説明

機能性膜の製造方法

【課題】 膜形状のばらつきを低減させ、各パターンにおける膜厚が一様な機能膜及び配線を形成することが可能である、機能性膜の製造方法を提供する。
【解決手段】 基板1上に隔壁または親液領域を形成し、隔壁または親液領域内に機能性膜2の形成材料を含む液体3を付与し、機能性膜4を形成する。次いで、機能性膜4を液化膨潤し、隔壁または親液領域内全域に拡がらせ、乾燥させて、機能性膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子、カラーフィルタ、導電性膜を有する電子放出素子、有機半導体等の表示装置や露光装置等の画像形成装置、電子デバイスに用いられる機能性膜や配線及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上に導電性膜や電子放出膜などの機能性膜を形成する方法として、蒸着法やスパッタ法を用い、機能材料を基板上に成膜する手法や、スピンコート法を用いて基板上に成膜する手法が一般的に知られている。また、この他にもスクリーン印刷やオフセット印刷などの印刷方法を用いて基板上に成膜する手法、インクジェット方式を用いた成膜方法も知られている。その中で機能性膜をインクジェット法により作製することは、直接基板上に任意のパターンを形成できるため、製造装置の簡略化、ランニングコスト低減等の観点から有力な手法とされており、機能性膜の製造方法として有望視されている。しかし、インクジェット法を用いて間隔を空けて基板上にドット付与して膜パターンを形成した場合、先に形成した膜パターンに含まれる液体の蒸発よって雰囲気の湿度が変化するため、後に形成したの膜パターンの形状が変化し、膜パターンごとにばらつきが発生するという問題がある。例えばインクジェット法を用いて電子放出素子を作成する場合に関しては、膜パターンの形状が電子放出性能に大きな影響を与えるため、このばらつきは無視できない問題となる。
【0003】
膜パターンごとに乾燥させてから後の膜パターンを形成する、という方法も考えられるが、生産性の観点から効率的ではない。この問題に関して特許文献1では、インクジェット法膜パターンを基板上に形成した後に、その基板を湿度制御できるチャンバ内に移動させ、膜パターンがチャンバ内のガスを吸湿するように湿度を制御したのちに乾燥させる技術が記載されている。このような方法をとることで、基板上に形成されたそれぞれの膜パターンを同一のタイミングで乾燥させることができるため、膜パターン間のばらつきを抑えることができる。
【0004】
なお、以下の説明においては「膨潤」という語を、液体にふれた固形成分がその液体中に分散することの意味で用いることがある。
【特許文献1】2007−157516
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法は、膜パターンの形成材料が吸湿性を持つものに限られていた。また吸湿性が低いものでは吸湿に時間がかかる上、膜パターン以外の箇所にも吸湿が発生するなどの問題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、インクジェット法等の吐出方法を用いて、基板上に複数の配線及び機能膜形成する際の各パターンにおける膜厚がばらつきを抑えてかつ所望パターン内全域に膜パターンの形成材料の吸湿性に関わらず機能膜を効率よく形成することが可能である、機能性膜の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基板上に機能性膜を製造する機能性膜の製造方法であって、機能性膜の形成材料を含む液体を吐出して基板上に付与し複数の機能性膜を形成する工程、基板周囲の雰囲気ガスの温度を基板温度より高くすることで雰囲気を機能性膜上に液化させて機能性膜を膨潤させる工程と、膨潤させた複数の前記機能性膜を一括して乾燥させる工程と、
を有することを特徴とする機能性膜の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基板上に隔壁または親液領域を形成し、機能性膜の形成材料を含む液体を付与、機能性膜を形成し、基板の置かれた雰囲気を機能性膜上に液化させることで上記膜を膨潤させたのち、同じタイミングで乾燥させるので、各機能性膜の膜厚のばらつきを抑えてかつ所望パターン内全域に機能性膜を形成させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、インクジェット法、ディスペンサー等の吐出方法を用いて、機能性膜を膜厚のばらつきを抑えて効率よく形成可能とする機能性膜の製造方法に関するものである。ここで、本発明の製造方法によって形成される機能性膜とは、熱、電気、光等の何らかのエネルギー入力によって、所望の機能を発現する膜である。具体的には、例えば、液晶表示装置等に用いられるカラーフィルタや、表面伝導型電子放出素子の電極や電子放出膜(導電性膜)、有機EL素子の正孔注入層、発光層などが好ましく挙げられる。また、各種デバイスに搭載される電気配線、絶縁層、有機半導体などにも本発明は好ましく適用される。
【0010】
以下、図面を参照して、この発明の好適な実施の形態および実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、その相対配置などは、特に特定な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
図2に、本発明に用いられるインクジェット装置の一例を模式的に示す。図2において、X軸駆動ステージ14、Y軸駆動ステージ15上の基板1の上方に吐出用のインクジェットヘッド10が設置されており、該インクジェットヘッド10に設けられた吐出ノズルから、液体3を吐出して基板1上に付着(塗布)させる。尚、液滴塗布に使用するインクジェットヘッド10は一つでも複数使用してもよいし、また吐出ノズルは1つでも複数でも可能である。ここで、液滴吐出装置の吐出方式としては、圧電体素子の体積変化により液体材料を吐出させるピエゾ方式であっても、熱の印加により急激に気泡が発生することにより液体材料を吐出させるサーマル方式等であっても良い。インクジェットヘッド10及びX軸駆動ステージ14、Y軸駆動ステージ15には、ヘッド駆動制御系12、ステージ駆動制御系13が設けられており、位置検出機構11と連動してインクジェットヘッド10から液滴3を吐出する。これにより、基板1上の目的位置に液滴3を付着させ、基板1上へ機能性膜4を形成することが出来る。
【0012】
図3に本発明に用いられる装置で、機能性膜を液化膨潤し乾燥させる凝縮乾燥装置の一例を模式的に示す。基板1をチャンバ16内に搬入及び搬出するための開口部として、基板搬入出口17が設けられている。チャンバ16には、チャンバ内部の温度モニター18、ガス濃度モニター19が設置され、チャンバ内部の温度と雰囲気ガスの濃度を所定の値に保つための雰囲気制御機構20が設けられている。また、チャンバ16内には基板1を保持するステージ21及びステージ温度モニター22が設置され、基板1を所定の温度へ制御するための基板温度制御機構23が設けられている。この凝縮乾燥装置を用いれば、チャンバ16内の温湿度及びステージ温度をコントロールして、結露現象の原理でチャンバ16内に充満した基板周囲のガスをステージ上に載置した物体上に凝縮(液化)させることができる。
【0013】
図1は、本発明一実施形態の機能性膜であるカラーフィルタの製造工程示す断面模式図である。機能性膜2が液晶表示装置等のカラーフィルタである場合、基板1として、一般にガラス基板が用いられるが、液晶用カラーフィルタとしての透明性、機械的強度等の必要特性を有するものであれば、ガラス基板に限定されるものではない。また、基板としては、基板上に隔壁、金属膜、フィルム等の膜を予め成膜されている基板も用いることができる。基板上に配線等を行なう場合、セラミックス基板、Siウエハ、プラスチック基板も用いることができる。
【0014】
次に、透明基板上1に隔壁5を形成することで、機能性膜を形成するための凹状の領域を形成する〔図1(a)〕。隔壁5は機能性膜2の形成材料を含む液体3を受ける凹部として形成され、且つ隣接するカラーフィルタ間で異なる色の液体の混色を防止する程度の膜厚をもつよう設けられる部材である。隔壁5は例えば感光性レジストをパターニングして容易に形成することができるが、該隔壁をブラックマトリクスやブラックストライプで兼用することもでき、その場合には黒色レジストをパターニングすれば良い。隔壁5は基板1上に直接形成しても良いが、必要に応じて他の機能を有する層を形成した基板、例えばTFTアレイを作製したアクティブマトリクス基板上に形成しても良い。いずれの場合にも、基板上のカラーフィルタ形成面表面に何らかの表面処理を施しても良い。
【0015】
また、隔壁を用いずに機能性膜を指定の領域に形成する方法として、図4に示したように予め基板1上に親液領域6を形成した上で、その親液領域6に機能性膜を形成する方法も挙げられる。親液領域6は、凝縮乾燥装置におけるチャンバ16内のガスに対して親液性を示す領域であり、親液領域6の表面エネルギーEwが親液領域外との表面エネルギーEdに対して大きくなるように(つまりEd−Ew<0となるように)、表面エネルギーのコントラストがあれば良い。親液領域6を形成する方法としては、基板表面を化学修飾したり、コーティングまたは構造物により親液化したりする方法や、逆に親液領域外7を化学修飾、コーティングまたは構造物により疎液化する方法が好ましいがこれらに限定されるものではない。また、上記の隔壁5の形成と、親液領域6の両方を形成する方法も挙げられる。
【0016】
カラーフィルタ等では必要に応じ、所定の樹脂組成物を基板に塗布することで、インク受容層及び混色防止壁を構成するための樹脂層を形成する。上記樹脂組成物は、光照射または光照射と加熱によって硬化または変性可能で、硬化または変性の程度に応じてインク受容性が低下するものである。例えばアクリル系樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ならびにセルロース誘導体またはその変性物等を用いることができる。次に隔壁5等により遮光される部分の樹脂層をフォトマスクを使用してパターン露光したのち、更に加熱処理して混色防止壁を形成する。その結果、露光されなかった部分がインク受容層となる。
【0017】
次に、基板1上に機能性膜の形成材料を含む液体3を付与する〔図1(b)〕。液体3は、基板に着弾後に乾燥して機能性膜となる。その成分としては機能性膜の形成材料を含む液体として必要な機能、特性によって溶媒および固形分を選択する必要がある。カラーフィルタの場合、液体3中には、光照射又は熱処理、或いはこれらの併用によって硬化する樹脂成分、色材が固形分として含有し、溶媒として有機溶剤や水を含有する。色材としては顔料系、染料系のいずれも用いることができる。硬化成分としては、市販の樹脂や硬化剤を用いることができ、具体的には、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等が好適に用いられる。尚、機能性膜の形成材料としてはこれらに限定されるものではない。また、液体3は、溶媒に機能性膜の形成材料を溶解或いは分散させて調整する。溶解或いは分散させる溶媒としては、例えばアルコール類、アミド類、エーテル類等が挙げられる。また、のちに説明する液化膨潤工程で機能性膜が容易に親液領域6に広げるため、基板上のカラーフィルタ形成面表面をコーティングしてもよい。また、のちの液化膨潤工程において、乾燥した機能性膜が容易に液体に分散させるために、化学修飾した溶媒を用いてもよいし、液体3に錯体等をさらに溶解させておいても良い。
【0018】
基板1上に付与される液体3の量は任意の量でよく、隔壁内に吐出して機能性膜4を形成する。液体3を付与する方法としては、微小領域に形成する場合、微小液滴量を付与できるインクジェット法が好ましい。もっとも、領域内に液滴を付与できれば良いので、ディスペンサー法等も用いてよい。通常、液体3は基板上に付与されるとともに徐々に乾燥する。
【0019】
次に、機能性膜4が形成された基板1は図3に示される凝縮乾燥装置のチャンバ16内に入れられる。次に、温度25℃、相対湿度45%環境下において、基板温度制御機構23により基板温度を8℃まで冷却することで、チャンバ16内に気化した水分または雰囲気ガスを機能性膜上に液化(凝縮)させる。液化した水やガス成分に機能性膜4は溶解又は分散することで隔壁内において膨潤した結果、機能性材料4は隔壁内全域に拡がる〔図1(c)〕。このチャンバ16内において、機能性膜4が、気化した水分またはガス成分の雰囲気中に曝され、機能性膜4及び周縁に雰囲気中の水分またはガス成分が液化される。この工程においては、基板と雰囲気とに温度差を設けて雰囲気を機能性膜4上に液化させればよい。温度差をつける方法としては方法として基板1の温度を制御する方法、チャンバ内の液化成分のガス濃度を制御する方法があり、制御方法として、ガス濃度制御、ガス温度制御、ガス圧力制御等が挙げられる。また、液化した雰囲気に対して機能性膜4が容易に溶解または分散させるために、好ましくは液体3の溶媒成分を少なくとも一種類含んでいると良い。また、チャンバ16は気密性が確保されればどのような材質でも構わないが、その内壁はステンレス等水分またはガス成分に対する耐性をもつ材料が好ましい。
【0020】
基板上に、同じ材料で複数のパターンを形成する場合には、このように各パターンにおける温湿度環境を同一にすれば、液体状態に戻った際液化する液滴量もほぼ均一にすることができ、また次の工程である乾燥工程において同一のタイミングで一括して乾燥できるため、それぞれの機能性膜の形状のばらつきが少なく好ましい。
【0021】
また、隔壁5の形成材料は基板1の形成材料に対し、熱伝導率の差が大きい方が好ましい。なぜなら、隔壁5の形成材料は基板1の形成材料に対し熱伝導率が高い材料を用いると、基板温度制御機構23により基板1を冷却し長時間保持させたとき、熱伝導率の差により、隔壁5は基板1に対し、高い温度となり、基板1上をより選択的に液化させることが可能となる。逆に隔壁5の形成材料は基板1の形成材料に対し熱伝導率が低い材料を用いて、基板温度制御機構23による基板1の冷却時間が短くしてもよい。その場合、基板1より隔壁5の熱伝導率が高いので、隔壁5は基板1に対し高い温度となり、基板1上をより選択的に液化させることが可能となる。
【0022】
次に、液体中に溶解又は分散させた機能性膜4を乾燥させて(必要に応じて光照射、熱処理等の処理を施して)機能性膜2を得、カラーフィルタを形成する〔図1(d)〕。液滴乾燥工程において、一般に、固形分を含む溶液の乾燥過程の初期段階では、液滴の縁で溶媒が急速に蒸発し、固形分濃度が上昇する傾向がある。この時、液滴の縁における固形分濃度が飽和濃度に達すると、その縁において固形分が局所的に析出し、その析出した固形分によって液滴の縁が固定され、乾燥に伴う液滴の外形の収縮が抑制される。一旦液滴の縁が固定されると、液滴の中央部と縁では縁の方が液体の蒸発速度が高くなるため、液滴内には液滴の中央部から縁に向かう流れができ、溶質成分は液滴縁部において固化される。また、乾燥しやすい溶媒を用いると、液滴の中央部と縁での蒸発速度の差が大きくなり、液滴内には液滴の中央部から縁に向かう流れが早くなり、液滴の縁において膜厚が厚くなり易くなる。逆に乾燥しにくい溶媒を用いると、上記効果が得られなくなる。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
図1を用い機能性膜として、カラーフィルタをインクジェット法によって形成した時の手順について説明する。
【0024】
(a)黒色レジストを用い、フォトリソグラフィにより、ガラス基板上にブラックマトリクス5を形成した〔図1(a)〕。このブラックマトリクス5の1つの開口部サイズは70μm×220μm、膜厚は2μmとした。従って、硬化性インクを付与する領域の容積は30800μmである。
【0025】
(b)前記ブラックマトリクスの各開口部に、インクジェット装置を用い、1つの開口部に付与する液体量を20000μm(20pl)となるような条件で液体3を付与した〔図1(b)〕。基板ステージをスキャンニングさせながら、位置検出機構11及びヘッド駆動制御機構12、ステージ駆動機構13により、前記各開口部に液滴3が着弾できる吐出タイミングで吐出信号を送り、インクジェットヘッド10から液体3を吐出、着弾させた。液体3として、染料、水溶性有機溶剤、水、N−メチロールアクリルアミドとメタクリル酸メチルの2元共重合体からなる樹脂組成物を用い、樹脂濃度が5重量%、染料成分が10重量%となるように調整した。Red染料としては、C.I.Acid Red 158を用いた。Green染料としては、C.I.Direct Blue(DBL)86をC.I.Acid Yellow(AY)23で調色したものを用いた。Blue染料としては、DBL86をC.I.Acid Red(AR)289を調色したものを用いた。水溶性有機溶剤としては、エチレングリコールを20重量%用いた。基板上のブラックマトリクス開口部内にカラーフィルタ4を得た。上記のようにして形成したカラーフィルタは開口部中央部に形成され、外形は直径60μmであった。
【0026】
(c)カラーフィルタ4を形成した基板を凝縮乾燥装置においてガス温度25℃、相対湿度50%雰囲気に設定し、基板温度を8℃に設定した。1分後に、カラーフィルタ4の縁から液化が始まり、カラーフィルタ4と合体した。これにより、カラーフィルタ4を液体中に溶解、分散させた。さらに、基板温度が8℃の状態で3分保持し、液体はさらに膨潤、拡がり、ブラックマトリクス5の開口部内全域にこの液体パターンを形成した〔図1(c)〕。
【0027】
(d)その後、ブラックマトリクス開口部内全域に形成した液体を乾燥させ、基板全面に70μm×220μmのパターンであり、尚且つ膜厚が均一なカラーフィルタ2を得た〔図1(d)〕。上記のようにして作製したブラックマトリクス開口部内のカラーフィルタの表面形状を、それぞれ表面粗さ測定機により測定したところ、カラーフィルタ2の膜厚は平均0.6μm、膜厚むらは0.1μm以下であった。また、色むらや白抜け等の問題は観察されなかった。上記カラーフィルタ2に保護膜8の形成、電極形成、配向膜形成、液晶材料封入等の作業を行ない、液晶素子を作製した。この液晶素子を0℃〜60℃の温度範囲にて連続1000時間駆動したところ、表示上の問題は生じなかった。
【0028】
(実施例2)
図4に機能性膜として、表面伝導型電子放出素子の電子放出膜(導電性膜)をインクジェット法によって形成した時の手順について説明する。
【0029】
(a)絶縁性の基板としてガラス基板1を用い、洗浄後、120℃で乾燥させた。この基板上に、Pt膜により、電極幅500μm、電極間ギャップ20μmの一対の素子電極を複数形成し、各素子電極に配線を接続した。この配線としては、列方向配線と行方向配線とを層間絶縁層を介して交差配置したマトリクス配線とした。前記基板をアルカリ洗浄にて洗浄後、撥水処理剤を用いて表面処理を行った。次に1つの開口部が100μm×630μmであるフォトマスクを使用してUV露光し、各々の素子電極上に100μm×630μmの親液領域6を形成した〔図4(a)〕。ここで、露光された部分が親液領域6となる。親液領域6と親液領域外7の水に対する接触角を計測したところ、親液領域6の接触角が平均15[deg]、親水領域外7の接触角が平均55[deg]であった。その後、前記基板1を、インクジェット装置の基板ステージ上に吸着させ、液体付与位置の位置調整を行った。
【0030】
(b)インクジェット装置を用い、1つの開口部に付与する液体量を15000μm(15pl)となるような条件で液体3を付与した〔図4(b)〕。基板ステージをスキャンニングさせながら、位置検出機構11及びヘッド駆動制御機構12、ステージ駆動機構13により、基板上の親液領域6内に液滴が着弾できる吐出タイミングで吐出信号を送って、インクジェットヘッド10から液体3を吐出、着弾させた。液体3としては、純水80重量%、イソプロピルアルコール19重量%、パラジウム1重量%の組成の液体を使用した。親液領域6内に着弾した液体3は基板1上で常温でただちに乾燥し固形分のみが基板に残る。このようにして導電性膜4を得た。上記のようにして形成した導電性膜4は親液領域6中央部に形成され、外形は直径55μmであった。基板1上の導電性膜4の膜厚をそれぞれ光干渉式膜厚計を用いて計測した。平均膜厚は3μmであり、各導電性膜4の膜厚のばらつきは3.0μm±20%であった。
【0031】
(c)導電性膜4を形成した基板1を凝縮乾燥装置に設置し、凝縮乾燥装置の雰囲気を温度23℃、相対湿度60%に設定し、基板温度を23℃に設定した。次に、雰囲気の温度を40℃、相対湿度60%に設定した。2分後に導電性膜4表面に雰囲気中に気化している水の液化が始まり、導電性4を液体中に分散させた。さらに雰囲気温度が40℃、相対湿度60%環境下で1分保持した。その結果液化した水によって導電性4は膨潤する。親液領域6と親液領域外7の表面エネルギーのコントラストにより、親液領域と親液領域外との境界まで拡がり、親液領域6内全域にこの液体パターンを形成した。この液体パターンはそれぞれの親液領域でほぼ一様に形成される。〔図4(c)〕。
【0032】
(d)その後、基板温度を60℃に上げて、液体パターンを乾燥させた〔図4(d)〕。各々の導電性膜2のサイズは100μm×630μmであり、各導電性膜2の膜厚のばらつきは3.0μm±10%に低減された。さらに基板を350℃で30分間加熱し、酸化パラジウムからなる導電性膜を得た。その後、水素を含む雰囲気中での導電性膜への通電、及び、有機化合物を含む雰囲気中での導電性膜への通電を経て、上記導電性膜に電子放出部を形成した。こうして作成された電子源基板に、フェースプレート及び支持枠等を組み合わせて表示パネルを作成し、更に、駆動回路を接続して画像表示装置を作成したところ、画像表示装置を歩留まりよく得ることができた。
【0033】
(実施例3)
図5を用い機能性膜として、有機EL表示体をインクジェット法によって形成した時の手順について説明する。
【0034】
(a)ガラス基板1上にスパッタ法により第1電極25を形成した。次に、有機ELの各画素を形成する隔壁5をスクリーン印刷法を用いて形成した〔図5(a)〕。この隔壁1つの開口部のサイズは50μm×170μm、膜厚は0.3μmとした。その後、前記基板1を、インクジェット装置の基板ステージ上に吸着させ、液体付与位置の位置調整を行った。
【0035】
(b)前記各開口部に、インクジェット装置を用い、1つの開口部に付与する液体量を1000μm(1pl)となるような条件で液体を付与した〔図5(b)〕。基板ステージをスキャンニングさせながら、位置検出機構11及びヘッド駆動制御機構12、ステージ駆動機構13により、基板1上の前記各開口部に液滴が着弾できる吐出タイミングで吐出信号を送り、インクジェットヘッド10から液体3を吐出、着弾させた。液体3として、正孔注入材料としてトリフェニルアミン6量体(TPA−6:分子量1461、融点277℃、Tg156℃)をトルエン、イソプロピルアルコールに溶解した液体を使用した。正孔注入材料を含む液体3を基板1上で常温乾燥させ、正孔注入膜4を得た。上記のようにして形成した正孔注入膜4は開口部中央部に形成され、外形は直径25μmであった。
【0036】
(c)正孔注入膜4を形成した基板1を凝縮乾燥装置に設置し、凝縮乾燥装置の雰囲気を温度75℃、供給ガスをイソプロピルアルコール、供給ガス濃度を0%に設定し、基板温度を3℃に設定した。次に、雰囲気の温度を75℃、供給ガスをイソプロピルアルコール、供給ガス濃度を1.8%に設定した。5分後に、正孔注入膜4から液化が始まり、正孔注入膜を液体中に分散させた。さらに、5分保持し、液体はさらに膨潤、拡がり、隔壁開口部内全域にこの液体パターンを形成した〔図5(c)〕。
【0037】
(d)その後、基板温度を30℃に設定し、液体を乾燥させ、基板全面に50μm×170μmのパターンであり、尚且つ膜厚が均一な正孔注入膜2を得た〔図5(d)〕。上記の工程を経た正孔注入膜2の平均膜厚は0.3μmであり、各導電性膜の膜厚のばらつきは0.3μm±18%であった。
【0038】
(e)次に、発光材料としてトリス(8−キノリノール)アルミニウム(アルミキノリン錯体)に代表される8−ヒドロキシキノリン金属錯体を物理蒸着法によって成膜し、発光層26を形成した。次に、第1電極25のパターンに対応する貫通孔を有するマスクを用い、電子注入層27としてのAl−Liを物理蒸着法によって成膜し、続いて第2電極28を物理蒸着法によって成膜した〔図5(e)〕。最後に、封止缶によって、有効表示領域を封止し、有機EL表示体を得た。得られた、有機EL表示体は、各画素の発光特性が均一であった。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態の工程を模式的に示す図である。
【図2】本発明で用いられるインクジェット装置の一例を模式的に示す図である。
【図3】本発明で用いられる凝縮乾燥装置の一例を模式的に示す図である。
【図4】本発明の実施例2の工程を模式的に示す図である。
【図5】本発明の実施例3の工程を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1 基板
2 機能性膜
3 機能性材料を含む液体液体
4 機能性膜
5 隔壁
6 親液領域
7 親液外領域
8 保護膜
9 インクタンク
10 インクジェットヘッド
11 位置検出機構
12 ヘッド駆動制御機構
13 ステージ駆動制御機構
14 X軸駆動ステージ
15 Y軸駆動ステージ
16 チャンバ
17 基板搬入出口
18 温度モニター
19 濃度モニター
20 雰囲気制御機構
21 ステージ
22 ステージ温度モニター
23 基板温度制御機構
24 ガスボンベ
25 第1電極
26 発光層
27 電子注入層
28 第2電極
29 封止缶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に機能性膜を製造する機能性膜の製造方法であって、機能性膜の形成材料を含む液体を吐出して基板上に付与し複数の機能性膜を形成する工程、基板周囲の雰囲気ガスの温度を基板温度より高くすることで雰囲気を機能性膜上に液化させて機能性膜を膨潤させる工程と、膨潤させた複数の前記機能性膜を一括して乾燥させる工程と、
を有することを特徴とする機能性膜の製造方法。
【請求項2】
前記液化は、前記基板の温度制御により行われることを特徴とする請求項1記載の機能性膜の製造方法。
【請求項3】
前記液化は、雰囲気ガスの濃度制御により行われることを特徴とする請求項1記載の機能性膜の製造方法。
【請求項4】
前記液化は、雰囲気ガスの温度制御により行われることを特徴とする請求項1記載の機能性膜の製造方法。
【請求項5】
雰囲気ガスは、前記液体に含まれる溶媒成分を少なくとも一種類含んでいることを特徴とする請求項1〜4記載の機能性膜の製造方法。
【請求項6】
前記液体の吐出は、インクジェット法により行われることを特徴とする請求項1〜5記載の機能性膜の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−213953(P2009−213953A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57310(P2008−57310)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】