樹脂管及び樹脂管を用いたポンプ装置、並びに、樹脂管成形用内型の組立方法及び樹脂管の製造方法
【課題】所定の曲げ強度を確保しながらも、煩雑な製造工程を招くことなく、製造コストを低減することができる樹脂管及び樹脂管の製造方法を提供する。
【解決手段】複数の平板1、2を軸心方向に沿って環状に組み合わせて断面形状が多角形となる管体用内型3を形成するとともに、管体用内型3の端部にフランジ用型4を取り付けるフランジ型取付工程と、形成された管体用内型3及びフランジ用型4の表面にマトリックス樹脂を含浸した強化繊維10を積層して樹脂管を形成する積層工程と、樹脂が固化した後にフランジ用内型3及び管体用型4を離脱させる型外し工程を備え、前記内型の外面または内面に形成される角部を基準に、樹脂管のフランジ部に設ける接続手段の位置が決定される。
【解決手段】複数の平板1、2を軸心方向に沿って環状に組み合わせて断面形状が多角形となる管体用内型3を形成するとともに、管体用内型3の端部にフランジ用型4を取り付けるフランジ型取付工程と、形成された管体用内型3及びフランジ用型4の表面にマトリックス樹脂を含浸した強化繊維10を積層して樹脂管を形成する積層工程と、樹脂が固化した後にフランジ用内型3及び管体用型4を離脱させる型外し工程を備え、前記内型の外面または内面に形成される角部を基準に、樹脂管のフランジ部に設ける接続手段の位置が決定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂管及び樹脂管を用いたポンプ装置、並びに、樹脂管成形用内型の組立方法及び樹脂管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポンプの揚水管や吐き出し管等の大型の配管類は、強度や耐食性を確保するために一般的に金属鋳物で形成されていたが、材料費が高価であり重量が重いという難点があったため、近年、金属鋳物に代わる安価で軽量かつ耐食性に優れた樹脂管の開発が要請されている。
【0003】
このような樹脂管の製造方法として、特許文献1には、砂型又は金型を用いると共にロストコア式の中子を用いて成形される樹脂体であって、該樹脂体は、母材となる樹脂材が常温で無圧力により型内に注入可能な開環メタセシス重合技術により作成されるものからなることを特徴とする常温無圧力注入式ロストコアにより成形されるものが提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、筒体の内側中空部とほぼ同じ形状をなすマンドレルを用意し、前記マンドレルの外周面上にマトリックス樹脂を含浸させた強化繊維プリプレグを巻付け、半径方向外周側に向って凸形状でない部分または曲率半径が大きい曲面部分に熱膨張性の補助型をあてがい、補助型の外側から熱収縮テープを巻装して前記マトリックス樹脂を加熱硬化させる製造方法が提案されている。
【特許文献1】特開2005−319684号公報
【特許文献2】特開2000−301612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1による砂型を採用する場合には型が破損し易く、金型を採用する場合にはコストが嵩むという問題があり、特許文献2による場合には、製造された樹脂管からマンドレルを引き抜くのが容易でなく、軸心方向に傾斜した抜き勾配を持たせる等の加工に時間とコストがかかるという問題があった。
【0006】
さらには、ポンプの揚水管や吐き出し管等の配管類は、ポンプや他の配管と接続するためのフランジ部を形成する必要があり、上述の従来技術を適用するのは困難であった。
【0007】
そこで、本願発明者らは、図11(a)から(d)に示すように、断面形状が円形の厚肉のボール紙で形成されたボイド管100の両端部に、同じく厚肉のボール紙や木で形成されたフランジ用型102の中央に形成されたボス部104を挿入して位置決め固定し、フランジ用型102に形成された取付け部105に挿入して取り付けた回転軸106周りに型を回転操作しながら、ボイド管100及びフランジ用型102の表面にマトリックス樹脂を含浸した強化繊維をハンドレイアップにより積層して樹脂管108を形成し、樹脂管108が固化した後にボイド管100を破断して型を外した後に、フランジ部110に転写されたマーキングピン112の転写凹部114を中心に接続孔を形成する樹脂管の製造方法を着想している。
【0008】
しかしながら、上述の樹脂管の製造方法によれば、樹脂管の製造の度にボイド管100でなる型が破棄されるため経済性が悪いという問題や、フランジ部110に形成する接続孔の位置決め作業が煩雑となるという問題があった。
【0009】
具体的には、ボイド管100の表面に軸心に沿った線を端部間に亘り複数本罫書きし、フランジ用型102を取付けた後に、罫書き線とフランジ用型102との交点を基準としてフランジ用型102に接続孔を形成するためのマーキングを施す必要があり(図11中、112はマーキングピンを示す)、罫書き作業では製造の度に治具を用いてボイド管100の軸心Pを出し、軸心と平行に且つ所定の角度ピッチで罫書きする必要があるため、非常に煩雑となるのである。
【0010】
また、繊維強化樹脂であっても単にフランジ部に接続孔を形成する場合には強度が十分に確保できない場合があるという問題や、断面形状が円形の樹脂管では用途によって曲げ強度が十分確保できない場合があるという問題もあった。
【0011】
本発明は上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、所定の曲げ強度を確保しながらも、煩雑な製造工程を招くことなく、製造コストを低減することができる樹脂管及び樹脂管を用いたポンプ装置、並びに、樹脂管成形用内型の組立方法及び樹脂管の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明による樹脂管の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、他の部材と接続するためのフランジ部を管体の端部に設けるとともに、少なくとも前記管体の内面に管軸方向の稜線を形成する角部を一箇所備えている点にある。
【0013】
上述の構成によれば、金属鋳物に代わり、安価で軽量かつ耐食性に優れ、他の部材と接続するためのフランジ部を備えた樹脂管として、少なくとも管体内面に管軸方向の稜線を形成する角部を一箇所備えた管体が得られるので、同一の流路面積を有する断面が円形状の樹脂管に比べて断面係数が大となり、曲げ強度の大きな剛性の高い樹脂管を得ることができる。
【0014】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記管体の内面が多角形の断面形状を有する点にある。
【0015】
上述の構成によれば、製作し易い断面形状が多角形となる管体を得ることができる。
【0016】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二特徴構成に加えて、前記管体の内面のうち前記フランジ部の近傍のみ円形の断面形状を有する点にある。
【0017】
上述の構成によれば、接続する他の部材が円形断面である場合、内部を通過する流体の流れの抵抗となることが少ない管路を形成できるようになる。
【0018】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記フランジ部に他の部材と接続する接続器具が埋設されている点にある。
【0019】
上述の構成によれば、フランジ部に接続器具を埋設することにより、十分な強度でポンプや他の配管と接続することができるようになる。
【0020】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記管体に犠牲陽極取付孔が形成されている点にある。
【0021】
上述の構成によれば、樹脂管でありながらも、管体に形成された開口部に、管体内部に装着される機器、例えばポンプの回転翼の駆動軸等の腐食を抑制する犠牲陽極を容易に取り付けることができるようになる。
【0022】
本発明によるポンプ装置の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述した第一から第五の何れかの樹脂管を用いた点にある。
【0023】
上述の構成によれば、安価で軽量且つ耐食性に優れたポンプ装置を得ることができる。
【0024】
本発明による樹脂管成形用内型の組立方法の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、他の部材と接続するためのフランジ部を管体の端部に設け、少なくとも前記管体の内面に管軸方向の稜線を形成する角部を一箇所備えた樹脂管を形成するために樹脂管内面に配置される樹脂管成形用内型の組立方法であって、前記管体の周方向に沿って分割された少なくとも一つの平板状の内型部材を含む複数の内型部材を組み合わせて組み立てられる点にある。
【0025】
上述の構成によれば、内型部材の少なくとも一つは平板状の内型部材であるので、型の加工が容易であり、しかも、そのような平板上状の内型部材を組み合わせて形成される型であれば、管長方向に沿って同一の断面積を有する樹脂管であっても、成形品から型を容易に取り外すことができるのである。さらには解体した内型を再度型として組み付けることができるので、型の再利用が図られ、製造コストを低減させることも可能となる。
【0026】
本発明による樹脂管の製造方法の第一の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の樹脂管成形用内型の組立方法を用いて樹脂管成形用内型を組み立てる内型組立工程と、組み立てられた内型の端部にフランジ用型を組み付けるフランジ型組立工程と、前記内型とフランジ型の表面にマトリックス樹脂を含浸させた強化繊維を積層して樹脂管を成形する積層工程と、樹脂が固化した後に前記フランジ用型と前記内型を取り外す型外し工程を備え、前記内型の外面または内面に形成される角部を基準に、樹脂管のフランジ部に設ける他の部材と接続するための接続手段の形成位置が決定される点にある。
【0027】
上述の構成によれば、繊維で強化された樹脂管を成形する工程でフランジ部に設ける他の部材と接続するための接続手段を形成する位置、つまり、他の配管等との接続のための接続孔や接続用器具を埋設する位置の位置決めを行なう際に、管体用内型の外面または内面に形成される角部を基準とすることができるので、断面円形のボイド管等を型として用いる際に必要とされる罫書き線等による煩雑な位置決め作業が不要となり、製造工程を大幅に簡略化することができるようになる。
【0028】
同第二の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、上述の樹脂管成形用内型の組立方法を用いて樹脂管成形用内型を組み立てる内型組立工程と、組み立てられた内型の端部にフランジ用型を組み付けるフランジ型組立工程と、前記内型の外側に外型を組み付ける外型組立工程と、前記内型及びフランジ用型と外型の間に形成される空隙部に流動状態にある樹脂を注入する注入工程と、樹脂が固化した後に前記外型と前記フランジ用型と前記内型を取り外す型外し工程を備え、前記内型または外型の、外面または内面に形成される角部を基準に、樹脂管のフランジ部に設ける他の部材と接続するための接続手段の形成位置が決定される点にある。
【0029】
上述の構成によれば、フランジ用木型と外型の間に流動状態にある樹脂を注入する場合であっても、第一の特徴構成と同様にして得られた位置に接続手段を形成すれば、断面円形のボイド管等を型として用いる際に必要とされる罫書き線等による煩雑な位置決め作業が不要となり、製造工程を大幅に簡略化することができるようになる。
【0030】
尚、本願で用いる角部という用語は、平面と平面との交線だけでなく、平面と曲面の交線やこれらの面の交線部にRを形成したものも含む概念である。
【発明の効果】
【0031】
以上説明した通り、本発明によれば、所定の曲げ強度を確保しながらも、煩雑な製造工程を招くことなく、製造コストを低減することができる樹脂管及び樹脂管を用いたポンプ装置、並びに、樹脂管成形用内型の組立方法及び樹脂管の製造方法を提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に、本発明による樹脂管の製造方法を用いてポンプの揚水管を製造する例を説明する。
【0033】
樹脂管の製造方法は、図1(a)に示すように、複数の平板1、2を軸心P方向に沿って環状に組み合わせて断面形状が多角形(本実施形態では正八角形)となる筒状の管体用内型3を形成するとともに、管体用内型3の両端部にフランジ用型4を組み付けるフランジ型組立工程と、図1(b)に示すように、形成された管体用内型3及びフランジ用型4の表面にマトリックス樹脂を含浸した強化繊維を積層して樹脂管5を形成する積層工程と、図1(c)に示すように、樹脂が固化した後にフランジ用型4及び管体用内型3を離脱させる型外し工程を備えて構成される。また、図3に示すように、形成された樹脂管5のフランジ部7に強度のある接続用器具8を埋設する埋設工程を備えて構成することにより、樹脂管の接続部の強度を向上させることもできる。
【0034】
管体用内型3は、表面の幅より裏面の幅が小幅に形成された7枚の平板2と、表面の幅と裏面の幅が同幅または抜き勾配を考慮した幅に形成された1枚の平板1とを組み合わせて環状の型に形成され、平板1が隣接する平板2に対して平行または抜き勾配を考慮した隣接面を有するように組み付けられている。つまり、図1(c)に示すように、樹脂管5が形成された後に平板1を軸心P側に移動させることにより、容易に型外しができるように組み付けられている。
【0035】
フランジ用型4の外周は円形に形成され、中央部には管体用内型3に位置決め固定可能なように、管体用内型3の内周面形状と同形状のボス部40が形成され、当該ボス部40を管体用木型3の端面から空洞部に挿入することにより、型が形成される。
【0036】
さらに、図1(a)及び図2(a)に示すように、前記内型組立工程で形成された管体用内型3の外面の8本の稜線Qの何れかまたは複数とフランジ用型4の交点Xを基準として、フランジ用型4に予め設定されたボルト孔位置や接続用器具(他の部材との接続手段の一例)の埋設位置をマーキング、例えばマーキングピンMPを打ち込む位置決め工程を備えている。
【0037】
また、断面多角形の管体用内型3の内面に形成された角部を基準にフランジ用型4が予め決定された位置に位置決め組立可能なように構成されていれば、管体用内型3に両端部に固定される一対のフランジ用型4の同じ位置にマーキングピンMPを打ち込んでおくことができ、これにより断面円形の管体用内型を採用する場合に比べて接続用器具の埋設位置の位置決め作業を格段に向上させることもできる。
【0038】
尚、本実施形態では、接続用器具の埋設位置の位置決めにマーキングピンMPを取り付けるものを説明しているが、マーキングピンMP代えてフランジ型表面に、積層工程で接当する樹脂面に転写される傷等のマークを付すものであってもよい。また、接続用器具を埋設せずに、ボルト等を挿入するための孔を設けるものであってもよい。
【0039】
積層工程では、図1(b)に示すように、両端部のフランジ用内型4の中央部に形成された回転軸取り付け孔42に、所定の軸受けに回転自在に支持された回転軸44が挿入固定されて、型が回転自在に支持された後に、管体用内型3及びフランジ用型4の表面に、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂でなるマトリックス樹脂を含浸した短冊状またはシート状の強化繊維がハンドレイアップにより貼り付けられる。適宜回転操作される木型に強化繊維と樹脂が積層され、所定肉厚の樹脂管5が形成される。
【0040】
強化繊維は、無機繊維、有機繊維、金属繊維、金属被覆繊維またはそれらの混合物から用途に合わせて選択される。ここで、無機繊維としては炭素繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、ガラス繊維等が選択可能である。有機繊維としてはアラミド繊維、高密度ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維等が選択可能である。また金属繊維としてはステンレス繊維が選択可能で、金属被覆繊維としては、上述した無機繊維または有機繊維の表面にニッケル、銅等の金属層を電解メッキまたは無電解メッキによって形成した繊維が選択可能である。
【0041】
マトリックス樹脂は、他に不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等が選択可能であり、上述の熱硬化性樹脂にポリアクリレート、ポリアミド、アラミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン等の熱可塑性樹脂を混合して用いることも可能であり、熱可塑性樹脂を併用することにより、靭性の高い硬化性成形物を得ることができる。
【0042】
ポンプの揚水管を形成するために特に好適な強化繊維として、ガラス繊維を選択することができ、好適なマトリックス樹脂として、エポキシ樹脂を選択することができる。
【0043】
このようにして形成された樹脂管5が固化した後に、図1(c)に示すように、両端部のフランジ用型4が取り外され、さらに管体用内型3の平板1が軸心P側に移動されることにより、他の平板2が順次取り外されて型外しが終了する。
【0044】
前記埋設工程で樹脂管5のフランジ部7の所定箇所に埋設される接続用器具8は耐食性金属で形成され、図2(b)に示すように、平板状の基材80に取付けボルトが挿通可能な円筒状の挿入部82が一体形成されている。
【0045】
図3(a)に示すように、樹脂管5の管体6の両端部に形成されたフランジ部7には、積層工程でマーキングピンMPに対応する位置に凹部70が形成されている。前記埋設工程では、図3(b)に示すように、この凹部70を基準に埋設孔9を形成する孔開け工程と、図3(c)に示すように、形成された埋設孔9に前記接続用金具8を挿入し、図3(d)に示すように、その周囲に上述のマトリックス樹脂を含浸した強化繊維10を充填する充填工程とからなる。
【0046】
このようにして、図4に示すように、フランジ部7と多角形の断面形状を有する管体6が繊維強化樹脂で形成され、前記フランジ部7に接続用器具8が埋設された接続孔14を備えた樹脂管が製造される。例として、口径500mmから1000mm、長さ1.5mから3.5mの揚水管が上述の製造方法により製造することができる。
【0047】
尚、型として木型を用いることが可能であるが、その材質は木に限定されるものではなく、樹脂型等適宜選択すればよい。
【0048】
さらに、ポンプの揚水管等に使用される場合には、犠牲陽極を取り付けることもできる。具体的には、図5(a)に示すように、前記平板1または2の一部に矩形の立ち上り部でなるフランジ型20を形成し、前記積層工程で管体6に犠牲陽極用の開口部60を形成し、図5(b)、(c)に示すように、当該開口部60に亜鉛でなる犠牲陽極9が取り付けられた基材90をボルト92により固定するのである。このようにして、ポンプの回転翼の駆動軸等の腐食を効果的に抑止することが可能な揚水管を製造することができる。
【0049】
特に上述したように、多角形管の平面部を利用すれば、犠牲陽極用の開口部を形成するための型を、断面円形の管よりも簡略化でき、後工程も容易になる。また、図5(d)に示すように、必要に応じて平板状の型部材を開口部形成用の型部材に取り替えることで、その設置個数や場所を用意に変更することができる。
【0050】
以下に、樹脂管の製造方法の別実施形態を説明する。上述の実施形態では、型形成工程で形成された管体用内型3及びフランジ用型4の表面にマトリックス樹脂を含浸した強化繊維を積層して樹脂管5を形成する製造方法を説明したが、以下の製造方法では、樹脂を内型と外型で形成されたキャビティ内に注入することにより樹脂管を製造するものである。
【0051】
樹脂としては、カルベン構造を持つルテニウムまたはオスミウム錯体触媒の存在下で、メタシス重合可能なシクロオレフィン類を重合させて得られる樹脂や、強化繊維を混入した樹脂等も使用することができる。
【0052】
図6(a)から(c)に示すように、上述と同様に複数の平板1、2を軸心方向に沿って環状に組み合わせて断面形状が多角形となる管体用内型3を形成するとともに、管体用内型3の端部にフランジ用型4を取り付けるフランジ型取付工程と、形成された管体用内型3の外面の角部(稜線)とフランジ用型4の交点を基準として、フランジ用型4に接続用器具の埋設位置をマーキングし、マーキングされた位置に接続用器具8を固定する位置決め工程と、前記管体用内型4に外型11を取り付ける外型組立工程と、管体用内型3と外型11との間に形成されるキャビティ12に強化繊維が混入された樹脂を流し込む注入工程と、樹脂が固化した後に外型11、フランジ用型4及び管体用内型3を離脱させる型外し工程を備えて構成される。
【0053】
位置決め工程では、上述と同様に接続用器具8の取り付け位置にマーキングピンMPが固定されるのであるが、図7(a)、(b)に示すように、マーキングピンMPの径が接続用金具8の挿入部82の内径と同径に形成され、フランジ用木型4に固定されたマーキングピンMPに接続用器具8の挿入部82が挿入固定された状態で、外型11が取り付けられる。
【0054】
外型11も同様に複数の平板1、2を軸心方向に沿って環状に組み合わせて断面形状が多角形となる管体用外型11aとその両端に形成されたフランジ用外型11bでなる型で形成され、管体用内型3の一端にフランジ用型4を挿入固定した後に他端から外型11を挿入し、その後、他端にフランジ用型4を挿入固定することにより型の組み付けが完成する。尚、管体用外型11aは、径方向に容易に離脱できるので、上述したような平板1が隣接する平板2に対して平行な隣接面を有するように形成しなくてもよい。
【0055】
上述の実施形態では何れも断面が正八角形の樹脂管の製造方法について説明したが、樹脂管の断面形状は少なくとも管体の内面に管軸方向の稜線を形成する角部を一箇所にそなえていれば、特に制限されるものではなく、図9(a)、(b)のような断面であってもよい。但し、流体搬送管として用いる場合には正十二角形が好適である。このような断面形状が多角形の樹脂管は、管厚が同じであれば同一の流路面積を有する断面が円形状の樹脂管に比べて断面係数が大となるので、曲げ強度の大きな剛性の高い樹脂管を得ることができる。さらに、その径や長さは用途に応じて適宜設定されるものである。また、円形断面の他の部材と接続する場合には、図10に示すように、フランジ部近傍においてのみ円形の断面形状としてもよい。こうすることで、円形断面を備えた他の部材と接続した際に、内部を通過する流体の流れを妨げることが少ない管路を形成することができるようになる。また管の外面は円形であってもよい。
【0056】
上述の実施形態で説明した管体用内型3の他の例として、図8に示すように、表面の幅と裏面の幅が同幅に形成された複数枚の平板1を環状に組み付けて、平板1の隣接部の空間にパテ1aを充填するものであってもよい。
【0057】
上述の実施形態で説明した樹脂管の材料となる樹脂や強化繊維は例示に過ぎずこれらの記載に限定されるものではない。また、このような製造方法で製造される樹脂成形品もポンプケーシングに限るものではなく、大型の配管類、ポンプ、水車のケーシング等の任意の成形品の製造に適用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明による樹脂管の製造方法の説明図
【図2】接続用器具の斜視図
【図3】接続用器具の組み込み手順の説明図
【図4】本発明による樹脂管の外観図
【図5】別実施形態を示し、本発明による樹脂管の製造方法の説明図
【図6】別実施形態を示し、本発明による樹脂管の製造方法の説明図
【図7】別実施形態を示し、接続用器具の組み込み手順の説明図
【図8】別実施形態を示し、管体用内型の断面図
【図9】別実施形態を示し、管体用内型の断面図
【図10】別実施形態を示し、管体用内型の断面図
【図11】ボイド管を用いた樹脂管の製造方法の説明図
【符号の説明】
【0059】
1、2:平板1、2
3:管体用木型
4:フランジ用木型
5:樹脂管
6:管体
7:フランジ部
8:接続用器具(他の部材との接続手段の一例)
11:外型
MP:マーキングピン
P:軸心
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂管及び樹脂管を用いたポンプ装置、並びに、樹脂管成形用内型の組立方法及び樹脂管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポンプの揚水管や吐き出し管等の大型の配管類は、強度や耐食性を確保するために一般的に金属鋳物で形成されていたが、材料費が高価であり重量が重いという難点があったため、近年、金属鋳物に代わる安価で軽量かつ耐食性に優れた樹脂管の開発が要請されている。
【0003】
このような樹脂管の製造方法として、特許文献1には、砂型又は金型を用いると共にロストコア式の中子を用いて成形される樹脂体であって、該樹脂体は、母材となる樹脂材が常温で無圧力により型内に注入可能な開環メタセシス重合技術により作成されるものからなることを特徴とする常温無圧力注入式ロストコアにより成形されるものが提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、筒体の内側中空部とほぼ同じ形状をなすマンドレルを用意し、前記マンドレルの外周面上にマトリックス樹脂を含浸させた強化繊維プリプレグを巻付け、半径方向外周側に向って凸形状でない部分または曲率半径が大きい曲面部分に熱膨張性の補助型をあてがい、補助型の外側から熱収縮テープを巻装して前記マトリックス樹脂を加熱硬化させる製造方法が提案されている。
【特許文献1】特開2005−319684号公報
【特許文献2】特開2000−301612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1による砂型を採用する場合には型が破損し易く、金型を採用する場合にはコストが嵩むという問題があり、特許文献2による場合には、製造された樹脂管からマンドレルを引き抜くのが容易でなく、軸心方向に傾斜した抜き勾配を持たせる等の加工に時間とコストがかかるという問題があった。
【0006】
さらには、ポンプの揚水管や吐き出し管等の配管類は、ポンプや他の配管と接続するためのフランジ部を形成する必要があり、上述の従来技術を適用するのは困難であった。
【0007】
そこで、本願発明者らは、図11(a)から(d)に示すように、断面形状が円形の厚肉のボール紙で形成されたボイド管100の両端部に、同じく厚肉のボール紙や木で形成されたフランジ用型102の中央に形成されたボス部104を挿入して位置決め固定し、フランジ用型102に形成された取付け部105に挿入して取り付けた回転軸106周りに型を回転操作しながら、ボイド管100及びフランジ用型102の表面にマトリックス樹脂を含浸した強化繊維をハンドレイアップにより積層して樹脂管108を形成し、樹脂管108が固化した後にボイド管100を破断して型を外した後に、フランジ部110に転写されたマーキングピン112の転写凹部114を中心に接続孔を形成する樹脂管の製造方法を着想している。
【0008】
しかしながら、上述の樹脂管の製造方法によれば、樹脂管の製造の度にボイド管100でなる型が破棄されるため経済性が悪いという問題や、フランジ部110に形成する接続孔の位置決め作業が煩雑となるという問題があった。
【0009】
具体的には、ボイド管100の表面に軸心に沿った線を端部間に亘り複数本罫書きし、フランジ用型102を取付けた後に、罫書き線とフランジ用型102との交点を基準としてフランジ用型102に接続孔を形成するためのマーキングを施す必要があり(図11中、112はマーキングピンを示す)、罫書き作業では製造の度に治具を用いてボイド管100の軸心Pを出し、軸心と平行に且つ所定の角度ピッチで罫書きする必要があるため、非常に煩雑となるのである。
【0010】
また、繊維強化樹脂であっても単にフランジ部に接続孔を形成する場合には強度が十分に確保できない場合があるという問題や、断面形状が円形の樹脂管では用途によって曲げ強度が十分確保できない場合があるという問題もあった。
【0011】
本発明は上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、所定の曲げ強度を確保しながらも、煩雑な製造工程を招くことなく、製造コストを低減することができる樹脂管及び樹脂管を用いたポンプ装置、並びに、樹脂管成形用内型の組立方法及び樹脂管の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明による樹脂管の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、他の部材と接続するためのフランジ部を管体の端部に設けるとともに、少なくとも前記管体の内面に管軸方向の稜線を形成する角部を一箇所備えている点にある。
【0013】
上述の構成によれば、金属鋳物に代わり、安価で軽量かつ耐食性に優れ、他の部材と接続するためのフランジ部を備えた樹脂管として、少なくとも管体内面に管軸方向の稜線を形成する角部を一箇所備えた管体が得られるので、同一の流路面積を有する断面が円形状の樹脂管に比べて断面係数が大となり、曲げ強度の大きな剛性の高い樹脂管を得ることができる。
【0014】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記管体の内面が多角形の断面形状を有する点にある。
【0015】
上述の構成によれば、製作し易い断面形状が多角形となる管体を得ることができる。
【0016】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二特徴構成に加えて、前記管体の内面のうち前記フランジ部の近傍のみ円形の断面形状を有する点にある。
【0017】
上述の構成によれば、接続する他の部材が円形断面である場合、内部を通過する流体の流れの抵抗となることが少ない管路を形成できるようになる。
【0018】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記フランジ部に他の部材と接続する接続器具が埋設されている点にある。
【0019】
上述の構成によれば、フランジ部に接続器具を埋設することにより、十分な強度でポンプや他の配管と接続することができるようになる。
【0020】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記管体に犠牲陽極取付孔が形成されている点にある。
【0021】
上述の構成によれば、樹脂管でありながらも、管体に形成された開口部に、管体内部に装着される機器、例えばポンプの回転翼の駆動軸等の腐食を抑制する犠牲陽極を容易に取り付けることができるようになる。
【0022】
本発明によるポンプ装置の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述した第一から第五の何れかの樹脂管を用いた点にある。
【0023】
上述の構成によれば、安価で軽量且つ耐食性に優れたポンプ装置を得ることができる。
【0024】
本発明による樹脂管成形用内型の組立方法の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、他の部材と接続するためのフランジ部を管体の端部に設け、少なくとも前記管体の内面に管軸方向の稜線を形成する角部を一箇所備えた樹脂管を形成するために樹脂管内面に配置される樹脂管成形用内型の組立方法であって、前記管体の周方向に沿って分割された少なくとも一つの平板状の内型部材を含む複数の内型部材を組み合わせて組み立てられる点にある。
【0025】
上述の構成によれば、内型部材の少なくとも一つは平板状の内型部材であるので、型の加工が容易であり、しかも、そのような平板上状の内型部材を組み合わせて形成される型であれば、管長方向に沿って同一の断面積を有する樹脂管であっても、成形品から型を容易に取り外すことができるのである。さらには解体した内型を再度型として組み付けることができるので、型の再利用が図られ、製造コストを低減させることも可能となる。
【0026】
本発明による樹脂管の製造方法の第一の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の樹脂管成形用内型の組立方法を用いて樹脂管成形用内型を組み立てる内型組立工程と、組み立てられた内型の端部にフランジ用型を組み付けるフランジ型組立工程と、前記内型とフランジ型の表面にマトリックス樹脂を含浸させた強化繊維を積層して樹脂管を成形する積層工程と、樹脂が固化した後に前記フランジ用型と前記内型を取り外す型外し工程を備え、前記内型の外面または内面に形成される角部を基準に、樹脂管のフランジ部に設ける他の部材と接続するための接続手段の形成位置が決定される点にある。
【0027】
上述の構成によれば、繊維で強化された樹脂管を成形する工程でフランジ部に設ける他の部材と接続するための接続手段を形成する位置、つまり、他の配管等との接続のための接続孔や接続用器具を埋設する位置の位置決めを行なう際に、管体用内型の外面または内面に形成される角部を基準とすることができるので、断面円形のボイド管等を型として用いる際に必要とされる罫書き線等による煩雑な位置決め作業が不要となり、製造工程を大幅に簡略化することができるようになる。
【0028】
同第二の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、上述の樹脂管成形用内型の組立方法を用いて樹脂管成形用内型を組み立てる内型組立工程と、組み立てられた内型の端部にフランジ用型を組み付けるフランジ型組立工程と、前記内型の外側に外型を組み付ける外型組立工程と、前記内型及びフランジ用型と外型の間に形成される空隙部に流動状態にある樹脂を注入する注入工程と、樹脂が固化した後に前記外型と前記フランジ用型と前記内型を取り外す型外し工程を備え、前記内型または外型の、外面または内面に形成される角部を基準に、樹脂管のフランジ部に設ける他の部材と接続するための接続手段の形成位置が決定される点にある。
【0029】
上述の構成によれば、フランジ用木型と外型の間に流動状態にある樹脂を注入する場合であっても、第一の特徴構成と同様にして得られた位置に接続手段を形成すれば、断面円形のボイド管等を型として用いる際に必要とされる罫書き線等による煩雑な位置決め作業が不要となり、製造工程を大幅に簡略化することができるようになる。
【0030】
尚、本願で用いる角部という用語は、平面と平面との交線だけでなく、平面と曲面の交線やこれらの面の交線部にRを形成したものも含む概念である。
【発明の効果】
【0031】
以上説明した通り、本発明によれば、所定の曲げ強度を確保しながらも、煩雑な製造工程を招くことなく、製造コストを低減することができる樹脂管及び樹脂管を用いたポンプ装置、並びに、樹脂管成形用内型の組立方法及び樹脂管の製造方法を提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に、本発明による樹脂管の製造方法を用いてポンプの揚水管を製造する例を説明する。
【0033】
樹脂管の製造方法は、図1(a)に示すように、複数の平板1、2を軸心P方向に沿って環状に組み合わせて断面形状が多角形(本実施形態では正八角形)となる筒状の管体用内型3を形成するとともに、管体用内型3の両端部にフランジ用型4を組み付けるフランジ型組立工程と、図1(b)に示すように、形成された管体用内型3及びフランジ用型4の表面にマトリックス樹脂を含浸した強化繊維を積層して樹脂管5を形成する積層工程と、図1(c)に示すように、樹脂が固化した後にフランジ用型4及び管体用内型3を離脱させる型外し工程を備えて構成される。また、図3に示すように、形成された樹脂管5のフランジ部7に強度のある接続用器具8を埋設する埋設工程を備えて構成することにより、樹脂管の接続部の強度を向上させることもできる。
【0034】
管体用内型3は、表面の幅より裏面の幅が小幅に形成された7枚の平板2と、表面の幅と裏面の幅が同幅または抜き勾配を考慮した幅に形成された1枚の平板1とを組み合わせて環状の型に形成され、平板1が隣接する平板2に対して平行または抜き勾配を考慮した隣接面を有するように組み付けられている。つまり、図1(c)に示すように、樹脂管5が形成された後に平板1を軸心P側に移動させることにより、容易に型外しができるように組み付けられている。
【0035】
フランジ用型4の外周は円形に形成され、中央部には管体用内型3に位置決め固定可能なように、管体用内型3の内周面形状と同形状のボス部40が形成され、当該ボス部40を管体用木型3の端面から空洞部に挿入することにより、型が形成される。
【0036】
さらに、図1(a)及び図2(a)に示すように、前記内型組立工程で形成された管体用内型3の外面の8本の稜線Qの何れかまたは複数とフランジ用型4の交点Xを基準として、フランジ用型4に予め設定されたボルト孔位置や接続用器具(他の部材との接続手段の一例)の埋設位置をマーキング、例えばマーキングピンMPを打ち込む位置決め工程を備えている。
【0037】
また、断面多角形の管体用内型3の内面に形成された角部を基準にフランジ用型4が予め決定された位置に位置決め組立可能なように構成されていれば、管体用内型3に両端部に固定される一対のフランジ用型4の同じ位置にマーキングピンMPを打ち込んでおくことができ、これにより断面円形の管体用内型を採用する場合に比べて接続用器具の埋設位置の位置決め作業を格段に向上させることもできる。
【0038】
尚、本実施形態では、接続用器具の埋設位置の位置決めにマーキングピンMPを取り付けるものを説明しているが、マーキングピンMP代えてフランジ型表面に、積層工程で接当する樹脂面に転写される傷等のマークを付すものであってもよい。また、接続用器具を埋設せずに、ボルト等を挿入するための孔を設けるものであってもよい。
【0039】
積層工程では、図1(b)に示すように、両端部のフランジ用内型4の中央部に形成された回転軸取り付け孔42に、所定の軸受けに回転自在に支持された回転軸44が挿入固定されて、型が回転自在に支持された後に、管体用内型3及びフランジ用型4の表面に、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂でなるマトリックス樹脂を含浸した短冊状またはシート状の強化繊維がハンドレイアップにより貼り付けられる。適宜回転操作される木型に強化繊維と樹脂が積層され、所定肉厚の樹脂管5が形成される。
【0040】
強化繊維は、無機繊維、有機繊維、金属繊維、金属被覆繊維またはそれらの混合物から用途に合わせて選択される。ここで、無機繊維としては炭素繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、ガラス繊維等が選択可能である。有機繊維としてはアラミド繊維、高密度ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維等が選択可能である。また金属繊維としてはステンレス繊維が選択可能で、金属被覆繊維としては、上述した無機繊維または有機繊維の表面にニッケル、銅等の金属層を電解メッキまたは無電解メッキによって形成した繊維が選択可能である。
【0041】
マトリックス樹脂は、他に不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等が選択可能であり、上述の熱硬化性樹脂にポリアクリレート、ポリアミド、アラミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン等の熱可塑性樹脂を混合して用いることも可能であり、熱可塑性樹脂を併用することにより、靭性の高い硬化性成形物を得ることができる。
【0042】
ポンプの揚水管を形成するために特に好適な強化繊維として、ガラス繊維を選択することができ、好適なマトリックス樹脂として、エポキシ樹脂を選択することができる。
【0043】
このようにして形成された樹脂管5が固化した後に、図1(c)に示すように、両端部のフランジ用型4が取り外され、さらに管体用内型3の平板1が軸心P側に移動されることにより、他の平板2が順次取り外されて型外しが終了する。
【0044】
前記埋設工程で樹脂管5のフランジ部7の所定箇所に埋設される接続用器具8は耐食性金属で形成され、図2(b)に示すように、平板状の基材80に取付けボルトが挿通可能な円筒状の挿入部82が一体形成されている。
【0045】
図3(a)に示すように、樹脂管5の管体6の両端部に形成されたフランジ部7には、積層工程でマーキングピンMPに対応する位置に凹部70が形成されている。前記埋設工程では、図3(b)に示すように、この凹部70を基準に埋設孔9を形成する孔開け工程と、図3(c)に示すように、形成された埋設孔9に前記接続用金具8を挿入し、図3(d)に示すように、その周囲に上述のマトリックス樹脂を含浸した強化繊維10を充填する充填工程とからなる。
【0046】
このようにして、図4に示すように、フランジ部7と多角形の断面形状を有する管体6が繊維強化樹脂で形成され、前記フランジ部7に接続用器具8が埋設された接続孔14を備えた樹脂管が製造される。例として、口径500mmから1000mm、長さ1.5mから3.5mの揚水管が上述の製造方法により製造することができる。
【0047】
尚、型として木型を用いることが可能であるが、その材質は木に限定されるものではなく、樹脂型等適宜選択すればよい。
【0048】
さらに、ポンプの揚水管等に使用される場合には、犠牲陽極を取り付けることもできる。具体的には、図5(a)に示すように、前記平板1または2の一部に矩形の立ち上り部でなるフランジ型20を形成し、前記積層工程で管体6に犠牲陽極用の開口部60を形成し、図5(b)、(c)に示すように、当該開口部60に亜鉛でなる犠牲陽極9が取り付けられた基材90をボルト92により固定するのである。このようにして、ポンプの回転翼の駆動軸等の腐食を効果的に抑止することが可能な揚水管を製造することができる。
【0049】
特に上述したように、多角形管の平面部を利用すれば、犠牲陽極用の開口部を形成するための型を、断面円形の管よりも簡略化でき、後工程も容易になる。また、図5(d)に示すように、必要に応じて平板状の型部材を開口部形成用の型部材に取り替えることで、その設置個数や場所を用意に変更することができる。
【0050】
以下に、樹脂管の製造方法の別実施形態を説明する。上述の実施形態では、型形成工程で形成された管体用内型3及びフランジ用型4の表面にマトリックス樹脂を含浸した強化繊維を積層して樹脂管5を形成する製造方法を説明したが、以下の製造方法では、樹脂を内型と外型で形成されたキャビティ内に注入することにより樹脂管を製造するものである。
【0051】
樹脂としては、カルベン構造を持つルテニウムまたはオスミウム錯体触媒の存在下で、メタシス重合可能なシクロオレフィン類を重合させて得られる樹脂や、強化繊維を混入した樹脂等も使用することができる。
【0052】
図6(a)から(c)に示すように、上述と同様に複数の平板1、2を軸心方向に沿って環状に組み合わせて断面形状が多角形となる管体用内型3を形成するとともに、管体用内型3の端部にフランジ用型4を取り付けるフランジ型取付工程と、形成された管体用内型3の外面の角部(稜線)とフランジ用型4の交点を基準として、フランジ用型4に接続用器具の埋設位置をマーキングし、マーキングされた位置に接続用器具8を固定する位置決め工程と、前記管体用内型4に外型11を取り付ける外型組立工程と、管体用内型3と外型11との間に形成されるキャビティ12に強化繊維が混入された樹脂を流し込む注入工程と、樹脂が固化した後に外型11、フランジ用型4及び管体用内型3を離脱させる型外し工程を備えて構成される。
【0053】
位置決め工程では、上述と同様に接続用器具8の取り付け位置にマーキングピンMPが固定されるのであるが、図7(a)、(b)に示すように、マーキングピンMPの径が接続用金具8の挿入部82の内径と同径に形成され、フランジ用木型4に固定されたマーキングピンMPに接続用器具8の挿入部82が挿入固定された状態で、外型11が取り付けられる。
【0054】
外型11も同様に複数の平板1、2を軸心方向に沿って環状に組み合わせて断面形状が多角形となる管体用外型11aとその両端に形成されたフランジ用外型11bでなる型で形成され、管体用内型3の一端にフランジ用型4を挿入固定した後に他端から外型11を挿入し、その後、他端にフランジ用型4を挿入固定することにより型の組み付けが完成する。尚、管体用外型11aは、径方向に容易に離脱できるので、上述したような平板1が隣接する平板2に対して平行な隣接面を有するように形成しなくてもよい。
【0055】
上述の実施形態では何れも断面が正八角形の樹脂管の製造方法について説明したが、樹脂管の断面形状は少なくとも管体の内面に管軸方向の稜線を形成する角部を一箇所にそなえていれば、特に制限されるものではなく、図9(a)、(b)のような断面であってもよい。但し、流体搬送管として用いる場合には正十二角形が好適である。このような断面形状が多角形の樹脂管は、管厚が同じであれば同一の流路面積を有する断面が円形状の樹脂管に比べて断面係数が大となるので、曲げ強度の大きな剛性の高い樹脂管を得ることができる。さらに、その径や長さは用途に応じて適宜設定されるものである。また、円形断面の他の部材と接続する場合には、図10に示すように、フランジ部近傍においてのみ円形の断面形状としてもよい。こうすることで、円形断面を備えた他の部材と接続した際に、内部を通過する流体の流れを妨げることが少ない管路を形成することができるようになる。また管の外面は円形であってもよい。
【0056】
上述の実施形態で説明した管体用内型3の他の例として、図8に示すように、表面の幅と裏面の幅が同幅に形成された複数枚の平板1を環状に組み付けて、平板1の隣接部の空間にパテ1aを充填するものであってもよい。
【0057】
上述の実施形態で説明した樹脂管の材料となる樹脂や強化繊維は例示に過ぎずこれらの記載に限定されるものではない。また、このような製造方法で製造される樹脂成形品もポンプケーシングに限るものではなく、大型の配管類、ポンプ、水車のケーシング等の任意の成形品の製造に適用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明による樹脂管の製造方法の説明図
【図2】接続用器具の斜視図
【図3】接続用器具の組み込み手順の説明図
【図4】本発明による樹脂管の外観図
【図5】別実施形態を示し、本発明による樹脂管の製造方法の説明図
【図6】別実施形態を示し、本発明による樹脂管の製造方法の説明図
【図7】別実施形態を示し、接続用器具の組み込み手順の説明図
【図8】別実施形態を示し、管体用内型の断面図
【図9】別実施形態を示し、管体用内型の断面図
【図10】別実施形態を示し、管体用内型の断面図
【図11】ボイド管を用いた樹脂管の製造方法の説明図
【符号の説明】
【0059】
1、2:平板1、2
3:管体用木型
4:フランジ用木型
5:樹脂管
6:管体
7:フランジ部
8:接続用器具(他の部材との接続手段の一例)
11:外型
MP:マーキングピン
P:軸心
【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の部材と接続するためのフランジ部を管体の端部に設けるとともに、少なくとも前記管体の内面に管軸方向の稜線を形成する角部を一箇所備えている樹脂管。
【請求項2】
前記管体の内面が多角形の断面形状を有する請求項1記載の樹脂管。
【請求項3】
前記管体の内面のうち前記フランジ部の近傍のみ円形の断面形状を有する請求項1または2記載の樹脂管。
【請求項4】
前記フランジ部に他の部材と接続する接続器具が埋設されている請求項1から3の何れかに記載の樹脂管。
【請求項5】
前記管体に犠牲陽極取付孔が形成されている請求項1から4の何れかに記載の樹脂管。
【請求項6】
請求項1から5の何れかに記載の樹脂管を用いたポンプ装置。
【請求項7】
他の部材と接続するためのフランジ部を管体の端部に設け、少なくとも前記管体の内面に管軸方向の稜線を形成する角部を一箇所備えた樹脂管を形成するために樹脂管内面に配置される樹脂管成形用内型の組立方法であって、
前記管体の周方向に沿って分割された少なくとも一つの平板状の内型部材を含む複数の内型部材を組み合わせて組み立てられる樹脂管成形用内型の組立方法。
【請求項8】
請求項7記載の樹脂管成形用内型の組立方法を用いて樹脂管成形用内型を組み立てる内型組立工程と、組み立てられた内型の端部にフランジ用型を組み付けるフランジ型組立工程と、前記内型とフランジ型の表面にマトリックス樹脂を含浸させた強化繊維を積層して樹脂管を成形する積層工程と、樹脂が固化した後に前記フランジ用型と前記内型を取り外す型外し工程を備え、前記内型の外面または内面に形成される角部を基準に、樹脂管のフランジ部に設ける他の部材と接続するための接続手段の形成位置が決定される樹脂管の製造方法。
【請求項9】
請求項7記載の樹脂管成形用内型の組立方法を用いて樹脂管成形用内型を組み立てる内型組立工程と、組み立てられた内型の端部にフランジ用型を組み付けるフランジ型組立工程と、前記内型の外側に外型を組み付ける外型組立工程と、前記内型及びフランジ用型と外型の間に形成される空隙部に流動状態にある樹脂を注入する注入工程と、樹脂が固化した後に前記外型と前記フランジ用型と前記内型を取り外す型外し工程を備え、前記内型または外型の、外面または内面に形成される角部を基準に、樹脂管のフランジ部に設ける他の部材と接続するための接続手段の形成位置が決定される樹脂管の製造方法。
【請求項1】
他の部材と接続するためのフランジ部を管体の端部に設けるとともに、少なくとも前記管体の内面に管軸方向の稜線を形成する角部を一箇所備えている樹脂管。
【請求項2】
前記管体の内面が多角形の断面形状を有する請求項1記載の樹脂管。
【請求項3】
前記管体の内面のうち前記フランジ部の近傍のみ円形の断面形状を有する請求項1または2記載の樹脂管。
【請求項4】
前記フランジ部に他の部材と接続する接続器具が埋設されている請求項1から3の何れかに記載の樹脂管。
【請求項5】
前記管体に犠牲陽極取付孔が形成されている請求項1から4の何れかに記載の樹脂管。
【請求項6】
請求項1から5の何れかに記載の樹脂管を用いたポンプ装置。
【請求項7】
他の部材と接続するためのフランジ部を管体の端部に設け、少なくとも前記管体の内面に管軸方向の稜線を形成する角部を一箇所備えた樹脂管を形成するために樹脂管内面に配置される樹脂管成形用内型の組立方法であって、
前記管体の周方向に沿って分割された少なくとも一つの平板状の内型部材を含む複数の内型部材を組み合わせて組み立てられる樹脂管成形用内型の組立方法。
【請求項8】
請求項7記載の樹脂管成形用内型の組立方法を用いて樹脂管成形用内型を組み立てる内型組立工程と、組み立てられた内型の端部にフランジ用型を組み付けるフランジ型組立工程と、前記内型とフランジ型の表面にマトリックス樹脂を含浸させた強化繊維を積層して樹脂管を成形する積層工程と、樹脂が固化した後に前記フランジ用型と前記内型を取り外す型外し工程を備え、前記内型の外面または内面に形成される角部を基準に、樹脂管のフランジ部に設ける他の部材と接続するための接続手段の形成位置が決定される樹脂管の製造方法。
【請求項9】
請求項7記載の樹脂管成形用内型の組立方法を用いて樹脂管成形用内型を組み立てる内型組立工程と、組み立てられた内型の端部にフランジ用型を組み付けるフランジ型組立工程と、前記内型の外側に外型を組み付ける外型組立工程と、前記内型及びフランジ用型と外型の間に形成される空隙部に流動状態にある樹脂を注入する注入工程と、樹脂が固化した後に前記外型と前記フランジ用型と前記内型を取り外す型外し工程を備え、前記内型または外型の、外面または内面に形成される角部を基準に、樹脂管のフランジ部に設ける他の部材と接続するための接続手段の形成位置が決定される樹脂管の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−133876(P2008−133876A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−319636(P2006−319636)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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