説明

水に対する溶解度が改善された新規のシンナムアルデヒド誘導体、その製造方法、それを含む抗癌剤組成物およびそれを用いた癌治療方法

本発明は、細胞周期抑制および細胞死滅を誘導して癌細胞株の成長を抑制する活性を有した化学式1で表示される水に対する溶解度が改善された新規のシンナムアルデヒド化合物またはその薬剤学的に許容可能な塩、その製造方法、それを含む抗癌剤組成物およびそれを利用した癌治療方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のシンナムアルデヒド誘導体に関するものである。より詳細には、本発明は、水に対する溶解度が改善された新規のシンナムアルデヒド誘導体または、その薬剤学的に許容される塩、その製造方法、それを含む抗癌剤組成物およびそれを用いた癌治療方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
身体を構成している細胞などの分裂増殖と分化は、生命現象の維持に重要な工程である。正常な機能をなすための細胞の増殖および成長は、精巧な細胞内信号伝達体系によって調節され、この一連の過程は細胞が外部から受けた信号を様々な蛋白質など(PLC、PKC、Shc、Grb2、Raf、MAPK、MEKなど)と分子媒介体など(GTP、cAMPなど)を介して核内の細胞時計に伝達させることによってなされる。このような一連の過程のうちからいずれの部分に異常が発生するようになると、自主的な調節機作によって均衡を維持するけれども、多くの場合には疾病に発展するようになる。特に、細胞内核に存在する細胞周期は細胞などの生命維持を調節する重要な過程中の1つである。
【0003】
細胞周期は日常的にわれわれが使っている時計が秒針、分針、時針に区分されるように4つの独特の段階に分かれる。すなわち、Gap1(G1期)、DNA合成段階(S期、Synthetic phase)、Gap2(G2期)、分裂期(M期、Mitosis phase)などがそのものである。また、細胞が高い密度で存在したり、低い濃度の成長因子の環境で長期間放置されると、細胞は休眠期と呼ばれる成長止め(Go期)状態に入り込む。このような一連の核内反応を細胞周期という。
【0004】
時計内には電気的または、物理的な力によって時計錘が振動し、それに応じて秒針、分針、時針が手順に動くことによって、われわれに正確な時刻を知らせてくれるようになる。このためには時計錘に一定の力が加えられるべきであり、これを調節する各種付属品などが時計を構成している。これと同様に細胞周期にもチェックポイントと呼ばれる複雑なネットワークがあって細胞時計が正確にG1−S−G2−M期の手順に進行されるように誘導してくれる。チェックポイントで細胞周期の次の段階に移るための条件が満たされたかを確認した後、すべての条件が満足されると、S期または、M期が進行される。このようなチェックポイント調節メカニズムの欠乏は遺伝物質の不安定性を増加させて調節不可能な細胞成長をもたらし、時には癌のような無節制な細胞成長を起こしたりもする。
【0005】
核外部からの信号伝達と栄養状態が良好ならばG1期の細胞サイズが大きくなり、細胞周期に進入するようにしてくれる。細胞周期作動は酵母ではSTART、哺乳細胞では制限点(restriction point)と呼ばれるG1チェックポイントからなる。この地点を過ぎた後、特別な制動がなければ細胞は、自動的に4段階の細胞周期を経て、自分のゲノムを複製し、分裂することになる。哺乳細胞におけるこれらの段階を詳細に調べてみると、次のとおりである。チェックポイントが存在するG1期は、新しい細胞を作るための準備段階であって、この時に成長因子と十分な栄養が供給されなければ、細胞周期は停止され、成長停止期であるGo状態に入りこむようになる。しかし、十分な栄養が供給され、さまざまな成長因子などが準備されると細胞周期はS期に進行されることになる。この時の細胞は、自分のゲノムを複製して2つの複製の染色体を作るだけでなく、2つの細胞に分裂されるために、細胞質内のさまざまな因子などが複製される。S期が終わると細胞は、第2のチェックポイントとして知られたG2段階に進入する。このG2期間の間の主要メカニズムは、DNAの複製と完成を調節し、分裂期への進入を準備する。したがって、細胞の構成に必要なさまざまな因子などがこの時に生産される。2つの細胞に分裂されるのに必要な因子などが十分に作られた後、細胞の実質的な分裂が生じる分裂期のM期へ進行され、M期は時間的に最も短くて最もドラマチックな段階である。複製されたゲノムが細胞の両極に分離されて2つの娘細胞が作られる段階であるためである。このような一連の過程は、1つの細胞が成長して2つの細胞に分裂されるためにすべての細胞が経る過程であるため、細胞の生命維持に重要な過程である。したがって、細胞周期の研究とこれらを調節する物質の開発は、細胞成長機作の研究および細胞周期異常から発生する癌の予防、治療剤の開発に必須的であるといえる(Marcos Malumbres and Mariano Barbacid,Nature Review Cancer 2001,1,222-231)。
【0006】
上述したように、哺乳動物の細胞はG1期に存在する第1のチェックポイントまたはG2/Mにある第2のチェックポイントを調節することにより、その成長を調節することができる。これらのチェックポイントの非定常的な進行が細胞の老化や癌などの疾病発生と連結される。このようなチェックポイントで重要な役割をすることがサイクリンD(D1、D2、D3など)である。これらは、CDK(cyclin dependent kinase)2、4または6に結合して、これらの酵素の活性を調節し、リン酸化された蛋白質のリン酸基を除去するCDC25などが細胞周期全体を調節するにあたって極めて重要な役割をすることになる。これらの研究結果などを基に、さまざまな細胞周期調節剤などが腫瘍のような難治性疾病治療剤として開発されている(Peter L Toogood,Current Opinion in Chemical Biology 2002,6,472-478)。
【0007】
シンナムアルデヒド誘導体の抗癌活性などは、既に報告されているが、水に対する溶解度が極めて低く、抗癌剤としての開発に困難があった。例えば、ベンゾイルオキシシンナムアルデヒドなどの細胞での活性および腹腔投与動物での抗癌活性は優れているが、水に対する溶解度が極めて低くて静脈投与が不可能であり、経口投与時の抗癌活性が急激に減少する短所を有している(Han,DC,et al,J. Biol.Chem.2004,279,6911-6920)。多様なシンナムアルデヒド誘導体が作られたが、水に対する溶解度によって動物での抗癌効果が改善されなかった(Shin D. S. et al.,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 17 (2007) 5423.5427;Bioorganic & Medicinal Chemistry 14 (2006) 2498.2506;Byoung-Mog Kwon、et al.,米国特許6,949,682号,2005;クォン・ビョンモクら大韓民国特許10−0668171号)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、水に対する溶解度が改善された新規のシンナムアルデヒド誘導体またはその薬剤学的に許容可能な塩を提供しようとするものである。
本発明の他の目的は、前記の新規のシンナムアルデヒド誘導体またはその薬剤学的に許容可能な塩を製造する方法を提供しようとするものである。
本発明のまた他の目的は、前記の新規のシンナムアルデヒド誘導体またはその薬剤学的に許容可能な塩を有効成分として含む抗癌剤組成物を提供しようとするものである。
本発明のまた他の目的は、前記の新規のシンナムアルデヒド誘導体またはその薬剤学的に許容可能な塩の有効量を患者に投与することを含む癌の治療方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記のような点を勘案して、本発明者らは癌細胞のG2/M期で成長を止めて非定常的成長を抑制させることにより、優れた抗癌活性を示す新規のシンナムアルデヒド誘導体またはその薬剤学的に許容される塩を開発し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0010】
本発明による化学式1のシンナムアルデヒド化合物またはその薬剤学的に許容可能な塩は、癌細胞の細胞周期G2/M期を固定させて非正常的成長を抑制させるだけでなく水に対する溶解度も改善され、さらに優れた坑癌効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は化学式2の化合物の水素NMRスペクトルを示す図面である。
【図2】図2は化学式4の化合物の水素NMRスペクトルを示す図面である。
【図3】図3は化学式6の化合物を経口投与したマウスでの腫瘍成長抑制効果を観察した結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一つの態様として、本発明は下記の化学式(1)で表示されるシンナムアルデヒド化合物またはその薬剤学的に許容可能な塩を提供する。
【0013】
【化1】

【0014】
前記の化学式1において、
Rは、C〜CアルコキシC〜Cアルキルカルボニル基、非置換されるか1つ以上のC〜Cのアルキル基に置換されたOとNのうちから選ばれた1つまたは2つのヘテロ原子を有する6員ヘテロサイクリックカルボニル基、1つまたは2つ以上のNをヘテロ原子として有するC〜C10のヘテロアリールC〜Cアルキル基、C〜C10のアリール基に置換されたスルホニル基、および1つまたは2つ以上のNをヘテロ原子として有するC〜C10のヘテロアリールカルボニル基のうちから選ばれる。
【0015】
好ましくは、前記の化学式1において、
Rはメトキシアセチル(methoxyacetyl)基、非置換されるか1つ以上のC〜Cアルキル基に置換されたピペラジンカルボニル基、ピコリル(picolyl)、ベンゼンスルホニル基、およびピリジンカルボニル基のうちから選ばれる。
【0016】
より好ましい態様として、本発明は下記の化学式2〜化学式9よりなる群から選ばれた化合物またはその薬剤学的に許容可能な塩を提供する。
【0017】
【化2】

【0018】
【化3】

【0019】
【化4】

【0020】
本発明において使われた用語「アルコキシ」とは、炭素数1〜3個の低級アルコキシ基を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシなどを含む。
【0021】
本発明において使われた用語「アルキル」とは、炭素数1〜4の直鎖または側鎖のラジカルを意味し、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、3次−ブチルなどを含む。
【0022】
本発明において使われた用語「ヘテロサイクリック」とは、ヘテロ原子OとNのうちから選ばれた1つまたは2つのヘテロ原子を有する6員の環を意味し、芳香族環は含まれない。例えば、ピペラジン、モルホリンなどを含む。ピペラジンが特に好ましい。
【0023】
本発明において使われた用語「ヘテロアリール」とは、Nをヘテロ原子として有する炭素数4〜10個のモノーまたはポリ−サイクリック芳香族環を意味し、例えば、ピコリル、ピリジン(pyridine)、ピリミジン(pyrimidine)、ピラジン(pyrazine)、ピリダジンなどを含む。ピコリル基が特に好ましい。
【0024】
本発明において使われた用語「アリール」とは、炭素数6〜10個のモノーまたはポリサイクリック芳香族環を意味し、例えば、フェニル、ナフチルなどを含む。フェニル基が特に好ましい。
【0025】
本発明において使われた用語「脱離基」は、塩素、ブローム、ヨードなどのハロゲン原子、トルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基などを示す。
【0026】
本発明の化学式1の化合物などは、当該技術分野における通常の方法により薬学的に許容可能な塩および溶媒化物で製造され得る。
【0027】
塩としては薬学的に許容可能な遊離酸(free acid)により形成された酸付加塩が有用である。酸付加塩は通常の方法、例えば、化合物を過量の酸水溶液に溶解させ、この塩を水混和性有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、アセトンまたはアセトニトリルを使って沈殿させて製造する。同モール量の化合物および水中の酸またはアルコール(例えば、グリコールモノメチルエーテル)を加熱し、続いて前記混合物を蒸発させて乾燥させるか、または析出された塩を吸引ろ過させることができる。
【0028】
この時、遊離酸としては有機酸と無機酸を使用でき、無機酸としては塩酸、リン酸、硫酸、硝酸、スズ酸などを使用でき、有機酸としてはメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、 酢酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸(maleic acid)、コハク酸、シュウ酸、安息香酸、酒石酸、フマル酸(fumaric acid)、マンデル酸、プロピオン酸(propionic acid)、クエン酸(citric acid)、乳酸(lactic acid)、グリコール酸(glycolic acid)、グルコン酸(gluconic acid)、ガラクツロン酸、グルタミン酸、グルタル酸(glutaric acid)、グルクロン酸(glucuronic acid)、アスパラギン酸、アスコルビン酸、炭酸、バニリン酸、ヨウ化水素酸などを使用でき、これらに制限されない。
【0029】
また、塩基を使って薬学的に許容可能な金属塩を作ることができる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩は、例えば、化合物を過量のアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物溶液中に溶解させ、非溶解化合物塩をろ過した後、ろ液を蒸発、乾燥させて得る。この時、金属塩としては特にナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩を製造することが製薬上適合するが、これらに制限されるものではない。また、これに対応する銀塩はアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩を適当な銀塩(例えば、硝酸銀)と反応させて得ることができる。
【0030】
前記化学式1の化合物の薬学的に許容可能な塩は、別に指示されない限り、化学式1の化合物に存在できる酸性または塩基性基の塩を含む。例えば、薬学的に許容可能な塩としてはヒドロキシ基のナトリウム、カルシウムおよびカリウム塩などが含まれることができ、アミノ基のその他薬学的に許容可能な塩としては臭化水素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、酢酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、マンデル酸、メタンスルホン酸(メシル酸)、p−トルエンスルホン酸(トシレート)などがあり、当業界において知らされた塩の製造方法を介して製造され得る。
【0031】
他の一つの態様として、本発明は下記の段階を含む、化学式1で表示されるシンナムアルデヒド化合物またはその薬剤学的に許容可能な塩の製造方法を提供する。
【0032】
1)下記の化学式10で表示されるヒドロキシシンナムアルデヒドを化学式11の化合物と反応させて化学式1の化合物を製造する段階。
【0033】
【化5】

【0034】
【化6】

【0035】
前記の化学式11において、
RはC〜CアルコキシC〜Cアルキルカルボニル基、非置換されるか1つ以上のC〜Cのアルキル基に置換されたOとNのうちから選ばれた1つまたは2つのヘテロ原子を有する6員ヘテロサイクリックカルボニル基、1つまたは2つ以上のNをヘテロ原子として有するC〜C10のヘテロアリールC〜Cアルキル基、C〜C10のアリール基に置換されたスルホニル基、および1つまたは2つ以上のNをヘテロ原子として有するC〜C10のヘテロアリールカルボニル基のうちから選ばれ;および
Zは脱離基である。
【0036】
好ましくは、前記の化学式11において、
Rはメトキシアセチル基、非置換されるか1つ以上のC〜Cアルキル基に置換されたピペラジンカルボニル基、ピコリル、ベンゼンスルホニル基、およびピリジンカルボニルのうちから選ばれ;および
Zは塩素(Cl)またはブロム(Br)である。
【0037】
前記本発明の製造方法の一態様を図式化すると、下記の反応式1で示すことができる。
【0038】
【化7】

【0039】
前記の反応式1において、先ず、ヒドロキシシンナムアルデヒドを有機溶媒に溶かし、置換された塩化アセチル、置換された塩化ベンゾイル、塩化ピコリル、塩化ビフェニルカルボニルまたは塩化ピリジンカルボニル化合物と反応させる。前記の反応は、炭酸塩化合物の存在下で10時間以上、11〜13時間行う。 この時、有機溶媒としてはアセトニトリルまたはアセトンを使用することができる。
【0040】
より好ましい態様として、本発明は前記1)の段階以後に、1)の段階で製造された化合物を有機溶媒に溶かした後、塩酸を添加して反応させる段階をさらに含むことができる。この時、有機溶媒としてはアセトニトリルまたはアセトンを使用することができる。
【0041】
本発明は前記追加の段階を介して水に対する溶解度をさらに改善させることができる。
【0042】
本発明において製造された化合物の構造分析のために、先ず、UV吸光度分析、IR(infrared)吸光度分析および高解像度質量分析器分析を行い、前記純粋精製された化合物の分子量および分子式を決定する。具体的に、UV吸光度分析は、島津製作所のUV−265分光光度計(Shimadzu UV-265 spectrophotometer)で測定し、IR吸光度はバイオ・ラッド社のデジラボデビジョンFTS−80分光光度計(Bio-Rad Digilab Division FTS-80 spectrophotometer)で測定し、分子量および分子式はVG70−SEQ質量分析計(mass spectrometry;MS)を用いた高解像度(High resolution)MSを測定して決定する。また、核磁気共鳴器(Varian300MHz、 500MHz NMR)を用いてH、13C−NMRスペクトルを得て、これらのスペクトルを総合的に分析して最終的に構造を決定することができる。
【0043】
また他の一つの態様として、本発明は化学式1で表示されるシンナムアルデヒド化合物またはその薬剤学的に許容可能な塩を有効成分とする抗癌剤組成物を提供する。
【0044】
本発明において使用された用語「坑癌」とは、癌の予防および治療効果のすべてを含む。
【0045】
前記癌は結腸癌、肺癌、非小細胞性肺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭部癌、頸部癌、皮膚黒色腫、眼球内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、胃癌、肛門付近癌、乳癌、卵管癌腫、子宮内膜癌腫、子宮頚癌腫、膣癌腫、外陰癌腫、ホジキン病(Hodgkin's disease)、食道癌、小腸癌、内分泌腺癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性白血病、急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓癌、輸尿管癌、腎細胞癌腫、腎盂癌腫、中枢神経系 (CNS;central nervous system)腫瘍などがある。
【0046】
本発明による化合物は、癌細胞の非正常的な成長を抑制する効果が優れて癌疾患の治療および予防に有用に利用され得る。
【0047】
一実施例として、化学式1の化合物などを人体結腸癌細胞株SW620に10〜20μMで処理すると、細胞周期G2+M期に停止させて細胞の成長を抑制する効果を示す。具体的に、細胞成長抑制効果実験は、次のように行われる。先ず、人体結腸癌細胞株SW620の培養液に、DMSOに溶かした前記化合物を処理した後、48時間ごとに細胞DNAを染色し、染色された細胞をペクトン-ディキンソン パクス カルリボ(Becton-Dickinson FACS calibur(Becton-Dickinson,San Jose,CA,USA)を用いて細胞周期を測定し、ペクトン-ディッキンソンディケンズ モディピッ(Becton-Dickinson Modifit)細胞周期分析プログラムを用いて細胞周期のG1、S、G2+M期にある細胞の量を百分率で計算する。
【0048】
本発明による化学式1の化合物を含む薬学組成物は、通常の方法による適切な担体、賦形剤または希釈剤をさらに含むことができる。本発明の組成物に含まれることができる担体、賦形剤および希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アラビアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリジン、水、メチルヒドロキシベンゾエイト、プロピルヒドロキシベンゾエイト、タルク、ステアリン酸マグネシウム、および鉱油が挙げられる。
【0049】
本発明による組成物は、通常の方法により散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアゾールなどの経口形剤形、外用剤、坐剤または滅菌注射溶液の形態で剤形化して使用され得る。
【0050】
詳細には、剤形化する場合、普通に使用する 充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調剤され得る。経口投与のための固形製剤には錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、前記化合物に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、ゼラチンなどを混ぜて調製され得る。また、単純な賦形剤以外にマグネシウムステアリン酸、タルクのような潤滑剤なども使用され得る。経口のための液状製剤としては懸濁剤、内部液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、よく使われる単純希釈剤の水、液体パラフィン以外に種々の賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。非経口投与のための製剤には滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤および坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としてはプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使用され得る。坐剤の基剤としてはウィテップゾール、マクロゴール、ツイーン61、カカオ油、ローリン油、グリセリンゼラチンなどが使用され得る。
【0051】
本発明による化合物の好ましい投与量は、患者の状態および体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路および期間に応じて異なるが、当業者によって適切に選択され得る。しかし、好ましい効果のために本発明の化合物は、通常的に一日に体重1kg当り1〜50mg、好ましくは5〜50mgの量を1回〜数回に分けて投与することができる。
【0052】
本発明による化合物の薬学的投与形態は、それらの薬学的に許容可能な塩の形態でも使われることができ、また、単独でまたはその他薬学的活性化合物と結合だけでなく適当な集合で使用され得る。
【0053】
本発明の薬学組成物はラット、マウス、家畜や人間などの哺乳動物に多様な経路で投与され得る。投与のすべての方式は予想され得るが、例えば、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳血管内(intracerebroventricular)注射によって投与され得る。
【0054】
また他の一つの態様として、本発明は化学式1で表示されるシンナムアルデヒド化合物またはその薬剤学的に許容可能な塩の有効量を患者に投与することを含む癌治療方法を提供する。
【0055】
前記癌は結腸癌、肺癌、非小細胞性肺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭部癌、頸部癌、皮膚黒色腫、眼球内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、胃癌、肛門付近癌、乳癌、卵管癌腫、子宮内膜癌腫、子宮頚癌腫、膣癌腫、外陰癌腫、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌腺癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性白血病、急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓癌、輸尿管癌、腎細胞癌腫、腎盂癌腫、中枢神経系腫瘍などがある。
【0056】
本発明化合物の個別的な投薬の最適量および投薬間隔は、治療されている病の性質および程度、投与剤形、経路および部位、そして、治療されている特定患者の年齢と健康状態によって決定され、医師が究極的に使われる適切な投薬を決定するということは当該分野における当業者が知られる。このような投薬は適切な程度にしばしば繰り返すことができる。副作用が生じるならば、普通の臨床診療に応じて投与量および頻度を変更するとかまたは減少させ得る。
以下、本発明を実施例を介してより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0057】
実施例1:化学式2の化合物製造
ヒドロキシシンナムアルデヒド1gをアセトン200mlに溶かした後、炭酸カリウム2gと塩化メトキシアセチル0.8gを添加して常温で5時間攪拌した。反応が終結した後、活性物質を含有している有機溶媒層を集めて減圧下で濃縮した。該濃縮した抽出物1.2gを塩化メチレン30mlに溶解し、酢酸エチルとヘキサンとの比率を30:70でシリカゲル(Merck,Art No. 9385)コラムクロマトグラフィーし、活性分画を分離して淡い黄色の化学式2の化合物1.3gを得た(収得率:90%)。化学式2の化合物の物理化学的性質を下記表1に示し、水素NMRスペクトルを図1に示した。
【0058】
【表1】

【0059】
H−NMR(CDCl3):9.69(1H、d、J=7.2)、7.68(1H、d、J=8.1)、7.51(2H、m)、7.33(1H、t、J=7.5)、7.22(2H、d、J=8.1)、4.38(2H、s)、3.56(3H、s)。
【0060】
実施例2:化学式3の化合物製造
ヒドロキシシンナムアルデヒド1gをアセトン200mlに溶かした後、炭酸カリウム2gと(4-クロロメチル)ピリジン塩酸塩(4-picolyl chloride)0.8gを添加して常温で5時間攪拌した。反応が終結した後、活性物質を含有している有機溶媒層を集めて減圧下で濃縮した。該濃縮した抽出物1.5gを塩化メチレン30mlに溶解し、酢酸エチルとヘキサンとの比率を60:40でシリカゲル(Merck,Art No.9385)コラムクロマトグラフィーし、活性分画を分離して淡い黄色の化学式3の化合物1.4gを得た(収得率:90%)。化学式3の化合物の物理化学的性質を下記表2に示した。
【0061】
【表2】

【0062】
H−NMR(CDCl3):9.72(1H、d、J=7.2)、8.65(2H、m)、7.92(1H、d、J=15.9)、7.61(1H、m)、7.37(3H、m)、7.05(1H、t、J=7.2)、6.91(1H、d、J=8.1)、6.81(1H、m)、5.212(2H、s)。
【0063】
実施例3:化学式4の化合物製造
ヒドロキシシンナムアルデヒド1gをアセトン200mlに溶かした後、炭酸カリウム2gと4−メチル−1−ピペラジンカルボニルクロリド1.9gを添加して常温で5時間攪拌した。反応が終結した後、活性物質を含有している有機溶媒層を集めて減圧下で濃縮した。該濃縮した抽出物1.5gを塩化メチレン30mlに溶解し、酢酸エチルとヘキサンとの比率を99:1でシリカゲル(Merck,Art No. 9385)コラムクロマトグラフィーし、活性分画を分離して淡い黄色の化学式4の化合物1.6gを得た(収得率:90%)。化学式4の化合物の物理化学的性質を下記表3に示し、水素NMRスペクトルを図2に示した。
【0064】
【表3】

【0065】
H−NMR(CDCl3):9.69(1H、d、J=7.2)、7.63(2H、m)、7.45(1H、m)、7.29(1H、d、J=7.5)、7.18(1H、m)、6.71(1H、m)、3.77(2H、m)、3.62(2H、m)、2.49(4H、m)、2.36(3H、s)。
【0066】
実施例4:化学式5の化合物製造
ヒドロキシシンナムアルデヒド1gをアセトン200mlに溶かした後、炭酸カリウム2gとベンゼンスルホニルクロリド1.2gを添加して常温で5時間攪拌した。反応が終結した後、活性物質を含有している有機溶媒層を集めて減圧下で濃縮した。該濃縮した抽出物1.9gを塩化メチレン30mlに溶解し、酢酸エチルとヘキサンとの比率を30:70でシリカゲル(Merck,Art No.9385)コラムクロマトグラフィーし、活性分画を分離して淡い黄色の化学式5の化合物1.7gを得た(収得率:90%)。化学式5の化合物の物理化学的性質を下記表4に示した。
【0067】
【表4】

【0068】
H−NMR(CDCl3):9.41(1H、d、J=7.2)、7.81(2H、m)、7.67(1H、t、J=7.8)、7.49(4H、m)、7.33(1H、m)、7.27(1H、m)、6.45(1H、m)。
【0069】
実施例5:化学式6の化合物製造
化学式3の化合物1gをアセトン200mlに溶かした後、37%塩酸を1ml添加して10時間攪拌した。反応終了後、活性物質を含有している有機溶媒層を減圧下で濃縮し、該濃縮した抽出物を再結晶して化学式6の化合物1gを得た。化学式6の化合物の物理化学的性質を下記表5に示した。
【0070】
【表5】

【0071】
H−NMR(CDCl3):9.74(1H、d、J=7.2)、8.75(2H、d、J=6)、7.91(1H、d、J=16.2)、7.53(2H、m)、7.63(1H、m)、7.41(1H、t、J=7.2)、7.11(1H、t、J=7.2)、6.85(2H、m)、5.37(2H、s)。
【0072】
実施例6:化学式7の化合物製造
化学式4の化合物1gをアセトン200mlに溶かした後、37%塩酸を1ml添加して10時間攪拌した。反応終了後、活性物質を含有している有機溶媒層を減圧下で濃縮し、該濃縮した抽出物を再結晶して化学式7の化合物1gを得た。化学式7の化合物の物理化学的性質を下記表6に示した。
【0073】
【表6】

【0074】
H−NMR(CDCl3):9.71(1H、d、J=7.2)、7.62(1H、m)、7.51(2H、m)、7.33(1H、t、J=6.6)、7.16(1H、d、J=7.5)、6.68(1H、m)、4.38(2H、m)、4.13(1H、m)、3.89(1H、m)、2.88(4H、s)。
【0075】
実施例7:化学式8の化合物製造
ヒドロキシシンナムアルデヒド1gをアセトン200mlに溶かした後、炭酸カリウム2gとニコチノイルクロリド1.5gを添加して常温で5時間攪拌した。反応が終結した後、活性物質を含有している有機溶媒層を集めて減圧下で濃縮した。該濃縮した抽出物2.2gを塩化メチレン30mlに溶解し、酢酸エチルとヘキサンとの比率を80:20でシリカゲル(Merck,Art No. 9385)コラムクロマトグラフィーし、活性分画を分離して淡い黄色の化学式8の化合物1.1gを得た(収得率:70%)。化学式8の化合物の物理化学的性質を下記表7に示した。
【0076】
【表7】

【0077】
H−NMR(CDCl3):9.63(1H、d、J=7.8)、9.46(1H、d、J=1.8)、8.92(1H、m)、8.49(1H、m)、7.75(1H、m)、7.55(3H、m)、7.39(1H、t、J=6.6)、7.29(1H、m)、6.75(1H、m)。
【0078】
実施例8:化学式9の化合物製造
化学式8の化合物1gをアセトン200mlに溶かした後、メタンスルホン酸を1ml添加して1時間攪拌した。反応終了後、活性物質を含有している有機溶媒層を減圧下で濃縮し、該濃縮した抽出物を再結晶して化学式9の化合物1.1gを得た。化学式9の化合物の物理化学的性質を下記表8に示した。
【0079】
【表8】

【0080】
H−NMR(CDCl3):9.67(1H、d、J=7.2)、9.36(1H、d、J=1.8)、8.96(1H、m)、8.59(1H、m)、8.01(1H、m)、7.85(1H、d、J=16.5)、7.74(1H、m)、7.61(1H、m)、7.44(2H、m)、6.89(1H、m)、5.39(1H、s)、2.34(3H、s)。
【0081】
実験例1:細胞周期分析
細胞周期分析のために人体結腸癌細胞株SW620を10%FBSを含有したそれぞれのRPMI1640とDMEM培地を用いてT25フラスコ(培養液7.5ml)に分株した後、12時間37℃の培養器で培養した。12時間培養した後、対照群(control)として使用する細胞培養液には、DMSOを最終濃度が0.1%(7.5ul)になるように入れ、処理群として使用する細胞培養液には、多様な濃度でDMSOに溶かした試料を7.5ul添加した。DMSOまたは試料を処理した細胞株は、物質処理後、それぞれ48時間目に分離して細胞分析のために使用した。
【0082】
細胞周期分析のために培養された細胞は、フラスコから培地を除去した後、トリプシンを用いて培養フラスコから分離して遠心分離(300g、5分間)した。分離した細胞は、りん酸塩緩衝溶液(phosphate buffer)を用いて2回洗浄して培地成分を除去した。このように準備された細胞に70%エタノール3mLを処理して−20℃で12時間の間放置して細胞を固定させた。エタノールで固定された細胞は遠心分離(300g、3分間)した後、再びPBSで2回細胞を洗浄して残余エタノールを除去した。細胞に500ulのPBSを加えて混ぜた後、100μg/mLのRNase Aを50ulを処理して37℃で30分間放置した後、1mg/mLの プロピジウムヨウ化物(propidium iodide(in PBS))を10ulを処理して細胞DNAを染色した。該染色した細胞は、ペクトン-ディキンソン パクス カルリボ(Becton-Dickinson FACS calibur(Becton-Dickinson,San Jose,CA,USA))を用いて20、000個細胞の細胞周期を測定し、ペクトン-ディキンソン モディピッ(Becton-Dickinson Modifit)細胞周期分析プログラムを用いて細胞周期のG1、S、G2+M期にある細胞の量を百分率で計算した。化学式2〜化学式9の化合物が細胞周期に及ぼす影響を分析した結果を下記表9〜表17に示した。
【0083】
【表9】

【0084】
【表10】

【0085】
【表11】

【0086】
【表12】

【0087】
【表13】

【0088】
【表14】

【0089】
【表15】

【0090】
【表16】

【0091】
【表17】

【0092】
前記表9〜表17から知るように、本発明の化学式2〜化学式9の化合物は、細胞周期に重要な要素であるG2/M期の細胞成長を停止して細胞分裂を阻害する優れた効果を示した。これを介して本発明の化合物が癌細胞の非正常的な成長を抑制して癌を治療または予防するのに有用であることを確認することができた。
【0093】
実験例2:経口投与坑癌活性実験
マウスを試料投与群、溶媒対照群(vehicle control)、陽性対照群で分け、それぞれのマウスに人体結腸癌細胞株HT−29(3×10cells/ml)を0.3mlずつ右側の肩甲部と胸壁との間の腋窩部位皮下に注入した。試料投与群のマウスには化学式6の化合物を移植後、翌日(day1)から投与を開始して剖検前日まで毎日1回に経口へそれぞれ各々10mg/kgの容量で投与を繰り返し行った。陽性対照群のマウスには化学式6の化合物の代わりに陽性対照物質としてアドリアマイシン(ADM)を2mg/kgの容量で投与するのを除いては試料投与群のマウスと同様に処置した。
【0094】
動物の体重変化は、試験期間の間3回/週程度に測定して薬品の投与に起因した体重減少のような毒性程度を調べた。癌細胞移植後、6日目から18日目まで総5回腫瘍のサイズを個体別に測定した。
【0095】
腫瘍のサイズは、バーニア キャリパーを用いて3方向を測定した後、下記数学式1で表現した。
【0096】
【数1】

【0097】
細胞移植後、18日目に動物を犠牲にさせて腫瘍を分離した後に重さを測定した。
【0098】
HT−29癌細胞株を移植したヌードマウスに薬物投与を開始した後、18日間体重変化を観察した。実験結果を見ると、溶媒対照群と比較して試料投与群で体重の減少は観察されなかった。陽性対照群[アドリアマイシン(ADM)投与群]の場合には、最終日に10.3%(p<0.001)の統計的に有意な体重減少が観察された。
【0099】
一方、図3を通じて知るように、化学式6の化合物を投与した試料投与群では30.7%(p<0.001)の統計的に有意な腫瘍成長抑制効果が観察され、陽性対照群の場合には45.4%(p<0.001)の統計的に有意な腫瘍成長抑制効果が示された。
【0100】
実験例3:ラットに対する経口投与急性毒性実験
本発明によるシンナムアルデヒド誘導体の毒性を測定するために、下記のように実験動物を用いて急性毒性実験を行った。
【0101】
6週齢の特定病原部材(SPF)SD系ラットを用いて急性毒性実験を次のように実施した。群当り2匹ずつのSD系ラットに実施例で製造されたシンナムアルデヒド誘導体を注射用蒸溜水に溶解させ、1000mg/kgの容量で単回経口投与した。試験物質投与後、動物の斃死の可否、臨床症状、体重変化を観察し、血液学的検査と血液生化学的検査とを実施し、剖検して視認で腹腔臓器と胸腔臓器との異常可否を観察した。
【0102】
この結果、試験物質を投与したすべての動物で 特別な臨床症状や斃死した動物は無く、体重変化、血液検査、血液生化学検査、剖検所見などにおいても毒性変化は観察されなかった。
【0103】
したがって、本発明によるシンナムアルデヒド誘導体は、すべてのラットで1000mg/kgまで毒性変化を示さないので、経口投与最小致死量(LD50)が1000mg/kg以上である安全な物質として判定された。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明による化学式1のシンナムアルデヒド化合物またはその薬剤学的に許容可能な塩は、癌細胞の細胞周期G2/M期を固定させて非正常的な成長を抑制させるだけでなく、水に対する溶解度も改善してさらに優れた坑癌効果を示す。したがって、本発明による化合物を含む組成物は、癌疾患の予防および治療に有用に利用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表示されるシンナムアルデヒド化合物またはその薬剤学的に許容可能な塩。
【化1】

前記の化学式1において、
Rは、C〜CアルコキシC〜Cアルキルカルボニル基、非置換されるか1つ以上のC〜Cのアルキル基に置換されたOとNのうちから選ばれた1つまたは2つのヘテロ原子を有する6員ヘテロサイクリックカルボニル基、1つまたは2つ以上のNをヘテロ原子として有するC〜C10のヘテロアリールC〜Cアルキル基、C〜C10のアリール基に置換されたスルホニル基、および1つまたは2つ以上のNをヘテロ原子として有するC〜C10のヘテロアリールカルボニル基のうちから選ばれる。
【請求項2】
前記の化学式1において、
Rはメトキシアセチル基、非置換されるか1つ以上のC〜Cアルキル基に置換されたピペラジンカルボニル基、ピコリル、ベンゼンスルホニル基、およびピリジンカルボニル基のうちから選ばれる請求項1に記載のシンナムアルデヒド化合物またはその薬剤学的に許容可能な塩。
【請求項3】
下記の化学式2〜化学式9からなる群より選ばれた請求項2に記載のシンナムアルデヒド化合物またはその薬剤学的に許容可能な塩。
【化2】

【化3】

【化4】

【請求項4】
下記の段階を含む、化学式1で表示されるシンナムアルデヒド化合物の製造方法:
1)下記の化学式10で表示されるヒドロキシシンナムアルデヒドを化学式11の化合物と反応させて化学式1の化合物を製造する段階。
【化5】

【化6】

【化7】

前記の化学式において、
RはC〜CアルコキシC〜Cアルキルカルボニル基、非置換されるか1つ以上のC〜Cのアルキル基に置換されたOとNのうちから選ばれた1つまたは2つのヘテロ原子を有する6員ヘテロサイクリックカルボニル基、1つまたは2つ以上のNをヘテロ原子として有するC〜C10のヘテロアリールC〜Cアルキル基、C〜C10のアリール基に置換されたスルホニル基、および1つまたは2つ以上のNをヘテロ原子として有するC〜C10のヘテロアリールカルボニル基のうちから選ばれ;および
Zは脱離基である。
【請求項5】
前記化学式において、
Rはメトキシアセチル基、非置換されるか1つ以上のC〜Cアルキル基に置換されたピペラジンカルボニル基、ピコリル、ベンゼンスルホニル基、およびピリジンカルボニルのうちから選ばれ;および
Zは塩素(Cl)またはブロム(Br)である請求項4に記載のシンナムアルデヒド化合物の製造方法。
【請求項6】
前記1)の段階以後に、1)の段階で製造された化合物を有機溶媒に溶かした後、塩酸を添加して反応させる段階をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載のシンナムアルデヒド化合物の製造方法。
【請求項7】
前記の有機溶媒は、アセトニトリルまたはアセトンであることを特徴とする請求項6に記載のシンナムアルデヒド化合物の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の化合物を有効成分として含む抗癌剤組成物。
【請求項9】
前記癌は結腸癌、肺癌、非小細胞性肺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭部癌、頸部癌、皮膚黒色腫、眼球内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、胃癌、肛門付近癌、乳癌、卵管癌腫、子宮内膜癌腫、子宮頚癌腫、膣癌腫、外陰癌腫、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌腺癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性白血病、急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓癌、輸尿管癌、腎細胞癌腫、腎盂癌腫、中枢神経系腫瘍であることを特徴とする請求項8に記載の抗癌剤組成物。
【請求項10】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の化合物の有効量を患者に投与することを含む癌治療方法。
【請求項11】
前記癌は結腸癌、肺癌、非小細胞性肺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭部癌、頸部癌、皮膚黒色腫、眼球内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、胃癌、肛門付近癌、乳癌、卵管癌腫、子宮内膜癌腫、子宮頚癌腫、膣癌腫、外陰癌腫、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌腺癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性白血病、急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓癌、輸尿管癌、腎細胞癌腫、腎盂癌腫、中枢神経系腫瘍であることを特徴とする請求項10に記載の癌治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−525912(P2011−525912A)
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516100(P2011−516100)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際出願番号】PCT/KR2008/007170
【国際公開番号】WO2009/157626
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(501245997)コリア リサーチ インスティテュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー (15)
【Fターム(参考)】