説明

水田作業機

【課題】 接地フロート12が設定姿勢になるように水田作業装置10を昇降制御するものでありながら、自走車体や水田作業装置の走行速度や姿勢の変化にかかわらず、接地フロート12が田面に対して適切な姿勢で接地するように、かつ、ハンチングが発生しにくいようにする。
【解決手段】 昇降制御手段55は、フロート角センサ50による検出情報を基に設定制御目標フロート角を設定し、フロート角センサ50による検出フロート角が設定制御目標フロート角になるようにリフトシリダ6を操作する。昇降制御手段55は、車速感応モードになると、車速センサ52による検出車速が高速であるほど制御感度がより鈍感になるように制御感度を補正する。昇降制御手段55は、傾斜角補正モードになると、自走車体の傾斜角センサ51による検出前上がり傾斜角が設定値より大であるほど設定制御目標フロート角に対応するフロート姿勢が前下がり方向になった状態の設定制御目標フロート角を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走車体に連結された水田作業装置を自走車体に対して昇降操作する昇降アクチュエータを備え、水田作業装置に接地フロートを接地フロート後部に位置する軸芯まわりで上下揺動自在に設けた水田作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記水田作業機において、従来、例えば特許文献1に示されるように、センサフロート14Sの上下揺動角を検出するフロートセンサSb、及び、このフロートセンサSbの検出に基づいて、センサフロート14Sの揺動姿勢が基準姿勢の許容範囲内に復帰するように苗植付装置3の昇降を制御する自動昇降制御手段21Bを備え、さらに、苗植付装置3の前後方向での傾斜角を検出する傾斜角センサSc、及び、この傾斜角センサScからの検出に基づいて、苗植付装置3の前後方向での傾斜角が所定値aよりも前上がり方向に大きい値になると、その傾斜角が前上がり方向に大きくなるほどセンサフロート14Sの基準姿勢を前下がり方向に補正する補正作動を開始する補正手段21Cを備えられたものがあった。
【0003】
この種の水田作業機は、作業装置の対地高さが設定高さに維持されるように田面に対する接地フロートの姿勢を略一定に維持しながら作業することが可能になったものである。
また、車体が圃場から出るように走行させながら作業装置に枕地での作業を行なわせるなど、自走車体が前上がり方向に大きく傾斜した状況で作業する際、作業装置の前上がりを考慮した設定制御目標フロート角の補正が行なわれないで作業装置の昇降制御が行なわれると、接地フロートの圃場泥土への沈下量が大幅に大きくなるが、この作業状況の場合でも、補正手段の作用により、接地フロートの過剰な沈下を回避しながら作業装置の昇降制御を行わせることが可能になったものである。
【0004】
【特許文献1】特開2000−333517号公報(段落〔0035〕,〔0043〕、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接地フロートの上下揺動角を検出するフロート角センサの検出情報を基にフロート角センサによる検出角が制御目標フロート角になるように昇降制御が行なわれる水田作業機において、昇降制御が常に一定の制御感度で実行されると、例えば高速で走行された場合、高速走行のために接地フロートによる接地圧感度が高くなってハンチングが発生しやすくなる。殊に耕盤や田面の凹凸が激しいと、ハンチング現象がより発生しやすくなる。
【0006】
本発明の目的は、検出フロート角が設定範囲になるように水田作業装置を昇降制御するものでありながら、自走車体や水田作業装置の走行速度や姿勢の変化にかかわらず、接地フロートが田面に対して適切な姿勢で接地するようにしながら、かつ、ハンチングなどの制御不良を発生しにくくしながら作業することができる水田作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本第1発明にあっては、自走車体に連結された水田作業装置を自走車体に対して昇降操作する昇降アクチュエータを備え、水田作業装置に接地フロートを接地フロート後部に位置する軸芯まわりで上下揺動自在に設けた水田作業機において、
自走車体の走行速度を検出する車速センサ、自走車体又は水田作業装置の前後傾斜角を検出する傾斜角センサ、接地フロートの水田作業装置における機体に対する上下揺動角を検出するフロート角センサを備えるとともに、前記車速センサ、前記傾斜角センサ、前記フロート角センサによる検出情報を基に前記昇降アクチュエータを操作する昇降制御手段を備え、
前記フロート角センサによる検出情報に基づいて設定制御目標フロート角を設定して、かつ、前記車速センサによる検出車速が高速であるほど制御感度がより鈍感になるように車速センサによる検出情報に基づいて制御感度を補正して、フロート角センサによる検出フロート角が設定制御目標フロート角になるように昇降アクチュエータを操作する車速感応昇降制御を実行する車速感応モードと、
前記フロート角センサ及び前記傾斜角センサによる検出情報に基づいて設定制御目標フロート角を設定して、かつ、前記傾斜角センサによる検出前上がり傾斜角が設定値より大であるほど設定制御目標フロート角に対応するフロート姿勢がより前下がり方向になった状態の設定制御目標フロート角を設定して、フロート角センサによる検出フロート角が設定制御目標フロート角になるように昇降アクチュエータを操作する傾斜角補正昇降制御を実行する傾斜角補正モードとを、前記昇降制手段に備えてある。
【0008】
すなわち、昇降制御手段に車速感応モードと傾斜角補正モードを昇降制御手段に備えたものだから、車速感応モードと傾斜角補正モードの一方がオンになるように人為的に切り換えたり自動的に切り換えさせて、車速感応昇降制御と傾斜角補正昇降制御の一方を実行させたり、あるいは車速感応モードと傾斜角補正モードの両方がオンになるように構成して、車速感応昇降制御と傾斜角補正昇降制御を併行して実行させたりすることができる。
これにより、水田作業装置が前上がり方向に大きく傾斜した状況で作業する際、傾斜角補正昇降制御により、設定制御目標フロート角として、設定制御目標フロート角に対応するフロート姿勢が前下がり方向になった状態の設定制御目標フロート角が設定されて、作業装置の前上がり姿勢にかかわらず接地フロートの過剰な沈下を回避しながら昇降制御を行なわせることができる。
高速で走行しながら作業する際、車速感応昇降制御により、車速が高速であるほど制御感度がより鈍感になるように車速センサによる検出情報に基づいて制御感度が補正されて、高速走行に起因する接地フロートによる接地圧感度のアップや、田面の凹凸にかかわらず、低速で走行される場合と同様にハンチング現象を発生しにくくして昇降制御を行なわせることができる。
【0009】
従って、本第1発明によれば、検出フロート角が設定範囲になるように水田作業装置の昇降制御を行なわせるものでありながら、作業装置が前上がり姿勢になった状況で作業する場合でも、車体を低速や高速如何なる速度で走行させて作業する場合でも、接地フロートが田面に対して過剰沈下しない適切な姿勢で接地して接地フロートによる泥押しや溝形成に起因した既植苗の倒伏が発生しにくくなったり、適切な制御感度で昇降制御が行なわれてハンチング現象に起因した苗植え深さの不揃いが発生しにくくなったりするなど、仕上がりのよい作業を行なうことができる。
【0010】
本第2発明にあっては、本第1発明の構成において、前記昇降制御手段を、前記車速感応昇降制御と前記傾斜角補正昇降制御を択一的に実行するように前記車速感応モードと前記傾斜角補正モードに切り換え自在に構成してある。
【0011】
すなわち、昇降制御手段を車速感応モードと傾斜角補正モードに人為的に切り換えたり自動的に切り換えさせて、車速感応昇降制御を実行させたり、傾斜角補正昇降制御を実行させたりすることができる。
これにより、水田作業装置が前上がり方向に大きく傾斜した状況で作業する際、傾斜角補正昇降制御を実行させ、設定制御目標フロート角として、設定制御目標フロート角に対応するフロート姿勢が前下がり方向になった状態の設定制御目標フロート角が設定されて、作業装置の前上がり姿勢にかかわらず接地フロートの過剰な沈下を回避しながら昇降制御を行なわせることができる。
高速で走行しながら作業する際、車速感応昇降制御を実行させ、車速が高速であるほど制御感度がより鈍感になるように車速センサによる検出情報に基づいて制御感度が補正されて、高速走行に起因する接地フロートによる接地圧感度のアップや、田面の凹凸にかかわらず、低速で走行される場合と同様にハンチング現象を発生しにくくして昇降制御を行なわせることができる。
【0012】
従って、本第2発明によれば、検出フロート角が設定範囲になるようにしての水田作業装置の昇降制御を行なわせるものでありながら、作業装置が前上がり姿勢になった状況で作業する場合であっても、接地フロートが田面に対して過剰沈下しない適切な姿勢で接地し、接地フロートによる泥押しや溝形成に起因した既植苗の倒伏などのトラブルが発生しにくい仕上がりの作業を行なうことができ、車体を低速走行させて作業する場合であっても、高速走行させて作業する場合であっても、適切な制御感度で昇降制御が行なわれてハンチング現象に起因した苗植え深さの不揃いが発生しにくい仕上がりのよい作業を行なうことができる。
【0013】
本第3発明にあっては、本第2発明の構成において、前記昇降制御手段を、前記車速センサによる検出車速が高速側であると、前記車速感応モードに切り換わり、前記車速センサによる検出車速が低速側であると、前記傾斜角補正モードに切り換わるように車速センサによる検出情報に基づいて自動的にモード切り換えするように構成してある。
【0014】
すなわち、低速走行されると、昇降制御手段が車速センサによる検出情報を基に傾斜角補正モードに自動的に切り換わって傾斜角補正昇降制御を実行し、高速走行されると、昇降制御手段が車速センサによる検出情報を基に傾斜角補正モードに自動的に切り換わって車速感応昇降制御を実行するものである。これにより、車体が圃場から出るように走行させながら作業装置に枕地での作業を行なわせる際には、低速で走行されることから、昇降制御手段が傾斜角補正モードに自ずと切り換わって傾斜角補正昇降制御が実行され、圃場内で作業する際には、高速で走行されることから、昇降制御手段が車速感応モードに自ずと切り換わって車速感応昇降制御が実行される。
【0015】
従って、本第3発明によれば、車体を圃場から出しながらの枕地作業を行なう際には、傾斜角補正昇降制御が実行されて、水田作業装置の前上がり姿勢にかかわらず接地フロートを適切な対地姿勢にしながら作業することができ、圃場内で作業を行なう際には、車速感応昇降制御が実行されて、車速変化にかかわらず制御感度を適切にしながら作業することができ、しかも、いずれの作業を行なう場合も、その作業に適切な傾斜角補正モードや車速感応モードに自ずと切り換えられて、特別なモード切り換え手間が不要で楽である。
【0016】
本第4発明にあっては、本第3発明の構成において、前記昇降制御手段を、前記車速センサによる検出車速が設定第1切換え車速以上に増速変化することによって前記傾斜角補正モードから前記車速感応モードに切り換わり、前記車速センサによる検出車速が前記設定第1切換え車速よりも低速の設定第2切換え車速以下に減速変化することによって前記車速感応モードから前記傾斜角補正モードに切り換わるように構成してある。
【0017】
すなわち、車速が設定第1切換え車速以上に増速されると、昇降制御手段が傾斜角補正モードから車速感応モードに切り換わり、この後、車速が低下しても設定第2切換え車速まで低下しない間は、昇降制御手段が車速感応モードに保持され、設定第2切換え車速まで低下すれば、昇降制御手段が車速感応モードから傾斜角補正モードに切り換わるものである。これにより、車速が設定第1切換え車速の付近で頻繁に増減変化しても、この増減変化に伴って昇降制御手段が傾斜角補正モードと車速感応モードの一方から他方に頻繁に切り換わるハンチング現象が発生しないようにしながら、車速変化に伴って昇降制御手段が傾斜角補正モードと車速感応モードの一方から他方に自動的に切り換わるようにすることができる。
【0018】
従って、本第4発明によれば、昇降制御手段が車速変化に伴って傾斜角補正モードと車速感応モードに自動的に切り換わってモード切り換えのための特別な手間が不要なものでありながら、傾斜角補正昇降制御や車速感昇降制御を車速変化に伴うハンチング現象が発生しないように安定よく行わせることができる。
【0019】
本第5発明にあっては、本第1発明の構成において、前記昇降制御手段を、前記車速感応昇降制御と前記傾斜角補正昇降制御を併行して実行するように構成してある。
【0020】
すなわち、車体を圃場内で走行させる通常の作業を行なっている際、耕盤に凹凸があると、それによる車体傾斜のために作業装置が対地傾斜することがある。この場合、車速感応昇降制御と傾斜角補正昇降制御が併行して実行されて、制御感度も設定制御目標フロート角も車速や作業装置姿勢に対応したものに補正しながら作業装置の昇降制御が行われるものである。
【0021】
従って、本第5発明によれば、車速及び作業装置の対地姿勢に変化が発生しても、制御感度も設定制御目標フロート角も補正しながら作業装置の昇降制御が行われ、車速及び作業装置姿勢の変化にかかわらず作業深さが所望深さになるとともに接地フロートによる大きな泥押しや溝形成が発生しない仕上がりのよい作業を行なうことができる。
【0022】
本第6発明にあっては、本第5発明の構成において、前記昇降制御手段を、前記車速センサによる検出車速が高速であるほど、前記車速感応昇降制御の重み付け比率がより大になるとともに前記傾斜角補正昇降制御の重み付け比率がより小になるように、前記車速センサによる検出車速が低速であるほど、前記車速感応昇降制御の重み付け比率がより小になるとともに前記傾斜角補正昇降制御の重み付け比率がより大になるように車速センサによる検出情報に基づいて車速感応昇降制御及び傾斜角補正昇降制御の重み付け比率を変更設定しながら車速感応昇降制御と傾斜角補正昇降制御を併行して実行するように構成してある。
【0023】
すなわち、作業を行なうに当たり、耕盤の凹凸が少ないほど、作業装置の対地姿勢変化がより発生しにくくなるとともに走行速度をよりアップすることができ、耕盤の凹凸が激しいほど、作業装置の対地姿勢変化がより発生しやすくなるとともに走行速度をよりダウンする必要が生じる。本第6発明は、検出車速が高速であるほど、車速感応昇降制御の重み付け比率がより大になるとともに傾斜角補正昇降制御の重み付け比率がより小になるように、検出車速が低速であるほど、車速感応昇降制御の重み付け比率がより小になるとともに傾斜角補正昇降制御の重み付け比率がより大になるように、車速感応昇降制御及び傾斜角補正昇降制御の重み付け比率を変更設定しながら車速感応昇降制御と傾斜角補正昇降制御を併行して実行されるものだから、制御感度と設定制御目標フロート角の補正が作業状況に適った重み付け比率で行なわれ、作業装置の対地姿勢や走行速度の変化にかかわらずハンチング現象をより発生しにくくしながら、接地フロートをより適切な対地姿勢に維持しながら作業装置の昇降制御が行われる。
【0024】
従って、本第6発明によれば、検出フロート角が設定範囲になるように水田作業装置の昇降制御を行なわせるものでありながら、作業装置の対地姿勢や走行速度の変化にかかわらずハンチング現象や接地フロートによる泥押しや溝形成に起因した既植苗の倒伏や苗植え深さの不揃いがより発生しにくいなど、より仕上がりのよい作業を行なうことができる。
【0025】
本第7発明にあっては、本第1〜第6発明のいずれか一つの構成において、走行用変速装置の変速操作に連係してエンジン調速装置が調速作動するように走行用変速装置とエンジン調速装置を連係させた連係機構を備え、前記車速センサを、エンジン回転数を車速として検出するように構成してある。
【0026】
すなわち、エンジン回転数を検出する回転数センサと、走行用変速装置の変速状態を検出する変速センサを設けて両センサによる検出情報に基づいて車速を検出しなくとも、車速センサとしての回転数センサを設けるだけで車速を検出することができるものである。
【0027】
従って、本第7発明によれば、車速を検出するのに車速センサとしての回転数センサを設けるだけで済み、構造面や経済面で有利に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する
図1に示すように、左右一対の操向操作及び駆動自在な前車輪1、左右一対の駆動自在な後車輪2、車体前部に搭載されたエンジン3を有した原動部、車体後部に設けた運転座席4を有した運転部を備えた自走車体の車体フレーム5の後部に、リフトシリンダ6が装備されたリンク機構7を介して苗植付け装置10を連結するとともに、前記エンジン3の駆動力が回転軸8を介して苗植付け装置10に伝達されるように構成し、自走車体の運転座席4の後側に肥料タンク21が装備された施肥装置20を設けて、施肥装置付き乗用型田植機を構成してある。
【0029】
この田植機は、稲苗の植え付け作業と、植え付け苗に対する施肥作業とを行なうものであり、昇降アクチュエータとしてのリフトシリダ6を伸縮操作すると、このリフトシリンダ6がリンク機構7を車体フレーム5に対して上下に揺動操作することにより、苗植付け装置10を植付け機体11の下側に植付け機体横方向に並べて設けた複数個の接地フロート12が田面に接地した下降作業状態と、接地フロート12が田面から高く上昇した上昇非作業状態とに昇降操作する。苗植付け装置10を下降作業状態にして自走車体を走行させると、苗植付け装置10は、パイプフレーム13やこのパイプフレーム13の複数箇所から後方向きに延出された植付け駆動ケース14などを備えて成る前記植付け機体11の後部に植付け機体横方向に並べて設けた複数の苗植付け機構15により、苗植付け機構15の苗植え運動に連動して植付け機体横方向に往復移送される苗載せ台16に載置されたマット状苗から一株分のブロック苗を切断するとともに取り出して下降搬送し、圃場泥土の接地フロート12によって整地された箇所に植え付けていく。施肥装置20は、肥料タンク21の下部に連結された繰り出し装置22によって肥料タンク21から肥料を繰り出し、繰り出し装置22からの肥料を電動ブロワ23からの搬送風によって繰り出し装置22から苗植付け装置10に延出されている複数本の施肥ホース24に供給する。複数本の施肥ホース24は、一つの苗植付け機構15に一個ずつ対応するように配置して前記接地フロート12に支持された複数個の作溝施肥器25に各別に連通されており、各作溝施肥器25は、圃場泥土の苗植付け機構15による植え付け苗の横側近くに溝を形成してこの溝に施肥ホース24からの肥料を供給する。これにより、施肥装置20は、複数の苗植付け機構15が苗植え付けを行なっていくに伴い、圃場の各植え付け苗の横側近くに肥料を供給していく。
【0030】
自走車体の前記エンジン3の後方に走行用変速装置30を設け、前記エンジン3の駆動力が前記走行用変速装置30を介して前後輪1,2に伝達されるように構成してある。前記走行用変速装置30は、エンジン3からの駆動力によって駆動されるアキシャルプランジャ形の可変容量形油圧ポンプ(図示せず)と、この油圧ポンプからの圧油によって駆動されて前後輪1,2に出力するアキシャルプランジャ形の油圧モータ(図示せず)とを備えて成る静油圧式無段変速装置によって構成してある。
【0031】
図2に示すように、前記走行用変速装置30の油圧ポンプの斜板操作軸で成る変速軸31に連動ロッド32を利用した連動機構によって連動された変速レバー33を、レバーガイド34のガイド溝35に沿わせて車体前後方向に揺動操作するように構成してある。図3に示すように、変速レバー33に当接作用する一対の感知リンク36a,36bを備えた連係機構37により、変速レバー33と、前記エンジン3の回転数を変更調節するように原動部に設けられたエンジン調速装置38の操作アーム38aとを連係させてある。
【0032】
連係機構37は、前記一対の感知リンク36a,36b、この一対の感知リンク36a,36bのうちの一方の前進感知リンク36aに一端側が連結され、他端側がエンジン調速装置38の操作アーム38aに連結されたインナーケーブルを有した操作ケーブル39を備えて構成してある。
【0033】
一対の感知リンク36a,36b,のうちの前記一方の前進感知リンク36aは、この前進感知リンク36aの後端側に配置した連結ピン40を介してこの連結ピン40の軸芯まわりで揺動自在なように前記レバーガイド34に連結ピン40を介して支持され、他方の後進感知リンク36bは、この後進感知リンク36bの前端側に配置した連結ピン41の軸芯まわりで揺動自在なように前記レバーガイド34に連結ピン41を介して支持されている。後進感知リンク36bの前記連結ピン41からやや離れた箇所に設けた長孔に摺動自在に入り込むように構成した連動ピン42を前進感知リンク36aに設け、この連動ピン42によって前進感知リンク36aと後進感知リンク36bを連動させてある。
【0034】
変速レバー33が中立位置Nに操作されると、エンジン調速装置38の操作アーム38aに作用しているリターンばね43による操作ケーブル39の引っ張り操作、及び、連動ピン42による両感知リンク36a,36bの連動のために、前進感知リンク36a及び後進感知リンク36bは、各感知リンク36a,36bの中間部が変速レバー33に対応した基準位置になって、エンジン調速装置38の操作アーム38aが低速側の操作状態になる。変速レバー33が前進域Fに操作されると、変速レバー33が前進感知リンク36aの前記中間部よりも遊端側に位置する感知部に当接して前進感知リンク36aが変速レバー33によって揺動操作され、操作ケーブル39が引っ張り操作されてエンジン調速装置38の操作アーム38aを高速側に揺動操作する。変速レバー33が後進域Rに操作されると、変速レバー33が後進感知リンク36bの前記中間部よりも遊端側に位置する感知部に当接して後進感知リンク36bが変速レバー33によって揺動操作されて連動ピン42を介して前進感知リンク36aを揺動操作し、操作ケーブル39が引っ張り操作されてエンジン調速装置38の操作アーム38aを高速側に揺動操作する。変速レバー33が前進域Fに操作された場合も後進域Rに操作された場合も、変速レバー33の中立位置Nからの操作ストロークが大にされるほど、前進感知リンク36aや後進感知リンク36bの揺動角度が大になって操作ケーブル39の操作ストロークが大になり、エンジン調速装置38の操作アーム38aがより高速側に揺動操作されるようになっている。
【0035】
これにより、連係機構37は、変速レバー33とエンジン調速装置38を連係させることによって、走行用変速装置30とエンジン調速装置38を次の如く連係させている。
すなわち、走行用変速装置30が前進側においても後進側においてもシフトアップする方向に変速操作されると、これに連係してエンジン調速装置38が増速側に調速作動し、走行用変速装置30が前進側においても後進側においてもシフトダウンする方向に変速操作されると、これに連係してエンジン調速装置38が減速側に調速作動するように連係させている。
【0036】
つまり、変速レバー33を前進域Fに操作すると、走行用変速装置30が前進側の伝動状態になって前進駆動力を前後輪1,2に伝達して自走車体が前進側に走行し、変速レバー33を後進域Rに操作すると、走行用変速装置30が後進側の伝動状態になって後進駆動力を前後輪1,2に伝達して自走車体が後進側に走行する。走行用変速装置30を前進側に操作した場合も後進側に操作した場合も、変速レバー33の中立位置Nからの操作ストロークを大にするほど、走行用変速装置30がより高速側の変速状態になってより高速の駆動力を前後輪1,2に伝達して自走車体が前進側や後進側により高速で走行する。このとき、エンジン調速装置38が連係機構37の作用によって自ずと調速作動し、走行用変速装置30が高速側になるほどエンジン回転数がより高速の回転数になる。
【0037】
変速レバー33を中立位置Nに操作すると、走行用変速装置30が中立状態になって前後輪1,2に対する伝動を停止して自走車体が停止する。このとき、エンジン調速装置38が連係機構37の作用によって自ずと調速作動し、エンジン回転数がアイドリング回転数など予め設定された低回転数になる。
【0038】
図4に示すように、前記各接地フロート12の後端部を、植付け機体11に回動調節自在に支持された植付け深さ調節パイプ44から一体回動自在に延出している支持アーム45に回動自在に支持させ、各接地フロート12の前端部を、リンク機構46を介して植付け機体11に上下揺動自在に支持させることにより、各接地フロート12が独立して接地フロート後端部に位置する植付け機体横向きの軸芯Pまわりで植付け機体11に対して上下揺動するように構成してある。前記複数個の接地フロート12のうちの植付け機体横方向での中央に位置する接地フロート12を、前記リンク機構46に作用するばね47によって接地フロート12の前端側が下降する側に揺動付勢したセンサ用の接地フロート12に構成し、このセンサ用の接地フロート12の前記リンク機構46に操作部が連動された回転ポテンショメータによって、前記接地フロート12の植付け機体11に対する上下揺動角を検出するフロート角センサ50を構成してある。
【0039】
図4に示すように、前記フロート角センサ50、傾斜角センサ51、車速センサ52、運転部に設けた植付け深さ設定手段53及びモード選択手段54を昇降制御手段55に連係させるとともに、この昇降制御手段55を前記リフトシリンダ6の電磁制御弁6aに連係させてある。
【0040】
植付け深さ設定手段53は、人為操作自在なポテンショメータで成り、昇降制御手段55による苗植付け装置10の昇降制御によって維持させるべき苗植付け深さを、予め設定された不感帯幅を備えた設定フロート角Dとして設定し、この設定フロート角Dを電気信号にして昇降制御手段55に出力する。
【0041】
傾斜角センサ51は、前記自走車体の前後傾斜角を検出するように自走車体に設けてあり、検出結果を電気信号にして昇降制御手段55に出力する。
【0042】
車速センサ52は、前記エンジン3の回転数を車速として検出するようにエンジン3に設けた回転センサで成り、検出車速を電気信号にして昇降制御手段55に出力する。
【0043】
モード選択手段54は、ダイヤル54aの回転操作によって車速感応S、傾斜角補正K、自動切換えAU、併行Hの四種の操作状態に切り換え自在なポテンショメータで成り、車速感応Sの操作状態に操作されると、車速感応指令を昇降制御手段55に出力し、傾斜角補正Kの操作状態に操作されると、傾斜角補正指令を昇降制御手段55に出力し、自動切換えAUの操作状態に操作されると、切換え指令を昇降制御手段55に出力し、併行Hの操作状態に操作されると、併行指令を昇降制御手段55に出力する。
【0044】
図5に示すように、昇降制御手段55は、マイクロコンピュータを利用して構成してあり、モード選択手段54から車速感応指令を入力すると、車速感応モードに切り換わって車速感応昇降制御を実行し、モード選択手段54から傾斜角補正指令を入力すると、傾斜角補正モードに切り換わって傾斜角補正昇降制御を実行し、モード選択手段54から切り換え指令を入力すると、切り換えモードに切り換わって車速感応昇降制御と傾斜角補正昇降制御を実行し、モード選択手段54から併行指令を入力すると、併行モードに切り換わって併行昇降制御を実行する。
【0045】
昇降制御手段55は、切り換えモードに切り換わると、図5に示す如く車速センサ52による検出情報に基づいて車速感応モードと傾斜角補正モードとに自動的に切り換わって車速感応昇降制御と傾斜角補正昇降制御を択一的に実行する。
【0046】
すなわち、車速センサ52による検出車速Vと設定第1切換え車速VHとを比較して、検出車速Vが設定第1切換え車速VH以上に増速変化したか否かを判断し、検出車速Vが設定第1切換え車速VH以上に増速変化したと判断すると、車速感応モードに切り換わって車速感応昇降制御を実行する。車速感応モードに切り換わると、車速センサ52による検出車速Vと設定第1切換え車速VHよりも低速の設定第2切換え車速VLとを比較して検出車速Vが設定第2切換え車速VL以下に減速変化したと判断するまで車速感応モードを維持して車速感応昇降制御を実行し、検出車速Vが設定第2切換え車速VL以下に減速変化したと判断すると、傾斜角補正モードに切り換わって傾斜角補正昇降制御を実行する。傾斜角補正モードに切り換わると、検出車速Vが設定第1切換え車速VH以上に増速変化したと判断するまで傾斜角補正モードを維持して傾斜角補正昇降制御を実行する。
【0047】
昇降制御手段55が各モードに切り切り換わって実行する車速感応昇降制御は、図6に示す如く実行される。
すなわち、車速センサ52による検出車速Vを読込んでこの検出車速Vに対応した補正係数αを割り出し、この補正係数αと、植え付け深さ設定手段53による設定フロート角Dを補正係数αによって補正した補正制御目標フロート角D1を演算する。補正制御目標フロート角D1を割り出すと、フロート角センサ50による検出フロート角θと補正制御目標フロート角D1とを比較して、検出フロート角θが補正制御目標フロート角D1の範囲内にあるか、あるいは検出フロート角θが補正制御目標フロート角D1よりもフロート前上がり側に相当したフロート角になっているか、あるいは検出フロート角θが補正制御目標フロート角D1よりもフロート前下がり側に相当したフロート角になっているかを判断し、検出フロート角θが補正制御目標フロート角D1の範囲内にあると判断した場合、リフトシリンダ6を停止操作する。検出フロート角θが補正制御目標フロート角D1よりもフロート前上がり側に相当したフロート角になっていると判断した場合、検出フロート角θが補正制御目標フロート角D1の範囲内になるまで、リフトシリンダ6を苗植付け装置上昇側に操作する。検出フロート角θが補正制御目標フロート角D1よりもフロート前下がり側に相当したフロート角になっていると判断した場合、検出フロート角θが補正制御目標フロート角D1の範囲内になるまで、リフトシリンダ6を苗植付け装置下降側に操作する。
【0048】
検出車速Vが高速になるほど、接地反力のために接地フロート12がより前上がり側の姿勢になり、フロート角センサ12による検出フロート角θが植付け深さ設定手段53による設定フロート角Dから外れやすくなる。このため、検出車速Vが設定検出車速Va(エンジン回転数が約3000rpmに相当)以上になった場合、設定フロート角Dを補正係数αによって補正して割り出された補正制御目標フロート角D1が、植付け深さ設定手段53による設定フロート角Dよりも前上がり姿勢になった状態にある接地フロート12の苗植付け機体11に対応する揺動角になるように、かつ、検出車速Vが高速になるほど、より前上がり姿勢になった状態にある接地フロート12の苗植付け機体11に対応する揺動角になるように補正係数αを設定してある。
【0049】
これにより、昇降制御手段55による車速感応昇降制御では、フロート角センサ50による検出情報に基づいて設定制御目標フロート角として補正制御目標フロート角D1を設定して、かつ、車速センサ52による検出車速Vが高速であるほど制御感度がより鈍感になるように車速センサ52による検出情報に基づいて制御感度を補正して、フロート角センサ50による検出フロート角が補正制御目標フロート角D1になるようにリフトシリンダ6が操作される。
【0050】
昇降制御手段55が各モードに切り切り換わって実行する傾斜角補正昇降制御は、図7に示す如く実行される。
すなわち、傾斜角センサ51による検出前後傾斜角Aを読み込んでこの検出前後傾斜角Aに対応した補正係数βを割り出し、植え付け深さ設定手段53による設定フロート角Dを補正係数βによって補正した補正制御目標フロート角D2を演算する。補正制御目標フロート角D2を割り出すと、フロート角センサ50による検出フロート角θと補正制御目標フロート角D2とを比較して、検出フロート角θが補正制御目標フロート角D2の範囲内にあるか、あるいは検出フロート角θが補正制御目標フロート角D2よりもフロート前上がり側に相当したフロート角になっているか、あるいは検出フロート角θが補正制御目標フロート角D2よりもフロート前下がり側に相当したフロート角になっているかを判断し、検出フロート角θが補正制御目標フロート角D2の範囲内にあると判断した場合、リフトシリンダ6を停止操作する。検出フロート角θが補正制御目標フロート角D2よりもフロート前上がり側に相当したフロート角になっていると判断した場合、検出フロート角θが補正制御目標フロート角D2の範囲内になるまで、リフトシリンダ6を苗植付け装置上昇側に操作する。検出フロート角θが補正制御目標フロート角D2よりもフロート前下がり側に相当したフロート角になっていると判断した場合、検出フロート角θが補正制御目標フロート角D2の範囲内になるまで、リフトシリンダ6を苗植付け装置下降側に操作する。
【0051】
傾斜角センサ51による検出前上がり傾斜角が設定値より大であると、植付け深さ設定手段53による設定フロート角Dを補正係数βによって補正して割り出された補正制御目標フロート角D2が、植付け深さ設定手段53による設定フロート角Dよりも前下がり方向になった状態にある接地フロート12の苗植付け機体11に対する揺動角になるように、かつ、傾斜角センサ51による検出前上がり傾斜角が大になるほど、補正制御目標フロート角D2がより前下がり姿勢になった状態にある接地フロート12の苗植付け機体11に対する揺動角になるようにして補正制御目標フロート角D2が演算されるように補正係数βを設定してある。
【0052】
これにより、昇降制御手段55による傾斜角補正昇降制御では、フロート角センサ50及び傾斜角センサ51による検出情報に基づいて設定制御目標フロート角として補正制御目標フロート角D2を設定して、かつ、傾斜角センサ51による検出前上がり角が設定値より大であるほど補正制御目標フロート角D2に対応するフロート姿勢がより前下がり方向になった状態の補正制御目標フロート角D2を設定して、フロート角センサ50による検出フロート角が補正制御目標フロート角D2になるようにリフトシリンダ6が操作される。
【0053】
昇降制御手段55が併行モードに切り切り換わって実行する併行昇降制御は、図8に示す如く実行される。
すなわち、傾斜角センサ51による検出前後傾斜角A、車速センサ52による検出車速Vを読み込んで検出前後傾斜角Aに対応した傾斜角補正昇降制御の補正値(e1)、検出車速Vに対応した車速感応昇降制御の補正値(e2)、検出車速Vに対応した傾斜角補正昇降制御の重み付け比率(γ)、検出車速Vに対応した車速感応昇降制御の重み付け比率(1−γ)を割り出し、各補正値(e1)、(e2)、各重み付け比率(γ)、(1−γ)、フロート角センサ50による検出フロート角θを基に、演算用検出フロート角(θc)=θ+(e1×γ)+e2×(1−γ)を演算し、この演算用検出フロート角(θc)を基に植え付け深さ設定手段53による設定フロート角Dを補正した補正制御目標フロート角D3を演算する。補正制御目標フロート角D3を割り出すと、フロート角センサ50による検出フロート角θと補正制御目標フロート角D3とを比較して、検出フロート角θが補正制御目標フロート角D3の範囲内にあるか、あるいは検出フロート角θが補正制御目標フロート角D3よりもフロート前上がり側に相当したフロート角になっているか、あるいは検出フロート角θが補正制御目標フロート角D3よりもフロート前下がり側に相当したフロート角になっているかを判断し、検出フロート角θが補正制御目標フロート角D3の範囲内にあると判断した場合、リフトシリンダ6を停止操作する。検出フロート角θが補正制御目標フロート角D3よりもフロート前上がり側に相当したフロート角になっていると判断した場合、検出フロート角θが補正制御目標フロート角D3の範囲内になるまで、リフトシリンダ6を苗植付け装置上昇側に操作する。検出フロート角θが補正制御目標フロート角D3よりもフロート前下がり側に相当したフロート角になっていると判断した場合、検出フロート角θが補正制御目標フロート角D3の範囲内になるまで、リフトシリンダ6を苗植付け装置下降側に操作する。
【0054】
検出車速Vが設定検出車速Va(エンジン回転数が約3000rpmに相当)以上になった場合、植付け深さ設定手段53による設定フロート角Dを補正係数(e1)によって補正して割り出された補正制御目標フロート角D3が、植付け深さ設定手段53による設定フロート角Dよりも前上がり姿勢になった状態にある接地フロート12の苗植付け機体11に対応する揺動角になるように、かつ、検出車速Vが高速になるほど、より前上がり姿勢になった状態にある接地フロート12の苗植付け機体11に対応する揺動角になるように補正係数(e1)を設定してある。
【0055】
傾斜角センサ51による検出前上がり傾斜角が設定値より大であると、植付け深さ設定手段53による設定フロート角Dを補正係数(e2)によって補正して割り出された補正制御目標フロート角D3が、植付け深さ設定手段53による設定フロート角Dよりも前下がり方向になった状態にある接地フロート12の苗植付け機体11に対する揺動角になるように、かつ、傾斜角センサ51による検出前上がり傾斜角が大になるほど、補正制御目標フロート角D3がより前下がり姿勢になった状態にある接地フロート12の苗植付け機体11に対する揺動角になるようにして補正制御目標フロート角D3が演算されるように補正係数(e2)を設定してある。
【0056】
図9(イ)、(ロ)に示すように、重み付け比率(γ)としては、0≦γ≦1になるように設定してある。また、車速センサ52による検出車速Vが設定車速Vb(エンジン回転数が約1000rpmに相当)から高速になるほど重み付け比率(γ)がより小になるように、かつ、車速センサ52による検出車速Vが設定車速Vb(エンジン回転数が約1000rpmに相当)から高速になるほど重み付け比率(1−γ)がより大になるように重み付け比率(γ)を設定してある。
【0057】
これにより、昇降制御手段55による併行昇降制御では、昇降制御手段55が車速感応モードや切換えモードにおいて実行される車速感応昇降制御と同様の車速感応昇降制御と、昇降制御手段55が傾斜角補正モードや切換えモードにおいて実行される傾斜角補正昇降制御と同様の傾斜角補正昇降制御とを併行して実行される。かつ、車速センサ52による検出車速Vが高速であるほど、車速感応昇降制御の重み付け比率(1−γ)がより大になるとともに傾斜補正昇降制御の重み付け比率(γ)がより小になるようにして、さらに、車速センサ52による検出車速Vが低速であるほど、車速感応昇降制御の重み付け比率(1−γ)がより小になるとともに傾斜補正昇降制御の重み付け比率(γ)がより大になるようにして実行される。
【0058】
要するに、作業を行なうに当たり、耕盤の状況によって、あるいは、苗植えと施肥の両作業、施肥装置20を取り外して苗植えのみを行なう作業、除草機を付設して除草も合わせて行なう作業など行なうべき作業形態などによってモード選択手段54を車速感応S、傾斜角補正K、自動切換えAU、併行Hから選択した一つの操作状態に操作して作業を行なうのであり、モード選択手段54を車速感応Sの操作状態に操作すると、昇降制御手段55が車速感応モードに切り換わって車速感応昇降制御を実行する。これにより、前後輪1,2が耕盤の凹部に入り込んだり凸部に乗り上がったりして自走車体が田面に対して昇降したり前後傾斜したりしても、接地フロート12の取り付け姿勢が植え付け深さ設定手段53によって設定された取り付け姿勢やそれに近い取り付け姿勢になるように苗植付け装置10が自走車体に対して昇降操作されて、かつ、自走車体の走行速度を変更して接地フロート12の感知感度が変化しても、走行速度が高速になるほど制御感度が鈍感になるように制御感度の補正が行なわれて、自走車体の田面に対する高さや前後傾斜の変化にかかわらず、かつ、接地フロート12の感知感度の変化にかかわらず、各苗植付け機構15による苗植え深さを植え付け深さ設定手段53による設定植え付け深さ又はそれに近い植え付け深さに維持しながら、かつ、苗植付け装置10の昇降制御に制御遅れやハンチングを発生しにくくしながら作業を行なうことができる。
【0059】
モード選択手段54を傾斜角補正Kの操作状態に操作すると、昇降制御手段55が傾斜角補正モードに切り換わって傾斜角補正昇降制御を実行する。これにより、車体を圃場から出るように走行させながら枕地に苗植え付けする際など、自走車体が前上がり姿勢になって苗植付け装置10も地面に対して前上がり状態に傾斜した姿勢になる場合でも、補正制御目標フロート角D2を設定して苗植付け機体の前上がり傾斜を補正した状態で苗植付け装置10が昇降操作され、苗植付け機体の前上がり傾斜にかかわらず、各苗植付け機構15による苗植え深さを植え付け深さ設定手段53による設定植え付け深さ又はそれに近い植え付け深さに維持しながら、かつ、接地フロート12の圃場泥土へ過剰な沈下を回避しながら作業を行なうことができる。
【0060】
モード選択手段54を自動切換えAUの操作状態に操作すると、昇降制御手段55が切換えモードに切り換わって車速感応昇降制御と傾斜角補正昇降制御を車速Vによって切り換えて実行する。これにより、自走車体を圃場内で走行させながら作業を行なう場合、高速走行されることから、昇降制御手段55が自ずと車速感応昇降制御を実行する状態に切り換わり、耕盤の凹凸によって自走車体の田面に対する高さや前後角が変化しても、自走車体の走行変速によって接地フロート12の感知感度が変化しても、各苗植付け機構15による苗植え深さを植え付け深さ設定手段53による設定植え付け深さ又はそれに近い植え付け深さに維持しながら、かつ、苗植付け装置10の昇降制御に遅れやハンチングを発生しにくくしながら作業を行なうことができる。そして、圃場内での作業を終えて自走車体を圃場から出るように走行させながら枕地に苗植え付けする場合など、低速走行されることから、昇降制御手段55が自ずと傾斜角補正昇降制御を実行する状態に切り換わり、苗植付け機体の前上がり傾斜にかかわらず、各苗植付け機構15による苗植え深さを植付け深さ設定手段53による設定植え付け深さ又はそれに近い植え付け深さに維持しながら、かつ、接地フロート12の圃場泥土へ過剰な沈下を回避しながら作業を行なうことができる。
【0061】
モード選択手段54を併行Hの操作状態に操作すると、昇降制御手段55が併行モードに切り換わって、車速感応昇降制御及び傾斜角補正昇降制御の重み付け比率が車速Vによって変化した車速感応昇降制御と傾斜角補正昇降制御を併行して実行する。これにより、耕盤の凹凸が激しいなど耕盤の凹凸によって自走車体が田面に対して昇降や前後傾斜したり、自走車体が前上がり姿勢になって苗植付け装置10も田面に対して前上がり姿勢になっても、自走車体の走行変速によって接地フロート12の感知感度が変化しても、接地フロート12の取り付け姿勢が植付け深さ設定手段53による設定取り付け姿勢やそれに近い取り付け姿勢になるように苗植付け装置10が自走車体に対して昇降操作されて、苗植付け機体11の前上がり傾斜を補正した状態で苗植付け装置10が昇降操作されて、走行速度が高速になるほど制御感度が鈍感になるように制御感度の補正が行なわれて、各苗植付け機構15による苗植え深さを植付け深さ設定手段53による設定植え付け深さ又はそれに近い植え付け深さに維持しながら、かつ、苗植付け装置10の昇降制御に制御遅れやハンチングを発生しにくくしながら、さらに、接地フロート12の圃場泥土へ過剰な沈下を回避しながら作業を行なうことができる。
【0062】
〔別実施例〕
上記実施形態の如く設定フロート角をフロート前上がり方向に補正した設定補正制御目標フロート角を採用することによって制御感度を鈍感にする他、リフトシリンダ6を苗植付け装置上昇側に操作するときの作動油の流量が、リフトシリンダ6を苗植付け装置下降側に操作するときの作動油の流量よりも少量になるように、かつ、車速が高速になるほどより少量になるように作動油の流量調節を行なうことによって制御感度の変更調節を行なうように実施してもよく、この感度調節手段を採用しても本発明の目的を達成することができる。
【0063】
上記実施形態の如く自走車体の前後傾斜角を検出する傾斜角センサ51を採用する他、苗植付け装置10の前後傾斜角を検出する傾斜角センサを採用して実施してもよい。いずれの傾斜角センサを採用しても本発明の目的を達成することができる。
【0064】
昇降制御手段55が傾斜角補正モードと車速感応モードに車速によって切り換えられるように、傾斜角補正昇降制御及び車速感応昇降制御の重み付け比率が車速によって変化するように構成して実施する他、苗植えと施肥の両作業を行なう場合と、施肥装置を取り外して苗植え作業を行なう場合とによって、除草機を付設して除草作業を合わせて行なう場合と、除草機を付設しないで作業を行なう場合とによってモード切り換えが行われるように、重み付け比率が変化するように構成して実施してもよい。すなわち、作業形態の相違によってモード切換えが行なわれるように、重み付け比率が変化するように構成して実施してもよい。
【0065】
本発明は、田植機の他、水田直播機など、水田にて各種作業を行なう作業機に適用できるのであり、苗植付け装置10や直播装置などを総称して水田作業装置10と呼称し、田植機、水田直播機などを総称して水田作業機を呼称する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】施肥装置付き乗用型田植機全体の側面図
【図2】変速レバーと走行用変速装置の連動を示す側面図
【図3】変速レバーとエンジン調速装置の連動を示す平面図
【図4】ブロック図
【図5】昇降制御のフロー図
【図6】車速感応昇降制御のフロー図
【図7】傾斜角補正昇降制御のフロー図
【図8】併行昇降制御のフロー図
【図9】(イ)は、傾斜角補正昇降制御の重み付け比率と車速の関係の説明図、(ロ)は、車速感応昇降制御の重み付け比率と車速の関係の説明図
【符号の説明】
【0067】
6 昇降アクチュエータ
10 水田作業装置
11 水田作業装置の機体
12 接地フロート
30 走行用変速装置
37 連係機構
38 エンジン調速装置
50 フロート角センサ
51 傾斜角センサ
52 車速センサ
55 昇降制御手段
P 接地フロートの揺動軸芯
D1,D2 設定制御目標フロート角
V 検出車速
VH 設定第1切換え車速
VL 設定第2切換え車速
(1−γ) 車速感応昇降制御の重み付け比率
(γ) 傾斜角補正昇降制御の重み付け比率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走車体に連結された水田作業装置を自走車体に対して昇降操作する昇降アクチュエータを備え、水田作業装置に接地フロートを接地フロート後部に位置する軸芯まわりで上下揺動自在に設けた水田作業機であって、
自走車体の走行速度を検出する車速センサ、自走車体又は水田作業装置の前後傾斜角を検出する傾斜角センサ、接地フロートの水田作業装置における機体に対する上下揺動角を検出するフロート角センサを備えるとともに、前記車速センサ、前記傾斜角センサ、前記フロート角センサによる検出情報を基に前記昇降アクチュエータを操作する昇降制御手段を備え、
前記フロート角センサによる検出情報に基づいて設定制御目標フロート角を設定して、かつ、前記車速センサによる検出車速が高速であるほど制御感度がより鈍感になるように車速センサによる検出情報に基づいて制御感度を補正して、フロート角センサによる検出フロート角が設定制御目標フロート角になるように昇降アクチュエータを操作する車速感応昇降制御を実行する車速感応モードと、
前記フロート角センサ及び前記傾斜角センサによる検出情報に基づいて設定制御目標フロート角を設定して、かつ、前記傾斜角センサによる検出前上がり傾斜角が設定値より大であるほど設定制御目標フロート角に対応するフロート姿勢をより前下がり方向になった状態の設定制御目標フロート角を設定して、フロート角センサによる検出フロート角が設定制御目標フロート角になるように昇降アクチュエータを操作する傾斜角補正昇降制御を実行する傾斜角補正モードとを、前記昇降制手段に備えてある水田作業機。
【請求項2】
前記昇降制御手段を、前記車速感応昇降制御と前記傾斜角補正昇降制御を択一的に実行するように前記車速感応モードと前記傾斜角補正モードに切り換え自在に構成してある請求項1記載の水田作業機。
【請求項3】
前記昇降制御手段を、前記車速センサによる検出車速が高速側であると、前記車速感応モードに切り換わり、前記車速センサによる検出車速が低速側であると、前記傾斜角補正モードに切り換わるように車速センサによる検出情報に基づいて自動的にモード切り換えするように構成してある請求項2記載の水田作業機。
【請求項4】
前記昇降制御手段を、前記車速センサによる検出車速が設定第1切換え車速以上に増速変化することによって前記傾斜角補正モードから前記車速感応モードに切り換わり、前記車速センサによる検出車速が前記設定第1切換え車速よりも低速の設定第2切換え車速以下に減速変化することによって前記車速感応モードから前記傾斜角補正モードに切り換わるように構成してある請求項3記載の水田作業機。
【請求項5】
前記昇降制御手段を、前記車速感応昇降制御と前記傾斜角補正昇降制御を併行して実行するように構成してある請求項1記載の水田作業機。
【請求項6】
前記昇降制御手段を、前記車速センサによる検出車速が高速であるほど、前記車速感応昇降制御の重み付け比率がより大になるとともに前記傾斜角補正昇降制御の重み付け比率がより小になるように、前記車速センサによる検出車速が低速であるほど、前記車速感応昇降制御の重み付け比率がより小になるとともに前記傾斜角補正昇降制御の重み付け比率がより大になるように車速センサによる検出情報に基づいて車速感応昇降制御及び傾斜角補正昇降制御の重み付け比率を変更設定しながら車速感応昇降制御と傾斜角補正昇降制御を併行して実行するように構成してある請求項5記載の水田作業機。
【請求項7】
走行用変速装置の変速操作に連係してエンジン調速装置が調速作動するように走行用変速装置とエンジン調速装置を連係させた連係機構を備え、前記車速センサを、エンジン回転数を車速として検出するように構成してある請求項1〜6のいずれか1項に記載の水田作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−180823(P2006−180823A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−379961(P2004−379961)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】