説明

殺菌助剤及びオゾン殺菌洗浄方法

【課題】オゾン曝気を利用して被処理物を高い殺菌力で殺菌洗浄でき、かつ野菜などの生鮮野菜を殺菌洗浄しても処理後の食品の味や鮮度の低下を抑制できる、低コストなオゾン殺菌用の殺菌助剤、及び該殺菌助剤を用いたオゾン殺菌洗浄方法の提供を目的とする。
【解決手段】成分(A)10mg/L以上100mg/L以下のモノカプリリン、及び成分(B)水溶性の酸を含み、pHが3.0〜5.0である殺菌助剤。また該殺菌助剤中に被処理物を浸漬し、該被処理物が浸漬された殺菌助剤中にオゾン曝気する工程を有するオゾン殺菌洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌助剤及びオゾン殺菌洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜や果物の市場では、特にスーパーやコンビニなどにおいて、それらをカット(切断)したものを商品として陳列する方法が広く用いられている。しかし、カットされた野菜は通常よりも鮮度が落ちやすいため、廃棄率が高い。これはカット面が微生物繁殖により変性しやすいためと考えられる。このため、収益面及び環境面からカットしても鮮度低下が抑制できる方法が求められている。
カットした野菜の鮮度を保持する方法としては、各種鮮度保持剤を使用する方法などが知られている。しかし、該方法は、鮮度保持剤が野菜に残留し、添加物表示が必要になるため生産者は敬遠する傾向にある。また、包装方法や貯蔵方法を改良することで鮮度を保持する方法もあるが、該方法は設備投資を含めたコストが高騰する。
【0003】
また、カット野菜を殺菌し、初期の菌数を低減することで、変性を抑制する試みもある。一般に、食品の殺菌には次亜塩素酸ナトリウムが用いられるが、食品を傷めることがあり、またすすぎに時間を要する。
また、酸化力が強く、殺菌力が高いオゾンを用いて野菜を殺菌洗浄する方法が知られている。オゾンを用いた被処理物の殺菌洗浄には、気体のオゾンの取り扱いが難しいため、一般的にオゾンを水に溶解させたオゾン水が利用されていた。しかし、オゾン水を利用する方法は、溶解しきれなかったオゾンガスが大量に廃棄されるため、無駄が多い。また、溶解したオゾンは、反応速度が速く反応に選択性がないため共雑物とも反応し、食材への浸透性も高いこともあって、必要以上にオゾン水量が増大する傾向がある。さらに、溶解したオゾンが殺菌中に野菜に浸透すると、殺菌洗浄した野菜の品質が著しく劣化する。
【0004】
こうした問題に対し、下記方法(i)〜(iii)によるオゾン殺菌方法が示されている。
(i)モノアセチン、ジアセチン、トリアセチンなどの特定の動的表面張力を有する薬剤を含む処理液に、曝気によりオゾンを供給し、被処理物を殺菌洗浄する方法(特許文献1)。
(ii)モノアセチン、ジアセチン、トリアセチンなどの特定の動的表面張力を有する薬剤、及び水溶性の酸を含む処理液に、曝気によりオゾンを供給し、被処理物を殺菌洗浄する方法(特許文献2)。
(iii)モノカプリリン、モノカプリンなどの薬剤とオゾンを含む処理液で被処理物を殺菌洗浄する方法(特許文献3)。
【0005】
方法(i)及び方法(ii)では、曝気により、オゾンを含有する微細気泡を形成させる。該微細気泡は浮力が小さく浮上速度が遅いため、処理液中におけるオゾンの滞留時間が長く、被処理物との接触効率が高いため優れた殺菌力が得られる。また、該微細気泡は食品に浸透せず、微細な部分まで充分に殺菌洗浄できる。オゾンは酸性条件下で安定性が高いため、方法(i)及び方法(ii)では、酸性条件(pH2〜6)で行うことで高い殺菌力が得られる。
方法(iii)では、モノカプリリン、モノカプリンなどのグリセリン脂肪酸エステルと溶存オゾンとの反応により生成する有機過酸化物によって、被処理物が殺菌洗浄される。該有機過酸化物は処理液中に安定に存在でき、被処理物との接触効率が高いため優れた殺菌力が得られる。また、有機過酸化物は食品に浸透せず、微細な部分まで充分に殺菌洗浄することが可能である。有機過酸化物はアルカリ条件下で生成しやすいため、方法(iii)では、オゾンが安定に存在できる範囲内においてできるだけpHを高くすることで高い殺菌力が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第07/040260号パンフレット
【特許文献2】特開2008−201992号公報
【特許文献3】特開2008−255045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、方法(i)及び方法(ii)において、オゾンを含有する微細気泡を安定して形成させるには、高濃度の薬剤が必要である。そのため、コストが高くなるうえ、高濃度の薬剤によって野菜の味や鮮度が損なわれることがある。
また、方法(iii)も同様に、充分な有機過酸化物を生成させるには高濃度の薬剤が必要であるため、コストが高く、該薬剤によって野菜の味や鮮度が損なわれることがある。
【0008】
本発明は、オゾン曝気を利用して被処理物を高い殺菌力で殺菌洗浄でき、かつ野菜などの生鮮野菜を殺菌洗浄しても処理後の食品の味や鮮度の低下を抑制できる、低コストなオゾン殺菌用の殺菌助剤、及び該殺菌助剤を用いたオゾン殺菌洗浄方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
[1]成分(A)モノカプリリン10mg/L以上100mg/L以下、及び成分(B)水溶性の酸を含み、pHが3.0〜5.0であるオゾン殺菌用の殺菌助剤。
[2]前記成分(B)が、リン酸、クエン酸及び酢酸からなる群から選ばれる1種以上である、前記[1]に記載のオゾン殺菌用の殺菌助剤。
[3]更に、成分(C)モノアセチン、ジアセチン及びトリアセチンからなる群から選ばれる1種以上を含む、前記[1]又は[2]に記載のオゾン殺菌用の殺菌助剤。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかに記載のオゾン殺菌用の殺菌助剤中に被処理物を浸漬し、該被処理物が浸漬された殺菌助剤中にオゾン曝気する工程を有するオゾン殺菌洗浄方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の殺菌助剤は、低コストであり、オゾン曝気を利用して被処理物を高い殺菌力で殺菌洗浄でき、かつ野菜などの生鮮野菜を殺菌洗浄しても処理後の食品の味や鮮度の低下を抑制できる。
本発明のオゾン殺菌洗浄方法によれば、オゾン曝気を利用し、低コストで被処理物を高い殺菌力で殺菌洗浄でき、かつ野菜などの生鮮野菜を殺菌洗浄しても処理後の食品の味や鮮度の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のオゾン殺菌洗浄方法に用いる殺菌洗浄装置の一例を示した模式図である。
【図2】本実施例で用いた殺菌洗浄装置を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[殺菌助剤]
本発明の殺菌助剤は、オゾン曝気を利用した被処理物のオゾン殺菌洗浄に用いる助剤であって、成分(A)であるモノカプリリン10mg/L以上100mg/L以下と、成分(B)である水溶性の酸を含み、pHが3.0〜5.0の助剤である。
【0013】
(成分(A):モノカプリリン)
本発明の殺菌助剤がモノカプリリンを含むことにより、該助剤中でオゾン曝気することによりオゾン含有微細気泡を形成させることができる。モノカプリリンは、食品添加物の中でも使用制限のない薬剤であり、食品の処理後に万が一の残留があっても人体に悪影響がない。
【0014】
殺菌助剤中の成分(A)の含有量は、10〜100mg/Lであり、20〜50mg/Lが好ましい。成分(A)の含有量が10mg/L以上であれば、オゾン含有微細気泡を形成でき、また気中に放散されるオゾン量を低減できるため、高い殺菌力が得られる。成分(A)の含有量が100mg/L以下であれば、オゾン含有微細気泡が液面に堆積してオーバーフローすることを防止できるため、殺菌力の低下を抑制できる。
【0015】
(成分(B):水溶性の酸)
本発明における成分(B)は、水溶性の酸であって、成分(A)が有する界面科学的特性を持たない親水性の化合物である。成分(B)を用いて、本発明の殺菌助剤のpHを3.0〜5.0に調整する。成分(B)としては、例えば、下記成分(B1)〜(B3)が挙げられる。
成分(B1):無機酸。
成分(B2):有機酸。
成分(B3):酸性基(酸解離性の官能基)を有する水溶性のキレート剤。
【0016】
成分(B1)としては、例えば、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸などが挙げられる。
成分(B2)としては、例えば、酢酸、乳酸、クエン酸、アジピン酸、リンゴ酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、酒石酸、グルタル酸、蓚酸、及びこれらを水酸化ナトリウムなどのアルカリ剤で一部を中和した塩、などが挙げられる。
成分(B3)としては、例えば、カルボキシル基やリン酸基、ホスホン酸基などを有する水溶性のキレート剤などが挙げられる。具体的には、例えば、エチレンジアミン四酢酸、ニトロソ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン−N,N,N’,N’’,N’’’,N’’’−六酢酸などの多価カルボン酸化合物、ヘキサメタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、フィチン酸などのリン酸化合物、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸などのホスホン酸化合物、などが挙げられる。
成分(B)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
成分(B)としては、成分(B1)及び成分(B2)からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。また、特に食品の殺菌洗浄に用いる場合には、酸自体の味に比較的癖がなく、少ない添加量でもpHの低下が大きく必要な酸の量が少ないため、殺菌後の食品の味への影響が小さい点、及び、酸による葉緑体などの破壊に伴う食品の外観の劣化を抑制しやすい点から、リン酸、クエン酸及び酢酸からなる群から選ばれる1種以上が特に好ましい。ただし、リン酸、クエン酸、酢酸に加えて、他の有機酸や塩酸、硫酸、ポリリン酸などを補助目的で併用してもよい。
【0018】
殺菌助剤中の成分(B)の含有量は、50〜500mg/Lが好ましく、100〜300mg/Lがより好ましい。成分(B)の含有量が50mg/L以上であれば、高い殺菌力が得られやすい。成分(B)の含有量が500mg/L以下であれば、食品の殺菌を行った場合でも、処理後の食品の鮮度や風味の劣化を抑制しやすい。
【0019】
また、本発明の殺菌助剤は、前記成分(A)及び(B)以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、下記成分(C)が挙げられる。成分(C)を用いることにより、より少ない量の成分(A)でもオゾン含有微細気泡を形成させることができるようになり、コスト面、及び薬剤の残留防止の点で有利となる。
成分(C):モノアセチン、ジアセチン及びトリアセチンからなる群から選ばれる1種以上。
成分(C)におけるモノアセチン及びジアセチンには構造異性体が存在し、モノアセチンの構造異性体としては、グリセリン−1−アセタート、グリセリン−2−アセタート、グリセリン−3−アセタートが挙げられる。ジアセチンの構造異性体としては、グリセリン−1,3−ジアセタート、グリセリン−1,2−ジアセタートが挙げられる。
【0020】
殺菌助剤中の成分(C)の含有量は、10〜100mg/Lが好ましい。成分(C)の含有量が10mg/L以上であれば、成分(A)の使用量をできるだけ少なくできるため、より低コストになる。成分(C)の含有量が100mg/L以下であれば、オゾン含有微細気泡が堆積してオーバーフローすることを抑制しやすい。
また、殺菌助剤に成分(C)を含有させる場合には、成分(A)と成分(C)の合計量を150mg/L以下にすることが好ましい。
【0021】
本発明の殺菌助剤のpHは、3.0〜5.0であり、3.5〜4.5が好ましく、3.5〜4.0がより好ましい。殺菌助剤のpHが3以上であれば、葉緑体などの破壊に伴う外観の劣化が抑制される。殺菌助剤のpHが5.0以下であれば、オゾン含有微細気泡の安定性、及びオゾン含有微細気泡の被処理物に対する吸着性が優れ、高い殺菌効果が得られる。
なお、前記pHは、25℃において水素電極等を用いて測定されるpH値を意味する。ただし、本発明の殺菌助剤の利用温度はこの温度には限定されず、本発明の殺菌助剤をいかなる温度で使用する場合でもpHは25℃において示す値と定義する。
殺菌助剤のpHの調整は、成分(B)である水溶性の酸により行えばよく、pHが低下しすぎた場合には水酸化ナトリウムなどのアルカリ剤で酸の一部を中和してもよい。
【0022】
また、本発明の殺菌助剤は、その他の成分として、オゾン酸化反応を阻害しない範囲で、使用性や製品の安定化、機能付与のために、各種界面活性剤、香料、酵素、蛍光剤、増粘剤、分散剤、無機塩、アルコール類、糖類などを含有してもよい。
界面活性剤としては、特に制限はなく、従来公知の界面活性剤のなかから目的に応じて適宜選択できる。例えば、下記成分(D1)〜(D4)などが挙げられる。
成分(D1):アニオン界面活性剤。
成分(D2):ノニオン界面活性剤。
成分(D3):両性界面活性剤。
成分(D4):カチオン界面活性剤。
【0023】
成分(D1)としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキル硫酸、アルキルフェニルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、アシルアミドアルキル硫酸、アルキル燐酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸、パラフィンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、α−スルホカルボン酸及びそれらのエステルなどの水溶性塩、石鹸などが挙げられる。
成分(D2)としては、例えば、ポリオキシアルキルエーテル、ポリオキシアルキルフェニルエーテル等のエトキシ化ノニオン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グルコシドエステル、シュガーエステル、メチルグルコシドエステル、エチルグルコシドエステル、アルキルポリグルコキシド等の糖系活性剤、アルキルアミンオキサイド、アルキルジエタノールアミド、脂肪酸N−アルキルグルカミドなどのアミド系活性剤、アルキルアミンオキサイドなどが挙げられる。
成分(D3)としては、例えば、アルキルカルボキシベタイン、アルキルスルホキシベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルアラニネートなどのアミノカルボン酸塩、イミダゾリン誘導体、アルキルアミンオキシドなどが挙げられる。
成分(D4)としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩などが挙げられる。
界面活性剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
殺菌助剤中の界面活性剤の含有量は、0〜10mg/Lが好ましく、0〜5mg/Lがより好ましい。界面活性剤の含有量が10mg/L以下であれば、オゾン含有微細気泡が水面に堆積して泡立ち、オーバーフローなどプロセス上好ましくない現象が生じることを抑制しやすい。
【0025】
(製造方法)
本発明の殺菌助剤は、成分(A)、成分(B)、及び必要に応じて他の成分を、水に溶解して製造する。
殺菌助剤に用いる水は特に限定されない。オゾンは、その強い酸化力から、溶存金属、塩素あるいは有機物などと反応するため、水はこれらの不純物の含有量が少ない(純度が高い)ことが好ましい。
殺菌助剤に用いる水の抵抗率は、0.00001MΩ・cm以上が好ましく、0.001MΩ・cm以上がより好ましく、1MΩ・cm以上がより好ましい。
【0026】
以上説明した本発明の殺菌助剤は、該助剤中でオゾンを含有するガスを用いて曝気を行うことで、オゾンを含有する微細気泡(以下、「オゾン含有微細気泡」という。)を形成できる。また、殺菌助剤に含まれるモノカプリリンがオゾンとの反応により微量の有機過酸化物を生成していることが予測される。そのため、本発明の殺菌助剤を用いてオゾン曝気を行うことで、オゾン含有微細気泡と有機過酸化物により高い殺菌力で被処理物を殺菌洗浄できていると考えられる。また、本発明の殺菌助剤は、用いるモノカプリリンの量が少なくてすみ、野菜などの生鮮野菜を殺菌洗浄しても処理後の食品の味や鮮度の低下を抑制できる。
【0027】
[オゾン殺菌洗浄方法]
本発明のオゾン殺菌洗浄方法は、前述した本発明の殺菌助剤中に被処理物を浸漬し、該被処理物が浸漬された殺菌助剤中にオゾン曝気する工程を有する方法である。以下、本発明のオゾン殺菌洗浄方法の実施形態の一例について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の殺菌洗浄方法に用いる殺菌洗浄装置の一例を示した模式図である。
殺菌洗浄装置10は、図1に示すように、水槽12と曝気手段14と攪拌手段18とを有する。曝気手段14は、供給管15と、該供給管15の先端に設けられた散気部16とで構成されている。散気部16は水槽12に貯えられた水の中に浸漬され、供給管15はオゾン含有ガス供給手段13と接続されている。攪拌手段18は、水槽12内に設けられている。
【0028】
水槽12の材質は特に限定されないが、オゾンの酸化力が強いため、例えば、ガラス、テフロン(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン)、チタン、オゾン処理(高濃度オゾンによる強固な酸化皮膜形成)をしたアルミニウムやステンレスを用いることが好ましい。オゾンに対する耐性が低いニトリルゴムあるいはウレタンなどの材質の水槽を使用する場合には、水槽12の劣化に十分に注意する必要がある。
水槽12の大きさは、殺菌洗浄する被処理物の処理量や、攪拌手段18の能力を勘案して決定することができる。
【0029】
オゾン含有ガス供給手段13は、オゾンを含有するオゾン含有ガスを供給できるものであればよく、例えば、オゾン発生器やオゾン含有ガスを充填したボンベが挙げられる。また、例えば、オゾン発生器でオゾンを発生し、発生したオゾンを、レギュレターを介してマスフローコントローラに送り、マスフローコントローラーで流量調節しながら、殺菌助剤中にオゾンを供給する装置が挙げられる。
オゾン発生器は特に限定されず、電子線、放射線、紫外線等高エネルギーの光を酸素に照射する方法や、化学的方法、電解法、放電法等を用いたものが挙げられる。工業的には、発生コストや発生量から無声放電法が多く用いられている。このような市販のオゾン発生器としては、例えば、低濃度オゾン発生器であるYGR−50(商品名、株式会社イワキ製)、高濃度オゾン発生器であるED−OG−R4(商品名、エコデザイン株式会社製)などが挙げられる。
【0030】
曝気手段14は、殺菌助剤中に、オゾン含有ガスを微細気泡化したオゾン含有微細気泡を供給できるものであれば特に限定されず、例えば、散気板、散気筒、ディフューザー、エゼクターなど、公知の機器を用いることができる。このような機器を用い、できるだけ微細な気泡を発生させることで、被処理物の殺菌効率を高めることができる。
【0031】
攪拌手段18は、水槽12内の殺菌助剤を攪拌できるものであればよく、攪拌羽根を用いたものであってもよいし、ポンプ等で水流を生じさせるものであってもよい。
【0032】
以下、殺菌洗浄装置10を用いたオゾン殺菌洗浄方法の一例について説明する。本発明のオゾン殺菌洗浄方法としては、例えば、下記の各工程を有する方法が挙げられる。
前洗い工程:被処理物を殺菌洗浄する前に予め水で洗う工程。
殺菌洗浄工程:殺菌洗浄装置10を用いて、殺菌助剤中に被処理物を浸漬し、該被処理物が浸漬された殺菌助剤中にオゾン曝気する工程。
すすぎ工程:殺菌洗浄後の被処理物を水ですすぎ、殺菌助剤を洗い流す工程。
脱水工程:被処理物を脱水する工程。
ただし、本発明のオゾン殺菌洗浄方法は、殺菌洗浄工程を有するものであれば、前記方法には限定されない。
【0033】
前洗い工程:
水道水などにより、殺菌洗浄する被処理物を前洗いして汚れなどを落とす。前洗いは、被処理物が食品の場合は特に物理的な損傷により外観を劣化させないように考慮し、またビタミンCなどの水溶性成分が溶出して品質が低下しないように過度に行わないようにする。
【0034】
殺菌洗浄工程:
まず、殺菌洗浄装置10の水槽12に任意の量の殺菌助剤を貯え、洗浄対象である被処理物19を入れる。次いで、オゾン含有ガス供給手段13からオゾン含有ガスを供給管15に流通させ、散気部16からオゾン含有微細気泡17を殺菌助剤中に発生させる。
本発明における微細気泡とは、平均気泡径が500μm以下の気泡を意味する。オゾン含有微細気泡の平均気泡径は、1〜100μmが好ましい。オゾン含有微細気泡の平均気泡径は、デジタルスコープまたはデジタルカメラを用いた画像解析により測定される。
【0035】
また、殺菌助剤中では、散気部16から供給されたオゾンの一部が水に溶解し、モノカプリリンと反応することで微量の有機過酸化物が生成する。
被処理物19を殺菌洗浄は、攪拌手段18により、水槽12内の殺菌助剤を攪拌し、任意の時間、オゾン含有微細気泡17を発生させながら行う。被処理物19は、殺菌助剤中において、オゾン含有微細気泡17と微量の有機過酸化物により殺菌洗浄される。
【0036】
被処理物19としては、野菜などの生鮮野菜が好ましく、カット野菜が特に好ましい。ただし、被処理物19は前記野菜には限定されず、一般的に殺菌処理が行われているものであってよい。例えば、包丁、まな板、食器、スポンジ等の台所用品、便座等のトイレ用品、桶や浴槽等の風呂用品、衣類、シーツ、布団等の布製品、内視鏡やメス等の医療器具、果物、肉、魚、貝類、卵等の生鮮食品並びにこれらの加工食品、口腔や手指等の身体、工場の生産ラインや包装容器、壁、床、配管等の機器、汚泥等が挙げられる。
【0037】
オゾン含有ガスには、オゾン発生器で発生したオゾンをそのまま用いてもよく、希釈ガスで希釈したものを用いてもよい。希釈ガスとしては、オゾンに対して不活性あるいは反応性に乏しいガスが好ましい。例えば、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素、酸素、空気、窒素などが挙げられる。オゾンは自己分解性を有するため、オゾン発生器で調製した後、直ちに使用することが好ましい。
【0038】
オゾン含有微細気泡(オゾン含有ガス)中のオゾン濃度は、0.0005〜1.0体積%が好ましく、0.005〜1.0体積%がより好ましい。前記オゾン濃度が0.0005体積%以上であれば、高い殺菌力が得られやすい。前記オゾン濃度が1.0体積%以下であれば、作業環境のオゾン濃度が基準値を超えず、また殺菌洗浄後の被処理物の品質劣化を抑制しやすい。
殺菌助剤へのオゾン含有ガスの供給量は、洗浄目的、被処理物の種類や量に応じて決定できる。
【0039】
殺菌助剤にオゾン含有ガスを曝気する時間(曝気時間)は、求められる殺菌の程度、殺菌助剤中の被処理物19の量、殺菌助剤の温度などを勘案して決定することができ、1〜10分間の範囲とすることが好ましい。前記範囲内であれば、被処理物19に与える悪影響が極めて少なくなる。
オゾン含有ガスで曝気中の殺菌助剤の温度(曝気温度)は、求められる殺菌の程度、殺菌助剤中の被処理物19の種類、殺菌助剤中の被処理物19の量、曝気時間などを勘案して決定できる。殺菌助剤の温度は、0〜50℃が好ましく、0〜30℃がより好ましい。前記範囲内であれば、オゾンが比較的安定になる。
【0040】
すすぎ工程:
成分(A)、成分(B)などの薬剤を除くため、被処理物19を水道水などですすぐ。すすぎの方法は特に限定されず、例えば、攪拌している水道水に被処理物を浸漬する方法などが挙げられる。すすぎ回数及びすすぎ時間は、コスト面、すすぎ時の攪拌などで生じる物理的損傷による外観の劣化、被処理物が食品である場合はビタミンCなどの水溶性成分の溶出による品質の低下などを考慮し、過度にならないようにする。
【0041】
脱水工程:
すすぎ後の被処理物19を脱水する。脱水方法は、特に限定されず、例えば、洗濯機の脱水槽など遠心力を利用した脱水機を用いて実施する方法などが挙げられる。
【0042】
以上説明した本発明のオゾン殺菌洗浄方法は、本発明の殺菌助剤を用いてオゾン曝気することで、オゾン含有微細気泡と有機過酸化物により、被処理物を高い殺菌力で充分に殺菌洗浄できる。また、本発明のオゾン殺菌洗浄方法は、用いる薬剤(成分(A)、(C))の量が少なく、低コストである。さらに、野菜などの生鮮野菜を殺菌洗浄しても処理後の食品の味や鮮度の低下を抑制することができ、特にカット野菜の殺菌洗浄に適用しても味や鮮度の低下を抑制できる。以下、本発明における殺菌助剤の作用効果について詳述する。
【0043】
オゾン含有気泡は、気泡を細かくするほど浮上速度が遅くなって被処理物との接触効率が向上し、また微細な部分まで充分に殺菌できるため、殺菌効果が高くなる。特許文献1及び2には、トリアセチンによりオゾン含有気泡を微細化できることが示されている。トリアセチンは、動的表面張力を低下させる速度が速く、気泡が細かく砕かれやすくなるため、エジェクターなどで気泡を微細化するのに適している。しかし、トリアセチンは、表面張力を低下させる度合い(平衡に達するまでの表面張力の低下の絶対量)が小さい。そのため、トリアセチン単独で安定してオゾン含有微細気泡を得るには、100mg/L超の高濃度のトリアセチンが必要となる。
【0044】
これに対し、本発明者等は、モノカプリリンが10〜100mg/Lの低濃度であっても、高濃度のトリアセチンを用いた場合と同等のオゾン含有気泡の微細化効果を有していることを見い出した。該効果が得られる要因としては、以下のことが考えられる。モノカプリリンは、トリアセチンに比べて動的表面張力を低下させる速度は遅いものの、その速度はオゾン含有気泡の微細化には充分であり、かつ、表面張力を低下させる度合い(平衡に達するまでの表面張力の低下の絶対量)がトリアセチンよりも大きいため、低濃度でもオゾン含有気泡を微細化できる。
また、オゾン含有微細気泡を用いた殺菌洗浄では、気泡の安定性が高すぎると、該気泡が液面に堆積してオーバーフローし、殺菌効果が低下する問題がある。本発明者等はこの点についても検討し、100mg/L以下の低濃度域でモノカプリリンを使用すれば、気泡の安定性を高くさせすぎずに、気泡を微細化する効果を充分に得ることが可能なことを見い出した。つまり、モノカプリリンを100mg/L以下で使用すれば、表面張力の平衡値が小さくなりすぎないため、液面で気泡が速やかに崩壊し、オーバーフローが防止できることを見い出した。
以上のように、本発明の殺菌助剤は、動的表面張力を低下させる充分な速度を有し、かつ表面張力を低下させる度合いが大きいモノカプリリンを、前記した低濃度域で使用することで、表面張力の平衡値が小さくしすぎることを防ぎ、オゾン含有気泡の微細化効果とオーバーフローの抑制効果を両立するものである。このような2つ効果の両立は、モノカプリリンとは脂肪酸の炭素数のみが異なるモノカプリンやモノラウリンでは実現できず、モノカプリリンに特有のものであった。
【0045】
また、本発明では、トリアセチンなどの成分(C)の併用により、より少ない量の成分(A)でも、オゾン含有微細気泡を形成できる。トリアセチンは、前述したように、表面張力を低下させる度合いは小さいものの、動的表面張力を低下させる速度が速く、気泡が細かく砕かれやすくなる。そのため、モノカプリリンとトリアセチンの相乗効果により、より少ない薬剤量で充分なオゾン含有微細気泡を形成できる。トリアセチンなどの成分(C)は、モノカプリリンに比べて苦味が弱く、水溶性にも優れ、安価であり、同等の殺菌効果を維持しつつさらなるコスト低減及び品質低下の抑制が可能となる。
また、本発明では、モノカプリリンとオゾンが反応しにくい酸性条件下であるものの、その反応により微量の有機過酸化物が生成していることが予測される。そのため、トリアセチンによりオゾン含有微細気泡を形成する方法に比べ、有機過酸化物による殺菌効果が加わることで殺菌効果がさらに高まりやすい。
【0046】
少量のモノカプリリンでオゾン含有気泡を微細化できることは、以下の効果も奏する。モノカプリリンなどの中鎖グリセライドは、比較的苦味が強く、酸と組み合わせて使用すると酸味が変化して苦味が増す傾向にある。しかし、モノカプリリンは炭素鎖長が短く吸着性が低い。そのため、モノカプリリンを100mg/L以下の低濃度域で用いれば、すすぎによって容易に除去できるので、食品の味に影響を与えずに殺菌できる。そのため、野菜などの生鮮野菜の殺菌、とりわけカット野菜の殺菌に好適である。
【0047】
また、本発明ではオゾンを気泡として用いるため、オゾン水を用いる場合に見られる、オゾン使用量の増大、及びオゾンが食品に浸透することによる処理後の品質低下が抑制される。本発明者等が5mg/Lのオゾンが溶解したオゾン水で殺菌を行ったところ、一定期間保存した後の野菜は著しく品質が劣化(変色およびハリの消失)し、さらに殺菌効果についても、殺菌剤として広く知られる次亜塩素酸ナトリウムに及ばないものであった。本発明は、オゾンを微細気泡として水中に供給するため、オゾン供給量が必要最低限でよく、また該気泡によって被処理物との接触部分のみを殺菌洗浄するため、オゾンの浸透により食品に損傷が生じることを抑制できる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[殺菌洗浄装置]
本実施例における殺菌洗浄は、自作した殺菌洗浄装置101により行った。
殺菌洗浄装置101は、図1に示すように、二槽式洗濯機110(三菱電機株式会社製、CW−C30A1)と、オゾン含有ガス供給手段120と、微細気泡発生手段130とを備えている。二槽式洗濯機110は、洗濯槽111及び脱水槽112を有している。オゾン含有ガス供給手段120は、レギュレータ121が取り付けられた空気ボンベ122、オゾン発生器123(荏原実業株式会社製、OZSD−3000A)及びマスフローコントローラ124(コフロック株式会社製、MODEL5100)がこの順に連結されている。微細気泡発生手段130は、渦流ポンプ131(ニクニ株式会社製、20NED04)を備え、その先端に分散器132が連結されている。分散器132は、3/4インチのチーズの両端にキャップを接続し、中央に3mmの孔が開けてある。また、二槽式洗濯機110の洗濯槽111内から渦流ポンプ131までは、配管141(塩化ビニル製、継手:SUS304)が配されており、配管141の洗濯槽111側の末端に、野菜の吸い込み防止用のストレーナ142(テフロン(登録商標)製の直径1mmのメッシュ)が設置されている。
殺菌洗浄装置101では、空気ボンベ122から送られる空気を用いてオゾン発生器123でオゾンを発生させ、配管141を通じて洗濯槽111から渦流ポンプ131に供給されてきた殺菌助剤に、マスフローコントローラ124により流量を調整しつつオゾン含有ガスを供給するようになっている。渦流ポンプ131では、外周に放射状の溝をもつ羽根車(図示せず)の回転により、殺菌助剤とオゾン含有ガスとを気/液混合し、分散器132によりオゾン含有気泡を微細化して洗濯槽111に供給する。渦流ポンプ131と分散器132のせん断力により、平均気泡径が約50μmのオゾン含有微細気泡を発生させることができる。
【0049】
[原料]
本実施例で用いた原料を以下に示す。
(成分(A))
成分A−1:モノカプリリン(太陽化学株式会社製、サンソフトNo.700P−2)
(成分(a):成分(A)の比較品)
成分a−1:モノカプリン(理研ビタミン株式会社製、ポエムM−200)
(成分(B))
成分B1−1:リン酸(純正化学株式会社製、食品添加物規格品)
成分B2−1:クエン酸(純正化学株式会社製、食品添加物規格品)
成分B2−2:酢酸(氷酢酸)(純正化学株式会社製、食品添加物規格品)
成分B2−3:グルコン酸(関東化学株式会社製、50%グルコン酸溶液)
(成分(C))
成分C−1:モノアセチン(関東化学株式会社製)
成分C−2:ジアセチン(関東化学株式会社製)
成分C−3:トリアセチン(関東化学株式会社製)
【0050】
[実施例1]
殺菌洗浄する被処理物としてレタス500gを用い、一般的な生鮮食品工場の処理を参考にして下記に示すとおりに前洗い、殺菌洗浄、すすぎ、及び脱水の各操作を実施した。前記各操作におけるレタスの移動は、エタノール殺菌したステンレス製のザルを用いて行った。
(前洗い工程)
7Lの水道水を溜めた電機バケツ(松下電器産業株式会社製、N−Bk2)を用いて、レタスを2分間前洗いした。
(殺菌洗浄工程)
前述した殺菌洗浄装置101における二槽式洗濯機110の洗濯槽111に、各成分を表1に示す組成で水道水に添加した殺菌助剤を40L溜め、撹拌しつつオゾン含有微細気泡を発生させ、レタスの洗浄殺菌を10分間実施した。殺菌助剤のpH調整は、pHメーター(METTLER TOLEDO製、Seven Easy)を用い、5N−NaOH水溶液(関東化学株式会社製)と5N−HCl水溶液(関東化学株式会社製)により行った。供給するオゾン含有ガス中のオゾン濃度は、荏原実業株式会社製EG−600により監視し、0.5体積%に調整した。オゾン含有ガス供給手段120から供給するオゾン含有ガスの流量は、マスフローコントローラ124により0.8L/分に調整した。
(すすぎ工程)
洗濯槽111に40Lの水道水に替え、5分間撹拌しながらレタスをすすいだ。
(脱水工程)
すすぎ終わったレタスを脱水槽112に移し、1分間脱水した。
【0051】
[実施例2〜14]
殺菌助剤の組成を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にしてレタスの殺菌洗浄を行った。
【0052】
[比較例1〜8]
殺菌助剤の組成を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にしてレタスの殺菌洗浄を行った。
【0053】
[洗濯槽の泡立ちの評価]
各例の殺菌洗浄における洗濯槽の泡立ちの状態を目視にて確認し、下記評価基準にて評価した。
「○」:オゾン曝気停止後、30秒以内に泡抹が消えた。
「×」:オゾン曝気停止後、30秒経過しても泡抹が確認された。
【0054】
[殺菌力の評価]
各例における殺菌力は、以下に示す方法で検査した菌数に基づいて評価した。
処理前後のレタス25gを、ペプトン入り緩衝液(リン酸二水素カリウム3.56g、リン酸水素二ナトリウム十二水和物18.2g、塩化ナトリウム4.3g、ペプトン1.0を精製水1Lに添加し、pH7.0に調整した液)225mLに加え、フィルター付きストマッカー袋を備えたストマッカーにより粉砕して懸濁液とした。該懸濁液を段階希釈し、SCD寒天培地(日水製薬株式会社製)で混釈培養した。これを1検体あたり3回繰り返し、36℃、24時間培養後、コロニーを計数することで、生菌数を野菜1g当たりの菌数として求めた。
【0055】
殺菌力の評価は、以下に示す次亜塩素酸ナトリウム200mg/Lによる処理時の菌数(殺菌基準値)に対する、各例で求めた菌数の倍数(殺菌活性値)を用いて行った。なお、該処理は、生鮮野菜のカット品加工の分野において標準とされている殺菌方法である、
殺菌助剤の代わりに、濃度200mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用い、オゾン曝気を行わずに5分間攪拌した以外は、実施例1と同様にしてレタスを殺菌洗浄した。殺菌洗浄後のレタスについて、前記測定方法と同様にして、レタス1g当たりの菌数を測定し、殺菌基準値とした。
殺菌力の評価基準を以下に示す。なお、菌数は通常対数軸で比較されるが、1.0×100.7倍が5倍に相当する。殺菌活性値が1.0×100.7倍未満(5倍未満)であれば、200mg/Lの次亜塩素酸ナトリウムを用いた殺菌洗浄と、ほぼ同等の殺菌効果があると判断でき、2倍未満であれば統計的にさらに確実な判断が可能である。
「◎」:殺菌活性値が2倍未満であった。
「○」:殺菌活性値が2倍以上5倍未満であった。
「×」:殺菌活性値が5倍以上であった。
【0056】
[鮮度保持効果の評価]
処理後のレタス300g前後をジップ付ビニール袋に入れ、バイオマルチクーラー(日本フリーザー株式会社製、UKS−3600HC)を用いて10℃で3日間保存した。保存後、以下に示す基準により、ハリ(レタスの体積変化)、褐変(主に切断面の赤色化)、変色(全体の褐色化)、味覚(味覚の変化)の4つの指標で5段階評価し、3点以上を○(合格)とした。
(1)ハリ
保存後のレタスの体積を目視により確認し、下記基準で評価した。
「5点」:体積の減少が5%未満であった。
「4点」:体積の減少は5%未満であるが、わずかに野菜が柔らかかった。
「3点」:体積の減少が5%以上20%未満であった。
「2点」:体積の減少が20%以上50%未満であった。
「1点」:体積の減少が50%以上であった。
(2)褐変
保存後のレタス目視により確認し、切断面の赤色化を中心に下記基準で評価した
「5点」:赤色化したレタス片の割合が5%未満であった。
「4点」:赤色化したレタス片の割合が5%以上20%未満であった。
「3点」:赤色化したレタス片の割合が20%以上50%未満であった。
「2点」:赤色化したレタス片の割合が50%以上99%未満であった。
「1点」:赤色化したレタス片の割合が99%以上であった。
(3)変色
蛍光灯下において、レタスの全体の色調を目視により確認し、褐色化を下記基準で評価した。
「5点」:全体的に元の色調が保たれた。
「4点」:全体的にわずかなくすみが見られた。
「3点」:一部のレタス片が薄茶色に変色した。
「2点」:ほぼすべてのレタス片が薄茶色に変色した。
「1点」:ほぼすべてのレタス片が茶色く変色した。
(4)味
脱水直後のレタスを食して下記基準で味を評価した。なお、殺菌助剤の代わりに水道水を用いた以外は実施例1と同様に処理したレタスの味を5点とした。
「5点」:風味に変化がなかった。
「4点」:部位によってわずかな風味の変化が感じられた。
「3点」:わずかな風味の変化が感じられた。
「2点」:明らかに異なる味がした。
「1点」:強い苦味など、野菜以外の味が強く感じられた。
(5)総合評価
「○」:前記(1)〜(4)の評価点の合計が15点以上であった。
「×」:前記(1)〜(4)の評価点の合計が15点未満であった。
実施例及び比較例における殺菌力及び前記(1)〜(5)の評価結果を表1及び2に示す。表1及び表2における( )内の数値は、各評価における評価点である。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
表1に示すように、本発明の殺菌助剤を用いたオゾン殺菌洗浄方法である実施例1〜14では、気泡のオーバーフローが充分に抑制でき、優れた殺菌効果が得られた。また、殺菌洗浄後に保存したレタスの品質が高度に維持された。
また、成分(B)の酸は、リン酸、クエン酸、酢酸を用いた場合(実施例4〜6)に、グルコン酸を用いた場合(実施例14)に比べて少ない量で優れた殺菌力が得られた。
また、成分(C)を併用した実施例9〜12には、成分(A)の量を少なくしても優れた殺菌力が得られ、トリアセチンを併用した実施例11及び12において、特に優れた殺菌力及び品質保持効果が得られた。
【0060】
一方、表2に示すように、成分(A)であるモノカプリリンの量が5mg/Lと少ない比較例1では、殺菌力が低く、レタスの鮮度を充分に保持できなかった。
成分(A)であるモノカプリリンの量が200、500mg/Lと多い比較例2および3では、気泡のオーバーフローを充分に抑制できず、殺菌洗浄後のレタスの味が劣化した。
pHが6.5と高い比較例4では、殺菌力が非常に小さくなった。
成分(B)である酸の量が多く、pHが2.5と低い比較例5では、殺菌洗浄後のレタスの品質が大きく低下した。
モノカプリリンを用いない比較例6、及びモノカプリリンの代わりに同等量のモノカプリンを用いた比較例7では、充分な殺菌力が得られず、殺菌洗浄後のレタスの品質低下も充分に抑制できなかった。
モノカプリリンの代わりに同等量のトリアセチンを用いた比較例8では、充分な殺菌力が得られず、殺菌洗浄後のレタスの品質低下も充分に抑制できなかった。
【0061】
以上のように、本発明では、少量のモノカプリリンを用いることでオゾン含有微細気泡を形成させることができ、高い殺菌力と、殺菌洗浄後の食品の品質低下の抑制が両立できた。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の殺菌助剤及びオゾン殺菌洗浄方法は、低コストで被処理物を充分に殺菌洗浄でき、また野菜などの生鮮野菜を殺菌洗浄しても処理後の食品の味や鮮度の低下を抑制することができるため、特にカット野菜などの生鮮野菜の殺菌洗浄に有効である。
【符号の説明】
【0063】
10 殺菌洗浄装置 12 水槽 13 オゾン含有ガス供給手段 14 曝気手段 18 攪拌手段 19 被処理物 101 殺菌洗浄装置 110 二槽式洗濯機 111 洗濯槽 112 脱水槽 120 オゾン含有ガス供給手段 121 レギュレータ 122 空気ボンベ 123 オゾン発生器 124 マスフローコントローラ 130 微細気泡発生器 131 渦流ポンプ 132 分散器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)モノカプリリン10mg/L以上100mg/L以下、及び成分(B)水溶性の酸を含み、pHが3.0〜5.0であるオゾン殺菌用の殺菌助剤。
【請求項2】
前記成分(B)が、リン酸、クエン酸及び酢酸からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載のオゾン殺菌用の殺菌助剤。
【請求項3】
更に、成分(C)モノアセチン、ジアセチン及びトリアセチンからなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項1又は2に記載のオゾン殺菌用の殺菌助剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のオゾン殺菌用の殺菌助剤中に被処理物を浸漬し、該被処理物が浸漬された殺菌助剤中にオゾン曝気する工程を有するオゾン殺菌洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−121883(P2011−121883A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279539(P2009−279539)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】