説明

欠陥検査方法および欠陥検査装置

【課題】配線間の底部のショートに対する検査感度を向上させ、微細化されたパターンであり、平行に並んだ複数の配線間の底部におけるパターンショートであっても検出可能な欠陥検査方法を実現する。
【解決手段】欠陥検出を行なう被対象物である試料に照射する光の偏光(アルファ)(s偏光からの角度(アルファ))を、試料の回路パターンの条件、照射光の方位角及び入射角を所定の計算式に代入して算出する。偏光(アルファ)は、p偏光とs偏光との間にある。算出した偏光(アルファ)の光を試料に照射して欠陥を検査する。これにより、配線間の底部のショートに対する検査感度を向上させ、微細化されたパターンであり、平行に並んだ複数の配線間の底部におけるパターンショートであっても検出可能な欠陥検査方法を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子、液晶表示素子、プリント基板などの製造工程において、異物やパターンの変形等の欠陥を検出する欠陥検査方法および欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程では、半導体基板(ウエハ)上に異物が存在すると配線の絶縁不良や短絡などの不良原因になる。また、半導体素子上のパターンの微細化につれて、半導体基板中に微細な異物が存在した場合に、この異物がキャパシタの絶縁不良やゲート酸化膜などの破壊の原因となっている。
【0003】
同様に、液晶表示素子製造工程でも、パターン上に異物が混入したり、パターンの形状に何らかの欠陥が生じたりすると、表示素子として使えないものになってしまう。プリント基板の製造工程でも状況は同じであって、異物の混入はパターンの短絡、不良接続の原因に成る。
【0004】
従来における、基板上の異物を検出する技術の1つとして、特許文献1に記載されている技術がある。この技術は、半導体基板上にs偏光レーザを照射して半導体基板上に異物が付着している場合に発生する異物からの散乱光を検出し、直前に検査した同一品種半導体基板の検査結果と比較することにより、パターンによる虚報を無くし、高感度かつ高信頼度な異物及び欠陥検査を可能にするものがある。
【0005】
また、上記異物を検査する技術として、ウエハにコヒーレント光を照射してウエハ上の繰り返しパターンから射出する光を空間フィルタで除去し繰り返し性を持たない異物や欠陥を強調して検出する方法が知られている。
【0006】
また、ウエハ上に形成された回路パターンに対して、この回路パターンの主要な直線群に対して45度傾けた方向から照明光を照射して主要な直線群からの回折光を検出光学系の対物レンズの開口内に入射させないようにした異物検査装置が、特許文献2に記載されている。この特許文献2においては、主要な直線群ではない他の直線群を空間フィルタで遮光することについても記載されている。
【0007】
また、照明光の干渉性を低下させることで、画像中のノイズ成分を低減し、繰り返しでないパターン部での検査感度を向上させる方法が、特許文献3および特許文献4に記載されている。
【0008】
さらに、異物等の欠陥検査装置およびその方法に関する従来技術としては、特許文献5に記載された技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭62−89336号公報
【特許文献2】特開平1−117024号公報
【特許文献3】特開平8−210989号公報
【特許文献4】特開2005−337851号公報
【特許文献5】特開2000−105203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
半導体や液晶表示素子の製造工程においては、パターンの微細化に伴い、ショートや断線などのパターンの形状不良による欠陥がより重要となってきている。
【0011】
しかしながら、従来技術においては、平行に並んだ複数の配線間の底部におけるパターンショートを検出することが困難であった。つまり、従来用いられているs偏光照明と、特許文献2に記載されている主要直線群に対して45度傾けた方向から照射して、回折光を検出光学系に入射させないようにする方法とを組み合わせても、上記パターンショートを検出することが困難である。
【0012】
本発明の目的は、配線間の底部のショートに対する検査感度を向上させ、微細化されたパターンであり、平行に並んだ複数の配線間の底部におけるパターンショートであっても検出可能な欠陥検査方法およびその装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、次のように構成される。
【0014】
所定の角度だけ傾けた方向から照明光を検査対象試料に照射して、反射光を検出光学系により検出し、検査対象試料の異物あるいはパターン欠陥を検出する欠陥検出方法及び装置において、照明光の所定の入射角度に基いて、検査対象試料のあるいはパターン欠陥からの散乱反射光が最も大となる偏光であって、p偏光とs偏光との間の方位の偏光を算出し、算出した偏光状態の照明光を上記検査対象試料に照射する。
【0015】
また、光源からのコヒーレント光を検査対象試料に照射し、散乱反射光を検出し、得られた画像を処理して、上記検査対象試料の異物や又はパターン欠陥を検出する欠陥検査方法及び装置において、上記コヒーレント光源から出力される直線偏光あるいは楕円偏光の光を、偏光状態を乱す素子を通して、偏光状態が互いに異なる光を上記検査対象試料に照射する。
【0016】
また、コヒーレント光源からの出力光を集光して検査対象試料に照射し、散乱反射光を検出し、得られた画像を処理して、上記検査対象試料の異物や又はパターン欠陥を検出する欠陥検査方法及び装置において、コヒーレント光源から出力される直線偏光あるいは楕円偏光の光を、光が入射する複数のスリット状領域に対して異なる光路長を与える素子を通過させ、この通過させた光を空間的に2つのグループに分け、一方の偏光状態を他方の偏光状態に対して直交する偏光状態に変換し、上記検査対象試料に照射する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、配線間の底部のショートに対する検査感度を向上させ、微細化されたパターンであり、平行に並んだ複数の配線間の底部におけるパターンショートであっても検出可能な欠陥検査方法およびその装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明が適用される欠陥検査装置の全体概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における欠陥検査装置の照明光学系の概略構成を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における、試料に照射するビームの偏光方向の設定例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における照明光の偏光設定による計算結果例を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態における方位(アルファ)度の直線偏光照明のショート欠陥検出に対する効果のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態における欠陥検査装置の照明光学系30の概略構成図である。
【図7】本発明の第3の実施形態における欠陥検査装置の照明光学系30の概略構成図である。
【図8】本発明の第4の実施形態における欠陥検査装置の照明光学系30の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【実施例】
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、本発明が適用される欠陥検査装置の全体概略構成図である。図1において、検査対象物である試料10(半導体ウエハや、表示素子、プリント基板など)は、ステージ150に搭載されている。ステージ150は、例えばXYステージ、Zステージ、(シータ)ステージなどの組み合わせで構成される。
【0021】
ステージ150の上方に設置された検査光学系40、50によって、試料10の全面が検査できるように、試料10をXY面内で走査できるものが用いられる。試料10は、照明光学系30(光源を含む)から射出される照明光20によって照明される。試料10上のパターンや異物等の欠陥からの散乱反射光のうち、試料10の上方に設置された検査光学系40、50に入射したものは、センサ60、70に導かれ、光電変換されて画像信号として画像処理部160に送られる。
【0022】
検査光学系40、50としては、検光子を備えたものを用いることもある。また、センサ60、70としては、リニアCCDセンサやTDIセンサなどが用いられる。画像処理部160では、送られた画像信号を画像化し、隣接する同じパターンからの画像が比較されて、得られた差分から欠陥が検出される。
【0023】
なお、欠陥検査装置は、自動焦点合わせ(Auto Focusing、AF)系を持っている。AF系は、照明系100、受光系110、AFセンサ120から構成され、試料を走査する際に、センサ60、70で得られる画像がぼけないように試料高さの変動(焦点はずれ)を検出し、機構制御系170へフィードバックする。
【0024】
操作部180により、機構制御部の制御内容や、画像処理部160の画像処理内容等が指令される。
【0025】
図2は、図1に示した欠陥検査装置における照明光学系30の概略構成を示す図である。図2において、光源200から出射した光は、偏光調整部210、ビームエクスパンダ220、集光レンズ230、仰角切替ミラー240を経て、試料10上の照明領域25に達する。光源200としては、例えば直線偏光状態の光を発するレーザを用いる。偏光調整部210は、例えば2分の1波長板213と4分の1波長板215とそれらの回転駆動機構からなる。上記光源200、偏光調整部210、ビームエクスパンダ220、集光レンズ230、仰角切替ミラー240は、機構制御部170により動作制御される。
【0026】
上記構成の照明光学系30において、光源200から出射した直線偏光の偏光方向を、試料10上のパターンの向きやピッチ、照明光20の照明仰角(あるいは入射角)にあわせてs偏光やp偏光からずれた方向に設定する。また、試料の特性によっては、照明の偏光を楕円偏光にすることもできる。
【0027】
偏光調整部210にて偏光状態を調整された光は、ビームエクスパンダ220によって必要な大きさに広げられ、集光レンズ230に照射される。集光レンズ230としては、シリンドリカルレンズが用いられる。シリンドリカルレンズ(集光レンズ230)を通った光は、仰角切替ミラー240によって、照明仰角(あるいは入射角)が所定の角度となるように調整された後、試料10の面上に照射される。照射領域25は、線状となる。
【0028】
図3は、本発明の第1の実施形態における、試料10に照射するビームの偏光方向の設定例を示す図である。
【0029】
図3において、試料10の表面をxy面とし、試料10の面の法線方向をz方向とする。そして、照明領域25はy軸に沿った直線上の領域で、原点がその中心にあるとする。xy面上に投影した照明の入射方位角を(ファイ)、照明の入射角を(シータ)(従って、仰角は90−(シータ))、照明光(軸)を20とすると、照明光20のp偏光方向とs偏光方向は、図3に示された方向となる。本発明の第1の実施形態では、s偏光の方向を基準に、そこから(アルファ)度回転した方向の偏光ベクトルをもった照明光を用いる。
【0030】
方位(アルファ)度方向の偏光ベクトルをaベクトル、s偏光方向の単位ベクトルをsベクトル、p偏光方向の単位ベクトルをpベクトルとする。aベクトルは、次式(1)で表すことができる。
【0031】
【数1】

【0032】
照明光20の進行方向の単位ベクトルをrベクトルとすると、rベクトルは、次式(2)で表すことができる。
【0033】
【数2】

【0034】
また、sベクトルは、次式(3)で、pベクトルは、次式(4)で表すことができる。
【0035】
【数3】

【0036】
【数4】

【0037】
したがって、aベクトル(ax,ay,az)は、次式(5)〜(7)で表すことができる。
【0038】
【数5】

【0039】
【数6】

【0040】
【数7】

【0041】
照明光20として、方位(アルファ)度の直線偏光を用いた場合の試料10面に入射する光の電場の振幅成分を偏光状態算出式である上記計算式(5)〜(7)に従って計算した例を図4に示す。この図4に示した例は、xy面上に投影した照明光20の入射方位角(ファイ)=45度、照明光20の入射角を(シータ)=60度(従って、仰角は30度)とした場合の例である。
【0042】
図4において、縦軸がベクトルの振幅を示し、横軸がs偏光に対してなす角度((アルファ))を示す。そして、点線が電場のx方向成分、一点鎖線が電場のy方向成分、2点鎖線が電場のz方向成分、実線が電場のyz面内、破線が電場のxz面内ベクトルを示す。
【0043】
図4に示すように、角度(アルファ)の値によって、電場のx、y、zそれぞれの成分の内訳が大きく変化することがわかる。電場のz成分は、s偏光の場合に最小、p偏光の場合に最大となるが、x成分やy成分は、s偏光とp偏光の間の条件、すなわち、上記式(5)あるいは式(6)から、(アルファ)=−(ベータ)あるいは、(アルファ)=−(ベータ)´となる条件で最小となる。また、(アルファ)=−(ベータ)+90度あるいは(アルファ)=−(ベータ)´+90度となる条件で最大を示している。
【0044】
したがって、試料10上のパターンとの関係から、s偏光とp偏光との間に欠陥検出に最適な偏光条件が存在する可能性が考えられる。
【0045】
図5は、方位(アルファ)度の直線偏光照明のショート欠陥検出に対する効果のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【0046】
図5の(a)は、試料10上のパターンおよび欠陥のモデルを示し、図5の(b)は、図5の(a)に示したモデルに対してシミュレーションによって用いた欠陥からの散乱光の分布を真上から見た図を示す。
【0047】
なお、この例で用いた欠陥のモデルは、シリコン基板の上に形成された酸化膜(膜厚210nm)の更に上に形成された100nmライン及びスペースのタングステンの配線(膜厚200nm)の溝底のショート部である。そして、ショート部の幅は50nm、高さは40nmとした。
【0048】
上記欠陥モデルに対して、方位角45度方向から入射角(シータ)=60度(従って、仰角は30度)、波長355nmの照明光を照射した場合の、散乱分布が図5(b)である。この散乱分布は、それぞれのピーク強度レベルで正規化したもので、そのピーク強度レベルを最下欄に示している。
【0049】
図5の(b)に示されているように、(アルファ)=63度とした場合は、p偏光の場合(ピーク強度レベル0.21)より約3割増しの散乱光レベル(ピーク強度レベル0.27)が得られている。
【0050】
これは、先に述べたように、図4において、計算式により得られた結果における電場のy成分がゼロになる、つまり、電場がxz面内に存在する条件と一致している。
【0051】
この様に、方位(アルファ)度を適切な値に選択することで、ショート欠陥をより高感度で検出することが可能になることがわかる。
【0052】
実際には、試料上の回路パターンのショートを検出するために適した回転角(アルファ)は、試料上の回路パターンの主要な直線群の方向や、直線群の並びの周期、照明光20の方位角(ファイ)や入射角(シータ)などに依存するため、これらの条件に合わせ、かつ、計算式(1)〜(7)を用いて設定する必要がある。
【0053】
計算式(1)〜(7)は、機構制御部170の記憶部に格納されており、必要な条件を操作部180から機構制御部170に入力する。機構制御部は、入力された条件に従って、計算式(1)〜(7)を実行し、得られた角度(アルファ)となるように照明光学系30を制御する。
【0054】
以上のように、本発明の第1の実施形態によれば、欠陥検出を行なう被対象物である試料に照射する光の偏光(アルファ)(s偏光からの角度(アルファ))を、試料10の回路パターンの条件、照射光の方位角及び入射角を所定の計算式(5)〜(7)に代入して算出する。偏光(アルファ)は、p偏光とs偏光との間にある。算出した偏光(アルファ)の光を試料10に照射して欠陥を検査する。これにより、配線間の底部のショートに対する検査感度を向上させ、微細化されたパターンであり、平行に並んだ複数の配線間の底部におけるパターンショートであっても検出可能な欠陥検査方法およびその装置を実現することができる。
【0055】
なお、上述した本発明の第1の実施形態では、照明光として直線偏光を用い、s偏光から(アルファ)度方位を回転させる場合を例として示したが、(アルファ)度回転させた偏光のs偏光方向成分とp偏光方向成分との間に位相差を与え、結果として照明する偏光が楕円偏光となるようにしても良い。このようにすることで、パターンからの回折光のくせを低減し、欠陥を検出しやすくできる場合がある。
【0056】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態における欠陥検査装置の照明光学系30の概略構成図である。欠陥検査装置の全体構成は、図1に示した例と同様となるので、図示及びその説明は省略する。
【0057】
図6において、光源300から出射した直線偏光あるいは楕円偏光の照明光のビーム(コヒーレント光)は、デポラライザ310を通った後、ビームエクスパンダ320によって拡大され、多段ガラスブロック330に入射する。この多段ガラスブロック330を通過した光は、シリンドリカルレンズ340によって直線上に集光され、試料10の面上の照明領域25に達する。
【0058】
デポラライザ310は、例えば、水晶のような複屈折性のある基板をウェッジ状に加工したもの、あるいは、それにウェッジ状の複屈折性の無い透明基板を張り合わせたものを用いる。
【0059】
光線の透過する位置によって、直交する2方向の偏光成分に与えられる位相差が異なるようにすることで、透過するビーム全体としての偏光状態を様々な偏光状態の混合状態にする(偏光を乱す又は偏光状態を解消する)ことを可能にするものである。
【0060】
本発明の第2の実施形態では、ビーム中の場所によって異なる偏光状態をもつようになったビームを拡大し、さらに多段ガラスブロック330を通すことで、場所によって異なる光路差を与える。多段ガラスブロック330は、長さの異なるガラスブロックを並べたもので、隣接ブロック間で可干渉距離を越える光路差を与える。このようにすることによって、多段ガラスブロック330を通った光は、場所によって互いに干渉せず、偏光状態も異なるスリット上のビーム群となる。これをシリンドリカルレンズ340で集光し、試料10面に照射する。
【0061】
この様な照明光を用いることによって、検査光学系40、50(図1に示す)を経て、センサ60、70で得られる画像は、偏光に依存した癖の平均化の効果により、繰り返し性の低いパターン部分においても、より滑らかな諧調特性を持ったものとなる。従って、画像のノイズ成分が低減され、欠陥の検出感度を高めることが可能となる。
【0062】
つまり、本発明の第2の実施形態においても、配線間の底部のショートに対する検査感度を向上させ、微細化されたパターンであり、平行に並んだ複数の配線間の底部におけるパターンショートであっても検出可能な欠陥検査方法およびその装置を実現することができる。
【0063】
つまり、従来技術において、繰り返し性の低いパターン部分の検査では、光路差を設けて干渉性を低減させた照明光を異なる入射角で重ねる方法を採用していたが、十分なノイズ低減効果が得られなかった。
【0064】
これに対して、本発明の第2の実施形態によれば偏光依存性の低減効果も加わり、十分なノイズ低減効果を得ることができる。
【0065】
なお、本発明の第2の実施形態では、デポラライザ310と多段ガラスブロック330とを組み合わせた例を示したが、多段ガラスブロック330は必ずしも必要ではない。多段ガラスブロック330を省略した場合は、可干渉性低減効果は得られないが、偏光依存性の平均化の効果は得られるため、欠陥検出感度を高めることは可能である。
【0066】
(第3の実施形態)
図7は、本発明の第3の実施形態における欠陥検査装置の照明光学系30の概略構成図である。欠陥検査装置の全体構成は、図1に示した例と同様となるので、図示及びその説明は省略する。
【0067】
本発明の第3の実施形態では、光源300から出射した直線偏光あるいは楕円偏光の照明光のビームは、2分の1波長板350を通過した後、ビームエクスパンダ320によって拡大され、開口の約半分の領域に設けられた2分の1波長板360を通過する。そして、2分の1波長板360を通過した光は、多段ガラスブロック370に入射する。多段ガラスブロック370を通過した光は、シリンドリカルレンズ340によって直線上に集光され、試料10面上の照明領域25に達する。
【0068】
本発明の第3の実施形態では、多段ガラスブロック370を照明光の光軸に対してほぼ対象な形状とし、多段ガラスブロック370の半分の領域に入射する光の偏光状態を残りの半分の領域に入射する偏光と直交する状態となるように、2分の1波長板360を設ける。
【0069】
例えば、光源300から直線偏光の光が射出される場合には、図7の(b)に示すように、2分の1波長板360が配置された領域に対応する多段ガラスブロック370の上半分の領域からの照明光はp偏光、下半分の領域からの照明光はs偏光とするような設定が可能となる。
【0070】
p偏光とs偏光の混ざった照明光を試料面に照射させて行なう検査によって、試料10上のパターンの見え方の偏光依存性を低減し、画像のノイズを低減することによる欠陥検査の感度向上が可能となる。
【0071】
つまり、本発明の第3の実施形態においても、配線間の底部のショートに対する検査感度を向上させ、微細化されたパターンであり、平行に並んだ複数の配線間の底部におけるパターンショートであっても検出可能な欠陥検査方法およびその装置を実現することができる。
【0072】
なお、図示した状態で、2分の1波長板350によって偏光を90度回転させることによって、上半分をs偏光、下半分をp偏光に切り替えることも可能になり、両方の照明状態による検査画像を合わせて、より画像のノイズを低減することも可能となる。
【0073】
さらに、本発明の第3の実施形態においては、第2の実施形態と同様に、繰り返し性の低いパターン部の画像ノイズを低減し、欠陥検出感度を向上することができる。
【0074】
なお、図示していないが2分の1波長板350の後に4分の1波長板を付加することで、右回り円偏光と左回り円偏光の組み合わせも可能となる。数学的に直交関係にあるこれらの偏光の組み合わせでも、同様の検査画像のノイズ低減の効果が期待できる。
【0075】
(第4の実施形態)
図8は、本発明の第4の実施形態における欠陥検査装置の照明光学系30の概略構成図である。欠陥検査装置の全体構成は、図1に示した例と同様となるので、図示及びその説明は省略する。
【0076】
本発明の第4の実施形態では、光源300から出射した直線偏光あるいは楕円偏光の照明光のビームは、2分の1波長板350を通過した後、ビームエクスパンダ320によって拡大され、多段ガラスブロック330に入射する。多段ガラスブロック330の入射側開口には、ブロック1個おきに2分の1波長板360が設置されている。多段ガラスブロック330を通過した光は、シリンドリカルレンズ340によって直線上に集光され、試料10面上の照明領域25に達する。
【0077】
本発明の第4の実施形態では、多段ガラスブロック330の互いに隣接するスリット上の開口から出る光は、偏光状態が互いに直交する状態となる。例えば、光源300から直線偏光の光が射出される場合には、図8の(b)にて多段ガラスブロック330の一つおきの領域からの照明光はp偏光、残りの領域からの照明光はs偏光となるような設定が可能となる。
【0078】
p偏光とs偏光の混ざった照明による検査によって、パターンの見え方の偏光依存性を低減し、画像のノイズを低減することによる欠陥検査の感度向上が可能となる。
【0079】
なお、この状態で、2分の1波長板350によって偏光を90度回転させて、s偏光とp偏光とを切り替えることも可能になり、両方の照明状態による検査画像を合わせて、より画像のノイズを低減することも可能となる。
【0080】
本発明の第3の実施形態においても、配線間の底部のショートに対する検査感度を向上させ、微細化されたパターンであり、平行に並んだ複数の配線間の底部におけるパターンショートであっても検出可能な欠陥検査方法およびその装置を実現することができる。
【0081】
さらに、本発明の第3の実施形態においては、第2の実施形態と同様に、繰り返し性の低いパターン部の画像ノイズを低減し、欠陥検出感度を向上することができる。
【符号の説明】
【0082】
10・・・被検査物(試料、基板、ウエハ)、20・・・照明光、30・・・照明光学系、40、50・・・検査光学系、60、70・・・センサ、100・・・照明系、150・・・ステージ、160・・・画像処理部、170・・・機構制御系、180・・・操作部、200、300・・・光源、210・・・偏光調整部、213、350、360・・・2分の1波長板、215・・・4分の1波長板、220、320・・・ビームエクスパンダ、230・・・集光レンズ、240・・・仰角切替ミラー、310・・・デポラライザ、330、370・・・多段ガラスブロック、340・・・シリンドリカルレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コヒーレント光源と、
前記コヒーレント光源からの直線偏光の光、又は楕円偏光の光の偏光状態を乱す第1の素子と、
複数のスリット状領域を有する第2の素子と、を有し、
前記第1の素子によって偏光状態が乱された光は、前記複数のスリット状領域に入射し、
前記複数のスリット状領域に入射した前記偏光状態が乱された光には入射したスリット状領域に応じて異なる光路長が付与されることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置において、
前記第2の素子は、隣接するスリット状領域に入射した光に対しては可干渉距離を超える光路差を付与することを特徴とする検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の検査装置において、
前記第1の素子と前記第2の素子との間の光路に、前記偏光状態を乱された光を拡大する第3の素子を有し、
前記第2の素子によって拡大された光は前記第1の素子に入射することを特徴とする検査装置。
【請求項4】
請求項3に記載の検査装置において、
前記第2の素子は、偏光状態の異なる複数のビーム群を生成し、
さらに、前記ビーム群を収束して、試料上に線状の照明領域を形成する第3の素子を有することを特徴とする検査装置。
【請求項5】
コヒーレント光源と、
複数のスリット状領域を有する第1の素子と、
前記コヒーレント光源からの直線偏光の光、又は楕円偏光の光を空間的に2つのグループに分ける第2の素子と、を有し、
前記第2の素子は、前記第1の素子へ入射する光の一方の偏光状態を他方の光の偏光状態に対して直交する偏光状態に変換し、
前記複数のスリット状領域に入射した光には入射したスリット状領域に応じて異なる光路長が付与されることを特徴とする検査装置。
【請求項6】
請求項5に記載の検査装置において、
前記第1の素子は、隣接するスリット状領域に入射した光に対しては可干渉距離を超える光路差を付与することを特徴とする検査装置。
【請求項7】
請求項6に記載の検査装置において、
前記一方の偏光状態はP偏光であり、前記直交する偏光状態はS偏光であることを特徴とする検査装置。
【請求項8】
請求項6に記載の検査装置において、
前記一方の偏光状態は右回り円偏光であり、前記直交する偏光状態は左回り円偏光であることを特徴とする検査装置。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の検査装置において、
前記第1の素子を通過した光を収束し、試料上に線状の照明領域を形成する第3の素子を有することを特徴とする検査装置。
【請求項10】
コヒーレント光源と、
前記コヒーレント光源からの直線偏光の光、または楕円偏光の光を偏光状態の異なる複数の光に変換する第1の素子と、
複数のスリット状領域を有する第2の素子と、を有し、
前記偏光状態の異なる複数の光は、前記複数のスリット状領域に入射し、
前記複数のスリット状領域に入射した光には入射したスリット状領域に応じて異なる光路長が付与されることを特徴とする検査装置。
【請求項11】
請求項10に記載の検査装置において、
前記第1の素子は、隣接するスリット状領域に入射した光に対しては可干渉距離を超える光路差を付与することを特徴とする検査装置。
【請求項12】
請求項10に記載の検査装置において、
前記第1の素子は、前記直線偏光の光、又は前記楕円偏光の光の偏光状態を乱す素子であることを特徴とする検査装置。
【請求項13】
請求項11に記載の検査装置において、
前記第1の素子と前記第2の素子との間の光路に、前記偏光状態を乱された光を拡大する第3の素子を有し、
前記第3の素子によって拡大された光は前記第2の素子に入射することを特徴とする検査装置。
【請求項14】
請求項11に記載の検査装置において、
前記第2の素子は、偏光状態の異なる複数のビーム群を生成し、
さらに、
前記ビーム群を収束して、試料上に線状の照明領域を形成する第4の素子を有することを特徴とする検査装置。
【請求項15】
請求項11に記載の検査装置において、
前記第1の素子は、前記第1の素子へ入射する光の一方の偏光状態を他方の光の偏光状態に対して直交する偏光状態に変換することを特徴とする検査装置。
【請求項16】
請求項15に記載の検査装置において、
前記一方の偏光状態はP偏光であり、前記直交する偏光状態はS偏光であることを特徴とする検査装置。
【請求項17】
請求項15に記載の検査装置において、
前記一方の偏光状態は右回り円偏光であり、前記直交する偏光状態は左回り円偏光であることを特徴とする検査装置。
【請求項18】
請求項16、又は請求項17に記載の検査装置において、
前記第1の素子を通過した光を収束し、試料上に線状の照明領域を形成する第3の素子を有することを特徴とする検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−225938(P2012−225938A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−174841(P2012−174841)
【出願日】平成24年8月7日(2012.8.7)
【分割の表示】特願2010−171540(P2010−171540)の分割
【原出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】