説明

水晶発振器

【課題】 水晶振動子のリード端子と回路基板との熱膨張係数の差によって起こる導通不良を防止でき、耐ヒートサイクル性能を向上させることができる発振器を提供する。
【解決手段】 ハーメチックベース2に水晶片10が搭載され、カバー1が付されてハーメチックベース2からリード端子3が引き出された水晶振動子が、基板5上に搭載され、基板5の一方の面にはパターン配線6が形成されると共に、基板5にはリード端子3に対応する位置に貫通孔が形成され、基板5の貫通孔に水晶振動子のリード端子3が挿入された状態で基板5の他方の面とハーメチックベース2とが接着剤8で固定され、基板5の一方の面に突出したリード端子3に、電線材9の一端が接続され、電線材9の他端がパターン配線6に接続される発振器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスエポキシ樹脂の回路基板に水晶振動子が搭載される水晶発振器に係り、特に、水晶振動子のリード端子と回路基板のパターン配線との接続で導通不良の発生を抑え、耐ヒートサイクル性能を向上させた水晶発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の水晶発振器:図4]
従来、水晶発振器において、ガラスエポキシ樹脂を回路基板に使用したものがある。
従来の水晶発振器について図4を参照しながら説明する。図4は、従来の水晶発振器の断面説明図である。
従来の水晶発振器は、図4に示すように、ガラスエポキシ樹脂を回路基板(基板)5上に、カバー1、ハーメチックベース2、リード端子3、水晶片10を有する円柱形の水晶振動子が搭載される。
【0003】
カバー1は、水晶片10を覆うように形成されている。
ハーメチックベース2は、スチール又はステンレス製で、水晶片10を搭載する。
ハーメチックベース2には、リード端子3を貫通させる貫通孔が形成されている。貫通孔の周囲はガラス4で形成されている。
【0004】
リード端子3は、ハーメチックベース2の貫通孔を貫通して水晶片10の電極に接続している。
更に、リード端子3は、基板5に形成された貫通孔に差し込まれる。
基板5の貫通孔の周辺にはパターン配線6が形成されており、リード端子3と半田7で接続、固定されるようになっている。これにより、水晶振動子が基板5に固定される。
【0005】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開平06−337229号公報「温度検出素子及び応用素子」(株式会社トーキン)[特許文献1]、特開平08−170917号公報「角度センサ」(日本電装株式会社)[特許文献2]がある。
【0006】
特許文献1には、薄膜感温抵抗素子が超弾性合金線材によってステム上に保持され、薄膜感温抵抗素子の電極部はステムに保持されたリード線と細線によって電気的に接続されることが示されている。
【0007】
特許文献2には、音叉型振動子が基台の表面に対向する面を除く面に、圧電素子が形成され、それら圧電素子とリードピンとが金属細線にて接続される角速度センサが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平06−337229号公報
【特許文献2】特開平08−170917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の発振器では、円柱形の水晶振動子を使用した構成において、水晶振動子のリード端子と回路基板との熱膨張係数の差から、ヒートサイクルが生じる使用環境において実装半田に歪みが集中し、半田にクラックが生じるという問題点があった。
部品の性能から水晶振動子の種類を変更できない水晶発振器もあり、円柱型水晶振動子を使用しなければならない場合も多い。
【0010】
特に、恒温槽付水晶発振器(OCXO:Oven Controlled Crystal Oscillator)では、電源のオン/オフが繰り返される使用環境では周囲温度から恒温槽制御温度(例えば85℃)までの温度変化が、電源オン/オフ毎に加わるため、半田にクラックが生じ、長期信頼性に問題があった。
【0011】
尚、特許文献1,2では、水晶振動子のハーメッチクベースと基板とを接着剤で固定しつつ、基板の貫通孔にリード端子が挿入され、突出したリード端子を基板裏面でパターン配線に電線材で接続することにより、リード端子と基板との熱膨張係数の差によって起こる導通不良を防止することについては考慮されていない。
【0012】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、水晶振動子のリード端子と回路基板との熱膨張係数の差によって起こる導通不良を防止でき、耐ヒートサイクル性能を向上させることができる発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、ハーメチックベースに水晶片が搭載され、カバーが付されてハーメチックベースからリード端子が引き出された水晶振動子が、基板上に搭載される発振器であって、基板の一方の面にはパターン配線が形成されると共に、基板にはリード端子に対応する位置に貫通孔が形成され、基板の貫通孔に水晶振動子のリード端子が挿入された状態で基板の他方の面とハーメチックベースとが接着剤で固定され、基板の一方の面に突出したリード端子に、電線材の一端が接続され、電線材の他端がパターン配線に接続されていることを特徴とする。
【0014】
本発明は、上記発振器において、電線材の一端は、リード端子に巻き付けられて半田で固定され、電線材の他端は、パターン配線に半田で固定されていることを特徴とする。
【0015】
本発明は、上記発振器において、水晶振動子にベース端子が設けられ、基板にはベース端子に対応する位置に貫通孔が形成されると共に、貫通孔の周辺にパターン配線が形成され、基板の貫通孔に水晶振動子のベース端子が挿入された状態で、基板の一方の面から貫通孔周辺のパターン配線とベース端子とが半田で固定されていることを特徴とする
【0016】
本発明は、上記発振器において、水晶振動子にベース端子が設けられ、基板にはベース端子に対応する位置に貫通孔が形成されると共に、ベース端子に対応するパターン配線が基板の一方の面に形成され、基板の一方の面に突出したベース端子に、電線材の一端が接続され、電線材の他端がパターン配線に接続されていることを特徴とする。
【0017】
本発明は、上記発振器において、電線材の一端が、ベース端子に巻き付けられて半田で固定され、電線材の他端が、パターン配線に半田で固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ハーメチックベースに水晶片が搭載され、カバーが付されてハーメチックベースからリード端子が引き出された水晶振動子が、基板上に搭載される発振器であって、基板の一方の面にはパターン配線が形成されると共に、基板にはリード端子に対応する位置に貫通孔が形成され、基板の貫通孔に水晶振動子のリード端子が挿入された状態で基板の他方の面とハーメチックベースとが接着剤で固定され、基板の一方の面に突出したリード端子に、電線材の一端が接続され、電線材の他端がパターン配線に接続される発振器としているので、水晶振動子のリード端子と基板との熱膨張係数の差によって起こる導通不良を防止でき、耐ヒートサイクル性能を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の発振器の断面説明図である。
【図2】第2の発振器の断面説明図である。
【図3】第3の発振器の断面説明図である。
【図4】従来の水晶発振器の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る発振器は、ハーメチックベースに水晶片が搭載され、カバーが付されてハーメチックベースからリード端子が引き出された水晶振動子が、基板上に搭載される発振器であり、更に、基板の一方の面にはパターン配線が形成されると共に、基板にはリード端子に対応する位置に貫通孔が形成され、基板の貫通孔に水晶振動子のリード端子が挿入された状態で基板の他方の面とハーメチックベースとが接着剤で固定され、基板の一方の面に突出したリード端子に、電線材の一端が接続され、電線材の他端がパターン配線に接続されるものであり、水晶振動子のリード端子と基板との熱膨張係数の差によって起こる導通不良を防止でき、耐ヒートサイクル性能を向上させることができるものである。
【0021】
[第1の発振器:図1]
本発明の第1の実施の形態に係る発振器(第1の発振器)について図1を参照しながら説明する。図1は、第1の発振器の断面説明図である。
第1の発振器は、図1に示すように、ガラスエポキシ樹脂を回路基板(基板)5上に、カバー1、ハーメチックベース2、リード端子3、水晶片10を有する円柱形の水晶振動子が搭載される。
【0022】
基板5のガラスエポキシ樹脂の材質として、CEM−3(Composite Epoxy Material 3)又はFR−4(Flame Retardant Type 4)等を用いる。
CEM−3は、ガラスエポキシ基板のことで、ガラス繊維とエポキシ樹脂を混合した板をベースとしたものである。
FR−4は、ガラスエポキシ基板のことで、ガラス繊維で編んだ布にエポキシ樹脂を含浸させた板をベースにしたものである。
【0023】
カバー1は、水晶片10を覆うように形成されている。
ハーメチックベース2は、スチール又はステンレス製で、水晶片10を搭載する。
また、ハーメチックベース2には、リード端子3を貫通させる貫通孔が形成され、その貫通孔の周囲はガラス4で形成されている。
【0024】
リード端子3は、ハーメチックベース2の貫通孔を貫通して水晶片10の電極に接続している。図1では、2本のリード端子3を示している。
更に、リード端子3は、基板5に形成された貫通孔に差し込まれる。
【0025】
基板5の貫通孔は、リード端子3の直径より大きく形成されており、リード端子3が基板5に挿入できるようになっている。
そして、ハーメチックベース2は、接着剤8により基板5に固定される。
接着剤8は、絶縁性の接着剤であり、リード端子3の部分を除いて基板5とハーメチックベース2の接触面全体に塗布される。
【0026】
基板5の裏面(水晶振動子が搭載される面とは反対側の面)にパターン配線6が形成されており、リード端子3に巻き付けた電線材9がパターン配線6に接続している。
また、電線材9のリード端子3に巻き付けた部分(一方の端部)は半田7で固定され、更に、電線材9の他方の端部もパターン配線6に半田7で固定されている。
そして、電線材9によるリード端子3とパターン配線6との接続は、実際の距離よりも長い線を用いて余裕をもたせている。
【0027】
第1の発振器は、図4で示した従来の発振器と比べて、基板5のパターン配線6にリード端子3が半田を介して接続せず、余裕を持った長さの電線材9で接続するようにしているので、リード端子3と基板5との熱膨張係数の差があっても、リード端子3とパターン配線6とが導通不良となることがない。
【0028】
[第1の発振器の製造方法]
第1の発振器は、基板5の裏面にパターン配線6を形成し、基板5に必要な貫通孔を形成しておく。
そして、水晶振動子のハーメチックベース2と基板5との間の部分に接着剤8を塗布して、貫通孔に水晶振動子のリード端子3を挿入して水晶振動子と基板5を接着・固定する。
更に、基板5の裏面に突出したリード端子3に電線材9を巻き付け、他端を基板5の裏面に形成されたパターン配線6に接続し、電線材9とパターン配線6を半田7で固定すると共に、電線材9とリード端子3の接続部分を半田7で固定する。
【0029】
[第2の発振器:図2]
本発明の第2の実施の形態に係る発振器(第2の発振器)について図2を参照しながら説明する。図2は、第2の発振器の断面説明図である。
第2の発振器は、図2に示すように、基本的には第1の発振器と同様であり、相違するのは、水晶振動子にベース端子11が設けられている点である。
【0030】
ベース端子11は、水晶振動子をグランドレベルに接続するための端子であり、通常、ハーメチックベース2に溶接されている。
ベース端子11は、水晶振動子の周波数特性に影響が少ない端子であるため、基板5の貫通孔の周辺に形成されたパターン配線6に半田7を介して接続している。
【0031】
第2の発振器は、ハーメチックベース2に溶接されたベース端子11を基板5の貫通孔の周辺に形成されたパターン配線6に半田7で固定・接続しているので、ハーメチックベース2の中央部分で水晶振動子を基板5に早く強固に接着・固定できるものである。
【0032】
[第2の発振器の製造方法]
第2の発振器は、基板5の裏面にパターン配線6を形成し、基板5に必要な貫通孔を形成しておく。また、ベース端子11に対応する貫通孔の周辺にもパターン配線6を形成しておく。
そして、水晶振動子のハーメチックベース2と基板5との間の部分に接着剤8を塗布して、貫通孔に水晶振動子のリード端子3とベース端子11を挿入して水晶振動子と基板5を接着・固定する。
【0033】
更に、基板5の裏面からベース端子11が貫通した貫通孔周辺を半田7で固定し、ベース端子11をパターン配線6に接続する。
そして、基板5の裏面に突出したリード端子3に電線材9を巻き付け、他端を基板5の裏面に形成されたパターン配線6に接続し、電線材9とパターン配線6を半田7で固定すると共に、電線材9とリード端子3の接続部分を半田7で固定する。
【0034】
[第3の発振器:図3]
本発明の第3の実施の形態に係る発振器(第3の発振器)について図3を参照しながら説明する。図3は、第3の発振器の断面説明図である。
第3の発振器は、図3に示すように、基本的には第2の発振器と同様であり、相違するのは、ベース端子11と基板5のパターン配線6との接続を、リード端子3と同様の構成にした点である。
【0035】
つまり、第3の発振器では、ベース端子11を基板5の貫通孔に挿入し、貫通させ、基板5の裏面に突出したベース端子11に電線材9の一端を巻き付け、電線材9の他端を、余裕を持たせてパターン配線6に接続している。
電線材9のベース端子11への巻き付け部分とパターン配線6への接続部分は、半田7で接続している。
【0036】
第3の発振器は、第2の発振器と比べて、ベース端子11がリード端子3と同様の方法でパターン配線6に接続しているので、同一の工程で製造することができ、製造を容易にできるものである。
更に、ベース端子11についても、ベース端子11と基板5との熱膨張係数の差があっても、ベース端子11とパターン配線6とが導通不良となることがない。
【0037】
[第3の発振器の製造方法]
第3の発振器は、基板5の裏面にパターン配線6を形成し、基板5に必要な貫通孔を形成しておく。
そして、水晶振動子のハーメチックベース2と基板5との間の部分に接着剤8を塗布して、貫通孔に水晶振動子のリード端子3及びベース端子11を挿入して水晶振動子と基板5を接着・固定する。
更に、基板5の裏面に突出したリード端子3及びベース端子11に電線材9を巻き付け、他端を基板5の裏面に形成されたパターン配線6に接続し、電線材9とパターン配線6を半田7で固定すると共に、電線材9とリード端子3の接続部分、電線材9とベース端子11の接続部分を半田7で固定する。
【0038】
[実施の形態の効果]
第1の発振器によれば、基板5のパターン配線6にリード端子3が、余裕を持った長さの電線材9で接続するようにしているので、リード端子3と基板5との熱膨張係数の差があっても、リード端子3とパターン配線6とが導通不良となることがなく、耐ヒートサイクル性能を向上できる効果がある。
【0039】
第2の発振器によれば、第1の発振器の効果に加えて、ハーメチックベース2に溶接されたベース端子11を基板5の貫通孔の周辺に形成されたパターン配線6に半田7で固定・接続しているので、ハーメチックベース2の中央部分で水晶振動子を基板5に早く強固に接着・固定できる効果がある。
【0040】
第3の発振器によれば、第1の発振器の効果に加えて、ベース端子11がリード端子3と同様の方法でパターン配線6に接続しているので、同一の工程で製造することができ、製造を容易にできる効果があり、更に、ベース端子11についても、ベース端子11と基板5との熱膨張係数の差があっても、ベース端子11とパターン配線6とが導通不良とならない効果がある。
【0041】
第1〜3の発振器は、OCXOに適用することで、より効果的である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、水晶振動子のリード端子と回路基板との熱膨張係数の差によって起こる導通不良を防止でき、耐ヒートサイクル性能を向上させることができる発振器に好適である。
【符号の説明】
【0043】
1...カバー、 2...ハーメチックベース、 3...リード端子、 4...ガラス、 5...基板、 6...パターン配線、 7...半田、 8...接着剤、 9...電線材、 10...水晶片、 11...ベース端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハーメチックベースに水晶片が搭載され、カバーが付されて前記ハーメチックベースからリード端子が引き出された水晶振動子が、基板上に搭載される発振器であって、
前記基板の一方の面にはパターン配線が形成されると共に、前記基板には前記リード端子に対応する位置に貫通孔が形成され、
前記基板の貫通孔に前記水晶振動子のリード端子が挿入された状態で前記基板の他方の面と前記ハーメチックベースとが接着剤で固定され、
前記基板の一方の面に突出したリード端子に、電線材の一端が接続され、前記電線材の他端が前記パターン配線に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項2】
電線材の一端は、リード端子に巻き付けられて半田で固定され、前記電線材の他端は、パターン配線に半田で固定されていることを特徴とする請求項1記載の発振器。
【請求項3】
水晶振動子にベース端子が設けられ、
基板には前記ベース端子に対応する位置に貫通孔が形成されると共に、前記貫通孔の周辺にパターン配線が形成され、
前記基板の貫通孔に前記水晶振動子のベース端子が挿入された状態で、前記基板の一方の面から前記貫通孔周辺のパターン配線と前記ベース端子とが半田で固定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の発振器。
【請求項4】
水晶振動子にベース端子が設けられ、
基板には前記ベース端子に対応する位置に貫通孔が形成されると共に、前記ベース端子に対応するパターン配線が前記基板の一方の面に形成され、
前記基板の一方の面に突出したベース端子に、電線材の一端が接続され、前記電線材の他端が前記パターン配線に接続されていることを特徴とする請求項1又は2記載の発振器。
【請求項5】
電線材の一端が、ベース端子に巻き付けられて半田で固定され、前記電線材の他端が、パターン配線に半田で固定されていることを特徴とする請求項4記載の発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−205094(P2012−205094A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68066(P2011−68066)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】