説明

樹脂組成物、樹脂成形体、樹脂成形体の製造方法、樹脂成形体のリサイクル方法

【課題】リン系難燃剤を含有する場合であっても、機械的強度と難燃性とを高水準で両立することが可能な樹脂組成物、樹脂成形体および事務機器部品、並びに樹脂成形体の製造方法およびリサイクル方法を提供すること
【解決手段】脂肪族ポリエステルと、該脂肪族ポリエステルのガラス転移点よりも高いガラス転移点を有する第2の高分子化合物と、リン酸アルミニウムとを含有することを特徴とする樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、樹脂成形体、樹脂成形体の製造方法、および樹脂成形体のリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、バイオマス材料として脂肪族ポリエステルなどの生分解性樹脂が注目されている。
【0003】
生分解性樹脂を用いた樹脂成形体としては、難燃性の向上を目的として難燃剤が配合されたものが知られている。かかる難燃剤としては、リン系難燃剤、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤などの様々な種類のものがある。さらに、例えばリン系難燃剤としては、リン酸アルミニウム、リン酸メラミン、赤燐、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合有機リン酸エステル、メラミンリン酸塩などが挙げられる(例えば、下記特許文献1〜3を参照。)。
【特許文献1】特開2004−027079号公報
【特許文献2】特開2003−192929号公報
【特許文献3】特開2004−190025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、リン系難燃剤を含有する場合であっても、機械的強度と難燃性とを高水準で両立することが可能な樹脂組成物、および樹脂成形体、並びに樹脂成形体の製造方法およびリサイクル方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、脂肪族ポリエステルと、該脂肪族ポリエステルのガラス転移点よりも高いガラス転移点を有する第2の高分子化合物と、リン酸アルミニウムとを含有することを特徴とする樹脂組成物にある。
【0006】
請求項2に記載の発明は、脂肪族ポリエステルの質量Aと、前記第2の高分子化合物の質量Bとの比率A/Bが0.3以上1.1以下であることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂組成物にある。
【0007】
請求項3に記載の発明は、エラストマーを更に含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の樹脂組成物にある。
【0008】
請求項4に記載の発明は、ブタジエンからなるコアとアクリルからなるシェルとのコアシェル構造を有するエラストマーをさらに含有することを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の樹脂組成物にある。
【0009】
請求項5に記載の発明は、脂肪族ポリエステルがポリ乳酸であることを特徴とする、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の樹脂組成物にある。
【0010】
請求項6に記載の発明は、第2の高分子化合物がポリカーボネートであることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の樹脂組成物にある。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の樹脂組成物を含有することを特徴とする樹脂成形体にある。
【0012】
請求項8に記載の発明は、繊維状の脂肪族ポリエステル相を含むことを特徴とする請求項7に記載の樹脂成形体にある。
【0013】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の樹脂組成物を該樹脂組成物の温度が230℃以下となる条件で射出成形する成形工程を有することを特徴とする樹脂成形体の製造方法にある。
【0014】
請求項10に記載の発明は、請求項7または8に記載の樹脂成形体を粉砕する粉砕工程と、粉砕工程で得られる粉砕物を前記脂肪族ポリエステルの融点よりも低い温度で加熱する加熱工程と、加熱工程後の粉砕物を成形して樹脂成形体を得る成形工程とを備えることを特徴とする樹脂成形体のリサイクル方法にある。
【0015】
請求項11に記載の発明は、粉砕工程が樹脂成形体を凍結粉砕するものであり、成形工程が前記粉砕物を射出成形して樹脂成形体を得るものであることを特徴とする、請求項10に記載の樹脂成形体のリサイクル方法にある。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、リン系難燃剤を含有する場合であっても、本構成を有しない樹脂組成物と比較して、機械的強度と難燃性とを高水準で両立することが可能となるという効果を有する。特に、請求項1に記載の発明により機械的強度を高水準で達成できることは、リン系難燃剤が脂肪族ポリエステルの加水分解の原因となり得るため、機械的強度が求められる用途には必ずしも適していないと考えられていることを鑑みれば、極めて予想外の効果といえる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、リン系難燃剤を含有する場合であっても、本構成を有しない樹脂組成物と比較して、機械的強度と難燃性とを高水準で両立できるという請求項1に記載の発明の効果を有効に実現することができ、特に、難燃性を一層向上させることができるという効果を有する。
【0018】
請求項3に記載の発明は、リン系難燃剤を含有する場合であっても、本構成を有しない樹脂組成物と比較して、機械的強度と難燃性とを高水準で両立できるという請求項1または2に記載の発明の効果を有効に実現することができ、特に、耐衝撃強度を一層向上させることができるという効果を有する。
【0019】
請求項4に記載の発明は、リン系難燃剤を含有する場合であっても、本構成を有しない樹脂組成物と比較して、機械的強度と難燃性とを高水準で両立できるという請求項1に記載の発明の効果を有効に実現することができ、特に、耐衝撃強度を一層向上させることができるという効果を有する。
【0020】
請求項5に記載の発明は、リン系難燃剤を含有する場合であっても、本構成を有しない樹脂組成物と比較して、機械的強度と難燃性とを高水準で両立できるという請求項1に記載の発明の効果を有効に実現することができるという効果を有する。
【0021】
請求項6に記載の発明は、リン系難燃剤を含有する場合であっても、本構成を有しない場合と比較して、機械的強度と難燃性とを高水準で両立できるという請求項1に記載の発明の効果を有効に実現することができ、特に、耐衝撃強度を一層向上させることができるという効果を有する。
【0022】
請求項7に記載の発明は、リン系難燃剤を含有する場合であっても、本構成を有しない樹脂成形体と比較して、機械的強度と難燃性とを高水準で両立することが可能となるという効果を有する。特に、請求項7に記載の発明により樹脂成形体の機械的強度を高水準で達成できることは、リン系難燃剤が脂肪族ポリエステルの加水分解の原因となり得るため、機械的強度が求められる用途には必ずしも適していないと考えられていることを鑑みれば、極めて予想外の効果といえる。
【0023】
請求項8に記載の発明は、リン系難燃剤を含有する場合であっても、本構成を有しない場合と比較して、機械的強度と難燃性とを高水準で両立できるという請求項7に記載の発明の効果を有効に実現することができ、特に、難燃性を一層向上させることができるという効果を有する。
【0024】
請求項9に記載の発明は、リン系難燃剤を含有する場合であっても、本構成を有しない場合と比較して、機械的強度と難燃性とが高水準で両立された樹脂成形体を有効に得ることができるという効果を有する。
【0025】
請求項10に記載の発明は、リン系難燃剤を含有する場合であっても、本構成を有しない場合と比較して、機械的強度と難燃性とが高水準で両立された樹脂成形体を有効に再生することができるという効果を有する。
【0026】
請求項11に記載の発明は、リン系難燃剤を含有する場合であっても、本構成を有しない場合と比較して、機械的強度と難燃性とが高水準で両立された樹脂成形体を有効に再生することができるという効果を一層向上させることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0028】
(樹脂組成物)
本発明の第1実施形態に係る樹脂組成物は、脂肪族ポリエステルと、該脂肪族ポリエステルのガラス転移点よりも高いガラス転移点を有する第2の高分子化合物と、リン酸アルミニウムとを含有する。
【0029】
脂肪族ポリエステルとしては、特に制限されないが、生分解性を有するものが好ましく、植物由来の脂肪族ポリエステルがより好ましい。具体的には、ポリ乳酸、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリプロピレンサクシネート、ポリプロピレンアジペート、ポリヘキシレンサクシネート、ポリヘキシレンアジペートなどが挙げられる。これらの脂肪族ポリエステルの中でも、難燃性と機械的強度(特に耐衝撃強度)とのバランスの観点から、ポリ乳酸が好ましい。これらの脂肪族ポリエステルは1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの脂肪族ポリエステルの2種以上の共重合体を用いてもよい。
【0030】
脂肪族ポリエステルの重量平均分子量は、好ましくは5000以上200000以下、より好ましくは10000以上120000以下である。また、脂肪族ポリエステルの数平均分子量は、好ましくは3000以上100000以下、より好ましくは5000以上70000以下である。脂肪族ポリエステルの重量平均分子量および数平均分子量がそれぞれ上記下限値未満であると耐衝撃強度が不十分となる傾向にあり、また、上記上限値を越えると成形性が不十分となる傾向にある。
【0031】
脂肪族ポリエステルの含有量は特に制限されないが、樹脂組成物全量を基準として、好ましくは20質量%以上80質量%以下、より好ましくは21質量%以上70質量%以下である。脂肪族ポリエステルの含有量が前記下限値未満であるとリサイクル性が低下し、環境負荷が大きくなる傾向にあり、また、前記上限値を超えると機械的強度や耐熱性が不十分となる傾向にある。
【0032】
また、第2の高分子化合物としては、脂肪族ポリエステルのガラス転移点よりも高いガラス転移点を有するものであれば特に制限されないが、具体的には、脂肪族ポリエステルのガラス転移点よりも高いガラス転移点を有する、ポリカーボネート、ポリアリレート、芳香族ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンオキシド、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)などが挙げられる。これらの中でも、より高い耐衝撃強度向上効果が得られることから、ポリカーボネートおよびABS樹脂が好ましく、ポリカーボネートが特に好ましい。これらの第2の高分子化合物は1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの高分子化合物の2種以上の共重合体を第2の高分子化合物として用いることもできる。
【0033】
なお、脂肪族ポリエステルおよび第2の高分子化合物のガラス転移点とは、以下のようにして測定されるガラス転移点を意味する。即ち、示差熱量測定装置((株)島津製作所製、示唆差走査熱量計 DSC−60)にて毎分10℃の昇温速度条件で熱量スペクトルを測定し、ガラス転移に由来するピークから接線法により求めた2つのショルダー値の中間値(Tgm)をガラス転移点とした。
【0034】
脂肪族ポリエステルおよび第2の高分子化合物それぞれのガラス転移点は、両者のガラス転移点の関係が上記条件を満たす限り特に制限されないが、脂肪族ポリエステルのガラス転移点は、好ましくは−30℃以上80℃以下、より好ましくは0℃以上70℃以下である。また、第2の高分子化合物のガラス転移点は、好ましくは0℃以上300℃以下、より好ましくは70℃以上160℃以下である。さらに、脂肪族ポリエステルのガラス転移点と第2の高分子化合物のガラス転移点との差は、好ましくは5℃以上250℃以下、より好ましくは10℃以上100℃以下である。特にこの温度差が5℃未満になると、第2の高分子材料によってなされるべき耐熱性や耐衝撃性、難燃性の向上効果が小さくなる傾向がある。逆に250℃を越えると、同じ温度における流動性に差があり過ぎるため、成形温度が設定しにくくなる傾向がある。
【0035】
また、第2の高分子化合物の重量平均分子量および数平均分子量は、第2の高分子化合物のガラス転移点が脂肪族ポリエステルのガラス転移点よりも高い限り特に制限されないが、第2の高分子化合物の重量平均分子は、好ましくは5000以上100000以下、より好ましくは10000以上80000以下である。また、第2の高分子化合物の数平均分子量は、好ましくは2500以上40000以下、より好ましくは3000以上30000以下がより好ましい。第2の高分子化合物の重量平均分子量および数平均分子量がそれぞれ上記下限値未満であると耐衝撃強度が不十分となる傾向にあり、また、上記上限値を越えると成形性が不十分となる傾向にある。樹脂組成物中における脂肪族ポリエステルおよび第2の高分子化合物の重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミッションクロマトグラフにて、脂肪族ポリエステルまたは第2の高分子化合物それぞれについて測定した重量平均分子量および数平均分子量を意味する。ゲルパーミッションクロマトグラフとしては、東ソー社製HLC−8220GPCを用いることができる。また、樹脂組成物中の脂肪族ポリエステルおよび第2の高分子化合物について重量平均分子量および数平均分子量を求める場合には、測定用試料を重水素化クロロホルムに0.1質量%の濃度で溶解させ、ゲルパーミッションクロマトグラフにて、溶液から分離された脂肪族ポリエステルまたは第2の高分子化合物それぞれについて重量平均分子量および数平均分子量を測定することができる。
【0036】
第2の高分子化合物の含有量は、樹脂組成物全量を基準として、好ましくは10質量%以上70質量%以下、より好ましくは35質量%以上65質量%以下である。第2の高分子化合物の含有量が前記下限値未満であると耐熱性が低下する傾向にあり、また、前記上限値を超えると成形温度が高くなり、得られる樹脂成形体の機械的強度が低下する傾向にある。
【0037】
また、リン酸アルミニウムにおけるリンの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは27質量%以上、さらに好ましくは29質量%以上である。リン酸アルミニウムにおけるリンの含有量が20質量%未満であると、難燃性と機械的強度(特に耐衝撃強度)との両立が困難となる傾向にある。また、リン酸アルミニウムにおけるリンの含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。リン酸アルミニウムにおけるリンの含有量が50質量%を超えると、混練や成形の際にリン酸が揮発して脂肪族ポリエステルや第2の高分子化合物の分解を促進し、機械的強度が低下しやすくなる傾向にある。ここで、リン酸アルミニウムにおけるリンの含有量とは、リン酸アルミニウム全体の質量に対して占めるリン元素の質量比を意味する。リンの含有量は、例えば蛍光X線等を用いて測定することができる。
【0038】
また、リン酸アルミニウムの含有量は、樹脂組成物中のリンの含有量が、樹脂組成物全量を基準として、1質量%以上となるように選定することが好ましい。樹脂組成物中のリンの含有量が1質量%未満であると、難燃性と機械的強度(特に耐衝撃強度)との両立が困難となる傾向にある。また、樹脂組成物中のリンの含有量は20質量%以下となるように選定することが好ましい。樹脂組成物中のリンの含有量が20質量%を越えると、成形する工程はもちろん、使用環境の温度が高くなった時に、リンを含有するガスが発生し、場合によっては樹脂組成物が過度に昇温してしまうことがある。
【0039】
本実施形態に係る樹脂組成物においては、脂肪族ポリエステルと、脂肪族ポリエステルのガラス転移点よりも高いガラス転移点を有する第2の高分子化合物と、リン酸アルミニウムとを必須成分として含有させることによって、機械的強度と難燃性とを高水準で両立させることができ、さらには耐熱性を向上させることができる。ここで、難燃性の向上効果は、第2の高分子化合物のガラス転移点が脂肪族ポリエステルのガラス転移点よりも高く、脂肪族ポリエステルと比較して混練時の流動性が低いことによって、樹脂組成物の混練時、成形時等において、樹脂組成物中のリン酸アルミニウムの分散性が高められることに起因していると本発明者らは推察する。より具体的には、流動性の高い脂肪族ポリエステルが液状となり、かつ、流動性の低い第2の高分子化合物が固体状または半固体状となって、脂肪族ポリエステルが第2の高分子化合物を包むように流動するため、このような状態の樹脂組成物が温度の高い状態で一軸に延伸されて巻き取られたり、成形に供されたりすると、混練物中または樹脂成形体中に、脂肪族ポリエステル相と第2の高分子化合物相との非相溶領域が形成される。このとき、脂肪族ポリエステル相および第2の高分子化合物相はそれぞれ繊維状であり、所定方向(例えば延伸方向)に沿って複数形成される。一方、リン酸アルミニウムは、脂肪族ポリエステル相に優先的に溶け込むという性質を有する。したがって、リン酸アルミニウムを含有する繊維状の脂肪族ポリエステル相が混練物または樹脂成形体中に連続的に形成され得るため、混練物中または樹脂成形体中のリン酸アルミニウムの分散性が十分に高められ、その結果、難燃性が向上するものと考えられる。
【0040】
また、脂肪族ポリエステルの質量をA、第2の高分子化合物の質量をBで表すとき、両者の比率A/Bは0.3以上1.1以下であることが好ましく、0.5以上0.9以下であることがより好ましい。A/Bが0.3未満の場合、前述した繊維状の脂肪族ポリエステル相および第2の高分子化合物相の非相溶領域において、脂肪族ポリエステル相の連続相が形成されにくくなり、途切れ途切れの相になってしまい、当該脂肪族ポリエステル相に含まれるリン酸アルミニウムの分散性が不十分となり難燃性が低下する傾向にある。また、リン酸アルミニウムが狭い領域に凝集してその領域に空間的な欠陥が形成されやすくなり、機械強度が低下する傾向にある。他方、A/Bが1.1を超えると、脂肪族ポリエステル相の面積が第2の高分子化合物相に比して大きくなりすぎて、これら2つの相が繊維状の非相溶領域が形成されにくくなるため、リン酸アルミニウムの分散性が不十分となり、難燃性が低下する傾向にある。また、この場合、脂肪族ポリエステルの機械的強度が樹脂組成物の機械的強度に反映されやすくなり、樹脂組成物の機械的強度が低下する傾向にある。
【0041】
また、本実施形態に係る樹脂組成物は、上述のように優れた特性を有しているため、難燃性を高水準に維持しつつ難燃剤の含有量を低減できるという点においても有用である。例えば、上記構成を有しない樹脂組成物の場合には、難燃性テストにおいてUL−V2を達成するためには多量の難燃剤(例えば30質量%程度)を含有させる必要があるが、本実施形態においてはリン酸アルミニウムの含有量を3質量%程度にまで低減してもUL−V2を達成することができる。
【0042】
なお、本実施形態に係る樹脂組成物は、その効果が損なわれない限りにおいて、上記リン酸アルミニウム以外の難燃剤(以下、便宜的に「その他の難燃剤」という。)をさらに含有してもよい。その他の難燃剤としては、例えば当該リン酸アルミニウム以外のリン系難燃剤、臭素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機粒子系難燃剤などが挙げられる。中でも、耐溶剤性向上の観点から、下記一般式(I)で表される化合物であることが好ましい。
【化1】


[一般式(I)中、Arは置換もしくは未置換のアリーレン基、置換もしくは未置換のビフェニレン基または置換もしくは未置換のビスフェノール型アリーレン基を表し、ArおよびArはそれぞれ独立に、置換もしくは未置換のアリール基を表し、RおよびRはそれぞれ独立に、炭素数1〜10の置換もしくは未置換のアルキル基または置換もしくは未置換のアリール基を表す。]
【0043】
上記一般式(I)で表される化合物の具体例としては、下記構造式(I−1)又は(I−II)で表される化合物などが挙げられる。また、下記構造式(I−1)で表される化合物として市販品(例えばPX−200、大八化学(株)製)を用いてもよい。同様に、下記構造式(I−2)で表される化合物として市販品(例えばCR−741、大八化学(株)製)を用いてもよい。
【化2】


【化3】

【0044】
難燃性と機械的強度との両立の観点からは、その他の難燃剤の含有量は、樹脂組成物全量を基準として、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。また、リン酸アルミニウムを基準として5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、10質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。
【0045】
本実施形態に係る樹脂組成物は、脂肪族ポリエステルと第2の高分子化合物とリン酸アルミニウムとのみからなるものであってもよいが、機械的強度と難燃性とをより高水準で両立でき、特に、耐衝撃強度を一層向上させることができることから、コアとシェルとのコアシェル構造を有するエラストマー、シェルを有さない構造のエラストマー、側鎖を有する分岐構造のエラストマー等のエラストマー(以下、総称して単に「エラストマー」という場合もある。)をさらに含有することが好ましい。コアシェル構造を有するエラストマーのコアとしては、ブタジエン、スチレン、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、酢酸ビニル等が挙げられる。またシェルとしては、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、ポリシロキサン等が挙げられる。これらは脂肪族ポリエステルおよび第2の高分子化合物の種類に応じて適宜選定することができる。コアシェル構造を有するエラストマーにおけるコアの修飾は、グラフト重合により行ってもよく、コアを、シェルの材料を溶剤に溶解させた溶液に浸漬させることにより行ってもよい。エラストマーの平均粒径は、好ましくは0.5μm以上50μm以下、より好ましくは2μm以上20μm以下である。エラストマーの平均粒径が0.5μ未満であると耐衝撃強度の向上効果が不十分となる傾向にあり、また、50μmを超えると樹脂組成物中でのエラストマーの分散性が低下する傾向にあり、エラストマーを樹脂組成物に含有させたことで却って耐衝撃強度が低下する場合がある。
【0046】
また、本実施形態に係る樹脂組成物は、必要に応じて、充填剤、酸化防止剤、強化剤、相溶化剤、耐候剤、強化剤、耐加水分解剤等の添加剤、触媒などをさらに含有することができる。これらの添加剤および触媒の含有量は、樹脂成形体全量を基準として、それぞれ10質量%以下であることが好ましい。
【0047】
上記充填剤のうち好ましいものとしては、アスペクト比が3以上20以下である充填剤が挙げられる。具体的にはアスペクト比が3以上20以下であるケナフ、竹繊維、マイカ、胡桃殻、コーヒー殻などの天然充填剤が好適である。アスペクト比が3以上20以下である充填剤を用いると、機械的強度と難燃性とを両立したまま、ロックウェル硬度、面衝撃強度を向上させることができる。これは、第2の高分子化合物の重量平均分子量が脂肪族ポリエステルの重量平均分子量よりも小さい場合に、アスペクト比が3以上20以下である充填剤が脂肪族ポリエステルを結晶化させ、針状の結晶化物を第2の高分子化合物が包み込むためであると本発明者らは推察する。
【0048】
上記充填剤のうち他の好ましいものとしては、カーボンナノチューブおよびフラーレンから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらカーボンナノチューブ、フラーレンを用いると、機械的強度と難燃性とを両立したまま、耐加水分解性を向上させることができる。これは、カーボンナノチューブ、フラーレンが脂肪族ポリエステル、第2の高分子化合物、リン酸アルミニウムの末端基と反応するためではないかと本発明者らは推察する。
【0049】
本実施形態に係る樹脂組成物は、機械的強度と難燃性とをより高水準で両立し、特に耐衝撃強度を一層向上させる観点から、耐加水分解剤を含有することが好ましい。耐加水分解剤としては、樹脂組成物中の活性水素に対して反応性を有する化合物が挙げられ、具体的には、カルボジイミド化合物、ジイソシアネートやトリイソシアネートなどのイソシアネート化合物、ヒドロキシ化合物やジヒドロキシ化合物などの多官能ヒドロキシ化合物、ジカルボン酸、トリカルボン酸などの多官能カルボン酸及びそのエステル誘導体、ジアミンやトリアミンなどの多官能アミン化合物、並びにオキソゾリン系化合物などが挙げられる。これらの中でも、カルボジイミド化合物及びイソシアネート化合物が耐湿熱特性向上の点で好ましい。更に、カルボジイミド化合物は、脂肪族ポリエステルなどの樹脂と溶融混練が可能であり、少量の添加で十分な加水分解防止効果が得られるという点で好ましい。
【0050】
また、本実施形態に係る樹脂組成物は、樹脂成形体としたときにシャルピー耐衝撃強度が2.5kJ/m以上となるものが好ましい。なお、ここでいうシャルピー耐衝撃強度とは、ISO−179の規格に準拠した方法で求められたものを意味する。シャルピー耐衝撃強度が2.5kJ/m以上となる本実施形態に係る樹脂組成物は、特に、電子機器の筐体などに用いられる樹脂成形体を形成する場合に好適である。
【0051】
(樹脂成形体およびその製造方法)
本発明の第2実施形態に係る樹脂成形体は、上記第1実施形態に係る樹脂組成物を含有するものである。なお、第2実施形態に係る樹脂成形体の構成成分は第1実施形態に係る樹脂組成物の構成成分と同様であるため、ここでは重複する説明を省略する。
【0052】
本実施形態に係る樹脂成形体の製造方法は特に限定されず、例えば、射出成形、射出圧縮成形、押し出し成形、ブロー成形、カレンダ成形、コーテイング、キャスト、浸漬塗布などが挙げられる。これらの中でも、溶剤の使用量を低減する点から、射出成形または射出圧縮成形が特に好ましい。
【0053】
また、本実施形態に係る樹脂成形体の製造方法においては、樹脂組成物を成形に供する前に、樹脂組成物を十分に混合することが好ましい。また、樹脂成形体を射出成形により製造する場合、第1実施形態に係る樹脂組成物またはその構成成分をペレット状のコンパウンドとして射出成形機に投与してもよく、あるいは、樹脂組成物またはその構成成分を混練してそのまま射出成形してもよい。成形条件は、第1実施形態に係る樹脂組成物の使用による効果が得られれば特に制限されないが、例えば射出成形の場合、上述した繊維状の脂肪族ポリエステル相および第2の高分子化合物相の非相溶領域を有効に形成できることから、射出成形機内の樹脂組成物の温度が230℃以下、より好ましくは185℃以上215℃以下となるようにすることが好ましい。
【0054】
第2実施形態に係る樹脂成形体は、幅広い用途に適用することができる。樹脂成形体の用途としては、具体的には、電気・電子部品やその筐体、自動車部品、壁紙や外装材などの建材、食器、シート、緩衝材、繊維などが挙げられる。中でも、高い耐衝撃強度と難燃性、優れた耐加水分解性を要求され、使用量が多く低環境負荷効果も高い電子機器部品、筐体に好適である。ここで、筐体とは家電製品、容器、電子機器などの筐体を意味し、特に電子機器の筐体は優れた耐候性が要求されるため好適である。
【0055】
本実施形態に係る樹脂成形体を用いて筐体を構成する場合、筐体の全部が本実施形態に係る樹脂成形体で構成されていてもよいが、面衝撃強度等の性能が求められる部分が本実施形態に係る樹脂成形体によって構成されていることが好ましい。この場合、当該部分以外の部分は本実施形態に係る樹脂成形体以外の樹脂成形体で構成されていてもよい。具体的には、プリンター、複写機、ファックスなどの外装におけるフロントカバー、リアカバー、給紙トレイ、排紙トレイ、プラテン、コンセント等の外側部材、コンセント等の内側部材などは本実施形態に係る樹脂成形体で構成されていることが好ましい。一方、内装カバー、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジなどは、本実施形態に係る樹脂成形体またはそれ以外の樹脂成形体のいずれで構成されていてもよい。
【0056】
図1は、本実施形態に係る樹脂成形体を用いて構成された筐体および部品を備える画像形成装置の一例を示す図であり、画像形成装置を前側から見た外観斜視図である。図1の画像形成装置100は、本体装置110の前面にフロントカバー120a,120bを備えている。これらのフロントカバー120a,120bは、操作者が装置内を操作できるよう開閉可能となっている。これにより、操作者は、トナーが消耗したときにトナーを補充したり、消耗したプロセスカートリッジを交換したり、装置内で紙詰まりが発生したときに詰まった用紙を取り除いたりすることができる。図1には、フロントカバー120a,120bが開かれた状態の装置が示されている。
【0057】
本体装置110の上面には、用紙サイズや部数等の画像形成に関わる諸条件が操作者からの操作によって入力される操作パネル130、および、読み取られる原稿が配置されるコピーガラス132が設けられている。また、本体装置110は、その上部に、コピーガラス132上に原稿を自動的に搬送することができる自動原稿搬送装置134を備えている。さらに、本体装置110は、コピーガラス132上に配置された原稿画像を走査して、その原稿画像を表わす画像データを得る画像読取装置を備えている。この画像読取装置によって得られた画像データは、制御部を介して画像形成ユニットに送られる。なお、画像読取装置および制御部は、本体装置110の一部を構成する筐体150の内部に収容されている。また、画像形成ユニットは、着脱可能なプロセスカートリッジ142として筐体150に備えられている。プロセスカートリッジ142の着脱は、操作レバー144を回すことによって可能となる。
【0058】
本体装置110の筐体150には、トナー収容部146が取り付けられており、トナー供給口148からトナーを補充することができる。トナー収容部146に収容されたトナーは現像装置に供給されるようになっている。
【0059】
一方、本体装置110の下部には、用紙収納カセット140a,140b,140cが備えられている。また、本体装置110には、一対のローラで構成される搬送ローラが装置内に複数個配列されることによって、用紙収納カセットの用紙が上部にある画像形成ユニットまで搬送される搬送経路が形成されている。なお、各用紙収納カセットの用紙は、搬送経路の端部近傍に配置された用紙取出し機構によって1枚ずつ取り出されて、搬送経路へと送り出される。また、本体装置110の側面には、手差しの用紙トレイ136が備えられており、ここからも用紙を供給することができる。
【0060】
画像形成ユニットによって画像が形成された用紙は、本体装置110の一部を構成する筐体152によって支持された相互に当接する2個の定着ロールの間に順次移送された後、本体装置110の外部に排紙される。本体装置110には、用紙トレイ136が設けられている側と反対側に排出トレイ138が複数備えられており、これらのトレイに画像形成後の用紙が排出される。
【0061】
画像形成装置100において、フロントカバー120a,120bは、開閉時の応力および衝撃、画像形成時の振動、画像形成装置内で発生する熱などの負荷を多く受ける。また、プロセスカートリッジ142は、着脱の衝撃、画像形成時の振動、画像形成装置内で発生する熱などの負荷を多く受ける。また、筐体150および筐体152は、画像形成時の振動、画像形成装置内で発生する熱などの負荷を多く受ける。そのため、本実施形態に係る樹脂成形体は、画像形成装置100のフロントカバー120a,120b、プロセスカートリッジ142の外装、筐体150、および筐体152として用いられるのが好適である。
【0062】
(樹脂成形体のリサイクル方法)
本発明の第3実施形態に係る樹脂成形体のリサイクル方法は、上記第2実施形態に係る樹脂成形体を粉砕する粉砕工程と、粉砕工程で得られる粉砕物を前記脂肪族ポリエステルの融点よりも低い温度で加熱する加熱工程と、加熱工程後の粉砕物を成形して樹脂成形体を得る成形工程とを備える。
【0063】
粉砕工程において、樹脂成形体を粉砕する方法は特に制限されないが、上述した繊維状の脂肪族ポリエステル相および第2の高分子化合物相の非相溶領域の損壊を十分に抑制しつつ粉砕することができる点から、凍結粉砕が好適である。粉砕後の樹脂成形体のサイズは、平均粒径で0.5mm以上7mm以下が好ましい。
【0064】
また、加熱工程において、粉砕工程で得られる粉砕物の加熱温度は、前述の通り前記脂肪族ポリエステルの融点よりも低い温度であり、好ましくは180℃以下、より好ましくは100℃以上160℃以下である。上記条件での加熱工程を経ることによって、脂肪族ポリエステル相の結晶化が促進されるため、機械的強度の自己修復または維持の点で好ましい。さらに、加熱工程後の粉砕物が丸みを帯びたペレット状となりやすく、射出成形機等でのスクリューや歯への噛み込みを十分に抑制することができるようになるため、製造効率の点でも好ましい。
【0065】
また、成形工程における成形方法としては、上記第2実施形態に係る樹脂成形体の製造方法において例示した各種成形方法を適用することができるが、成形工程は、加熱工程後の前記粉砕物を射出成形して樹脂成形体を得る工程であることが好ましい。
【0066】
また、成形工程における成形条件は、リサイクルの原料となる樹脂成形体の特性を再生後の樹脂成形体において十分に維持することが可能な限り特に制限されないが、例えば射出成形の場合、射出温度は170℃以上230℃以下、金型温度は20℃以上100℃以下、冷却時間は5秒以上120秒以下がそれぞれ好ましい。
【実施例】
【0067】
以下、実施例および比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0068】
[実施例1〜22、比較例1〜3]
実施例1〜19および比較例1〜3においては、それぞれ表1〜6に示す原材料を2軸混練装置(TEM58SS、東芝機械社製)に投入し、シリンダ温度220℃で混練して樹脂組成物(コンパウンド)を得た。次に、得られた樹脂組成物を用いて射出成形装置(NEX150E、日精樹脂社製)にて、シリンダ温度220℃、金型温度30℃にて射出成形を実施し、ISO多目的試験片(ISO527引張試験及びISO178曲げ試験に対応、試験部厚さ4mm、幅10mm)、及びUL94Vテスト用試験片(厚さ0.8mm又は1.6mmの2種類)を得た。また、実施例20〜22においては、ISO多目的試験片及びUL94Vテスト用試験片の射出成形時に、シリンダ温度230℃、金型温度30℃に変更した以外は、実施例1〜3と同様にして試験片を作製した。なお、実施例で使用した脂肪族ポリエステルの、組成物における重量平均分子量は、レイシアH−100(三井化学社製)が45000、テラマックTE4000(ユニチカ社製)が60000である。
【0069】
次に、ISO多目的ダンベル試験片を加工して、ISO179に従いシャルピー耐衝撃強度を、ISO75に準拠して熱変形温度を、それぞれ測定した。熱変形温度の測定の際には、荷重を0.45MPaおよび1.80MPaの2条件とした。また、UL94Vテスト用試験片を用い、UL−94の方法でUL−Vテストを実施した。得られた結果を表1〜6に示す。
【0070】
また、実施例1で得られたISO多目的試験片の切断面をトンネル型電子顕微鏡(TEM)(日立製、H−7500)にて倍率7500倍で観察した。得られた顕微鏡写真を図2に示す。図2に示したように、実施例1で得られたISO多目的試験片においては、繊維状の脂肪族ポリエステル相(ポリ乳酸相、図2中の領域Aに存在する白い部分)と第2の高分子化合物相(ポリカーボネート相、図2中の領域Bに存在する黒い部分)との非相溶領域が形成されていることが確認された。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
【表4】

【0075】
【表5】

【0076】
【表6】

【0077】
[実施例23〜43、比較例4〜6]
実施例18〜34および比較例4〜6においては、実施例23は実施例1の樹脂組成物を、実施例24は実施例2の樹脂組成物を、というように対応させて、それぞれ実施例1〜22または比較例1〜3の樹脂組成物を用いて射出成形装置(NEX150E、日精樹脂社製)にて射出成形を実施し、カラー複合機の内装部品であるコンセントの内側部材及びコンセントの外側部材を作製した。コンセントの内側部材の作製時には、成形条件を、シリンダ温度220℃、金型温度40℃に設定した。また、コンセントの外側部材の作製時には、成形条件を、シリンダ温度210℃、金型温度30℃に設定した。コンセントの内側部材及びコンセントの外側部材の形状及び寸法は、いずれも富士ゼロックス製カラー複合機Apeos450のコンセントの内側部材及びコンセントの外側部材と同様とした。
【0078】
コンセントの内側部材については、100体連続成形を行ったときのショート成形体(金型の全体に樹脂組成物が充填されなかった成形体)の数を測定した。また、コンセントの内側部材をISO178の方法でノッチ加工し、ISO178に準じてシャルピー耐衝撃強度をウェルドのある部分とウェルドのない部分のそれぞれについて測定した。また、UL−94の方法でUL−Vテストを実施し、コンセントの内側部材の難燃性を評価した。
【0079】
さらに、コンセントの内側部材をミルカッターを用いて凍結粉砕し、粉砕物を100℃で4時間加熱した後、上記と同様の条件で射出成形を行いコンセントの内側部材を作製した。この粉砕、加熱および成形を5回繰り返した後のコンセントの内側部材について上記と同様にしてシャルピー耐衝撃強度の測定を行い、リサイクル性を評価した。
【0080】
また、コンセントの外側部材については、外観ひけ(成形時に、冷却によって樹脂組成物が収縮し、部分的に窪みが生じてしまう状態。表面に模様が発生してしまう場合もある。)の有無を目視で観察した。また、水平な台上に載置したコンセントの外側部材の上面上に長さ1.3mの円筒体を鉛直方向に配置し、直径50mm、質量500gの鋼球を円筒体の上端から投入することにより、鋼球をコンセントの外側部材に向けて落下させ、鋼球が衝突した後のコンセントの外側部材の割れの有無を評価した。得られた結果を表7〜12に示す。なお、本試験においては、上記の成形後から試験に供するまでに前処理を行わなかったコンセントの外側部材(表7〜12中の「加熱処理なし」の欄を参照)と、100℃で4時間加熱処理したコンセントの外側部材(表7〜12中の「加熱処理あり」の欄を参照)とについて評価を行った。
【0081】
【表7】

【0082】
【表8】

【0083】
【表9】

【0084】
【表10】

【0085】
【表11】

【0086】
【表12】

【0087】
[実施例44]
樹脂組成物(コンパウンド)を調製する際に、原材料に縮合リン酸エステル(PX−200、大八化学工業社製)2.0質量部を更に添加した以外は実施例1と同様にして、ISO多目的ダンベル試験片およびUL−94Vテスト用試験片を得た。
【0088】
次に、実施例1および実施例44で得られた各試験片について、溶剤またはオイルに対する耐性を評価した。具体的には、ISO多目的ダンベル試験片を用い、下記表11に示す溶剤またはオイルを塗布し、温度25℃、湿度55%の環境下において、試験片の両端を固定し、試験片の中心部分を溶剤を塗布した面とは反対の面から加圧して0.5%の歪みを与え、20時間後にひび割れの有無を評価した。結果を表13に示す。
【0089】
【表13】

【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の樹脂成形体の一実施形態に係る筐体を備える画像形成装置を示す外観斜視図である。
【図2】実施例1で得られた樹脂成形体(ISO多目的試験片)の切断面を示す顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0091】
100…画像形成装置、110…本体装置、120a、120b…フロントカバー、130…操作パネル、132…コピーガラス、134…自動原稿搬送装置、136…用紙トレイ、140a〜140c…用紙収納カセット、142…プロセスカートリッジ、144…操作レバー、146…トナー収容部、148…トナー供給口、150、152…筐体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリエステルと、該脂肪族ポリエステルのガラス転移点よりも高いガラス転移点を有する第2の高分子化合物と、リン酸アルミニウムとを含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記脂肪族ポリエステルの質量Aと、前記第2の高分子化合物の質量Bとの比率A/Bが0.3以上1.1以下であることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
エラストマーを更に含有することを特徴とする請求項1または2のうちのいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
ブタジエンからなるコアとアクリルからなるシェルとのコアシェル構造を有するエラストマーをさらに含有することを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記脂肪族ポリエステルがポリ乳酸であることを特徴とする、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記第2の高分子化合物がポリカーボネートであることを特徴とする、請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の樹脂組成物を含有することを特徴とする樹脂成形体。
【請求項8】
繊維状の脂肪族ポリエステル相を含むことを特徴とする、請求項7に記載の樹脂成形体。
【請求項9】
請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の樹脂組成物を該樹脂組成物の温度が230℃以下となる条件で射出成形する成形工程を有することを特徴とする樹脂成形体の製造方法。
【請求項10】
請求項7または8に記載の樹脂成形体を粉砕する粉砕工程と、
前記粉砕工程で得られる粉砕物を前記脂肪族ポリエステルの融点よりも低い温度で加熱する加熱工程と、
前記加熱工程後の前記粉砕物を成形して樹脂成形体を得る成形工程と
を備えることを特徴とする樹脂成形体のリサイクル方法。
【請求項11】
前記粉砕工程が前記樹脂成形体を凍結粉砕するものであり、前記成形工程が前記加熱工程後の前記粉砕物を射出成形して樹脂成形体を得るものであることを特徴とする、請求項10に記載の樹脂成形体のリサイクル方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−274222(P2008−274222A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321186(P2007−321186)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】