説明

樹脂組成物およびその製造方法

【課題】
特殊な設備を要さずとも樹脂エマルジョンが得られるエマルジョン前駆体ともいうべき固形状の樹脂組成物、および、この樹脂組成物と水からなる樹脂エマルジョンを提供する。
【解決手段】
ガラス転移温度0〜140℃かつ重量平均分子量300〜10000のビニル重合体100質量部と、界面活性剤1〜20質量部と、水0.1〜20質量部とを含有する固形状の樹脂組成物。ビニル重合体は、石油樹脂、ロジン樹脂、テルペン樹脂から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。樹脂組成物は、その100質量部に対して、水40〜10000質量部を混合することで樹脂エマルジョンとすることができる。樹脂エマルジョンは、粘着剤や接着剤、塗料、インキ、コーティング剤として用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ビニル重合体を用いた固形状の樹脂組成物およびその製造方法、ならびに、この樹脂組成物を水に溶解して得られる樹脂エマルジョンおよびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂エマルジョンは、界面活性剤による電気二重層の静電反発力を利用して、水に樹脂粒子を分散させたものであり、粘着テープや粘着シート等の粘着剤を製造する際に広く使用されている。
【0003】
樹脂エマルジョンを製造する方法としては、機械力により分散相を微細化する機械式乳化法として、例えば、高圧下で狭い間隙を通過させることにより高いせん断力を与え分散相を微細化する高圧乳化法、液体に超音波を加えた際に発生するキャビテーション力を利用し、分散相を微細化する超音波乳化法、均一な孔径を有する多孔膜を介して分散媒中に加圧分散させること分散相を微細化する膜乳化法などが知られている。
【0004】
また、界面活性剤の物理化学力を利用した乳化方法として、例えば、油相中に乳化剤を溶解させ、徐々に水相を添加し、連続相を油相から水相へ反転させる転相乳化法、非イオン界面活性剤の親水-親油バランスの温度依存性を利用し、温度変化によって連続相を反転させる転相温度乳化法、液晶中に分散相を分散・保持させ、そのときの界面張力の低下や界面活性剤分子の配向などを利用した液晶乳化法、などが知られている。
【0005】
ここで、樹脂エマルジョンの樹脂粒子として、石油樹脂やロジン樹脂、テルペン樹脂などのビニル重合体を選択した場合は、これらの樹脂が常温で固体または半固体であるため、従来の機械式乳化法では撹拌などに多大な動力を必要とし、さらに、乳化加工の際に設備面で樹脂粘度の制約を受けてしまう。
【0006】
この粘度の制約を取り除くべく、樹脂を有機溶媒に溶解させて樹脂の溶融粘度を下げ、先述の方法にて乳化を行った後に減圧蒸留にて有機溶剤を回収する方法が活用されている。しかし、この方法にて得られた乳化物から有機溶媒を完全に除去することは困難であり、近年の環境対応などの観点から有機溶媒を使用しない樹脂エマルジョンが求められていた。
【0007】
一方、常温で固体または半固体の樹脂を、有機溶媒を使用しないで樹脂エマルジョンにする方法としては、例えば、高温高圧環境での転相乳化法によって熱可塑性樹脂の粘度を下げる方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0008】
また、オレフィン系樹脂と特定の鹸化度の部分鹸化ポリビニルアルコールの水溶液とを、多軸スクリュー押出機にて溶融混練する方法(例えば、特許文献3参照)が知られている。
【0009】
しかしながら、これらの手段において得られる樹脂エマルジョンに含まれる水は、製品の30%以上をしめるものであり、そのほとんどが製品加工過程で除去されるものである。つまり、樹脂エマルジョンは、その保管や輸送のために多大なコストが必要である。
【0010】
これら樹脂エマルジョンの水分をさらに減少させることによって、固体の樹脂とすることは可能である。しかしながら、このようにして得られた固形の樹脂は、再度水に分散させようとしても、樹脂組成物自体の組成が変化しており、元の樹脂エマルジョンとすることができなかった。
【0011】
固形の乳化物を得る方法として、熱可塑性樹脂とポリビニルアルコールを予め溶融混練した後、さらに水を溶融混練させて樹脂組成物とする方法(例えば、特許文献4参照)が知られている。
【0012】
しかしながら、この手段を、上記の石油樹脂やロジン樹脂、テルペン樹脂などのビニル重合体に適用しようとしても、ビニル重合体が連続相となってしまい、得られた樹脂組成物を樹脂エマルジョンとすることができなかった。さらに、樹脂組成物中のポリビニルアルコールが溶融混練中の熱履歴により変色してしまうなど、目的とした製品を得ることができなかった。
【特許文献1】平成 7年特許公開第155576号
【特許文献2】平成11年特許公開第209477号
【特許文献3】昭和56年特許公開第002149号
【特許文献4】特許第2993047号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特殊な設備を要さずとも樹脂エマルジョンが得られる、エマルジョン前駆体ともいうべき固形状の樹脂組成物、および、この樹脂組成物と水からなる樹脂エマルジョンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ガラス転移温度0〜140℃かつ重量平均分子量300〜10000のビニル重合体100質量部と、界面活性剤1〜20質量部と、水0.1〜20質量部とを含有する固形状の樹脂組成物である。樹脂組成物のビニル重合体は、平均粒子径0.1〜1.0μmの分散相として、界面活性剤と水とが混合した連続相を介して隣接していることが好ましく、石油樹脂、ロジン樹脂、テルペン樹脂から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
樹脂組成物を製造するには、ビニル重合体100質量部と、界面活性剤1〜20質量部と、水0.1〜20質量部とを、溶融混練装置で混練した後、ビニル重合体のガラス転移温度以下に冷却すればよい。
樹脂組成物は、その100質量部に対して、水35〜10000質量部に溶解させることにより樹脂エマルジョンとすることができる。
樹脂エマルジョンは、粘着剤や接着剤、塗料、インキ、コーティング剤として用いることができ、これらは、粘着テープや粘着シート、粘着フィルムの材料や、紙やプラスチックフィルム、セメント、モルタルおよび金属などへの表面被覆剤として用いることができる。
【発明の効果】
【0015】
特殊な設備を要さずとも樹脂エマルジョンが得られる、エマルジョン前駆体ともいうべき固形状の樹脂組成物、および、この樹脂組成物と水からなる樹脂エマルジョンを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の樹脂組成物は、ビニル重合体と界面活性剤と水とを、特定の組成および特定の条件にて混練して得られるものであって、ビニル重合体が平均粒子径0.1〜1.0μmの分散相として、界面活性剤と水とが混合した連続相を介して隣接した固形状の組成物である。
【0017】
樹脂組成物の原料として用いられるビニル重合体は、ガラス転移温度0〜140℃かつ重量平均分子量300〜10000以下のものであり、例えば、石油樹脂としての、C5留分系石油樹脂、C9留分系石油樹脂、C5およびC9留分系共重合石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、スチレン系石油樹脂、水添石油樹脂など、ロジン樹脂としての、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、ロジンフェノール樹脂、不均化ロジン樹脂、水添ロジン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂など、テルペン樹脂としての、α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水添テルペン樹脂など、その他として、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロンインデン樹脂、ケトン樹脂などが好適に用いられる。
これらビニル重合体は、単体で用いてもよく2種類以上のものを併用してもよい。
【0018】
ガラス転移温度が140℃を超えるビニル重合体および、重量平均分子量が10000を超えるビニル重合体は高粘度のため、汎用の混練設備では、ビニル重合体を界面活性剤および水からなる連続相を均一に分散させることが困難であり、目的とした組成の樹脂組成物が得られない。
ガラス転移温度の好ましい範囲は100℃以下、重量平均分子量5000以下のものである。この範囲とすることにより、汎用設備にてビニル重合体を連続相中に均一に分散させることができ、得られる樹脂組成物も、より安定したものになる。
また、ガラス転移温度が0℃未満のビニル重合体および、重量平均分子量が300未満のビニル重合体は、常温で半固体や液体であるため、得られる樹脂組成物は固形状とならない。
【0019】
樹脂組成物中の分散相であるビニル重合体の平均粒子径は、0.1〜1.0μmの範囲とすることにより、樹脂組成物を水に溶解して得られる樹脂エマルジョンの貯蔵安定性が向上するため好ましい。
樹脂組成物中のビニル重合体の平均粒子径は、選択するビニル重合体の種類や、これを混練する装置のせん断力によって調整することができる。すなわち、平均分子量の小さいビニル重合体を選択し、せん断力を大きくして界面活性剤および水の分散を促進させることにより、樹脂組成物中のビニル重合体の平均粒子径を小さくすることができる。
また、選択する界面活性剤の種類や量によっても調整が可能である。
例えば、界面活性剤の配合量を多くすることにより、樹脂組成物中のビニル重合体の平均粒子径を小さくすることができ、反対に、その配合量を少なくすることにより平均粒子径を大きくすることができる。
【0020】
樹脂組成物中の界面活性剤と水とが混合した連続相は、樹脂組成物中の分散相であるビニル重合体の樹脂粒子を包むように連続して存在している必要がある。そのようにするための手段としては、特に限定するものではないが、例えば、ヘンシェルミキサーなどのブレンダーにより、一旦、ビニル重合体、界面活性剤および水を混合した後、これを単軸押出機や二軸押出機、ニーダー、バンバリミキサー、プラネタリーミキサー、混練ロールなどを用いて混練すればよい。混練装置は、密閉機構を有する設備を用いるか、混練部内温度を100℃以下に設定し、配合した水が蒸発しない条件にて混練することが好ましい。
【0021】
界面活性剤は、水とともに樹脂組成物中でビニル重合体の樹脂粒子を包む連続相として存在するものである。さらに、樹脂組成物を水に溶解させた際に、ビニル重合体の樹脂粒子を水中に安定的に分散させるためのものである。界面活性剤は、特に限定されるものではなく、通常の乳化加工に使用されている陰イオン型界面活性剤、陽イオン型界面活性剤、非イオン型界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤、フッ素系界面活性剤、反応性界面活性剤など各種のものが使用できる。これら界面活性剤は、単独のみならず、複数のものを併用してもよい。
【0022】
これら界面活性剤の中でも、ビニル重合体に石油樹脂を用いる場合は、陰イオン型界面活性剤を使用すると、樹脂組成物中にて界面活性剤と水が容易に連続相を形成するため好ましい。陰イオン型界面活性剤としては、脂肪酸型、アルキルベンゼン型、硫酸エステル型、高級アルコール型等があり、例えば、高級脂肪酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等がある。
【0023】
また、ガラス転移温度が100℃以上の樹脂を用いる場合は、高温で分解しにくい非イオン型界面活性剤を使用することが好ましい。非イオン型界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシルエチレン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等がある。
【0024】
樹脂組成物の原料として用いられる界面活性剤の添加量は、ビニル重合体100質量部に対し、1〜20質量部、好ましくは2〜10質量部、より好ましいのは3〜8質量部である。界面活性剤の添加量が1質量部未満では得られた樹脂組成物の貯蔵安定性を向上させる効果が得られず、20質量部を超えて添加してしまうと、樹脂組成物を水に溶解して得られる樹脂エマルジョンを、粘着剤や接着剤などとして用いた際に、その耐水性が低下する。
【0025】
樹脂組成物の原料として用いられる水は、界面活性剤を介してビニル重合体の樹脂粒子同士の間に連続相として存在するものである。水は、特に限定するものではないが、蒸留水やイオン交換水などの純水を用いることが好ましい。
水の添加量は、ビニル重合体100質量部に対し、0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜5質量部の範囲とする。0.1質量部未満では得られた固形状の樹脂組成物を水に溶解させた際に安定した樹脂エマルジョンが得られず、20質量部を超えると樹脂組成物中に均一に分散し難くなる。
【0026】
樹脂組成物には、ビニル重合体に可塑化効果を与えて混練作業を容易にするために、一般的に用いられる可塑剤を添加してもよい。可塑剤としては、例えばフタル酸エステル系、アジピン酸エステル系、リン酸エステル系、トリメリット酸エステル系、クエン酸エステル系、エポキシ系、ポリエステル系などが挙げられる。
【0027】
可塑剤の添加量は、ビニル重合体100質量部に対し、40質量部以下、好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下の範囲にすると、得られる樹脂組成物の性質を阻害しないため好ましい。
【0028】
樹脂組成物には、混練工程において、さらに、所望の安定剤、酸化防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、染料、架橋剤、充填剤、可塑剤、架橋促進剤などを配合することも出来る。
【0029】
ビニル重合体、界面活性剤、水および必要に応じて添加する添加剤を混練して得られた固形状の樹脂組成物の形状は、特に限定するものではないが、押出機で混練してストランド状に押出成形し、ペレット状に切断して樹脂ペレットのような小粒状とすることにより、水と混合し樹脂エマルジョンとする際の溶解時間が短縮できる。
樹脂組成物をペレット状に切断するための装置としては、例えば、公知のストランドカット方式、ホットカット方式などのものがある。
ストランドカット方式とは、押出成形機にてストランド状に押し出された混練物を冷却し、ペレタイザーへ導いてペレット状に切断して回収する方法である。
ホットカット方式とは、押出成形機にてストランド状に押し出された混練物を、押出成形機先端に取り付けられたロータリーカッターにてペレット状に切断して回収する方法である。
【0030】
いずれの方法でペレット化する場合でも、押出成形機から押し出されたストランド状の樹脂組成物は、使用したビニル重合体のガラス転移温度以下の温度まで冷却することが望ましい。
冷却することでストランド全体を固化させて、分散させたビニル重合体の微粒子同士が再結合することを防止できる。これにより、貯蔵安定性に優れた固形状の樹脂組成物を得ることができる。この樹脂組成物は、長期間保管した後も水に溶解させて安定した樹脂エマルジョンが得られる。
また、樹脂組成物を樹脂ペレットとする他の方法として、ニーダーやバンバリミキサー、押出機などで混練した後、2本ロール等で板状にした後にダイサーで樹脂ペレットとする方法もある。
この場合でも、2本ロール等で板状にした後、もしくは樹脂ペレットとした後に樹脂組成物をガラス転移温度以下の温度まで冷却することが望ましい。
【0031】
樹脂組成物は、水中に投入して静置しただけで樹脂エマルジョンにすることができる。さらに、水中に投入した後に混合撹拌することで溶解時間を短縮することができる。混合撹拌する際の装置は、公知の装置を使用でき、特に限定されるものではないが、マグネチックスターラー、スリーワンモーター、ホモジナイザー、メディアミル、コロイドミル、ホモミキサー、プラネタリーミキサー、インラインミキサー、パイプラインミキサー等がある。
【0032】
樹脂組成物を水に溶解させる際の水温は、特に制限されるものではなく、使用目的に応じて任意に変えることが出来る。
【0033】
樹脂組成物を溶解させる水には、本発明の効果を損なわない範囲で各種の添加剤を加えることが出来る。添加剤としては例えば、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、光安定剤およびpH調整剤等がある。
【0034】
得られた樹脂エマルジョンには、必要に応じて、消泡剤や防腐剤、防黴剤、防錆剤、浸透性調整剤、粘度粘性調整剤、pH調整剤、難燃剤、分散剤、無機フィラー、珪砂等の骨材、顔料等、各種の添加剤や他の乳化物を添加することが出来る。さらに、ヒドロキシエチルセルロースやメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースといった水溶性高分子、従来既知の陰イオン型、陽イオン型または非イオン型界面活性剤を添加してもよい。
【0035】
樹脂エマルジョンは、合成樹脂や合成ゴムの乳化物やその他の乳化物、添加剤などと混合することによって、粘着剤や接着剤、塗料、インキ、コーティング剤とすることができる。合成樹脂や合成ゴムとしては、特に限定するものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリオキサジアゾール、ポリピラゾール、ポリキノキサリン、ポリキナゾリンジオン、ポリベンズオキサジノン、ポリインドロン、ポリキナゾロン、ポリインドキシル、シリコン樹脂、シリコン−エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、ポリアミノビスマレイミド、ジアリルフタレート樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ナイロン系樹脂、アモルファスナイロン等のポリアミド、ポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル、ポリスルホン、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、マレイミド変性樹脂、ABS樹脂、AAS(アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル−エチレン・プロピレン・ジエンゴム−スチレン)樹脂等の樹脂類、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、ポリエステルエラストマー、ポリブタジエン、クロロプレン、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレン等のエラストマー類、エラストマーを主成分としたアクリル酸やスチレン、アクリロニトリルなどの単量体を重合させた樹脂などがある。
【0036】
粘着剤や接着剤、塗料、インキ、コーティング剤には、その他必要に応じて各種添加剤が含有される。このような添加剤としては特に限定されないが、例えば、消泡剤や防腐剤、防黴剤、防錆剤、浸透性調整剤、粘度粘性調整剤、老化防止剤、増粘剤、難燃剤、分散剤、無機フィラー、珪砂等の骨材、顔料等がある。さらに必要に応じてヒドロキシエチルセルロースやメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースといった水溶性高分子、従来既知の陰イオン型、陽イオン型または非イオン型界面活性剤を使用しても良い。
【0037】
粘着剤及び接着剤は、紙、木材、布、皮、ジャージ、革、ゴム、プラスチック、フォーム、陶器、ガラス、モルタル、セメント材料、セラミック、金属などの同種、あるいは異種の接合接着用として好適である。接着時の施工方法に関しては、刷毛塗り、コテ塗り、スプレー塗布、ロールコーター塗布などが可能である。
【0038】
塗料およびインキ、コーティング剤は、紙、木材、布、革、ゴム、プラスチック、フォーム、陶器、ガラス、モルタル、セメント材料、セラミック、金属などの表面被覆剤として利用することができる。また、これら紙などの基材表面への塗工方法としては、刷毛塗り、コテ塗り、浸漬、スプレー塗布、ロールコーター塗布などが可能である。
【0039】
得られた粘着剤を支持体に塗工し乾燥させることで粘着テープ、粘着シートおよび粘着フィルムなどを得ることができる。
【0040】
支持体は、例えばポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂等のプラスチック製のシートおよび発泡体、和紙、クラフト紙、コート紙、上質紙、合成紙、布、不織布等の多孔質物質や、それらの複合体や多層積層体等が挙げられる。
【0041】
支持体の表面には、下塗剤を塗工やコロナ処理をしておくこともできる。また、粘着剤組成物の粘着力調整のために、粘着剤塗布背面に剥離剤を塗工することもできる。
【0042】
粘着テープ、粘着シートおよび粘着フィルムは、支持体に粘着剤を塗布して乾燥させ、所定の寸法に切断することにより完成する。支持体に粘着剤を塗工する方式としては、例えばダイレクトグラビア方式、リバースダイレクトグラビア方式、オフセットグラビア方式、ナイフコーター、ロールコーター、コンマコーター、リップコーター、ダイコーターなどが挙げられる。また、下塗剤及び剥離剤の塗工も同様の方式にて行える。
【0043】
粘着剤層の厚みは、特に限定するものではないが、例えば1〜100μm、好ましくは10〜50μmの範囲にすると、必要な粘着力が発現されるとともに、塗工性能や乾燥性が良好になるため好ましい。
【実施例】
【0044】
[実施例1]
ビニル重合体としての石油樹脂(ガラス転移温度35℃、重量平均分子量2400、商品名U−185;日本ゼオン社製)100部と界面活性剤としてのアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩(商品名ペレックスSS−H;花王社製陰イオン型界面活性剤)成分5.0部および蒸留水5.0部を、シリンダ温度90℃設定のベント付き二軸溶融押出機(TEX−30α;日本製鋼所製)100rpmにて混練を行った後、ダイスから98℃にて吐出された混練物を、樹脂温度が30℃以下になるまで冷却してストランドを得た。ストランドの含水率をカールフィッシャー水分計(MKC−210;京都電子)にて測定し、水配合量を算出した。得られたストランドをストランドカット方式にてペレット状に切断し、樹脂組成物を得た。
こうして得られた樹脂組成物は固形状のものであり、通常の紙袋やポリオレフィン製袋などで梱包、貯蔵及び搬送ができた。
[ガラス転移温度]
JIS K7121 9.3に準じて測定し、補外ガラス転移開始温度を算出した。
[重量平均分子量]
下記記載のサイズ排除クロマトグラフィー測定条件にて重量平均分子量を測定した。
装置名:SYSTEM−21 Shodex(昭和電工社製)
カラム:PL gel MIXED−Bを3本直列
温度:40℃
検出:示差屈折率
溶媒:テトラハイドロフラン
濃度:2質量%
検量線:標準ポリスチレン(PS)(PL社製)を用いて作製し、重量平均分子量はPS換算値で表した。
[乳化性]
樹脂組成物ペレット100部を25℃の蒸留水100部に投入して1時間静置することで白色の樹脂エマルジョンが得られる。この樹脂エマルジョンの不揮発分を、JIS K6828−1に準拠して算出した。測定は、次の手順によって行った。樹脂組成物ペレットの不溶分を含まない樹脂エマルジョン1.0gを平底皿にはかり取り、105℃のオーブン(ACRギヤー・オーブン;東洋精機製作所製)にて1時間乾燥させ、乾燥後の残留分をはかり、一般式(数1)にて算出した。評価は、不揮発分が45%以上のものを優、不揮発分15%以上45%未満のものを良、不揮発分15%未満のものを不可とした。
【数1】

(式中、Nは不揮発分(%)、mは平底皿の質量(g)、mは平底皿と試料との合計質量(g)、mは平底皿と蒸発残留分との合計の質量(g)を表す。)
[平均粒子径]
レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置 LA-920( 株式会社堀場製作所社製)を用いレーザ回折法で樹脂エマルジョン中の樹脂粒子のメジアン径測定を実施した。評価は、平均粒子径と樹脂エマルジョンの安定性の関係を考慮し、0.5μm以下のものを優、0.5〜1.0μmのものを良、1.0μmを超えるものを不可とした。
[樹脂組成物の貯蔵安定性]
ペレット状の樹脂組成物をガラス瓶に入れて密栓し、23℃のオーブン中で2ヶ月貯蔵したサンプルについて貯蔵安定性試験を実施した。試験は、2ヶ月貯蔵したサンプルを上記乳化性の試験と同様の手順で不揮発分を算出した。評価は、不揮発分が40%以上のものを優、不揮発分15%以上40%未満のものを良、不揮発分15%未満のものを不可とした。
[樹脂エマルジョンの貯蔵安定性]
樹脂エマルジョンをガラス瓶に入れて密栓し、40℃のオーブン中で4週間貯蔵し、貯蔵安定性評価を実施した。評価は分離無しかつ平均粒子径変化無いものを優、分離無く平均粒子径変化あるものを良、分離のあるものを不可とした。
【0045】
[実施例2]
実施例1で使用した界面活性剤をドデシルベンゼンスルホン酸塩(商品名ネオペレックスG−65;花王社製陰イオン型界面活性剤)に変更した以外は、実施例1と同様に試験を実施し、実施例2とした。なお、吐出時の樹脂温度は97℃であった。
【0046】
[実施例3]
実施例1で使用した界面活性剤を非イオン型界面活性剤(商品名エマルゲン123P;花王社製)に変更した以外は、実施例1と同様に試験を実施し、実施例3とした。なお、吐出時の樹脂温度は96℃であった。
【0047】
[実施例4]
実施例1で使用した界面活性剤を陽イオン型界面活性剤(商品名コータミン24P;花王社製)に変更した以外は、実施例1と同様に試験を実施し、実施例4とした。なお、吐出時の樹脂温度は99℃であった。
【0048】
[実施例5]
実施例1の蒸留水配合量を5部に変更した以外は、実施例1と同様に試験を実施し、実施例5とした。なお、吐出時の樹脂温度は94℃であった。
【0049】
[実施例6]
実施例1の界面活性剤量を1.0部に変更した以外は、実施例1と同様に試験を実施し、実施例6とした。なお、吐出時の樹脂温度は101℃であった。
【0050】
[実施例7]
実施例1の界面活性剤量を3.0部に変更した以外は、実施例1と同様に試験を実施し、実施例6とした。なお、吐出時の樹脂温度は99℃であった。
【0051】
[実施例8]
実施例1の界面活性剤量を8.0部に変更した以外は、実施例1と同様に試験を実施し、実施例6とした。なお、吐出時の樹脂温度は96℃であった。
【0052】
[実施例9]
実施例1の界面活性剤量を10部に変更した以外は、実施例1と同様に試験を実施し、実施例6とした。なお、吐出時の樹脂温度は95℃であった。
【0053】
[実施例10]
実施例1の界面活性剤量を20部に変更した以外は、実施例1と同様に試験を実施し、実施例7とした。なお、吐出時の樹脂温度は95℃であった。
【0054】
[実施例11]
実施例1の蒸留水配合量を0.5部に変更した以外は、実施例1と同様に試験を実施し、実施例5とした。なお、吐出時の樹脂温度は99℃であった。
【0055】
[実施例12]
実施例1で使用した熱可塑性樹脂を石油樹脂(ガラス転移温度42℃、重量平均分子量1400、商品名エスコレッツ2101;エクソンモービル社製)に変更した以外は、実施例1と同様に試験を実施し、実施例9とした。なお、吐出時の樹脂温度は105℃であった。
【0056】
[実施例13]
実施例1で使用した熱可塑性樹脂を石油樹脂(ガラス転移温度軟化点65℃、重量平均分子量4100、商品名G−115;日本ゼオン社製)に変更した以外は、実施例1と同様に試験を実施し、実施例10とした。なお、吐出時の樹脂温度は120℃であった。
【0057】
[実施例14]
実施例1で使用した熱可塑性樹脂を水添石油樹脂(ガラス転移温度50℃、重量平均分子量1500、商品名P−100;荒川化学工業社製)に変更した以外は、実施例1と同様に試験を実施し、実施例11とした。なお、吐出時の樹脂温度は98℃であった。
【0058】
[実施例15]
実施例1で使用した熱可塑性樹脂をテルペン樹脂(ガラス転移温度50℃、重量平均分子量1200、商品名PX−1000;ヤスハラケミカル社製)に変更した以外は、実施例1と同様に試験を実施し、実施例12とした。なお、吐出時の樹脂温度は102℃であった。
【0059】
[実施例16]
実施例1で使用した熱可塑性樹脂を重合ロジンエステル(ガラス転移温度112℃、重量平均分子量2000、商品名D−160;荒川化学工業社製)に変更し、可塑剤であるジイソノニルフタレート(DINP;ジェイ・プラス社製)を20部添加した以外は、実施例1と同様に試験を実施し、実施例12とした。なお、吐出時の樹脂温度は119℃であった。
【0060】
[比較例1〜2]
実施例1の蒸留水配合量を表3に示す量に変更した以外は、実施例1と同様に試験を実施し、比較例1〜2とした。
【0061】
[比較例3〜4]
実施例1の界面活性剤量を表3に示す量に変更した以外は、実施例1と同様に試験を実施し、比較例3〜4とした。
【0062】
[比較例5]
98℃にて石油樹脂(軟化点85℃、商品名U−185;日本ゼオン社製)100部を溶融させ、95℃に熱したアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩(商品名ペレックスSS−H;花王社製陰イオン型界面活性剤)5%水溶液100部を混合し、アンカー翼にて予備分散させた後、ホモミキサー(TKホモミキサー:プライミクス株式会社)にて5000rpmの高せん断を10分あたえ、機械的に分散させた乳化物を比較例5とした。なお、固形状にて回収出来ないため、樹脂組成物の貯蔵安定性評価は行っていない。
【0063】
[比較例6]
実施例1の界面活性剤をポリビニルアルコール(日本合成化学工業社製:ゴーセノールKH-20)に変更した以外は、実施例1と同様に試験を実施し、比較例6とした。
【0064】
表1〜表3から判る通り、本発明の樹脂組成物は、貯蔵安定性が良好で、特殊な設備を要さずとも樹脂エマルジョンとすることができる。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
表1〜表3中、熱可塑性樹脂の詳細は表4に、界面活性剤の詳細は表5にそれぞれ記載した。
【0069】
【表4】

【0070】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度0〜140℃かつ重量平均分子量300〜10000のビニル重合体100質量部と、界面活性剤1〜20質量部と、水0.1〜20質量部とを含有する固形状の樹脂組成物。
【請求項2】
ビニル重合体が、平均粒子径0.1〜1.0μmの分散相として、界面活性剤と水とが混合した連続相を介して隣接していることを特徴とする請求項1に記載した固形状の樹脂組成物。
【請求項3】
ビニル重合体が、石油樹脂、ロジン樹脂、テルペン樹脂から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1または2に記載した固形状の樹脂組成物。
【請求項4】
ビニル重合体100質量部と、界面活性剤1〜20質量部と、水0.1〜20質量部とを、混練装置で混練した後、ビニル重合体のガラス転移温度以下に冷却することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
ビニル重合体が、石油樹脂、ロジン樹脂、テルペン樹脂から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項4に記載した固形状の樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか一項に記載した樹脂組成物100質量部を、水35〜10000質量部に溶解して得られる樹脂エマルジョン。
【請求項7】
請求項6記載の樹脂エマルジョンを用いて得られた粘着剤。
【請求項8】
請求項6記載の樹脂エマルジョンを用いて得られた接着剤。
【請求項9】
請求項6記載の樹脂エマルジョンを用いて得られた塗料。
【請求項10】
請求項6記載の樹脂エマルジョンを用いて得られた印刷インキ。
【請求項11】
請求項6記載の樹脂エマルジョンを用いて得られたコーティング剤。
【請求項12】
請求項7記載の粘着剤または請求項8記載の接着剤を用いて得られた粘着テープ。
【請求項13】
請求項7記載の粘着剤または請求項8記載の接着剤を用いて得られた粘着シート。
【請求項14】
請求項7記載の粘着剤または請求項8記載の接着剤を用いて得られた粘着フィルム。

【公開番号】特開2009−126983(P2009−126983A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305292(P2007−305292)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】