説明

欠陥検査装置および欠陥検査方法

【課題】半導体基板の表面の欠陥検査において検査スループット向上させ、検査時間を短縮する。
【解決手段】レチクル情報を蓄積するレチクル情報データベース26と、欠陥検査結果を蓄積する検査結果データベース27と、欠陥検査結果から異常判定規格を算出する規格算出部24と、算出された異常判定規格と欠陥検査結果とを照合して異常判定規格を上回る欠陥多発異常の検知件数を算出する規格異常検知件数算出部23と、検査条件から検査に要する時間を算出する検査時間算出部21と、単位時間当たりの異常検知件数を算出する異常検知能力算出部28と、半導体基板表面内で偏分布する分布異常を任意の検知率以上で検知できる間引き率を算出する分布異常検知限界間引き率算出部25と、単位検査時間当たりの異常検知件数が最大となる検査領域を自動で設定して、検査エリアを決定する検査エリア算出部22などを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は欠陥検査装置および欠陥検査方法に関し、特に、半導体製品の製造工程における半導体製品の製造設備の稼働効率向上に関するものである。詳しくは、欠陥検査装置によるシリコン・ウェーハなどの半導体基板上に形成された回路パターンの欠陥検査工程において、半導体製品の不良につながる欠陥の状態を検査する欠陥検査装置および欠陥検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の製造工程におけるシリコン・ウェーハなどの半導体基板上の欠陥検査は特許文献1や特許文献2にあるような、光学式の欠陥検査装置を用いて行っている。この光学式の欠陥検査装置を用いた半導体製品の製造工程における欠陥検査は、前記特許文献1、2に明示はされていないものの、基本的には全面検査を行う仕様であり、その仕様に基づきシリコン・ウェーハの表面の全面検査を行っている。
【0003】
この種の欠陥検査において、近年、微細なパターンの中の微小な欠陥を検査することが行われており、このような欠陥検査には、高倍率の検出光学系が必要となっている。
また、シリコン・ウェーハの大口径化に伴い、検査面積が増大している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−315712号公報
【特許文献2】特開平3−167456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、倍率を上げた検査はおのずと一回の検査で測定できる範囲が小さくなるため、検査スループットの低下を招き、全面検査には多大な時間を要するようになってきた。また、更に半導体基板の大口径化に伴い、単位時間当たりの検査面積が同一だと、シリコン・ウェーハなどの半導体基板の面積が大きくなるにつれて、従来の半導体基板の面積に対する比率分の時間がかかることになり、全体的な検査時間の増大に拍車が掛かることになる。
【0006】
上記に加えて、高検出感度の欠陥検査装置は価格も高額になるため、検査スループットの低下だけでなく、検査コストの増大を招き、半導体装置の製造コストの増大に繋がっていた。
【0007】
ここで、上記特許文献2に代表されるような、光学式の欠陥検査装置は、図8に示すような基本構成から成っている。
すなわち、前記光学式の欠陥検査装置による欠陥検査は、後述する検査動作を実行しながら、シリコン・ウェーハなどの半導体基板1を載せたステージ2を、ステージ制御部3からの信号に従ってXY方向に移動させることで行っている。ここで、前記検査動作は、予め任意に設定した半導体基板1上の検査領域に照明系4からの照明を照射し、検査領域からの反射光を検出光学系5で結像し、その光をイメージセンサ6にて受光してアナログの電気信号に変換し、この信号をAD変換部7でディジタル信号に変換し、検出したディジタル画像信号を、CPU9上に蓄積している参照用ディジタル画像信号と比較検査部8で比較して、相違点を異物等の欠陥として検出することにより、行っている。
【0008】
この場合に、検査領域や、比較検査結果を判断して相違点として明示的に表現するための閾値などは、検査レシピとして検査レシピマネージャ10により設定される。
しかしながら、検査レシピマネージャ10は、検査領域や欠陥を判断する閾値を自ら演算して決定し、欠陥検査装置を操作するオペレータやエンジニアに対して提案するような機能は持たない。したがって、従来の欠陥検査装置を用いた欠陥検査においては、別のシステムから導き出された結果を元に、実際に操作するエンジニアが検査領域や閾値などの検査パラメータを決定して入力し、明示的に検査レシピマネージャ10で設定するしか手段が無かった。
【0009】
このエンジニアが設定する検査領域や閾値などの検査パラメータは、元になるデータが膨大であるため、一定期間のサンプリングを行った結果を集計して算出するなどの方法が一般的であり、常に変動する半導体基板を加工する場の状態を検査レシピに反映することは困難だった。
【0010】
一般的なインライン式の欠陥検査は、図9に示すような工程(主要な工程を図示する)で行われる。まず、(a)検査対象の製品におけるロット中の同一種類のシリコン・ウェーハを抜き取り、全面検査を行う。次に、(b)欠陥マップの重ね合わせ解析により新規に増加している欠陥を特定する。(c)その欠陥をSEM(走査型電子顕微鏡:Scanning Electron Microscope)レビュー装置などにより、形状などに基づくカテゴリ分類を行う。この場合のカテゴリ分類はそのまま半導体装置の歩留に対する欠陥の影響度合いと直結している。(d)カテゴリ分類された欠陥はその欠陥カテゴリ毎に半導体装置のチップ毎の有無を確認し、該当するカテゴリの欠陥が存在するチップ数をカウント(Defective Die Count、通常DDCと略される)し、このカウントの増減トレンド(傾向)をSPC(Statistical Process Control)手法などで管理し、管理規格に対する異常値を検出する。
【0011】
この全面検査でも異常検知件数と経過時間、更に抜き取り枚数を分析すると、図10に示すような傾向を示す。この結果から、必ずしも全面検査が効率の良い欠陥検査方法ではないことがわかる。
【0012】
上記の結果から検査のスループットを上げる手段としては間引き検査を行うことが有効手段の一つであることが明らかであったが、今までは、上記に示すように間引き領域や間引き方法の最適化を行う考え方や最適化を実現する具体的な環境が構築できなかったため、統計予測などの手法を用いて、精度を犠牲にした結果の信頼性が低い方法を採らざるを得なかった。
【0013】
本発明は上記課題を解決するもので、欠陥検査のスループットを向上させることができながら、比較的高い精度で信頼性が高い欠陥検査を行うことができる欠陥検査装置および欠陥検査方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために本発明の欠陥検査装置は、レチクル情報を蓄積するレチクル情報データベースと、欠陥検査結果を蓄積する検査結果データベースと、欠陥検査結果から、半導体基板として異常な欠陥を有するとして判定される閾値である異常判定規格を算出する規格算出部と、算出された異常判定規格と欠陥検査結果とを照合して異常判定規格を上回る欠陥多発異常の検知件数を算出する規格異常検知件数算出部と、検査条件から検査に要する時間を算出する検査時間算出部と、単位時間当たりの異常検知件数を算出する異常検知能力算出部と、規格内の半導体基板の中から全面検査において欠陥の発生が所定の限度を超えて半導体基板面内で偏分布する分布異常を任意の検知率以上で検知できる間引き率を算出する分布異常検知限界間引き率算出部とを具備するものである。
【0015】
この構成により、検査レシピが最適化され、欠陥検査装置での半導体基板の1枚あたりの検査時間が短縮されて相対的なスループットが向上する。その結果、検査コストの削減が可能となる。また、多品種少量生産の工場においても品種のカバー率(適用可能な割合)が向上するため、生産現場の雰囲気の状態管理の精度が向上する。
【0016】
本発明の欠陥検査装置は、さらにレチクル情報と蓄積された欠陥検査結果とから、単位検査時間当たりの異常検知件数が最大となる検査領域を自動で設定して、検査エリアを決定する検査エリア算出部を具備することが好ましい。
【0017】
本発明の欠陥検査装置は、さらに全面検査において欠陥の発生が所定の限度を越えて半導体基板面内で分布する分布異常を任意の検知率以上で検知できる制約を越えた間引き率で検査エリアを決定する検査エリア算出部を具備することが好ましい。
【0018】
本発明の欠陥検査装置は、さらに欠陥検査装置及び欠陥検査方法から導き出された間引き率で、半導体基板上にパターンを形成するために用いたレチクル内の全チップを網羅するように検査エリアを決定する検査エリア算出部を具備することが好ましい。
【0019】
また、本発明の欠陥検査方法は、レチクル情報に基づいて検査対象となる半導体基板から一部の測定領域を間引いた複数種類の間引き検査パターンを作成し、欠陥検査結果情報に基づいて、個々の間引き検査パターンの欠陥検出数を算出し、全列検査時でも規格外れとなる真NG欠陥の数から全列検査時には規格外れとなる誤NG欠陥の数を差し引いた差分値が大きい欠陥数の閾値もしくは、誤NG欠陥数に対する真NG欠陥数の割合が大きい欠陥数の閾値を、半導体基板の規定外であるとして判定する規定値として設定し、各間引き検査パターンの規格値の中で、最大の差分値、または誤NG欠陥数に対する真NG欠陥数の割合が大きくなり、かつ間引き率が最も高いものを最適な間引き検査パターンとして設定することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の欠陥検査方法は、レチクル情報に基づいて検査対象となる半導体基板から一部の測定領域を間引いた複数種類の間引き検査パターンを作成し、欠陥検査結果情報に基づいて、個々の間引き検査パターンの欠陥検出数を算出し、全列検査時でも規格外れとなる真NG欠陥の数から全列検査時には規格外れとなる誤NG欠陥の数を差し引いた差分値が大きい欠陥数の閾値もしくは、誤NG欠陥数に対する真NG欠陥数の割合が大きい欠陥数の閾値を、半導体基板の規定外であるとして判定する規定値として設定し、全面検査において欠陥の発生が所定の限度を越えて半導体基板面内で分布する分布異常の状態に基づいて、検知限界間引き率を算出し、各間引き検査パターンの規格値の中で、最大の差分値、または誤NG欠陥数に対する真NG欠陥数の割合が大きくなり、かつ前記検知限界間引き率以下の間引き率において間引き率が最も高いものを最適な間引き検査パターンとして設定することを特徴とする。
【0021】
上記に示す異常判定規格を算出する規格算出部と、規格異常検知件数算出部と、異常検知能力算出部と、分布異常検知限界間引き率算出部とを用いることで、対象とする半導体装置を持つ半導体基板上で、その半導体装置上の欠陥を検出する場合に最も効率的な検査パターンを創出することが可能となる。
【0022】
ただし、これは欠陥分布が半導体基板全面で均一に分布している場合が前提となるため、更に、レチクル情報や分布異常の検出結果を用いて、最適化することにより、検査漏れのマイナス効果を最小限に抑える効果が望める。
【0023】
また、過去の検査結果のみを重視すると、一定の偏分布が顕著に発生する環境では半導体基板内での未検査エリアが発生する可能性もあることから、欠陥検査装置及び欠陥検査方法から導き出された間引き率で、半導体基板上にパターンを形成するために用いたレチクル内の全チップを網羅するように検査エリアを決定して、全チップを検査するための検査エリアに補正を掛けることで、未検査エリアが発生する可能性を最小限に抑えて、欠陥検査の漏れを予防することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明による欠陥検査装置および欠陥検査方法を用いることにより、検査時間を最小最適化できるため、対象パターンの微細化による検査時間の増大と検査面積の増大による検査時間の増大とを抑えることができて、微細化と面積拡大とによって増大する検査コストを抑えるとともに、対象品種を増大させることが可能となるため、工場全体の場の品質向上が望める。
【0025】
また、従来の欠陥検査装置により同様の機能を実現するためには、上記の機能を実現するための複数のシステムを別に設け、人手による連携が必要となるため、データ精度の低下や、欠損などを招くことになり、本発明のように装置単体でシステムを構成して運用する場合と比べると、信頼性や即時性に劣る。すなわち、本発明による欠陥検査装置や欠陥検査方法によれば、検査コストを抑えることができるだけでなく、信頼性や即時性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係る欠陥検査装置の構成を示すブロック図
【図2】同欠陥検査装置により欠陥検査エリア間引き検査パターンを作成する対象となる半導体基板(シリコン・ウェーハ)の平面図
【図3】同半導体基板(シリコン・ウェーハ)の1例を示した平面図
【図4】同欠陥検査装置により作成した欠陥検査エリア間引き検査パターン(図4においては、間引きパターンと称している)の例を4つ示した平面図
【図5】(a)〜(e)は間引き検査パターン最適化の考え方の例であり、(a)は全列検査でのウェーハ番号と欠陥数との関係を示す図、(b)は1チップ列間引き検査でのウェーハ番号と欠陥数との関係を示す図、(c)は(N−1)×n検査でのウェーハ番号と欠陥数との関係を示す図、(d)は差分値と規格値との関係を示す図、(e)は差分値と間引き率との関係を示す図
【図6】本発明の実施の形態に係る欠陥検査装置における偏分布に対する限界間引き検査パターンの考え方を示す図表
【図7】本発明の実施の形態に係る欠陥検査装置における偏分布がある場合の検査パターン最適化の考え方を示す図表
【図8】従来の欠陥検査装置の構成を示すブロック図
【図9】一般的な欠陥検査の工程の流れを示す図
【図10】検査エリア面積と異常検知件数との関係を示す図表
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態に係る欠陥検査装置および欠陥検査方法を図面に基づき説明する。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る欠陥検査装置は、図8に示した標準的な光学式の欠陥検査装置と同様な機能を有する構成要素に加えて、欠陥検査領域の間引き検査パターンを決定する機能と、検査結果の妥当性を評価する機能と、検査効率を評価する機能とを備えた評価装置29を備えている。
【0028】
すなわち、本発明の実施の形態に係る欠陥検査装置は、従来の欠陥検査装置と同様に以下の構成要素および機能を有する。つまり、後述する検査動作を実行しながら、シリコン・ウェーハなどからなる半導体基板11を載せたステージ12を、ステージ制御部13からの信号に従ってXY方向に移動させることで、欠陥検査を行っている。ここで、前記検査動作は、予め任意に設定した半導体基板11上の検査領域に照明系14からの照明を照射し、検査領域からの反射光を検出光学系15で結像し、その光をイメージセンサ16にて受光してアナログの電気信号に変換し、この信号をAD変換部17でディジタル信号に変換し、検出したディジタル画像信号を、CPU19上に蓄積している参照用ディジタル画像信号と比較検査部18で比較して、相違点を異物等の欠陥として検出することにより、行っている。
【0029】
次に、本発明の実施の形態に係る欠陥検査装置が備えている評価装置29について以下に詳しく説明する。
評価装置29は、半導体基板11の検査領域や欠陥数の閾値などを検査レシピとして設定するための検査レシピマネージャ20に加えて、レチクル情報を蓄積するレチクル情報データベース26と、欠陥検査結果を蓄積する検査結果データベース27と、欠陥検査結果から異常判定規格を算出する規格算出部24と、算出された異常判定規格と欠陥検査結果とを照合して異常判定規格を上回る欠陥多発異常の検知件数を算出する規格異常検知件数算出部23と、検査条件から検査に要する時間を算出する検査時間算出部21と、単位時間当たりの異常検知件数を算出する異常検知能力算出部28と、規格内のシリコン・ウェーハ(半導体基板11)の中から全面検査において欠陥の発生が所定の限度を超えてウェーハ面内で偏分布する分布異常を任意の検知率以上で検知できる間引き率を算出する分布異常検知限界間引き率算出部25と、レチクル情報と蓄積された欠陥検査結果とから、単位検査時間当たりの異常検知件数が最大となる検査領域を自動で設定して、検査エリアを決定する検査エリア算出部22などを具備している。
【0030】
評価装置29において、欠陥検査領域の間引き検査パターンを決定する機能を実現するために、レチクル情報を蓄積するレチクル情報データベース26と、検査エリア算出部22とが検査レシピマネージャ20に接続されている。
【0031】
また、検査結果の妥当性を評価する機能を実現するために、検査結果データベース(以下、検査結果DBという)27と規格異常検知件数算出部23とが検査エリア算出部22に接続されている。
【0032】
規格異常検知件数算出部23は、検査結果DB27と直接接続して全体の異常検知件数を算出するためのパス(接続経路)と、規格算出部24を仲介して個々の検査パターンでの異常検知件数を算出するパスとの2通りのパスを有する。規格算出部24側のパスはこの機能自身が検査結果DB27のデータから間引き検査から得られた規格値を規格異常検知件数算出部23が持つ全面検査時の規格値と比較評価しSN比が最大になる間引き率を算出することから、機能的に必要であるため、設けている。
【0033】
分布異常検知限界間引き率算出部25は、上記の規格異常検知件数算出部23や規格算出部24とは別のパスで検査エリア算出部22に接続されている。
検査時間算出部21と単位時間の検知能力を算出する異常検知能力算出部28とは検査レシピマネージャ20から指示を受けて検査エリア算出部22に結果を出力する。この検査エリア算出部22の結果を用いて検査レシピマネージャ20が検査レシピを決定し、欠陥検査装置を制御することになる。
【0034】
上記構成の具体的な機能および本発明の実施の形態に係る欠陥検査方法を以下に説明する。
(欠陥検査領域の間引き検査パターンを決定する機能について)
まず、欠陥検査領域の間引き検査パターンを決定するには、半導体装置の設計情報が必要となるため、設計情報を具現化しているレチクルの設計情報を持つレチクル情報データベース26に格納されたレチクルの設計情報に基づいて検査エリアを演算して設定する。この検査エリアを演算する機能を有する部分が検査エリア算出部22である。
【0035】
この検査エリア算出部22を用いてレチクルの設計情報を参照し、図2に示すように検査スキャン方向(X方向)に対し、垂直方向(Y方向)の1チップを1列とし、全列検査から、1ショット内のY方向のチップ数分(図5においては、チップ数であるnである。但し、図5においては、3段目チップから(n−1)段目チップまでを省いて図示している)の列検査まで、1列刻みで検査領域を間引く検査パターンを設定する。この検査間引き列は、ウェーハ面内の上段からのショット数と、ショット内の上段からのチップ数とから決定し、上段からのショット段数は乱数を用いて均等に間引き、上段からのチップ数は最上段から最下段に順に間引き(すなわち、a段目ショットの1列段目チップ、b段目ショットの2列段目チップ、c段目ショットの3列段目チップ、・・・という順番(但し、a、b、cは乱数を用いた数字)で間引き)、最下段のチップ数の箇所を間引いた後に最上段のチップ数の箇所を間引き、それを繰り返す。これらの機能の集合体が検査領域の間引き検査パターン[(N−1)×nパターン]を決定する機能となる。例えば、ショット段数が10でチップ数が5の場合は(10−1)×5で45通りのパターンが決定される。なお、通常にはこのような最小構成の場合は殆どないが、理解を助けるために、ショット段数が3でチップ数が2の場合を図3、図4に示している。この場合には、間引き検査パターンの数(種類)は、図示した面の右側に示すように、(3−1)×2の4パターンからなる。
【0036】
(検査結果の妥当性を評価する機能について)
次に検査結果の妥当性を評価する機能には、過去の欠陥検査の結果が必要となるため、過去の検査データを持つ検査結果データベース(以下、検査結果DBと称す)27を設けている。更に、検査結果DB27に蓄積された検査結果を参照した後に個々の検査パターンで検査した場合の欠陥検出数を算出し、全列検査時の規格外れをシグナル成分S、規格内をノイズ成分Nとして、個々のパターンでS−N(差分値)、またはS/N比が最大となる規格値を算出する規格算出部24を設け、この規格算出部24の機能を用いて規格値を設定するよう構成している。
【0037】
前記規格値を設定するに際し、以下の演算処理を行う。すなわち、図5(a)に示すように、全列検査結果により、欠陥が所定の規格値より多くて規格外のウェーハと判定されたものを真NGウェーハであるとみなす一方、図5(b)、(c)に示すように、全列検査結果においては規格内のウェーハと判定されながら、いくつかの列を間引いた間引き検査パターンでは欠陥が所定の規格値より多くて規格外のウェーハと判定されたものを誤NGウェーハであるとみなす。そして、各間引き検査パターンに対して、誤NGウェーハの数を最小に抑えながら、最大の数の真NGウェーハを検知できる最適な規格値を算出する。より具体的には、まず、蓄積された過去の全列検査の検査結果に基づき、各間引き検査パターンで検査した場合の欠陥検出数を求める。そして、規格外のウェーハと判定するための規格値(すなわち、規格内(OK)のウェーハと規格外(NG)のウェーハとの閾値)を小さい値から順に大きくしていき(但し、全列検査の規格値は固定なので、全列検査のNG数=真NGは固定)、真NGの数から誤NGの数を差し引き、その差し引いた値(差分値と称す)が最大となる規格値を最適規格値と設定する。図5(d)はこの規格値を求める際の状態を概念的に示す図であり、規格値が小さい場合には、誤NGの数が多いため、差分値も極めて低い値(負の数)となる(例えば、図5(b)に示す場合において、規格値が1の際には、22枚のウェーハ(ウェーハ番号1から22)において、真NG数が3、誤NG数が19であるので、この場合には差分値が−16となる)。そして、規格値を1つずつ層化していくと、規格値である閾値がグラフ上においては上に移動するため、誤NGの数が減少し、差分値が増加するが、大きくなりすぎると、NG数全体が減少し、最後にはNG数自体が0となるので、差分値も0となる。このようにしながら、各間引き検査パターンに対して差分値が最大となる最適な規格値を算出する。なお、差分値の代わりに、前記S/N比(真NG数/誤NG数)が差分値が最大となる最適な規格値を算出してもよい。
【0038】
そして、図5(d)に示すように、間引き検査パターンの種類と同じ数だけある規格値の中で、最大のピークを持ち、かつ、間引き率が最も高いものを最適な間引き検査パターンとして設定する。また、実際には、半導体基板11の面積や、検査の際の光学系の倍率(実際の検査範囲面積)により、単位時間当たりの処理枚数が決まっているので、上記のように設定することにより、単位時間当たりに得られる真NGの個数を大きくできる。
【0039】
ところで、以上の間引き検査パターンの最適化は、偏分布が無い場合には上記方法を良好に適用できるが、実際には、半導体基板11に形成されたパターンは、偏分布がある場合が多いので、以下のように偏分布がある場合を含めて評価する機能を有していることが好ましい。このように、偏分布がある場合は、通常の最適化された間引き検査パターンだけでは不充分となる場合が多いので、偏分布異常を算出するための検知限界間引き率を演算する機能(分布異常検知限界間引き率算出部25)を備えている。そして、この分布異常検知限界間引き率算出部25により、検査結果を参照しながら、個々の検査パターンで検査した場合のウェーハ面内欠陥分布の定量値を算出する。更にその結果を用いて、全列検査時の分布異常を全て検知するための間引き限界を決定するよう構成されている。
【0040】
この点について、図6により、詳しく説明する。
図6における最上段の図形は、半導体基板11において欠陥が偏分布する各種の偏分布パターン(最上段の図形)を示しており、(N−1)×n個ある間引き検査パターンにおいて、欠陥の偏分布がある場合でも、ショット内のチップにおいて漏れなくカバーできるかどうかの評価を示している。より詳しく説明すると、偏分布パターンをチップのインデックス座標として扱い、間引き検査パターンのチップのインデックス座標と比較することで、欠陥の偏分布状態を定量化する。そして、欠陥の偏分布状態に基づき、判定が良または不良状態を算出して判断する(間引き後の検査有効ショット段/チップ段に偏分布の座標を含むショット段/チップ段が一箇所もなかったらNGということになる)。なお、図6に示すように、本発明の実施の形態では、スキャン方向が横方向であるので、スキャン方向に傾いたパターン(横長に近い)で欠陥の偏分布がある半導体基板11ほど、高い間引き率では、検知精度が低下して、間引き率に対する×となる閾値が低くなる。このような傾向を読み取りながら、間引き限界を決定する。
【0041】
そして、この間引き限界と、さきほど求めた規格パターンとを組み合わせて、偏分布異常検知限界より小さい間引き率で最も単位時間当たりの異常検知件数が大きくなる間引き検査パターンを決定する(図7参照)。なお、図7に示す場合においては、偏分布異常検知限界よりも間引き率が低い部分に単位時間当たりの異常検知件数のピークが位置している場合を示しているが、これに限るものではなく、偏分布異常検知限界よりも間引き率が高い部分に単位時間当たりの異常検知件数のピークが位置している場合には、偏分布異常検知限界と異常検知件数との交点が最適間引き検査パターンとなる。
【0042】
これらの大きな3種類の機能を統合的に用いることにより、検査レシピが一層、最適化され、欠陥検査装置での1枚あたりの検査時間が短縮されて相対スループットが向上する。その結果、検査コストの削減が可能となる。また、多品種少量生産の工場においても適用可能な品種のカバー率が向上するため、生産現場の雰囲気における状態管理の精度が向上する。
【0043】
また、間引き率が高い生産ラインほど欠陥によるリスクの低い場の雰囲気の安定性が優れていることになるため、最適計算結果が生産ラインの場の雰囲気の安定性評価指標としても使えることになる。すなわち、場の雰囲気が安定(処理装置の癖などが顕著でない)していると、ショット毎の状態を乱す外乱が少なくなるため、どの場所を検査しても処理結果の差が小さくなり、場の雰囲気の安定性評価指標としても使え、また、偏分布を発生させる要因が少ないため、偏分布異常検知限界が間引き検査パターンのピークより間引き率の低い側に行かなくなり、より間引き率の高い間引き検査パターンが最適となる。
【0044】
したがって、本発明に示すような最適化したシステムを欠陥検査装置上に持たせて、統合することにより、効果的、且つ効率的な運用が可能となる。
以上述べてきたように、本発明によれば、欠陥検査装置での1枚あたりの検査時間が短縮されて相対スループットが向上し、検査コストの削減が可能となる。また、間引き率の変化が、生産現場の雰囲気の状態管理を示す指標としても使える。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、シリコン・ウェーハなどの半導体基板上に形成された回路パターンの欠陥を検査する欠陥検査装置や欠陥検査工程として良好に適用できる。
【符号の説明】
【0046】
11 半導体基板
12 ウェーハステージ
13 ステージ制御部
14 検査照明系ユニット
15 欠陥検出光学系ユニット
16 イメージセンサ
17 AD変換部
18 欠陥パターン比較検査部
19 装置制御用CPU
20 検査レシピマネージャ
21 検査時間算出部
22 検査エリア算出部
23 規格異常検知件数算出部
24 規格算出部
25 分布異常検知限界間引き率算出部
26 レチクル情報データベース
27 検査結果データベース
28 異常検知能力算出部
29 評価装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レチクル情報を蓄積するレチクル情報データベースと、欠陥検査結果を蓄積する検査結果データベースと、欠陥検査結果から、半導体基板として異常な欠陥を有するとして判定される閾値である異常判定規格を算出する規格算出部と、算出された異常判定規格と欠陥検査結果とを照合して異常判定規格を上回る欠陥多発異常の検知件数を算出する規格異常検知件数算出部と、検査条件から検査に要する時間を算出する検査時間算出部と、単位時間当たりの異常検知件数を算出する異常検知能力算出部と、規格内の半導体基板の中から全面検査において欠陥の発生が所定の限度を超えて半導体基板面内で偏分布する分布異常を任意の検知率以上で検知できる間引き率を算出する分布異常検知限界間引き率算出部とを具備する欠陥検査装置。
【請求項2】
レチクル情報と蓄積された欠陥検査結果とから、単位検査時間当たりの異常検知件数が最大となる検査領域を自動で設定して、検査エリアを決定する検査エリア算出部を具備する請求項1記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
全面検査において欠陥の発生が所定の限度を越えて半導体基板面内で分布する分布異常を任意の検知率以上で検知できる制約を越えた間引き率で検査エリアを決定する検査エリア算出部を具備する請求項2記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
欠陥検査装置及び欠陥検査方法から導き出された間引き率で、半導体基板上にパターンを形成するために用いたレチクル内の全チップを網羅するように検査エリアを決定する検査エリア算出部を具備する請求項3記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
レチクル情報に基づいて検査対象となる半導体基板から一部の測定領域を間引いた複数種類の間引き検査パターンを作成し、
欠陥検査結果情報に基づいて、個々の間引き検査パターンの欠陥検出数を算出し、全列検査時でも規格外れとなる真NG欠陥の数から全列検査時には規格外れとなる誤NG欠陥の数を差し引いた差分値が大きい欠陥数の閾値もしくは、誤NG欠陥数に対する真NG欠陥数の割合が大きい欠陥数の閾値を、半導体基板の規定外であるとして判定する規定値として設定し、
各間引き検査パターンの規格値の中で、最大の差分値、または誤NG欠陥数に対する真NG欠陥数の割合が大きくなり、かつ間引き率が最も高いものを最適な間引き検査パターンとして設定する欠陥検査方法。
【請求項6】
レチクル情報に基づいて検査対象となる半導体基板から一部の測定領域を間引いた複数種類の間引き検査パターンを作成し、
欠陥検査結果情報に基づいて、個々の間引き検査パターンの欠陥検出数を算出し、全列検査時でも規格外れとなる真NG欠陥の数から全列検査時には規格外れとなる誤NG欠陥の数を差し引いた差分値が大きい欠陥数の閾値もしくは、誤NG欠陥数に対する真NG欠陥数の割合が大きい欠陥数の閾値を、半導体基板の規定外であるとして判定する規定値として設定し、
全面検査において欠陥の発生が所定の限度を越えて半導体基板面内で分布する分布異常の状態に基づいて、検知限界間引き率を算出し、
各間引き検査パターンの規格値の中で、最大の差分値、または誤NG欠陥数に対する真NG欠陥数の割合が大きくなり、かつ前記検知限界間引き率以下の間引き率において間引き率が最も高いものを最適な間引き検査パターンとして設定する欠陥検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−17609(P2011−17609A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162287(P2009−162287)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】