説明

水圧試験機

【課題】環状止水バッグの損傷を防止しながら円筒状本体のバッグ装着部位に簡便、迅速且つ確実に外装して固定でき、環状止水バッグの外装及び固定構造を簡易な構造とする。
【解決手段】拡径操作可能な一対の環状止水バッグ20を円筒状本体10の外周面11の軸芯Y方向両側部に配備し、拡径操作された両環状止水バッグ20と外周面11及び流体管の管内周面とで形成される環状密封空間内に水圧試験用の水を供給する水圧試験機にて、円筒状本体10の外周面11における両バッグ装着部位11aの軸芯Y方向中央側には端部側から外装される環状止水バッグ20の軸芯Y方向における最大挿入位置を画定する本体側鍔部11bがそれぞれ外径側に突出形成され、両バッグ装着部位11aの端部側には両バッグ装着部位11aに外装された環状止水バッグ20の端部側への移動を阻止する環状移動阻止体12が脱着可能に嵌合状態で固定手段13、14により固定されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管内に搬入可能な円筒状本体の外周面の軸芯方向両側部に、流体管の継手部に対して軸芯方向の両側方に偏位した管内周面との間をそれぞれ止水する状態にまで拡径操作可能な一対の環状止水バッグを配備するとともに、止水状態に拡径操作された両環状止水バッグと円筒状本体の外周面及び流体管の管内周面とで形成される環状密封空間内に水圧試験用の水を供給する水供給部を設けてある水圧試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の水圧試験機として、特許文献1に開示された水圧試験機では、一対の環状止水バッグとしての一対のチューブリングが円筒状本体の外周面における軸芯方向両側部に配備されており、円筒状本体の内周面側から外周面側に向かって貫通配置されるチューブリング内注入管を介して一対のチューブリング内に注水可能に構成されている。これにより、円筒状本体の外周面と流体管の継手部に対して軸芯方向の両側方に偏位した流体管の管内周面との間をそれぞれ止水する状態にまで、一対のチューブリングを拡径操作可能に構成されている。
そして、拡径状態にある一対のチューブリングと円筒状本体の外周面及び流体管の管内周面とにより環状密封空間が形成され、環状密封空間内に水圧試験用の水を供給する水供給部としての注入管、及び環状密封空間内から空気を排出する排気管が、円筒状本体の内周面側から外周面側に向かってそれぞれ貫通配置されている。これにより、環状密封空間内に充填される水の水圧により、環状密封空間に位置する流体管の継手部からの漏水の有無を検出する水圧試験を行うことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3597455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記特許文献1に開示された水圧試験機では、円筒状本体の外周面は、外径が略一定の円筒部分と、当該円筒部分の外径よりも小径で、円筒状本体における軸芯方向両側部に一対形成される環状凹部とを備えて形成されている。そして、各チューブリングは、各環状凹部内に外装され、チューブリングの径方向内方側の環状開口縁に連続するフランジ部が押え板と環状凹部内の底面に設けられた取付フランジ部とにより径方向で挟持された状態で、ビスにより環状凹部の底部に固定されている。
【0005】
しかしながら、かかる水圧試験機では、装着凹部のみが円筒部分の外径よりも小径に形成されており、装着凹部よりも軸芯方向の両端部側(円筒状本体の外周面における円筒部分の一部)は、装着凹部よりも大径に形成されていることとなる。このため、チューブリングの経年劣化や損傷等の理由により、円筒状本体の装着凹部に新たなチューブリングを装着する場合には、新たなチューブリングの内径を、装着凹部の外径よりも大径である円筒状本体の端部の外径よりも大きく拡径させ、しかもこの拡径状態で端部から装着凹部にまで移動させる必要がある。このような場合、新たなチューブリングの装着に非常に手間がかかる上に、チューブリングを大きく拡径した際に、チューブリングに破れやひびが生じたり、チューブリングとチューブリング内注入管との接合箇所において剥離等が生じる虞がある。
【0006】
また、かかる水圧試験機では、チューブリングの径方向内方側の環状開口縁に連続するフランジ部を設け、装着凹部の底面に取付フランジを設け、さらに、押え板等を設ける必要があり、チューブリングを装着凹部に外装して固定するための構造が複雑となるため、新たなチューブリングの装着に非常に手間がかかる。
【0007】
従って、チューブリングを装着凹部に外装して固定するための労力及び時間が多大となり、工期の長期化及びコストの高騰化を招く虞がある。
【0008】
本発明は、上述の実情に鑑みて為されたものであり、その主たる課題は、環状止水バッグの損傷を防止しながら円筒状本体のバッグ装着部位に簡便、迅速且つ確実に外装して固定でき、しかも、環状止水バッグの外装及び固定構造を簡易な構造とすることができる水圧試験機を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による第1の特徴構成は、流体管内に搬入可能な円筒状本体の外周面の軸芯方向両側部に、前記流体管の継手部に対して軸芯方向の両側方に偏位した管内周面との間をそれぞれ止水する状態にまで拡径操作可能な一対の環状止水バッグを配備するとともに、前記止水状態に拡径操作された両環状止水バッグと前記円筒状本体の外周面及び前記流体管の管内周面とで形成される環状密封空間内に水圧試験用の水を供給する水供給部を設けてある水圧試験機であって、
前記円筒状本体の外周面における両バッグ装着部位の軸芯方向中央側には、端部側から外装される前記環状止水バッグの軸芯方向における最大挿入位置を画定する本体側鍔部がそれぞれ外径側に突出形成され、前記両バッグ装着部位の端部側には、前記両バッグ装着部位に外装された前記環状止水バッグの端部側への移動を阻止する環状移動阻止体が脱着可能に嵌合状態で固定手段により固定されてなる点にある。
【0010】
上記構成によれば、円筒状本体の外周面の軸芯方向両側部であるバッグ装着部位に一対の環状止水バッグがそれぞれ端部側から外装される構成において、両バッグ装着部位の軸芯方向中央側には、環状止水バッグの軸芯方向における最大挿入位置を画定する本体側鍔部がそれぞれ外径側に突出形成されている。そのため、円筒状本体の外周面は、本体側鍔部が外径側に大きく突出形成される一方で、軸芯方向における当該本体側鍔部よりも端部側(バッグ装着部位及びバッグ装着部位よりも端部側の部分)の外径は環状止水バッグをほとんど拡径せずに外装可能な外径に形成できる。すなわち、環状止水バッグの内径を、両バッグ装着部位の外径と略同径或いは若干大径として形成しても、環状止水バッグをほぼ拡径させない状態で、軸芯方向において円筒状本体の端部から本体側鍔部に当接する両バッグ装着部位にまで、容易で迅速かつ確実に外装することができる。そして、環状止水バッグを円筒状本体の端部からバッグ装着部位にまで外装させるに連れて、当該環状止水バッグは軸芯方向で本体側鍔部と当接し、所望の装着位置である最大挿入位置に確実に位置決めされることとなる。
【0011】
また、環状止水バッグの外装に続いて、円筒状本体の両端部から環状移動阻止体がそれぞれ嵌合装着され、両バッグ装着部位に外装された環状止水バッグが端部側へ移動することを阻止する状態で、当該環状移動阻止体がバッグ装着部位よりも端部側に固定手段により固定されるので、環状止水バッグの内径を、両バッグ装着部位の外径と略同径或いは若干大径として形成するとともに、円筒状本体の本体側鍔部より端部側の外径を環状止水バッグの内径と略同径或いは若干小径として形成して、環状止水バッグが円筒状本体の端部側に移動するおそれがある場合でも、環状止水バッグを円筒状本体の端部側への移動が阻止された状態で固定することができ、環状止水バッグがバッグ装着部位或いは端部から離脱することを防止できる。すなわち、環状止水バッグを、軸芯方向におけるバッグ装着部位である本体側鍔部と環状移動阻止体との間で保持した状態とすることができる。
【0012】
よって、環状止水バッグを円筒状本体に外装して固定する際において、環状止水バッグを拡径させる必要がほぼなくなるため、環状止水バッグの損傷を防止しながら円筒状本体のバッグ装着部位に簡便、迅速且つ確実に外装することができるとともに、この外装状態で環状止水バッグを固定手段により円筒状本体の端部に簡便、迅速且つ確実に固定でき、しかも、環状止水バッグの外装及び固定構造を簡易な構造とすることができる。
【0013】
本発明による第2の特徴構成は、前記環状移動阻止体における前記環状止水バッグと軸芯方向で対面する部位に、外径側に突出する阻止体側鍔部が形成され、前記円筒状本体の外周面における両バッグ装着部位には、前記本体側鍔部と前記阻止体側鍔部とにより区画される前記環状止水バッグの装着凹部が形成され、前記装着凹部に装着された前記環状止水バッグの縮径状態における外径が前記本体側鍔部及び前記阻止体側鍔部の外径よりも小さく或いは同等に設定されている点にある。
【0014】
上記構成によれば、両バッグ装着部位の軸芯方向中央側には、一対の本体側鍔部が外径側に突出形成されており、また、両バッグ装着部位の端部側には、円筒状本体の外周面に嵌合装着された一対の環状移動阻止体における一対の阻止体側鍔部が外径側に突出形成されているので、両バッグ装着部位には、本体側鍔部と阻止体側鍔部とにより区画される環状止水バッグの装着凹部が形成される。そのため、装着凹部に外装された環状止水バッグは、軸芯方向における中央側への移動は本体側鍔部との当接により阻止され、端部側への移動は阻止体側鍔部との当接により阻止されることとなり、当該環状止水バッグを装着凹部からの離脱を確実に阻止した状態で固定手段により固定することができる。
また、装着凹部に装着された環状止水バッグの縮径状態における外径が、本体側鍔部及び阻止体側鍔部の外径よりも小さく或いは同等に設定されているので、縮径状態にある環状止水バッグの外径部分(外径側の先端部分)は、本体側鍔部及び阻止体側鍔部の外径側部分からはみ出さず、装着凹部内に確実に収容された状態となる。これにより、装着凹部内に環状止水バッグが装着された円筒状本体を、流体管内に搬入して当該流体管内で管軸方向或いは管周方向に移動させたとしても、縮径状態にある環状止水バッグが流体管の管内周面に接触することがなく、環状止水バッグの損傷を防止することができる。
【0015】
本発明による第3の特徴構成は、前記円筒状本体の外周面における前記両バッグ装着部位の端部側境界箇所には、前記環状移動阻止体の阻止体側鍔部の内径よりも大径で、前記阻止体側鍔部が軸芯方向から当接して前記環状移動阻止体の最大挿入位置を画定する段部が形成されてなる点にある。
【0016】
上記特徴によれば、円筒状本体の外周面における両バッグ装着部位の端部側境界箇所には、環状移動阻止体の阻止体側鍔部の内径よりも大径の段部が形成されているので、円筒状本体の端部から環状止水バッグを外装して当該段部を通過させた後、環状移動阻止体を外嵌装着させるに連れて、環状移動阻止体の阻止体側鍔部が当該段部に軸芯方向から当接し、軸芯方向における環状移動阻止体の最大挿入位置が画定されるとともに、軸芯方向における環状止水バッグのバッグ装着部位の端部側境界箇所が画定される。これにより、軸芯方向における環状移動阻止体の位置決め及び環状止水バッグの位置決めを確実に行うことができる。
【0017】
本発明による第4の特徴構成は、前記円筒状本体を前記流体管内の管軸方向に沿って走行可能とする車輪を両端に備えた走行機構が、前記円筒状本体の両端部からそれぞれ車輪を延設配置させた状態で前記円筒状本体の内径側部位に配設され、前記走行機構を前記円筒状本体に対して管径方向に相対移動可能とする径方向位置決め機構が、前記走行機構と前記円筒状本体とに亘って配設され、前記走行機構には、前記径方向位置決め機構による前記走行機構の管径方向への相対移動を、前記円筒状本体の両端部の端面及び前記両環状移動阻止体の端部の端面に沿うように案内する一対のガイド部が、前記車輪よりも中央側に配設されている点にある。
【0018】
上記特徴によれば、円筒状本体の両端部からそれぞれ車輪を延設配置させた状態で円筒状本体の内径側部位に配設された走行機構を、走行機構と円筒状本体とに亘って配設された径方向位置決め機構により円筒状本体に対して管径方向に相対移動させることで、流体管内に搬入された円筒状本体の両端部から延設配置された両車輪のみを流体管の管内周面に当接させ、円筒状本体及び当該両車輪を除く走行機構が管内周面に当接しないように円筒状本体及び走行機構の径方向における位置決めを行うことができる。
特に、走行機構には、径方向位置決め機構による走行機構の管径方向への相対移動を、円筒状本体の両端部の端面及び両環状移動阻止体の端部の端面に沿うように案内する一対のガイド部が配設されているので、軸芯方向における円筒状本体の長さよりも長く形成され両端に車輪を備えた走行機構が、当該円筒状本体の両端部から車輪を延設配置させた状態で管径方向に相対移動する場合において、軸芯方向において円筒状本体の両端部より延出し走行機構の車輪よりも中央側に位置する2箇所で、一対のガイド部により走行機構を管径方向である両端面に沿う方向に案内することができる。これにより、当該走行機構の長手方向を軸芯方向と略平行な状態に維持して傾動を防止し、走行機構に配設される両車輪の両方を流体管の管内周面に当接させることが可能となる。また、一対のガイド部は、軸芯方向において車輪よりも中央側に配設されているので、走行機構の相対移動に伴って一対のガイド部が車輪等に当接することもない。
【0019】
本発明による第5の特徴構成は、前記走行機構には、前記車輪が前記流体管の継手部において管径方向内方側に開口する隙間を通過する際に、この隙間の両側脇に位置する管内周面の少なくとも一方に当接して前記車輪の前記隙間への脱落を防止する脱落防止部材が装備されている点にある。
【0020】
上記特徴によれば、管径方向内方側に開口する隙間が形成されている流体管の継手部において、流体管内に搬入された円筒状本体における走行機構の車輪が当該隙間を通過する際に当該車輪が脱落してしまう可能性があっても、走行機構に装備された脱落防止部材がこの隙間の両側脇に位置する管内周面の少なくとも一方に当接して車輪の隙間への脱落を防止することができる。例えば、走行機構において車輪を配設した箇所よりも軸芯方向の中央部側に脱落防止部材を配設した場合には、円筒状本体が流体管内に搬入され管軸方向に沿って奥に進むことで車輪が隙間に脱落しそうになっても、脱落防止部材が当該隙間の後側脇に位置する管内周面に当接し、当該当接状態のまま、車輪が当該隙間の前側脇に位置する管内周面に当接することとなり、結果として、車輪及び脱落防止部材が隙間に脱落しない状態で、一対の環状止水バッグを流体管の継手部に対して軸芯方向の両側方に偏位した位置に配置することができる。
【0021】
本発明による第6の特徴構成は、前記走行機構及び前記径方向位置決め機構のそれぞれが、軸芯方向視で、前記円筒状本体の内径側部位における下半側部位において前記円筒状本体の軸芯を通る垂線に対して対称となる位置に、一対配設されている点にある。
【0022】
上記特徴によれば、走行機構とこの走行機構を円筒状本体に対して径方向に相対移動させる径方向位置決め機構とを組合せた構成が、円筒状本体の内径側部位における下半側部位において、円筒状本体の軸芯を通る垂線に対して対称となる位置に一対配設されているので、流体管内に円筒状本体を搬入した際、両径方向位置決め機構を適切に調整することにより、当該垂線に対して対称に配置された走行機構のそれぞれの車輪を流体管の管内周面に適切に当接させることができるとともに、仮に、流体管の管内径と円筒状本体の管内径とが若干異なる構成で両者の軸芯がずれている場合でも、さらに、両径方向位置決め機構を適切に調整することにより、両走行機構を円筒状本体に対して相対移動させて、流体管と円筒状本体との両軸芯を略一致させることができる。
従って、車輪を流体管の管内周面に確実に当接させ、かつ、円筒状本体と流体管との両軸芯を略一致させた状態で、環状止水バッグを拡径させて流体管の管内周面に周方向において均等に接触させ、確実に止水することができる。
【0023】
本発明による第7の特徴構成は、前記円筒状本体の端部における下部には、前記流体管内に搬入された前記円筒状本体を管軸方向に沿って走行操作可能な操作棒の取付部材が配設されている点にある。
【0024】
上記特徴によれば、円筒状本体の端部における下部に、流体管内に搬入された円筒状本体を管軸方向に沿って走行操作可能な操作棒の取付部材が配設されているので、円筒状本体の下半側部位に配設された一対の走行機構の近傍に、操作部及び取付部材を介して軸芯方向と同方向の操作力を作用させることができ、流体管内において円筒状本体を管軸方向に沿って小さな操作力で効率よく走行させることができる。
【0025】
本発明による第8の特徴構成は、前記環状止水バッグの断面形状が、縮径状態では、内径部分は直線状に形成され、外径部分は軸芯方向の両端部及び中央部が外径側に膨出し且つ両端部と中央部との間の部分が内径側に窪んだ略波形に形成され、内部に流体が注入された拡径状態では、外径部分は軸芯方向の両端部及び中央部並びに両端部と中央部との間の部分が前記縮径状態での外径よりも外径側に膨出した略円弧形状に形成されてなる点にある。
【0026】
上記特徴によれば、環状止水バッグの断面形状が、縮径状態において、内径部分は円筒状本体の軸芯方向と平行な直線状に形成されているので、当該内径部分の内径を円筒状本体の外周面におけるバッグ装着部位の装着凹部の外径よりも若干大径或いは同径に形成することにより、環状止水バッグをほぼ拡径させることなく、円筒状本体の端部から簡易且つ確実に装着凹部に外装させることができる。
また、環状止水バッグの断面形状が、縮径状態では、外径部分は軸芯方向の両端部及び中央部が外径側に膨出し且つ両端部と中央部との間の部分が内径側に窪んだ略波形に形成され、内部に流体が注入された拡径状態では、外径部分は軸芯方向の両端部及び中央部並びに両端部と中央部との間の部分が縮径状態での外径よりも外径側に膨出した略円弧形状に形成される。すなわち、環状止水バッグは、その断面形状が、縮径状態から拡径状態に移行する際に、円筒状本体の径方向における外径側に略円弧形状に膨出して流体管の管内周面と接触し止水するように構成され、一方で、環状止水バッグの軸芯方向の両端部側にはほとんど拡径しないように構成されている。そのため、環状止水バッグは拡径状態になるに連れて、主として径方向における外径側に効率良く膨出する指向性を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】水道管内の継手部に位置する水圧試験機を示す図2のI−I矢視図
【図2】水圧試験機の概略後面視図
【図3】水圧試験機の概略斜視図
【図4】水圧試験機の図2のIV−IV断面視図
【図5】水圧試験機の要部を示す概略断面図
【図6】水道管内を水圧試験機が走行する状態を示す説明図
【図7】走行機構の車輪近傍を示す拡大断面図
【図8】径方向位置決め機構の概略構成を示す説明図
【図9】環状止水バッグを拡径操作した状態を示す概略断面図
【図10】環状止水バッグの概略構成を示す断面図
【図11】環状密封空間内に水圧試験用の水を供給した状態を示す説明図
【図12】別実施形態に係る固定手段を示す説明図
【図13】別実施形態に係る固定手段を示す説明図
【図14】別実施形態に係る脱落防止手段を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1に示すように、本発明に係る水圧試験機Aが水密試験の対象とする鋳鉄管などの流体管の継手部Bは、例えば、水道管P1(流体管の一例)の挿口管部1とそれに嵌合接続される他の水道管P2(流体管の一例)の受口管部2とを接続する継手部Bである。この継手部Bには、挿口管部1の管外周面と受口管部2の管内周面2aとの間を密封可能で、当該管内周面2aにおいて管径方向外方側に拡径した円環状の弾性シール材装着用溝3に装着される円環状の合成ゴム製の弾性シール材4と、挿口管部1と受口管部2とが管軸X方向に沿って相対離脱移動したとき、管軸X方向から互いに接当してそれ以上の離脱移動を阻止する連結手段5とが設けられている。
【0029】
連結手段5を構成するに、受口管部2の管内周面2aに形成された円環状の取付け溝5aに、管軸X方向視において略Cの字状に形成された拡径側に弾性変形可能な金属製の係止部材5bと、これの拡径変形を許容する状態で係止部材5bを受口管部2と同軸心状態に保持する弾性保持リング5cとを装着するとともに、挿口管部1の管外周面の先端部には、地震や不等沈下等に起因して挿口管部1及び受口管部2が一定以上に相対離脱移動したとき、係止部材5bに対して管軸X方向から接当してそれ以上の挿口管部1及び受口管部2の相対離脱移動を阻止する円環状の抜止め突起5dが一体形成されている。
【0030】
水道管P1の管内周面1a及び水道管P2の受口管部2を除く管内周面2aは、それぞれ内径が略同径に形成され、管軸X方向に沿う方向において、水道管P1の挿口管部1における先端部の管内周面1aと水道管P2の管内周面2aのうち管径方向外方側に拡径する受口管部2の基端部の管内周面2aとの間には、管径方向内方側に開口する隙間Sが形成されている。この隙間Sを介して、水道管P1及び水道管P2の内部と弾性シール材4が装着される弾性シール材装着用溝3とが連通されている。
なお、特に限定するわけではないが、本実施形態では、両水道管P1,P2は400〜800mm程度の内径に形成され、当該両水道管P1,P2内に作業員が入って挿口管部1と受口管部2との継手部Bに配設される弾性シール材4の水密試験を行うことが困難な構成となっている。
【0031】
次に、図1〜図11に基づいて、本発明に係る水圧試験機Aについて説明する。
図1、図4、図11に示すように、水圧試験機Aには、水道管P1,P2内に搬入可能な円筒状本体10の外周面11の軸芯Y方向両側部に、水道管P1,P2の継手部Bの隙間Sに対して軸芯Y方向の両側方に偏位した管内周面1a,2aとの間をそれぞれ止水する状態にまで拡径操作可能な一対の環状止水バッグ20を配備するとともに、止水状態に拡径操作された両環状止水バッグ20と円筒状本体10の外周面11及び水道管P1,P2の管内周面1a,2aとで形成される環状密封空間V内に水圧試験用の水Wを供給する水供給部30を設けてある。詳細は後述するが、これにより、水圧試験機Aを用いて、隙間Sを介して弾性シール材4に連通する環状密封空間V内へ水供給部30からの水Wを供給して充填し水圧をかけることで、水道管P1,P2の継手部Bの水密状態を実現する弾性シール材4周辺からの漏水を検査することができる。
【0032】
以下、水圧試験機Aの各部の構成について説明する。
図1及び図2に示すように、水圧試験機Aは、金属製(本実施形態では、アルミ製)で中空の円筒状本体10を備え、円筒状本体10の外径は水道管P1,P2内に搬入可能に水道管P1,P2の内径よりも若干小径に形成されている。
図1及び図5に示すように、円筒状本体10の外周面11には、一対の環状止水バッグ20を外装可能な一対のバッグ装着部位11aが軸芯Y方向両側部に設けられ、両バッグ装着部位11aの軸芯Y方向中央側には端部側から外装される環状止水バッグ20の軸芯Y方向における最大挿入位置を画定する本体側鍔部11bがそれぞれ外径側に突出形成されるとともに、両バッグ装着部位11aの端部側境界箇所には後述する環状移動阻止体12の阻止体側鍔部12Aの内径よりも大径で、阻止体側鍔部12Aが軸芯Y方向から当接して環状移動阻止体12の最大挿入位置を画定する段部11cが形成され、また、当該段部11cよりも軸芯Y方向端部には環状移動阻止体12を外嵌可能な阻止体嵌合部位11dが形成され、さらに、本体側鍔部11bよりもさらに軸芯Y方向中央側には水供給部30の注水管31の取付部位11eが形成される。
【0033】
従って、円筒状本体10の外周面11には、円筒状本体10の両端部側から順に、阻止体嵌合部位11d、当該阻止体嵌合部位11dよりも段部11cの拡径代だけ拡径したバッグ装着部位11a、当該バッグ装着部位11aよりも拡径した本体側鍔部11b、本体側鍔部11bよりも縮径しバッグ装着部位11aよりも拡径した取付部位11eが形成されていることとなる。なお、阻止体嵌合部位11dには、環状移動阻止体12を脱着可能に外嵌状態(嵌合状態の一例)で固定するボルト13(固定手段の一例)を挿通可能な複数の挿通孔11f(本実施形態では6個)が、内径側から外径側に貫通するように形成されている。
【0034】
図1、図3〜図5に示すように、金属製(本実施形態では、アルミ製)で中空の円環状の環状移動阻止体12を備え、環状移動阻止体12には、円筒状本体10の両端部から円筒状本体10の外周面11における両阻止体嵌合部位11dにそれぞれ脱着可能に外嵌された状態で、環状止水バッグ20と軸芯Y方向で対面する部位に、外径側に突出する阻止体側鍔部12Aが形成されている。また、環状移動阻止体12の阻止体側鍔部12Aの外径は、水道管P1,P2内に搬入可能に水道管P1,P2の内径よりも若干小径に形成され、内径は、円筒状本体10の外周面11の段部11cの外径よりも小径で阻止体嵌合部位11dの外径と略同径に形成されている。そして、環状移動阻止体12が阻止体嵌合部位11dに外嵌されるに連れて、環状移動阻止体12の阻止体側鍔部12Aの内径よりも大径に形成された段部11cに、阻止体側鍔部12Aが軸芯Y方向から当接して環状移動阻止体12の最大挿入位置が画定されるとともに、環状移動阻止体12の内径側から外径側に貫通形成された複数の挿通孔12a(本実施形態では6個)が、阻止体嵌合部位11dの複数の挿通孔11fと合致する位置に位置合わせされる。これにより、ボルト13・ナット14により、環状移動阻止体12を円筒状本体10における所定の阻止体嵌合部位11dに確実に固定することができる。この際、両環状移動阻止体12の端部の端面及び円筒状本体10の両端部の端面は、管径方向に沿う方向に面一となるように確実に位置決めされる。なお、環状移動阻止体12としては、周方向で一つの部材の円環状部材で構成してもよく、周方向で複数の分割部材で構成してもよい。
【0035】
図9及び図10に示すように、環状止水バッグ20は、縮径状態では、断面形状が、内径部分22は直線状に形成され、外径部分23は軸芯Y方向の両端部23a及び中央部23bが外径側に膨出し且つ両端部23aと中央部23bとの間の部分23cが内径側に窪んだ略波形に形成される(図10(a)参照)。すなわち、縮径状態における環状止水バッグ20の内径部分22の内径は、円筒状本体10の外周面11における両バッグ装着部位11aの外径と略同径或いは若干大径として形成され、外径部分23の外径は、後述の装着凹部19に装着された状態で、本体側鍔部11b及び阻止体側鍔部12Aの外径よりも小さく或いは同等に設定されている。一方、環状止水バッグ20は、内部に圧縮空気(流体の一例)が注入された拡径状態では、断面形状が、内径部分22は直線状に形成され、外径部分23は軸芯Y方向の両端部23a及び中央部23b並びに両端部23aと中央部23bとの間の部分23cが縮径状態での外径よりも外径側に膨出した略円弧形状に形成される(図10(b)参照)。
【0036】
また、環状止水バッグ20は、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)からなるゴムで構成されており、断面視で、ゴムの厚みの中間位置近傍に繊維状又はメッシュ状の形状保持用の芯材24が内径部分22のみが二重となる状態で、その全周にわたって配設されているとともに、縮径状態における内径部分22のゴムの厚み及び中央部23bのゴムの厚みt1が他の部分の厚み(例えば、両端部23aや部分23cの厚みt2)よりも厚くなるように形成されている。これにより、環状止水バッグ20は、その断面形状が、縮径状態から拡径状態に移行する際に、円筒状本体10の径方向における外径側に略円弧形状に膨出して水道管P1,P2の管内周面1a,2aと接触し止水するように構成され、一方で、環状止水バッグ20の軸芯Y方向の両端部25側にはほとんど拡径しないように構成されている。そのため、環状止水バッグ20は拡径状態になるに連れて、主として径方向における外径側に効率良く膨出する指向性を備えている。なお、環状止水バッグ20の内径部分22には、バッグ内注入管33からの圧縮空気を環状止水バッグ20内に注入させる注入用金具21が取り付けられている。
【0037】
ここで、まず、円筒状本体10に環状止水バッグ20及び環状移動阻止体12を装着し固定する手順について説明する。
図5に示すように、軸芯Y方向に沿って円筒状本体10の外周面11における両端部から中央側に、環状止水バッグ20をほとんど拡径させることなく阻止体嵌合部位11d、段部11cを通過してバッグ装着部位11aに本体側鍔部11bと当接するまで外装する。この際、環状止水バッグ20の内径部分22に取り付けられた注入用金具21がバッグ装着部位11aに形成されたバッグ取付用開口18(図4参照)に挿入されるように、環状止水バッグ20をバッグ装着部位11aに外装させる。
【0038】
続いて、軸芯Y方向に沿って円筒状本体10の外周面11における両端部から中央側に、環状移動阻止体12を阻止体嵌合部位11dに阻止体側鍔部12Aの内径側が段部11cと当接するまで外嵌する。
そして、位置合わせされた状態の阻止体嵌合部位11dの挿通孔11f及び環状移動阻止体12の挿通孔12aに亘ってボルト13を挿通し、ナット14により締付け固定する。なお、円筒状本体10の端部において最下部に取り付けられるボルト13により、後述する操作棒40の取付部材15が環状移動阻止体12及び阻止体嵌合部位11dとともに締付け固定される。
【0039】
これにより、環状止水バッグ20の内径を、両バッグ装着部位11aの外径と略同径或いは若干大径として形成しても、環状止水バッグ20をほぼ拡径させない状態で、軸芯Y方向において円筒状本体10の端部から本体側鍔部11bに当接する両バッグ装着部位11aにまで、容易で迅速かつ確実に外装することができる。そして、環状止水バッグ20を円筒状本体10の端部からバッグ装着部位11aにまで外装させるに連れて、当該環状止水バッグ20は軸芯Y方向で本体側鍔部11bと当接し、所望の装着位置である最大挿入位置に確実に位置決めされることとなる。
また、両バッグ装着部位11aには、本体側鍔部11bと阻止体側鍔部12Aとにより区画される環状止水バッグ20の装着凹部19が形成される。そのため、装着凹部19に外装された環状止水バッグ20は、軸芯Y方向における中央側への移動は本体側鍔部11bとの当接により阻止され、端部側への移動は阻止体側鍔部12Aとの当接により阻止されることとなり、当該環状止水バッグ20を装着凹部19からの離脱を確実に阻止した状態でボルト13・ナット14により固定することができる。
さらに、装着凹部19に装着された環状止水バッグ20の縮径状態における外径が、本体側鍔部11b及び阻止体側鍔部12Aの外径よりも小さく或いは同等に設定されているので、縮径状態にある環状止水バッグ20の外径部分(外径側の先端部分)は、本体側鍔部11b及び阻止体側鍔部12Aの外径側部分からはみ出さず、装着凹部19内に確実に収容された状態となる。これにより、装着凹部19内に環状止水バッグ20が装着された円筒状本体10を、水道管P1,P2内に搬入して管軸X方向或いは管周方向に移動させたとしても、縮径状態にある環状止水バッグ20が水道管P1,P2の管内周面1a、2aに接触することがなく、環状止水バッグ20の損傷を防止することができる。
【0040】
水圧試験機Aの各部の構成をさらに説明する。
図1、図2、図4に示すように、円筒状本体10の端部における下部には、水道管P1,P2内に搬入された円筒状本体10を管軸X方向に沿って走行操作可能な操作棒40の取付部材15が配設されている。本実施形態では、図4に示すように、取付部材15は、概略L字形状のブラケットで構成され、当該ブラケットの一面に操作棒40の先端部外周に設けられた雄ねじ部40aを螺挿可能な雌ネジ部15aを備えており、操作棒40を軸芯Yに沿う方向に取付け及び取外し可能に構成され、ブラケットの他面に環状移動阻止体12を固定するボルト13を挿通可能な挿通孔15bを備えて構成される。そして、取付部材15は、軸芯Y方向視で円筒状本体10の軸芯Yを含む垂線上における円筒状本体10の下部に配設され、挿通孔15bが貫通形成されるブラケットの他面が円筒状本体10の内周面に当接する状態で、環状移動阻止体12とともにボルト13・ナット14により固定される。なお、操作棒40としては、水道管P1又は水道管P2の開口端部から円筒状本体10を継手部Bにまで走行操作可能な構成であれば、複数本の操作棒を適宜連結する構成や一本の操作棒とする構成、或いは伸縮可能な構造の操作棒等、適宜の構成を採用することができる。
【0041】
図1、図4、図9に示すように、円筒状本体10の取付部位11eには、内径側から外径側に貫通し下方に開口する注水管用開口16が形成され、この注水管用開口16の内径側に注水管31が水密に接続されるとともに、内径側から外径側に貫通し上方に開口する排気管用開口17が形成され、この排気管用開口17の内径側に排気管32が気密に接続されている。従って、水供給部30からの水圧試験用の水Wを注水管31及び注水管用開口16を介して環状密封空間V内に供給し、当該環状密封空間V内に存在する空気Q(場合によっては水W)を排気管用開口17及び排気管32を介して外部に排気可能に構成されている。なお、注水管用開口16と排気管用開口17は円筒状本体10の軸芯Yを含む垂線上で対向する位置(周方向において上部と下部)に配置されている。
【0042】
円筒状本体10の両バッグ装着部位11aには、内径側から外径側に貫通し、下方に開口するバッグ取付用開口18がそれぞれ形成され、このバッグ取付用開口18に挿通された注入用金具21にバッグ内注入管33が気密に接続されている。従って、圧縮空気供給部(図示せず)からの圧縮空気(図示せず)をバッグ内注入管33、注入用金具21及びバッグ取付用開口18を介して環状止水バッグ20内に供給し、環状止水バッグ20を縮径状態から拡径操作して拡径状態とし、或いは環状止水バッグ20内から圧縮空気を吸引し、拡径状態から縮径操作して縮径状態とすることが可能に構成されている。
【0043】
図1〜図3、図6及び図7に示すように、円筒状本体10を水道管P1,P2内の管軸X方向に沿って走行可能とする走行機構Cが、軸芯Y方向視で、円筒状本体10の内径側部位における下半側部位において軸芯Yを通る垂線に対して対称となる位置に、一対配設されている(図2参照)。
走行機構Cは、軸芯Y方向に長い長手部材からなる金属製(例えば、アルミ製)の板状本体50と、板状本体50の両端50Aに垂下状態で配設され、円筒状本体10を水道管P1,P2内の管軸X方向に沿って走行可能とする一対の車輪51と、板状本体50の両端50Aにおいて車輪51よりも軸芯Y方向の中央側に垂下状態で配設される一対の脱落防止部材52とを備えている。
車輪51及び脱落防止部材52は、円筒状本体10の両端部からそれぞれ延設配置させた状態でボルト53・ナット54により固定されている。
脱落防止部材52は、樹脂により構成されて、上方に形成された板状フランジ部が、ボルト53・ナット54により板状本体50に固定され、板状フランジ部の下方で一旦縮径し、さらに、下方に行くに連れて幅広となる概略台形に形成される。これにより、板状フランジ部と概略台形部分との間に、ボルト53・ナット54を螺合操作することができるスペースが確保されている。また、脱落防止部材52の概略台形部分の下端面52aは、水道管P1,P2の管内周面1a,2aと並行に形成され、その下端面52aが車輪51の下端よりも若干上方に位置するように配設され、車輪51が水道管P1,P2の継手部Bにおいて管径方向内方側に開口する隙間Sを通過する際に、この隙間Sの前方側脇S1,後方側脇S2に位置する管内周面1a,2aの少なくとも一方に当接して車輪51が隙間Sへ脱落することを防止するように構成される。
また、走行機構Cには、板状本体50の両端50Aに車輪51及び脱落防止部材52よりも中央側に、径方向位置決め機構Dによる走行機構Cの管径方向への相対移動を、円筒状本体10の両端部の端面10a及び両環状移動阻止体12の端部の端面12bに沿うように案内する一対のガイド部が、板状本体50の下面から径方向外方である下方に垂下する垂下部55として形成されている(図8参照)。
【0044】
図1、図2及び図8に示すように、走行機構Cを円筒状本体10に対して管径方向に相対移動可能とする一対の径方向位置決め機構Dが、軸芯Y方向視で、走行機構Cと円筒状本体10とに亘って、円筒状本体10の内径側部位(取付部位11eにおける内周面側)において軸芯Yを通る垂線に対して対称となる位置に、一対配設されている(図2参照)。
【0045】
径方向位置決め機構Dは、先端側が角筒形状に形成された角筒部分60aで、基端側が板状本体50の軸芯Y方向の中央部に形成された雌ねじ部56に螺挿され、円筒状本体10の内径側部位(取付部位11eにおける内周面側)に回転可能な状態で支持された雄ねじ部分60bを備えた雄ねじ棒軸60と、雄ねじ棒軸60の周方向両側方に位置し円筒状本体10の内径側部位(取付部位11eにおける内周面側)に固定支持される一対の支持部材61と、雄ねじ棒部60の先端側の角筒部分60aの下方の円筒部分を回転可能に上方に突出させた状態で軸支するように、支持部材61の上面同士をボルト62により連結固定される板状の連結部材63と、雄ねじ部分60bと円筒部分との間に雄ねじ棒軸60の外径側に突出形成され、連結部材63の下面と当接して雄ねじ棒軸60の径方向外方への抜け出しを防止する円板状部材64とを備えて構成される。
【0046】
次に、円筒状本体10に環状止水バッグ20及び環状移動阻止体12が装着固定された水圧試験機Aを、水道管P1、P2内に搬入して、継手部Bの水圧試験を行う手順について説明する。
【0047】
図6に示すように、例えば、水圧試験機Aを水道管P2の開口端部(図示せず)から水道管P2内に搬入して、水圧試験機Aの進行方向後側(図6の右側)において円筒状本体10の端部の下部に配設された取付部材15の雌ねじ部15aに操作棒40の雄ねじ部40aを螺合装着し、操作棒40を管軸X方向に押圧操作することにより、円筒状本体10を介して水圧試験機Aを管軸X方向に沿って継手部B近傍に向けて走行操作させる。この際、縮径状態にある環状止水バッグ20の外径部分(外径側の先端部分)は、本体側鍔部11b及び阻止体側鍔部12Aの外径側部分からはみ出さず、装着凹部19内に確実に収容された状態となり、水道管P1、P2の管内周面1a,2aに接触することがなく、環状止水バッグ20の損傷は防止されている。
【0048】
図7(a)に示すように、走行機構Cにおける進行方向前側(図6の左側)の車輪51が継手部Bにおける隙間Sの後方側脇S2を通過して隙間Sの上方に位置し、車輪51が隙間Sに脱落しそうになった際には、当該車輪51の後方に位置する脱落防止部材52が水道管P2の内周面2aに当接して、当該車輪51が隙間Sに脱落することが防止される。また、図7(b)に示すように、当該車輪51が隙間Sを通過して前方側脇S1に当接するまでは、当該車輪51の後方に位置する脱落防止部材52が水道管P2の内周面2aに当接している状態となり、当該車輪51が隙間Sに脱落することが防止される。従って、継手部Bにおける水道管P1,P2の内周面1a、2aにおいて径方向内方側に開口する隙間Sが形成されている場合でも、車輪51が脱落することなく、確実に当該隙間Sを通過することができる。また、脱落防止部材52の下端面52aが車輪51の下端よりも若干上方に位置するように配設されているので、隙間S以外の箇所を走行する際でも、脱落防止部材52によりその走行が阻害されることはない。
よって、操作棒40による走行操作により、車輪51を継手部Bの隙間Sを通過させ、水道管P1,P2の継手部Bに対して軸芯Y方向の両側方に偏位した位置に一対の環状止水バッグ20を位置させることができる。
【0049】
ここで、水道管P1,P2の継手部Bの隙間Sに対して、軸芯Y方向の両側方に偏移した位置に一対の環状止水バッグ20を位置させた状態では、円筒状本体10の軸芯Yと水道管P1,P2の管軸Xとがずれている場合がある。
そのため、水圧試験機Aを水道管P1、P2内に搬入する前又は搬入開始時において、一対の径方向位置決め機構DにハンドルHを装着しそれぞれハンドルHを適宜回転操作(図8(a)参照)して、各走行機構Cを円筒状本体10に対して相対移動させることで、軸芯Yと管軸Xとが略同芯状態となるように調芯する。
この際、走行機構Cには、径方向位置決め機構Dによる走行機構Cの管径方向への相対移動を、円筒状本体10の両端部の端面10a及び両環状移動阻止体12の端部の端面12bに沿うように案内する一対の垂下部55が配設されているので、軸芯Y方向における円筒状本体10の長さよりも長く形成され両端に車輪51を備えた走行機構Cが、当該円筒状本体10の両端部から車輪51を延設配置させた状態で管径方向に相対移動する場合において、軸芯Y方向において円筒状本体10の両端部より延出し走行機構Cの車輪51よりも中央側に位置する2箇所で、一対の垂下部55により走行機構Cを管径方向である両端面10a,12bに沿う方向に案内することができる。これにより、当該走行機構Cの長手方向を軸芯Y方向と略平行な状態に維持して傾動を防止し、走行機構Cに配設される両車輪51の両方を水道管P1,P2の管内周面1a,2aに当接させることが可能となる。また、一対の垂下部55は、軸芯Y方向において車輪51よりも中央側に配設されているので、走行機構Cの相対移動に伴って一対の垂下部55が車輪51等に当接することもない。
【0050】
次に、図9及び図10に示すように、バッグ内注入管33からの圧縮空気を注入用金具21を介して内径側から両環状止水バッグ20内に注入する。これに伴い、両環状止水バッグ20は、内径部分22及び両端部25は略拡径せずに、外径部分24のみが指向性を備えた状態で外径側に効率よく膨出し、円筒状本体10の外周面11の軸芯Y方向両側部に、水道管P1,P2の継手部Bに対して軸芯Y方向の両側方に偏位した管内周面1a,2aとの間をそれぞれ止水する状態にまで拡径操作され、止水状態に拡径操作された両環状止水バッグ20と円筒状本体10の外周面11及び水道管P1,P2の管内周面1a、2aとで環状密封空間Vを形成することができる。
【0051】
続いて、図11に示すように、両環状止水バッグ20を止水状態に拡径操作した状態で、両環状止水バッグ20と円筒状本体10の外周面11及び水道管P1,P2の管内周面1a,2aとで形成される環状密封空間V内に、水供給部30の注水管31から水圧試験用の水Wを供給して充填しつつ、当該環状密封空間V内から排気管32を介して空気Qを排気する。そして、当該環状密封空間V内に水Wが所定の水圧になるまで充填して、所定時間経過した後に、水道管P1,P2の継手部Bの水密状態を実現する弾性シール材4周辺からの漏水の有無を検査することができる。
【0052】
検査終了後、環状止水バッグ20内の圧縮空気を注入管33を介して排出し、環状止水バッグ20を縮径状態にして、水圧試験機Aを水道管P1,P2内を走行操作させて、外部に搬出する。
【0053】
〔別実施形態〕
(A)上記実施形態では、環状移動阻止体12を円筒状本体10の外周面11における阻止体嵌合部位11d(円筒状本体10の両端部の一例)に外嵌状態(嵌合状態の一例)でボルト13・ナット14(固定手段の一例)により固定したが、その他の構成を採用することもできる。
【0054】
例えば、図12に示すように、円筒状本体10の両端部に本体側鍔部11b及び環状止水バッグ20を装着するバッグ装着部位11aのみを形成し、段部11c及び阻止体嵌合部位11dを省略して、さらに、バッグ装着部位11aの内周面に雌ねじ部11gを形成し、環状移動阻止体12の外周部に当該雌ねじ部11gに螺合可能な雄ねじ部12cと当該雄ねじ部12cの端部側に阻止体側鍔部12Aを設ける構成としてもよい。これにより、環状移動阻止体12の雄ねじ部12cをバッグ装着部位11aの内周面の雌ねじ部11gに螺合させることで、両バッグ装着部位11aに外装された環状止水バッグ20の端部側への移動を阻止する環状移動阻止体12が、脱着可能に嵌合状態で固定手段の一例であるネジ連結構造により固定されてなる構成とすることができる。
【0055】
また、例えば、図13に示すように、円筒状本体10の両端部に本体側鍔部11b、環状止水バッグ20を装着するバッグ装着部位11a、段部11c、阻止体嵌合部位11dを形成し、当該阻止体嵌合部位11dよりも端部側に、外径方向視で、周方向の一方に開口する概略コ字形状の被嵌合部11hが形成され、さらに、環状移動阻止体12における環状止水バッグ20と軸芯Y方向で対面する部位に、外径側に突出する環状の阻止体側鍔部12Aを設け、阻止体側鍔部12Aの端部側には、断面視で、逆T字形状の嵌合部12dを設けるいわゆるバヨネット構造としてもよい。これにより、軸芯Y方向に環状移動阻止体12の阻止体側鍔部12Aを段部11cに当接するまで移動させて阻止体嵌合部位11dに外嵌させ、この状態で、環状移動阻止体12を周方向に回転させて、逆T字形状の嵌合部12dを阻止体嵌合部位11dよりも端部側に形成された概略コ字形状の被嵌合部11hに嵌合させることで、両バッグ装着部位11aに外装された環状止水バッグ20の端部側への移動を阻止する環状移動阻止体12が、脱着可能に嵌合状態で固定手段の一例であるバヨネット構造により固定されてなる構成とすることができる。
【0056】
(B)上記実施形態では、脱落防止部材52の下端面52aが、水道管P1,P2の管内周面1a、2aと平行となるように形成したが、例えば、図14に示すように、当該下端面を板状本体50の両端50A側ほど管内周面1a,2aから離間するテーパ面52bとすることもできる。この際の傾斜角度αは、管内周面1a,2aに対して、例えば、1°〜5°程度、好ましくは3°程度に設定することで、隙間Sの前方側脇S1や後方側脇S2を乗り越え易くなる。
【0057】
(C)上記実施形態では、走行機構Cの板状本体50の両端50Aにおいて軸芯Y方向において端部側に車輪51を配設し、中央部側に脱落防止部材52を配設したが、例えば、図14に示すように、中央部側に車輪51を配設し、端部側に脱落防止部材52を配設してもよい。
また、脱落防止部材52を、軸芯Y方向に長い橇状の部材とすることもでき、この場合、板状本体50に対して周方向に偏倚した箇所に配置することもできる。
【0058】
(D)上記実施形態では、環状止水バッグ20内に圧縮空気を注入したが、環状止水バッグを良好に縮径状態と拡径状態とに変更操作できる構成であれば、注入する流体としては空気等の気体であっても、水等の液体であってもよい。
【0059】
(E)上記実施形態では、走行機構C及び径方向位置決め機構Dを、軸芯Y方向視で、軸芯Yを含む垂線に対して対称となる位置にそれぞれ一対配設したが、円筒状本体10を水道管P1,P2内で管軸X方向に沿って走行させることができ、管軸X及び軸芯Yを略同芯の調芯できる構成であれば、それぞれ一つだけであっても、それぞれ三つ以上配設する構成であってもよく、また、当該垂線に対して対称に配設されていなくてもよい。
【0060】
(F)上記実施形態では、流体管として水道管P1及び水道管P2を対象とし、継手部Bとして挿口管部1及び受口管部2の嵌合接続箇所における弾性シール材4の水密状態を検査したが、例えば、流体管としてその他の流体を通流可能なガス管等を対象とし、また、例えば、継手部Bとして、フランジ接続箇所における弾性シール材の水密状態を検査したり、挿口管部1及び受口管部2の嵌合接続箇所における弾性シール材が押し輪により押圧固定される構成において、当該弾性シール材の水密状態を検査する構成とすることもできる。
【0061】
(G)上記実施形態では、水圧試験機Aを人為力による押し引き操作で走行させるように構成したが、モータやエンジン等の駆動手段で自走させる構成とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上説明したように、環状止水バッグの損傷を防止しながら円筒状本体のバッグ装着部位に簡便、迅速且つ確実に外装して固定でき、しかも、環状止水バッグの外装及び固定構造を簡易な構造とし得る水圧試験機を提供することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 挿口管部
1a 管内周面
2 受口管部
2a 管内周面
4 弾性シール材
10 円筒状本体
10a 端面
11 外周面
11a バッグ装着部位
11b 本体側鍔部
11c 段部
11d 阻止体嵌合部位
12 環状移動阻止体
12A 阻止体側鍔部
12b 端面
15 取付部材
15a 雌ネジ部
19 装着凹部
20 環状止水バッグ
22 内径部分
23 外径部分
30 水供給部
40 操作棒
40a 雄ねじ部
50 板状本体
50A 両端
51 車輪
52 脱落防止部材
55 垂下部(ガイド部)
A 水圧試験機
B 継手部
C 走行機構
D 径方向位置決め機構
P1 水道管(流体管)
P2 他の水道管(流体管)
S 隙間
S1 前方側脇
S2 後方側脇
X 管軸(流体管)
Y 軸芯(円筒状本体)
V 環状密封空間
W 水圧試験用の水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管内に搬入可能な円筒状本体の外周面の軸芯方向両側部に、前記流体管の継手部に対して軸芯方向の両側方に偏位した管内周面との間をそれぞれ止水する状態にまで拡径操作可能な一対の環状止水バッグを配備するとともに、前記止水状態に拡径操作された両環状止水バッグと前記円筒状本体の外周面及び前記流体管の管内周面とで形成される環状密封空間内に水圧試験用の水を供給する水供給部を設けてある水圧試験機であって、
前記円筒状本体の外周面における両バッグ装着部位の軸芯方向中央側には、端部側から外装される前記環状止水バッグの軸芯方向における最大挿入位置を画定する本体側鍔部がそれぞれ外径側に突出形成され、前記両バッグ装着部位の端部側には、前記両バッグ装着部位に外装された前記環状止水バッグの端部側への移動を阻止する環状移動阻止体が脱着可能に嵌合状態で固定手段により固定されてなる水圧試験機。
【請求項2】
前記環状移動阻止体における前記環状止水バッグと軸芯方向で対面する部位に、外径側に突出する阻止体側鍔部が形成され、前記円筒状本体の外周面における両バッグ装着部位には、前記本体側鍔部と前記阻止体側鍔部とにより区画される前記環状止水バッグの装着凹部が形成され、前記装着凹部に装着された前記環状止水バッグの縮径状態における外径が前記本体側鍔部及び前記阻止体側鍔部の外径よりも小さく或いは同等に設定されている請求項1に記載の水圧試験機。
【請求項3】
前記円筒状本体の外周面における前記両バッグ装着部位の端部側境界箇所には、前記環状移動阻止体の阻止体側鍔部の内径よりも大径で、前記阻止体側鍔部が軸芯方向から当接して前記環状移動阻止体の最大挿入位置を画定する段部が形成されてなる請求項2に記載の水圧試験機。
【請求項4】
前記円筒状本体を前記流体管内の管軸方向に沿って走行可能とする車輪を両端に備えた走行機構が、前記円筒状本体の両端部からそれぞれ車輪を延設配置させた状態で前記円筒状本体の内径側部位に配設され、前記走行機構を前記円筒状本体に対して管径方向に相対移動可能とする径方向位置決め機構が、前記走行機構と前記円筒状本体とに亘って配設され、前記走行機構には、前記径方向位置決め機構による前記走行機構の管径方向への相対移動を、前記円筒状本体の両端部の端面及び前記両環状移動阻止体の端部の端面に沿うように案内する一対のガイド部が、前記車輪よりも中央側に配設されている請求項2又は3に記載の水圧試験機。
【請求項5】
前記走行機構には、前記車輪が前記流体管の継手部において管径方向内方側に開口する隙間を通過する際に、この隙間の両側脇に位置する管内周面の少なくとも一方に当接して前記車輪の前記隙間への脱落を防止する脱落防止部材が装備されている請求項4に記載の水圧試験機。
【請求項6】
前記走行機構及び前記径方向位置決め機構のそれぞれが、軸芯方向視で、前記円筒状本体の内径側部位における下半側部位において前記円筒状本体の軸芯を通る垂線に対して対称となる位置に、一対配設されている請求項4又は5に記載の水圧試験機。
【請求項7】
前記円筒状本体の端部における下部には、前記流体管内に搬入された前記円筒状本体を管軸方向に沿って走行操作可能な操作棒の取付部材が配設されている請求項6に記載の水圧試験機。
【請求項8】
前記環状止水バッグの断面形状が、縮径状態では、内径部分は直線状に形成され、外径部分は軸芯方向の両端部及び中央部が外径側に膨出し且つ両端部と中央部との間の部分が内径側に窪んだ略波形に形成され、内部に流体が注入された拡径状態では、外径部分は軸芯方向の両端部及び中央部並びに両端部と中央部との間の部分が前記縮径状態での外径よりも外径側に膨出した略円弧形状に形成されてなる請求項2〜7の何れか一項に記載の水圧試験機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−40866(P2013−40866A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178504(P2011−178504)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(501492487)
【出願人】(397012923)大成機工株式会社 (16)
【Fターム(参考)】