説明

樹脂積層体及びその製造方法

【課題】表面処理を行わなくてもオレフィン系樹脂層と発泡ウレタン樹脂層との十分な接着性が確保できる樹脂積層体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】オレフィン系樹脂層21、23を金型にセットし、金型を加熱し、金型に、ポリオレフィン樹脂が不飽和カルボン酸等から選ばれる一種以上で変性され、変性量が0.1質量%以上50質量%未満である変性ポリオレフィン樹脂(A)と、粘度が1,000mPa・s以上10,000mPa・s未満であるポリオール化合物(B)と、ポリイソシアネート化合物(C)からなり、ポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物の合計量と変性ポリオレフィン樹脂との質量比((B+C)/A)が95/5〜65/35であるポリウレタン材料成分の混合物を注入して発泡ウレタン樹脂層22を成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系樹脂層に発泡ウレタン樹脂層が接着している樹脂積層体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、インストルメントパネル等のソフトパッド付自動車内装品の構成として、強度を保持するための合成樹脂よりなる基材の表面に、ソフト感を出すための緩衝スポンジ層と意匠面になる表皮とからなるソフトパッドが付いた、三層構造のものがある。緩衝スポンジ層には、耐久性、質感等の点で発泡ポリウレタン成形体が採用され、現時点では低コストな代替材料が見当たらない。一方、表皮には、軽量化と低コスト化のためにオレフィン系熱可塑性エラストマーを採用することが多く、また基材には、フィラー強化オレフィン系樹脂を採用することが多い。
【0003】
しかし、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のオレフィン系樹脂は非極性であるため、ポリウレタン成形体は、オレフィン系樹脂に接着することができない。そこで、オレフィン系熱可塑性エラストマー製の表皮に、ポリウレタン材料製の緩衝スポンジ層が接着できるようにするため、表皮に、プライマー処理、フレーム(火炎)処理、コロナ処理等の表面処理を行う必要があった。これらの処理には、材料コスト・加工コストがかさみ、手間もかかるため、経済的ではなかった。
【0004】
・なお、特許文献1には、カルボキシル基変性ポリオレフィン等を含むポリウレタンからなるコーティング剤が記載されている。
・特許文献2には、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィンとブロックイソシアネートとを含む水性樹脂組成物が記載されている。
しかし、これらの特許文献に記載されたものは、硬化前、均一の状態で安定しているためには、溶媒(水又は有機溶剤)が必要であった。そのため、発泡ポリウレタン成形体には、用いることができなかった。
【特許文献1】特開2002−137335公報
【特許文献2】特開平2−97542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、オレフィン系樹脂層にプライマー処理、フレーム処理、コロナ処理等の表面処理を行わなくてもオレフィン系樹脂層と発泡ウレタン樹脂層との十分な接着性が確保できる樹脂積層体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
A.樹脂積層体
上記目的を達成するため、本発明の樹脂積層体は、オレフィン系樹脂層と発泡ウレタン樹脂層とが接してなる樹脂積層体であって、
発泡ウレタン樹脂層がポリウレタン材料で構成され、
ポリウレタン材料の成分が、
ポリオレフィン樹脂が不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸誘導体及びラジカル重合性モノマーから選ばれる一種又は二種以上で変性され、変性量がポリオレフィン樹脂量に対し、0.1質量%以上50質量%未満である変性ポリオレフィン樹脂(A)と、
ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールであり、粘度が1,000mPa・s以上10,000mPa・s未満であるポリオール化合物(B)と、
ポリイソシアネート化合物(C)であり、
ポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物の合計量と変性ポリオレフィン樹脂との質量比((B+C)/A)が95/5〜65/35であることを特徴とする。
【0007】
B.樹脂積層体の製造方法
上記目的を達成するため、本発明の樹脂積層体の製造方法は、オレフィン系樹脂成形体を発泡ウレタン樹脂層を成形するための金型にセットし、
オレフィン系樹脂成形体の発泡ウレタン樹脂層と接する面の温度が80℃以上になるよう金型を加熱し、
金型に、ポリオレフィン樹脂が不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸誘導体及びラジカル重合性モノマーから選ばれる一種又は二種以上で変性され、変性量がポリオレフィン樹脂量に対し、0.1質量%以上50質量%未満である変性ポリオレフィン樹脂(A)と、ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールであり、粘度が1,000mPa・s以上10,000mPa・s未満であるポリオール化合物(B)と、ポリイソシアネート化合物(C)からなり、ポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物の合計量と変性ポリオレフィン樹脂との質量比((B+C)/A)が95/5〜65/35であるポリウレタン材料の成分の混合物を注入して発泡ウレタン樹脂層を成形することを特徴とする。
【0008】
本発明における各要素の態様を以下に例示する。
【0009】
1.オレフィン系樹脂層
オレフィン系樹脂層としては、特に限定はされないが、一層であってもよいし、複数の層であってもよい。また、層状でなくてもよい。複数層の場合には、各層が同じオレフィン系樹脂で成形されていてもよいし、異なるオレフィン系樹脂で成形されていてもよい。また、オレフィン系樹脂層を成形するオレフィン系樹脂としては、特に限定はされないが、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン・α−オレフィン共重合体等が例示でき、オレフィン系熱可塑性エラストマー等も例示できる。
【0010】
2.発泡ウレタン樹脂層
発泡ウレタン樹脂層としては、上面のみがオレフィン系樹脂層と接していてもよいし、下面のみがオレフィン系樹脂層と接していてもよい。また、オレフィン系樹脂を多用することで、この樹脂積層体を用いた製品等の軽量化が図れることから、上下両面がオレフィン系樹脂層と接することが好ましい。
【0011】
3.ポリウレタン材料
ポリウレタン材料は、その成分が変性ポリオレフィン樹脂とポリオール化合物とポリイソシアネート化合物であり、ポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物の合計量と変性ポリオレフィン樹脂との質量比((B+C)/A)が95/5〜65/35のものである。また、オレフィン系樹脂との接着性が向上することから、炭化水素系溶剤を全成分量(炭化水素系溶剤も含む)に対し、0.01〜10質量%含有していることが好ましい。
【0012】
3−1.変性ポリオレフィン樹脂
変性ポリオレフィン樹脂としては、ポリオレフィン樹脂が不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸誘導体及びラジカル重合性モノマーから選ばれる一種又は二種以上で変性され、変性量がポリオレフィン樹脂量に対し、0.1質量%以上50質量%未満である。
また、重量平均分子量(Mw)が、10,000〜100,000であり、且つ、90℃以上に融解熱が5J/g以上の融解ピークを持たないものであることが好ましい。
【0013】
3−1−1.ポリオレフィン樹脂
ポリオレフィン樹脂としては、特に限定はされないが、上記オレフィン系樹脂に例示したもの等が挙げられる。
【0014】
3−1−2.不飽和カルボン酸
不飽和カルボン酸としては、特に限定はされないが、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸等が例示できる。
【0015】
3−1−3.不飽和カルボン酸誘導体
不飽和カルボン酸誘導体としては、特に限定はされないが、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物や上記不飽和カルボン酸のメチル、エチル、シクロヘキシル、ラウリル、ステアリル等のエステル化合物や上記不飽和カルボン酸のアミド、N,N−ジメチルアミド等のアミド化合物等が例示できる。
【0016】
3−1−4.ラジカル重合性モノマー
ラジカル重合性モノマーとしては、特に限定はされないが、アクリル酸の上記エステル化合物若しくは上記アミド化合物、メタクリル酸の上記エステル化合物若しくは上記アミド化合物又はスチレン、酢酸ビニル等のエチレン性不飽和物等が例示できる。
【0017】
3−2.ポリオール化合物
ポリオール化合物としては、ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールであって、粘度が1,000mPa・s以上10,000mPa・s未満である。
【0018】
3−2−1.ポリエーテルポリオール
ポリエーテルポリオールとしては、上記粘度範囲で、且つ、複数の水酸基を有するものであれば、特に限定はされないが、メチレンオキサイド鎖、エチレンオキサイド鎖、プロピレンオキサイド鎖、ブチレンオキサイド鎖等のアルキレンオキサイド鎖の繰り返し構造をそれぞれ単独で、あるいは二種類以上有するものが例示できる。
【0019】
3−2−2.ポリエステルポリオール
ポリエステルポリオールとしては、上記粘度範囲で、且つ、複数の水酸基を有するものであれば、特に限定はされないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと、テレフタル酸、アジピン酸、トリメリット酸等の複数のカルボキシル基を有するもの又はその無水物とのエステル化反応によってえられるもの等が例示できる。
【0020】
3−3.ポリイソシアネート化合物
ポリイソシアネート化合物としては、特に限定はされないが、トルエンジイソシアネート(TDI)やジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等が例示できる。
【0021】
3−4.炭化水素系溶剤
炭化水素系溶剤としては、特に限定はされないが、n−ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族溶剤、シクロヘキサン等の脂環族溶剤又はトルエン、キシレン等の芳香族溶剤等が例示できる。
【0022】
なお、本発明に用いられるポリウレタン材料には、上記の物質に加えて、発泡剤、触媒、オレフィン系樹脂との接着性を向上させるめ柔軟性を付与する非晶性ポリプロピレン等を必要に応じて適宜添加できる。
【0023】
4.金型の加熱温度
発泡ウレタン樹脂層を成形するための金型の加熱温度としては、金型内にセットしたオレフィン系樹脂成形体の発泡ウレタン樹脂層と接する面の温度が80℃以上になる加熱温度である。これは、ポリウレタン材料中の変性ポリオレフィン樹脂(Tm:90℃、本樹脂積層体の耐熱温度(80℃)を確保するため)が軟化又は溶融することで、オレフィン系樹脂成形体と発泡ウレタン樹脂層とがより強固に接着されるからである。
【0024】
5.樹脂積層体の用途
樹脂積層体の用途としては、特に限定はされないが、インストルメントパネル、メーターフード、コンソールサイドパネル、ピラートリム、ドアトリム等のように表皮にオレフィン系エラストマー等のオレフィン系樹脂層と発泡ウレタン層からなる緩衝スポンジとを有する自動車内装品等が例示できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、オレフィン系樹脂層にプライマー処理、フレーム処理、コロナ処理等の表面処理を行わなくてもオレフィン系樹脂層と発泡ウレタン樹脂層との十分な接着性が確保できる樹脂積層体及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
オレフィン系樹脂層と発泡ウレタン樹脂層とが接してなる樹脂積層体であって、
発泡ウレタン樹脂層がポリウレタン材料で構成され、
ポリウレタン材料の成分が、
ポリオレフィン樹脂が不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸誘導体及びラジカル重合性モノマーから選ばれる一種又は二種以上で変性され、変性量がポリオレフィン樹脂量に対し、0.1質量%以上50質量%未満である変性ポリオレフィン樹脂(A)と、ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールであり、粘度が1,000mPa・s以上10,000mPa・s未満であるポリオール化合物(B)と、ポリイソシアネート化合物(C)であり、
ポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物の合計量と変性ポリオレフィン樹脂との質量比((B+C)/A)が95/5〜65/35であり、
ポリウレタン材料が、炭化水素系溶剤を0.01〜10質量%含有するものであることを特徴とする。
【実施例】
【0027】
図1に示すように、本実施例の樹脂積層体30は、オレフィン系熱可塑性エラストマー層21からなる表皮と、その下に、発泡ウレタン樹脂層20からなる緩衝スポンジと、さらにその下に、ポリプロピレン層23からなる基材とからなっている。例えば、自動車の内装品であるインストルメントパネル10に用いられる。
以下、実施例及び比較例をあげて、本発明をより具体的に説明する。
【0028】
次の表1に示すものは、オレフィン系樹脂層にオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)のシートを用い、発泡ウレタン樹脂層を構成するウレタン材料の成分の組成比及び金型温度を変更した実施例(10種類)及び、ウレタン材料の成分であるポリプロピレングリコールの粘度又は同変性ポリオレフィン樹脂の性状等を変更した比較例(3種類)のオレフィン樹脂層と発泡ウレタン樹脂層との接着強度試験の結果である。またウレタン材料の各成分の成分性状を示す。なお、本表において、部は質量部を、n−ヘプタンの質量%はポリウレタン材料の全成分量に対するn−ヘプタンの割合を表し、変性ポリオレフィン樹脂の変性量(質量%)は、変性に用いたポリオレフィン樹脂量に対し、グラフトした変性物の割合を示し、金型温度は、発泡ウレタン樹脂層を成形するために金型にセットしたオレフィン系熱可塑性エラストマーの表面で測定した温度である。
【0029】
【表1】

【0030】
(1)成分性状の測定法
各成分の性状は以下のようにして測定した。
(1)−1.ポリプロピレングリコールの粘度
B型粘度計を用いて、23℃での粘度を測定した。
(1)−2.変性ポリオレフィン樹脂の変性量
アルカリ滴定法又はフーリエ変換赤外分光法により求めた。
(1)−3.同樹脂の重量平均分子量
標準物質にポリスチレンを用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した。
(1)−4.同樹脂の融解熱及び融点
示差走査型熱量計(DSC、セイコー電子工業社製)を用いて測定を行った。
具体的には、約10mgの試料を200℃で5分間融解後、−60℃まで10℃/minで降温して試料を結晶化した後に、200℃まで10℃/minで昇温して試料が融解した時の融解ピーク温度を測定し、融解ピーク温度を融点とした。なお、同時に融解熱の測定も行った。
【0031】
ポリウレタン材料の成分(原料)である変性ポリオレフィン樹脂を同ポリオール化合物中に分散させたポリオール分散体の製造例を示す。
【0032】
[製造例1]
実施例1、2に用いたポリオール分散体は、次のようにして製造した。
攪拌機および冷却管を取り付けた四つ口フラスコに、n−ヘプタン100質量部並びに変性ポリオレフィン樹脂(プロピレン成分90mol、エチレン成分10mol%、融点90℃、90℃以上の融解熱4.5J/g、変性基は、無水マレイン酸およびメタクリル酸、変性量(質量%)2%、重量平均分子量70,000)100質量部およびポリプロピレングリコール(粘度5,000mPa・s)233質量部を仕込み、120℃で1.5時間、均一分散させた。次いで、120℃、72mmHgの減圧下で、1.5時間かけてn−ヘプタンを留去し、攪拌下、2時間かけて室温まで冷却した。
【0033】
[製造例2]
実施例3、4に用いたポリオール分散体は、次のようにして製造した。
製造例1で得られたポリオール分散体に、ポリプロピレンクリコールを、233質量部添加して、ポリオール分散体を得た。
【0034】
[製造例3]
実施例5、6に用いたポリオール分散体は、次のようにして製造した。
製造例1で得られたポリオール分散体に、ポリプロピレンクリコールを、466質量部添加して、ポリオール分散体を得た。
【0035】
[製造例4]
実施例7に用いたポリオール分散体は、次のようにして製造した。
n−ヘプタンの含有量が、ポリウレタン材料の全成分量に対し、5質量%となるまで留去した以外は、製造例1と同様に操作し、ポリオール分散体を得た。
【0036】
[製造例5]
実施例8、9に用いたポリオール分散体は、次のようにして製造した。
製造例4で得られたポリオール分散体に、ポリプロピレンクリコールを、233質量部添加するともに、n−ヘプタンの含有量が、ポリウレタン材料の全成分量に対し、5質量%となるようにn−ヘプタンを添加して、ポリオール分散体を得た。
【0037】
[製造例6]
実施例10に用いたポリオール分散体は、次のようにして製造した。
攪拌機および冷却管を取り付けた四つ口フラスコに、n−ヘプタン100質量部並びに製造例1で使用した変性ポリオレフィン樹脂と非晶性ポリプロピレン(住友化学社製「タフセレンX1102」)を1:1で混合した樹脂(90℃以上の融解熱4.5J/g)100質量部およびポリプロピレングリコール(粘度5,000mPa・s)233質量部を仕込み、120℃で1.5時間、均一分散させた。次いで、120℃、72mmHgの減圧下で、1.5時間かけてn−ヘプタンの含有量が、ポリウレタン材料の全成分量に対し、5質量%となるまで留去し、攪拌下、2時間かけて室温まで冷却した。
【0038】
[製造例7]
比較例2に用いたポリオール分散体は、次のようにして製造した。
攪拌機および冷却管を取り付けた四つ口フラスコに、n−ヘプタン100質量部並びに変性ポリオレフィン樹脂(プロピレン成分90mol、エチレン成分10mol%、融点90℃、90℃以上の融解熱4.5J/g、変性基は、無水マレイン酸およびメタクリル酸、変性量(質量%)2%、重量平均分子量70,000)100質量部、ポリプロピレングリコール(粘度10,000mPa・s)233質量部を仕込み、120℃で1.5時間、均一分散させた。次いで、120℃、72mmHgの減圧下で、1.5時間かけてn−ヘプタンを留去し、攪拌下、2時間かけて室温まで冷却した。
【0039】
[製造例8]
比較例3に用いたポリオール分散体は、次のようにして製造した。
攪拌機および冷却管を取り付けた四つ口フラスコに、n−ヘプタン100質量部並び変性ポリオレフィン樹脂(プロピレン成分96mol、エチレン成分4mol%、融点80℃、90℃以上の融解熱0J/g、変性基は、無水マレイン酸およびアクリル酸、変性量(質量%)50%、重量平均分子量35,000)100質量部、ポリプロピレングリコール(粘度5,000mPa・s)233質量部を仕込み、120℃で1.5時間、均一分散させた。次いで、120℃、72mmHgの減圧下で、1.5時間かけてn−ヘプタンを留去し、攪拌下、2時間かけて室温まで冷却した。
【0040】
次に、接着強度試験に用いた試料の製造方法を示す。
・ウレタン材料成分の混合
上記製造例により得た各試料のポリオール分散体に、それぞれ表1に記載の組成となる量の触媒としてトリメチレンジアミン及び発泡剤として水を添加し、攪拌機を用い、回転数2500rpmで1分間混合した。
その後、表1に記載の組成となる量のジフェニルメタンジイソシアネートを添加し、攪拌機を用い、回転数2500rpmで10秒間混合して、ウレタン材料成分の混合物を得た。
・反応硬化(成形)
表面処理が施されていないオレフィン系樹脂のシートをセットした発泡ポリウレタン注入型(35mm×300mm、板厚8mm)を加熱し、上記ウレタン材料成分の混合物を100g注入し、60秒間保持後取り出し、各試料を製造した。また、金型の加熱は、金型にセットしたオレフィン系樹脂シートの表面温度(発泡ウレタン樹脂と接する側)が所定の温度になるように行った。
【0041】
オレフィン系樹脂層として、次の表2に組成及び性状を示す押出成型されたオレフィン系熱可塑性エラストマーのシートを用いた。
【0042】
【表2】

【0043】
(2)接着強度試験
上記の方法により製造した試料を25mm幅となるように切断し、引張試験機を用いて100mm/minで引き剥がし、その剥離強度(接着強度)を測定した。
【0044】
実施例1、3、5には、それぞれ、ポリプロピレングリコール(B)及びジフェニルメタンジイソシアネート(C)の合計量と変性ポリオレフィン樹脂(A)との質量比((B+C)/A)を、103.3/30(77.5/22.5)、103.3/15(87.3/12.7)、103.3/10(91.2/8.8)であるポリウレタン材料を用い、金型にセットしたオレフィン系熱可塑性エラストマーシートの表面温度(発泡ウレタン樹脂と接する側)が、80℃になるように金型を加熱した。
【0045】
実施例2、4、6は、実施例1、3、5と同じポリウレタン材料を用い、金型にセットしたオレフィン系熱可塑性エラストマーシートの表面温度(発泡ウレタン樹脂と接する側)が、100℃になるように金型を加熱した。
実施例7、8、9は、実施例1、3、4に用いたポリウレタン材料に、n−ヘプタンを5質量%含有させたポリウレタン材料を用いた。
実施例10は、実施例7に用いたポリウレタン材料と比較して、変性ポリオレフィン樹脂(A)の量を30質量部から15質量部((B+C)/A:87.3/12.7)に減らし、非晶性ポリプロピレンを15質量部加えたポリウレタン材料を用い、金型にセットしたオレフィン系熱可塑性エラストマーシートの表面温度(発泡ウレタン樹脂と接する側)が、100℃になるように金型を加熱した。
【0046】
比較例1は、変性ポリオレフィン樹脂を添加していないポリウレタン材料を用いた。比較例2は、ポリプロピレングリコールを高粘度(10,000mPa・s)にしたポリウレタン材料を用いた。比較例3は、変性ポリオレフィン樹脂の融点を80℃、変性量を50質量%にしたポリウレタン材料を用いた。なお、比較例は全て、金型にセットしたオレフィン系熱可塑性エラストマーシートの表面温度(発泡ウレタン樹脂と接する側)が、80℃になるように金型を加熱した。
【0047】
実施例は全て、オレフィン系熱可塑性エラストマーシートと発泡ウレタン樹脂層との間で、十分な接着強度を確保することができたが、変性ポリオレフィン樹脂が添加されていない比較例1は、十分な接着強度を確保することができなかった。なお、比較例2、3については、ウレタン材料を混合することができず、且つ、比較例3では、変性ポリオレフィン樹脂がゲル化してしまった。
【0048】
変性ポリオレフィン樹脂を含有するウレタン材料を用いた実施例が、十分な接着強度を確保することができたのは、図2に示すように、発泡ウレタン樹脂層の成形過程で、(a)ウレタン材料中に均一に分散していた変性ポリオレフィン樹脂が、(b)発泡ウレタン樹脂層の表面に移行し、(c)金型からの熱によって、発泡ウレタン樹脂層の表面で軟化、溶融してオレフィン系熱可塑性エラストマーと面接着するためであると考えられる。
【0049】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施例を用いたインストルメントパネルの斜視図及び断面模式図である。
【図2】接着のメカニズムの説明図である。
【符号の説明】
【0051】
10 インストルメントパネル
20 発泡ウレタン樹脂層
21 オレフィン系熱可塑性エラストマー層(表皮)
23 ポリプロピレン層(基材)
30 樹脂積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系樹脂層と発泡ウレタン樹脂層とが接してなる樹脂積層体であって、
前記発泡ウレタン樹脂層がポリウレタン材料で構成され、
前記ポリウレタン材料の成分が、
ポリオレフィン樹脂が不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸誘導体及びラジカル重合性モノマーから選ばれる一種又は二種以上で変性され、変性量がポリオレフィン樹脂量に対し、0.1質量%以上50質量%未満である変性ポリオレフィン樹脂(A)と、
ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールであり、粘度が1,000mPa・s以上10,000mPa・s未満であるポリオール化合物(B)と、
ポリイソシアネート化合物(C)であり、
前記ポリオール化合物及び前記ポリイソシアネート化合物の合計量と前記変性ポリオレフィン樹脂との質量比((B+C)/A)が95/5〜65/35であることを特徴とする樹脂積層体。
【請求項2】
前記発泡ウレタン樹脂層の上又は上下に前記オレフィン系樹脂層を有する請求項1記載の樹脂積層体。
【請求項3】
前記変性ポリオレフィン樹脂は、重量平均分子量(Mw)が10,000〜100,000であり、且つ、90℃以上に融解熱が5J/g以上の融解ピークを持たないものである請求項1又は2に記載の樹脂積層体。
【請求項4】
前記ポリウレタン材料が、炭化水素系溶剤を0.01〜10質量%含有するものである請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂積層体。
【請求項5】
オレフィン系樹脂成形体を発泡ウレタン樹脂層を成形するための金型にセットし、
前記オレフィン系樹脂成形体の前記発泡ウレタン樹脂層と接する面の温度が80℃以上になるよう前記金型を加熱し、
前記金型に、ポリオレフィン樹脂が不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸誘導体及びラジカル重合性モノマーから選ばれる一種又は二種以上で変性され、変性量がポリオレフィン樹脂量に対し、0.1質量%以上50質量%未満である変性ポリオレフィン樹脂(A)と、ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールであり、粘度が1,000mPa・s以上10,000mPa・s未満であるポリオール化合物(B)と、ポリイソシアネート化合物(C)からなり、前記ポリオール化合物及び前記ポリイソシアネート化合物の合計量と前記変性ポリオレフィン樹脂との質量比((B+C)/A)が95/5〜65/35であるポリウレタン材料の成分の混合物を注入して前記発泡ウレタン樹脂層を成形することを特徴とする樹脂積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−238760(P2008−238760A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−86388(P2007−86388)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】