とからなるタンデム型押し出し機を用意した。
また、第2押し出し機80として口径が115mmの単軸押し出し機を用意する一方、第3の押し出し機85として口径が90mmの単軸押し出し機を用意した。
そして、第1押し出し機70から、高発泡性の発泡性樹脂組成物を合流金型XH’に導入し、その外側に、第3押し出し機85から、低発泡性の発泡性樹脂組成物が被覆され、さらにその外側に第2押し出し機80から非発泡性樹脂組成物が被覆されるように合流金型XH’にそれぞれの押し出し機を接続した。
【0064】
そして、上記第1押し出し機70に、ポリスチレン系樹脂(PSジャパン社製、商品名「G0002」)100重量部に対して、ポリスチレン系樹脂に核剤として粒径が5〜15μmのタルク粒子及び分散剤が添加されてなるマスターバッチ(キハラ化成社製、商品名「SMA−01」、タルク粒子:約40重量%)が0.6重量部となる割合で樹脂材料を供給して樹脂温度220℃にて溶融混練した後、上流側押し出し機70aにガス成分としてブタン(ノルマルブタン:65重量%、イソブタン:35重量%)2.8重量部を圧入した上で溶融混練して高発泡性の発泡性樹脂組成物を作製し、次に、下流側押し出し機70bで樹脂温度を154℃まで低下させて合流金型XH’に供給した。
【0065】
また、上記第2押し出し機80においては、耐衝撃性ポリスチレン(東洋スチレン社製、商品名「HIPS,E641N」、メルトフローレイト:3.6g/10分)を供給して樹脂温度220℃にて溶融混練した後に樹脂温度181℃まで冷却し合流金型XH’に供給した。
【0066】
さらに、上記第3押し出し機85においては、ポリスチレン(東洋スチレン社製、商品名「GPPS,HRM18」)100重量部に対して、ポリスチレンに核剤として粒径が5〜15μmのタルク粒子及び分散剤が添加されてなるマスターバッチ(キハラ化成社製、商品名「SMA−01」、タルク:約40重量%)が1.4重量部となる割合で樹脂材料を供給して樹脂温度220℃にて溶融混練した後にブタン(ノルマルブタン:65重量%、イソブタン:35重量部)2.1重量部を圧入した上で溶融混練して低発泡性の発泡性樹脂組成物を作製し、樹脂温度161℃まで冷却し合流金型XH’に供給した。
【0067】
そして、これらの押出し機から、合流金型内に2種類の発泡性樹脂組成物ならびに1種類の非発泡性樹脂組成物を押し出して、断面円形状の高発泡性の発泡性樹脂組成物層の外周面に低発泡性の発泡性樹脂組成物層を積層し、さらに、その外側に非発泡性樹脂組成物層が積層された状態で共押し出し用のサーキュラーダイCDに連続的に供給して、該サーキュラーダイCDの円形の吐出孔から押し出し発泡させ、円筒状の樹脂発泡シートを製造した。
なお、第1押し出し機70からの押し出し量は152kg/時間、第2押し出し機80からの押し出し量は73kg/時間、第3押し出し機85からの押し出し量は25kg/時間であった。
また、共押し出しに用いたサーキュラーダイCDは、内側の先端面直径が215mmで且つ開口部のクリアランスが0.74mmであった。
【0068】
なお、上記共押し出しにおいて、押し出された円筒状の樹脂発泡シートの外周面と内周面とに2.75m3/分、1.60m3/分の風量で40℃の温度の空気を吹きつけて空冷を行った点、冷却マンドレルMDに連続的に供給して冷却し、連続的に切断して切り開き、展開してシート状とした点については実施例1と同じである。
【0069】
この共押し出しにおいて得られた樹脂発泡シートは、坪量480g/m2、発泡層(2層の合計)340g/m2、ソリッド層140g/m2、幅1052mm、厚み2.35mmであった。
【0070】
(比較例1)
第1押し出し機70として、口径が115mmの単軸押し出し機(上流側押し出し機70a)と、該単軸押し出し機に接続された口径が150mmの単軸押し出し機(下流側押し出し機70b)とからなるタンデム型押し出し機を用意した。
そして、上記第1押し出し機70に、ポリスチレン系樹脂(PSジャパン社製、商品名「G0002」)100重量部に対して、ポリスチレン系樹脂に核剤として粒径が5〜15μmのタルク粒子及び分散剤が添加されてなるマスターバッチ(キハラ化成社製、商品名「SMA−01」、タルク粒子:約40重量%)が0.7重量部となる割合で樹脂材料を供給して樹脂温度220℃にて溶融混練した後、上流側押し出し機70aにガス成分としてブタン(ノルマルブタン:65重量%、イソブタン:35重量%)3.0重量部を圧入した上で溶融混練して発泡性樹脂組成物を作製し、次に、下流側押し出し機70bで樹脂温度を157℃まで低下させて合流金型XH’を通じてサーキュラーダイCDに供給した。(第2押し出し機80、第3押し出し機85は、稼動させなかった。)
【0071】
そして、上記実施例1、2と同様に、押し出された円筒状の樹脂発泡シートの外周面と内周面とに2.80m3/分、1.60m3/分の風量で40℃の温度の空気を吹きつけて空冷を行った点、冷却マンドレルMDに連続的に供給して冷却し、連続的に切断して切り開き、展開してシート状とした。
この発泡押し出しにおいて得られた発泡層のみからなる樹脂発泡シートは、坪量340g/m2、厚み2.20mmであった。
【0072】
この発泡押し出しにおいて得られた樹脂発泡シート上にTダイを用いて耐衝撃性ポリスチレン(東洋スチレン社製、商品名「HIPS,E641N」、メルトフローレイト:3.6g/10分)を非発泡状態で押し出して被覆することによりソリッド層を形成させた。この発泡層のみからなる樹脂発泡シートに非発泡性樹脂組成物を被覆してソリッド層を形成させた樹脂発泡シートは、坪量480g/m2、厚み2.35mmであった。
【0073】
[表面粗さ測定:樹脂発泡シート]
実施例、比較例の樹脂発泡シートから、縦20mm×横20mmの正方形試料をシート幅方向に10点採取し、キーエンス社製粗さ計「LT−9500」にてソリッド層の表面を測定長さ5000μm、基準長さ50μmで測定し算術平均粗さを求めた。
なお、10点の試料に対し、シート押し出し方向、幅方向にそれぞれ算術平均粗さを測定し、これらの平均値を樹脂発泡シートの算術平均粗さとした。
この測定結果を表1に示す。
【0074】
[表面粗さ測定:発泡樹脂製容器]
実施例、比較例の樹脂発泡シートを用いて直径90mmの円形底面を有し、該底面の外周から外側に傾斜して起立した高さ105mmの周側壁を有し、上面視における輪郭が直径140mmの円形となるように形成されたバケツ型容器をシート成型法によって作製し、前記周側壁から縦20mm×横20mmの正方形試料を周方向に10個採取した。
なお、容器はソリッド層が外側となるように作製し、試料の採取位置は底面から約40mm高さのところとした。
得られた試料に対し、樹脂発泡シートの表面粗さ測定と同様にして算術平均粗さを測定し、これらの平均値を発泡樹脂製容器の算術平均粗さとした。
この測定結果を表1に示す。
【0075】
[紙製表装シートの剥離性評価]
上記のバケツ型容器に粘着剤を介して紙巻きを実施して、粘着剤の乾燥のため1日置いた後、この紙製の表装シートを手で剥がし、剥離性を評価した。
実施例、比較例、それぞれ各10個の試料を作製し、10個中、1個でも紙が残ったものは「×」として判定し、1つも紙が残らないものを「○」として判定した。
この評価結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
この表からも、ソリッド層の表面粗さを所定以上にすることで表装シートなどの接着物に対する剥離性に優れた樹脂発泡シートとなることがわかる。
【符号の説明】
【0078】
1 樹脂発泡シート
10 ソリッド層
20 発泡層
50 発泡樹脂製容器
60 表装シート
100 食品容器
AF 気流
CD サーキュラーダイ
CDa 吐出孔
CL 冷却装置
FD フラットダイ
FDa 吐出孔
MD マンドレル
R ローラ
XH 合流金型
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡層の表面にソリッド層が形成されている樹脂発泡シートであって、
前記ソリッド層の表面粗さが0.10μm以上の算術平均粗さ(Ra)となるように形成されていることを特徴とする樹脂発泡シート。
【請求項2】
前記表面粗さが0.12μm以上の算術平均粗さ(Ra)である請求項1記載の樹脂発泡シート。
【請求項3】
前記ソリッド層と前記発泡層とが、共押し出しによって形成されたものである請求項1又は2に記載の樹脂発泡シート。
【請求項4】
発泡層の表面にソリッド層が形成されている樹脂発泡シートが成形加工されてなる発泡樹脂製容器であって、
外表面が前記ソリッド層によって形成されており、該ソリッド層によって形成されている前記外表面が、0.10μm以上の算術平均粗さ(Ra)を有していることを特徴とする発泡樹脂製容器。
【請求項5】
前記算術平均粗さ(Ra)を有している外表面に表装シートが接着されて用いられる請求項4記載の発泡樹脂製容器。
【請求項6】
前記表装シートが紙製である請求項5記載の発泡樹脂製容器。
【請求項1】
発泡層の表面にソリッド層が形成されている樹脂発泡シートであって、
前記ソリッド層の表面粗さが0.10μm以上の算術平均粗さ(Ra)となるように形成されていることを特徴とする樹脂発泡シート。
【請求項2】
前記表面粗さが0.12μm以上の算術平均粗さ(Ra)である請求項1記載の樹脂発泡シート。
【請求項3】
前記ソリッド層と前記発泡層とが、共押し出しによって形成されたものである請求項1又は2に記載の樹脂発泡シート。
【請求項4】
発泡層の表面にソリッド層が形成されている樹脂発泡シートが成形加工されてなる発泡樹脂製容器であって、
外表面が前記ソリッド層によって形成されており、該ソリッド層によって形成されている前記外表面が、0.10μm以上の算術平均粗さ(Ra)を有していることを特徴とする発泡樹脂製容器。
【請求項5】
前記算術平均粗さ(Ra)を有している外表面に表装シートが接着されて用いられる請求項4記載の発泡樹脂製容器。
【請求項6】
前記表装シートが紙製である請求項5記載の発泡樹脂製容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−173259(P2010−173259A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20655(P2009−20655)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】
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