説明

水溶性ジテルペンの調製方法およびその適用

可溶化剤として適当に置換されたシクロデキストリンを用いて、約6%濃度までのジテルペン、例えばフォルスコリン、その同族物質、アナログおよび誘導体の水溶液を調製する。シクロデキストリン不在下では、いくつかのジテルペン、例えばフォルスコリンは水に約0.001%の濃度までしか溶解しない。フォルスコリンおよび同族物質などのジテルペンを含有する医薬用、化粧用、栄養補給食品用の調製物として、かかる水溶液の局所用および全身用の適用が見出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水に難溶性かまたは不溶性であるジテルペン、例えばフォルスコリンの、約6%までの濃度の水溶液の調製について記載する。可溶化剤として適当に置換されたシクロデキストリンを用いてこれらの溶液を調製する。シクロデキストリンの不在下では、フォルスコリンはほとんど水に不溶性であり、約0.001%の濃度の溶液しか生じない。より多量の活性成分を含有するフォルスコリンおよび/またはその同族物質の水溶液を局所的および全身的に使用して多様な健康上の利点を提供することができる。
【背景技術】
【0002】
特定の活性医薬用成分は水または水性ビヒクルに本質的に不溶性または難溶性である。その意図される使用に水または水性ビヒクルでの適用が必要となり得ることが頻繁にある。安定な形態でかかる水に不溶性の活性医薬用成分の治療上活性な濃度を達成することが積極的に追求されてきている。水に不溶性である活性医薬用成分の分子構造操作の技術を適用できるが、水溶性を促進する構造的特徴を組み込むことは、意図される望ましい薬理学的特性の減衰または変化に至る可能性がある。従って、その元来の構造形態で、その他の手段により活性成分を可溶化する方法を考案するのが恐らく最も望ましい。
【0003】
薬物の水溶性は多様な角度から望ましい特徴である。標準的な技術、例えば濾過等により水性処方を滅菌し、かかる調製物を全身投与に適したものにする。水性調製物はまた皮膚科、婦人科、耳科、鼻科および粘膜への適用に好ましい。薬物の水性の眼科用調製物がとりわけ有用である。
【0004】
フォルスコリン(CAS番号66575−29−9)はコレウス・フォルスコリに由来する天然発生のラブダン型ジテルペンである(非特許文献1)。これはいくつかの望ましい薬理学的特性を有している。
【0005】
フォルスコリンは陽性変力作用、抗高血圧作用、および気管支鎮痙活性を示す。(非特許文献2)
【0006】
これは眼内圧を低下させる(非特許文献3,非特許文献4,非特許文献5,非特許文献6,非特許文献7,非特許文献8,非特許文献9,非特許文献10)。
【0007】
アデニル酸シクラーゼの強力な非アドレナリン作動性刺激要因であるフォルスコリンの使用により、ヒトの眼におけるアデニル酸シクラーゼ刺激の効果の非侵襲性の研究が可能になった。すなわち房水動態においてサイクリックAMP生成を増加させた。眼内圧の低下、流入の低下、および流出能力の未変化の結果に基づいて、この研究の著者は、これらの観察が、活性毛様体上皮アデニル酸シクラーゼレセプター複合体が正味の水の流入を低下させることができるという考えを支持すると主張した(非特許文献11)。
【0008】
その他の報告は、フォルスコリンの硝子体内注射または局所投与は、流出能力を全く上昇させずに、水流入を低下させることによりウサギの眼内圧を有意に低下させることを示した。健常者ボランティアにおけるフォルスコリン懸濁液の局所適用は流出能力を変化させずに眼内圧および水流の有意な低下を引き起こした(非特許文献12)。
【0009】
フォルスコリン点眼剤(0.3%−0.6%−1.0%)の二重盲検個体間比較を18人の健常男性対象(各群6人)において行った。この研究により、フォルスコリン点眼剤0.3%−0.6%−1.0%が健常男性対象の眼内圧を低下させることが実証された。眼内圧の低下は23から28%の間であり、そして効果の持続期間は濃度に従って3から5時間まで延長された(非特許文献13)。
【0010】
研究者の別のグループは開放隅角緑内障の成人患者においてフォルスコリン点眼剤を用いた2つの研究を報告した。1つの研究では26人の患者が含まれた(プラセボ群なし)。第2の研究では、11人の緑内障患者がフォルスコリンを投与された。研究1では、眼内圧が低下し、これは1時間から4時間まで認められた。研究2では、フォルスコリンは6時間まで眼内圧を低下させた。プラセボ群では眼内圧に変化はなかった。これらの研究では、カルボキシルメチルセルロース中のフォルスコリン1%懸濁液を使用した(非特許文献14)。
【0011】
cAMPのレベルを上昇させることにより、多様な生物学的活性が観察され、そして結果的にタンパク質キナーゼが活性化された。かかる特性により、フォルスコリンの非常に多くの用途が導かれる。かかる活性のために、フォルスコリンの生理学的特性を扱う1500以上の引用文献が2001年のケミカルアブストラクト(Chemical Absracts)に登場した。しかしながら、フォルスコリンは水に非常に不溶性である。
【0012】
水溶性であるようなフォルスコリンの誘導体を作製するために、フォルスコリンの分子操作に関して集中的な努力が為されている。かかる試みはいつも、半ば成功、半ば失敗を経験している(非特許文献15,非特許文献16)。
【0013】
薬物分子構造の化学的操作の代替として、誘導体化されない薬物の水中での溶解性を増強する物理化学的技術が用いられている。注目される技術には表面活性成分を用いるミセル可溶化が含まれ、これは薬物を含有する水溶性ミセルを形成する。別の関連する技術は薬物分子とホスト分子との複合化である。ホスト分子は通常水中で良好な溶解性を有する分子である。ホスト分子は薬物分子と何ら共有結合を形成しないが、非共有結合性相互作用により弱い複合体を形成し、そして(複数の)ホスト分子が(複数の)薬物分子を水溶液中に留める。
【0014】
シクロデキストリンは有用な医薬用賦形剤として認識されている環状オリゴ糖である。一般的なシクロデキストリンは環状オリゴ糖構造のグルコース分子の数に依存して、α−、β−、γ−およびδ−シクロデキストリンと称されている。これらのシクロデキストリンは、比較的疎水性の中心腔および親水性の外表面を含有するα−D−グルコピラノースの(α−1,4)−連結されたオリゴ糖である。これらの分子は、糖分子単位の連結結合に関する完全な自由回転の制限のために正確に完全な円筒状ではない。これはトーラスまたは円錐台の形状をとる。2次的なヒドロキシル基が周縁のより広い縁部の線を描き、一方1次的ヒドロキシル基はトーラスの狭い側の線を描く。これらの分子の水中の溶解性および中心腔の直径は公知であり、そして公表されている(非特許文献17,非特許文献18)。7個のグルコース単位を含有するβ−シクロデキストリンの構造を実例として以下に示す。
【0015】
【化1】

ベータ−シクロデキストリンの構造
【0016】
α−シクロデキストリンは環に6個の無水グルコース分子を有する。γ−およびδ−シクロデキストリンは各々8個および9個を有する。α−、β−、γ−およびδ−シクロデキストリンは25℃で各々14.5、1.85、23.2および8.19(g/100ml)の水溶性を有する。α−、β−、γ−およびδ−シクロデキストリンはしばしば天然シクロデキストリンと称され、そしてその水溶性は望ましい範囲の下端である。それにもかかわらず、それらはいくつかの水不溶性分子のための非常に良好な可溶化剤を提供する。これらの天然シクロデキストリンの水溶性を増加させるために、文献では、これらのα−、β−、γ−およびδ−シクロデキストリンの分子修飾が実施されている。
【0017】
これらの修飾されたシクロデキストリンはその天然の対応物よりも非常に溶解性が高く、そしてそれらをβ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル化β−およびγ−シクロデキストリン、スルホブチル化β−シクロデキストリン、分岐シクロデキストリン、アシル化β−およびγ−シクロデキストリンのメチル化誘導体として分類することができる。
【0018】
Kuhn−Trischmannメチル化法、加圧下で塩化メチルを用いるワッカー(Wacker)工業法、およびハロゲン化メチルおよび水素化ナトリウムを用いるHakamoriメチル化によりシクロデキストリンをメチル化することができる(非特許文献19)。最初の2つの技術を用いて無作為にメチル化されたシクロデキストリン混合物が生成された。一方のHakamoriメチル化により完全にメチル化されたヘプタキス2,3,6−トリ−O−メチル化シクロデキストリンが生成されることが報告されている。親β−シクロデキストリンのヒドロキシ基の水素の位置にメチル置換基を導入することにより、この無作為にメチル化されたシクロデキストリンの溶解性が劇的に改善され、本発明では親β−シクロデキストリンに対してRAMEBCDと称する。
【0019】
β−シクロデキストリンには全部で21個のヒドロキシル基(14個の2次的ヒドロキシル基および7個の1次的ヒドロキシル基)がある。メチル基の数が約13−14に達するとRAMEBCDの水溶性は増加し、そしてメチル化がβ−シクロデキストリンの分子あたりメトキシ基21個に近づくと減少する。市販により入手可能なRAMEBCD生成物の実例を列挙することができ、1つはWacker Chemieにより製造され、そしてCAVASOL(登録商標)W7 M Pharma(CAS番号128446−36−6)の名称のもとで市販されている。かかるRAMEBCDの水溶性は典型的には〜220g/100ml水である。かかるRAMEBCDは無水グルコース単位あたり〜1.7から1.9の平均メチル化度を有している。かかるRAMEBCDは上記のとおり、市販により入手可能であり、そして非常に良好な水溶性を有している。かかるRAMEBCDの一般的な構造を以下に示す:
【0020】
【化2】

RAMEBCDの構造
【0021】
アルカリ性溶液中でシクロデキストリンをプロピレンオキシドと反応させることにより、結果的に2−ヒドロキシプロピル誘導体を伴うシクロデキストリンのヒドロキシ基の置換に至る。ヒドロキシルのプロピレンオキシドとの高度な置換もまたオリゴマーヒドロキシプロピレンオキシド側鎖形成に至る。かかる2−ヒドロキシ−プロピル−β−シクロデキストリンを本発明ではHPBCDと称し、以下の一般的な構造に従って表される。かかる材料は市販により入手可能である。
【0022】
【化3】

HPBCDの構造
【0023】
HPBCDと同様に、γ−シクロデキストリンをヒドロキシプロピル化して、本発明でHPGCDと称するヒドロキシプロピルγ−シクロデキストリンを得ることができる。かかる材料は市販により入手可能である。
【0024】
【化4】

HPGCDの構造
【0025】
眼科分野でのシクロデキストリンの適用に関してレビュー論文が公表された(非特許文献20)。特許文献1はポリビニルピロリドンおよび界面活性剤、ポリエチレングリコール・グリセリルトリリシノレアートの使用によるフォルスコリンの水可溶化について記載している。この特許で得られたフォルスコリンの最大溶解性は0.2%である。
【0026】
特許文献2は治療上有効量の、フォルスコリン、コルフォルシンおよび多酸素化ラブダン誘導体からなる群から選択される材料の投与による緑内障の処置のための組成物および方法を記載している。ここでは局所用懸濁液として眼に投与した場合、0.1%から0.4%の活性物質濃度が生理学的に有効であると報告されている。
【0027】
特許文献3,特許文献4,特許文献5,特許文献6は新規の12ハロゲン化フォルスコリン誘導体、その調製の中間体および方法、並びに化合物または組成物を利用する眼内圧を低下させる方法について記載している。
【0028】
特許文献7は新規の12ハロゲン化フォルスコリン誘導体、中間体およびその調製方法、並びに化合物または組成物を利用する眼内圧を低下させる方法について記載している。
【特許文献1】米国特許第6346273号明細書
【特許文献2】米国特許第4476140号明細書
【特許文献3】米国特許第5070209号明細書
【特許文献4】米国特許第4978678号明細書
【特許文献5】米国特許第5023344号明細書
【特許文献6】米国特許第4871764号明細書
【特許文献7】欧州特許第0268256号明細書
【非特許文献1】Bhat,S.V.、Bajwa,B.S.、Dornauer,H.、de Souza,N.J.、Fehlabar,H.−W.、Tetrahedron Lett.18:1669(1977)
【非特許文献2】Bhat,S.V.、Dohadwalla,A.N.、Bajwa,B.S.、Dadkar,N.、Dornauer,H.、de Souza,N.J.、J Med.Chem.26:486(1983)
【非特許文献3】Caprioli J.Sears M.、Lancet 1(8331):958−960(1983年4月30日)
【非特許文献4】Badian,M.ら、Klin Monatsbl Augenheilkd 185:5226(1984)
【非特許文献5】Zeng S.ら、Yan Ke Xue Bao 11:173−376(1995)
【非特許文献6】Lee,P.Y.ら、Arch.Ophthalmol 105:249−252(1987)
【非特許文献7】Meyer,B.H.ら、S.Afr.Med J.71:570−571(1987)
【非特許文献8】Seto C.ら、Jpn J Ophthalmol 30:238−244(1986)
【非特許文献9】Burstein N.I.ら、Exp Eye Res 39:745−749(1984)
【非特許文献10】Brubaker R.F.ら、Arch Ophthalmol 105:637−641(1987)
【非特許文献11】Sears,M.L.、Am.J.Ophthalmol.100(1):194−198(1985年7月15日)
【非特許文献12】Caprioli,J.ら、Lancet 1(8331):958−960(1983年4月30日)
【非特許文献13】Witte P.U.:Proceedings of the International symposium on forskolin、Bombay、インド、175−182(1985)
【非特許文献14】Pinto−Pereira L.:Proceedings of the International symposium on forskolin、Bombay、インド、183−190(1985)
【非特許文献15】Lal,B.、Gangopadhyay,A.K.、Rajagopalan,R.、Ghate,A.V.、Bioorganic & Medicinal Chemistry 6(11):2061−2073(1998)
【非特許文献16】Lal,B.、Gangopadhyay,A.K.、Gidwani,R.M.、Fernandez,M.、Rajagopalan,R.、Ghate,A.V.、Bioorganic & Medicinal Chemistry 6(11):2075−2083(1998)
【非特許文献17】Loftsson,T.、Brewster,M.E.、J.Pharmaceutical Sciences 85:1017(1996)
【非特許文献18】Rajewski,R.A.、Stella,V.J.、J.Pharmaceutical Sciences 85:1142(1996)
【非特許文献19】Szente,L.、Szejtli,J.、Advanced Drug Delivery Reviews36:17(1996)
【非特許文献20】Loftssona,T.、Jarvinen,T.、Advanced Drug Delivery Reviews 36:59(1999)
【非特許文献21】Bonomiら、Invest.Ophthalmol.15(9):781−4(1976年9月)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
しかしながら、これらの先行技術の参照文献は1%またはそれ以上の濃度の透明な水溶液を得るための未修飾フォルスコリンの可溶化については記載していない。本発明はおよそ6%までの濃度の、水に難溶性かまたは不溶性のジテルペン、例えばフォルスコリンの水溶液の調製について記載する。適当に置換されたシクロデキストリンを可溶化剤として使用してこれらの溶液を調製する。シクロデキストリンの不在下では、フォルスコリンは水にほとんど不溶性であり、約0.001%濃度の溶液しか得られない。より多量の活性成分を含有するフォルスコリンおよび/またはその同族物質の水溶液を局所的および全身的に使用して、多様な健康上の利益を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0030】
フォルスコリンは以下の構造を有している:
【化5】

フォルスコリンの構造
【0031】
非常に関連した異性体をイソフォルスコリンと称し、そしてそれは以下の構造を有している:
【化6】

イソフォルスコリンの構造
【0032】
イソフォルスコリンはまたフォルスコリンに類似する多くの薬理学特性を有していることも報告されている。これらの6つの市販により入手可能なシクロデキストリン、すなわちα−、β−、γ−シクロデキストリンおよびその誘導生成物、例えばRAMEBCD、HPBCD、HPGCDを用いて比較的難溶性のフォルスコリンを可溶化した。
【0033】
シクロデキストリンを用いてフォルスコリンを可溶化するために、選択されたシクロデキストリンおよびフォルスコリンを特定の比率で水中で混合する。水溶液を濾過してすべての不溶性粒子を除去し、水中のフォルスコリンの透明な水溶液が得られた。
【0034】
また別の方法では、特定の比率のシクロデキストリンおよびフォルスコリンを適当な溶媒、例えばエタノールまたはアセトンまたは酢酸エチルに溶解する。溶媒を除去して白色粉末を残す。実施例で説明するように、かかる粉末は水に自由に溶解する。さらに、フォルスコリンの水溶液に添加剤を加えることもできる。これらの添加剤は通常、無菌状態を維持すること、pH維持、浸透圧の維持のために用いられる。
【0035】
かかる添加剤の選択には広く多様な選択が存在する。説明用の実施例では保存剤として塩化ベンザルコニウムを用いるが、多くのその他のもの、例えば塩化ベンゼトニウム、クロロブタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、チメロサール等を同等に選択することができる。
【0036】
抗酸化剤、例えばEDTAの二ナトリウム塩を用いて調製物を安定化する。その他の抗酸化剤、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、メタ亜硫酸水素ナトリウム、チオ尿素等を用いることもできる。
【0037】
とりわけ眼科用溶液には、眼科用溶液に望ましい粘性は25から50cpsの範囲である。粘性増強剤、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースを用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下に記載する実施例は説明用の実施例としての目的のためだけに提供され、本発明の広い範囲をいかなるようにも限定するものではない。
【実施例1】
【0039】
フォルスコリンの水溶解性の決定。
フォルスコリン(300mg)を105℃で6時間乾燥した。乾燥したフォルスコリン200mgを水100mlと共に48時間攪拌し、環境温度での固有の溶解性を決定した。得られた溶液を0.45μmナイロンフィルターを通して濾過し、そしてHPLCによりフォルスコリン含量を分析した。HPLCによるフォルスコリン含量は0.01mg/mlまたは0.001(重量/容量)%、換言すれば、フォルスコリンは水中で〜0.001(重量/容量)%の溶解性を有する。
【実施例2】
【0040】
フォルスコリン(98.5%アッセイ、25mg)を溶解状態のヒドロキシプロピルβシクロデキストリン(HPBCD)500mgを含有する水1ml(〜50%)に加えた。懸濁液を等温振盪器中、〜30℃の温度で60時間、75rpmで振盪した。得られた溶液を0.45μmナイロンフィルターを通して濾過し、そしてHPLCによりフォルスコリン含量を分析し、1.33mg/mlまたは0.133(重量/容量)%であった。
【実施例3】
【0041】
フォルスコリン(98.5%アッセイ、50mg)を溶解状態のヒドロキシプロピルγ−シクロデキストリン(HPGCD)500mgを含有する水1ml(〜50%)に加えた。懸濁液を等温振盪器中、〜30℃の温度で60時間、75rpmで振盪した。得られた溶液を0.45μmナイロンフィルターを通して濾過し、そしてHPLCによりフォルスコリン含量を分析し、1.52mg/mlまたは0.152(重量/容量)%であった。
【実施例4】
【0042】
塩化メチレンから、および酢酸エチルから再結晶化することにより、フォルスコリンの結晶化度を「変化させる」ことにより実験を実施した。得られた「非晶性」フォルスコリンをヒドロキシプロピルγ−シクロデキストリン(HPGCD)との複合化に使用した。二塩化メチレンで再結晶化したフォルスコリン(29.3mg)(フォルスコリンアッセイ99.0%)を、ヒドロキシプロピルγ−シクロデキストリン(HPGCD)1.5gを含有する水3ml(〜50%)に加えた。懸濁液を等温振盪器中、30℃の温度で160時間、75rpmで振盪した。得られた溶液を0.45μmナイロンフィルターを通して濾過し、そしてHPLCによりフォルスコリン含量を分析し、1.74mg/mlまたは0.174(重量/容量)%であった。
【実施例5】
【0043】
酢酸エチルで再結晶化したフォルスコリン(30.3mg)(フォルスコリンアッセイ98.8%)を、ヒドロキシプロピルγ−シクロデキストリン(HPGCD)1.5gを含有する水3ml(〜50%)に加えた。懸濁液を等温振盪器中、30℃の温度で160時間、75rpmで振盪した。得られた溶液を0.45μmナイロンフィルターを通して濾過し、そしてHPLCによりフォルスコリン含量を分析し、3.38mg/mlまたは0.338(重量/容量)%であった。
【実施例6】
【0044】
フォルスコリン(98.5%アッセイ、330mg)をRAMEBCD 4gを含有する水10ml(〜40%)に加えた。懸濁液を等温振盪器中、30℃の温度で40時間、75rpmで振盪した。得られた溶液を0.45μmナイロンフィルターを通して濾過し、そしてHPLCによりフォルスコリン含量を分析し、20.46mg/mlまたは2.046(重量/容量)%であった。
【実施例7】
【0045】
5から66%にわたる、異なる濃度のRAMEBCDでフォルスコリンの水中の溶解性を決定した。これらの関係はほぼ直線的であり、そしてRAMEBCDの濃度の上昇に従ってフォルスコリンの溶解性が上昇することを示している。
【表1】

【実施例8】
【0046】
シクロデキストリンを伴うフォルスコリンの典型的な水性処方を以下のように調製し、RAMEBCDをシクロデキストリンの実例として使用する。機械もしくは電磁攪拌装置の付いた1リットルフラスコにRAMEBCD(100g)を取る。フォルスコリン(5.5g)をフラスコに入れた。水(400ml)をフラスコに入れ、そして内容物を室温で振盪した。透明な溶液が得られる。何らかの未溶解のフォルスコリン粒子が認められる場合、これらを再懸濁し、そして攪拌する。塩化ベンザルコニウム(50mg)およびEDTA二ナトリウム(500mg)を加え、そしてフラスコ中で溶解する。0.1N 水酸化ナトリウムの助けを借りて、内容物のpHを望ましい範囲まで調整することができる。(通常pH範囲は3.5から7.5である)。計算量の塩化ナトリウム溶液を加えて、0.9%の塩化ナトリウムの浸透圧に等しい、溶液の浸透圧を維持する。滅菌濾過の後、溶液の全容量を500mlにする。このようにして調製された溶液は溶解状態でおよそ1%のフォルスコリンを有する。その他のシクロデキストリンを使用することもでき、そして使用したシクロデキストリンに依存して、水中のフォルスコリンの溶解した含量は異なる。
【実施例9】
【0047】
フォルスコリン(50mg)をアセトン5mlに溶解し、そしてRAMEBCD1gを別個にアセトン5mlに溶解した。双方の溶液を一緒に混合し、そして溶媒アセトンを減圧下蒸発させた。残留物を乾燥し、そして水 5mlに溶解した。この残留物は1時間以内の攪拌で非常に容易に溶解し、無色透明の溶液を形成した。
【実施例10】
【0048】
イソフォルスコリンもまたフォルスコリンの代わりに使用することもできる。1つの調製物では、イソフォルスコリン(50mg)を適量のシクロデキストリンを含有する水、例えば水約100ml中にRAMEBCDを20g含有する水に再懸濁した。室温で振盪した後、溶液を濾過し、そして得られた溶液をHPLCにより分析し、これによりおよそ0.5%のイソフォルスコリンの存在が示された。RAMEBCDの量を変化させることにより溶解したイソフォルスコリンの量を変化させることができる。
【実施例11】
【0049】
調製物の生物学的活性を説明するための実施例を提示する。フォルスコリン組成物の抗緑内障活性を白ウサギで研究した。実施例8で記載した水中にフォルスコリンを1%含有する溶液を実験に使用した。
【0050】
試験設計:動物モデル:白ウサギ。群数:4群。各群の動物数:処置群で6匹、および対照群で2匹。
【0051】
材料および方法:雌雄双方のニュージーランド系白ウサギ6匹、体重1.0から1.5ポンドを選択した。ウサギを清潔で、そして十分に換気されたオープンスペースで飼育した。各ウサギに標準的な食餌を毎日与え、そして試験中水を自由に与えた。
【0052】
非特許文献21に報告された方法により高眼圧症を誘起した。ウサギに4mg/mlベタメタゾンナトリウムを含有するベトネゾールの0.3ml結膜下注射を、毎日、各眼に3週間行った(文献どおりに第3週に眼内圧(IOP)が最大になった)。結膜下注射に先立って、局所麻酔プロプラカイン点眼剤を使用した。
【0053】
各ウサギの左眼を緑内障の対照として残し、そして右眼をフォルスコリン、チモロール、およびプラセボを用いて緑内障に関して処置した。
【0054】
各処置に関して、非接触型眼圧計(NCT)を用いて30分間隔で210分までIOPの読みを測定した。
【0055】
結果:
【表2】

【0056】
統計分析:
プラセボ、フォルスコリンおよびチモロールのIOPの読みをANOVA(一方向)に供した。p値は0.0022であり、これは非常に有意であり、列平均の変動は偶然ではないことを示している。
【0057】
プラセボおよびフォルスコリンのIOPの読みを「t」検定に供して、フォルスコリンおよびプラセボの中央値が有意に異なるかどうかを決定した。p値は0.0177であると解り、これは有意であると考えられる。同様に、プラセボおよびチモロールのIOPの読みは0.0087のp値を有し、これもまた有意である。
【0058】
フォルスコリンおよびチモロールのIOPの読みもまた「t」検定に供した。p値は0.3999であると解り、これは有意ではないと考えられ、このことはフォルスコリン調製物の活性はチモロールと有意に異ならないことを意味した。
【0059】
結論:フォルスコリン組成物はチモロールに匹敵する抗緑内障活性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然または合成起源の、ジテルペン、例えばフォルスコリン、イソフォルスコリン、7−デアセチルフォルスコリン、その同族物質、アナログおよび誘導体を個々にまたは混合物として水中に可溶化する方法。
【請求項2】
植物供給源、非限定例としてはコレウス・フォルスコリから得ることができる請求項1のジテルペン。
【請求項3】
使用する可溶化剤がα−、β−、γ−シクロデキストリンまたはその誘導生成物、例えば無作為にメチル化されたβ−シクロデキストリン(RAMEBCD)、2−ヒドロキシ−プロピル−β−シクロデキストリン(HPBCD)、ヒドロキシプロピルγ−シクロデキストリン(HPGCD)であって、好ましくは無作為にメチル化されたβ−シクロデキストリン(RAMEBCD)を複合化剤として使用する請求項1の方法。
【請求項4】
0.09%から6%のジテルペン、例えばフォルスコリン、イソフォルスコリン、そのアナログまたは誘導体を含有する透明な溶液を、その化合物を5%から70%のシクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体と混合することにより調製する方法。
【請求項5】
活性な化合物をエタノール、アセトン、酢酸エチル、塩化メチレンまたはその他の溶媒から選択される有機溶媒から再結晶化し、続いて水中での材料の懸濁液を形成し、次いで室温で40から160時間振盪し、そして濾過することによりシクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体と複合化する方法。
【請求項6】
眼科用、局所用および全身用用途に適した0.09%から6%のジテルペン、例えばフォルスコリン、そのアナログ、同族物質または誘導体を含有する溶液形態または固体形態の透明な水性処方を調製する方法。
【請求項7】
ヒトまたは獣医学的用途のためのカプセル、錠剤、食品、注射用、パッチ、軟膏、ゲル、エマルジョン、クリーム、ローション、デントリフィセス(dentrifices)、スプレー、滴剤または徐放形態を含むその他の投与形態に配合できる請求項6の処方。
【請求項8】
高眼圧症または緑内障を呈する動物またはヒト対象において眼圧を低下させる場合の単独でまたは抗酸化剤および/または抗緑内障剤と組み合わせた請求項6の処方の使用方法。
【請求項9】
ドライアイ症候群を呈する動物またはヒト対象において単独でまたはポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸および誘導体と組み合わせた請求項6の処方の使用方法。
【請求項10】
研究および商業目的で、水に可溶性の分子およびレセプタープローブを調製する場合の請求項6の処方の使用方法。
【請求項11】
ヒトおよび動物においてジテルペン、例えばフォルスコリン、そのアナログ、同族物質または誘導体の健康上の利益を表出するための請求項6の処方の使用方法であって、投与様式が局所、経皮、静脈内、舌下または経口であることを特徴とする使用方法。
【請求項12】
フォルスコリンの公知の適用の中で肥満の管理、体重管理および除脂肪体重の改善、高血圧、アレルギーのためのダイエット用飲料としてフォルスコリンおよび関連するジテルペンの処方を供給するのに有用である請求項1の材料。
【請求項13】
フォルスコリンおよび関連するジテルペンの水に可溶性の処方をエマルジョン、スプレー、溶液もしくはエアロゾル、またはコスメスーティカル(cosmeceutical)用途、例えばコラーゲン・ブースティング活性、抗しわ特性、セルライト調節、メラノサイト・モジュレータとして供給する場合に有用である請求項1の材料。
【請求項14】
抗酸化剤、リパーゼ・インヒビター、その他の抗肥満製品、例えばヒドロキシクエン酸、ガルシノールおよびそれらの塩、血管イルリガートル(vasoirrigator)、その他の公知のコラーゲン・ブースター、抗炎症剤、ホスホジエステラーゼ・インヒビターなどと組み合わせて使用することができる請求項1の材料。

【公表番号】特表2007−505040(P2007−505040A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525448(P2006−525448)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/028644
【国際公開番号】WO2005/025500
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(306039603)
【出願人】(306039614)
【出願人】(306039625)
【出願人】(306039636)
【Fターム(参考)】