説明

気体燃料の燃料噴射制御装置

【課題】本発明は、低温始動直後の雰囲気温度が不安定な状態において、安定した燃料噴射量制御を可能とし得る気体燃料の燃料噴射制御装置を実現することを目的としている。
【解決手段】このため、吸入空気温度を検出する吸入空気温度検出手段と、吸入空気温度検出手段により検出された吸入空気温度に応じて、加速時に噴射される燃料噴射量を補正制御する制御手段とを備えた気体燃料の燃料噴射制御装置において、エンジンが、完全に暖機されたかどうかを判定する暖機状態判定手段を備え、吸入空気温度検出手段により、イグニッションオン時の吸入空気温度を検出し、吸入空気温度を、暖機状態判定手段によりエンジンが完全暖機状態であると判定されるまで、制御手段で使用される吸入空気温度の値として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は気体燃料の燃料噴射制御装置に係り、特に低温始動直後の雰囲気温度が不安定な状態において、燃料噴射量制御を安定させる気体燃料の燃料噴射制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両には、気体燃料であるCNG(「圧縮天然ガス」ともいう。)を燃料とするエンジンを搭載する気体燃料車両である天然ガス自動車(「NGV」ともいう。)がある。
このような車両においては、エンジンに供給される気体燃料が充填された燃料容器を設け、この燃料容器が少なくとも主止弁とレギュレータ(「減圧弁」ともいう。)とを介して燃料噴射弁(「CNGインジェクタ」ともいう。)に連結した燃料供給系を設けている。
そして、燃料容器内の気体燃料は、燃料供給系の燃料供給管により取り出され、レギュレータを経て、所定の圧力・流量に調整され、燃料噴射弁から空気と混合してエンジンに供給される。
【0003】
【特許文献1】特開平8−270473号公報
【特許文献2】特開平11−22521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の気体燃料の燃料噴射制御装置においては、燃料を制御する上で、通常運転中はエンジン回転数や吸気マニホルド圧力(「インマニ圧力」ともいう。)、スロットル開度などをベースとして燃料噴射量を計算した値に対して、水温などの補正係数を加えた燃料噴射量(「時間」で置き換えることも可能)を求めている。
このとき、吸気加速時は通常運転時とは異なり、吸気マニホルドの圧力変化がスロットル開度の変位に対して追従できず、圧力変化に遅れが生ずるために、スロットル開度の変化(「角加速度」ともいう。)によって燃料噴射量を算出している。
このような条件での燃料噴射量の計算を加速非同期噴射量という。
しかし、エンジン始動直後の冷機時において、即発進・急加速などのアクセルペダルの踏み込みに対し、現行の加速非同期噴射量では、エンジンルーム内の暖機が完全でないために外気と同じ温度の空気を吸入することとなる。
この結果、冷たい外気による影響で空気密度の高い外気を吸入するため、現行の加速非同期噴射量では燃料噴射量が不足してリーンとなるという不都合がある。
【0005】
また、酸素濃度センサ(「O2センサ」ともいう。)によるフィードバック制御(「F/B制御」とも記載する。)を行っているため、リーン判定後に燃料噴射量を増量する。
しかし、燃料噴射量の増量後に、通常の燃料噴射量に切り替わった時点で燃料噴射量が安定せず、燃焼が不安定となる。
そして、このような燃焼が不安定となる症状が運転中に起きた場合には、加速不良や息継ぎ、エンジンストール(「エンスト」ともいう。)などが確認されるという不都合がある。
【0006】
この発明の目的は、低温始動直後の雰囲気温度が不安定な状態において、安定した燃料噴射量制御を可能とし得る気体燃料の燃料噴射制御装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、この発明は、上述不都合を除去するために、吸入空気温度を検出する吸入空気温度検出手段と、この吸入空気温度検出手段により検出された吸入空気温度に応じて、加速時に噴射される燃料噴射量を補正制御する制御手段とを備えた気体燃料の燃料噴射制御装置において、エンジンが、完全に暖機されたかどうかを判定する暖機状態判定手段を備え、前記吸入空気温度検出手段により、イグニッションオン時の吸入空気温度を検出し、この吸入空気温度を、前記暖機状態判定手段により前記エンジンが完全暖機状態であると判定されるまで、前記制御手段で使用される吸入空気温度の値として用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上詳細に説明した如くこの本発明によれば、吸入空気温度を検出する吸入空気温度検出手段と、吸入空気温度検出手段により検出された吸入空気温度に応じて、加速時に噴射される燃料噴射量を補正制御する制御手段とを備えた気体燃料の燃料噴射制御装置において、エンジンが、完全に暖機されたかどうかを判定する暖機状態判定手段を備え、吸入空気温度検出手段により、イグニッションオン時の吸入空気温度を検出し、この吸入空気温度を、暖機状態判定手段によりエンジンが完全暖機状態であると判定されるまで、制御手段で使用される吸入空気温度の値として用いる。
従って、気体燃料を使用したエンジンでは、低温時のように吸入空気温度が低い場合、すなわち空気密度が高い場合において、起こりやすい現象(噴射量不足によるリーン状態)を解決することが可能である。
これにより、低温始動直後の雰囲気温度が不安定な状態でも安定した燃料噴射量制御を実現することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
上述の如く発明したことにより、吸入空気温度検出手段によって検出したイグニッションオン時の吸入空気温度を、暖機状態判定手段によりエンジンが完全暖機状態であると判定されるまでは、制御手段で使用される吸入空気温度の値として用い、気体燃料を使用したエンジンでは、低温時のように吸入空気温度が低い場合、すなわち空気密度が高い場合において、起こりやすい現象(噴射量不足によるリーン状態)の解決を可能とし、低温始動直後の雰囲気温度が不安定な状態でも安定した燃料噴射量制御を実現している。
【実施例1】
【0010】
以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細に説明する。
【0011】
図1〜図4はこの発明の第1実施例を示すものである。
図2において、1は図示しない気体燃料自動車(以下「車両」という。)に搭載される、例えば3気筒の多気筒用のエンジン、2はガス燃料充填装置、3は燃料供給系を構成するガス燃料供給装置である。
前記エンジン4吸気系に、図2に示す如く、吸気マニホルド4と、スロットルバルブ5を備えたスロットルボディ6と、吸気管7と、エアクリーナ8とが設けられる。
また、前記エンジン1の排気系には、図2に示す如く、排気装置9を構成するように、排気マニホルド10と、三元触媒11と、マフラ12を備えた排気管13とが設けられている。
更に、前記吸気マニホルド4には、各気筒に対応して第1〜第3燃料噴射弁(「CNGインジェクタ」ともいう。)14−1、14−2、14−3が取り付けられている。
これらの第1〜3燃料噴射弁14−1、14−2、14−3は、燃料デリバリパイプ(図示せず)に接続している。
【0012】
前記車両には、気体燃料としての加圧した圧縮天然ガス(「CNG」ともいう。)を充填する、例えば2つの第1、第2燃料容器(「CNG容器」ともいう。)15−1、15−2が設置される。
このとき、第1燃料容器15−1は、第1燃料容器連絡管16−1を介して4WAYバルブ17に接続されるとともに、前記第2燃料容器15−2は、第2燃料容器連絡管16−2を介して4WAYバルブ17に接続される。
【0013】
そして、この4WAYバルブ17には、前記ガス燃料充填装置2の燃料充填管18の一端側が接続されている。
この燃料充填管18の他端側は、充填口(「レセプタクル」ともいう。)19に接続されている。
この充填口19には、フューエルリッド(図示せず)が取り付けられる。
前記燃料充填管18の途中には、図2に示す如く、第1、第2燃料容器15−1、15−2側からの気体燃料が充填口19側に逆流するのを阻止する逆止弁20が設けられている。
また、前記4WAYバルブ17には、前記ガス燃料供給装置3の燃料供給管21の一端側が接続されている。
この燃料供給管21の他端側は、前記吸気マニホルド4に取り付けた燃料デリバリパイプに接続されている。
【0014】
前記燃料供給管21には、図2に示す如く、前記4WAYバルブ17側から順次に、エンジン1の停止時に該燃料供給管21を遮断するように閉動作する主止弁(単に「電磁弁ともいう。」)22と、気体燃料を濾過する高圧側の第1燃料フィルタ23と、気体燃料の圧力・流量を一定に調整するレギュレータ(「減圧弁」ともいう。)24と、気体燃料を濾過する低圧側の第2燃料フィルタ25とが設けられている。
前記主止弁22と第1〜3燃料噴射弁14−1、14−2、14−3との間の燃料供給管21には、燃料残圧値(P)を検出可能な燃料残圧検出手段として残量圧力センサ26が設けられている。
この残量圧力センサ26には、デジタル燃料計27とアナログ燃料残量計28とが連絡している。
【0015】
前記吸気マニホルド4に取り付ける燃料デリバリパイプには、主止弁22と第1〜3燃料噴射弁14−1、14−2、14−3との間の燃料温度を検出可能な燃料温度検出手段としての燃料温度センサ29と、主止弁22と第1〜3燃料噴射弁14−1、14−2、14−3との間の燃料圧力を検出可能な燃料圧力検出手段としての燃料圧力センサ30とが取り付けられている。
【0016】
また、前記吸気管7には、エアクリーナ8内部を流れる吸入空気の吸入空気温度を検出する吸入空気温度検出手段としての吸気温度センサ31が設けられている。
更に、前記スロットルボディ6には、スロットルバルブ5のスロットル開度状態を検出するスロットル開度センサ32が設けられている。
前記吸気マニホルド4には、吸気管圧力を検出する吸気管圧力センサ33が設けられている。
前記排気マニホルド10には、内部を流れる排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ(「O2センサ」ともいう。)34が設けられている。
【0017】
前記第1〜3燃料噴射弁14−1、14−2、14−3と主止弁22と燃料温度センサ29と燃料圧力センサ30と吸気温度センサ31とスロットル開度センサ32と吸気管圧力センサ33と酸素濃度センサ34とは、制御手段35に連絡している。
また、前記制御手段35には、イグニッションスイッチ(「IG SW」とも記載する。)36と、エンジン冷却水温を検出する水温センサ37とが連絡している。
このとき、前記制御手段35は、前記吸入空気温度検出手段としての吸気温度センサ31により検出された吸入空気温度に応じて、加速時に前記第1〜3燃料噴射弁14−1、14−2、14−3から噴射される燃料噴射量を補正制御する機能有している。
【0018】
そして、エンジン1が、完全に暖機されたかどうかを判定する暖機状態判定手段38を備え、前記吸入空気温度検出手段としての吸気温度センサ31により、イグニッションオン時の吸入空気温度を検出し、この吸入空気温度を、前記暖機状態判定手段38により前記エンジン1が完全暖機状態であると判定されるまで、前記制御手段35で使用される吸入空気温度の値として用いる構成とする。
詳述すれば、前記暖機状態判定手段38は、イグニッションオン時から設定された時間が経過したかどうか、つまり予め設定した設定時間を基準とし、この設定時間以上の場合に前記エンジン1が完全暖機状態であると判定する。
そして、前記暖機状態判定手段38により前記エンジン1が完全暖機状態であると判定されるまでは、図3及び図4に示す如く、始動時に認識した補正値を前記制御手段35で使用される吸入空気温度の値として用いるものである。
【0019】
次に、図1の気体燃料の燃料噴射制御装置の制御用フローチャートに沿って作用を説明する。
【0020】
制御用プログラムがスタート(A00)すると、低温始動時であるか否かの判断(A01)に移行する。
この判断(A01)がNOの場合には、リアルタイムに吸気温度から算出される補正値にて、非同期加速噴射量を求める処理(A02)に移行する。
また、判断(A01)がYESの場合には、前記イグニッションスイッチ36のオン時、つまりイグニッションオン時の吸気温度を前記吸気温度センサ31よって計測する処理(A03)に移行する。
【0021】
そして、処理(A03)において、前記吸気温度センサ31よってイグニッションオン時の吸気温度を計測した後には、始動後、即発進の処理(A04)に移行し、暖機完了前にエンジンルーム内の雰囲気温度が不安定となる状態(A05)に至る。
この暖機完了前にエンジンルーム内の雰囲気温度が不安定となる状態(A05)を経た後には、急加速度の非同期加速噴射量に吸気温度による補正を加味する処理(A06)に移行し、吸気温度による補正値を、イグニッションオン時の吸気温度から選定する処理(A07)に移行する。
そして、吸気温度による補正値を、イグニッションオン時の吸気温度から選定する処理(A07)の後には、完暖判定、つまり完全暖機状態であるか否かを判定する判断(A08)に移行する。
【0022】
この完暖判定、つまり完全暖機状態であるか否かを判定する判断(A08)において、判断(A08)がNOの場合には、イグニッションオン時の吸気温度から選定した補正値を採用する処理(A09)に移行し、完暖判定、つまり完全暖機状態であるか否かを判定する判断(A08)に戻る。
また、完暖判定、つまり完全暖機状態であるか否かを判定する判断(A08)がYESの場合には、リアルタイムに吸気温度から算出される補正値にて、非同期加速噴射量を求める処理(A10)に移行し、その後に後述する制御用プログラムの終了(A12)に移行する。
【0023】
更に、上述した吸気温度による補正値を、イグニッションオン時の吸気温度から選定する処理(A07)の後には、始動後の時間経過を判断、つまり、イグニッションオン時から予め設定した設定時間が経過したか否かの判断(A11)移行する。
そして、このイグニッションオン時から予め設定した設定時間が経過したか否かの判断(A11)において、経過した時間が設定時間未満の場合には、吸気温度による補正値を、イグニッションオン時の吸気温度から選定する処理(A07)に戻る。
また、イグニッションオン時から予め設定した設定時間が経過したか否かの判断(A11)において、経過した時間が設定時間以上の場合には、上述したリアルタイムに吸気温度から算出される補正値にて、非同期加速噴射量を求める処理(A10)に移行し、その後に後述する制御用プログラムの終了(A12)に移行する。
【0024】
これにより、吸入空気温度を検出する吸入空気温度検出手段としての吸気温度センサ31と、この吸気温度センサ31により検出された吸入空気温度に応じて、加速時に噴射される燃料噴射量を補正制御する制御手段35とを備えた気体燃料の燃料噴射制御装置において、エンジン1が、完全に暖機されたかどうかを判定する暖機状態判定手段38を備え、前記吸気温度センサ31により、イグニッションオン時の吸入空気温度を検出し、この吸入空気温度を、前記暖機状態判定手段38により前記エンジン1が完全暖機状態であると判定されるまで、前記制御手段35で使用される吸入空気温度の値として用いる。
従って、気体燃料を使用したエンジン1では、低温時のように吸入空気温度が低い場合、すなわち空気密度が高い場合において、起こりやすい現象(噴射量不足によるリーン状態)を解決することが可能である。
これにより、低温始動直後の雰囲気温度が不安定な状態でも安定した燃料噴射量制御を実現することが可能である。
【0025】
また、前記暖機状態判定手段38は、イグニッションオン時から設定された時間が経過したかどうかにより完全暖機状態を判定する。
従って、経過時間を計測するだけでよいので、新たな検出手段を追加する必要がない。
【実施例2】
【0026】
図5はこの発明の第2実施例を示すものである。
この第2実施例において、上述第1実施例のものと同一機能を果たす箇所には、同一符号を付して説明する。
【0027】
この第2実施例の特徴とするところは、前記暖機状態判定手段(図2の符号38参照)が、エンジン冷却水温が設定水温に達したかどうかにより完全暖機状態を判定する点にある。
【0028】
すなわち、前記暖機状態判定手段は、水温センサ(図2の符号37参照)によって検出されるエンジン冷却水温の上昇状況を入力し、水温センサ(図2の符号37参照)によって検出されるエンジン冷却水温が予め設定される設定温度以上の場合に、前記エンジンが完全暖機状態であると判定するものである。
【0029】
ここで、図5の気体燃料の燃料噴射制御装置の制御用フローチャートに沿って作用を説明する。
【0030】
制御用プログラムがスタート(B00)すると、低温始動時であるか否かの判断(B01)に移行する。
この判断(B01)がNOの場合には、リアルタイムに吸気温度から算出される補正値にて、非同期加速噴射量を求める処理(B02)に移行する。
また、判断(B01)がYESの場合には、前記イグニッションスイッチのオン時、つまりイグニッションオン時の吸気温度を前記吸気温度センサよって計測する処理(B03)に移行する。
【0031】
そして、処理(B03)において、前記吸気温度センサよってイグニッションオン時の吸気温度を計測した後には、始動後、即発進の処理(B04)に移行し、暖機完了前にエンジンルーム内の雰囲気温度が不安定となる状態(B05)に至る。
この暖機完了前にエンジンルーム内の雰囲気温度が不安定となる状態(B05)を経た後には、急加速度の非同期加速噴射量に吸気温度による補正を加味する処理(B06)に移行し、吸気温度による補正値を、イグニッションオン時の吸気温度から選定する処理(B07)に移行する。
そして、吸気温度による補正値を、イグニッションオン時の吸気温度から選定する処理(B07)の後には、完暖判定、つまり完全暖機状態であるか否かを判定する判断(B08)に移行する。
【0032】
この完暖判定、つまり完全暖機状態であるか否かを判定する判断(B08)において、判断(B08)がNOの場合には、イグニッションオン時の吸気温度から選定した補正値を採用する処理(B09)に移行し、完暖判定、つまり完全暖機状態であるか否かを判定する判断(B08)に戻る。
また、完暖判定、つまり完全暖機状態であるか否かを判定する判断(B08)がYESの場合には、リアルタイムに吸気温度から算出される補正値にて、非同期加速噴射量を求める処理(B10)に移行し、その後に後述する制御用プログラムの終了(B12)に移行する。
【0033】
更に、上述した吸気温度による補正値を、イグニッションオン時の吸気温度から選定する処理(B07)の後には、エンジン冷却水温の上昇判定、つまり、水温センサ(図2の符号37参照)によって検出されるエンジン冷却水温が予め設定される設定温度以上であるか否かの判断(B11)に移行する。
そして、このエンジン冷却水温が予め設定される設定温度以上であるか否かの判断(B11)において、エンジン冷却水温が設定温度未満の場合には、吸気温度による補正値を、イグニッションオン時の吸気温度から選定する処理(B07)に戻る。
また、エンジン冷却水温が予め設定される設定温度以上であるか否かの判断(B11)において、エンジン冷却水温が設定温度以上の場合には、上述したリアルタイムに吸気温度から算出される補正値にて、非同期加速噴射量を求める処理(B10)に移行し、その後に後述する制御用プログラムの終了(B12)に移行する。
【0034】
さすれば、前記暖機状態判定手段は、エンジン冷却水温が設定水温に達したかどうかにより完全暖機状態を判定する。
従って、エンジンの燃料噴射制御に用いられている既存のエンジン冷却水温センサの値を利用して判定することができるので、制御装置、制御仕様の複雑化を阻止することができる。
【実施例3】
【0035】
図6はこの発明の第3実施例を示すものである。
【0036】
この第3実施例の特徴とするところは、前記暖機状態判定手段(図2の符号38参照)が、エンジン冷却水温が設定水温に達したかどうかにより完全暖機状態を判定するとともに、エンジン冷却水温が設定水温以上となった際に、イグニッションオン時の吸気温度から算出した補正値からリアルタイムの吸気温度から算出された補正値に段階的に修正する機能をも付加した点にある。
【0037】
すなわち、前記暖機状態判定手段は、水温センサ(図2の符号37参照)によって検出されるエンジン冷却水温の上昇状況を入力し、水温センサ(図2の符号37参照)によって検出されるエンジン冷却水温が予め設定される設定温度以上の場合に、前記エンジンが完全暖機状態であると判定する。
そして、エンジン冷却水温が予め設定される設定温度以上となった場合には、イグニッションオン時の吸気温度から算出した補正値からリアルタイムの吸気温度から算出された補正値に段階的に修正(図4参照)するものである。
【0038】
ここで、図6の気体燃料の燃料噴射制御装置の制御用フローチャートに沿って作用を説明する。
【0039】
制御用プログラムがスタート(C00)すると、低温始動時であるか否かの判断(C01)に移行する。
この判断(C01)がNOの場合には、リアルタイムに吸気温度から算出される補正値にて、非同期加速噴射量を求める処理(C02)に移行する。
また、判断(C01)がYESの場合には、前記イグニッションスイッチのオン時、つまりイグニッションオン時の吸気温度を前記吸気温度センサよって計測する処理(C03)に移行する。
【0040】
そして、処理(C03)において、前記吸気温度センサよってイグニッションオン時の吸気温度を計測した後には、始動後、即発進の処理(C04)に移行し、暖機完了前にエンジンルーム内の雰囲気温度が不安定となる状態(C05)に至る。
この暖機完了前にエンジンルーム内の雰囲気温度が不安定となる状態(C05)を経た後には、急加速度の非同期加速噴射量に吸気温度による補正を加味する処理(C06)に移行し、吸気温度による補正値を、イグニッションオン時の吸気温度から選定する処理(C07)に移行する。
そして、吸気温度による補正値を、イグニッションオン時の吸気温度から選定する処理(C07)の後には、完暖判定、つまり完全暖機状態であるか否かを判定する判断(C08)に移行する。
【0041】
この完暖判定、つまり完全暖機状態であるか否かを判定する判断(C08)において、判断(C08)がNOの場合には、イグニッションオン時の吸気温度から選定した補正値を採用する処理(C09)に移行し、完暖判定、つまり完全暖機状態であるか否かを判定する判断(C08)に戻る。
また、完暖判定、つまり完全暖機状態であるか否かを判定する判断(C08)がYESの場合には、リアルタイムに吸気温度から算出される補正値にて、非同期加速噴射量を求める処理(C10)に移行し、その後に後述する制御用プログラムの終了(C13)に移行する。
【0042】
更に、上述した吸気温度による補正値を、イグニッションオン時の吸気温度から選定する処理(C07)の後には、エンジン冷却水温の上昇判定、つまり、水温センサ(図2の符号37参照)によって検出されるエンジン冷却水温が予め設定される設定温度以上であるか否かの判断(C11)移行する。
そして、このエンジン冷却水温が予め設定される設定温度以上であるか否かの判断(C11)において、エンジン冷却水温が設定温度未満の場合には、吸気温度による補正値を、イグニッションオン時の吸気温度から選定する処理(C07)に戻る。
また、エンジン冷却水温が予め設定される設定温度以上であるか否かの判断(C11)において、エンジン冷却水温が設定温度以上の場合には、イグニッションオン時の吸気温度から算出した補正値からリアルタイムの吸気温度から算出された補正値に段階的に修正していく処理(C12)に移行し、その後に上述したリアルタイムに吸気温度から算出される補正値にて、非同期加速噴射量を求める処理(C10)に移行し、その後に後述する制御用プログラムの終了(C13)に移行する。
【0043】
さすれば、前記暖機状態判定手段は、エンジン冷却水温が設定水温に達したかどうかにより完全暖機状態を判定する。
従って、エンジンの燃料噴射制御に用いられている既存のエンジン冷却水温センサの値を利用して判定することができるので、制御装置、制御仕様の複雑化を阻止することができる。
また、エンジン冷却水温が予め設定される設定温度以上となった場合に、イグニッションオン時の吸気温度から算出した補正値からリアルタイムの吸気温度から算出された補正値に段階的に修正する。
従って、エンジン冷却水温が予め設定される設定温度以上となった場合に、イグニッションオン時の吸気温度から算出した補正値をリアルタイムの吸気温度から算出された補正値によって段階的に修正することができ、精度の高い制御を実現することが可能である。
【実施例4】
【0044】
図7はこの発明の第4実施例を示すものである。
【0045】
この第4実施例の特徴とするところは、前記暖機状態判定手段(図2の符号38参照)が、前記吸入空気温度検出手段としての吸気温度センサ(図2の符号31参照)により検出された吸入空気温度の単位時間当たりの変化量が設定された変化量以上である場合に判定する点にある。
【0046】
すなわち、前記暖機状態判定手段は、前記吸入空気温度検出手段としての吸気温度センサにより検出された吸入空気温度の単位時間当たりの変化量が設定された変化量以上である場合に、未完全暖機状態であると判定するものである。
つまり、吸入空気温度の単位時間当たりの変化量が設定された変化量以上である場合に、未完全暖機状態であると判定するとともに、吸入空気温度の単位時間当たりの変化量が設定された変化量未満である場合に、エンジンが完全暖機状態であると判定する。
【0047】
ここで、図7の気体燃料の燃料噴射制御装置の制御用フローチャートに沿って作用を説明する。
【0048】
制御用プログラムがスタート(D00)すると、低温始動時であるか否かの判断(D01)に移行する。
この判断(D01)がNOの場合には、リアルタイムに吸気温度から算出される補正値にて、非同期加速噴射量を求める処理(D02)に移行する。
また、判断(D01)がYESの場合には、前記イグニッションスイッチのオン時、つまりイグニッションオン時の吸気温度を前記吸気温度センサよって計測する処理(D03)に移行する。
【0049】
そして、処理(D03)において、前記吸気温度センサよってイグニッションオン時の吸気温度を計測した後には、始動後、即発進の処理(D04)に移行し、暖機完了前にエンジンルーム内の雰囲気温度が不安定となる状態(D05)に至る。
この暖機完了前にエンジンルーム内の雰囲気温度が不安定となる状態(D05)を経た後には、急加速度の非同期加速噴射量に吸気温度による補正を加味する処理(D06)に移行し、吸気温度による補正値を、イグニッションオン時の吸気温度から選定する処理(D07)に移行する。
そして、吸気温度による補正値を、イグニッションオン時の吸気温度から選定する処理(D07)の後には、完暖判定、つまり完全暖機状態であるか否かを判定する判断(D08)に移行する。
【0050】
この完暖判定、つまり完全暖機状態であるか否かを判定する判断(D08)において、判断(D08)がNOの場合には、イグニッションオン時の吸気温度から選定した補正値を採用する処理(D09)に移行し、完暖判定、つまり完全暖機状態であるか否かを判定する判断(D08)に戻る。
また、完暖判定、つまり完全暖機状態であるか否かを判定する判断(D08)がYESの場合には、リアルタイムに吸気温度から算出される補正値にて、非同期加速噴射量を求める処理(D10)に移行し、その後に後述する制御用プログラムの終了(D12)に移行する。
【0051】
更に、上述した吸気温度による補正値を、イグニッションオン時の吸気温度から選定する処理(D07)の後には、吸気温度の変位、例えば前記吸入空気温度検出手段としての吸気温度センサにより検出された吸入空気温度の単位時間当たりの変化量と予め設定された変化量との比較判断(D11)移行する。
そして、この前記吸入空気温度検出手段としての吸気温度センサにより検出された吸入空気温度の単位時間当たりの変化量と予め設定された変化量との比較判断(D11)において、変位が大きく、つまり、吸入空気温度の単位時間当たりの変化量が予め設定された変化量以上の場合には、吸気温度による補正値を、イグニッションオン時の吸気温度から選定する処理(D07)に戻る。
また、前記吸入空気温度検出手段としての吸気温度センサにより検出された吸入空気温度の単位時間当たりの変化量と予め設定された変化量との比較判断(D11)において、変位が小さく、つまり、吸入空気温度の単位時間当たりの変化量が予め設定された変化量未満の場合には、上述したリアルタイムに吸気温度から算出される補正値にて、非同期加速噴射量を求める処理(D10)に移行し、その後に後述する制御用プログラムの終了(D12)に移行する。
【0052】
さすれば、前記暖機状態判定手段は、前記吸入空気温度検出手段により検出された吸入空気温度の単位時間当たりの変化量が設定された変化量以上である場合に判定している。
従って、吸入空気温度の変化量を算出するだけでよいので、新たな検出手段を追加する必要がない。
【実施例5】
【0053】
図8はこの発明の第5実施例を示すものである。
【0054】
この第5実施例の特徴とするところは、前記暖機状態判定手段(図2の符号38参照)が、前記吸入空気温度検出手段としての吸気温度センサ(図2の符号31参照)により検出された吸入空気温度の単位時間当たりの変化量が設定された変化量以上である場合に判定するとともに、エンジン冷却水温が設定水温以上となった際に、イグニッションオン時の吸気温度から算出した補正値からリアルタイムの吸気温度から算出された補正値に段階的に修正する機能をも付加した点にある。
【0055】
すなわち、前記暖機状態判定手段は、前記吸入空気温度検出手段としての吸気温度センサにより検出された吸入空気温度の単位時間当たりの変化量が設定された変化量以上である場合に、未完全暖機状態であると判定するものである。
つまり、吸入空気温度の単位時間当たりの変化量が設定された変化量以上である場合に、未完全暖機状態であると判定するとともに、吸入空気温度の単位時間当たりの変化量が設定された変化量未満である場合に、エンジンが完全暖機状態であると判定する。
そして、エンジン冷却水温が予め設定される設定温度以上となった場合には、イグニッションオン時の吸気温度から算出した補正値からリアルタイムの吸気温度から算出された補正値に段階的に修正(図4参照)するものである。
【0056】
ここで、図8の気体燃料の燃料噴射制御装置の制御用フローチャートに沿って作用を説明する。
【0057】
制御用プログラムがスタート(E00)すると、低温始動時であるか否かの判断(E01)に移行する。
この判断(E01)がNOの場合には、リアルタイムに吸気温度から算出される補正値にて、非同期加速噴射量を求める処理(E02)に移行する。
また、判断(E01)がYESの場合には、前記イグニッションスイッチのオン時、つまりイグニッションオン時の吸気温度を前記吸気温度センサよって計測する処理(E03)に移行する。
【0058】
そして、処理(E03)において、前記吸気温度センサよってイグニッションオン時の吸気温度を計測した後には、始動後、即発進の処理(E04)に移行し、暖機完了前にエンジンルーム内の雰囲気温度が不安定となる状態(E05)に至る。
この暖機完了前にエンジンルーム内の雰囲気温度が不安定となる状態(E05)を経た後には、急加速度の非同期加速噴射量に吸気温度による補正を加味する処理(E06)に移行し、吸気温度による補正値を、イグニッションオン時の吸気温度から選定する処理(E07)に移行する。
そして、吸気温度による補正値を、イグニッションオン時の吸気温度から選定する処理(E07)の後には、完暖判定、つまり完全暖機状態であるか否かを判定する判断(E08)に移行する。
【0059】
この完暖判定、つまり完全暖機状態であるか否かを判定する判断(E08)において、判断(E08)がNOの場合には、イグニッションオン時の吸気温度から選定した補正値を採用する処理(E09)に移行し、完暖判定、つまり完全暖機状態であるか否かを判定する判断(E08)に戻る。
また、完暖判定、つまり完全暖機状態であるか否かを判定する判断(E08)がYESの場合には、リアルタイムに吸気温度から算出される補正値にて、非同期加速噴射量を求める処理(E10)に移行し、その後に後述する制御用プログラムの終了(E13)に移行する。
【0060】
更に、上述した吸気温度による補正値を、イグニッションオン時の吸気温度から選定する処理(E07)の後には、吸気温度の変位、例えば前記吸入空気温度検出手段としての吸気温度センサにより検出された吸入空気温度の単位時間当たりの変化量と予め設定された変化量との比較判断(E11)に移行する。
そして、この前記吸入空気温度検出手段としての吸気温度センサにより検出された吸入空気温度の単位時間当たりの変化量と予め設定された変化量との比較判断(E11)において、変位が大きく、つまり、吸入空気温度の単位時間当たりの変化量が予め設定された変化量以上の場合には、吸気温度による補正値を、イグニッションオン時の吸気温度から選定する処理(E07)に戻る。
また、前記吸入空気温度検出手段としての吸気温度センサにより検出された吸入空気温度の単位時間当たりの変化量と予め設定された変化量との比較判断(E11)において、変位が小さく、つまり、吸入空気温度の単位時間当たりの変化量が予め設定された変化量未満の場合には、イグニッションオン時の吸気温度から算出した補正値からリアルタイムの吸気温度から算出された補正値に段階的に修正していく処理(E12)に移行し、その後に上述したリアルタイムに吸気温度から算出される補正値にて、非同期加速噴射量を求める処理(E10)に移行し、その後に後述する制御用プログラムの終了(E13)に移行する。
【0061】
さすれば、前記暖機状態判定手段は、前記吸入空気温度検出手段により検出された吸入空気温度の単位時間当たりの変化量が設定された変化量以上である場合に判定している。
従って、吸入空気温度の変化量を算出するだけでよいので、新たな検出手段を追加する必要がない。
また、エンジン冷却水温が予め設定される設定温度以上となった場合に、イグニッションオン時の吸気温度から算出した補正値からリアルタイムの吸気温度から算出された補正値に段階的に修正する。
従って、エンジン冷却水温が予め設定される設定温度以上となった場合に、イグニッションオン時の吸気温度から算出した補正値をリアルタイムの吸気温度から算出された補正値によって段階的に修正することができ、精度の高い制御を実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】この発明の第1実施例を示す気体燃料の燃料噴射制御装置の制御用フローチャートである。
【図2】気体燃料の燃料噴射制御装置の概略システム図である
【図3】始動時の吸気温(水温)による燃料流量補正係数を示すテーブルである。
【図4】加速非同期制御における段階的補正を示すテーブルである。
【図5】この発明の第2実施例を示す気体燃料の燃料噴射制御装置の制御用フローチャートである。
【図6】この発明の第3実施例を示す気体燃料の燃料噴射制御装置の制御用フローチャートである。
【図7】この発明の第4実施例を示す気体燃料の燃料噴射制御装置の制御用フローチャートである。
【図8】この発明の第5実施例を示す気体燃料の燃料噴射制御装置の制御用フローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
1 エンジン
2 ガス燃料充填装置
3 ガス燃料供給装置
4 吸気マニホルド
6 スロットルボディ
7 吸気管
8 エアクリーナ
9 排気装置
10 排気マニホルド
11 三元触媒
13 排気管
14−1、14−2、14−3 第1〜3燃料噴射弁
15−1、15−2 第1、第2燃料容器
17 4WAYバルブ
18 燃料充填管
19 充填口
20 逆止弁
21 燃料供給管
22 主止弁
23 高圧側の第1燃料フィルタ
24 レギュレータ
25 低圧側の第2燃料フィルタ
26 残量圧力センサ
27 デジタル燃料計
28 アナログ燃料残量計
29 燃料温度センサ
30 燃料圧力センサ
31 吸気温度センサ
32 スロットル開度センサ
33 吸気管圧力センサ
34 酸素濃度センサ(「O2センサ」ともいう。)
35 制御手段
36 イグニッションスイッチ(「IG SW」とも記載する。)
37 水温センサ
38 暖機状態判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入空気温度を検出する吸入空気温度検出手段と、この吸入空気温度検出手段により検出された吸入空気温度に応じて、加速時に噴射される燃料噴射量を補正制御する制御手段とを備えた気体燃料の燃料噴射制御装置において、エンジンが、完全に暖機されたかどうかを判定する暖機状態判定手段を備え、前記吸入空気温度検出手段により、イグニッションオン時の吸入空気温度を検出し、この吸入空気温度を、前記暖機状態判定手段により前記エンジンが完全暖機状態であると判定されるまで、前記制御手段で使用される吸入空気温度の値として用いることを特徴とする気体燃料の燃料噴射制御装置。
【請求項2】
前記暖機状態判定手段は、イグニッションオン時から設定された時間が経過したかどうかにより判定していることを特徴とする請求項1に記載の気体燃料の燃料噴射制御装置。
【請求項3】
前記暖機状態判定手段は、エンジン冷却水温が設定水温に達したかどうかにより判定していることを特徴とする請求項1に記載の気体燃料の燃料噴射制御装置。
【請求項4】
前記暖機状態判定手段は、前記吸入空気温度検出手段により検出された吸入空気温度の単位時間当たりの変化量が設定された変化量以上である場合に判定していることを特徴とする請求項1に記載の気体燃料の燃料噴射制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−114911(P2009−114911A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287295(P2007−287295)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】