説明

樹脂部品、樹脂部品からなるプロセスカートリッジ及び樹脂部品からなるプロセスカートリッジを備えた画像形成装置

【課題】超音波溶着の振動方向に対して直交する平坦部と直交しない傾斜部のいずれにおいても、適正な溶着幅を確保することができる樹脂部品、トナー漏れを防止することができるプロセスカートリッジ及びそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】複数の直線又は曲線からなる溶着ライン36を有し、振動溶着により他の樹脂部品33と溶着可能な被溶着部32rを前記溶着ライン36上に備える樹脂部品32において、溶着ライン36は、振動溶着時の振動方向に対して直交する平坦部32a,32c,32eと、振動方向に対して直交しない傾斜部32b,32dとを有し、傾斜部32b,32dの被溶着部32Nの溶着断面積が、平坦部32a,32c,32eの被溶着部32rの溶着断面積よりも小さくなるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂部品、樹脂部品からなるプロセスカートリッジ及び樹脂部品からなるプロセスカートリッジを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の熱可塑性樹脂からなり、超音波溶着により溶着される樹脂部品が多数使用されている。例えば、画像形成装置においても、そのような樹脂部品がトナー等の現像剤を供給するプロセスカートリッジに利用されている。樹脂部品は、超音波溶着により溶着するために溶着ラインを有している。
【0003】
超音波溶着は、溶着ホーンにより熱可塑性樹脂に微細な超音波振動と加圧力を与えて瞬時に溶融し接合する加工技術である。図8に示すように、カートリッジ本体100と蓋101からなるプロセスカートリッジでは、溶着ホーン102を予めカートリッジ本体100に嵌合した蓋101の上面に当て、矢印(上から下)の方向へ加圧しながら、超音波振動により上下方向に振動させる。超音波振動によりカートリッジ本体100と蓋101の間の接合面は摩擦や圧縮の繰り返しを受けて発熱し溶着する。
【0004】
一般に、プロセスカートリッジの形状は、画像形成装置の構造に応じて設計されるため、プロセスカートリッジの溶着ラインは、例えば、図9(a)に示すように、超音波溶着時の振動方向と直交する部分101a,101c,101e(以下、平坦部という。)と直交しない部分101b,101d(以下、傾斜部という。)を有する。平坦部101aのA−A線断面、傾斜部101bのB−B線断面、平坦部101cのC−C線断面、傾斜部101dのD−D線断面及び平坦部101eのE−E線断面は、いずれも図9(b)に示すような形状で、その断面積は同じである。
【0005】
溶着ホーン102の加圧方向は一方向であるので、平坦部101a,101e及び傾斜部101b,101dに加えられる圧力は異なる。加圧力の大きさは、被溶着部101rを溶かすエネルギーの量に関係する。
【0006】
超音波溶着により被溶着部101rを溶融するエネルギーE(J)は一般的に以下のように表される。
エネルギーE(J)=パワーP(W)×振動時間T(sec)
パワーP(W)=加圧力F(N)×振動速度V(m/s)
振動速度V(m/s)=周波数f(1/s)×振幅A(m)×2
【0007】
図8に示すように、溶着ホーン102を上下方向に振動させると、図10(a)に示すように、平坦部101e及び傾斜部101dへ力F(N)が加えられる。平坦部101eと傾斜部101dのなす角度をθ(0<θ<90°)とすると、平坦部101eに直交する方向に加えられる力はF(N)であるが、傾斜部101dに直交する方向に加えられる力は、Fcosθ(N)となる。図10(b)に示すように、平坦部101e及び傾斜部101dは振幅A(m)で振動する。振幅は、平坦部101eに直交する方向では、A(m)であるが、傾斜部101dに直交する方向では、Acosθ(m)となる。
【0008】
振動数(周波数)fで振動する場合、平坦部101e及び傾斜部101dに加えられるエネルギーを比較すると、平坦部101eでは、パワーPは、F×f×A×2=2fAF(W)であり、エネルギーEは、F×f×A×2×T=2fAFT(J)である。傾斜部101dでは、パワーPは、Fcosθ×f×Acosθ×2=2fAFcosθ(W)であり、エネルギーEは、Fcosθ×f×Acosθ×2×T=2fAFTcosθ((J)である。以上より、傾斜部101dへ与えられるエネルギーの量は、平坦部101eへ与えられるエネルギーの量にcosθを乗じた値であることがわかる。よって、0<θ<90°の条件では、0<cosθ<1であるため、傾斜部101dへ与えられるエネルギーの量の方が、平坦部101eへ与えられるエネルギーの量よりも少なくなり、図9(b)のように、平坦部101eと傾斜部101dの被溶着部101rの断面積が同じ場合には、平坦部101eよりも傾斜部101dの方が被溶着部101rの溶ける量が少なくなる。
【0009】
そのため、平坦部101a,101eで適正な溶着量を確保する、すなわち、平坦部101a,101eにおいて、被溶着部103全てをちょうど溶融するのに必要なエネルギーが与えられる条件の場合(図11(a))、傾斜部101b,101dでは被溶着部101rを完全に溶融させることができない(図11(b))。被溶着部101rが完全に溶融していない状態では、溶融した樹脂は、被溶着部104の周囲を密着させるのみ(図11(b)の斜線部)である。そのため、適正な溶着量が確保されず、落下などの衝撃を受けた場合、隙間が生じてしまい、トナー漏れが発生した。また、傾斜部101b,101dにおいて溶着隙間が広くなることから、平坦部101c、平坦部101aの傾斜部101bに近い部分及び平坦部101eの傾斜部101dに近い部分においても溶着隙間が広くなる。これにより、溶着幅が狭くなり、落下などの衝撃を受けた場合、トナー漏れが発生した。逆に、傾斜部101b,101dにおいて適正な溶着量を確保した場合には、平坦部101a,101eでは被溶着部101r全てを溶融するエネルギーよりも過剰なエネルギーが加えられることになる。そのため、被溶着部101r以外の部分も溶融してしまい、溶融した部分が外側にはみ出る、いわゆるバリが発生する不具合が生じた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、超音波溶着の振動方向に対して直交する平坦部と直交しない傾斜部のいずれにおいても、適正な溶着幅を確保することができる樹脂部品、トナー漏れを防止することができるプロセスカートリッジ及びそれを備えた画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段として、本発明の樹脂部品は、複数の直線又は曲線からなる溶着ラインを有し、振動溶着により他の樹脂部品と溶着可能な被溶着部を前記溶着ライン上に備える樹脂部品において、前記溶着ラインは、振動溶着時の振動方向に対して直交する平坦部と、振動方向に対して直交しない傾斜部とを有し、前記傾斜部の被溶着部の溶着断面積が、前記平坦部の被溶着部の溶着断面積よりも小さくなるようにしている。
【0012】
この構成によれば、樹脂部品が有する複数の直線又は曲線からなる溶着ラインの、振動溶着時の振動方向に対して直交しない傾斜部の被溶着部の溶着断面積を、振動方向に対して直交する平坦部の被溶着部の溶着断面積よりも小さくすることにより、振動により加えられるエネルギーの量が平坦部よりも少ない傾斜部において、被溶着部が溶融せずに残ってしまうことを回避して振動溶着を行うことができる。本発明における溶着ラインとは、一対の樹脂部品を溶着して接合した際の、溶着した部分において両樹脂部品の境界がなすラインである。但し、一方の樹脂部品における溶着ラインは、溶着したときに境界となる部分がなすラインを指す。
【0013】
前記平坦部の被溶着部と前記傾斜部の被溶着部のなす角度をθ(0<θ<90°)、前記平坦部の被溶着部の溶着断面積をS1としたときに、前記傾斜部の被溶着部の溶着部断面積S2がS2=S1×cosθを満たすことが好ましい。この構成により、傾斜部の被溶着部の溶着部断面積S2がS2=S1×cosθを満たすようにすれば、それぞれ異なるエネルギーが加えられる平坦部と傾斜部に対して、それぞれ最適な状態で溶融させることができる。
【0014】
前記平坦部の被溶着部の幅よりも前記傾斜部の被溶着部の幅の方が狭くなるようにすることが好ましい。この構成によれば、振動により加えられるエネルギーの量が平坦部よりも少ない傾斜部において、傾斜部の被溶着部の幅を平坦部の被溶着部の幅より狭くなるようにすることにより、より確実に傾斜部の被溶着部を溶融させることができる。
【0015】
前記平坦部の被溶着部の高さよりも前記傾斜部の被溶着部の高さの方が低くなるようにすることが好ましい。この構成によれば、振動により加えられるエネルギーの量が平坦部よりも少ない傾斜部において、傾斜部の被溶着部の高さを平坦部の被溶着部の高さより低くなるようにすることにより、より確実に傾斜部の被溶着部を溶融させることができる。
【0016】
前記傾斜部の被溶着部の断面形状が、前記平坦部の被溶着部の断面形状と相似であることが好ましい。この構成によれば、振動により加えられるエネルギーの量が平坦部よりも少ない傾斜部において、傾斜部の被溶着部の断面形状を平坦部の被溶着部の断面形状と相似にすることにより、より少ないエネルギーに起因する溶融不具合の発生を回避することができる。
【0017】
前記被溶着部がリブであることが好ましい。この構成によれば、被溶着部の形状が容易に把握でき、所望の設計を行うことができる。
【0018】
前記課題を解決するための手段として、本発明のプロセスカートリッジは、請求項1乃至請求項6に記載の樹脂部品からなるようにしている。この構成によれば、超音波溶着の振動方向に対して直交する平坦部と直交しない傾斜部を有していても、確実に振動溶着を行うことができ、適正な溶着幅を確保し、トナー漏れを防止することができる。
【0019】
前記樹脂部品が、複数の直線又は曲線からなる第1溶着ラインと、前記第1溶着ライン上に被溶着部とを有する第1樹脂部品であって、前記第1溶着ラインの形状に対応する形状の第2溶着ラインを有する第2樹脂部品と前記第1樹脂部品とが溶着されてなる結合樹脂部品からなることが好ましい。この構成によれば、複数の直線又は曲線からなる第1溶着ライン上に被溶着部を有する第1樹脂部品が、第1溶着ラインの形状に対応する形状の第2溶着ラインを有する第2樹脂部品に対して確実に溶着が行われる。
【0020】
前記課題を解決するための手段として、本発明の画像形成装置は、請求項7又は請求項8に記載のプロセスカートリッジを備えるようにしている。この構成によれば、超音波溶着の振動方向に対して直交する平坦部と直交しない傾斜部を有していても、確実に振動溶着を行うことができ、適正な溶着幅を確保し、トナー漏れを防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、樹脂部品、樹脂部品からなるプロセスカートリッジ及びそのプロセスカートリッジを備えた画像形成装置が、超音波溶着の振動方向に対して直交する平坦部と直交しない傾斜部を有する場合において、それらのいずれにおいても、被溶着部全体を溶融することにより、適正な溶着幅を確保し、トナー漏れを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0023】
まず、図1を参照して画像形成装置の一例についてその構成及び画像形成動作の概略を説明する。この画像形成装置10は、フルカラーのレーザプリンタとして構成したもので、従来周知の感光ドラム11、レーザ走査光学装置12、現像装置13、中間転写ベルト14、定着装置15、給紙カセット16及び排紙トレイ17等を備えている。そして、感光ドラム11の周囲に、ブラシ帯電装置18、現像装置13、1次転写ローラ19及びトナーのクリーニング装置20が配置されている。
【0024】
レーザ走査光学装置12は、光源としてのレーザダイオード、偏向手段としてのポリゴンミラー及びfθ光学素子等を内蔵した周知のもので、その制御部にはY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)ごとの印字データがホストコンピュータ(図示せず)から転送される。レーザ走査光学装置12は各色ごとの印字データに基づいて順次レーザビームを変調させ、感光ドラム11上を走査露光する。
【0025】
感光ドラム11は、矢印A方向に回転駆動され、以下に詳述するブラシ帯電装置18にて所定の表面電位に均一に帯電され、レーザ走査光学装置12のレーザビームの走査露光によって静電潜像が順次形成される。
【0026】
現像装置13は、Y,M,C,Kの各色のトナーを内蔵した色別現像器13Y,13M,13C,13Kを一体的にユニット化し、支軸13aを支点として矢印B方向に回転可能である。この現像装置13は感光ドラム11上に各色に対応する静電潜像が形成されるごとに、対応する色のトナーを内蔵した現像器が現像領域へ配置されるように回転駆動され、静電潜像を所定の色のトナーで現像する。
【0027】
各現像器13Y,13M,13C,13Kは、例えば、1成分非磁性トナーを用いた非接触現像方式によるもので、いわゆる反転現像が行われる。即ち、トナーは感光ドラム11の帯電極性と同極性に帯電されており、露光によって電位が低下した画像部に付着する。現像器の構成及び現像作用については以下に詳述する。
【0028】
中間転写ベルト14は回転自在な1次転写ローラ19や支持ローラ21を含むローラ群に無端状に張り渡され、矢印C方向に回転駆動可能とされている。そして、1次転写ローラ19に1次転写電圧を印加することにより、感光ドラム11上に形成されたトナー像が中間転写ベルト14上に1次転写される。この1次転写によって各色のトナー像が重ね合わされてフルカラーの画像となる。
【0029】
また、中間転写ベルト14には支持ローラ21で支持されている部分に2次転写ローラ22が回転自在に圧接されている。そして、用紙が中間転写ベルト14と2次転写ローラ22との間を通過する際、2次転写ローラ22に2次転写電圧を印加することにより、フルカラーのトナー像が用紙上に2次転写される。
【0030】
給紙カセット16からは給紙ローラ23によって用紙が1枚ずつ送り出され、該用紙はタイミングローラ24によって前記中間転写ベルト14上のトナー像と同期をとって2次転写位置へ搬送される。
【0031】
用紙上に2次転写されたトナー像は定着装置15で加熱定着され、該用紙は排出ローラ25にてトレイ17上に排出される。
【0032】
なお、フルカラーの画像形成装置としては種々の基本形態があり、図1に示したレーザプリンタは一つの感光ドラム11の周囲に四つの現像器13Y,13M,13C,13Kを配置した4サイクル型である。しかし、本発明に係る画像形成装置は4サイクル型以外にも、四つの感光ドラムを中間転写ベルトに沿って並置したタンデム型など他の形態を採用したものであってもよい。
【0033】
また、フルカラーのレーザプリンタに限らず、モノクロの画像形成装置に本発明を適用することも可能である。また、トナーのみからなる現像剤を使用する1成分現像あるいはトナーとキャリアとの混合物からなる2成分現像のいずれであっても、本発明を適用することが可能である。
【0034】
図2は、現像器13Y,13M,13C,13Kの具体的形態であるプロセスカートリッジ13X(樹脂部品)を示し、現像ローラ31等の部品が配置された内部に所定量のトナーも収納されている。プロセスカートリッジ13Xは、画像形成装置10内の所定位置に装填後、収納されている現像剤を感光ドラム11に供給して現像を行い、所定枚数の画像形成を行って現像剤がなくなると、画像形成装置10より取り外し、新しいプロセスカートリッジを装填する。
【0035】
図3は、蓋32とプロセスカートリッジ本体33とが分離した状態のプロセスカートリッジ13Xの側面図である。プロセスカートリッジ本体33のトナー供給孔34側の側面の上端は、トナー供給孔34と干渉しないよう一部分が上方に突出する突出部35を有している。また、プロセスカートリッジ本体33の突出部35に対応する蓋32の部分は、プロセスカートリッジ本体33の突出部35に嵌合するような形状になっている。プロセスカートリッジ本体33のトナー供給孔34側の側面の上端に対応する蓋32の短手方向側面は、現像ローラ31側からトナー供給孔34側へ向かって、第1平坦部32a、上方に傾斜する第1傾斜部32b、中央平坦部32c、下方に傾斜する第2傾斜部32d、第2平坦部32eの順に連続している。蓋32の他方の短手方向側面及び長手方向側面の外縁には、突出部分はなく平坦である。蓋32の下面の外縁付近には、蓋32をプロセスカートリッジ本体33に超音波溶着するために、リブ(被溶着部)32rが設けられている。図4は、蓋32とプロセスカートリッジ本体33とが分離した状態のプロセスカートリッジ13Xの下方斜視図である。なお、本形態でいう溶着ライン36とは、蓋32の平坦部32a,32e及び傾斜部32b,32dをプロセスカートリッジ13Xのトナー供給孔34側の側面から見た場合に、平坦部32a,32c,32e及び傾斜部32b,32dの上面又は底面が形成する線をいう。
【0036】
次に、本発明にかかるプロセスカートリッジ13Xの被溶着部32rの超音波溶着による樹脂成形について説明する。
【0037】
図8に示すものと同様に、蓋32をプロセスカートリッジ本体33に嵌合し、蓋32の上面から、超音波溶着用の溶着ホーンにより、加圧及び加振することにより、蓋32の下面のリブ32rが溶融し、蓋32がプロセスカートリッジ本体33に溶着される。
【0038】
振動方向が一方向である超音波溶溶着では、振動方向と被溶着部32rとの位置関係によって被溶着部32rに加えられるエネルギーが異なり、それにしたがって溶着の度合いが異なる。そのため、溶着ホーンにより加えられるエネルギーが過不足なく溶着として使用されるように被溶着部32rの断面積すなわち体積を最適化すれば、被溶着部32rを全て溶融させ、適正な溶着幅を確保し、トナー漏れを防止することができる。ここで、「断面積」(溶着断面積)は、被溶着部32rの延びる方向に垂直な断面における面積である。
【0039】
被溶着部32rの断面積の最適化は、次のようにする。図10に示したものと同様に、平坦部32eと傾斜部32dのなす角をθ(0<θ<90°)とすると、傾斜部32dに加えられるエネルギーは、平坦部32eに加えられるエネルギーにcosθを乗じた値であるから、傾斜部32dの被溶着部32rの断面積S2も、それに応じて平坦部32eの被溶着部32rの断面積S1にcosθを乗じた値にする。
【0040】
本実施形態では、図5に示すように、平坦部32a,32eの被溶着部32rに対して、傾斜部32b,32dの被溶着部32Nの高さhは変更せずに、幅をWaからWb(Wa>Wb)へと狭くすることにより断面積を小さくしている。本実施形態にて超音波溶着を行った場合の溶着後の形状を図6(a)及び図6(b)に示す。平坦部32a,32eで適正な溶着が行われる条件(図6(a))で溶着を行った場合に、傾斜部32b,32dでも被溶着部32Nの断面積すなわち体積を減少させたため、被溶着部32N全体を溶融することができる(図6(b))。その結果、得られる溶着幅は図6(a)及び図6(b)の斜線部分で示すように、平坦部32a,32eの被溶着部32rよりも狭くなるものの、落下などの衝撃を受けたときを含めて密閉性を確保するには十分なものになる。従って、樹脂部品からなるプロセスカートリッジ13X及びそのプロセスカートリッジ13Xを備えた画像形成装置10は、超音波溶着の振動方向に対して直交する平坦部32a,32c,32eと直交しない傾斜部32b,32dを有する場合において、それらのいずれにおいても、被溶着部32r,32N全体を溶融することにより、適正な溶着幅を確保し、トナー漏れを防止することができる。
【0041】
本発明は実施形態に限定されず、以下に列挙するように種々の変形が可能である。例えば、図7(a)及び図7(b)に示すように、傾斜部32b,32dの被溶着部の断面積S2も平坦部32a,32eの被溶着部32rの断面積S1にcosθを乗じた値で、かつ、被溶着部32Sが相似形(図7(a))であるか、又は、被溶着部32Lが高さを小さくしたもの(図7(b))であってもよい。これらのような別実施形態であっても、溶着後はリブ全体が溶けて十分な溶着幅を確保できる。また、本実施形態では、平坦部32a,32e及び傾斜部32b,32dをプロセスカートリッジ13Xの側面から見た場合に、平坦部32a,32c,32e及び傾斜部32b,32dの上面及び底面を形成する線が略直線であるものを例示したが、これだけに限定されず、蓋32及びプロセスカートリッジ本体33の側面から見た場合、第1平坦部32a、第1傾斜部32b、中央平坦部32c、第2傾斜部32d、第2平坦部32eの各部の上面及び底面を形成する線が、曲線であってもよい。この場合、蓋32及びプロセスカートリッジ本体33の側面から見た平坦部32a,32c,32eの被溶着部32rと傾斜部32b,32dの被溶着部32Nのなす角度θ(0<θ<90°)は、平坦部32a,32eの上面又は底面を形成する曲線の接線と、傾斜部32b,32dの上面又は底面を形成する曲線の接線とにより形成される角度である。また、本発明に係る樹脂部品32,33が、画像形成装置10のプロセスカートリッジ13Xとして利用された例を示したが、これだけに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る樹脂部品がプロセスカートリッジとして取り付けられる画像形成装置の全体構成の一例を示す概略図。
【図2】プロセスカートリッジの上方斜視図。
【図3】蓋とプロセスカートリッジ本体とが分離した状態のプロセスカートリッジの側面図。
【図4】蓋とプロセスカートリッジ本体とが分離した状態のプロセスカートリッジの下方斜視図。
【図5】図5(a)は本実施形態における平坦部の被溶着部の断面形状を示す図、図5(b)は本実施形態における平坦部の被溶着部の断面形状により決定される断面積に対して最適な傾斜部の被溶着部の断面積を有する断面形状のうち、平坦部の被溶着部の幅より傾斜部の被溶着部の幅の方が狭くなっている傾斜部の被溶着部の断面形状を示す図。
【図6】図6(a)は図5(a)の平坦部の被溶着部が溶融した場合の溶着形状及び溶着幅を示す図、図6(b)は図5(b)の傾斜部の被溶着部が溶融した場合の溶着形状及び溶着幅を示す図。
【図7】図7(a)及び図7(b)は傾斜部の被溶着部の断面形状の変形例を示す図。
【図8】溶着ホーンによる超音波溶着を示す図。
【図9】図9(a)は超音波溶着時の振動方向と直交する平坦部と直交しない傾斜部を示す図、図9(b)は平坦部及び傾斜部の被溶着部の断面形状を示す図。
【図10】図10(a)は溶着ホーンから蓋へ力F(N)を加えて上下方向に振動させた際に平坦部及び傾斜部のそれぞれに加えられる力の大きさを示す図、図10(b)は溶着ホーンから蓋へ力F(N)を加えて上下方向に振動させた際に平坦部及び傾斜部のそれぞれに与えられる振幅の大きさを示す図。
【図11】図11(a)は被溶着部全てをちょうど溶融するのに必要なエネルギーが与えられた場合の平坦部での溶着幅を示す図、図11(b)は平坦部と同じ量のエネルギーが得られなかったために被溶着部を完全に溶融させることができなかった傾斜部での溶着幅を示す図。
【符号の説明】
【0043】
10 画像形成装置
11 感光ドラム
12 レーザ走査光学装置
13 現像装置
13Y,13M,13C,13K 現像器(プロセスカートリッジ)(樹脂部品)
13X プロセスカートリッジ
13a 支軸
14 中間転写ベルト
15 定着装置
16 給紙カセット
17 排紙トレイ
18 ブラシ帯電装置
19 1次転写ローラ
20 トナーのクリーニング装置
21 支持ローラ
22 2次転写ローラ
23 給紙ローラ
24 タイミングローラ
25 排出ローラ
31 現像ローラ
32 蓋
32a 第1平坦部
32b 第1傾斜部
32c 中央平坦部
32d 第2傾斜部
32e 第2平坦部
32r リブ(被溶着部)
32N 被溶着部
32L 被溶着部
32S 被溶着部
33 プロセスカートリッジ本体
34 トナー供給孔
35 突出部
36 溶着ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の直線又は曲線からなる溶着ラインを有し、振動溶着により他の樹脂部品と溶着可能な被溶着部を前記溶着ライン上に備える樹脂部品において、
前記溶着ラインは、振動溶着時の振動方向に対して直交する平坦部と、振動方向に対して直交しない傾斜部とを有し、前記傾斜部の被溶着部の溶着断面積が、前記平坦部の被溶着部の溶着断面積よりも小さいことを特徴とする樹脂部品。
【請求項2】
前記平坦部の被溶着部と前記傾斜部の被溶着部のなす角度をθ(0<θ<90°)、前記平坦部の被溶着部の溶着断面積をS1としたときに、前記傾斜部の被溶着部の溶着部断面積S2がS2=S1×cosθを満たすことを特徴とする請求項1に記載の樹脂部品。
【請求項3】
前記平坦部の被溶着部の幅よりも前記傾斜部の被溶着部の幅の方が狭くなるようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂部品。
【請求項4】
前記平坦部の被溶着部の高さよりも前記傾斜部の被溶着部の高さの方が低くなるようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の樹脂部品。
【請求項5】
前記傾斜部の被溶着部の断面形状が、前記平坦部の被溶着部の断面形状と相似であることを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の樹脂部品。
【請求項6】
前記被溶着部がリブであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の樹脂部品。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6に記載の樹脂部品からなることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項8】
前記樹脂部品が、複数の直線又は曲線からなる第1溶着ラインと、前記第1溶着ライン上に被溶着部とを有する第1樹脂部品であって、
前記第1溶着ラインの形状に対応する形状の第2溶着ラインを有する第2樹脂部品と前記第1樹脂部品とが溶着されてなる結合樹脂部品からなることを特徴とする請求項7に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載のプロセスカートリッジを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−72331(P2010−72331A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239545(P2008−239545)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】