説明

歯牙貼付用製品及び口腔ケア方法

【解決手段】(a)難水溶性の支持体として厚さ0.05〜2mmのフィブロインフィルム又はシート上に、(b)ステイン予防・除去剤、歯石予防・除去剤、歯牙白色化剤、う蝕予防・修復剤、知覚過敏予防・抑制剤、口臭予防・除去・隠蔽剤、歯肉炎予防・改善剤、歯周病予防・改善剤から選ばれる口腔ケア有効成分を含有する口腔ケア用組成物の層を形成してなる歯牙貼付用製品、及びこれを用いた口腔ケア方法。
【効果】本発明の歯牙貼付用製品は、歯牙へのフィット性、固定性に優れ、着用中に違和感がなく、柔軟性に富み、着用中のズレ、剥離を防いで長時間の貼付を可能にし、口腔ケア有効成分の漏出・唾液の浸入を防止でき、安全性にも優れ、これを歯牙又は歯茎へ適用することで、歯牙や歯茎の疾患予防や改善、歯質の強化、歯面の汚れ除去、歯の審美性向上、口臭予防などの優れた口腔ケア効果を効果的に発揮させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯面への密着性を向上させることにより、歯牙の審美性を向上させる効果、或いは歯牙又は歯周疾患の予防及び治療、口臭の予防・除去・隠蔽効果等の口腔ケア効果を向上させた歯牙貼付用製品、及びこれを用いた口腔ケア方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、口腔疾患の予防や治療、及び口腔内の汚れ、美白、口臭の除去を目的としたさまざまな商品が市販されている。主たる口腔疾患には、う蝕、歯肉炎や歯槽膿漏等の歯周組織疾患、口内炎等の口腔粘膜疾患、象牙質の露呈による知覚過敏などが挙げられる。また、汚れや臭いの元としては、食物残渣、タバコヤニ、歯垢、歯石、舌苔、特定の薬剤物質などが挙げられる。これらの予防、治療あるいは原因物質を除去するために、歯牙に対して有効成分、薬用成分又は機能性素材を作用させる手段として、歯磨剤、含漱剤、クリーム、錠剤、ガムといった手段がとられてきた。
【0003】
しかしながら、歯磨剤や含漱剤の場合には、吐き出した後では口腔内の有効成分、薬用成分又は機能性素材の残存量が満足な効果を発揮するには不十分であり、クリームは使用性が悪く、固形インサートの場合には苦痛を伴ったりするといった使用性の問題点があった。また、いずれの場合にも、唾液の混入によって有効成分、薬用成分又は機能性素材の濃度低下や成分の漏出・溶出がおこり、効果が低下するだけでなく、不快な味がする場合があるという問題点があった。
【0004】
一方、唾液の影響を受けずに薬剤を長時間歯牙に適用させて、有効成分、薬用成分又は機能性素材の効果を十分に引き出し、高い機能を発揮させる方法として、各種有効成分、薬用成分又は機能性素材を含む組成物を、水不溶性の薄膜の上に保持させた歯牙用貼付剤に関する技術が提案されている。
【0005】
例えば、ドライフィルム、ポリカルボン酸と酢酸ビニルからなる粘着層、支持体としてポリエチレンからなる歯牙用貼付剤(特許文献1:特開昭63−54318号公報)、アクリル系共重合体と水不溶性セルロースからなる粘着層、支持体として高分子フィルムや不織布、アルミ箔等からなる歯牙用貼付剤(特許文献2:特開昭63−160649号公報)、ポリリン酸とアニオン性界面活性剤又は低級アルコールを含む組成物を、水不溶性の歯牙保持用具と併用する歯の美白用セット(特許文献3:特開2000−281548号公報)、ポリリン酸と特定の香料成分を含む組成物を、水不溶性の歯牙保持用具と併用する歯の美白用セット(特許文献4:特開2001−247438号公報)、過酸化物と触媒を含む組成物と支持体からなる歯牙美白用貼付剤(特許文献5:国際公開第01/26577号パンフレット)、漂白等の化学反応を伴わずエナメル質部分の光学特性変化を応用した歯の白色化方法、歯牙白色化用組成物及び歯牙美白用セット(特許文献6:国際公開第03/030851号パンフレット)などがある。また、シートの辺縁部に歯頸部ラインと同様の凹凸形状を設けた歯牙貼付剤(特許文献7:特開2001−322928号公報)、シートに切り込みを入れた歯牙貼付剤(特許文献8:特開2001−335470号公報)、永久変形せずに歯牙にフィットする可撓性支持体に歯牙粘着性美白組成物を施した技術(特許文献9:特表2002−503990号公報)、一定未満の力で永久変形して歯牙にフィットする支持体に歯牙美白組成物を施した技術(特許文献10:特表2002−537003号公報)、オルガノシロキサン樹脂を含む口腔表面残留性製剤と柔軟性支持体を組み合わせた歯牙貼付剤(特許文献11:特表2003−531814号公報)がある。
【0006】
また、このような歯牙貼付剤は、口中で違和感なく歯にフィットして長時間固定できることが重要であり、そのために貼付剤や支持体の素材や軟らかさ、大きさ、厚さ、形状などを規定する提案も行われている。中でも唾液の浸入から組成物を守り、効果を長時間発揮させるために、口中で違和感のなく柔軟性、薄さに優れた支持体を選定することは歯牙貼付剤の重要なポイントであり、これまでにポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、レーヨン、パルプ、綿、絹、紙、アルミニウム等を使った織布又は不織布やシート、フィルム、あるいはワックス類やガムベースなどの永久変形したものなど、歯にフィットする素材などが提案されてきた(特許文献3、4、6、9、10、11参照)。
【0007】
しかしながら、これらの素材からなる支持体を使った歯牙貼付剤は、薄さ、柔軟性は良好であるが、支持体の素材が元来口腔内に存在する組織とは異なる素材のため、装着中の違和感があり、唾液の分泌を誘発してしまい、長時間の適用が困難な場合があった。
【0008】
これらの問題点を解決し、組成物中の有効成分、薬用成分又は機能性素材が漏出もしくは希釈されることなく高濃度を維持したまま歯面又は歯と近接する歯肉組織に作用させるために、(1)歯牙形状にフィットして、(2)着用中に違和感がなく、(3)柔軟性に富み着用中のズレ、剥離が起きずに、(4)一定時間以上適用できる支持体が求められる。
【0009】
【特許文献1】特開昭63−54318号公報
【特許文献2】特開昭63−160649号公報
【特許文献3】特開2000−281548号公報
【特許文献4】特開2001−247438号公報
【特許文献5】国際公開第01/26577号パンフレット
【特許文献6】国際公開第03/030851号パンフレット
【特許文献7】特開2001−322928号公報
【特許文献8】特開2001−335470号公報
【特許文献9】特表2002−503990号公報
【特許文献10】特表2002−537003号公報
【特許文献11】特表2003−531814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記要望に応えたもので、歯牙へのフィット性、固定性に優れ、着用中に違和感がなく、柔軟性に富み着用中のズレ、剥離を防いで長時間の貼付を可能にして、しかも有効成分、薬用成分又は機能性素材といった口腔ケア有効成分の漏出や唾液の浸入を防止でき、各種口腔ケア効果を効果的に発揮させることができる歯牙貼付用製品、及びこれを用いた口腔ケア方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、支持体上に口腔ケア有効成分を含有する口腔ケア用組成物の層が形成されてなる歯牙貼付用製品において、難水溶性の支持体としてフィブロインからなるフィルム又はシートを使用することにより、貼付時の口腔内違和感を著しく低減して、長時間快適に組成物を歯牙表面に適用できること、更には前記フィルム又はシートが従来の支持体素材と異なり、可食性を有するため誤飲時の安全性にも優れることを見出し、本発明をなすに至った。
【0012】
即ち、本発明の歯牙貼付用製品は、歯牙に適用することで、むし歯、知覚過敏、歯肉炎、歯周病などの歯牙や歯茎の疾患予防や改善、歯質の強化、歯面の汚れ除去、歯の審美性向上、口臭予防などの口腔ケア機能を発揮する、口腔ケア有効成分(各種有効成分、薬用成分)を含有する口腔ケア用組成物を、厚さ0.05〜2mmのフィブロインフィルム又はシート上に塗布、塗膏、接着、吸着、積層、含浸、噴霧などの方法で保持させ、かかる歯牙貼付用製品を、1歯又は複数の歯牙又は歯茎表面に貼付して適用することにより、歯牙へのフィット性、固定性に優れ、着用中に違和感がなく、柔軟性に富み着用中のズレ、剥離を防いで長時間の貼付を可能にして、しかも口腔ケア有効成分の漏出や唾液の浸入を防止でき、口腔ケア用組成物に含有する口腔ケア有効成分が歯牙又は歯茎に十分に供給され、優れた口腔ケア効果が発揮されるものである。
【0013】
従って、本発明は、歯牙又は歯茎表面に適用することで、歯牙又は歯茎に口腔ケア有効成分を供給するための歯牙貼付用製品であって、(a)難水溶性の支持体として厚さ0.05〜2mmのフィブロインフィルム又はシート上に、(b)ステイン予防・除去剤、歯石予防・除去剤、歯牙白色化剤、う蝕予防・修復剤、知覚過敏予防・抑制剤、口臭予防・除去・隠蔽剤、歯肉炎予防・改善剤、歯周病予防・改善剤から選ばれる1種又は2種以上の口腔ケア有効成分を含有する口腔ケア用組成物の層を形成してなることを特徴とする歯牙貼付用製品、及び上記(a)のフィブロインフィルム又はシート上に、(b)の口腔ケア用組成物の層を形成してなる歯牙貼付用製品を、1歯又は複数の歯牙又は歯茎表面に貼付して適用することで、前記口腔ケア用組成物に含有する口腔ケア有効成分を歯牙又は歯茎に供給することを特徴とする口腔ケア方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の歯牙貼付用製品は、歯牙へのフィット性、固定性に優れ、着用中に違和感がなく、柔軟性に富み、着用中のズレ、剥離を防いで長時間の貼付を可能にし、しかも口腔ケア有効成分の漏出や唾液の浸入を防止でき、また、支持体として使用するフィブロインが可食性を有するため誤飲時の安全性にも優れ、これを歯牙又は歯茎へ適用することで、歯牙又は歯茎へ口腔ケア有効成分を満足に供給でき、むし歯、知覚過敏、歯肉炎、歯周病などの歯牙や歯茎の疾患予防や改善、歯質の強化、歯面の汚れ除去、歯の審美性向上、口臭予防などの優れた口腔ケア効果を効果的に発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明につき更に詳細に説明すると、本発明の歯牙貼付用製品は、歯牙又は歯茎表面に貼ることで、歯牙又は歯茎に口腔ケア有効成分を供給するための歯牙貼付用製品であって、(a)難水溶性の支持体としてフィブロインフィルム又はフィブロインシートと、(b)ステイン予防・除去剤、歯石予防・除去剤、歯牙白色化剤、う蝕予防・修復剤、知覚過敏予防・抑制剤、口臭予防・除去・隠蔽剤、歯肉炎予防・改善剤、歯周病予防・改善剤から選ばれる1種又は2種以上の口腔ケア有効成分を含有する口腔ケア用組成物とから構成される。
【0016】
本発明の歯牙貼付用製品では、支持体としてフィブロインからなるフィルム又はシートを使用する。このフィルム又はシートを構成するフィブロインは、硬蛋白質の一種で、特に紡糸生物(カイコ、チョウ、ミツバチ、ハチなどの昆虫とクモ類)の繭糸を構成し、また、植物(木材、綿、麻)からも抽出される。本発明では、最も汎用性の高い絹の繭糸から抽出されたフィブロインフィルム又はシートを支持体として使用することが好ましい。
【0017】
絹フィブロインは、繭糸の表面に付着したセリシンを除去して得られるタンパク質からなる繊維であり、近年、生分解性プラスチックの原料として注目されている。絹フィブロインからなるフィルムは、その柔軟性や生体適合性の高さから創傷被覆材(特開平11−104288号公報)や細胞培養床(特開平11−243948号公報)をはじめとする衣料素材や医療用材料に応用されているが、歯牙貼付製品支持体への応用はなされていないのが現状である。本発明者は、このようなフィブロインフィルム又はシートが歯牙貼付用製品の支持体として有用であり、これを支持体とした歯牙貼付用製品が上記したような優れた効果が得られることを見出したものである。
【0018】
本発明で使用するフィブロインフィルム又はシートの製法としては、公知の方法を採用することができ、例えば、天蚕繭層絹糸を0.7%マルセル石鹸溶液で精錬後、繭層絹糸フィブロイン2.5gを銅エチレンジアミン水溶液(水酸化第2銅6.1g、エチレンジアミン8.6gを水100mLに溶解)に溶解させ、その後、pH7.4〜7.7の1.2N 硫酸により、銅を解離させた溶液を水道水で4〜5日間、イオン交換水で2日間透析後、生成されたフィブロイン溶液をアクリル板上に展開し、水溶性天蚕絹糸フィブロイン膜を得、この膜を60℃で75%エタノールで処理することで、水難溶性のフィブロインフィルムを得ることができる。
【0019】
なお、こうして作られたフィブロインフィルムは、他にもフィブロインシート、フィブロイン膜、フィブロインスポンジ、フィブロインスポンジシート、フィブロインマスク、フィブロインファイバーマスクなどの名称で呼ばれているが、これらの呼称は供給先が独自に定めるものであり、品質上の違いはなく同一のものであり、本発明にかかわるフィブロインフィルム又はシートとして使用することができる。
【0020】
本発明製品は、フィブロインフィルム又はシートを支持体とするものであるが、この場合、支持体は、上記フィブロインフィルム又はシートからなる単層の支持体とすることができるが、上記フィブロインフィルム又はシートに、装着時に違和感を生じない素材、厚みの他のフィルムを重ね合わせた多層の支持体としてもよい。例えば、フィブロインフィルム又はシートにエチルセルロース、メチルセルロースやシリコーンのフィルム又はシートを重ね合わせたものも支持体として用いられる。
【0021】
更に、このように支持体を多層構造とする場合は、フィブロインフィルム又はシートと他の素材からなるフィルム又はシートとを任意に積層して多層構造とすることができる。多層体になる場合、本発明製品の口腔ケア用組成物を適用する面がフィブロインフィルム又はシートであっても、適用しない面はフィブロイン以外の他の素材からなるフィルム又はシートであってもよいが、好ましくは歯面に貼る側と反対の最外層が、フィブロインフィルム又はフィブロインシートで構成されることが、より口腔内での違和感が少なく望ましい。
【0022】
本発明にかかわる支持体は、支持体中のフィブロイン含有率(支持体全質量におけるフィブロインの質量)が少なくとも50質量%以上、特に70〜100質量%であることが望ましい。フィブロインの含有率が50%未満の場合、口腔内で違和感を有することがある。
【0023】
本発明において、支持体としてのフィブロインフィルム又はシートの厚さは、0.05〜2mm、好ましくは0.1〜1mmである。フィルム又はシートの厚さが0.05mm未満の場合は、1分以内で貼付剤の組成物がフィルム又はシートを通って流出してしまうとともに、組成物中に唾液が浸入し易くなるために、歯牙貼付剤を歯面に長時間付着させることが困難になる場合がある。また、フィルム又はシートの厚さが2mmを超えると、貼付剤が厚すぎて剥がれ易くなり、装着時の違和感が大きく唾液の分泌を誘発するため好ましくない。
【0024】
なお、上記したように支持体が、フィブロインフィルム又はシートに他のフィルム又はシートを重ね合わせた多層の支持体である場合は、支持体としてのフィブロインフィルム又はシート層と他のフィルム又はシート層との合計の厚さ(支持体全体の厚さ)を0.2〜3mm、特に0.2〜2mmとすることが好ましい。
【0025】
本発明製品では、フィブロインフィルム又はシートを主層とする支持体の片面又は両面に口腔ケア用組成物を塗布、塗膏、接着、吸着、積層、含浸、噴霧などの方法で保持させ、口腔ケア用組成物の層を形成する。この口腔ケア用組成物としては、歯に適用することで、安全に口腔ケア機能を有する口腔用組成物であって、支持体に上記方法で保持させることができるものであれば、その形態、組成等に特に制限はなく、口腔用組成物として通常配合される成分を含有し、ペースト状、クリーム状、ゲル状、ジェル状、液状、泡状、粉末状などの種々の形態に調製された口腔ケア用組成物を使用することができるが、本発明にかかわる口腔ケア用組成物は、ステイン予防・除去剤、歯石予防・除去剤、歯牙白色化剤、う蝕予防・修復剤、知覚過敏予防・抑制剤、口臭予防・除去・隠蔽剤、歯肉炎予防・改善剤、歯周病予防・改善剤から選ばれる1種又は2種以上の口腔ケア有効成分(口腔用組成物に配合される各種有効成分、薬用成分)を含む。
【0026】
ステイン予防剤・除去剤、歯石予防・除去剤は、効果を持つ既知の薬剤が使用でき、ステイン又は歯石予防・除去剤としては、ピロリン酸、トリポリリン酸、ピロリン酸ナトリウム、無水ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、ピロリン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどの縮合リン酸又はその塩、リン酸一水素ナトリウム、リン酸三ナトリウムなどのリン酸又はその塩、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、マロン酸、コハク酸などのヒドロキシカルボン酸又はその塩、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、EHDP(ヒドロキシエタンジホスホン酸)、コウジ酸又はその塩類、フィチン酸又はその塩類、アスコルビン酸又はその塩類などのキレート剤、ポリビニルピロリドン、総炭素数4以下の低級アルコール、フェニル基又はフェノキシ基をもつ総炭素数7〜15のアルコール、炭素数10以下のグリコール、ポリエチレングリコール(#200〜20,000)、シトラール、2−オクタノール、シンナミックアルデヒド、ベンズアルデヒド、メチルサリシレート、カルボン、シトラールジメチルアセタール、シトラールジエチルアセタール、シトラールプロピレングリコールアセタール、ヘプチルアルデヒド、オクチルアルデヒド、アニスアルデヒド、エチルヘキシルアルデヒド、ノニルアルデヒド、ジオスフェノール、フェランドラール、カルボメントン、チモキノン、クリサンテノン、クリプトン、ツヨン、フェンコン、ピクロクロシン、サンテノン、α−イオノン、β−イオノン、α−イロン、ヒノキチオール、α−ツヤプリン、γ−ツヤプリン、アルテミシアケトンなど特定のタバコヤニ溶解性香料、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、炭酸アパタイト、第三リン酸カルシウム、第四リン酸カルシウム、第八リン酸カルシウム、ゼオライト、オリゴ糖、bis−O−カルボキシフェニルコハク酸、アミノグアニジン、塩基性ペプチド、ポリオキシエチレン(2モル)アルキル(炭素数12〜14)スルホコハク酸二ナトリウム、ラウリルスルホコハク酸ナトリウムが好ましく用いられるが、タバコヤニや茶渋汚れに対する除去力や安定性の面から、特にピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、エタノール、シトラールが好適である。
【0027】
これらのステイン又は歯石予防・除去剤の口腔ケア用組成物全体に占める配合量は、好ましくは0.005〜20質量%の範囲で、特に好ましくは0.01〜10質量%の範囲である。配合量が0.005質量%未満の場合は効果が発現されない場合があり、また、20質量%より多い場合には味に支障が生じ、口中での溶け出しによる違和感が生じて長時間の貼付が困難になることがある。
【0028】
歯牙白色化剤としては、ポリエチレングリコール(#200〜800)、エタノール、グリセリン、イソプロパノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールで代表されるアルコール類、シトラール、2−オクタノール、シンナミックアルデヒド、ベンズアルデヒド、メチルサリシレート、カルボン、シトラールジメチルアセタール、シトラールジエチルアセタール、シトラールプロピレングリコールアセタール、ヘプチルアルデヒド、オクチルアルデヒド、アニスアルデヒド、エチルヘキシルアルデヒド、ノニルアルデヒド、ジオスフェノール、フェランドラール、カルボメントン、チモキノン、クリサンテノン、クリプトン、ツヨン、フェンコン、ピクロクロシン、サンテノン、α−イオノン、β−イオノン、α−イロン、ヒノキチオール、α−ツヤプリン、γ−ツヤプリン、アルテミシアケトンなどの香料成分、過酸化尿素、過酸化水素等の過酸化物、酸化チタン、タルク、酸化アルミニウム等の白色微粉末無機化合物、シェラック、エチルセルロース、メチルセルロース、オイドラギット等の水不溶性被膜剤が挙げられるが、使用感、安定性の点から、ポリエチレングリコール(#200〜800)、1,3−ブチレングリコール、グリセリンが好ましい。
【0029】
この場合、組成物全体に占める歯牙白色化剤の配合量は、組成物から歯牙白色化成分が溶出すれば特に制限されないが、上記ポリオール又はアルコール系白色化剤の場合は溶媒と兼ねる場合があるため、その場合には白色化剤と溶媒合計で組成物全体の50〜95質量%、特に80〜95質量%が好適である。香料成分や過酸化物の場合は、組成物全体の0.1〜30質量%が好ましい。白色微粉末無機化合物と水不溶性被膜剤は、単独もしくは組み合わせて使用されるが、いずれの場合も組成物全体の0.1〜80質量%が好ましい。いずれの歯牙白色化成分においても、上記配合量より少なすぎる場合には効果が発現されない場合があり、多すぎる場合には、味に支障が生じ、異物感や口中での溶け出しによる違和感が生じて長時間の貼付が困難になることがある。
【0030】
また、ステイン予防剤・除去効果あるいは歯石予防・除去効果と、歯牙白色化効果の両効果を有する成分を配合する場合には、それぞれの目的に応じた量を配合することが望ましいが、両方の効果を発揮させる場合には、成分ごとに上述した歯牙白色化に好適な配合量でそれぞれ配合することが好ましい。
【0031】
う蝕予防・修復剤としては、効果を持つ既知の薬剤が使用でき、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化錫、フッ化銀などのフッ化物イオン供給化合物、更には塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、水酸化カルシウムなどの無機性カルシウム化合物や、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、マロン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセリン酸カルシウム、酒石酸カルシウム、フィチン酸カルシウムなどの有機性カルシウム化合物、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、リゾチームなどの酵素剤、クロルヘキシジン、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウムなどの既知の殺菌・抗菌剤を1種単独で或いは2種以上を組み合わせて使用することができるが、安定性の点からフッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、デキストラナーゼが好ましい。
【0032】
これらの薬剤のうち、フッ素イオン供給物やカルシウム化合物は、健全な歯牙に用いる場合には脱灰抑制によるう蝕予防効果、脱灰を受け既に初期う蝕を有する歯牙に用いる場合には、再石灰化によるう蝕修復効果を発揮する。また、酵素や殺菌・抗菌剤は、う蝕の原因となる歯垢を分解除去する効果を発揮する。
【0033】
う蝕予防・修復剤の配合量は、好ましくは組成物全体の0.005〜20質量%の範囲で、特に好ましくは0.05〜10質量%の範囲である。配合量が0.005質量%未満の場合は効果が発現されない場合があり、また、20質量%より多い場合には口中での溶け出しによる違和感が生じて長時間の貼付が困難になることがある。
【0034】
知覚過敏予防・抑制剤としては、効果を持つ既知の成分が使用でき、乳酸アルミニウム、硝酸カリウム、塩化亜鉛、塩化ストロンチウム、フッ化ジアミン銀、ホルムアルデヒド、ピロクトンオラミンなどの薬剤を1種或いは2種以上を組み合わせて配合できるが、安定性の点で乳酸アルミニウム、硝酸カリウムが好ましい。他の薬剤と同様に健全な歯牙に用いる場合には知覚過敏予防効果、象牙細管が露出・開口した歯牙に用いる場合には、知覚過敏抑制効果を発揮する。
【0035】
知覚過敏予防・抑制剤の配合量は、好ましくは組成物全体の0.1〜20質量%の範囲で、特に好ましくは0.5〜10質量%の範囲である。配合量が0.1質量%未満の場合は効果が発現されない場合があり、また、20質量%より多い場合には味に支障が生じ、口中での溶け出しによる違和感が生じて長時間の貼付が困難になることがある。
【0036】
口臭予防・除去・隠蔽剤としては、効果を持つ既知の成分が使用でき、クロルヘキシジン塩類、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノールなどの殺菌剤・抗菌剤、ローズマリー、チョウジ、セージ、タイム、オウゴンなどの生薬抽出物、グルコン酸銅、クエン酸銅、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛などの銅、亜鉛化合物、メントール、アネトール、ペパーミント油、スペアミント油などの香料成分、ポリフェノールオキシダーゼ等の酵素を1種或いは2種以上を組み合わせて使用できるが、効果と安定性の点でトリクロサン、ローズマリー、グルコン酸銅、メントール、ポリフェノールオキシダーゼが好ましい。殺菌剤・抗菌剤は、口臭の原因菌を取り除いて口臭を予防する効果があり、生薬抽出物や銅、亜鉛化合物は予防効果に加えて臭い物質の分解、消臭効果を発揮する。また、香料成分は、殺菌・抗菌効果に加えて不快な臭いをマスキングする効果を発揮する。また、酵素はポリフェノール酸化物質として効果を向上させることができる。
【0037】
口臭予防・除去・隠蔽剤の配合量は、好ましくは組成物全体の0.001〜10質量%の範囲で、特に好ましくは0.005〜5質量%の範囲である。0.001質量%未満の場合は効果が発現されない場合があり、10質量%より多い場合には強い臭いや味、口中での溶け出しによる違和感が生じて長時間の貼付が困難になることがある。
【0038】
歯牙に貼付して歯肉炎や歯周炎などの歯周疾患を予防・改善する薬用成分(歯肉炎予防・改善剤、歯周病予防・改善剤)としては、歯面から流出し歯周ポケットに浸入して効果を発揮する既知の成分が使用でき、クロルヘキシジン塩類、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノールなどの殺菌剤・抗菌剤、トラネキサム酸、ε−アミノカプロン酸、オオバク抽出物、アラントイン、ジヒドロコレスタノール、グリチルリチン酸類、グリチルレチン酸、ビサボロール、塩化ナトリウムなどの抗炎症、止血剤を1種単独で或いは2種以上を組み合わせて使用することができるが、歯頸部近辺の歯肉組織への有効性の点から塩化セチルピリジニウム、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサンが好ましい。
【0039】
上記薬用成分の配合量は、組成物全体の0.001〜5質量%、特に0.005〜3質量%の範囲が好ましく、配合量が0.001質量%未満の場合は効果が発現されない場合があり、5質量%より多い場合には口中での溶け出しによる違和感が生じて長時間の貼付が困難になることがある。
【0040】
本発明では、上述の各種有効成分、薬用成分等の口腔ケアに有効な有効成分を含有する口腔ケア用組成物をペースト状、クリーム状、ゲル状、ジェル状、ゾル状、液状、泡状、粉末状等の剤型に調製し、これを支持体に固定するものであり、本発明の口腔ケア用組成物は、上述した成分に加えて、更にその形態等に応じた適宜なその他の任意成分を配合して、通常の口腔用組成物と同様に常法で調製することができる。
【0041】
任意成分としては、例えば、口腔ケア用組成物をゲル化、ペースト化して歯牙への塗布性を高めたり、あるいは歯牙との粘着性を高める目的で各種のゲル化剤が使用される。この場合、ゲル化剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、カラゲナン、キサンタンガム、トラガントガム、カラヤガム、アラビアガム、ジェランガム、ネイティブジェランガムなどのガム類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ボリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイドなどの合成粘結剤、シリカゲル、アルミニウムシリカゲル、ビーガム、ラポナイトなどの無機粘結剤等の1種又は2種以上を配合し得る。この場合、口中での粘りや溶け出しが少なく使用感に優れたゲル化剤として、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カラゲナン、キサンタンガム、ネイティブジェランガム、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドンが好適に使用される。特に、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カラゲナン、キサンタンガム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドンが望ましい。
【0042】
上記ゲル化剤の配合量は、口腔ケア用組成物の固定力だけで歯牙貼付用製品が歯牙に付着、固定することが望ましいため、組成物全体の0.1〜20質量%が好適であり、中でも0.5〜15質量%が望ましい。0.1質量%未満の場合には粘着力が発揮されず、支持体に固定しにくくなる場合があり、20質量%より多いとゲル化剤が十分に溶けきらず、組成物が不均一になるだけでなく、有効成分の効果発現を阻害する場合がある。
【0043】
更に、歯牙白色化剤以外の有効成分を含む口腔ケア用組成物の乾燥を防ぐと共に、使用感を高める目的で、保湿剤として、ソルビット、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリト−ル、マルチト−ル、ラクチトール等の1種又は2種以上を配合し得る。
【0044】
また、歯牙の洗浄効果を高めたり、香料などの乳化、分散などの目的で、界面活性剤として、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤や両性イオン界面活性剤の1種又は2種以上を併用することもできる。
【0045】
この場合、アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸ナトリウム、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウムなどのN−アシルグルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ミリストイルサルコシンナトリウムなどのN−アシルサルコシンナトリウム、N−ラウロイルメチルタウリンナトリウム、N−ミリストイルメチルタウリンナトリウムなどのN−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ラウリルPOE(ポリオキシエチレン)硫酸ナトリウム、ラウリルPOE酢酸ナトリウム、ラウリルPOEリン酸ナトリウム、ステアリルPOEリン酸ナトリウム等が用いられる。
【0046】
ノニオン性界面活性剤としては、ステアリン酸モノグリセリル、ラウリン酸デカグリセリルなどのグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステルなどの糖脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステルなどの糖アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ミリスチン酸モノ又はジエタノールアミドなどの脂肪酸エタノ−ルアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル、炭素数12〜20のアルキルグルコシド等が用いられる。
【0047】
両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、N−ラウリルジアミノエチルグリシン、N−ミリスチルジアミノエチルグリシンなどのN−アルキルジアミノエチルグリシン、N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等が用いられる。
【0048】
界面活性剤の配合量は、組成物全体の0.2〜40質量%、特に0.5〜10質量%が好適である。
【0049】
本発明の口腔ケア用組成物には、更に、通常口腔用組成物に香料として配合されているメントール、アネトール、カルボン、ペパーミント油、スペアミント油などの香料、安息香酸及びそのナトリウム塩、パラベン類などの防腐剤、赤色3号、赤色104号、黄色4号、青色1号、緑色3号、雲母チタン、弁柄などの色素又は着色剤、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、グリチルリチン、アスパルテームなどの甘味剤等を配合し得る。
【0050】
また、本発明製品は、歯牙又は歯茎に適用した後に、歯牙又は歯茎に残存する口腔ケア用組成物を用いて歯ブラシでブラッシングすることで、歯磨剤として使用することもできる。このように歯磨剤として使用する場合には、口腔ケア用組成物に研磨剤を配合することが好ましい。研磨剤としては、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、ベントナイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、酸化チタン、結晶セルロース、ポリメタクリル酸メチル、その他の合成樹脂等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上が使用される。なお、研磨剤の配合量は、組成物全体の2〜40質量%、特に10〜30質量%とすることが好ましい。
【0051】
口腔ケア用組成物のpHは、口腔内及び人体に安全性上問題ない範囲であれば、特に限定されるものではないが、望ましくはpH4〜10であり、更に望ましくは5.5〜9である。pH4未満の場合には適用時間によっては脱灰の懸念があり、pH10超の場合には、皮膚や粘膜に触れた場合、炎症を起こす等の懸念がある。pH調整剤として、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等を適量配合し得る。
【0052】
本発明において、口腔ケア用組成物の歯牙貼付用製品全体に占める割合(質量%)は、組成物の固定力だけで歯牙に付着、固定して十分な量の有効成分を歯牙や近接する歯茎に供給する必要があるため、製品全体に対して好ましくは5〜98質量%、より好ましくは20〜95質量%である。口腔ケア用組成物の割合が5質量%未満の場合、歯牙への固定力が不足するとともに有効成分量が不足することがあり、98質量%より多いと口中での溶け出しが生じて違和感となり、長時間の貼付が困難になることがある。
【0053】
本発明の歯牙貼付用製品は、上記支持体上に口腔ケア用組成物を塗布、塗膏、接着、吸着、積層、含浸、噴霧などの手段により保持、固定させ、口腔ケア用組成物の層を形成することにより調製され、上記支持体への口腔ケア用組成物の固定方法は、口腔ケア用組成物の形態等に応じて通常の方法を採用することができる。具体的には、口腔ケア用組成物を上記支持体とPETフィルム等のフェイシングフィルムとの間に挟み、展延するなどして、支持体へ口腔ケア用組成物を固定し、所望の形状、厚さに調製することができる。なお、このようにして得られる歯牙貼付用製品は、製品使用時に上記フェイシングフィルムを剥がして歯牙又は歯茎へ適用することができる。
【0054】
本発明の歯牙貼付用製品の大きさ、形状、厚みとしては、1歯又は複数の歯牙又は歯茎の表面、裏面、又は両面を十分に被覆するものであれば、特に規定されるものではないが、支持体、口腔ケア用組成物、フェイシングフィルムを含む歯牙貼付用製品全体で、横方向の最大幅が3〜120mm、縦方向の最大高さは3〜50mmが好ましく、特に歯牙の審美性向上などを目的として前歯を中心とする歯牙1〜10本分の部分的貼付を行う場合には、最大幅5〜80mm、最大高さ5〜40mmが好適である。
【0055】
形状としては、被覆したい歯牙の形状に応じて、例えば正方形、長方形、台形、三角形、多角形、楕円形、円形等の形状のシートの歯肉接触部位が歯頸部ラインと同じ凹凸形状を形成したもの等が挙げられるが、特に一枚のシートを歯列上で折り返して歯牙の表裏両面を同時に被覆できるような形状にしたものが、歯牙への密着固定性に優れるため好ましい。更に、複数の歯に折り返して貼付する場合には、シートの辺縁部に1本又は複数本の切り込みを形成することで、貼付剤が歯列形状に変形し易くなり密着固定性が向上して好ましい。
【0056】
また、歯牙貼付用製品の厚みとしては、支持体と口腔ケア用組成物の層とを合わせたトータルの厚みとして0.1〜5mm、特に0.2〜3mmが好ましい。厚みが0.1mm未満の場合には、薄すぎて歯牙への固定力が不足したり唾液が浸入する場合があり、5mmより厚い場合は、製剤が歯から剥がれ易くなったり、口腔内での違和感が大きく唾液の分泌を誘発するため、いずれも口腔ケア効果を損なう場合がある。
【0057】
本発明の歯牙貼付用製品は、予め口腔ケア用組成物を塗布、塗膏、接着、吸着、積層、含浸、噴霧などの手段により、フィブロインフィルム又はシートからなる支持体に保持させて、そのまま歯牙に着用できるようにした方式、口腔ケア用組成物と支持体を別途用意して、使用時に組成物を支持体に保持させた後に歯牙に着用する方式、口腔ケア用組成物を歯牙に付着させた後に支持体で被覆する方式のいずれにおいても、目的を達成することができる。従って、本発明製品は、上記適用方式に応じて、予め支持体に口腔ケア用組成物が保持された一剤型、支持体と口腔ケア用組成物とが別包装となった二剤型などの形態とすることができる。
【0058】
本発明製品は、例えば貼付後に歯磨剤としての機能を備えた歯牙貼付用製品とするためには、貼付剤を歯牙又は歯茎に貼付して剥離した時に、ブラッシングのために適量な口腔ケア用組成物が歯面に残留することが望ましい。この場合、適量の歯面残留性とは、本発明の歯牙貼付剤を歯牙に1kgの力で5秒間押し付けて貼付し、加重せずに3分間静置した後に歯牙から剥離する時に、上記口腔ケア用組成物が、歯牙貼付用製品を貼付した歯牙1本当たり0.001〜0.5g、特に0.01〜0.03gの範囲で歯牙に残留することが望ましい。更に、口腔ケア用組成物単独での粘着力が、組成物を内径35mm×深さ15mmの円柱状カップに表面が平らになるよう充填して、測定機器に(株)サン科学製レオメーターCR−500DXとCR−150を使い、組成物の充填されたカップの上方から、直径20mm×高さ9mmのアクリル円柱を300mm/分の速さで、アクリル円柱に1kgの応力がかかるまでカップ内の組成物に進入させ、その状態でアクリル円柱を30秒間静置した後に、同じ300mm/分の速さで上方に引っ張り上げたときの、引っ張り応力×時間の積分値である粘着力が0.005〜0.5J、特に0.01〜0.3Jであることが望ましい。
このような歯面残留性、粘着力を有する歯牙貼付用製品は、重量平均分子量20万〜120万のカルボキシメチルセルロース、重量平均分子量90万〜120万のポリビニルピロリドンから選ばれる1種又は2種以上のゲル化剤を組み合わせて、組成物全体の0.1〜20質量%、特に0.5〜15質量%配合することにより作製することができる。
【0059】
本発明において、歯牙貼付用製品の適用回数、時間等は適宜選定されるが、通常、1日1〜6回、特に1〜3回で、1回1〜60分、特に1〜10分であるが、就寝中に適用することも可能である。
【0060】
また、本発明の歯牙貼付用製品は、歯牙又は歯茎を予め研磨剤入りの歯磨剤でブラッシングして歯牙表面の汚れを落とした後に適用することが、口腔ケア用組成物中の口腔ケア有効成分の歯牙又は歯茎表面への密着、浸透性がより促進されるため、特に好ましい。この場合、適用前のブラッシングに使用する歯磨剤としては、研磨剤が入っていれば歯磨剤の成分は特定されるものではなく、通常の歯磨剤を使用することができる。なお、本発明の歯牙貼付用製品の使用形態が、使用時ごとに口腔ケア用製剤を支持体に固定させ、歯牙に着用する場合には、上記研磨剤を口腔ケア用組成物に配合することにより、この口腔ケア用組成物を適用前のブラッシング用の歯磨剤としても兼用することもできる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、各例中の%はいずれも質量%である。また、下記例で、PEはポリエチレン、PPはポリプロピレン、PETはポリエチレンテレフタレートであることを示す。
【0062】
〔実施例1,2、比較例1,2〕
下記組成の歯牙美白用組成物(i)、(ii)のそれぞれを、溶媒にゲル化剤を分散し、80℃で加熱溶解し、常温冷却後にその他の成分を加え、4kPaまで減圧して均一混合する方法にて調製し、この組成物を厚さ0.1mmフィブロインフィルム(ツキオカ社製)と、厚さ50μmのPET製フェイシングフィルム(商品名:セラピールBK、東洋メタライジング(株)製)の間に挟み、のし棒でフェイシングフィルムを含む歯牙貼付剤全体の厚みが約1.0mmになるよう組成物を展延して幅60mm(上辺)、45mm(下辺)×高さ25mmの台形にカットし、歯牙貼付剤(実施例1,2)を作製した。
【0063】
比較例として、下記組成の歯牙美白用組成物(i)、(ii)を同じ方法で調製し、実施例1、2のフィブロインフィルムと厚みが同じ0.1mmであるPP製不織布(出光石油化学(株)製RN2030)と、実施例1、2と同じPET製フェイシングフィルム(商品名:セラピールBK)の間に挟み、のし棒でフェイシングフィルムを含む歯牙貼付剤全体の厚みが約1.0mmになるよう組成物を展延して実施例1,2と同じサイズ、形状にカットし、歯牙貼付剤(比較例1、2)を作製した。
【0064】
歯牙美白用組成物:
組成物(i) 組成物(ii)
組 成 (貼付歯磨剤) (貼付剤)
濃グリセリン 52.0% −
(濃グリセリン、ライオン(株))
1,3−ブチレングリコール − 24.5%
(1,3−ブチレングリコール、ダイセル化学工業(株))
ポリエチレングリコール#400 24.5 59.5
(マクロゴール400、ライオン(株))
カルボキシメチルセルロースナトリウム 3.0 −
(重量平均分子量670,000、CMCダイセル1150、ダイセル化学工業(株))
ヒドロキシプロピルセルロース−L − 15.0
(重量平均分子量60,000、HPC−L、日本曹達(株))
ポリビニルピロリドン − 1.0
(重量平均分子量1,200,000、ルビスコールK−90、BASFジャパン(株))
無水ケイ酸 20.0 −
(化粧品原料基準規格品無水ケイ酸、Sorbosil AC33、イネオスシリカ)
ラウリル硫酸ナトリウム 0.3 −
香料 0.2 −
計 100.0% 100.0%
【0065】
得られた歯牙貼付剤のフェイシングフィルムを剥がし、歯牙貼付剤を歯牙に直接貼付して下記方法で適用し、下記評価を行った。
【0066】
歯牙白色化効果及び使用感の評価:
上顎中切歯及び側切歯の計4本が全て健常歯である10人を被験者として、全員が上記4種の貼付剤をそれぞれ10分間上顎前歯4本に貼付(貼付剤の半分の高さで折り返して対象歯の表裏両面に貼付)したときの、貼付剤使用前と貼付剤使用後10分経過後の上顎中切歯及び側切歯の計4本の色調の変化を、色差計(日本電色工業(株)製SE2000+口径4mmペンセンサー)を使った色差Lab測色法による△L値で測定した。なお、上記美白用組成物による歯牙白色化効果の持続性は最大で1日程度のため、各サンプルは、間に1日以上の未使用期間をおいて使用した。
被験者毎に得られた4本の対象歯の△L値の平均値を算出し、更に被験者10人の△L平均値を平均化した値を歯牙白色化効果として、下記基準による評点付けを行った。
△L値(平均値) 白色化効果
5以上 ◎
3以上〜5未満 ○
3未満 ×
【0067】
併せて各被験者に、貼付剤着用中の歯面からのズレの有無と、違和感についてそれぞれ下記の5段階評価でアンケート調査を実施した。最終的に、ズレ、違和感とも被験者10人の評点の平均値を結果として使用した。
評点(評価) 貼付剤の歯面からのズレ、着用中の違和感
5 全くない
4以上5未満 ほとんどない
3以上4未満 どちらともいえない
2以上3未満 ややある
1以上2未満 かなりある
【0068】
実施例1,2及び比較例1,2の歯牙貼付剤使用による、歯牙白色化の効果(全被験者対象歯の△L平均値)と貼付剤着用中のズレ、違和感の結果(全被験者の平均値)を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
以上の結果から、支持体にフィブロインフィルムを用いた本発明の歯牙貼付剤(実施例1,2)は、同じ厚さのPP製不織布を支持体に使った場合(比較例1,2)に比べて、歯牙白色化効果が高く、同じ美白用組成物を適用した場合でも、歯牙に貼付したときのズレや違和感が少なく、歯牙白色化効果が向上することが確認された。
【0071】
〔実施例3、比較例3〕
下記組成の知覚過敏予防用組成物を常法(溶媒に薬用成分、ゲル化剤、pH調整剤を常温常圧で撹拌しながら投入し溶解、ゲル化させた後に、香料、無水ケイ酸、ラウリル硫酸ナトリウムを加えて4kPaまで減圧して均一混合)により調製し、この組成物を厚さ0.5mmのフィブロインシート(ライオン(株)試作品)と、厚さ50μmのPET製フェイシングフィルム(商品名:セラピールBK、東洋メタライジング(株)製)の間に挟み、のし棒でフェイシングフィルムを含む歯牙貼付剤全体の厚みが約2mmになるよう組成物を展延して幅7mm×高さ20mmの長方形にカットし、歯牙貼付剤(実施例3)を作製した。
【0072】
比較例として、下記組成の知覚過敏予防用組成物を上記と同じ方法で調製し、実施例3のフィブロインシートと厚みが同じ0.5mmであるPP/PEフィルム/レーヨン製3層不織布(出光石油化学(株)製RN2050/厚さ20μm低密度PEフィルム/日本バイリーン(株)製試作レーヨン不織布、貼り合せ加工:シンコーラミ工業(株))と実施例と同じPET製フェイシングフィルム(商品名:セラピールBK)の間に挟み、のし棒でフェイシングフィルムを含む歯牙貼付剤全体の厚みが約2mmになるよう組成物を展延して実施例3と同じサイズ、形状にカットし、歯牙貼付剤(比較例3)を作製した。
【0073】
知覚過敏予防用組成物(使用法;貼付歯磨剤):
硝酸カリウム 4.0%
(食品添加物硝酸カリウム,大塚化学(株))
フッ化ナトリウム 0.4
(特級フッ化ナトリウム、和光純薬工業(株))
グリセリン 20.0
(グリセリン、ライオン(株))
カルボキシメチルセルロース 1.5
(CMCダイセル−1150、ダイセル化学工業(株))
ポリビニルピロリドン(重量平均分子量1,2000,000)2.0
(ルビスコールK−90,BASFジャパン(株))
ポリアクリル酸 2.0
(ジュンロンPW−110、日本純薬(株))
ステビオサイト 0.1
メチルパラベン 0.05
香料 1.0
水 バランス
計 100.0%
【0074】
得られた歯牙貼付剤のフェイシングフィルムを剥がし、歯牙貼付剤を歯牙に直接貼付して下記方法で適用し、下記評価を行った。
【0075】
知覚過敏予防効果の評価:
知覚過敏歯(対象歯)を1歯以上有する、他に知覚過敏と誤解するようなう蝕、歯周疾患などの重篤な口腔疾患のない10人を被験者として、対象歯の本数と、5℃の冷水で洗口したときの対象歯毎の痛みのレベル(被験者の自覚に基づく下記の5段階評価)を調べた。その後、対象歯の本数と対象歯毎の痛みの平均値が等しくなるように、被験者を5人ずつA群,B群の2つに層別した。A群の5人は実施例3記載の歯牙貼付剤を、B群の5人は比較例3記載の貼付剤を、それぞれ対象歯1歯につき1枚ずつ、全ての対象歯に10分間貼付(貼付剤の半分の高さで折り返して対象歯の両面に貼付)した後に、貼付剤を剥がして歯に付着した製剤を10秒間歯ブラシでブラッシングすることにより完全にはがし、ぬるま湯で洗口する処置を、1日2回、7日間継続して行った。なおこの間、被験者は対象歯への他の口腔清掃を停止した。7日間の処置後に、再び5℃の冷水で洗口したときの対象歯毎の痛みのレベルを、試験前と同じ指標で調べ、A,B群の対象歯毎の痛みの5人の平均値から、知覚過敏症状の改善効果を比較評価した。
併せて各被験者に、貼付剤着用中の歯面からのズレの有無と、違和感についてそれぞれ下記の5段階評価でアンケート調査を実施した。最終的に、ズレ、違和感ともA,B群被験者各5人の評点の平均値を結果として使用した。
【0076】
評点(評価) 5℃冷水洗口時の痛み
5 痛みはない
4以上5未満 ほとんどない
3以上4未満 やや痛む
2以上3未満 痛む
1以上2未満 非常に痛む
【0077】
評点(評価) 貼付剤の歯面からのズレ、着用中の違和感
5 全くない
4以上5未満 ほとんどない
3以上4未満 どちらともいえない
2以上3未満 ややある
1以上2未満 かなりある
【0078】
実施例3及び比較例3の歯牙貼付剤使用による、知覚過敏症状改善の結果(各群の被験者対象歯の評点の平均値)及び貼付剤着用中のズレ、違和感の結果(全被験者の平均値)を表2に示す。
【0079】
【表2】

【0080】
以上の結果から、支持体にフィブロインシートを用いた本発明の歯牙貼付剤(実施例3)は、同じ厚さのPP/PEフィルム/レーヨン製3層不織布を支持体に使った場合(比較例3)に比べて、同じ知覚過敏予防用組成物を適用した場合でも、優れた知覚過敏改善効果を発揮し、歯牙に貼付したときのズレや違和感が少なく、知覚過敏予防効果を向上させることを確認した。
【0081】
〔実施例4、比較例4〕
下記組成の口臭予防用組成物を常法(溶媒に薬用成分、ゲル化剤、甘味剤を常温常圧で撹拌しながら投入し溶解、ゲル化させた後に、香料、無水ケイ酸、ラウリル硫酸ナトリウムを加えて4kPaまで減圧して均一混合)により調製し、この組成物を厚さ1.0mmのフィブロインシート(ライオン(株)試作品)と、厚さ50μmのPET製フェイシングフィルム(商品名:セラピールBK、東洋メタライジング(株)製)の間に挟み、のし棒でフェイシングフィルムを含む歯牙貼付剤全体の厚みが約2mmになるよう組成物を展延して幅125mm×高さ8mmの長方形にカットし、歯牙貼付剤(実施例4)を作製した。
比較例として、下記組成の口臭予防用組成物を同じ方法で調製し、実施例4のフィブロインシートと厚みが同じ1.0mmである発泡PEシート(積水化学工業(株)製ボラーラIF1501)と実施例と同じPET製フェイシングフィルム(商品名:セラピールBK)の間に挟み、のし棒でフェイシングフィルムを含む歯牙貼付剤全体の厚みが約2mmになるよう組成物を展延して実施例4と同じサイズ、形状にカットし、歯牙貼付剤(比較例4)を作製した。
【0082】
口臭予防用組成物(使用法;貼付剤):
L−メントール 0.7%
(L−メントール、高砂香料工業(株))
ローズマリー 0.1
(ローズマリーエキス、レオミール100、スタンレー(株))
グルコン酸銅 0.5
(食品添加物グルコン酸銅、扶桑化学工業(株))
ポリフェノールオキシダーゼ 0.1
(大和化成(株))
トリクロサン 0.3
(医薬部外品原料規格規格品トリクロサン、チバ社)
濃グリセリン 40.0
(濃グリセリン、ライオン(株))
プロピレングリコール 3.0
(プロピレングリコール、昭和電工(株))
キサンタンガム 4.0
(ケルトロール630,CPケルコ社)
アルギン酸ナトリウム 2.5
(化粧品用アルギン酸ナトリウム、(株)紀文フードケミファ)
ラウリル硫酸ナトリウム 0.5
フッ化ナトリウム 0.1
サッカリンナトリウム 0.1
香料 0.5
水 バランス
計 100.0%
【0083】
得られた歯牙貼付剤のフェイシングフィルムを剥がし、歯牙貼付剤を歯牙に直接貼付して下記方法で適用し、下記評価を行った。
口臭抑制効果及び使用感の評価:
口臭の評価には、臭気識別判定の専門家(臭気判定士)1名によるUBC式官能評価法を採用した。呼気採取方法は、まず口呼吸を3回行った後に、1分間口を閉じて口腔内に溜まった息のみを所定のビニールパイプを通して臭気判定士に吹きかけ、その臭いの強さに応じて下記の5段階で評価した。
【0084】
評点(評価) 臭いの強度
4以上5以下 強烈なにおい
3以上4未満 強いにおい
2以上3未満 らくに感知できるにおい
1以上2未満 感知できるが、弱いにおい
1未満 においなし
【0085】
歯磨きをしないで水洗口のみ行った30分後の呼気が、上記の評価方法で2点以上の「口臭あり」と判定された20〜45才の非喫煙者12人を被験者として、口臭の強さの平均値が等しくなるように、被験者を6人ずつA群,B群の2つに層別した。A群の6人は実施例4記載の歯牙貼付剤を、B群の6人は比較例4記載の貼付剤を、それぞれ上下顎ごとに1枚ずつ、上下全ての歯の頬側のみを覆うように5分間貼付して剥がし、10秒間歯ブラシでブラッシングし、水洗口した後に他の口腔清掃や飲食をせずに1時間経過させた時の各被験者の口臭を、試験開始前と同じ評価方法で判定した。
【0086】
また、併せて各被験者に、貼付剤着用中の歯面からのズレの有無と、違和感についてそれぞれ下記の5段階評価でアンケート調査を実施した。最終的に、ズレ、違和感ともA,Bの各群の被験者6人の評点を平均化した値を結果として使用した。
【0087】
評点(評価) 貼付剤の歯面からのズレ、着用中の違和感
5 全くない
4以上5未満 ほとんどない
3以上4未満 どちらともいえない
2以上3未満 ややある
1以上2未満 かなりある
【0088】
実施例4及び比較例4の使用による、口臭減少の結果(各群の被験者評点の平均値)と貼付剤着用中のズレ、違和感の結果(各群の被験者評点の平均値)を表3に示す。
【0089】
【表3】

【0090】
以上の結果から、支持体にフィブロインシートを用いた本発明の歯牙貼付剤(実施例4)は、同じ厚さの発泡PEシートを支持体に使った場合(比較例4)に比べて、同じ口臭予防用組成物を適用した場合でも、歯牙に貼付したときのズレや違和感が少なく、優れた口臭抑制効果を発揮することを確認した。
【0091】
〔実施例5、比較例5〕
下記組成のう蝕及び歯周病予防用組成物(ゾル状)を、常法(油性成分と加熱溶解したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油をエタノールに投入溶解させた後に、この溶液を残りの成分を溶かした水溶液中に投入し常温常圧で均一混合)により調製し、この組成物3.0gを、厚さ1.0mm×幅120mm×高さ20mmの長方形にカットして高さが半分になるように2つ折りにプレス加工し、歯列弓状に沿ったU字型に変形し易いよう、舌側に貼付する面の底辺の端から30mm、60mm、90mmの位置に、それぞれ高さ10mmの底辺に対して垂直な切り込みを入れたフィブロインシートに使用直前に含浸させて歯牙貼付剤(実施例5)を作製した。
【0092】
比較例として、下記組成のう蝕及び歯周病予防用組成物を同じ方法で調製し、この組成物3.0gを実施例5と同じ厚み、サイズ、形状にカットしたスポンジ(材質:ナイロンポリウレタンフォーム)に使用直前に含浸させて歯牙貼付剤(比較例5)を作製した。
【0093】
う蝕及び歯周病予防用組成物(使用法;貼付後ブラッシング):
デキストラナーゼ 0.3%
(デキストラナーゼ、10,000単位/g)
フッ化ナトリウム 0.2
(特級フッ化ナトリウム、和光純薬工業(株))
ポリエチレングリコール#300 10.0
(マクロゴール300、ライオン(株))
ポリエチレングリコール#400 9.99
(マクロゴール400、ライオン(株))
1,3−ブチレングリコール 50.0
(1,3−ブチレングリコール、ダイセル化学(株))
リノレン酸 5.0
ポリビニルピロリドン(重量平均分子量1,200,000)10
(ルビスコールK−90、BASFジャパン(株))
2,6−ジ−ブチルヒドロキシトルエン 0.01
香料 0.5
水 バランス
計 100.0%
【0094】
得られた歯牙貼付剤のフェイシングフィルムを剥がし、歯牙貼付剤を歯牙に直接貼付して下記方法で適用し、下記方法で評価を行った。
【0095】
歯垢付着抑制効果及び使用感の評価:
う蝕及び歯周病の原因となる歯垢の抑制効果を評価した。歯垢付着状態の評価法には、PHP(Patient Hygiene Performance)法を採用した。評価の対象歯として、上顎左右6番の頬側、下顎左右6番の舌側及び上顎右1番、下顎左1番の唇側の計6歯を用いた。被験者にエリスロシン ウエハー(Wafer)を噛ませて染色した後、各歯を5分割し、これら各部に歯垢があれば1点を加え、なければ0点として、各人1歯当たりの平均値を算出した(最高5点)。
【0096】
歯磨きをしないで水洗口のみ行った30分後の歯垢付着状態が、上記の評価方法で1歯当たりの平均値が1点以上の「歯垢あり」と判定された、20〜40才の健常人20人を被験者として、各群間の1歯当たりの歯垢付着平均値がほぼ等しくなるように、被験者を10人ずつA群,B群の2つに層別した。A群の10人は実施例5の歯牙貼付剤を、B群の10人は比較例5記載の貼付剤を、それぞれ上下顎ごとに1枚ずつ、上下顎とも1〜6番の歯の両面を覆うように3分間貼付して剥がし、そのまま歯ブラシで3分間ブラッシングして水洗口する操作を1日3回、計10日間行った。なお、試験期間中は、他の口腔清掃行為は禁止した。10日後の各被験者の歯垢付着の状態を、試験開始前と同じ評価方法で判定し、平均化した値を結果として使用した。
【0097】
また、併せて各被験者に、貼付剤着用中の歯面からのズレの有無と、違和感についてそれぞれ下記の5段階評価でアンケート調査を実施した。最終的に、ズレ、違和感ともA,Bの各群の被験者10人の評点を平均化した値を結果として使用した。
【0098】
評点(評価) 貼付剤の歯面からのズレ、着用中の違和感
5 全くない
4以上5未満 ほとんどない
3以上4未満 どちらともいえない
2以上3未満 ややある
1以上2未満 かなりある
【0099】
実施例5及び比較例5の使用による、歯垢付着量の変化(各群の被験者1歯当たりの平均値)と貼付剤着用中のズレ、違和感の結果(各群の被験者評点の平均値)を表4に示す。
【0100】
【表4】

【0101】
以上の結果から、支持体にフィブロインシートを用いた本発明の歯牙貼付剤(実施例5)は、同じ厚さ、形状のナイロンポリウレタン製スポンジを支持体に使った場合(比較例5)に比べて、同じう蝕及び歯周病予防用組成物を適用した場合でも、歯牙に貼付したときのズレや違和感が少なく、う蝕や歯周病の原因である歯垢の抑制効果に優れる(5%有意)ことを確認した。
【0102】
従って、本発明の歯牙貼付用製品は、歯牙の美白にとどまらず、う蝕、知覚過敏、歯肉炎、歯周病などの歯牙や歯茎の疾患予防や治療、歯質の強化、歯面の汚れ除去、口臭予防などの口腔ケア効果を大きく向上させることが期待される。
【0103】
〔実施例6〕歯牙美白用貼付剤
下記組成のステイン除去用組成物を、厚さ0.1mmのフィブロインフィルム(ツキオカ社製)に塗膏させた歯牙貼付歯磨剤(使用方法:貼付後に剥がしてブラッシング)。
ステイン除去用組成物:
トリポリリン酸ナトリウム 5.0%
ラウリル硫酸ナトリウム 2.0
エタノール 8.0
ソルビット 30.0
無水ケイ酸 20.0
ヒドロキシエチルセルロース 3.0
アルギン酸ナトリウム 1.0
サッカリンナトリウム 0.02
香料 1.0
水 バランス
計 100.0%
【0104】
〔実施例7〕う蝕予防用貼付剤
下記組成のう蝕予防用組成物を、使用直前に厚さ1.5mmのフィブロインフィルム(ライオン(株)試作品)に含浸させた歯牙貼付剤。
う蝕予防用組成物(非水物):
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.7%
キシリトール 10.0
乳酸カルシウム 0.1
デキストラナーゼ 0.2
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.5
ポリオキシエチレン(60モル)硬化ヒマシ油 0.5
香料 0.2
グリセリン バランス
計 100.0%
【0105】
〔実施例8〕歯牙コーティング用貼付剤
下記組成の歯牙白色化を目的とするコーティング組成物を、厚さ0.5mmのフィブロインフィルム(ライオン(株)試作品)に塗膏した歯牙貼付剤。
歯牙コーティング組成物(非水物):
ポリエチレングリコール#400 30.0%
シェラック 1.0
(乾燥透明明白ラック、日本シェラック工業(株))
オイドラギットRSPO 1.0
二酸化チタン 3.0
カルボキシビニルポリマー 2.0
サッカリンナトリウム 0.1
香料 0.1
1,3−ブチレングリコール バランス
計 100.0%
【0106】
〔実施例9〕タバコヤニ除去用貼付剤
下記組成の歯面に付着したタバコヤニ除去を目的とする組成物を、厚さ1.5mmの2層シート(0.5mmのエチルセルロースと1.0mmのフィブロインスポンジシートで構成)のエチルセルロース層側に塗膏した歯牙貼付剤。
タバコヤニ除去用組成物:
ピロリン酸ナトリウム 3.0%
トリポリリン酸ナトリウム 7.0
シトラールジメチルアセタール 0.3
2−オクタノール 0.05
カルボン 0.05
ソルビトール 20.0
濃グリセリン 30.0
カルボキシビニルポリマー(カーボポール980) 3.0
N−ラウロイルサルコシンナトリウム 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
香料 0.5
水 バランス
計 100.0%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯牙又は歯茎表面に適用することで、歯牙又は歯茎に口腔ケア有効成分を供給するための歯牙貼付用製品であって、(a)難水溶性の支持体として厚さ0.05〜2mmのフィブロインフィルム又はシート上に、(b)ステイン予防・除去剤、歯石予防・除去剤、歯牙白色化剤、う蝕予防・修復剤、知覚過敏予防・抑制剤、口臭予防・除去・隠蔽剤、歯肉炎予防・改善剤、歯周病予防・改善剤から選ばれる1種又は2種以上の口腔ケア有効成分を含有する口腔ケア用組成物の層を形成してなることを特徴とする歯牙貼付用製品。
【請求項2】
(a)難水溶性の支持体として厚さ0.05〜2mmのフィブロインフィルム又はシート上に、(b)ステイン予防・除去剤、歯石予防・除去剤、歯牙白色化剤、知覚過敏予防・抑制剤、う蝕予防・修復剤、口臭予防・除去・隠蔽剤、歯肉炎予防・改善剤、歯周病予防・改善剤から選ばれる1種又は2種以上の口腔ケア有効成分を含有する口腔ケア用組成物の層を形成してなる歯牙貼付用製品を、1歯又は複数の歯牙又は歯茎表面に貼付して適用することで、前記口腔ケア用組成物に含有する口腔ケア有効成分を歯牙又は歯茎に供給することを特徴とする口腔ケア方法。

【公開番号】特開2007−169181(P2007−169181A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−366138(P2005−366138)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】