説明

気化装置、基板処理装置、基板処理方法並びに記憶媒体

【課題】薬液の劣化を抑え、気化効率が高くキャリアガスの流量を少なくすることができる気化装置、及びこの気化装置を備えることにより気化された処理ガスの漏洩のリスクを低減させた基板処理装置、基板処理方法を提供すること。
【解決手段】気化プレート31の表面に多数の溝部36を形成し、毛細管現象により薬液であるHMDS液をこれら溝部36を介して気化面の上に広げ、この状態でキャリアガスを気化面に供給してHMDS液を気化させ処理ガスを得ている。従って気化を行わないときには、貯留されたHMDS液がキャリアガスに接触するといったことがないので、HMDS液の劣化が抑えられる。また小型化を図ることができる上、気化効率が高いのでキャリアガスが少なくて済む。また気化装置3を小型化できることから、処理容器22の側に置くことができ、処理ガスの配管を短くする、若しくは無くすことができるので、処理ガスの漏れが抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理室内において、例えば半導体デバイスやLCD(液晶ディスプレイ)用のガラス基板等に例えば疎水化処理等の所定の基板処理を行う際に、薬液を気化して基板処理用の処理ガスを得るための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来半導体デバイスやLCD基板等の製造プロセスにおいて、レジストパターンの形成処理における工程の一つに、基板例えば半導体ウェハ(以下、単にウェハという)に対する疎水化処理がある。この処理は、ウェハにレジスト液を塗布する前に下地膜とレジスト膜との密着性を向上させるために、ウェハの表面にHMDS(hexa methyl disilazane)の蒸気(以下、単に処理ガスという)を吹き付けて親水性のウェハの表面を疎水性に変化させるために行われる。この際疎水化処理は、ウェハの表面とベベル部(外周部端面)まで行われることが多く、このように疎水化処理が行われることでウェハと露光機との間に水を介在させて露光を行う液浸露光処理を行う場合において、レジスト膜が剥がれ難くなるという利点がある。
【0003】
そして基板に対してこのような処理を行う基板処理装置として、次の装置が知られている。即ち液体原料の薬液となるHMDSをタンク内に貯留し、このタンクにキャリアガス供給源と疎水化処理を行う処理室とを各々配管を介して接続する。そしてタンクにキャリアガス供給源からキャリアガスを供給することによってタンク内のHMDSをバブリングして気化し、この気化したHMDSをキャリアガスにより処理室へと搬送する。一方処理室では、ウェハを載置してから処理室内を密閉しておき、その後搬送されてきた処理ガスを処理室内のウェハに供給することによって、ウェハ表面の疎水化処理を行っている。(特許文献1)。
【0004】
上述した疎水化処理装置は、基板に対して面内均一性の高い処理を行うために処理容器の中心部からHMDSガスを供給し、処理容器の周縁の全周から排気するようになっている。一方基板は載置台内のヒータにより加熱されているためHMDSガスは処理容器内に発生する上昇気流に逆らって供給されることになる。そのため疎水化処理を行うためには、比較的多量の処理ガスを定的に処理室内へと送り込む必要があり、HMDSの処理ガス生成速度がHMDSとキャリアガスとの接触面積に比例することから、HMDSを貯留するタンクは大型の物が用いられている。
【0005】
従って疎水化処理装置本体の側にタンクを設置することができず、タンクを疎水化処理装置が設けられる処理ブロックから離れた場所に設置するようにしていた。このためタンクから疎水化処理装置までの配管が長くなり継ぎ手部分が多くなるため、その結果人為的ミス等によってHMDSガスが漏洩する懸念があった。HMDSガスは露光後の化学増幅型レジストから発生する酸を中和させてパターン組成を阻むため、従来の疎水化処理装置では高いリスクが内在していたことになる。
【0006】
更に処理容器内を密閉すると、ガスの置換後に負圧になってHMDSガスがウェハの裏面に回り込む虞があることから、本出願人は処理容器を密閉せずにN2ガスによる気流カーテンを形成することが得策であると考えている。ところがタンク内のバブリングによる気化は効率が悪いことからキャリアガスであるN2ガスの供給量を多くする必要があり、気流カーテンによる雰囲気のシールを行う場合には、処理容器の外へHMDSガスが漏洩し易くなるという問題が起きる。
【0007】
またタンク内にて、HMDSは常に供給されたキャリアガスと接触し続けることになるため、処理ガスの生成をしばらく行わないと、タンク内でHMDSとキャリアガスとが反応してHMDSの液劣化が起こる虞がある。仮にHMDSの液劣化が起きると、基板表面の疎水化が不十分になりレジスト膜の密着性を向上させることが困難になる。またタンクと処理室とを連結する配管が長いため、各基板の処理毎に配管を処理ガスによって満たさなければならず、スループットの低下の要因になる。
【0008】
【特許文献1】特開平11−214292号公報(段落番号0036、0037、0048)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、薬液の劣化を抑えることができ、また気化効率が高くキャリアガスの流量を少なくすることができる気化装置を提供することにある。本発明の他の目的は、この気化装置を備えることにより気化された処理ガスの漏洩のリスクを低減させることができる基板処理装置、基板処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の気化装置では、
気化室を形成する筐体と、
前記気化室内にその表面が位置し、薬液を毛細管現象により広げるための多数の溝が前記表面に設けられた気化面形成部と、
前記気化面形成部の表面に前記薬液を供給するための薬液供給ポートと、
前記溝内に広げられた薬液を気化するためのキャリアガスを前記気化室内に導入するガス導入ポートと、
前記気化室内にて気化された処理ガスを取り出すための取り出しポートと、を備えたことを特徴としている。
【0011】
前記溝は、前記薬液が供給される部位から放射状に伸びている。そして前記溝は、前記薬液が供給される部位に近い第1の領域と当該第1の領域よりも前記部位から離れている第2の領域に亘って形成されており、第2の領域における周方向の溝の数は第1の領域における周方向の溝の数よりも多いことが好ましい。また、前記多数の溝は、平行状に伸びていても良い。また、前記気化面形成部には加熱手段が設けられていることが好ましい。
【0012】
本発明の基板処理装置では、
基板に処理ガスを供給して処理を行う基板処理装置において、
内部に基板を載置するための載置台が設けられた処理容器と、
薬液を気化して処理ガスを得るための気化装置と、
当該気化装置にて得た処理ガスを前記処理容器内に供給するための処理ガス供給路と、
前記処理容器内を排気するための排気路と、を備え、
前記気化装置は、上記各気化装置を用いることを特徴としている。
【0013】
前記気化装置は、前記処理容器の天板の上に設けられている。前記処理ガス供給路は、前記天板に形成されている。また前記処理ガス供給路の上流端は前記気化装置の気化室内に開口していることが好ましい。また前記処理容器には、前記基板を加熱するための基板加熱手段が設けられており、当該基板加熱手段は、前記気化室内を加熱することが可能である。
【0014】
本発明の基板処理方法では、
処理容器に設けられた載置台に基板を載置する工程と、
気化面形成部の表面に設けられた多数の溝に薬液を毛細管現象により薬液を供給する工程と、
ガス導入ポートから、前記薬液を気化するためのキャリアガスを前記気化室内に導入する工程と、
前記気化室内にて気化された処理ガスを取り出しポートから前記処理容器内に供給する工程と、
前記処理容器内を排気する工程と、を含むことを特徴としている。
【0015】
本発明の記憶媒体では、
処理容器内の基板に処理ガスを供給する基板処理装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体であって、
前記プログラムは、上記基板処理方法を実行するためのステップ群が組まれたプログラムであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の気化装置によれば、気化面形成部材の表面に多数の溝を形成し、薬液を毛細管現象によりこれら溝を介して気化面の上に広げ、この状態でキャリアガスを気化面に供給して薬液を気化させ処理ガスを得ている。従って気化を行わないときには、タンクの場合のように貯留された薬液がキャリアガスに接触するといったことがないので、薬液の劣化が抑えられる。また、タンクを用いないため小型化を図ることができる上、気化効率が高いのでキャリアガスが少なくて済む。そしてこの気化装置を用いた基板処理装置及び基板処理方法によれば、キャリアガスが少ないことから処理ガスが処理容器の外に漏れ難くなる。また気化装置を小型化できることから、処理容器の側に置くことができ、処理ガスの配管が短くて済む、若しくは不要となり、この点からも処理ガスの漏れが抑えられる。従って、例えばHMDSを用いた基板の疎水化処理装置にあっては、処理ガスの漏れがレジストパターンに対して悪影響を及ぼすことから本発明は極めて好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1の実施形態]
本発明の基板処理装置を疎水化処理装置に適用した実施の形態について図面を参照しながら説明する。この疎水化処理装置1は、図1に示すように基板例えばウェハWに対して疎水化処理を行うための処理容器2と、この処理容器2に送り込まれるHMDSガス(処理ガス)を生成するための本実施形態の特徴的な部分である気化装置3を備えており、この疎水化処理装置1は、図示しない外装体に気密状態で格納されている。
【0018】
処理容器2は、上部が開口部となっている容器本体21とこの開口部を覆うように設けられた蓋体22とによって略構成されている。この容器本体21は、側壁部21aと底部21bとを有し、容器本体21内には、底部21bによって支持されるウェハWの載置台23が設けられている。つまり本実施形態の処理容器2では、底部21bは載置台23の周縁部を支持する領域まで形成されており、載置台23が容器本体21の一部を形成する態様となっている。そして載置台23には、加熱手段であるヒータ29と図示しない温度計測手段とが設けられている。
【0019】
一方蓋体22は、側壁部22aと天板部22bとを備えており、容器本体21の周縁部をなす側壁部21aの上面と蓋体22の周縁部をなす側壁部22aの下面とを合わせて近接させることにより、容器本体21の開口部が蓋体22で覆われて処理室2aが区画形成される。このようにして形成された処理室2aの内部では、載置台23のウェハWの載置面から蓋体22の天板部22bの内面までの距離L1が例えば3mm〜10mm程度に設定される。
【0020】
この容器本体21と蓋体22は、互いに相対的に昇降自在に構成されており、蓋体22が図示しない昇降機構により容器本体21と接触する処理位置と、容器本体21の上方に位置する基板搬出入位置との間で昇降自在に構成されている。また載置台23には、図示しない外部の搬送手段との間でウェハWの受け渡しを行うための複数本の昇降ピン24が設けられており、この昇降ピン24は昇降機構24aにより昇降自在となるように構成されている。この複数本の昇降ピン24は、それぞれが載置台23に形成された貫通孔23aを貫通するように配設されており、この昇降ピン24が上昇することによって載置台23上のウェハWは、載置台23上から離間する態様となっている。また昇降ピン24は、載置台23の裏面側に設けられたカバー24bによって周囲を覆われている。
【0021】
また天板部22bの例えば中央部には、HMDSガスを処理室2a内に供給するための処理ガス供給路22cが形成されており、天板部22bの上部には気化装置3が設けられている。処理ガス供給路22cは、図2に示すように内部にガス流路22dが形成された円柱形上の部材であり、断面形状は、ガス流路22dの鉛直方向に対して略台形状をしており、天板部22bから下方に向かって段々細くなっている。そして処理ガス供給路22cの下端側側部には、例えば直径0.5mm〜2mm程度の多数の供給孔22eが、処理ガス供給路22cの周方向に渡って所定の間隔で形成されている。
【0022】
気化装置3は、天板部22bと共に気化室3aを構成する偏平な円筒状の筐体32内に、当該筐体32の内周面が描く円に対して同心となるように円形状の気化プレート(気化面形成部材)31が、図示しない複数の支柱を介して水平に設けられている。また筐体32の上部には、HMDS液を気化させ、気化した処理ガスを搬送するためのキャリアガスを供給するガス供給部(ガス導入ポート)33が設けられている。このガス供給部33にはガス供給管41の一端側が接続され、このガス供給管41の他端側にはガス供給源40が接続されている。そしてガス供給管41には、ガス供給源40からのキャリアガスの供給形態を切り替えるバルブV1とキャリアガスの流量を調節するマスフローコントローラM1が設けられている。また気化装置3の底部には、処理ガス供給路22cのガス流路22dの一端が開口して取り出しポート32dとなっており、気化装置3で気化された処理ガスを直接処理室2a内へと供給することが可能となっている。
【0023】
図3に示すように気化プレート31は、下部中央に液体原料供給部(薬液供給ポート)34が設けられており、この液体原料供給部34は、気化プレート31の中心部に形成された液体原料供給口35に接続されている。液体原料供給口35は、プレート上面側中心部に液体原料となる薬液を一時貯留する円形状の凹部35aが設けられ、凹部35aの底面に液体原料出口35bが形成されており、液体原料出口35bは、液体原料供給部34内に形成されている液体原料供給路の出口に相当する。そして液体原料供給部34には、筐体32を貫通するように設けられている液体原料供給管43の一端が接続されており、液体原料供給管43の他端側には液体原料供給源42が接続されている。そして液体原料供給管43には、液体原料供給源42からの薬液の供給形態を切り替えるバルブV2と、薬液の流量を調節するマスフローコントローラM2が設けられている。
【0024】
また気化プレート31には、液体原料供給口35を中心にして放射状に伸びる溝部36が、凹部35aと連通する態様で複数形成されており、溝部36の底面と凹部35aの底面とは略同じ高さとなるように設定されている。そして溝部36は、気化プレート31の中心から外周部に向かって第1の所定距離(例えば、気化プレート31の半径の1/3だけ)離れた位置に複数の溝部36が接続される第1環37と、気化プレート31の中心から外周部に向かって第2の所定距離(例えば、気化プレート31の半径の2/3だけ)離れた位置に複数の溝部36が接続される第2環38とが形成されている。そして溝部36は、液体原料供給口35から第1環37までの領域、第1環37から第2環38までの領域、第2環38より外側の領域でそれぞれ形成されている数が異なっている。
【0025】
また蓋体22の側壁部22aには、蓋体22の周方向に沿う環状のバッファ部22fが形成されており、容器本体21の側壁部21aには、パージガスとなるN2ガスを供給するためのパージガス供給路21cが、各々上下方向に貫通するように容器本体21の周方向に沿って複数形成されている。またこのパージガス供給路21cには、容器本体21の下面側に設けられた容器本体21の周方向に沿う環状のガス供給室25が接続され、ガス供給室25にはガス供給管41から分岐して延びるパージガス供給管44が接続される。そしてパージガス供給管44には、ガス供給源40からのパージガスの供給形態を切り替えるバルブV3と、パージガスの流量を調節するマスフローコントローラM3が設けられている。また容器本体21と蓋体22とを近接させた際に、バッファ部22fはバッファ室を形成し、バッファ室22fと処理室2aとの間には、パージガス供給部26となる連続した隙間が周方向に沿って形成される。このパージガス供給部26は、載置台23の上面より僅かに高い位置に形成される。
【0026】
また蓋体22には、パージガス供給部26の略中間位置に開口部を有する、処理室2a内に供給されたHMDSガスを排出するための排気孔22gが、周方向に所定の間隔を置いて複数形成されている。また蓋体22には、気化装置3が設けられている位置と重ならないように蓋体22内部に水平方向に広がる環状の空洞部22hが形成されており、排気孔22gはこの空洞部22hに接続されている。そして空洞部22hは内周側に蓋体22の上面に開口した排気口22jが設けられており、この排気口22jに排気路46が接続され、排気路46を介してこの排気路46に接続されている排気部45の吸引力を作用させる態様になっている。また排気路46には、排気部45による処理室2a内の排気態様を切り替えるためのバルブV4と、排気部45の排気量を調節するマスフローコントローラM4が設けられている。
【0027】
この疎水化処理装置1は、この装置を制御するための制御部5を備えている。この制御部5は、例えばコンピュータからなり、プログラム、メモリ、CPU等を備え、プログラムには、この制御部5から疎水化処理装置1の各部に制御信号を送り、所定の疎水化処理を進行させるように命令(各ステップ)が組み込まれている。このプログラムは、記憶媒体例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)等の記憶部に格納され、制御部5に実行可能な状態で展開される。このプログラムには、蓋体22の昇降機構、排気手段、バルブV1〜V4マスフローメータM1〜M4を制御するためのプログラムも含まれており、制御部5のメモリに予め記憶されたプロセスレシピに応じて上記各装置を制御するようになっている。
【0028】
次に本実施形態の疎水化処理装置1における疎水化処理方法について図4、5を用いて説明する。まず疎水化処理を行うためのプロセスレシピを選択し、このプロセスレシピに基づいて制御部5から疎水化処理装置1の各部に制御信号が出力される。そして蓋体22を基板搬出入位置にまで上昇させ、図示しない外部の搬送手段によりウェハWを処理室2a内に搬入し、昇降ピン24との協働作業によりウェハWを載置台23に載置する。その後図4に示すように蓋体22を処理位置まで降下させて容器本体21と蓋体22とで処理室2aを形成する。
【0029】
載置台23は、予めヒータ29によって加熱されており、ウェハWは載置台23に載置されることによって所定のプロセス温度、例えば85℃に加熱される。そして例えばウェハWが加熱されことを温度計測手段にて確認した後、図5(a)に示すようにまずバルブV2を開いて液体原料供給源42から液体原料供給管43及び液体原料供給部34を介して気化プレート31の液体原料供給口35へと供給される。
【0030】
液体原料供給口35に供給されたHMDS液は、凹部35aに一端貯留されるが、凹部35a内に複数の溝部36が形成されていることから、この溝部36の奏する毛細管現象により図5(b)に示すように速やかに外周部へ向けて広がっていく。そして溝部36に流入したHMDS液は、第1環37へと流入し、この第1環37にて第1環37より外周側にある複数の溝部36に、溝部36の奏する毛細管現象によって流入するように分配される。さらに第1環37より外周側にある複数の溝部36に流入したHMDS液は、第2環38へと流入し、この第2環38にて第2環38より外周側にある複数の溝部36に、溝部36の奏する毛細管現象によって流入するように分配される。
【0031】
従って気化プレート31に供給されるHMDS液は、溝部36の奏する毛細管現象によって液体原料供給口35から第1環37へと引き込まれ、第1環37によって複数の溝部36へと分配されて第2環38へと引き込まれ、さらに第2環38によって複数の溝部36に分配されることになる。そのため気化プレート31では、外周部に向かうと順次溝部36の数が増えるので、外周部に進むに従い毛細管現象によって引き込まれるHMDS液に量が多くなる。そしてHMDS液が、気化プレート31上に放射状に形成された溝部36の奏する毛細管現象によって引き込まれて流入し、溝部36の外周側にあたる先端まで引き込まれるので、HMDS液は気化プレート31上で自動的、且つ速やかに広範囲に亘って略均一に供給されることになる。
【0032】
そして気化プレート31上にHMDS液が供給された後、図5に示すようにバルブV1を開いてガス供給源40から気化室3aに向けてガス例えばN2ガスを供給すると同時に、図4に示すようにバルブV3を開いてガス供給室25にパージガスを供給し、さらにバルブV4を開いて排気部45を駆動させ処理室2a内の排気を開始する。気化室3aへと向けて供給されるガスは、ガス供給路40から気化室3aの上部に設けられたガス供給部33へと供給され、このガス供給部33から気化プレート31へと向けて吹き付けられる。そしてこの吹き付けられたガスによって気化プレート31の溝部36ではHMDS液が気化することになり、これによって本実施形態の疎水化処理装置1では、処理室2aで使用するHMDSの処理ガスを生成する。
【0033】
この気化プレート31で生成された処理ガスは、図4に示すようにガス供給部33から供給されているガスによって気化プレート31の裏面に向けて搬送され、処理ガス供給路22cを介して処理室2a内へと搬送される。そして搬送された処理ガスは図4に示すように排気孔22gの吸引力に引かれて処理室2a内に拡散していき、この処理室2a内部に処理ガスを充満させることによって、本実施形態の疎水化処理装置1ではウェハWの疎水化処理を行う。
【0034】
尚疎水化処理時には、蓋体22のバッファ部22fにガス供給室25に供給されているパージガスが、パージガス供給路21cを介して供給されており、パージガスの供給量と処理ガスの供給量を合計した値より排気部45による排気量の方が多くなるように、パージガスと処理ガスは供給されている。そのためバッファ部21cのパージガスは、パージガス供給部26から処理室3a側に向けて吸引され、排気孔22gより排気部45へと吸引される。これにより処理室を囲むように常にパージガスの気流がパージガス供給部26に流入するので、パージガスのエアカーテンが形成された状態になり、このエアカーテンによって処理室2aが外部と遮断されることになる。従って処理室2aを密閉化しなくとも処理室2a内の処理ガスが外部に漏洩することを防止することが可能となっている。
【0035】
その後ウェハWの疎水化処理が完了すると、本実施形態の疎水化処理装置1ではバルブV2を閉じてHMDS液の供給のみを停止する。そして気化室3a内にガスのみを供給すると共に気化室3aを介して処理室2aにガスを供給し、排気路46、排気口22j、空洞部22hを介して排気孔22gから処理室2a内に排気部45の吸引力を作用させて残留している処理ガスを吸引し、処理室2a内にガス供給減40から供給されるガスを充満させて、処理室2a、気化室3a内の置換処理を行う。以上の工程により本実施形態の疎水化処理装置1では、ウェハWの疎水化処理を行っている。
【0036】
尚ガスの供給量は置換処理時に必要に応じて変更することが可能となっており、処理ガスの生成時よりも供給量を増量するようにマスフローコントローラM1を調整することも可能である。ただしガスの供給量を増加させる場合、パージガスによってエアカーテンが形成されるように排気部45の吸引力を増加する必要がある。
【0037】
上述した本実施形態の疎水化処理装置1では、気化装置3を備えたことにより気化プレート31の表面に多数の溝部36、第1環37、及び第2環38を形成し、毛細管現象により薬液であるHMDS液をこれら溝部36、第1環37、及び第2環38を介して気化面の上に広げ、この状態でキャリアガスを気化面に供給してHMDS液を気化させ処理ガスを得ている。従って気化を行わないときには、タンクの場合のように貯留されたHMDS液がキャリアガスに接触するといったことがないので、HMDS液の劣化が抑えられる。また、タンクを用いないため小型化を図ることができる上、気化効率が高いのでキャリアガスが少なくて済む。
【0038】
そしてこの気化装置3を用いた疎水化処理装置1によれば、キャリアガスが少ないことから処理ガスが処理容器22の外に漏れ難くなる。また気化装置3を小型化できることから、処理容器22の側に置くことができ、処理ガスの配管を短くすることができるので、この点からも処理ガスの漏れが抑えられる。特に本実施形態の疎水化処理装置1のように天板部22bが気化室3aの一部となり、処理ガス供給路22cの一端が直接気化室3a内に開口して取り出しポート35bを形成している場合、配管を用いることなく直接処理ガスを処理室2a内に供給できるので、処理ガスの漏れを抑える効果がより顕著となる。
【0039】
また本実施形態の疎水化処理装置1は、基板の疎水化処理にHMDS液を用いており、HMDSガスは露光後の化学増幅型レジストから発生する酸を中和させてパターン組成を阻むが、本実施形態の疎水化処理装置1では、HMDS液を気化して得た処理ガスの漏れを高精度に抑えることができるので、内在していたリスクを低減させることも可能となる。
【0040】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態における疎水化処理装置11について図6〜8を参照して説明する。第2の実施形態の疎水化処理装置11は、第1の実施形態の気化プレート31に加熱装置39と加熱電源39aとを有する気化装置13が備えられており、この気化装置13の気化プレート31の温度を検出して制御部15に送信する検温手段39bが設けられている。そしてそれ以外の構成については第1の実施形態の疎水化処理装置1と同一である。従って、第2の実施形態の説明では、第1の実施形態と重複する部材については同一番号を付し、第1の実施形態と重複する点については説明を省略する。
【0041】
疎水化処理装置11では、気化装置13の気化プレート31下面側のうち、溝部36の裏側に当たる位置の全面に気化プレート31を加熱するための加熱装置(加熱手段)39が設けられており、加熱装置39に電力を供給するための加熱電源39aが接続されている。またこの気化プレート31には検温手段39bが設けられており、制御部15に気化プレート31の温度を検出して送信する。そして疎水化処理装置11では、気化プレート31にHMDS液を供給する際にこの加熱装置39によって気化プレート31を加熱して気化プレート31が所定の温度に到達した時点でHMDS液を供給している。
【0042】
次にこの疎水化処理装置11における気化プレート31を加熱することによる作用・効果について図7、図8を参照して説明する。図7に示す実験では、まず気化プレート31と同材質の試験用プレート61を、試験用電源62が接続された試験用加熱器63の上に載置し、試験用プレート61に温度を検出するための試験用検温部64を接続した実験装置6を用意する。そしてこの実験装置6を外部と隔離されていない開放空間に設置する。
【0043】
次に試験用プレート61の温度を試験用温検部64によって検出して試験用プレート61が試験温度になった事を確認した時点で試験用プレート61上にHMDS液を約5μl、液滴の直径が約13mmになるように垂らし、この液滴が蒸発するまでの時間を計測する。そして上述した実験を、試験用加熱器63を使用していない常温から始めて約10℃毎に試験を行い、試験用プレート61の温度が80℃になるまで繰り返してそれぞれの温度で液滴の蒸発時間を計測する。図8に示すようにこの実験では、まず試験用加熱器63で加熱していない常温である23℃の状態で試験用プレート61上のHMDS液が蒸発する時間を計測しており、23℃では5μlのHMDS液が蒸発するのに約160秒かかる。
【0044】
これに対し、試験用プレート61を加熱して40℃にした状態でHMDS液が蒸発する時間は120秒と試験用プレート61を加熱していない状態と比べて約1.5倍早くなっている。そして試験用プレート61を加熱して50℃にした状態でHMDS液が蒸発する時間は80秒で試験用プレート61を加熱していない状態と比べて約2.0倍早くなり、試験用プレート61を加熱して70℃にした状態でHMDS液が蒸発する時間は40秒で試験用プレート61を加熱していない状態と比べて約4.0倍早くなる。
【0045】
上述した試験結果から試験用プレート61を加熱するとHMDS液の蒸発が早くなることが判り、特に上記試験結果の各点を繋いだ折れ線aから試験用プレート61の温度が34℃から40℃までの間で、HMDS液の蒸発速度の伸び率が約20%と最も高くなることが判る。そして試験用プレート61の温度が高い方がHMDS液の蒸発が早くなることから、本実施形態の気化装置13の気化プレート31を試験用プレート61にように加熱してHMDS液を供給して気化を行った場合、気化プレート31を加熱しない場合に比べてHMDS液の単位時間当たりの蒸発量が増加し、HMDS液の気化効率が向上することになる。
【0046】
従って本実施形態の疎水化処理装置11では、第1の実施形態の疎水化処理装置1と同様、装置の小型化や、処理ガスが疎水化処理装置11の外へと流出するリスクの低減、HMDS液のキャリアガスによる液劣化の防止、キャリアガスガスの供給量低減等の効果を奏することができる。そして気化プレート31に加熱装置39を備えたことによって、気化プレート31を加熱して供給されるHMDS液の気化効率を向上させて気化室3aでの処理ガスの生成速度をさらに向上させることができ、処理ガスの処理室への供給時間をさらに短縮することができる。
【0047】
[第3の実施形態]
図9は、本発明の第3の実施形態における疎水化処理装置12の気化プレート71を示す図である。第3の実施形態の疎水化処理装置12は、第1の実施形態の気化プレート31を気化プレート71に変更したものであり、気化プレート71にHMDS液を供給する際に、気化プレート71の下部からではなく上方から液体原料供給管43を介してHMDS液を流し込んで供給する。それ以外の構成については第1の実施形態の疎水化処理装置1と同一である。従って、第3の実施形態の説明では、第1の実施形態と重複する部材については同一番号を付し、第1の実施形態と重複する点については説明を省略する。
【0048】
疎水化処理装置12では、気化装置3に図9に示す略直方体形状の偏平な気化プレート71が、複数の支持柱によって気化室3aの中央部に筐体32と接触しない態様で配設されている。この気化プレート71は、プレート上面の両側部に、長い楕円形状をした液体原料供給部72が2本平行に形成されており、この液体原料供給部72の中央部に供給される液体原料を受ける液体原料受領部73が形成されている。そしてこの液体原料受領部73は、プレート上面に形成された供給調整部74によって略接続されており、この供給調整部74が形成されている以外の場所では、液体原料供給部72は、櫛の歯状に形成された複数の溝部76によって接続されている。
【0049】
そしてこの疎水化処理装置12ではHMDS液の気化を行う際に、2つの液体原料受領部73にHMDS液を供給して、液体原料供給部72にHMDS液を一旦貯留する。その後液体原料供給部72に貯留されたHMDS液の液面が気化プレート71の上面にある溝部76と接触すると、この液面と溝部76との接触部に毛細管現象が生じ溝部76へとHMDS液が引き込まれる。そのため気化プレート71に供給されるHMDS液は、気化プレート71上に櫛の歯状に形成された溝部76に引き込まれて流入し、この溝部76の全域に亘って略均一にHMDS液が供給されることになる。また両液体原料供給部72のHMDS液の貯留量に不均一が生じたり、HMDS液の供給量が大き過ぎて液体原料供給部72からHMDS液が溢れそうになった場合に備えて、気化プレート71には供給調整部74が形成されており、両液体原料供給部72のHMDS液の量を調整することが可能となっている。
【0050】
上述した形状の気化プレート71を備えた疎水化処理装置12であっても、溝部76によってHMDS液を気化プレート71上の全面に亘って略均一に供給することが可能となるので、第1の実施形態の疎水化処理装置1と同様、装置の小型化や、処理ガスが疎水化処理装置11の外へと流出するリスクの低減、HMDS液のキャリアガスによる液劣化の防止、キャリアガスの供給量低減、処理ガスの処理室への供給時間の短縮等の効果を奏することができる。
【0051】
以上本発明の実施形態における気化装置3、13では、気化プレート31、71の表面に多数の溝部36、76を形成し、毛細管現象により薬液であるHMDS液をこれら溝部36、76を介して気化面の上に広げ、この状態でキャリアガスを気化面に供給してHMDS液を気化させ処理ガスを得ている。従って気化を行わないときには、タンクの場合のように貯留されたHMDS液がキャリアガスに接触するといったことがないので、HMDS液の劣化が抑えられる。また、タンクを用いないため小型化を図ることができる上、気化効率が高いのでキャリアガスが少なくて済む。
【0052】
そしてこの気化装置3、13を用いた疎水化処理装置1、11、12によれば、キャリアガスが少ないことから処理ガスが処理容器22の外に漏れ難くなる。また気化装置3を小型化できることから、処理容器22の側に置くことができ、処理ガスの配管を短くすることができるので、この点からも処理ガスの漏れが抑えられる。特に本実施形態の疎水化処理装置1のように天板部22bが気化室3aの一部となり、処理ガス供給路22cの一端が直接気化室3a内に開口して取り出しポート35bを形成している場合、配管を用いることなく直接処理ガスを処理室2a内に供給できるので、処理ガスの漏れを抑える効果がより顕著となる。
【0053】
また本実施形態の疎水化処理装置1、11、12は、基板の疎水化処理にHMDS液を用いており、HMDSガスは露光後の化学増幅型レジストから発生する酸を中和させてパターン組成を阻むことになる。そのため、HMDS液を気化して得た処理ガスの漏れを高精度に抑えることができる本実施形態の疎水化処理装置1では、内在していたリスクを低減させることも可能となる。
【0054】
次に本実施形態の各疎水化処理装置1、11、12が組み込まれた一例であるレジストパターン形成装置8について簡単に説明する。図10に示すように、本実施形態のレジストパターン形成装置8は、キャリアブロック8a、処理ブロック8b、インターフェイスブロック8c、露光装置8dを備えており、それぞれのブロックが接続されている。キャリアブロック8aは、載置部80上に載置された密閉型のキャリア81から第1受け渡しアーム82がウェハWを取り出して、当該ブロックに隣接配置された処理ブロック8bに受け渡すと共に、第1受け渡しアーム82によって処理ブロックにて処理された処理済みのウェハWを受け取りキャリア81に戻すように構成されている。
【0055】
処理ブロック8bには、現像処理を行うための第1ブロック(DEV層)B1、レジスト膜の下層側に形成される反射防止膜の形成処理を行うための第2ブロック(BCT層)B2、レジスト液の塗布処理を行うための第3ブロック(COT層)B3、レジスト膜の上層側に形成される反射防止膜の形成処理を行うための第4ブロック(TCT層)B4が設けられており、この処理ブロック8bは下部から順に各ブロックを積層することによって構成されている。また各ブロックには、加熱部や冷却部等を積層することによって構成された処理ユニット群83が設けられており、第3ブロックB3の処理ユニット群83に本実施形態の各疎水化処理装置1、11、12が組み込まれている。
【0056】
また処理ブロック8bには、キャリアブロック8a側に第1棚ユニット84が設けられ、インターフェイスブロック8c側に第2棚ユニット85が設けられており、第1棚ユニット84の各部間でウェハWを搬送するために、この第1棚ユニット84の近傍には、昇降自在な第2受け渡しアーム86が設けられている。この第1棚ユニット84、第2棚ユニット85には複数の受け渡しユニットが設けられており、この受け渡しユニットのうち、図11にて図番としてCPLが付されている受け渡しユニットには温度調節用の冷却ユニットが備えられており、BFが付されている受け渡しユニットには複数枚のウェハWを載置可能となるようにバッファユニットが備えられている。インターフェイスブロック8cは、インターフェイスアーム87を備えており、このインターフェイスアーム87によって第2棚ユニットと露光装置8dとの間でウェハWの受け渡しを行う。露光装置8dは、インターフェイスアーム8dから搬送されたウェハWに対して所定の露光処理を行う。
【0057】
第1ブロックB1は、現像ユニット88が例えば2段に積層されており、この2段の現像ユニット88にウェハWを搬送するための搬送アーム89aが設けられている。第2ブロックB2と第4ブロックB4は、各々反射防止膜を形成するための薬液をスピンコーティングにより塗布する塗布ユニットと、この塗布ユニットにて行われる処理の前処理及び後処理を行うための加熱、冷却系の処理ユニット群と、塗布ユニットと処理ユニット群との間に設けられ、これらの間でウェハWの受け渡しを行う搬送アーム89b、89dとを備えている。第3ブロックB3においては、薬液をレジスト液に変更し、本実施形態の疎水化処理装置1、11、12が組み込まれている点以外は、第2、4ブロックB2、B4と同様の構成である。
【0058】
このレジストパターン形成装置8では、ウェハWにレジストパターンを形成する場合、まずキャリアブロック8aからウェハWを第1棚ユニット84の受け渡しユニット、例えば第2ブロックB2に対応する受け渡しユニットCPL2に第1受け渡しアーム82によって順次搬送し、このウェハWを受け渡しユニットCPL3及び搬送アーム89cを介して第3ブロックB3に搬入し、疎水化処理装置1、11、12でウェハWの表面を疎水化した後、レジスト膜を形成する。その後ウェハWは、搬送アーム89cにより第1棚ユニット84の受け渡しユニットBF3へと受け渡される。受け渡しユニットBF3に受け渡されたウェハWは、第2受け渡しアーム86により受け渡しユニットCPL4へと受け渡され、搬送アーム89dによって第4ブロックB4へと搬送される。そして、第4ブロックB4にて、ウェハWのレジスト膜の上に反射防止膜を形成して、受け渡しユニットTR4に受け渡される。尚このレジストパターン形成装置8では、求められる仕様等に応じてレジスト膜の上に反射防止膜を形成しない場合や、ウェハWに対して疎水化処理を行う代わりに、第2ブロックB2にてウェハWに直接反射防止膜が形成される場合もある。
【0059】
また第1ブロックB1内の上部には、第1棚ユニット84の受け渡しユニットCPL11から第2棚ユニット85の受け渡しユニットCPL12にウェハWを直接搬送するための専用の搬送手段であるシャトルアーム90が設けられている。レジスト膜や反射防止膜が形成されたウェハWは、第2受け渡しアーム86により、受け渡しユニットBF2、BF3、及びTRS4からCPL11へと受け渡され、シャトルアーム90によって受け渡しユニットCPL12に搬送される。
【0060】
シャトルアーム90を介して受け渡しユニットCPL12に受け渡されたウェハWは、インターフェイスブロック8cのインターフェイスアーム87によってインターフェイスブロック8cへと取り込まれ、露光装置8dへと搬送される。そして露光装置8dによってウェハWに所定の露光処理が行われた後、インターフェイスアーム87によってウェハWは第2棚ユニット85の受け渡しユニットTRS6へと受け渡される。そして搬送アーム89aにて第1ブロックB1に搬送され現像処理が行われた後、搬送アーム89aにより第1棚ユニットの内、第1受け渡しアーム82のアクセス可能範囲の受け渡しユニットに受け渡され、第1受け渡しアーム82によってキャリア81へと搬送される。これにより本実施形態のレジストパターン形成装置8では、ウェハWにレジストパターンを形成する。
【0061】
尚本実施形態の疎水化処理装置1、11では、気化プレート31の溝部36は、液体原料供給口35を中心にして放射状に伸びる形状となっているが、本発明の実施の形態はこれに限定されるものではない。本発明における気化プレートの溝部の形状は、供給される液体原料を気化プレート上に自動的に広範囲に亘って略均一に供給可能な形状であればよく、例えば1つの溝から複数の支流が伸びた葉脈形状であってもよい。
【0062】
また本実施形態の疎水化処理装置11では、気化プレート31の下面側の溝部の裏側にあたる全面に加熱装置35を設けて供給されるHMDS液の蒸発速度を向上させているが、本発明の実施の形態はこれに限定されるものではない。気化プレートを加熱可能であれば、気化プレートの下面側の溝部の裏側にあたる全面に加熱装置を設けなくとも良く、気化プレートに直接加熱手段を設けなくてもよい。例えばウェハWの載置台に設けられたヒータによって気化プレートを間接的に加熱することが可能となるようにに疎水化処理装置を構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本実施形態の疎水化処理装置1を示す断面図である。
【図2】疎水化処理装置1の処理ガス供給路22cの詳細を示す図である。
【図3】本実施形態の気化プレート31を示す図である。
【図4】本実施形態の疎水化処理装置5の動作を説明するための図である。
【図5】本実施形態の疎水化処理中における気化プレート31の作用・効果を説明するための図である。
【図6】第2の実施形態の疎水化処理装置11を示す断面図である。
【図7】図6の疎水化処理装置11の作用・効果について説明するための実験図である。
【図8】図7の実験装置における実験結果を示す図である。
【図9】第3の実施形態の疎水化処理装置12における気化プレート71の構成を示す図である。
【図10】本実施形態のレジストパターン形成装置8の概略を示す平面図である。
【図11】本実施形態のレジストパターン形成装置8の概略を示す側方断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1、11、12 疎水化処理装置
2 処理容器
2a 処理室
3、13 気化装置
3a 気化室
5、15 制御部
6 実験装置
8 レジストパターン形成装置
8a キャリアブロック
8b 処理ブロック
8c インターフェイスブロック
8d 露光装置
21 容器本体
21a 側壁部
21b 底部
21c パージガス供給路
22 蓋体
22a 側壁部
22b 天板部
22c 処理ガス供給路
22d ガス流路
22e 供給孔
22f バッファ部
22g 排気孔
22h 空洞部
22j 排気口
23 載置台
23a 貫通孔
24 昇降ピン
24a カバー
24b 昇降装置
25 ガス供給室
26 パージガス供給部
29 ヒータ
31、71 気化プレート(気化面形成部)
32 筐体
32d 取り出しポート
33 キャリアガス供給部(ガス導入ポート)
34 液体原料供給部(薬液供給ポート)
35 液体原料供給口
35a 凹部
35b 液体原料出口
36、76 溝部
37 第1環
38 第2環
39 加熱装置(加熱手段)
39a 加熱電源
39b 検温手段
40 ガス供給源
41 ガス供給管
42 液体原料供給源
43 液体原料供給管
44 パージガス供給菅
45 排気部
46 排気路
61 試験用プレート
62 試験用電源
63 試験用加熱器
64 試験用検温部
72 液体原料供給部
73 液体原料受領部
74 供給調整部
80 載置部
81 キャリア
82 第1受け渡しアーム
83 処理ユニット群
84 第1棚ユニット
85 第2棚ユニット
86 第2受け渡しアーム
87 インターフェイスアーム
88 現像ユニット
89a、89b、89c、89d 搬送アーム
90 シャトルアーム
B1 第1ブロック(DEV層)
B2 第2ブロック(BCT層)
B3 第3ブロック(COT層)
B4 第4ブロック(TCT層)
W ウェハ
V1、V2、V3、V4 バルブ
M1、M2、M3、M4 マスフローコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気化室を形成する筐体と、
前記気化室内にその表面が位置し、薬液を毛細管現象により広げるための多数の溝が前記表面に設けられた気化面形成部と、
前記気化面形成部の表面に前記薬液を供給するための薬液供給ポートと、
前記溝内に広げられた薬液を気化するためのキャリアガスを前記気化室内に導入するガス導入ポートと、
前記気化室内にて気化された処理ガスを取り出すための取り出しポートと、を備えたことを特徴とする気化装置。
【請求項2】
前記溝は、前記薬液が供給される部位から放射状に伸びていることを特徴とする請求項1に記載の気化装置。
【請求項3】
前記溝は、前記薬液が供給される部位に近い第1の領域と当該第1の領域よりも前記部位から離れている第2の領域に亘って形成されており、第2の領域における周方向の溝の数は第1の領域における周方向の溝の数よりも多いことを特徴とする請求項2に記載の気化装置。
【請求項4】
前記多数の溝は、平行状に伸びていることを特徴とする請求項1に記載の気化装置。
【請求項5】
前記気化面形成部には加熱手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の気化装置。
【請求項6】
基板に処理ガスを供給して処理を行う基板処理装置において、
内部に基板を載置するための載置台が設けられた処理容器と、
薬液を気化して処理ガスを得るための気化装置と、
当該気化装置にて得た処理ガスを前記処理容器内に供給するための処理ガス供給路と、
前記処理容器内を排気するための排気路と、を備え、
前記気化装置は、請求項1〜5のいずれかに記載の気化装置を用いることを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
前記気化装置は、前記処理容器の天板の上に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記処理ガス供給路は、前記天板に形成されていることを特徴とする請求項7記載に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記処理ガス供給路の上流端は前記気化装置の気化室内に開口していることを特徴とする請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記処理容器には、前記基板を加熱するための基板加熱手段が設けられており、当該基板加熱手段は、前記気化室内を加熱することが可能であることを特徴とする請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
処理容器に設けられた載置台に基板を載置する工程と、
気化面形成部の表面に設けられた多数の溝に薬液を毛細管現象により薬液を供給する工程と、
ガス導入ポートから、前記薬液を気化するためのキャリアガスを前記気化室内に導入する工程と、
前記気化室内にて気化された処理ガスを取り出しポートから前記処理容器内に供給する工程と、
前記処理容器内を排気する工程と、を含むことを特徴とする基板処理方法。
【請求項12】
処理室内において基板に処理ガスを供給する基板処理装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体であって、
前記プログラムは、請求項11に記載の基板処理方法を実行するためのステップ群が組まれたプログラムであることを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−194246(P2009−194246A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35135(P2008−35135)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】