説明

気相工程用トレー

【課題】 耐プラズマエッチング性に優れ、静電チャック可能で安定保持可能なトレーを提供する。
【解決手段】 厚み0.3〜1.4mmで開気孔率5〜50%である無機連続気孔焼結体を保護基板として半導体基板に接着してなる静電チャック用の気相工程用トレーにおいて、該気相工程がプラズマエッチング工程であり、該保護基板が被エッチング物搭載用部の外周囲に幅0.3〜1mmの壁を形成してなり、該エッチング物の位置合わせ用の切除部に相当する部分を除去してなる形状である気相工程用トレー。
【効果】 本トレーは、従来のプラズマエッチング装置などの設定された静電チャック機能を改良せずに使用でき、工程中の安定保持、および容易な取り出しでき、さらに、エッチング中の被エッチング物の温度制御も好適に実施できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMSなどで必須の半導体基板のプラズマエッチング工程に好適に使用できる静電チャック可能な気相工程用トレーを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器は、小型化、薄型、軽量化のニーズが要求され、身近には、携帯電話やICカ−ドで代表されるように益々、薄型化が進展している。
これらを支える製造技術の進展、特にドライエッチング技術に見られる半導体の微細加工技術は、半導体加工に止まらず、半導体加工、機械加工、電子回路技術を融合した製造技術(MEMS)として、種々の超小型機器、いわゆるマイクロマシンの製造技術として大きく発展しつつある。圧力、加速度、赤外線などの光、磁気、熱などの各種センサー、マイクロリレー、光スイッチ、マイクロバルブ、フィルターなどへの応用、さらにマイクロガスクロマトグラフィーなどの化学分析システム、バイオセンサー、DNAチップなど、極めて多岐に渡る応用開発が行われ、機械、通信、医療などの分野で必要不可欠な部品やデバイスとして一部実用化され、今後、大きく発展していくものと期待されている。
【0003】
この微細加工技術を支えるドライエッチングは、典型的には、シリコン・ウェハーなどに耐エッチング性レジストパターンを形成し、これを耐エッチング性の保護膜を形成したシリコン・ウェハーなどを保持基板として用いてその上に載せ、静電チャックにてエッチングゾーンに移送保持し、ここで保持基板を冷却してエッチング温度を一定とするように制御しつつ、塩素プラズマなどを用いてエッチング加工した後、酸素プラズマなどにてレジストを除去することからなる洗浄工程を、適宜、複数回繰り返すことにより所望の立体形状を作製することによる。
【0004】
この工程の加工精度は、レジスト膜の作製精度もあるが、特に、エッチング速度のバラツキをより小さくすることにより高精度が達成される。エッチングは、化学反応にて、例えば、露出している固体のシリコンを気体クロルシランとして取り除くことによる。この反応は、(1)反応剤である塩素プラズマの固体シリコン上への供給、(2)クロルシランの生成、(3)反応にて生成したクロルシランの系外への排除にて完結する。このプロセスは、反応剤および反応生成物が気体であることから、(1)と(3)とは比較的容易に制御可能であることから、液相反応に比較すると無視可能なほど影響は小さい。
しかし、(2)は発熱反応である。化学反応速度は温度に大きく依存する。エッチング量の精密制御は、この反応温度をより厳密に制御することであり、これはキャリァーガスの使用、その他により、ある程度の制御は可能であるが、高い熱伝導率の保持基板を用いて接触冷却にて強制的に所定温度に保つことが最も効果的である。
また、保持基板は、エッチング剤に侵されないことが、繰り返し使用回数の点から必要である。これは、また保持基板や耐エッチング保護膜がエッチングされて発熱することがなく、より精密な温度制御を可能とする点からも望ましい。
【0005】
従来、このような用途の保持トレーとしては、炭化珪素や有機保護膜を形成したシリコン・ウェハーがある。炭化珪素は半導体特性を有することから静電チャック可能であるが、ハロゲンプラズマに弱く、そのままではシリコンと同様に使用は困難である。
そこで、このような材料を用いる場合、ポリイミドなどの保護膜を形成して用いられているが、この有機保護膜として用いるポリイミドもプラズマに徐々に侵されるとの問題があった。また、炭化珪素は極めて硬く、加工が困難であることから補助加工にて所望の補助機能を付与することも困難とである。
これらの改良として、カーボンを用いて所望形状とした後、その表面に炭化珪素膜を形成してなるもの(特開平5−283351号公報、特開平10−223546号公報など)、炭化珪素に代えて窒化アルミニウム皮膜を形成したもの(特開平10−74705号公報)がある。皮膜形成法は、本体と形成した皮膜との間の密着性および皮膜形成に伴う歪みの発生の問題があり、十分な実用性を示すまでには至っていない。
【0006】
また、耐プラズマエッチング性の極めて優れた窒化アルミニウムを使用したものが開示(特開平7−86379号公報、特開平7−153706号公報、特開平8−306629号公報、特開平11−100270号公報、特開2000−63179号公報など)されている。例えば、特開平7−86379号公報は、窒化アルミニウムを主体とする本体に窒化アルミニウムからなる緻密な皮膜を形成し、本体内部に発熱回路を設けたものを開示する。また、特開平11−100270号公報、特開2000−63179号公報は、少量の希土類元素や微量のリチウムを添加して半導体性を付与して静電チャック性をもたせたものを開示する。これらは耐プラズマエッチング性の点では優れたものであるが、窒化アルミニウムは炭化珪素と同様に加工が困難であるという欠点がある。
【特許文献1】特開平5−283351号公報
【特許文献2】特開平10−223546号公報
【特許文献3】特開平10−74705号公報
【特許文献4】特開平7−86379号公報
【特許文献5】特開平7−153706号公報
【特許文献6】特開平8−306629号公報
【特許文献7】特開平11−100270号公報
【特許文献8】特開2000−63179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記から、耐エッチング性と高い熱伝導率を有し、かつ、静電チャック可能な保持基板の要求があることは明白である。そして、この保持基板は、使用条件下、被エッチング物を保持基板上に安定的に保持できるとの要件も極めて重要である。このためには、被加工品(被エッチング物)の搭載部、並びにその周囲には、適宜、このための補助加工や補助具の設置を行えるものであることがより好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題の解決のために、静電チャック可能、特に,従来の工程にそのまま適用可能で、高い熱伝導率と、耐エッチング性とを両立させ、さらに適宜、補助加工による補助具の取り付けなどの容易な気相工程用トレーを開発すべく鋭意検討した結果、無機連続気孔焼結体を保護基板として半導体基板に接着してなる静電チャック用の気相工程用トレーを先に提案した(特願2003−404206)。さらに、この提案のトレーを6インチシリコンウェーハを用いる塩素プラズマエッチング工程への適用について鋭意検討した結果、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、厚み0.3〜1.4mmで開気孔率5〜50%である無機連続気孔焼結体を保護基板として半導体基板に接着してなる静電チャック用の気相工程用トレーにおいて、該気相工程がプラズマエッチング工程であり、該保護基板が被エッチング物搭載用部の外周囲に幅0.3〜1mmの壁を形成してなり、該エッチング物の位置合わせ用の切除部(オリフラやVカットなど)に相当する部分を除去してなる形状である気相工程用トレーである。
【0010】
本発明において、該半導体基板が、厚み0.3〜0.8mmのシリコン・ウェハーであること、該無機連続気孔焼結体が、窒化アルミニウム−窒化硼素複合体(AlN−h−BN)、窒化アルミニウム−炭化珪素−窒化硼素複合体(AlN−SiC−h−BN)、アルミナ−窒化硼素複合体(Al−h−BN)から選択したものであることが好ましい。
また、本発明は、該接着を、好ましくは、熱可塑性ポリイミド樹脂にて行うものである気相工程用トレーである。
【0011】
まず、本発明トレーを添付図面を用いて説明する。
図1は、本実施例1のトレー(1)を説明するための平面図である。本トレー1は、オリフラ部分を除くトレーの外周囲に薄い側壁(縁壁)(3)を形成してなり、この壁にて、その内側の搭載部に搭載した被処理品を保持する。オリフラ(2)は、この側壁(縁壁)を含むトレーの一部を切断除去した形状である。オリフラ2は、被処理品のトレーへの搭載時の位置決め基準部として、また、被処理品が板形状を保っている状態の場合に取り出しを行う場合のトレー底面との分離開始部とする。
図2は図1のA部分についての層構成を説明するものであり、側壁(縁壁)部(23)を形成したAlN系保護基板(21)とSi基板(22)とをはみ出した接着用樹脂(24)に続く接着部にて接着してなるものである。接着部の樹脂層の厚みは可能な限り薄いことが必須であり、本トレーの製造においては、接着用の樹脂は、AlN系保護基板21に浸透したものとなっている。また、Si基板22はAlN系保護基板21よりも略側壁相当幅小さいものを接着してなる。
【0012】
本発明のトレーに用いる半導体基板は、典型的にはシリコン・ウェハーである。同様の半導体性を有するもの、例えば、炭化珪素または半導体性を付与したもの、例えば、導電性化合物を含侵或いは付着してなる窒化アルミニウム系の連続気孔焼結体などが挙げられ、厚みは、0.2〜1.5mmの範囲、好ましくは、厚み0.3〜0.8mmである。極端に薄い場合はともかく、薄いと強度が劣り、本保護基板との接着一体化が困難となる。また、耐エッチング性の保護基板にて保護されることから、エッチングにて薄くなることを実質的に考慮する必要がないので、強度と静電力などを考慮した所望の厚みで十分であり、厚くすることに特に意味は無く、重くなり不利となる。
【0013】
本発明で保護基板に用いる無機連続気孔焼結体は、厚み0.3〜1.4mmで開気孔率5〜50vol%、好ましくは5〜35vol%、特に10〜30vol%であり、閉気孔は2vol%以下で少ないものほど好ましい。また、平均気孔径は0.05〜10μm、好ましくは0.1〜5μmである。また、気相工程において、真空蒸着やスパッタリング、さらに気相エッチングなどを行うにあたり裏面からの加熱や冷却をすることから、熱伝導率は大きいものが好ましい。
本発明では、具体的には、窒化アルミニウム−窒化硼素複合体(AlN−h−BN)、炭化珪素が5%以下、特に3〜0.5%である窒化アルミニウム−炭化珪素−窒化硼素複合体(AlN−SiC−h−BN)、アルミナ−窒化硼素複合体(Al−h−BN)から選択したものが例示され、特に、熱伝導率の大きい窒化アルミニウム系が好ましい。
【0014】
この保護基板は、アルミニウム系有機化合物による熱分解を伴う表面処理したものであること、具体的には、アルミニウムトリス(エチルアセチルアセテート)(品名;ALCH−TR、川研ファインケミカル(株)製)などのアルミニウム系キレート化合物の含侵、風乾、加熱乾燥、加熱、熱分解による表面処理したものが接着に使用する樹脂との親和性を向上させることから好ましい。また、場合によっては、熱硬化性樹脂溶液による気孔内壁面への密着含侵処理したものも好適に使用できる。なお、この樹脂含侵処理を行った場合には、予めプラズマエッチング処理して、表面(被エッチング物搭載側の面)側の表面樹脂を除いておくことが好ましい。
【0015】
本保護基板は、被加工品搭載用の凹み部を、或いは、被加工品搭載部の外周囲に側壁(縁壁)を設け、搭載物のオリフラやVカットなどの位置決め部分に相当する部分を切断除去した平面形状とする。
加工は、まず、所定の厚さ、直径の円板を作製する。次に、通常、補助具にこれを精密固定し、これを加工台(テーブル)上に固定し、搭載部に相当する通常、円形の所望の深さ、例えば0.05〜0.5mm程度の凹みを切削加工にて形成し、その底面を表面研磨して平滑化する。ついで、搭載物のオリフラやVカットなどの位置決め部分に相当する部分を切断除去する。ここに、この円形凹みへの切削加工と研磨との手順は同一加工機器、加工台上における一貫加工で実施できるので、加工精度の点からも好ましい。また、オリフラやVカットなどの位置決め部分に相当する部分の切断除去も、引き続き補助具に固定した状態にて行うことが好ましい。なお、補助具に固定した状態では、加工にてひびわれなどのきっかけが発生していてもわからないが、分離時にこれが原因でわれなどが発生する場合がある。これらの場合には、加工速度を遅くするなどの配慮にて、われ等の発生を抑える。
【0016】
この保護基板を接着する半導体基板は、適宜、所望の0.2〜1.5mmの範囲、好ましくは、厚み0.3〜0.8mmから選択した所望の厚みとし、通常、表面に形成される酸化膜などを除いて用いる。大きさおよび平面形状は、被加工品(搭載物)が半導体の場合はそのまま研磨加工することにより使用でき、その他の場合、半導体基板の大きさおよび平面形状を被加工品(搭載物)の形状に合わせる。
【0017】
上記で製造した本保護基板と、半導体基板とを接着一体化し本トレーとする。
接着にあたって、まず、本保護基板の凹み部に補助材を装着し、その反対面に接着用樹脂層を形成する。そして、この接着層形成面に、通常、酸化物などを除き清浄化した半導体面を、適宜、この面にも接着用樹脂層を薄く形成した後、重ねて、さらに、適宜、専用金型中に配置して或いは仮接着した後、加熱加圧することにより両者を接着一体化する。
接着層は通常、樹脂にて形成する。本用途の場合、耐プラズマ性に優れたものが好ましく、また、熱可塑性樹脂が好ましく、特に、熱可塑性ポリイミド樹脂やポリベンツイミダゾールが好適である。
なお、本保護基板と半導体基板とは、用いる工程とその工程の静電チャック能力などとを考慮して決定する。例えば、厚み制限から保護基板の最も薄い部分として、0.3mm未満、例えば0.1mm程度の部分が必要な場合には、両者を接着一体化した後に、該薄肉部分を徐々に研磨除去して作製する方法を選択できる。
【0018】
また、本発明における接着一体化は、通常、厚さ0.5mm以下、例えば0.3mm程度まで薄く研磨仕上げしたセラミックスと同様に薄くした半導体基板とを加熱・加圧下に接着一体化するものであり、さらに、保護基板とするセラミックス板は突出した側壁(縁壁)を有するものであることから、極めて繊細な作業となる。
まず、破損しないように圧着するためには、
(1).急激な圧力負荷をしないし、発生させないこと、
(2).上下から同一部分に圧力負荷されること、
(3).特に、圧力負荷しない部分が生じる場合、余分の応力発生を避けること、
などが必須である。
【0019】
上記(1)は、プレス機の圧力負荷機構、熱盤の被プレス品への接触方法によって達成する。装置としては、先に提案したエアプランジャー式の減圧プレス機(特開2002−192394号)が好適であり、エアプランジャーをダンパーとして用いた上部熱盤降下による柔らかな接触、エアプランジャーの圧縮性気体による加熱熱膨張による圧力発生(逆圧力)の吸収にて対処する。
(2)は補助金型などの補助具類の利用や仮接着の適用にて対処する。特に、加熱加圧接着条件下で劣化して接着力を無くして容易に分離できる接着剤の使用は簡便で極めて応用範囲の広い優れた方法である。
(3)は、実際の状況から適宜考慮すべき事項であり、この項目としては最高プレス圧力負荷状態での大きな温度上下や急激な温度変化などを避けることである。例えば、熱応力などの発生を避けるために、最高温度に近接した後に最大加圧とし、圧力を小さくした後に、降温するなどの操作を適宜採用することで対処する。
【0020】
次に、高い熱伝導率を保つには、保護基板と半導体基板との間の接着層を極力薄くすることが必須である。これは、加熱・加圧下の接着一体化中に、樹脂接着層を薄くすることによる。このためには、予め必要最小厚みの接着層を形成し、圧力にてこの大部分を保護基板の連続気孔中に押し込むことによって初めて達成できる。
加熱・加圧時間に応じてある程度までの押し込み、すなわち、樹脂接着層の薄化が可能である。しかし、生産性などを考慮した場合、平均で数μ以上の押し込みにより十分な熱伝導率が確保できることが好ましい。この点から、最初に形成する樹脂接着層の厚みは、数μ〜十数μの範囲から選択することが好ましい。また、接着力の向上とも関連するが、保護基板の連続気孔表面を含む表面は接着用樹脂との親和性を改善しておくことが好ましく、窒化アルミニウム系などの窒化物系のセラミックスの場合には通常必須である。
【0021】
上記で製造した本トレーを用いて行う気相工程中においては、所定の加工終了後、多段階の加工工程の段階間或いは加工工程中に、適宜、本トレーに搭載した被加工品を本トレーから取り出して所定の工程を実施し、再度トレーに搭載することなど簡便に精度よく実施できることが好ましい。この搭載や取り出しは、オリフラやVカットなどの位置決め部分を利用して行うことができ、好ましい。
搭載は、例えば、先端部分がトレーのオリフラ部分やVカット部分に一致し、上部はオリフラ部よりも幅広とした傾斜面を形成したオリフラガイド(Vカットガイド)と、通常この反対となるウェーハの周囲の複数箇所にガイドを設けた補助具を用い、オリフラガイド(Vカットガイド)にオリフラ(Vカット)を合わせて落下させる方法が例示される。
次に、取り出しは、オリフラ(Vカット)に合わせて、空気などの気体を吹き込んでウェーハをトレーの底面から浮かせたのちに、取り出し具にて取り出すことによる。なお、エッチング加工などにより、ここ微細な製品の集合体に加工される場合には、適宜、製造した製品の形状などを勘案して取り出し方法を工夫・選択して行う。
なお、本トレーには適宜、補助的な押さえ治具、その他を設けることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上、本発明のトレーは、従来のプラズマエッチング装置などの設定された静電チャック機能を改良せずに使用でき、工程中の安定保持、および容易な取り出しでき、さらに、エッチング中の被エッチング物の温度制御も好適に実施できるものであり、その意義はきわめて高い。
【実施例】
【0023】
以下、実施例などにより本発明を具体的に説明する。
実施例1
保護基板の作製。
厚さ0.64mm、直径151.0mmの窒化アルミニウム−炭化珪素−窒化硼素系連続気孔焼結体(SiC 0.5%、h−BN 13%、嵩密度2.53g/cm、真気孔率16.5vol%、平均気孔径0.52μm)の円板を表面研磨し、厚さ0.625mm、表面粗さRa:0.3μm、平行度10μm、平坦度10μmにしたものを準備した。
この円盤に、被加工品収納用の直径150.0mm、深さ0.3mmの凹み部(側壁(縁壁)平均厚さ0.4mm)を形成し、該凹み部を表面粗さRa:0.5μm、20μm以下の平面度となるように表面研磨した。
次に、被エッチング物として予定しているシリコンウェーハのオリフラ相当部分を搭載時にやや保護基板部分が露出するように切断除去し、加工用補助台から分離し、熱処理にて洗浄し、更に、アルミニウム系化合物溶液の含侵、風乾、熱処理、熱分解による表面処理したもの(以下「AN1」と記す)を準備した。
【0024】
ビフェニルテトラカルボン酸無水物(BPDA)を主酸無水物成分とした熱可塑性ポリイミド樹脂(宇部興産(株)製、商品名:ユピタイト UPA−221、濃度20wt%)90wt部とN−ジメチルアセトアミド(DMAC)10wt部とを混合して接着剤溶液(以下、PI−18と記す)を調製した。
AN1の凹み部相当部分に相当する平面形状を有し、厚さ0.4mmの表面研磨した樹脂含浸硬化窒素化アルミニウム系の無機連続気孔焼結体板を作製し、これをAN1の凹み部に仮付けした。次にこの反対面であるAN1の面に、コーターにより、接着剤溶液PI−18を塗布し、塗布側を上にして、一昼夜自然乾燥した後、120℃/30分で乾燥して接着層形成保護基板(以下、AN1−PIと記す)を得た。接着層厚みは約9μmであった。
また、オリフラ付きのシリコンウェハー(厚さ625μm、直径150.0mm)を研磨して厚さ0.4mmとし、酸化層を除去したものを準備した。
【0025】
半導体基板(シリコンウェハー)との接着。
接着層形成保護基板の接着層の上に、上記で得た酸化層を除去したオリフラ付きのシリコンウェハーを位置合わせして載せ、仮固定した。この周囲に、内部に直径153mmの円をくり抜いた厚さ1.2mm、21cm角のコットン紙を配置した。
この上下にそれぞれ、0.4mm厚のアルミニウム合金板/シリコンクッションシート(商品名;PORON HT−1500、ロジャース(株)製)/アルミニウム合金板を重ねたものを配置し、これを真空プレスの熱盤間に挿入した。プレス雰囲気を、10mmHg以下に減圧とし、10℃/分で昇温し、温度230℃で面圧0.3MPaで15分保持した後、大気開放し、放冷して、保護基板付きシリコンウェハー(以下、AN1−Siと記す)を作製した。
【0026】
工程試験。
100μm厚の5インチの被加工シリコンウェハーをオリフラ部分にて位置調節するようにして本気相工程用トレーAN1−Si−P上にセツトした。これをシリコンウェハー用の静電チャック上にセツトし、移送し、冷却盤上(−20℃設定)にて、塩素プラズマによるシリコンのエツチングを行った。
エッチング中、被加工シリコンウェハーの温度をその中心および周囲4点にて測定した結果、全ての測定点で101〜104℃に維持された。
【0027】
洗浄および分離。
エッチングを中断し、オリフラ部分に空気を吹きつけつつエッチングをトレーから取り出したところ容易に取り出しできた。
所定のエッチング終了後、オリフラ部分に空気を吹きつけつつエッチングをトレーから取り出した。
また、トレーは通常、洗浄(酸素プラズマにて洗浄など)し、再使用に循環する。
【0028】
実施例2
実施例1において、被エッチング物として、オリフラに代えて幅および切り込み深さが約5mmのVカットを形成したものを用いるトレーを作製し、同様に試験した。
エッチング中、被加工シリコンウェハーの温度をその中心および周囲4点にて測定した結果、全ての測定点で101〜104℃に維持された。
また、エッチングを中断し、オリフラ部分に空気を吹きつけつつエッチングをトレーから取り出したところ容易に取り出しができた。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】平面図 実施例1のトレーを説明する平面図である。
【図2】断端面図 図1のA部分についての層構成を示すものである。
【符号の説明】
【0030】
1 トレー
2 オリフラ
3 側壁(縁壁)
21 AlN系保護基板
22 Si基板
23 側壁(縁壁)部
24 はみ出した接着用樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み0.3〜1.4mmで開気孔率5〜50%である無機連続気孔焼結体を保護基板として半導体基板に接着してなる静電チャック用の気相工程用トレーにおいて、該気相工程がプラズマエッチング工程であり、該保護基板が被エッチング物搭載用部の外周囲に幅0.3〜1mmの壁を形成してなり、該エッチング物の位置合わせ用の切除部に相当する部分を除去してなる形状である気相工程用トレー。
【請求項2】
接着にてトレーを形成する該半導体基板が、厚み0.3〜0.8mmのシリコン・ウェハーである請求項1記載の気相工程用トレー。
【請求項3】
該無機連続気孔焼結体が、窒化アルミニウム−窒化硼素複合体(AlN−h−BN)、窒化アルミニウム−炭化珪素−窒化硼素複合体(AlN−SiC−h−BN)、アルミナ−窒化硼素複合体(Al−h−BN)から選択したものである請求項1記載の気相工程用トレー。
【請求項4】
該接着を、熱可塑性ポリイミド樹脂にて行う請求項1記載の気相工程用トレー。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−59853(P2006−59853A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−237214(P2004−237214)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】